特許第6487410号(P6487410)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6487410プロスタグランジンアミドの新規製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6487410
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】プロスタグランジンアミドの新規製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 405/00 20060101AFI20190311BHJP
【FI】
   C07C405/00 503U
【請求項の数】9
【外国語出願】
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2016-234693(P2016-234693)
(22)【出願日】2016年12月2日
(62)【分割の表示】特願2014-513258(P2014-513258)の分割
【原出願日】2012年5月25日
(65)【公開番号】特開2017-61555(P2017-61555A)
(43)【公開日】2017年3月30日
【審査請求日】2016年12月2日
(31)【優先権主張番号】P1100291
(32)【優先日】2011年6月2日
(33)【優先権主張国】HU
(31)【優先権主張番号】P1100292
(32)【優先日】2011年6月2日
(33)【優先権主張国】HU
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513302259
【氏名又は名称】キノイン・ゼー・エル・テー
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ハバシ,ガボール
(72)【発明者】
【氏名】キツシユ,テイボル
(72)【発明者】
【氏名】ホルトバージ,イレーン
(72)【発明者】
【氏名】カルドシユ,ジユジヤンナ
(72)【発明者】
【氏名】ラースローフイ,イシユトバーン
(72)【発明者】
【氏名】ビシユコフ,ゾルターン
(72)【発明者】
【氏名】ボーデイシユ,アーダーム
【審査官】 高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0163596(US,A1)
【文献】 国際公開第2009/153206(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0209337(US,A1)
【文献】 特表2004−529973(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/096123(WO,A1)
【文献】 平山令明,有機化合物結晶作製ハンドブック,2008年,p.17-23,37-40,45-51,57-65
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 51/43
C07C 59/54
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(IIB)
【化1】
の化合物を含有する混合物に酢酸イソプロピルのエステル系溶媒と、ジエチルエーテル及びジイソプロピルエーテルのエーテル系溶媒の混液を加えることを特徴とする式(IIB)の化合物の結晶形態の製造方法。
【請求項2】
−30℃〜30℃で溶媒の混液を加えることを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項3】
0〜25℃で溶媒の混液を加えることを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項4】
溶媒の混液を加えた後に得られた結晶懸濁液を1〜24時間撹拌することを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項5】
溶媒の混液を加えた後に得られた結晶懸濁液を8時間撹拌することを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項6】
溶媒の混液を加えた後に得られた結晶懸濁液を濾過し、エーテル系溶媒で洗浄することを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項7】
溶媒の混液を加えた後に得られた結晶懸濁液を濾過し、ジイソプロピルエーテルで洗浄することを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項8】
濾過した結晶を25〜50℃で減圧乾燥することを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項9】
濾過した結晶を35〜40℃で減圧乾燥することを特徴とする請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は一般式(I)のプロスタグランジンアミドの製造方法である。
【0002】
一般式(I):
【0003】
【化1】
の化合物において、置換基の意味は以下の通りである。
破線で示す結合は単結合でも二重結合でもよく、5,6位及び13,14位が二重結合の場合には、シス型配座でもトランス型配座でもよく、
