(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6487311
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】3次元物体プリントシステム用の吐出ヘッド・クリーニングカート
(51)【国際特許分類】
B29C 64/35 20170101AFI20190311BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20190311BHJP
【FI】
B29C64/35
B33Y30/00
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-219127(P2015-219127)
(22)【出願日】2015年11月9日
(65)【公開番号】特開2016-107631(P2016-107631A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2018年10月18日
(31)【優先権主張番号】14/560,426
(32)【優先日】2014年12月4日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マーク・エイ・アトウッド
(72)【発明者】
【氏名】ジェームス・ジェイ・スペンス
【審査官】
中山 基志
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−300644(JP,A)
【文献】
国際公開第2004/096527(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C64/00−64/40
B22F3/105
B22F3/16
B28B1/30
B33Y10/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元物体プリントシステム用クリーニングカートであって、
複数の軸受部を含むプラットフォームであって、前記3次元物体プリントシステムのレールの上で当該プラットフォームが移動するよう構成されるプラットフォームと、
前記プラットフォームに動作可能に取り付けられるクリーニング機構と、
前記プラットフォームに取り付けられる容器トレイと、
前記容器トレイから延在する屈曲材であって、吐出ヘッドから取り除かれる液体が当該屈曲材の一部に沿って前記容器トレイの内部容積内に流入できるように、前記容器トレイの内部容積から離れて配置される端部を備えるように構成される屈曲材と、
前記プラットフォームに取り付けられるアクチュエータであって、前記クリーニング機構に動作可能に接続して、前記プラットフォームに対して前記クリーニング機構を移動させるように構成されて、前記プリントシステムの前記レールの向かい側に配置される前記吐出ヘッドを前記クリーニング機構がクリーニングできるようにし、前記吐出ヘッドから取り除かれた液体が前記屈曲材の一部に沿って前記容器トレイの前記内部容積内に流入できるようにするアクチュエータと、を含むクリーニングカート。
【請求項2】
前記アクチュエータが前記プラットフォームに対して前記クリーニング機構を移動させるとき、前記吐出ヘッドを拭くよう構成されるワイパーブレードを含むワイパーを、前記クリーニング機構がさらに含む、請求項1に記載のクリーニングカート。
【請求項3】
前記プラットフォームに取り付けられる線形摺動システムであって、前記線形摺動システムには、前記クリーニング機構が取り付けられる、線形摺動システムをさらに含み、
前記線形摺動システムに沿って前記クリーニング機構を移動させるように構成されるステッピングモータであって、前記プラットフォームに対して前記クリーニング機構を移動させて、前記クリーニング機構が前記吐出ヘッドをクリーニングできるようにするステッピングモータを前記アクチュエータが含む、請求項1に記載のクリーニングカート。
【請求項4】
前記モータにより駆動され、前記クリーニング機構に動作可能に接続して、前記プラットフォームに対して前記クリーニング機構を移動させる親ネジを前記アクチュエータが含む、請求項3に記載のクリーニングカート。
【請求項5】
3次元物体プリントシステムであって、
少なくとも1つのレールと、
前記少なくとも1つのレールの向かい側に配置される吐出ヘッドであって、前記少なくとも1つのレールに対して垂直方向に前記吐出ヘッドを移動させるように構成される吐出ヘッド・アクチュエータシステムを含む吐出ヘッドと、
クリーニングカートであって、
複数の軸受部を含むプラットフォームであって、前記3次元物体プリントシステムの前記少なくとも1つのレールの上で当該プラットフォームが移動するよう構成されるプラットフォームと、
