【実施例】
【0073】
I. 実験手順
全ての動物(マウス)を、標準的な住居条件(22℃、湿度40%、12時間の光サイクル、飼料及び水への自由なアクセス)下で維持した。以下の実験で用いるマウスの数並びにストレス及び苦痛を最小限にするために特に努力を行った。全てのプロトコールは、動物実験に関する欧州連合の勧告に合致している。
【0074】
I.1. 標的化され不活性化されたTAFA4遺伝子によるtafa4−GFP KIマウスの産生
tafa4−GFP KIマウスを産生するために、本発明者らは、胚性幹細胞において、バクテリア人工染色体(BAC)に基づく相同組換えを用いた。最終的なターゲティングベクターを、129SVJ「BACPAC」Resources Center(BPRC)ライブラリーから得たpBAC(RP23−427L8)におけるマウスtafa4遺伝子座の209kbのゲノムクローンに基づき構築した(
図2A)。RP23−427L8 BACベクターにおける細菌の組換え(bacterial recombination)は、プラスミドベクターpL452及びpCS2/venus sv40を用いて構築した中間標的構築物を用いて遺伝子操作した。tafa4遺伝子のエクソン1の109bpを、「YFP(Venus、以降はGFP)−polyA loxP−EM7−PGK−Neo−loxP」カセットにより置換した。ホモロジーアーム(arms of homology)は、Taq phusion polymerase(Finnzymes)を用いて、271pb及び265pbのPCR生成物として単離した。細菌におけるBACの相同組換え後、最終標的構築物を、AscIサイトを用いて直線化し、129/SV由来の胚性幹細胞CK35中にトランスフェクトした。相同組換えクローンを、構築物の3’末端に位置するプローブを用いたサザンブロットにより及びネオマイシンプローブにより同定した。2つの標的化されたクローンを、Immunology Centerの遺伝子導入施設において、C57Bl6/J由来の胚盤胞へ注入した。得られたキメラをC57Bl6/J雌性体と交配させて、組換えアレルのジャームライン・トランスミッション(germ line-transmission)を得た。
【0075】
以下のオリゴヌクレオチドを、PCRの遺伝子型同定に用いた:
【化1】
【0076】
異型接合雄性体及び雌性体を交配させて、原稿(manuscript)の行動試験に記載されている集団を産生した。細胞及び分子の実験のためのGFPの視覚化を増大させるために、本発明者らはまた、TAFA4 GFP−NEO株を産生した。TAFA4
GFP/+マウスをCre Deleterマウス系統と交雑させることによって、neoカセットを除去した。neoカセットが存在しないことを、PCRにより確認した。行動分析及び後根が付着した脊髄切片からのホールセルパッチクランプ記録を除いては、全ての実験に、Cre組換えTAFA4 GFPマウスを使用した。
【0077】
I.2. 組織切片、及びインサイチュハイブリダイゼーション/免疫蛍光
成体組織を得るために、ケタミン/キシラジンの混合物によりマウスに深い麻酔をかけ、次いで、PBS(PAF)中パラホルムアルデヒド4%の氷冷溶液で経心的に灌流した。切開後、これらを、4℃で同じ固定液中で、少なくとも24時間、ポストフィックスした。氷冷PBS 1×中、P0を回収し、穏やかに洗浄し、4%PAF中で24時間固定した。皮膚の免疫蛍光のために、麻酔をかけたマウスから、胴の皮膚を切り取り、4℃で24時間、15%(v/v)ピクリン酸−2%ホルムアルデヒド中で、直接固定した。次いで、凍結保護のため、組織を、30%(w/v)ショ糖溶液へ移し、その後、凍結し、−80℃で保存した。試料を、標準的なクリオスタット(Leica)を用いて、薄片にした(12〜40μm)。標準的なプロトコール(Moqrich et al., 2004)に従って、インサイチュハイブリダイゼーション及び免疫蛍光を行った。RNAプローブ(Tafa4、TH、Vglut3、TrkB、MrgprD、SCG10)を、遺伝子特異的PCRプライマー及びcDNAテンプレートを用いて、胚性又は成体のマウスDRGから合成した。より詳細には、ジゴキシゲニン及び/又はフルオレセイン/ビオチン標識したプローブの組み合わせを用いて、インサイチュハイブリダイゼーションを行った。プローブを、55℃で一夜ハイブリダイズし、切片を、ホースラディッシュペルオキシダーゼ抗ジゴキシゲニン/フルオレセイン/ビオチン抗体(Roche)と共にインキュベートした。フルオレセイン/cy3/cy5 TSAプラスキット(Perkin Elmer)を用いて、最終的検出を行った。二重蛍光インサイチュ実験については、H
2O
2処理を用いて、第一の抗体を不活化した。
【0078】
プローブ合成のためのネステッドPCRについては、以下のオリゴヌクレオチドを用いた:
【化2】
【0079】