Qはヒドロキシル基を表し、Zはヒドロキシル基又はオキソ基を表し、
及びRは独立して水素原子、又は場合により−ONO基で置換された直鎖状もしくは分岐鎖状C1−10アルキル基もしくはアラルキル基、又はヘテロ原子を含むアラルキル基もしくはアリール基を表し、
は直鎖状もしくは分岐鎖状飽和もしくは不飽和C4−6炭化水素基、又はC4−10アルキルシクロアルキル基もしくはシクロアルキル基、又は場合によりアルキル基もしくはハロゲン原子で置換されたフェニル基、C7−10アルキルアリール基もしくはヘテロアリール基を表し、
Yは(CH基又はO原子又はS原子を表し、
n=0〜3である。
【背景技術】
【0004】
プロスタグランジンアミド誘導体を経済的に製造するためには、適切な置換基をもつプロスタン酸を活性化させる必要がある。
【0005】
現在の最新技術によると、カルボン酸をその混合酸無水物、活性化エステル又は活性化アミドに転化させて活性化させた後、これらの化合物を適切なアミンと反応させることにより目的とするプロスタグランジンアミド誘導体に更に転化させることができる。
【0006】
上記経路のうち、化学的感受性の高いプロスタグランジン酸をエステル形成により活性化させる方法は例えばEP0660716に記載されている。
【0007】
この方法によると、ハロゲン化アルキルを用いて出発材料のエステルを形成した後、アミド官能基を付与するのに適したアミンと前記エステルを反応させる。
【0008】
ハロゲン化アルキルは遺伝毒性物質であることが分かっているため、この方法には、合成の最後の最終工程でハロゲン化アルキルの使用を避ける必要があるという欠点がある。
【0009】
更に、得られたエステルを高温で適切なアミンにより長時間処理する必要があり、転化
率が50%を越えることは稀である(EP0660716、第42頁、実施例12)。周知の通り、プロスタグランジンは感温性であるため、高温処理はこうして得られるプロスタグランジン誘導体の不純物プロファイルと収率に悪影響を与える。
【0010】
混合酸無水物の製造及び適切な置換基をもつアミンとのその反応はWO9153206に実証されている。
【0011】
この方法の欠点は、混合酸無水物の製造に使用される活性アルキル化剤であるハロゲン化ギ酸エステル、塩化ピバロイル等が遺伝毒性化合物であることが分かっているという点である。
【0012】
WO2005058812(第23頁)に記載されている方法では、活性化剤である1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−カルボジイミド塩酸塩(EDC HCl)とエチルアミンを使用することにより出発材料であるカルボン酸をエチルアミドに直接転化させている。アミド化反応中に、11位と15位のヒドロキシル基をテトラヒドロピラン(THP)保護基で保護した後に脱離させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0660716号明細書
【特許文献2】国際公開第2009153206号
【特許文献3】国際公開第2005058812号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明者らは本発明の新規活性化エステルと新規活性化アミドを介して一般式(I)の化合物を温和な反応条件下に高収率及び高純度で製造できることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一般式(I)の化合物は一般式(II):
【0016】
【化2】
[式中、
破線で示す結合は単結合でも二重結合でもよく、5,6位及び13,14位が二重結合の場合には、シス型配座でもトランス型配座でもよく、
Qはヒドロキシル基を表し、Zはヒドロキシル基又はオキソ基を表し、
は直鎖状もしくは分岐鎖状飽和もしくは不飽和C4−6炭化水素基、又はC4−10アルキルシクロアルキル基もしくはシクロアルキル基、又は場合によりアルキル基もしくはハロゲン原子で置換されたフェニル基、C7−10アルキルアリール基もしくはヘテロアリール基を表し、
Yは(CH基又はO原子又はS原子を表し、
n=0〜3である。]の酸を、
i)R基[なお、Rは式a):
【0017】
【化3】
の基を表す。]を導入するのに適した化合物と反応させ、こうして得られた一般式(III):
【0018】
【化4】
(式中、Q、Z、R、R、Y及びnの意味は上記に定義した通りである。)のアミドを一般式(IV):
NHR IV
(式中、R及びRの意味は上記に定義した通りである。)のアミンと反応させるか、あるいは、
ii)R基[なお、Rは式b)、c)、d)又はe):
【0019】
【化5】
の基を表し、上記式中、Xはハロゲン原子又は水素原子を表す。]を導入するのに適した化合物と反応させ、こうして得られた一般式(V):
【0020】
【化6】
(式中、Q、Z、R、R、Y及びnの意味は上記に定義した通りである。)の活性化エステルを一般式(IV)(式中、R及びRの意味は上記に定義した通りである。)のアミンと反応させることにより製造することができる。
【0021】
本発明者らは更に2−クロロ−1,3−ジメチルイミダゾリニウムクロリドと塩基の存在下で一般式(II)の化合物を一般式(IV)(式中、各置換基の意味は上記に定義した通りである。)の化合物と反応させても本発明の一般式(I)の化合物を製造できることを見出した(手法iii)。