前記プラットフォームに動作可能に取り付けられるクリーニング機構と、
前記プラットフォームに取り付けられる容器トレイと、
前記容器トレイから延在する屈曲材であって、前記吐出ヘッドから取り除かれる液体が当該屈曲材の一部に沿って前記容器トレイの内部容積内に流入できるように、前記容器トレイの内部容積から離れて配置される端部を備えるように構成される屈曲材と、
前記プラットフォームに取り付けられるアクチュエータであって、前記クリーニング機構に動作可能に接続して、前記プラットフォームに対して前記クリーニング機構を移動させるように構成されて、前記クリーニング機構が前記プリントシステムの前記少なくとも1つのレールの向かい側に配置される前記吐出ヘッドをクリーニングできるようにし、前記吐出ヘッドから取り除かれた液体が前記屈曲材の一部に沿って前記容器トレイの内部容積内に流入できるようにするアクチュエータと、を含むクリーニングカートと、を含むプリントシステム。
【請求項6】
前記少なくとも1つのレールに沿って、処理方向に前記クリーニングカートを移動させるよう構成されるレール・アクチュエータシステムをさらに含み、
前記処理方向は、前記吐出ヘッドのクリーニング時に前記クリーニングカートが移動する方向である、請求項5に記載のプリントシステム。
【請求項7】
前記アクチュエータ、前記レール・アクチュエータシステム、および前記吐出ヘッド・アクチュエータシステムに動作可能に接続する制御装置をさらに含み、前記制御装置が、前記レール・アクチュエータシステムを操作して、前記クリーニング機構が前記吐出ヘッドの向かい側に位置する第1のカートの位置まで処理方向に前記クリーニングカートを移動させ、
前記吐出ヘッド・アクチュエータシステムを操作して、前記クリーニング機構から離れた最初の吐出ヘッドの位置から、前記吐出ヘッドが前記クリーニング機構と接触する第1の吐出ヘッドの位置に前記吐出ヘッドを移動させ、
前記アクチュエータを操作して、第1のクリーニング機構の位置から、第2のクリーニング機構の位置に、前記プラットフォームに対して、前記クリーニング機構を移動させ、前記クリーニング機構が、前記第1のクリーニング機構の位置から前記第2のクリーニング機構の位置まで移動しながら、前記吐出ヘッドから液体を除去できるようにする、請求項6に記載のプリントシステム。
【請求項8】
前記クリーニング機構が、ワイパーブレードを含むワイパーをさらに含み、
前記ワイパーブレードは、前記吐出ヘッドが前記第1の吐出ヘッドの位置に存在し、前記クリーニングカートが前記第1のカートの位置に存在しているときに、前記第1のクリーニング機構の位置から前記第2のクリーニング機構の位置に至る前記クリーニング機構の移動中に、前記吐出ヘッドの表面を拭くように構成される、請求項7に記載のプリントシステム。
【請求項9】
前記ワイパーブレードによって前記吐出ヘッドから取り除かれた液体が前記屈曲材の一部に沿って前記容器トレイの内部容積内に流入できるように、前記屈曲材が、前記第2のクリーニング機構の位置において前記ワイパーブレードに係合できる位置に配置される、請求項8に記載のプリントシステム。
【請求項10】
前記制御装置は、前記クリーニング機構が前記第2のクリーニング機構の位置に配置された後、前記吐出ヘッド・アクチュエータシステムを操作して、前記第1の吐出ヘッドの位置から前記最初の吐出ヘッドの位置まで前記吐出ヘッドを移動させ、前記吐出ヘッドが前記最初の吐出ヘッドの位置に移動された後、前記アクチュエータを操作して、前記第2のクリーニング機構の位置から前記第1のクリーニング機構の位置まで前記クリーニング機構を移動させるように、さらに構成される、請求項9に記載のプリントシステム。
【請求項11】
前記プラットフォームに取り付けられる線形摺動システムであって、前記線形摺動システムには、前記クリーニング機構が取り付けられる、線形摺動システムを、前記クリーニングカートがさらに含み、
前記線形摺動システムに沿って前記クリーニング機構を移動させるように構成されるモータであって、前記プラットフォームに対して前記クリーニング機構を移動させて、前記クリーニング機構が前記吐出ヘッドをクリーニングできるようにするモータを前記アクチュエータが含む、請求項5に記載のプリントシステム。
【請求項12】