免疫蛍光には、第一の抗体を、PBS−10%ロバ又はヤギの血清(Sigma)−3%ウシアルブミン(Sigma)−0.4% Triton X-100中で希釈し、4℃で一夜インキュベートした。第一の抗体の濃度及び基準は以下のとおりである:ウサギ抗TrkA 1:1000 (Interchim)、ヤギ抗TrkC 1:1000 (R&D Systems)、ヤギ抗Ret 1:500 (R&D Systems)、ウサギ抗CGRP 1:2000 (Chemicon)、ニワトリ抗緑色蛍光タンパク質(GFP) 1:1000 (Aves Labs)、ウサギ抗PKCγ1:1000 (Santa Cruz Biotechnology)、抗S100 1:400 (Dako)、及びヤギ抗パルブアルブミン1:1000 (Swant)。第二の検出には、対応するロバ又はヤギの抗ウサギ、抗ニワトリ(anti-chick)及び抗ヤギAlexa 488、555、又は647 (Invitrogen又はMolecular probe antibodies)を用いた。Alexa FluorR 568染料に対するIsolectin IB4 Conjugatesは、1:100で用いた(Invitrogen)。
【0080】
I.3. 細胞計数及び総計学的分析
胸部(T12)及び腰部(L4)DRGの12μm連続切片を、それぞれ6つ及び8つのスライドに配置し、pan-neuronal marker SCG10を含む異なるマーカーに付した。このアプローチにより、本発明者らは、神経細胞の総数を提供することに加えて、SCG10
+神経細胞のパーセントとして全ての計数を表すことが可能となった。各遺伝子型については、少なくとも3匹の独立のマウスにおいて、2〜4のDRGを計数した。総計学的有意差を、p<0.05に設定し、一元配置分散分析、続いて独立t検定を用いて評価した。
【0081】
I.4. 電気生理学的記録及びカルシウム造影
DRG神経細胞の培養物、及び後根付着脊髄切片由来の培養物のホールセルパッチクランプ記録、並びにカルシウム造影プロトコールを、以下に記載する:
【0082】
− パッチクランプ記録のためのDRG神経細胞の培養
7〜14週齢の異型接合又はTAFA4欠損の雄性マウスを、ハロタンにより麻酔し、「実験動物のケア及び使用のためのガイド」(the Guide for the Care and Use of Laboratory Animals)に従って、頸動脈の切断により供死した。以前記載されているように(Hao and Delmas, 2010, 2011)、それらの結合組織鞘から切り取り遊離させた腰部DRGから、DRG神経細胞の分離及び培養を実現した。コラゲナーゼIAを2mg/ml含む酵素溶液中で、37℃で45分間、それらをインキュベートし、ハンクス液(GIBCO BRL)中で粉砕した。得られた懸濁液を、ラミニン(Sigma)10ng/mlで被覆されたNunclon皿にプレートした。培養培地は、10%熱不活化FCS、100U/mlペニシリン−ストレプトマイシン、2mM l−グルタミン、25ng/ml神経成長因子(NGF7S, Sigma Aldrich, France)、及び2ng/mlグリア由来神経栄養因子(GDNF, Invitrogen, France)(全て、GIBCO BRLから)を補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)であった。神経細胞を、加湿雰囲気中(5%CO
2、37℃)で記録前に12時間維持した。
【0083】
− ホールセルパッチクランプ記録
パッチクランプ記録を、2〜3MΩの範囲の抵抗を有するホウケイ酸電極を用いて行った。Nav1.8及びICaTの記録には、(mM):125 CsCl、10 Hepes、5 NaCl、0.4 NaGTP、4 MgATP、1 MgCl
2、4.8 CaCl
2、及び10 EGTA(CsOHでpH7.3に調整)からなるCsClベースのピペット溶液を用いた。IKA、h電流及びMA電流を、(mM):134 KCl、10 Hepes、4 MgATP、0.4 NaGTP、1 MgCl
2、4.8 CaCl
2、及び10 EGTA(pH7.3)を含むKClベースのピペット溶液を用いて、記録した。同じKClベースのピペット溶液を、電流固定記録に用いた。標準的な外部溶液は、(mM):132 NaCl、1 KCl、1 MgCl
2、2.5 CaCl
2、10 HEPES、10 D−グルコース、及びTTX(500nM、Ascent Scientific)(NaOHによりpH7.3に調整、300mOsm/l)からなっていた。神経細胞を、流速2〜3ml/分でバス溶液で灌流した。
【0084】
− 機械的刺激
圧電駆動的に駆動される機械的プローブを用いた機械的刺激は、他で詳細に記載されている(Hao and Delmas, 2010)。簡単に述べると、圧電アクチュエーター(Step Driver PZ-100; Burleigh)に接合した先端熱加工ガラスマイクロピペットを、機械的プローブとして用い、水平から45°の角度に配置した。細胞へ向けてのプローブの下方への動きを、pClampプログラム(Molecular Devices)により駆動した。プローブは、前方への動きのためのコマンドのランプセグメントの間、800μm/sの速度を有しており(そうでなければ記載)、刺激を、200ms〜数秒の範囲の期間で適用した。特記しない限り、電位固定MA電流を、−100mVの保持電位で記録した。
【0085】