【0022】
一般式(III)及び(V)の中間体は新規化合物である。
【0023】
基を導入するのに適した化合物としては、1,1’−カルボニルジイミダゾール(DCI)又は1,1’−チオカルボニルジイミダゾールが好ましく、R基を導入するためには、場合により活性化剤の存在下でN−ヒドロキシスクシンイミド、N−ヒドロキシフタルイミド、N−ヒドロキシ−5−ノルベン−エンド−2,3−ジカルボキサミド、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、(ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、炭酸N,N’−ジスクシンイミジル(DSC)又は蓚酸N,N’−ジスクシンイミジル、特に炭酸N,N’−ジスクシンイミジルを利用すればよい。
【0024】
活性化剤としては、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド又は2−クロロ−1,3−ジメチルイミダゾリニウムクロリド、好ましくはN,N’−ジイソプロピルカルボジイミドを利用すればよい。
【0025】
本発明の手法i)の過程では、エーテル系溶媒又は芳香族溶媒又は極性非プロトン性溶媒又はその混液中でR基を導入することができ、例えばジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、2−メチルテトラヒドロフラン、トルエン、アニソール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、特にテトラヒドロフランを使用する。得られた一般式(III)の活性化アミドを単離後、又は単離せずに一般式(IV)のアミンと反応させる。
【0026】
基の導入時の反応温度は20〜80℃、好ましくは70℃とし、式(III)の化合物と式(IV)の化合物の反応は20〜80℃、好ましくは室温で実施する。
【0027】
本発明の手法ii)の過程では、エーテル系溶媒又は芳香族溶媒又は極性非プロトン性溶媒又はその混液中でR基の導入を実施し、例えばジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、2−メチルテトラヒドロフラン、トルエン、アニソール、ジメ
チルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、特にテトラヒドロフランを使用する。得られた一般式(V)の活性化エステルを単離後、又は単離せずに一般式(IV)のアミンと反応させる。
【0028】
基の導入時の反応温度は0〜80℃、好ましくは室温とし、式(V)の化合物と式(IV)の化合物の反応は20〜80℃、好ましくは室温で実施する。
【0029】
本発明の手法iii)の過程では、エーテル系溶媒又は芳香族溶媒又は極性非プロトン性溶媒又はその混液中で反応を実施し、例えばジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、2−メチルテトラヒドロフラン、トルエン、アニソール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン又はテトラヒドロフランを使用する。塩基としては、ピリジン、N−メチルモルホリン、ジイソプロピルエチルアミン、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノン−5−エン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデク−7−エン又はトリエチルアミン等の通常利用される塩基を利用すればよい。
【0030】
反応は、一般式(II)の化合物の有機溶媒溶液に0〜70℃、好ましくは30℃で一般式(IV)の化合物と2−クロロ−1,3−ジメチルイミダゾリニウムクロリドと2モル当量の塩基を加えるといった方法により、0〜70℃の温度で実施する。混合物を先ずこの温度で撹拌した後、出発材料がなくなるまで徐々に加熱する。反応をTLCによりモニターする。
【0031】
手法i、ii又はiiiは「ワンポット」条件下で実施してもよい。
【0032】
一般式(IV)のアミンとしては、最終化合物に適したアミンを使用すればよく、ビマトプロストの場合にはエチルアミンを使用すればよい。
【0033】
一般式(IA):
【0034】
【化7】
(式中、R、R、R、Y及びnの意味は上記に定義した通りである。)の化合物を製造するためには、本発明の一般式(IIA)の化合物を出発材料として使用する。
【0035】
一般式(IIA):
【0036】
【化8】
[式中、
は直鎖状もしくは分岐鎖状飽和もしくは不飽和C4−6炭化水素基、又はC4−10アルキルシクロアルキル基もしくはシクロアルキル基、又は場合によりアルキル基もしくはハロゲン原子で置換されたフェニル基、C7−10アルキルアリール基もしくはヘテロアリール基を表し、
Yは(CH基又はO原子又はS原子を表し、
n=0〜3である。]の化合物は、本発明に従い、一般式(XII):
【0037】
【化9】
(式中、R、Y及びnの意味は上記に定義した通りである。)のラクトンジオールを還元し、一般式(XIII):
【0038】
【化10】
(式中、R、Y及びnの意味は上記に定義した通りである。)のラクトントリオールとし、式(XIII)の化合物の保護基を除去し、こうして得られた一般式(XIV):