前記モータにより駆動され、前記クリーニング機構に動作可能に接続して、前記プラットフォームに対して前記クリーニング機構を移動させる親ネジを前記アクチュエータが含む、請求項11に記載のプリントシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示するシステムおよび方法は、3次元物体を作成するプリンタに関し、より具体的には、そのようなプリンタ内のクリーニング機構に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル3次元製造(デジタル積層造形としても知られる)とは、デジタルモデルから、ほとんど全ての形状の3次元の固体物体を作成する処理である。3次元プリントとは、1つ以上のプリントヘッドが材料の連続層を様々な形状で基材の上に吐出する積層処理である。通常、吐出ヘッド(文書プリンタ内のプリントヘッドと類似する)が、材料の供給部と接続したイジェクタのアレイを含む。単一の吐出ヘッド内のイジェクタは、異なる材料供給源に接続することができる。すなわち、吐出ヘッドは、それぞれ異なる材料供給源に接続して、吐出ヘッド内の全てのイジェクタが同じ材料の小滴を吐出できるようにすることができる。形成される物体の一部となる材料を造形材料と呼び、物体を形成するときに構造を支持するために使用され、その後物体から取り除かれる材料を支持材料と呼ぶ。3次元プリントは、切削や穴あけなどの切削処理により加工品から材料を削除することにほとんどを頼っている、従来の物体形成技術とは区別することができる。
【0003】
図12には、従来技術の3次元物体プリントシステム10が示される。この図面内に描かれている図では、プラットフォーム14(カートと呼ぶ)が、トラックレール22上に乗った車輪18(
図11)を含み、これにより、このカートは、
図12に示すプリント・ステーション26などのプリント・ステーション間を処理方向Pに移動することが可能となる。この図で示される通り、このプリント・ステーション26は、4つの吐出ヘッド30を備えているが、プリント・ステーション内の吐出ヘッドの数は、これよりも多くても少なくてもよい。カート14がプリント・ステーション26に到達すると、このカート14は高精度レール38に移行して、軸受部34が高精度レール38上を転がることができるようにする。高精度レール38は、厳しい公差で製造された円筒形のレール部であり、これにより、カート14を吐出ヘッド30の真下の正確な位置に確実に動かすことができる。リニア電動モータが筺体42内に設けられ、カート14の車輪18と動作可能に接続し、これにより、このカートはトラックレール22に沿って移動する。また、このリニア電動モータは軸受部34とも動作可能に接続し、これにより、カート14は高精度レール38上を移動する。プリント・ステーション26の真下にカート14が到着すると、このカートの動きと同期して材料が吐出される。また、筺体42内の電動モータは、材料の層が物体へと形成されるとき、吐出ヘッド30と平行であるXY平面内でカートを移動させるよう構成される。付加的なモータ(図示せず)により、プリント・ステーション26は、材料の層が積層されて物体を形成するとき、カート14に対して垂直方向に移動する。あるいは、物体がカートの上面で形成されるときカート14をレール38に対して垂直方向に移動させるための機構を設けることも可能である。プリント・ステーションにより行われるプリントが終了すると、さらなる部分の形成処理、もしくは層の硬化処理、またはその他の処理を行うために、カート14は別のプリント・ステーションに移動する。
【0004】
図11には、従来技術のシステム10の端面図が示されている。この図には、その上にカート14が配置された車輪18が、トラックレール22に乗っている様子がより詳細に示されている。カート14の軸受部34は、高精度レール38上に配置され、この構成により、カート14の上の造形テーブルの正確な位置合わせが容易になる。具体的には、2つの軸受部34をレール38の一方の上に互いに直角に配置してカート14の4自由度を取り除き、もう1つの軸受部34をもう一方のレール38の上に配置して、もう1つの自由度を取り除く。リニアモータが動作して、筺体42の上面50の上方でカート14を移動させる。このモータは、筺体42内に配置された静止モータ部と、カート14の下面取り付けられた磁石46とを有する。重力、および静止モータ部と磁石46との間の磁気引力により、軸受部34はレール38と接触して保持されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