MS電流減衰の時間定数を、チェビシェフ非線形最小二乗法を用いて指数関数的に適合させた(Hao and Delmas, 2010)。電流のトレースは、単一指数関数又は双指数関数のいずれかで適合させた。双指数関数は、以下のようなものであった:I(t)=A1・exp(−t/τ1)+A2・exp(−t/τ2)+Ao、ここでτ1及びτ2は、rapid及びslowの指数成分(rapid and slow exponential components)を表し、A1及びA2は、それぞれの成分の振幅を表し、Aoは、基底電流を表す。2つを超える指数成分とのフィットは、残留分析により判断したところ、電流減衰の描写(description)を有意には増強しなかった。−100mVで惹起された電流の主成分(≧80%)が、単一指数関数的に低下した場合には、細胞は、特定のMSカチオン電流を発現していると分類された。この要件を充足しないMS電流は、混合(mixed)と分類された。電流減衰時間定数に基づくと、3種類のMS電流、すなわち、速やかに適合する電流(rapidly adapting currents)(IR、3〜6ms)、緩徐に適合する電流(slowly adapting currents)(IS、200〜300ms)、及び非常に緩徐に適合する電流(ultra-slowly adapting currents)(IuS、≧1000ms)に区別することができた。
【0086】
− データの獲得及び分析
電圧及び電流の記録を、1kHzでフィルターし40〜100μsでサンプリングするAxopatch 200B増幅器(Molecular Devices)を用いて行った。電圧誤差は、75〜85%直列抵抗補正(series resistance compensation)を用いて最小限にした。細胞キャパシタンスを、10mV過分極工程により誘発される過渡電流の遅延相の時間定数から推定した。全ての実験を、室温で行った。PRISM 4.0(GraphPad)ソフトウエアを、データ分析を行うために使用した。結果を、平均±SEMとして表し、nは、試験した神経細胞の数を表す。統計学的分析は、スチューデントのt検定を用い、p<0.01を、統計学的に有意と考えた。
【0087】
− 後根が付着した脊髄切片からのホールセルパッチクランプ記録
幼若(P21〜P34)TAFA4欠損及びWTのマウス由来の後根が付着した横断脊髄切片を、Mourot et al(Mourot et al., 2012)に記載のプロトコールに従い、ホールセル記録用に調製した。マウスをイソフルランで深く麻酔し、その後、速やかに断頭した。椎弓切除、すなわち、脊髄を穏やかに除去しその腰椎部を少量の3%アガロースブロックに配置した後、脊柱及び周囲の筋肉を含む組織の断片を速やかに除去し、氷冷し酸素負荷した低カルシウム人工脳脊髄液(ACSF)(mM:NaCl 101;KCl 3.8;MgCl
2 18.7、 MgSO
4 1.3;KH
2PO
4 1.2;HEPES 10;CaCl
2 1;グルコース 1)に浸漬した。脊髄切片(厚さ300μm)を、Leica VTS1000ビブラトームを用いて切断し、パッチクランプ記録開始前の少なくとも1時間、95%O
2−5%CO
2で平衡にした温かい(31℃)ACSF(mM:NaCl 130.5; KCl 2.4;CaCl
2 2.4;NaHCO
3 19.5;MgSO
4 1.3;KH
2PO
4 1.2;HEPES 1.25;グルコース 10;pH 7.4)中に移した。脊髄切片を、温かい(31℃)ACSFを満たした記録チャンバーに入れた。マルチクランプ2B(Molecular devices)を用い、Olympus BX51顕微鏡のコントロール下で、電気生理学的測定を行った。パッチピペット(7〜11Ω)を、適切なピペット溶液(mM:グルコン酸K 120;KCl 20;CaCl
2 0.1;MgCl
2 1.3;EGTA 1;HEPES 10;GTP 0.1;cAMP 0.2;ロイペプチン 0.1;Na
2ATP 3; D−マンニトール 77;pH7.3)で満たした。T型カルシウム電流の測定のために、パッチピペットは、以下の濃度(mM:メタンスルホン酸Cs 120;CsCl 20;CaCl
2 0.1;MgCl
2 1.3;EGTA 1;HEPES 10;GTP 0.1;cAMP 0.2;ロイペプチン 0.1;Na
2ATP 3;D−マンニトール 77;pH 7.3)を有しており、活性化されたナトリウム電位及びシナプス電流を遮断するために、ACSFに、TTX(0.5μM)、CNQX(5μM)、DL−APV(10μM)、ストリキニーネ(10μM)、ビククリン(5μM)及びTEA(2.5mM)を加えた。後根を刺激するために、Master 8(A.M.P.Instrument Ltd)刺激装置に接続したガラス吸引電極を用いた。典型的には、記録した切片において、多くの一次求心性線維をリクルートするために、高い持続時間(500μs)高い強度の刺激(350μA)を用いた。液間電位差(計算値−16.5mV)は、補正していない。
【0088】
− 脊髄第IIi層の記録した介在神経細胞の分子同定