【0039】
【化11】
(式中、R、Y及びnの意味は上記に定義した通りである。)の化合物をウィッティヒ反応により一般式(IIA)の化合物に転化させることにより製造すればよい。
【0040】
一般式(XII)の化合物の還元は例えばテトラヒドロフラン溶媒中で水素化ジイソブチルアルミニウムを使用して公知方法により実施すればよい。保護基は酸性又はアルカリ性溶媒中、好ましくはアルカリ性溶媒中で公知方法により除去することができる。
【0041】
一般式(XIII):
【0042】
【化12】
[式中、Rは直鎖状もしくは分岐鎖状飽和もしくは不飽和C4−6炭化水素基、又はC4−10アルキルシクロアルキル基もしくはシクロアルキル基、又は場合によりアルキル基もしくはハロゲン原子で置換されたフェニル基、C7−10アルキルアリール基もしくはヘテロアリール基を表し、
Yは(CH基又はO原子又はS原子を表し、n=0〜3である。]のラクトールトリオール誘導体は新規化合物である。
【0043】
本発明の別の実施形態によると、Rがフェニル基を表し、Yが−(CH)−基を表す一般式IIAの特定化合物である式(IIB):
【0044】
【化13】
の化合物を結晶形態で製造することもできる。
【0045】
結晶形態の式(IIB)の化合物は新規である。
【0046】
式(IIB)の化合物は式(IIB)の化合物を含有する混合物にエステル系溶媒とエーテル系溶媒の混液を加えるといった方法により、結晶形態で製造することができる。
【0047】
この方法によると、エーテル系溶媒としてはジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、好ましくはジエチルエーテル及びジイソプロピルエーテルを使用し、エステル系溶媒としては酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸イソプロピル、好ましくは酢酸イソプロピルを使用する。
【0048】
結晶化は−30℃〜30℃、好ましくは0〜25℃で実施する。
【0049】
こうして得られた結晶懸濁液を1〜24時間、好ましくは8時間撹拌後、濾過し、エーテル系溶媒、好ましくはジイソプロピルエーテルで洗浄する。
【0050】
濾過した結晶を25〜50℃、好ましくは35〜40℃で減圧乾燥する。
【0051】
一般式(II)及び(XII)の化合物は例えばUS5359095、WO93/00329に記載されているような公知方法により製造すればよい。
【発明の効果】
【0052】
本発明の方法の利点は目的とする最終生成物としてビマトプロストが所望される場合に結晶質ビマトプロスト酸を介して合成できるという点にある。本発明の方法の他の利点は所望により単離することもできるし、所望により結晶化又はクロマトグラフィーにより精製することもできる新規中間体、結晶質活性化エステル又はアミドを介して目的とする最終生成物を合成するという点にある。カルボン酸活性化剤(例えばDSC、DCI)を利用するので、9位、11位及び15位の2級ヒドロキシル基の保護が不要であり、活性化エステル又は活性化アミドの場合でも、最終アミド形成条件下でも、並発反応(例えば二量体形成)は認められず、本発明の活性化カルボン酸誘導体は高収率と高純度で容易に単離された。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】実施例1aのラクトールトリオールのIRスペクトルを示す。
図2】実施例1/c1のビマトプロスト酸のIRスペクトルを示す。
図3】実施例14/aの形態IのIRスペクトルを示す。
図4】実施例10の形態IIのIRスペクトルを示す。
図5】実施例14/aの形態IのDSC曲線を示す。
図6】実施例10の形態IIのDSC曲線を示す。
図7】実施例14/aの形態IのX線回折曲線を示す。
図8】実施例10の形態IIのX線回折曲線を示す。
図9】実施例1/c2のビマトプロスト酸のX線回折曲線を示す。
図10】実施例1/c2のビマトプロスト酸のDSC曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0054】
驚くべきことに、本発明の結晶質活性化カルボン酸誘導体は不純物を除去するために結晶化工程により容易に精製できると共に、温和な反応条件下に高収率で目的とするアミド最終生成物に簡単に転化できることが判明した。
【0055】
医薬品有効成分(API)の場合には不純物濃度が重要な問題となり、ビマトプロストの場合には全未知不純物の量を0.1%未満まで下げる必要があることは周知である。本発明の方法によると、この非常に厳しい規制を遵守するために、WO09153206に記載されている高価な分取HPLC分離法の代わりにビマトプロスト酸の結晶化と活性カルボン酸誘導体の結晶化を使用した。
【0056】
本発明の他の実施形態は式(IB):
【0057】
【化14】
の高融点結晶形態IIのビマトプロストの製造方法である。
【0058】
本発明の方法によると、化学的及び熱力学的に安定であり、他の結晶形態を含まない高融点結晶形態IIのビマトプロストを製造することができる。
【0059】
以下の特許出願、即ちUS2005/0209337A1、WO2009/153206A2、US2009/0163596A1はビマトプロスト生成物の結晶化について記載している。
【0060】