吐出ヘッド30の真下にカートが存在しないとき、吐出ヘッドから材料の小滴が間違って落ち、高精度レール38および筺体42上が好ましくない材料片で汚染される。また、ダストまたはその他の微粒子などの、環境内で空中を浮遊する汚染物質が、レール38および筺体42に落下し堆積する可能性もある。軸受部34とレール38との間のあらゆる境界面に、これらの汚染物質や材料片が堆積すると、カートの線速度が遅くなり、プリントされる物体の質に悪影響を及ぼす。同様に、これらの物質が筺体42の上面50と磁石46との間の隙間に入ると、磁気引力に影響を及ぼし、カートを制御できなくなる恐れがある。それに加えて、筺体42の上部に材料の小滴が堆積することにより、モータから熱が消散しにくくなり、モーションクオリティの乱れが生じ、モータの性能および信頼性に影響を及ぼす。許容品質の3次元物体を作成するためには、吐出ヘッド30の真下のカート14の動きが正確でなければならない。したがって、カートの配置および動きの精度に悪影響を及ぼす、高精度レールおよびモータの筺体上の汚染物を取り除き易くするために、3次元プリントシステムを改良することが有益である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
3次元物体プリントシステム用の吐出ヘッド・クリーニングカートが、吐出ヘッドから吐出される材料およびその他の材料片を回収する。この吐出ヘッド・クリーニングカートは、プリントシステムのレールの上で、このプラットフォームを移動させるよう構成される複数の軸受部を含むプラットフォームと、このプラットフォームに動作可能に取り付けられるクリーニング機構と、このプラットフォームに取り付けられるアクチュエータと、を含む。このアクチュエータは、プラットフォームに対してクリーニング機構を移動させて、プリントシステムのレールの向かい側に配置される吐出ヘッドをクリーニング機構がクリーニングできるようにするよう構成される。
【0007】
改良されたクリーニングカートを組み込んだ3次元物体プリントシステムは、少なくとも1つのレールと、少なくとも1つのレールの向かい側に配置された吐出ヘッドと、クリーニングカートと、を含む。このクリーニングカートが、プラットフォームを含み、このプラットフォームは、少なくとも1つのレールと係合して、少なくとも1つのレール上でプラットフォームを移動させるよう構成される複数の軸受部と、このプラットフォームに動作可能に取り付けられるクリーニング機構と、このプラットフォームに取り付けられるアクチュエータと、を有する。このアクチュエータは、プラットフォームに対してクリーニング機構を移動させて、このクリーニング機構がプリントシステムの吐出ヘッドをクリーニングできるようにするよう構成される。
【0008】
3次元物体プリントシステムの吐出ヘッドをクリーニングする方法で、吐出ヘッドから吐出される材料およびその他の材料片を回収する。この方法には、クリーニングカートのクリーニング機構が吐出ヘッドと隣接する第1のカートの位置までクリーニングカートを処理方向に移動させるステップと、クリーニング機構から離れた最初の吐出ヘッドの位置から、吐出ヘッドがクリーニング機構と接触する第1の吐出ヘッドの位置に吐出ヘッドを移動させるステップと、クリーニング機構が、吐出ヘッドを横切って移動して、吐出ヘッドから材料を取り除くよう、第1のクリーニング機構の位置から第2のクリーニング機構の位置にクリーニングカートのプラットフォームに対して、クリーニング機構を移動させるステップと、が含まれる。
【0009】
以下の記載では、添付図面を参照して、吐出ヘッドからの材料の集まり、およびその他の材料片を取り除き易くするカートの前述の様態およびその他の特性を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、3次元物体プリントシステムの吐出ヘッド・クリーニングカートを示す後面斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1の吐出ヘッド・クリーニングカートを示す前面斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1の吐出ヘッド・クリーニングカートを含む3次元物体プリントシステムの制御装置、モータ、およびアクチュエータを示す概略図である。
【
図4】
図4は、吐出ヘッド・クリーニングカートが、第1の吐出ヘッドと向かい合って配置されている様子を示す、
図3の3次元物体プリントシステムの側面図である。
【
図5】
図5は、第1の吐出ヘッドが、吐出ヘッド・クリーニングカートのワイパーと屈曲材に係合している様子を示す、
図3の3次元物体プリントシステムの側面図である。
【
図6】
図6は、吐出ヘッド・クリーニングカートのワイパーが、吐出ヘッドを拭いた後、屈曲材と接触している様子を示す、
図3の3次元物体プリントシステムの側面図である。
【
図7】
図7は、吐出ヘッド・クリーニングカートのワイパーおよび屈曲材からプリントヘッドが引っ込んで離れている様子を示す、
図3の3次元物体プリントシステムの側面図である。
【
図8】
図8は、吐出ヘッド・クリーニングカートのワイパーが屈曲材から離れて移動する様子を示す、
図3の3次元物体プリントシステムの側面図である。
【
図9】