記録した第II層神経細胞の神経伝達物質の表現型を決定するために、ピペット記録溶液にビオシチン0.5%を加えた。記録の最後に、パッチピペットを慎重に除去して、記録した神経細胞の完全性を可能な限り保存した。次に、脊髄切片を、ビオシチン及びGADのその後の顕色のために、4%PFA中、4℃で一晩固定し、0.5%PFA中、4℃で維持した。切片を、PBST中で3回すすぎ、一次抗体(抗GAD6567、Sigma 5163、PBST 0.5%BSA中、1/2000)中、4℃で48時間、インキュベートした。切片を、PBST中で3回すすぎ、二次抗体(ヤギ抗ウサギalexa568、Molecular Probe A-11011、1/500)及びストレプトアビジンalexa488(invitrogen S-11266、1/500)の混合物中で一晩インキュベートした。切片をPBST中で3回すすぎ、Dako蛍光マウンティング培地中でマウントした。x63油浸対物レンズを用いたLeica SPE共焦点顕微鏡で、取得を実施した。
【0089】
− Ca
2+造影
異型接合体又はノックアウトの7〜14週齢のTAFA4マウス由来の腰部DRG神経細胞を、ラミニンを被覆したガラス底チャンバー(fluorodish WPI)上に播種し、100ng/ml NGF 7S(Sigma Aldrich, France)、2ng/ml GDNF(Invitrogen, France)及び10ng/ml NT4(Peprotech, France)を含むB27補充Neurobasal A培地(Invitrogen, France)中、37℃で16〜22時間培養した。播種の12〜17時間後にカルシウム造影を行った。記録の前に、神経細胞を、タイロード液中、5μM fura-2AMと共に、37℃で1時間、インキュベートした。Coolsnap HQカメラ(Roper Scientific, France)を装着した倒立顕微鏡(Olympus IX70)を用いて、蛍光測定を行った。fura-2は、340nm及び380nmで励起し、510nmで発光した蛍光の割合を、Metafluorソフトウエア(Universal Imaging)を用いて、浴温で同時に獲得した。温度を、抵抗性ヒーター(CellMicroControls)と直列にマウントしたペルチエ装置で冷却した重力駆動灌流(gravity driven perfusion)(1〜2ml/分)を用いて制御した。灌流は、最初は12℃で冷却し、次いで37℃で加熱し、その後、チャンバ中に適用した。温度を、常に同じ位置にある灌流出口近くに配置したサーミスタプローブを用いてモニターした。加熱のスイッチを切ることにより行った37℃から15℃未満への急速な冷却は、典型的には40秒未満かかった。幾つかの一過性受容体イオンチャネルの薬理学的アゴニスト(100μM メントール、100μM アリルイソチオシアナート(AITC)、0.5μM カプサイシン、10μM 硫酸プレグネノロン)を、タイロード液中に調製し、37℃で数秒間、神経細胞に連続的に適用した。等張及び低張の刺激については、モル浸透圧濃度を制御するために、NaCl濃度を一定に維持し、マンニトールのレベルを変化させて、細胞外溶液を調製した。等張性溶液(300mOsm)は、以下を含有しており(mM):87 NaCl、100 マンニトール、3 KCl、1 MgCl
2、2.5 CaCl
2、10 Hepes、10 グルコース;低張性溶液(200mOsm)は、以下を含有していた(mM):87 NaCl、51 マンニトール、3 KCl、1 MgCl
2、2.5 CaCl
2、10 Hepes、10 グルコース。データを、metafluor、excel、及びgraphpad prismを用いて、オフラインで解析した。
【0090】
II. 行動アッセイ
全ての行動分析(オープンフィールド、ロータロッド、ホットプレート、コールドプレート、温度勾配、二種温度選択、温痛覚閾値(ハーグリーブス試験)、掻痒試験、フォンフライ、動的フォンフライ、及びホルマリン試験)を、同腹の8〜12週齢の雄性動物で行った。これらの全ての試験の詳細な説明を以下に提供する。完全フロイントアジュバント(CFA)及びカラギーナンの後ろ足への注射、組換えTAFA4の髄腔内注射、及び坐骨神経の慢性狭窄(CCI)についても、以下に記載する。全ての統計学的計算に、スチューデントのt検定を用いた。
【0091】
より詳細には、交雑C57BL6/129SVの遺伝的背景を有する同腹の8〜12週齢の動物で、全ての行動アッセイを行った。動物を、室温(およそ22℃)で行う全ての実験の前に、それらの試験環境に20分間順化させた。試験の間、実験者は、マウスの遺伝子型を知らされていなかった。全ての統計学的計算に、スチューデントのt検定を用いた。全てのエラーバーは、平均の標準誤差(SEM)を表す。一般行動(自発運動及び学習活動)を、ロータロッド装置(LSI Letica Scientific Instruments)を用いて測定した。グラジエント、熱プレート、オープンフィールド、ハーグリーブス、及びフォンフライ装置は、Bioseb instrumentsからのものであった。
【0092】
II.1. 一般行動アッセイ
II.1.A. オープンフィールド試験