US2005/0209337A1の実施例30では、高融点結晶形態のビマトプロスト(DSCピーク読取値79℃)(以下、結晶形態IIと言う)をそのX線回折、KBr錠剤におけるそのIRスペクトル、並びにそのDSC曲線及びTGA曲線により特徴付けている。
【0061】
WO2009/153206は分取HPLC後に結晶化させることによるビマトプロスト生成物の精製について記載している。結晶化はアセトニトリル溶媒から又は溶解溶媒としてのアセトニトリルと析出溶媒としてのTBME(tert−ブチルメチルエーテル)から実施される。同文献の記載によると、この方法により高融点結晶形態のビマトプロスト(DSCピーク読取値79℃)を製造することができる。しかし、本発明者らがこの方
法を追試した処、高融点結晶形態のビマトプロストを得ることはできなかった。
【0062】
US2009/0163596は結晶形態Iのビマトプロストとその製造について開示している。結晶形態Iのビマトプロストをその融点(62〜64℃)、DSC、X線回折及びIR解析により特徴付けている。同文献は(沸点付近の温度の有機溶媒中又は溶解用と析出用の有機溶媒混液中の)溶解工程、冷却工程、析出した結晶を母液から分離する工程及び(低温減圧下の)乾燥工程等の結晶化工程について詳細に記載している。しかし、US2009/0163596に記載されている方法により高融点結晶形態(DSCピーク読取値79℃)のビマトプロストを製造することはできない。
【0063】
本発明の方法によると、化学的及び熱力学的に安定であり、結晶形態Iを含まない高融点結晶形態IIのビマトプロスト(=高融点結晶形態(DSCピーク読取値79℃))を製造することができる。形態IIはその融点(72〜78℃)、DSC解析並びにIR及びX線粉末回折試験により特徴付けられる。
【0064】
前記方法の最も重要な点は、プロトン性溶媒又はエーテル系溶媒からの結晶化を介して、ワークアップと蒸発後のビマトプロストを含有する反応混合物から、又は任意結晶形態もしくは非結晶形態のビマトプロストもしくは任意比のその混合物から熱力学的に安定した純粋な形態IIを製造する点にある。結晶化工程では、油性又は結晶質粗製ビマトプロストに計算量の溶媒を加えた後、乾燥し、周期的に機械的作用を加える。
【0065】
上記の通り、本発明はワークアップと蒸発後のビマトプロストを含有する反応混合物、又は任意結晶形態もしくは非結晶形態のビマトプロストもしくは任意比のその混合物に計算量のエーテル系溶媒又はプロトン性溶媒を加え、得られた混合物に所望により機械的作用を加えた後、乾燥及びホモジナイズすることを特徴とする式(IB)の形態IIのビマトプロストの製造方法に関する。
【0066】
上記方法で得られた結晶形態IIの融点は72〜78℃であり、DSC解析による吸熱ピークは73〜79℃であり、融解熱は75J/gを上回る。
【0067】
図VI、VIII及びIVは夫々本発明の方法で得られた結晶形態IIのDSC曲線、X線粉末回折曲線及びIRスペクトルを示す。
【0068】
図V、VII及びIIIは夫々結晶形態IのDSC曲線、X線粉末回折曲線及びIRスペクトルを示す。
【0069】
本発明の方法では、計算量、有利には20〜60質量%、好ましくは35質量%の量のプロトン性溶媒、特にメタノール、エタノール等のアルコール類及び/又は水を使用する。プロトン性溶媒として水を使用することが好ましい。
【0070】
機械的作用としては、撹拌又は擦る又はその両方を利用する。加えた溶媒を乾燥により除去する。乾燥は−60℃〜70℃、特に35℃の温度で減圧下に実施する。
【0071】
エーテル系溶媒として、本発明では計算量、好ましくは2000〜8000質量%の量のジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、好ましくはジエチルエーテルを利用する。加えた溶媒を乾燥により除去する。乾燥は低温、好ましくは0〜−50℃で窒素ガスを通じることにより実施する。
【0072】
以下の分析計器を使用して生成物の同定を行った。
【0073】
NMRスペクトルはBruker−Avance III−500MHz計器により記録し、DSC曲線はMettler−Toledo DSC 1/700計器により記録し、IRスペクトルはPerkin−Elmer Spektrum 400 FT−IR分光光度計により記録し、MSスペクトルはShimadzu LC−MS−IT−TOF計器により記録した。融点はBuchi Melting Point B−545装置により測定した。
【0074】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0075】
1.出発材料の製造
a)[1,1’−ビフェニル]−4−カルボン酸((3aR,4R,5R,6aS)−ヘキサヒドロ−4−[(1E,3S)−3−ヒドロキシ−5−フェニル−1−ペンテン−1−イル]−2−ヒドロキシ−2H−シクロペンタ[b]フラン−5−イル)エステル(PPB−ラクトールトリオール)の製造
−65〜−85℃のテトラヒドロフラン(THF)溶媒1000ml中で下式:
【0076】
【化15】
の[1,1’−ビフェニル]−4−カルボン酸((3aR,4R,5R,6aS)−ヘキサヒドロ−4−[(1E,3S)−3−ヒドロキシ−5−フェニル−1−ペンテン−1−イル]−2−オキソ−2H−シクロペンタ[b]フラン−5−イル)エステル(PPB−ラクトンジオール)55gのラクトン基を水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL−H)のヘキサン溶液422mlにより還元した。反応混合物をNaHSO溶液でクエンチし、水相を酢酸エチルで抽出し、有機相をNaHCO溶液で洗浄し、40〜50℃にて溶媒を除去した。粗生成物を蒸発させ、油状物46.2gを得た。
