特許第6487293号(P6487293)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6487293
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】樹脂カバー
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/031 20120101AFI20190311BHJP
【FI】
   F16H57/031
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-153102(P2015-153102)
(22)【出願日】2015年8月3日
(65)【公開番号】特開2017-32075(P2017-32075A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2018年4月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000100768
【氏名又は名称】アイシン・エィ・ダブリュ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】特許業務法人あーく特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森下 浩文
(72)【発明者】
【氏名】草本 大輔
(72)【発明者】
【氏名】藤田 浩文
【審査官】 塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−68351(JP,A)
【文献】 特開2014−228137(JP,A)
【文献】 特開平11−287252(JP,A)
【文献】 特開2003−336727(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/031
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動変速機のケースの一部を構成する樹脂カバーであって、
上記ケースの他部を構成する金属製のケース本体に形成された開口部の縁部に取付けられる取付部と、当該開口部を覆うことによって、当該ケース本体と共に上記自動変速機のオイル溜り部を構成する本体部と、を備え、
上記本体部には、上記ケース内部のオイル液面よりも上側の部位で、且つ、エンジンに設けられた排気マニホールドから相対的に遠い部位に、溝からなる脆弱部が形成されていることを特徴とする樹脂カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動変速機のケースの一部を構成する樹脂カバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動変速機のケースとしては、通常、金属製ケースが用いられるが、自動変速機のケースの軽量化を図るべく、金属製ケースにおける金属製カバーを樹脂カバーで置き換えることが、従来から行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ベルト式無段変速機構の軸部材を回転自在に支持するトランスミッションケースにおいて、金属フレームにより形成される開口部を樹脂カバーで塞ぐようにした複合材構造が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、変速機構および変速機構の側方に位置するバルブボデーを収容するケースの一部を構成し、変速機構に対してバルブボデーを隔ててケースの側面に位置する樹脂製のバルブボデーカバーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−197918号公報
【特許文献2】特開2014−228137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の如く、自動変速機のケースのカバーとして樹脂カバーを用いれば、自動変速機のケースの軽量化を図ることができる。しかしながら、樹脂カバーは金属製カバーと比較して破損し易いため、車両衝突時に樹脂カバーが破損して、自動変速機のケース内部のオイルが飛散するおそれがある。また、飛散したオイルがエンジン等における熱源にかかるおそれもある。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、自動変速機のケースの軽量化を図りつつ、車両衝突時に、自動変速機のケース内部のオイルが飛散するのを抑えるとともに、万が一オイルが飛散した場合でも、飛散したオイルが熱源にかかるのを抑える技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明に係る樹脂カバーでは、車両衝突時に樹脂カバーが破損してもオイルが飛散し難い位置で、且つ、熱源から遠い位置に、当該樹脂カバーの破損を誘発する脆弱部を設けるようにしている。