オープンフィールド試験は、自発運動、探索及び不安様行動を評価するために一般に用いられている。それは、動物が逃げ出すのを防ぐ壁で囲まれた空で明るい四角いアリーナ(40×40×35cm)からなる。動物を、アリーナの中央に個々に置き、その行動を、ビデオカメラで5分間にわたり記録した。不安関連行動を、齧歯動物が中央エリア(20×20cm)を避ける程度により測定し、Bioseb追跡ソフトウエアにより分析する。
【0093】
II.1.B. ロータロッド試験
マウスにおける協調運動、平衡機能及び学習機能を検討するために、ロータロッド装置(LSI Letica Scientific Instruments)を用いた。マウスを、5分間かけて定速回転の4rpmから44rpmまで徐々に加速するロッド上に置き、この間に落ちるまでの待機時間を記録した。試験を、連続する4日間で行った。各日、動物を、少なくとも5分間の休息期間を挟んで3回試験した。温度選択に対する応答試験、及び温度勾配に対する応答アッセイを、(Moqrich et al., 2005)に記載するように、しかしBioseb装置を用いて、行った。
【0094】
II.2. 熱感受性試験
II.2.A. ホットプレート
熱感受性を評価するために、マウスを個々に、高さ20cmのプレキシガラスシリンダーにより、48℃、50℃、又は52℃に維持した金属表面に拘束し、侵害受容性応答(後ろ足を、舐めること、振ること又はジャンプすること)までの待機時間を測定した。組織損傷を避けるために、侵害受容性応答の直後、又はそれぞれ最大90秒、60秒、及び45秒の後に、マウスをプレートから除去した。それぞれのマウスを、各試験の間、5分間の待機時間を置いて2回試験し;回収時間は、2回の測定値の平均値に対応する。各試験温度の間の少なくとも1時間の待機時間を順守した。
【0095】
II.2.B. コールドプレート
寒冷感受性を試験するために、マウスを個々に、22℃、10℃、又は4℃に維持したプレキシガラスチャンバーに入れた。最初の1分間でのマウスの立ち上がり時間を測定する。試験の間、最短5分間の休息時間を置き、温度の間では1時間の分離期間をおいて、各マウスを、それぞれの温度に3回曝す。
【0096】
II.2.C. 温度勾配試験
この試験については、以前に記載されている(Moqrich et al., 2005)。要約すると、温度勾配装置(Bioseb)の4か所の別々のアリーナで、マウスを90分間、個別に追跡した。アルミニウム床の各末端に配置した2つのペルティエ加熱/冷却装置を用いて、14℃〜53.5℃の制御され安定な温度勾配を維持した。各アリーナを、別個の安定な温度の、同じ大きさ(8cm)の15のゾーンに実質的に分割した。製造業者により提供されたソフトウエアにより制御されたビデオカメラを用いて、追跡を行った。
【0097】
II.2.D. 二種温度選択試験(Two-temperature choice test)
2匹のマウスを、二種温度選択装置(Bioseb)の各レーンに同時に入れた。Biosebソフトウエアを用いてマウスを10分間追跡した。第1日目の間、両方のプレートを、10分間20℃に維持した。この馴化期間後の日では、二つのプレートを個々に、異なる温度まで温めるか又は冷却し(42℃〜16℃)、10分間の試験の間は、適切な温度に維持した。2回の異なる試験の間、1時間の経過を順守した。
【0098】
II.2.E. 温痛覚閾値(ハーグリーブス試験)
後ろ足の熱感受性を評価するために、足底試験装置(Bioseb)を用いて、ハーグリーブス試験を行った。マウスを個々に、昇温したガラスプラットフォームのプレキシガラスチャンバーに入れ、試験の前少なくとも30分間順化させた。次に、一定強さの可動性の放射熱源を、ガラス板を介して、足の無毛の表面に適用して、足を引っ込めるまでの待機時間を測定した。足を引っ込めるまでの待機時間を、両方の後ろ足についての3回の測定値(測定の間、少なくとも5分間の休止時間)の平均として報告する。IR源を、20%に調節し、組織損傷を避けるために、20秒のカットオフを適用した。
【0099】
II.3. 機械的感受性試験
II.3.A. 動的フォンフライ
後ろ足の機械的感受性を評価するために、Bioseb装置を用いて、動的フォンフライ試験を行った。20秒間に強度を7gまで上昇させながら、フォンフライ式フィラメントを適用する。注射した及び注射していない後ろ足を、少なくとも5分間の待機時間をおいて3回挟み、引っ込めるまでの平均(g又は秒)を計算する。
【0100】
II.3.B. フォンフライ式フィラメント試験
慢性狭窄モデルには、本発明者らは、3種類の異なる曲げ力(0.07、0.6及び1.4g)のフォンフライ式ヘアフィラメント(hair filament)を用いた。カラギーナンモデルには、4種類の異なる曲げ力(0.07、0.4、0.6、及び1.4g)のフォンフライ式ヘアフィラメントを用いて、機械的アロディニア及び痛覚過敏を評価した。詳細については、「片側性末梢単神経障害」及び「カラギーナン注射」のパラグラフを参照のこと。
【0101】
II.4. 化学的感受性試験
II.4.A. ホルマリン試験