【0077】
得られたPPB−ラクトールトリオールの構造式:
【0078】
【化16】
【0079】
粗製油状物からtert−ブチルメチルエーテル(TBME)とヘキサンの混液中で結晶化後に白色結晶41.6gを得た。
融点:91.1〜91.7℃。
【0080】
実施例1aのラクトールトリオールのIRスペクトルを図Iに示す。
【0081】
13C及びH NMRデータ:
【0082】
【化17】
【0083】
【表1】
【0084】
b)(3aR,4R,5R,6aS)−ヘキサヒドロ−4−[(1E,3S)−3−ヒドロキシ−5−フェニル−1−ペンテン−1−イル]−2H−シクロペンタ[b]フラン−2,5−ジオール(ラクトールトリオール)の製造:
[1,1’−ビフェニル]−4−カルボン酸((3aR,4R,5R,6aS)−ヘキサヒドロ−4−[(1E,3S)−3−ヒドロキシ−5−フェニル−1−ペンテン−1−イル]−2−ヒドロキシ−2H−シクロペンタ[b]フラン−5−イル)エステル(PPB−ラクトールトリオール)の油状物46.2gをメタノール230mlに溶解し、KCO6.6gの添加後、35〜45℃にて脱アシル化した。−5〜0℃にて0.5Mリン酸溶液を加えて反応混合物のpHを7〜8に調整した。析出した結晶を濾別し、メタノールと水の混液で洗浄した。母液を蒸発させ、酢酸エチルで抽出し、有機相をNaSOで乾燥し、乾燥剤を濾別し、ヘキサンを加えて生成物を結晶化させた。白色結晶生成物26gを得た。
【0085】
生成物の構造式:
【0086】
【化18】
融点:98〜103℃。
【0087】
13C及びH NMRデータ:
【0088】
【化19】
【表2】
【0089】
c)7−[(1R,2R,3R,5S)−3,5−ジヒドロキシ−2−[(1E,3S
)−3−ヒドロキシ−5−フェニル−1−ペンテン−1−イル]シクロペンチル]−5−ヘプテン酸((5Z)−ビマトプロスト酸)の製造:
c1)4−カルボキシブチルホスホニウムブロミド(KBFBr)108gをTHF800mlに溶解し、この溶液を0〜−5℃まで冷却した。この溶液に先ずカリウムtert−ブチレート(KOtBu)91gを加えた後、撹拌し、−10〜−15℃まで冷却後、ラクトールトリオール25gのTHF溶液を加えた。予想転化率に達したら、反応混合物を水でクエンチした後、EtOAcを加えた。水相をEtOAcで洗浄した。水層をNaHSO溶液でpH=2まで酸性化し、EtOAcで抽出した。有機相を合わせて15%NaCl溶液で洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過し、蒸発させた。残渣を酢酸エチルとジイソプロピルエーテルの混液から結晶化させた。結晶を濾別し、洗浄し、濾液を蒸発させた。ジイソプロピルエーテル−アセトンを溶離液とし、得られた黄色い油状物をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、油状物25.5gを得た。
【0090】
得られたビマトプロスト酸のIRスペクトルを図IIに示す。
【0091】
c2)実施例1/c1で得られた生成物を酢酸イソプロピル60mlに溶解し、これに撹拌下にジエチルエーテル40mlを加えた。少量のビマトプロスト酸種晶を反応混合物に加えた。撹拌下に0℃まで徐々に冷却し、これにジイソプロピルエーテル約60mlを加えた。懸濁液をこの温度にて一晩撹拌後、濾過し、ジイソプロピルエーテルで洗浄し、減圧乾燥した。結晶質ビマトプロスト酸20.4gを得た。
【0092】
得られたビマトプロスト酸のDSC曲線を図Xに示し、X線粉末回折曲線を図IXに示す。
【0093】
生成物の構造式:
【0094】
【化20】
融点:63.0〜65.5℃。
【0095】
13C及びH NMRデータ:
【0096】
【化21】
【0097】
【表3】
【0098】
2.7−[3,5−ジヒドロキシ−2−(3−ヒドロキシ−5−フェニルペント−1−エニル)シクロペンチル]−5−ヘプテン酸(2,5−ジオキソピロリジン−1−イル)エステル(活性化エステル)の製造
実施例1/c2のビマトプロスト酸27.5gをTHF270mlに溶解し、これに室温にてN,N’−ジイソプロピルカルボジイミド13.7gを加えた後、N−ヒドロキシスクシンイミド13.7gを加えた。混合物をこの温度にて撹拌後、1N NaHSO溶液とtert−ブチルメチルエーテル(TBME)の混液に注いだ。相分離した。有機相を1N NaHCO溶液で洗浄し、アルカリ水相をTBMEで抽出した。有機相を合わせてNaSOで乾燥し、濾過し、蒸発させた。残渣をヘキサンとアセトンの混液から結晶化させ、白色結晶生成物30.04gを得た。
【0099】
生成物:
【0100】
【化22】
融点:93.5〜103.4℃。
【0101】
3)実施例1/c1のビマトプロスト酸27.5gをTHF270mlに溶解し、この溶液に室温にて炭酸カリウム11.5gと炭酸N,N’−ジスクシンイミジル19.6gを加えた。反応混合物を撹拌下に60℃まで徐々に加熱した後、1N NaHSO溶液とtert−ブチルメチルエーテル(TBME)の混液に注いだ。相分離し、有機相を1N NaHCO溶液で洗浄し、アルカリ水相をTBMEで抽出した。有機相を合わせてNaSOで乾燥し、濾過し、蒸発させた。残渣をヘキサンとアセトンの混液から結晶化させ、白色結晶生成物30.9gを得た。