図9は、吐出ヘッド・クリーニングカートが、第2の吐出ヘッドの隣に移動する様子を示す、
図3の3次元物体プリントシステムの側面図である。
【
図10】
図10は、3次元物体プリントシステムの吐出ヘッドをクリーニングする方法を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、従来技術の3次元物体プリントシステムの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書に開示されるシステムおよび方法のための環境、およびシステムおよび方法の詳細の一般的な理解を得るために、図面を参照する。これらの図面では、同様の参照符号は、同様の要素を示す。
【0012】
図1および
図2には、3次元のプリントシステム用の吐出ヘッド・クリーニングカート100が示されている。このクリーニングカート100は、プラットフォーム104、アクチュエータすなわちモータ108(本明細書では、クリーニングカートのモータとも呼ばれる)、線形摺動112、ワイパー116、および容器120を含む。このプラットフォーム104は、6つの軸受部124A〜124Fを有し、これらの軸受部のうちの4つの軸受部124A〜124Dは、プリントシステムの第1のレール128Aと接触し、残りの2つの軸受部124Eおよび124Fは、第2のレール128Bと接触する。リニアモータ132(
図3)が、軸受部124A〜124Fを回転させて、プラットフォーム104をレール128Aおよび128Bに沿って移動させるとき、これらの軸受部124A〜124Fは、レール128Aおよび128B上のプラットフォーム104を支持するよう構成される。
【0013】
モータ108は、プラットフォーム104に固定的に取り付けられ、モータからワイパー116の方向に外側に延在する親ネジ140を含む。他の実施形態では、親ネジはモータから異なる方向に延在することができるが、
図1および
図2の実施形態では、親ネジ140は処理方向Pに延在する。ある実施形態では、モータ108は、親ネジ140を特定の間隔で回転させるよう構成されるステッピングモータである。
【0014】
この線形摺動112は、固定支持体148、摺動部材152、およびネジ付リング156を含む。固定支持体148は、プラットフォーム104に固定的に取り付けられる。摺動部材152が一方の線形方向にのみ移動可能になるように、この摺動部材152は、固定支持体148の上に摺動自在に取り付けられている。他の実施形態では、摺動部材は異なる方向に移動するよう構成されているが、
図1および
図2の実施形態では、摺動部材152は処理方向にのみ移動可能である。モータ108の起動中に親ネジ140が回転することにより、ネジ付リング156が、親ネジ140のネジ山に沿って、その線形方向に移動し、これにより、摺動部材152が、この線形方向に移動するよう、ネジ付リング156は、摺動部材152に取り付けられ、親ネジ140の周りをネジで留められている。
【0015】
ワイパー116は、ワイパー取付け部160、ワイパー部材164、およびワイパーブレード168を含む。このワイパー取付け部160は、線形摺動112の摺動部材152に固定的に取り付けられ、プラットフォーム104に対して摺動部材152が線形運動することにより、ワイパー取付け部160が線形方向に移動する。ワイパー部材164が垂直に対して任意の角度で上部方向に延在するよう、このワイパー部材164はワイパー取付け部160に取り付けられる。ある実施形態では、ワイパー部材164は、垂直に対して約45度の角度で上部の方向に延在する。ワイパーブレード168は、ワイパー取付け部160の反対側のワイパー部材164の縁に取り付けられている。ワイパーブレード168は、吐出ヘッドに押圧されるときに吐出ヘッドの形状に変形可能なように、ポリウレタンなどの変形可能なエラストラマ材料で形成されている。
【0016】
容器120は、プラットフォーム104上のワイパー116からモータ108の反対側に固定的に取り付けられ、容器トレイ176および屈曲材180を含む。容器トレイ176により、内部容積184が画定され、その中には回収された材料片が格納される。この屈曲材180は、容器トレイ176の側壁からほぼ垂直方向に延在する第1の部分188と、垂直に対して任意の角度に延在する第2の部分192と、を有する。ある実施形態では、この第2の部分は、垂直に対して約60度の角度で延在する。屈曲材180の最上部の縁196は、実質的にワイパーブレード168と同一の平面である。
図1および
図2の実施形態では、屈曲材180の最上部の縁196およびワイパーブレード168が配置される平面は、プラットフォーム104が処理方向Pに移動する水平面と平行である。
【0017】