ホルマリンストック(Fischer Scientific)(ホルマリンストックは、37%ホルムアルデヒド溶液に相当することに留意)からPBS 1×中2%でホルマリン溶液を調製した。マウスを個々に、プレキシガラスチャンバーに入れ、30分間試験環境に慣らした。左の後ろ足にホルマリン10μlを皮下注射した後、動物をそれぞれ速やかに観察チャンバーに入れ、次いで、疼痛行動(注射した足を、振る、舐める及び噛む)を60分間観察した。注射した足の疼痛行動累積時間を5分間の間隔で計数した。これらの疼痛行動を呈するのに費やした時間を、第一相(0〜10分)及び第二相(10〜60分)について、記録した。
【0102】
II.4.B. 起痒性試薬48/80を用いた掻痒試験
起痒性試薬48/80(Sigma-Aldrich, C2313)を、PBS 1×中、2μg/μlで調製した。100μg(50μl)をマウスの頸部に注射した。掻痒累積時間を40分間計数した。
【0103】
II.4.C. CFA注射
侵害受容の感受性における炎症及び変化を起こすために、完全フロイントアジュバント(CFA)10μlを、ハミルトンシリンジを用いて、麻酔をかけたマウスの左の後ろ足に注射した。注射した足を、注射後24時間、浮腫及び発赤などの急性炎症の兆候について、評価した。熱及び機械的刺激に対する応答を、注射前(0日目)、並びにCFA注射後1、3及び7日目(機械的刺激についてのみ)に測定した。注射をしなかった右の後ろ足は、対照とする。
【0104】
II.4.D. カラギーナン注射
PBS 1×中の1%λ−カラギーナン(Sigma-Aldrich, 22049-5G-F)20μlを、ハミルトンシリンジを用いて、マウスの左の後ろ足に注射した。
【0105】
カラギーナンモデルについては、4種類の異なる曲げ力(0.07、0.4、0.6及び1.4g)のフォンフライ式ヘアフィラメントを用いて、注射前後の機械的アロディニア及び痛覚過敏を評価した。各フィラメントについては、3〜5秒の間隔で、2×5の刺激(two times five stimuli)を適用した。注射をしなかった右の後ろ足は、対照とする。
【0106】
II.4.E. 片側性末梢単神経障害
坐骨神経の慢性狭窄(CCI)モデルのために、総坐骨神経(common sciatic nerve)の周りをゆるく(約1mmの間隔で)結ぶ3か所のクロム製ガット(4_0)結紮術を用いて、ケタミン(40mg/kg、ip)及びキシラジン(5mg/kg、ip)で麻酔をかけたマウスにおいて、片側性末梢単神経障害を誘導した(Bennett and Xie, 1988)。
【0107】
神経上膜の血管系を介した循環を妨げないようにして、かろうじて認識可能な程度まで神経を狭窄した(Descoeur et al., 2011)。慢性狭窄モデルについては、3種の異なる曲げ力(0.07、0.6及び1.4g)のフォンフライ式ヘアフィラメントを用いて、外科処置前、及び外科処置後5日毎に、機械的アロディニア及び痛覚過敏を評価した。各フィラメントについては、3〜5秒の間隔で、2×5の刺激を適用した。
【0108】
II.4.F. 組換えTAFA4の髄腔内注射
ホルマリン試験の15分前に、容量10μl中のTAFA4(200μg/ml、ヒト組換えTAFA4、R & D systems)又はビヒクル(PBS)の髄腔内(i.t.)注射を行った。骨盤帯によりマウスを片手で保持し、20μlハミルトンシリンジに接続した25ゲージの針を、腰椎L5とL6との間のクモ膜下腔に、テールフリックが惹起されるまで挿入した。
【0109】
III. 結果
III.1. TAFA4は、C−LTMRの特異的マーカーである
興味深いことに、本発明者らは、Tafa4転写物が、成熟DRG及び三叉神経に高度に豊富であることを見出した。インサイチュハイブリダイゼーションを用いて、本発明者らは、Tafa4転写物が、全ての腰椎(L4)及び胸椎(T12)成熟DRG神経細胞のそれぞれ約8%及び19%において発現していることを示した(
図1A)。二重蛍光標識実験により、Tafa4が、TrkA
+神経細胞からは完全に除外されており、Ret
+神経細胞のサブセットを同定することが示された(
図1C及び1D)。TAFA4
+神経細胞は、IB4と結合せず、mrgprd
+神経細胞とは、完全に異なる(
図1E及び1F)。反対に、TAFA4は、TH及びVGLUT3とともに、主に同時発現している(
図1G)。VLUT3−EGFP DRG切片(Seal et al., 2009)を用いて、本発明者らは、TAFA4
+神経細胞の92+/−4%が、EGFPを同時発現し、EGFP
+神経細胞の94+/−6%がTAFA4を同時発現することを見出し(
図1H)、TAFA4を、C−LTMRの特異的マーカーであると同定した。TH及びVGLUT3とは反対に、TAFA4は、中枢神経系の神経細胞において、すなわち脳幹及び視床下部の核における神経細胞の手綱において及び散在性集団において、低発現のDRG及び三叉神経にほぼ制限されている。
【0110】
III.2. TAFA4を発現する神経細胞は、機械侵害受容体の特性を呈する
C−LTMRにおけるTAFA4の役割を検討するために、本発明者らは、標的化された態様(すなわち、未知の遺伝子に影響することがない)でTAFA4タンパク質を排除しつつ、TAFA4を発現する神経細胞を遺伝的に標識することを可能とするノックインマウスモデルを産生した(