【0102】
生成物:
【0103】
【化23】
融点:93.5〜103.4℃。
【0104】
13C及びH NMRデータ:
【0105】
【化24】
【0106】
【表4】
【0107】
4)7−[3,5−ジヒドロキシ−2−(3−ヒドロキシ−5−フェニルペント−1−エニル)シクロペンチル]−5−ヘプテン酸1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロイソインドール−2−イルエステル(活性化エステル)の製造
ビマトプロスト酸2gをTHF20mlに溶解し、この溶液に室温にてN−ヒドロキシフタルイミド1gとN,N’−ジイソプロピルカルボジイミド1mlを加えた。反応混合物を2時間撹拌後、1N NaHSO溶液とtert−ブチルメチルエーテル(TBME)の混液に注いだ。相分離し、有機相を1N NaHCO溶液で洗浄し、アルカリ水相をTBMEで抽出した。有機相を合わせてNaSOで乾燥し、濾過し、蒸発させた。残渣をヘキサンとアセトンの混液から結晶化させ、白色結晶生成物1.5gを得た。
【0108】
生成物:
【0109】
【化25】
融点:83.2〜84.5℃。
【0110】
13C及びH NMRデータ:
【0111】
【化26】
【0112】
【表5】
【0113】
5)活性化エステルを介する7−[(1R,2R,3R,5S)−3,5−ジヒドロキシ−2−[(1E,3S)−3−ヒドロキシ−5−フェニル−1−ペンテニル]シクロペンチル]−N−エチル−5−ヘプテンアミド((5Z)−ビマトプロスト)の製造
ビマトプロスト酸27.5gをTHF270mlに溶解し、この溶液に室温にてN,N’−ジイソプロピルカルボジイミド13.7gを加えた後、N−ヒドロキシスクシンイミド13.7gを加えた。混合物を室温で撹拌した。得られた活性化エステルを単離しなかった。
【0114】
【化27】
【0115】
エステル形成の完了後、エチルアミンの2M THF溶液70mlを反応混合物に加えた。予想転化率に達するまで混合物を撹拌後、1N NaHSO溶液とtert−ブチルメチルエーテル(TBME)の混液に注いだ。相分離し、有機相を1N NaHCO溶液で洗浄し、アルカリ水相をTBMEで抽出した。有機相を合わせてNaSOで乾燥し、濾過し、蒸発させ、油状物25.4gを得た。
【0116】
生成物:
【0117】
【化28】
【0118】
13C及びH NMRデータ:
【化29】
【0119】
【表6】
【0120】
MSデータ
MSスペクトル:
正イオン化:
【0121】
【表7】
【0122】
予想される式:
2537NO
厳密な質量測定値:438.2648[M+Na]+
厳密な質量予想値:438.2615[M+Na]+
ΔM=3.3mDa及び7.53ppm。
2535NO(M−HO)
厳密な質量測定値:398.2655[M−HO+H]+
厳密な質量予想値:398.2690[M−HO+H]+
ΔM=−3.5mDa及び8.79ppm。
【0123】
MSMS(前駆体イオン:438.26):
【0124】
【表8】
【0125】
予想される式:
2535NO(M−HO)
厳密な質量測定値:420.2520[M−HO+Na]+
厳密な質量予想値:420.2509[M−HO+Na]+
ΔM=1.1mDa及び2.62ppm。
2532NO(M−HO−5H)
厳密な質量測定値:394.2366[M−HO−5H]+
厳密な質量予想値:394.2377[M−HO−5H]+
ΔM=−1.1mDa及び2.79ppm。
2530NO(M−2xHO−5H)
厳密な質量測定値:376.2258[M−2xHO−5H]+
厳密な質量予想値:376.2271[M−2xHO−5H]+
ΔM=−1.3mDa及び3.46ppm。
【0126】
6)活性化エステルを介するビマトプロストの製造
ビマトプロスト酸27.5gをTHF270mlに溶解し、この溶液に室温にて炭酸カリウム11.5gと炭酸N,N’−ジスクシンイミジル19.6gを加えた。反応混合物を撹拌下に60℃まで徐々に加熱した。得られた活性化エステルを単離しなかった。
【0127】
【化30】
【0128】
活性化エステルの形成後、エチルアミンの2M THF溶液70mlを反応混合物に加えた。反応が完了したら、混合物を1N NaHSO溶液とEtOAcの混液に注いだ。有機相を1N NaHCO溶液で洗浄し、アルカリ水相をEtOAcで抽出した。有機相を合わせてNaCl溶液で洗浄し、NaSOで乾燥した。乾燥剤を濾別し、濾液を蒸発させ、油状物25.7gを得た。
【0129】
生成物:
【0130】
【化31】
【0131】
7)活性化アミドを介するビマトプロストの製造
ビマトプロスト酸27.5gをピリジン270mlに溶解し、これに1,1’−カルボニルジイミダゾール13.7gを加えた。活性化アミド形成が生じるまで混合物を20〜25℃にて撹拌した。得られた活性化アミドを単離しなかった。
【0132】
【化32】
【0133】
エチルアミンの2M THF溶液70mlを室温にて反応混合物に加え、予想転化率に達するまで混合物を撹拌した。次に混合物を1N NaHSO溶液とtert−ブチルメチルエーテル(TBME)の混液に注いだ。相分離し、有機相を1N NaHCO溶液で洗浄し、アルカリ水相をTBMEで抽出した。有機相を合わせてNaSOで乾燥し、濾過し、濾液を蒸発させ、油状物23.82gを得た。