【0009】
具体的には、本発明は、自動変速機のケースの一部を構成する樹脂カバーを対象としている。
【0010】
そして、上記樹脂カバーは、上記ケースの他部を構成する金属製のケース本体に形成された開口部の縁部に取付けられる取付部と、当該開口部を覆うことによって、当該ケース本体と共に上記自動変速機のオイル溜り部を構成する本体部と、を備え、上記本体部には、上記ケース内部のオイル液面よりも上側の部位で、且つ、エンジンに設けられた排気マニホールドから相対的に遠い部位に、溝からなる脆弱部が形成されていることを特徴とするものである。
【0011】
なお、本発明において「相対的に遠い部位」とは、樹脂カバーにおける、エンジンに設けられた排気マニホールドから最も遠い部位およびその近傍部を意味する。
【0012】
この構成によれば、自動変速機のケースのカバーとして樹脂カバーを用いることから、金属製カバーを用いる場合に比して、自動変速機のケースの軽量化を図ることができ、これにより、燃費を良くすることが可能となる。
【0013】
また、車両衝突時に、車体を構成する部材等が樹脂カバーに当たっても、脆弱部が破損または変形することで、樹脂カバーにおける他の部位を破損させずに効率的に衝突荷重のエネルギが吸収されるので、樹脂カバー全体の破損を免れることができる。そして、脆弱部は、本体部における、オイル液面よりも上側の部位に形成されていることから、脆弱部が破損してもケース内部のオイルが飛散したり、漏れたりするのを抑えることができる。
【0014】
加えて、脆弱部はエンジンに設けられた排気マニホールドから相対的に遠い部位に形成されていることから、万が一オイルが飛散した場合でも、飛散したオイルが熱源たる排気マニホールドにかかるのを抑えることができる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明に係る樹脂カバーによれば、自動変速機のケースの軽量化を図りつつ、車両衝突時に、自動変速機のケース内部のオイルが飛散するのを抑えるとともに、万が一オイルが飛散した場合でも、飛散したオイルが熱源にかかるのを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態1に係る樹脂カバーが適用される自動変速機が搭載された車両の一例を示す概略構成図である。
図2】車両に搭載されたエンジンおよび自動変速機を車両前側から見た概略図である。
図3】樹脂カバーを正面から見た図である。
図4】樹脂カバーの上半分を裏側から見た図である。
図5図4のV−V線の矢視断面図である。
図6】車両衝突の一例を示す図である。
図7】本発明の実施形態2に係る樹脂カバーの脆弱部を裏側から見た図である。
図8図7のVIII−VIII線の矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
(実施形態1)
図1は、本実施形態に係る樹脂カバー1が適用される自動変速機23が搭載された車両20の一例を示す概略構成図であり、図2は、車両20に搭載されたエンジン21および自動変速機23を車両前側から見た概略図である。図1に示すように、車両20の車幅方向の両外側には、車両前後方向に延びるフロントサイドメンバ24がそれぞれ配設されている。各フロントサイドメンバ24の前端部には、衝撃吸収体としてのクラッシュボックス25の後端部が接続されている。これらのクラッシュボックス25の前端部には、車幅方向に延びるバンパリインフォースメント26が接続されている。
【0019】
バンパリインフォースメント26と、左右のフロントサイドメンバ24と、ダッシュパネル27とで区画された空間は、エンジンルームERを構成している。エンジンルームER内には、図1に示すように、エンジン21および自動変速機23が配置されている。これらエンジン21および自動変速機23は、車幅方向に延びる支持部材28によって支持されている。支持部材28は、フロントサイドメンバ24の下面に取付けられた、上下に延びる取付部材29を介してフロントサイドメンバ24に支持されている。フロントサイドメンバ24の下面における取付部材29の後側には、フロントサスペンションメンバ30が取り付けられている。