図5A)。本発明者らは、最初に、TAFA4
GFP/GFPホモ接合マウス(本明細書では、TAFA4欠損マウス)において、TAFA4転写物が完全に消滅していることを確認した(
図5B及び5C)。中枢的かつ排他的に第II層の最内層に投射されたGFP
+神経細胞は、皮膚の有毛部分を末梢的に神経支配した(
図5G〜5J)。
【0111】
パッチクランプ記録及びカルシウム造影を用いて、本発明者らは、GFP
+神経細胞が、C−無髄侵害受容体の多くの特性(小細胞キャパシタンス、高インプット抵抗、再分極相における顕著な瘤を欠く短い持続時間の活動電位、並びに、TTX抵抗性Nav1.8、低閾値のT型Ca
2+(ICa
T)、A型K
+電流(IK
A)、及び過分極により活性化されるh(I
h)電流の顕著な同時発現を含む)を呈したことを、見出した(
図2A〜2C)。ICa
Tが媒介するリバウンド電位もまた、再分極で典型的に観察された(
図2D)。IK
Aの活性化は、陽性又は陰性電流段階のそれぞれに応答して活動電位(AP)又はリバウンド電位の発生に遅れをもたらした(
図2D及び6)。これらの異なる電流の均質的な存在は、I
hに起因する陰性電流段階に対する脱分極「低下(sag)」応答、及び脱分極電流段階に応答してのAP興奮における「gap」を持つ、独特な態様での細胞の興奮を形作る。これらの興奮特性は、TAFA4を発現する神経細胞を分類するための特異的な判断基準として使用できる。
【0112】
GFP
+神経細胞は、カプサイシン、メントール、硫酸プレグネノロン及び5HTを含む多くの侵害受容性であると推定される薬剤に、又は速やかな冷却に、応答しなかった(
図2E)。反対に、GFP
+神経細胞は、TRPA1アゴニスト、アリルイソチオシアナート(AITC)に、及び低浸透圧性溶液に、異なる応答を示し(
図2E)、これにより、C−LTMR内のいくらかの機能的不均一性が示唆された。
【0113】
C−LTMRの古典的な特性(緩徐な伝導速度、軽度の機械的な力に応答しての一連のスパイク、及び持続的な機械的刺激に対する緩徐な適応を含む)は、エキソビボの皮膚神経の調製物を用いて決定されている(Bessou et al., 1971; Li et al., 2011; Seal et al., 2009; Woodbury et al., 2001)。GFP
+神経細胞の細胞本体に対する機械的な力の適用により、試験した神経細胞の95%で機械的に活性化された(MA)カチオン電流の存在が明らかにされた(
図2F及び2G)。速やかに適合するMA電流には場合によっては遭遇できた(15%)が、GFP
+神経細胞では、緩徐及び非常に緩徐に適合するMA電流が優勢である(それぞれ、21.3及び57.9%)(
図2F)。これらの電流は全て、カチオン性であり、非選択的であり、逆電位は、−2〜+4mVの範囲であった。MA電流の緩徐な適合特性と一致して、緩徐な速度勾配刺激(velocity ramp stimulus)が、APをトリガーすることができ(
図2G)、これにより、機械感覚性のGFP
+神経細胞が、緩徐な運動刺激に応答することが示された。
【0114】
結論すると、上記の発現データの全ては、カルシウム造影及び電気生理学的記録と組み合わせると、TAFA4
+神経細胞が、C−無髄機械侵害受容体の生理学的特性を呈することを示している。
【0115】
III.3. TAFA4欠損マウスは、重度の障害誘発性機械的及び化学的過敏を発症する
C−LTMRにおけるTAFA4の機能的役割に関する見識を得るために、本発明者らは、TAFA4欠損マウスを、急性、炎症性及び神経障害性疼痛の条件下、一連の体性感覚試験(large battery of somatosensory tests)に付した。TAFA4欠損マウスは、体重、オープンフィールド(
図6A)及びロータロッド(
図6B)のプロフィールに関しては正常であるようであったことから、TAFA4欠損マウスは、運動活性又は不安においては異常を有しないことが示された。本発明者らは、ホットプレート(
図6C)、熱走性勾配アッセイ(
図6D)又はハーグリーブス試験(
図6E)において、並びにコールドプレート、二種温度選択及び動的コールド及びホットプレート試験において、WT及びTAFA4欠損マウスの間に差を見出さなかった。次いで、本発明者らは、急性、炎症性及び神経障害性疼痛の条件下で機械的刺激を知覚する能力についてTAFA4欠損マウスを試験した。
【0116】
完全フロイントアジュバント(CFA)モデルでは、自動フォンフライ装置を用いて、機械的感受性を測定した(
図3A)。両方の遺伝子型が、CFA注射24時間後、処置された足について引っ込める閾値の有意な低下を示した。CFAの3日後に試験したところ、TAFA4欠損マウスは、WTマウスと比較して、有意に低い、足を引っ込める閾値を示した。
【0117】
炎症7日後に、両方の遺伝子型について完全な回復が達成された。機械的感受性におけるTAFA4の役割を更に検討するために、本発明者らは、カラギーナンに応答するフォンフライ式フィラメントを用いた(