このクリーニングカート100は、3次元物体プリントシステム200内(
図4〜
図9)で使用されるよう構成されている。このプリントシステム200は、2つの吐出ヘッド208および212を有する吐出ヘッドユニット204を含む。この吐出ヘッドユニット204は、吐出ヘッド・アクチュエータ216に動作可能に接続し、この吐出ヘッドのアクチュエータは、吐出ヘッドユニット204を垂直方向に移動させて吐出ヘッド208および212を所望の位置に配置させるよう構成される。
【0018】
プリントシステム200は、クリーニングカート100用モータ108、リニアモータ132、および吐出ヘッド・アクチュエータ216に動作可能に接続する制御装置220(
図3)を含む。制御装置220は、モータ108、リニアモータ132、および吐出ヘッド・アクチュエータ216に電気信号を送信して、モータ108および132、ならびにアクチュエータ216を操作し、これらのモータに動作可能に接続する構成要素を動かすよう構成されている。
【0019】
種々の構成要素の操作および制御、ならびにプリントシステム200の機能は、制御装置220に支援されて行われる。この制御装置220は、プログラム命令を実行する、汎用または専用のプログラマブル・プロセッサに実装される。いくつかの実施形態では、制御装置が、1つ以上の汎用または専用のプログラマブル・プロセッサを含む。プログラムされている機能を実行するために必要な命令およびデータは、制御装置に関するメモリユニット内に格納されている。制御装置220は、プロセッサ、メモリ、およびインターフェース回路により構成され、下記に記載される機能および処理を実行する。これらの構成要素は、プリント回路カード上に提供され得る、あるいは、特定用途向け集積回路(ASIC)内の回路として提供され得る。これらの回路は、それぞれ別々のプロセッサに実装され得る、または複数の回路が同じプロセッサに実装され得る。あるいは、これらの回路は、個別要素またはVLSI回路内で提供される回路に実装され得る。また、本明細書に記載される回路は、プロセッサ、ASIC、個別要素、またはVLSI回路の組み合わせで実装することも可能である。
【0020】
図10には、3次元物体プリントシステム内の吐出ヘッドをクリーニングする方法300が示されている。上記に説明したプリントシステム200およびクリーニングカート100を参照して、本明細書の方法300を説明し、実例として
図1〜
図9に示す。
【0021】
図4に示す通り、制御装置220がリニアモータ132を操作して、処理方向Pへ吐出ヘッド208と向かい合う位置までクリーニングカート100を移動させることにより方法300が開始される(ブロック304)。次に、
図5に示す通り、制御装置220は吐出ヘッド・アクチュエータ216を操作して、吐出ヘッド204の表面がワイパーブレード168および屈曲材180の縁196と接触するまで、吐出ヘッドユニット204を移動させる(ブロック308)。次いで、制御装置220はクリーニングカート用モータ108を操作して、親ネジ140を回転させ、ネジ付リング156、摺動部152、およびワイパー116をクリーニングカート100のプラットフォーム104に対して処理方向Pに移動させる(ブロック312)。ワイパーブレード168が
図6で示される位置まで移動する際、このワイパーブレード168は、吐出ヘッド208の表面を横切って移動し、吐出ヘッド168から材料片を拭き取る。材料片の固体粒子は、ワイパーブレード168により拭き取られ、吐出ヘッド208から容器トレイ176内に落ちる、あるいは、吐出ヘッド208上の液体に溶け込む。次いで、吐出ヘッド208上の液体は、屈曲材180上に拭き取られ、この屈曲材180の毛管作用により、液体および溶け込んだ粒子が屈曲材180から容器トレイ176に降ろされる。
【0022】
吐出ヘッド208の表面が拭き取られた後、制御装置220は吐出ヘッド・アクチュエータ216を操作して、この吐出ヘッドユニット204を、ワイパーブレード168および屈曲シュータ180から離し、
図7に示す位置に移動させる(ブロック316)。
図8に示す通り、制御装置220はクリーニングカート用モータ108を操作して、ワイパー116を処理方向と逆方向に移動させて、屈曲材180から離して最初の位置に戻す(ブロック320)。制御装置220は、次の吐出ヘッドをクリーニングするべきかどうか判定する(ブロック324)。次の吐出ヘッド(例えば、
図9に示される吐出ヘッド212)をクリーニングする場合、ブロック304で、リニアモータ132を操作して、クリーニングカート100を次の吐出ヘッド(
図9)の向かい側に移動させることにより、この処理は継続される。クリーニングする吐出ヘッドがこれ以上存在しない場合、この処理を終了させる(ブロック328)。