【0020】
エンジン21は、軸心(クランクシャフトの軸心)が車幅方向に延びるように横置き状態で配置される、いわゆる横置き型式のものである。また、エンジン21は、車両20に搭載された状態でエンジン21の前側に排気マニホールド22が位置する、いわゆる前方排気エンジンである。なお、エンジン21はガソリンエンジンでもよいし、ディーゼルエンジンでもよい。
【0021】
自動変速機23は、運転者から見てエンジン21の車幅方向左側に配設されている。エンジン21から出力された動力は、トルクコンバータ31、自動変速機23、差動歯車装置(図示せず)および左右の車軸(図示せず)を経て左右の駆動輪32に伝達される。なお、自動変速機23は、例えば、遊星歯車機構と摩擦係合装置とを用いた有段変速機でもよいし、ベルト式の無段変速機でもよい。
【0022】
自動変速機23のケース33は、車両20に搭載された状態で車両前側に開口する開口部34aが形成された金属製のトランスミッションケース(ケース本体)34と、その開口部34aを塞ぐようにトランスミッションケース34に取り付けられる樹脂カバー1とから構成されている。この樹脂カバー1は、例えば、自動変速機23が車両20に搭載された状態で、当該自動変速機23の前側に位置するバルブボデー(図示せず)を覆うバルブボデーカバーとしての役割を担うとともに、トランスミッションケース34と共に密封された空間を形成することで、自動変速機23の潤滑オイル等のオイル溜り部を構成するオイルパンとしての役割も担っている。このように、金属製カバーではなく、樹脂カバー1を用いてトランスミッションケース34の開口部34aを覆うことで、本実施形態では、自動変速機23のケース33の軽量化(例えば金属製カバーを用いた場合に比して600g減)が図られ、延いては燃費の向上が図られている。
【0023】
図3は、樹脂カバー1を正面から見た図である。なお、図3中の一点鎖線OLは、ケース33内部のオイル液面を示している。樹脂カバー1は、図3に示すように、正面(車両前側)から見て、矩形の右下コーナー部(運転者から見て左下コーナー部)を斜めにカットした略五角形状に形成されている。この樹脂カバー1は、トランスミッションケース34の開口部34aの縁部に取付けられる取付部2と、当該開口部34aを覆うことによって、トランスミッションケース34と共に自動変速機23のオイル溜り部を構成する本体部3と、を備えている。なお、以下の説明では、特に断らない限り、運転者から見て車幅方向右側を「右側」といい、運転者から見て車幅方向左側を「左側」という。
【0024】
本体部3は、自動変速機23が車両20に搭載された状態で、前側に位置する略五角形状の前側壁部4と、前側壁部4の上縁部から車両後方に延びる上側壁部5と、前側壁部4の右側側縁部から車両後方に延びる右側壁部6と、前側壁部4の左側側縁部から車両後方に延びる左側壁部7と、前側壁部4の下縁部から車両後方に延びる下側壁部8と、前側壁部4の左下コーナー部を斜めにカットしたカット部から車両後方に延びる傾斜壁部9と、を有している。そうして、上側壁部5の右側側縁部と右側壁部6の上縁部と、右側壁部6の下縁部と下側壁部8の右側側縁部と、下側壁部8の左側側縁部と傾斜壁部9の下縁部と、傾斜壁部9の上縁部と左側壁部7の下縁部と、左側壁部7の上縁部と上側壁部5の左側側縁部と、はそれぞれ接続されていて、本体部3は全体として深皿状に形成されている。これにより、金属製のトランスミッションケース34よりも前側に突出しているバルブボデーが、樹脂カバー1内に収まるようになっている。なお、前側壁部4と、上側壁部5と、右側壁部6と、左側壁部7と、下側壁部8と、傾斜壁部9とは、それぞれR部(R状の接続部)を介して滑らかに繋がっている。
【0025】
取付部2は、上側壁部5の後端部から上方に延びる上側取付部15と、右側壁部6の後端部から右側に延びる右側取付部16と、左側壁部7の後端部から左側に延びる左側取付部17と、下側壁部8の後端部から下側に延びる下側取付部18と、傾斜壁部9の後端部から左斜め下方に延びる傾斜取付部19と、を有している。そうして、これら上側取付部15、右側取付部16、下側取付部18、傾斜取付部19および左側取付部17はこの順で環状に接続されていて、取付部2は全体として略五角形環状に形成されている。
【0026】