【0134】
生成物:
【0135】
【化33】
【0136】
8)精製活性化エステルからのビマトプロストの製造
実施例3の活性化エステル30.9gをTHF270mlに溶解し、この溶液にエチルアミンの2M THF溶液70mlを加えた。反応の完了後、混合物を1N NaHSO溶液とEtOAcの混液に注いだ。有機相を1N NaHCO溶液で洗浄した。アルカリ水相をEtOAcで抽出した。有機相を合わせてNaCl溶液で洗浄し、NaSOで乾燥した。乾燥剤を濾別し、濾液を蒸発させた。得られた油状物に35質量%の水を加え、生成物を結晶化させた。99.5%を上回る純度の白色ビマトプロスト結晶24.8gを得た。
【0137】
生成物:
【0138】
【化34】
融点:71.9〜72.5℃。
HPLC:ビマトプロスト99.6%、トランス体ビマトプロスト0.3%未満、他の不純物0.1%。
【0139】
9)手法iii)によるビマトプロストの製造
ビマトプロスト酸2.00gをテトラヒドロフラン(THF)20mlに溶解し、30℃にて先ず2−クロロ−1,3−ジメチルイミダゾリニウムクロリド(DMC)1.29gとトリエチルアミン1.44mlを加えた後、10分間撹拌後にエチルアミンの2M THF溶液2.57mlを加えた。反応混合物を1時間かけて70℃まで徐々に加熱し、出発材料がなくなるまで(約1時間)混合物をこの温度で撹拌した。反応をTLCによりモニターした。
【0140】
反応の完了後、混合物を1N NaHSO溶液と酢酸イソプロピル(iPrOAc)の混液に注いだ。有機相を1N NaHCO溶液で洗浄し、アルカリ水相をiPrOAcで抽出した。有機相を合わせてNaCl溶液で洗浄し、NaSOで乾燥した。乾燥剤を濾別し、濾液を蒸発させ、油状物1.41gを得た。
【0141】
生成物:
【0142】
【化35】
【0143】
10)粗製ビマトプロスト油状物から結晶形態IIのビマトプロストの製造
実施例6に従って製造したビマトプロスト油状物に35質量%の量の精製水を加えた。混合物を強く撹拌後、2時間おきに撹拌及び擦りながら最高温度35℃にて減圧乾燥した。完全に乾燥後、混合物をホモジナイズした。この生成物のIRスペクトルを図IVに示し、この生成物のDSC曲線を図VIに示す。生成された形態IIのX線回折曲線を図VIIIに示す。
収率:96.9%
Mp.:78℃
DSC開始温度:73.56℃。
【0144】
11)結晶形態IIのビマトプロストの製造
実施例5に従って製造した粗製ビマトプロストを加熱下に3000倍量のジエチルエーテルに溶解した。次に窒素ガスを緩やかに通じることにより、−20〜−30℃にて溶媒を除去した。得られた結晶をホモジナイズするか、又は先ず機械的作用を加えた後にホモジナイズした。
収率:94.4%
Mp.:75.9℃
DSC開始温度:72.92℃。
【0145】
12)結晶形態IIのビマトプロストの製造
実施例6に従って製造した粗製ビマトプロストに35質量%の量のメタノールを加えた。混合物を強く撹拌後、2時間おきに撹拌及び擦りながら最高温度35℃にて減圧乾燥した。完全に乾燥後、混合物をホモジナイズした。
収率:95.8%
Mp.:77.2℃
DSC開始温度:73.07℃。
【0146】
13)結晶形態IIのビマトプロストの製造
実施例6に従って製造した粗製ビマトプロストに17.5質量%の量の精製水と17.5質量%の量のエタノールを加えた。混合物を強く撹拌後、2時間おきに撹拌及び擦りながら最高温度35℃にて減圧乾燥した。完全に乾燥後、混合物をホモジナイズした。
収率:92.3%
Mp.:72.9℃
DSC開始温度:72.96℃。
【0147】
14)
a)(特許出願US20090163596の実施例38による)ビマトプロスト結晶形態Iの製造
粗製ビマトプロスト5.2gをアセトニトリル106gから結晶化させた。混合物を沸点付近の温度まで加熱し、高温の溶液を室温まで冷却し、混合物をこの温度で1時間撹拌後、0〜5℃で2時間撹拌した。析出した結晶を濾別し、冷温(0〜5℃)のアセトニトリル20gで洗浄し、0〜5℃にて1時間、室温にて30分間、更に30〜40℃にて2時間減圧乾燥した。
【0148】
結晶形態Iのビマトプロスト4.3gが得られた。形態IのIRスペクトルを図IIIに示し、そのDSC曲線を図Vに示し、そのX線回折曲線を図VIIに示す。
収率:83%
Mp.:62.1℃
DSC開始温度:63.61℃。
【0149】
b)形態Iから出発したビマトプロスト結晶形態IIの製造
実施例14aに従って製造した結晶形態Iのビマトプロストに35質量%の量の精製水を加えた。混合物を強く撹拌後、2時間おきに撹拌及び擦りながら最高温度35℃にて減圧乾燥した。完全に乾燥後、混合物をホモジナイズした。
収率:97.3%
Mp.:77.7℃
DSC開始温度:73.14℃。
【0150】
15)ビマトプロスト結晶形態II及びIの混合物から結晶形態IIの製造
結晶形態II及びIのビマトプロストの50%−50%混合物に35質量%の量の精製水を加えた。混合物を強く撹拌後、2時間おきに撹拌及び擦りながら最高温度35℃にて減圧乾燥した。完全に乾燥後、混合物をホモジナイズした。
収率:97.6%
Mp.:78.2℃
DSC開始温度:73.77℃。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10