取付部2には、その全周に亘って間欠的にボルトボス部2bが形成されていて、これにより、樹脂カバー1はボルト(図示せず)を介してトランスミッションケース34に固定されるようになっている。また、取付部2のトランスミッションケース34への定着面には、後方に開口する溝部2a(図5参照)が全周に亘って形成されているとともに、当該溝部2aに環状のゴムパッキン35(図5参照)が全周に亘って嵌め込まれている。これにより、ボルトを介して取付部2をトランスミッションケース34へ取り付けると、圧縮されたゴムパッキン35がトランスミッションケース34の開口部34aの縁部に密着し、開口部34aが密閉されてオイルの漏れが抑えられるようになっている。
【0027】
再び本体部3の説明に戻って、前側壁部4は、凹凸4aがほぼ全面に亘って形成されることで、その剛性が高められており、破損または変形し難くなっている。また、上側壁部5、右側壁部6、左側壁部7、下側壁部8および傾斜壁部9は、リブ5a,6a,7a,8a,9aがそれぞれ形成されることで、その剛性が高められており、破損または変形し難くなっている。
【0028】
もっとも、樹脂カバー1の強度向上には限界があるところ、例えば図6に示すように、車両20の左斜め前方からの衝突である斜突の際に、取付部材29やフロントサスペンションメンバ30等が樹脂カバー1に接触することで、樹脂カバー1全体が破損する場合がある。そうして、樹脂カバー1全体が破損すると、自動変速機23のケース33内部のオイルが飛散する場合がある。また、本実施形態のような前方排気エンジンにおいては、最悪の場合には、斜突の際に飛散したオイルが熱源である排気マニホールド22にかかる場合もある。
【0029】
そこで、本実施形態では、特定の部位に破損または変形を誘発して樹脂カバー1全体の破損を避けるべく、本体部3における、ケース33内部のオイル液面OLよりも上側の部位で、且つ、エンジン21の前側に設けられた排気マニホールド22から相対的に遠い部位に、溝11からなる脆弱部10を形成するようにしている。
【0030】
具体的には、脆弱部10は、図4および図5に示すように、取付部材29やフロントサスペンションメンバ30が当たり易い、左側壁部7の上端部と前側壁部4の上端部との接続部の裏側に、上下方向に延びる3条の溝11を設けることによって形成されている。すなわち、脆弱部10は、ケース33内部のオイル液面OLよりも上側にある「左側壁部7および前側壁部4の上端部」で、且つ、排気マニホールド22から相対的に遠い「左側壁部7および前側壁部4の左端部」に形成されている。各溝11は、後方に開口する断面V字状に形成されていて、V字の頂部に対応する部分の厚さtが、樹脂カバー1において最も薄くなる(例えば1.3mm)ように形成されている。このような溝11を設けることで、取付部材29やフロントサスペンションメンバ30等が樹脂カバー1に接触した場合、真っ先に厚さtの部分に破損または変形が誘発されることになる。
【0031】
さらに、本実施形態の樹脂カバー1では、脆弱部10が相対的に破損し易くなるように、脆弱部10の近傍に、特に剛性の高い高剛性部13を設けている。具体的には、高剛性部13は、脆弱部10よりも下側における前側壁部4と左側壁部7との接続部、前側壁部4と傾斜壁部9との接続部、および、前側壁部4と下側壁部8との接続部に亘って形成されている。高剛性部13は、複数の凹凸14が設けられることで波板状に形成されており、これにより、その剛性が高められている。また、高剛性部13は、段差部12を介して脆弱部10よりも若干後方に下がった位置に形成されており、脆弱部10よりも取付部材29やフロントサスペンションメンバ30等が当たり難くなっている。なお、このような高剛性部13を形成することにより、車両衝突時のみならず、走行時に飛石が樹脂カバー1に衝突した場合にも、樹脂カバー1に破損が生じるのを抑えることができる。
【0032】
以上のように、本実施形態では、脆弱部10および高剛性部13を設けることにより、斜突の際に、取付部材29やフロントサスペンションメンバ30等が樹脂カバー1に当たっても、脆弱部10が破損または変形することで、高剛性部13等を変形させずに効率的に衝突荷重のエネルギが吸収されるので、樹脂カバー1全体の破損を免れることができる。
【0033】
そうして、脆弱部10は、ケース33内部のオイル液面OLよりも上側に形成されていることから、脆弱部10が破損してもオイルが飛散したり、漏れたりするのを効果的に抑制することができる。さらに、脆弱部10は、排気マニホールド22から相対的に遠い、左側壁部7と前側壁部4との接続部に形成されていることから、万が一オイルが飛散した場合でも、飛散したオイルが熱源である排気マニホールド22にかかるのを確実に抑制することができる。
【0034】
なお、本実施形態の樹脂カバー1を適用した車両20を用いて、車速90kph、オフセット35%、衝突角15°で衝突試験を行った結果、脆弱部10が破損することにより、樹脂カバー1の他の部位の破損等が抑えられ、オイルの飛散等が抑制されることを確認することができた。
【0035】
(実施形態2)
本実施形態は、脆弱部40の構成が上記実施形態1と異なるものである。以下、実施形態1と異なる点を中心に説明する。
【0036】
図7は、本実施形態に係る樹脂カバー1の脆弱部40を裏側から見た図であり、図8は、図7のVIII−VIII線の矢視断面図である。図7に示すように、脆弱部40は、脆弱部10と同様、左側壁部7の上端部と前側壁部4の上端部との接続部の裏側に形成されている。もっとも、脆弱部40は、上下方向に延びる3条の溝11によって形成される脆弱部10とは異なり、図7および図8に示すように、車両後側から見て略コ字状の溝41を設けることによって形成されている。
【0037】
より詳しくは、脆弱部40は、略コ字状に形成された溝41と、この溝41によって、左側壁部7、高剛性部13および前側壁部4から区画された平面部42とからなっている。図8に示すように、平面部42の中央部は、格子状をなす複数のリブ43が形成されることで、その剛性が高められている。一方、溝41によって区画される平面部42の縁部は、溝41が形成されることで他の部位よりも薄くなっていて、破損し易くなっている。
【0038】
つまり、上記実施形態1では、3条の溝11を設けることによって形成された脆弱部10全体が破損または変形するのに対し、本実施形態では、平面部42と左側壁部7、高剛性部13および前側壁部4の一部との縁が切れるだけで、平面部42自体は破損または変形しないようになっている。そうして、平面部42は、左側壁部7、高剛性部13および前側壁部4の一部との縁が切れた後も、前側壁部4の残部および上側壁部5と繋がった状態で存在することから、樹脂カバー1に平面部42の大きさに相当する穴が開くのを抑えることができる。
【0039】
以上のように構成された脆弱部40は、斜突の際に、取付部材29やフロントサスペンションメンバ30等が平面部42に当たると、剛性が高められた平面部42は破損することなく、溝41が形成された部分が破損する。このとき、溝41が形成された部分が破損すると、平面部42と、左側壁部7、高剛性部13および前側壁部4の一部との縁が切れるが、平面部42自体は破損しないので、破損する部位を最小限に抑えつつ、衝突荷重のエネルギを吸収することが可能となる。
【0040】
(その他の実施形態)
本発明は、実施形態に限定されず、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形で実施することができる。
【0041】
上記各実施形態では、本発明の樹脂カバー1を、FF車両20における横置き且つ前方排気エンジン21の車幅方向左側に配置される自動変速機23に適用したが、これに限らず、他の位置に配置される自動変速機23に本発明の樹脂カバー1を適用してもよい。
【0042】
また、上記各実施形態では、樹脂カバー1の左上コーナー部の近傍に脆弱部10を形成したが、これに限らず、オイル液面OLの高さや、排気マニホールド22の位置や、取付部材29やフロントサスペンションメンバ30等との位置関係等に応じて、樹脂カバー1における最適な位置に形成すればよい。
【0043】
さらに、上記各実施形態では、樹脂カバー1を、車両前側から見て、矩形の右下コーナー部を斜めにカットした略五角形状に形成したが、これに限らず、樹脂カバー1は、トランスミッションケース34およびその開口部34aの形状に合った形状に形成すればよく、例えば車両前側から見て矩形状に形成してもよい。
【0044】
このように、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によると、車両衝突時に、自動変速機のケース内部のオイルが飛散するのを抑えるとともに、万が一オイルが飛散した場合でも、飛散したオイルが熱源にかかるのを抑えることができるので、自動変速機の樹脂カバーに適用して極めて有益である。
【符号の説明】
【0046】
1 樹脂カバー
2 取付部
3 本体部
10 脆弱部
11 溝
21 エンジン
22 排気マニホールド
23 自動変速機
33 ケース
34 トランスミッションケース(ケース本体)
34a 開口部
40 脆弱部
41 溝
OL オイル液面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8