図3B〜3E)。CFAモデルと一致して、TAFA4欠損マウスは、処置の3及び7日後において、全ての試験フィラメントに応答して、延長された疼痛過敏を示した。非常に興味深いことに、TAFA4欠損マウスは、最も細いカリバー0.07及び0.4gを含め全てのフィラメントで、カラギーナン処置後早くも1及び3時間で、増強された機械的過敏を示し、これにより、接触性アロディニアにおけるTAFA4の重要な役割が示唆された(
図3B〜3E)。
【0118】
最後に、神経障害性疼痛におけるTAFA4の役割を評価するために、本発明者らは、坐骨神経の慢性狭窄(CCI)モデルを用いた(
図3F〜3H)。TAFA4欠損マウスは、試験した全てのフィラメントで、延長された機械的過敏の表現型を示し、これにより、神経障害性疼痛におけるTAFA4の役割が示された。
【0119】
III.4. ヒト組換えTAFA4は、TAFA4欠損マウスにおいて、機械的及びホルマリンにより誘導される疼痛過敏を完全に救済した
カラギーナン処置7日後、又はCCI処置30日後にヒト組換えTAFA4 2μgを髄腔内投与したところ、TAFA4欠損マウスで観察された両方の過敏の表現型が、WTレベルにまで逆転した(
図3B〜3H、7日目+TAFA4、及び30日目+TAFA4)。
【0120】
TAFA4欠損マウスにおいて増強された機械的過敏が、様式(modality)特異的であるかどうかを試験するために、本発明者らは、ホルマリン試験を行った(
図3I及び3J)。2%ホルマリン10μlを足底内へ注射したところ、両方の遺伝子型で、強い最初の疼痛反応が誘発された。TAFA4欠損マウスは、第2相において劇的に上昇した応答を示し、これらのマウスでの増強された中枢性感作が示唆された。重要なことに、TAFA4欠損マウスでのホルマリンにより誘発された過敏は、ホルマリン注射の15分前のTAFA4髄腔内投与後に、WTレベルにまで逆転された(
図3K)。
【0121】
総合すると、上記の結果は、傷害により誘発される機械的及び化学的疼痛過敏の正常閾値を維持するのに、TAFA4が必要であることを示している。
【0122】
III.5. TAFA4欠損マウスにおいて、第IIi層神経細胞は、興奮の増大を示す
TAFA4の欠損により誘導される中枢感作の表現型を更に検討するために、本発明者らは、WT(n=19)及びTAFA4欠損マウス(n=25)から得た後根が付着している脊髄切片において、第IIi層神経細胞のホールセル記録を行った。しかしながら、振幅を増大させながら(0〜50pA)脱分極電流パルスを注射したところ、WTにおけるよりもTAFA4欠損神経細胞において、活動電位がより誘発された(
図4A1及び4A2、共分散分析、p<0.001)。この効果は、脱分極電流パルスの発生時に更により明白であった。WT神経細胞のものに匹敵する放電速度に適合させる前に、TAFA4欠損神経細胞は、電流パルスの開始時、放電頻度の上昇を示したからである(
図4A3)。更に、過分極性の電流パルス(−50又は−25pA)の注射により、WTと比較してTAFA4欠損神経細胞において、より高いリバウンドAPが誘発された(
図4A1及び4A4、それぞれp=0.049及びp=0.001)。ともに、これらのデータは、TAFA4欠損マウスにおける第IIi層神経細胞の興奮の増大を示している。
【0123】
TAFA4欠損マウスにおいて観察される差異は、低閾値電流を緩徐に不活化する弁別調節(differential regulation)を示す。これらの電流をキャラクタライズするために、本発明者らは、対称的な電圧ランププロトコール(−40〜−120、そして−40mVに戻る)を用いて、第IIi層神経細胞において、−40mVで誘導される外向き電流を測定した。WT神経細胞では、緩徐な脱感作を伴う外向き電流は、上昇する電圧ランプの末端で観察することができた一方、この電流は、TAFA4欠損神経細胞では、ほとんど存在していなかった(
図4B1及び4B2、p=0.001)。髄腔内投与した組換えTAFA4は、傷害されたTAFA4欠損マウスにおける悪化した疼痛行動を軽減するため、本発明者らは、TAFA4欠損マウス由来の第IIi層神経細胞に組換えヒトTAFA4を加えることの効果を試験した。本発明者らは、対照条件下(すなわち、TAFA4なし)でのWT動物由来の神経細胞で観察されたのと同様に、TAFA4(20〜30mn、20nM)の外因性の適用が、外向き電流の発現を誘導したことを見出した(
図4C1及び4C2、n=19、p<0.001)。この電流は、外部のTEA(2.5mM、n=3)による影響は受けなかったが、4AP(1mM)によって完全に遮断され、したがって、A型電流の薬理、すなわちカリウムイオンチャネルが関与していることを示している。組換えTAFA5(n=5、
図4D1及び4D2)又はTAFA2(n=6、
図4D2)の添加によっては、TAFA4欠損神経細胞からのこの低閾値の外向き電流を誘導することができなかったため、これらの効果は、TAFA4に特異的であった。
【0124】
TAFA4の添加後、第IIi層神経細胞間での外向き電流の強度の分布は、2つのガウシアンカーブの混合によって最も良好にフィットされており、これは2つの異なる集団の存在を明らかにしている:神経細胞の1/3は、顕著な外向き電流を示した一方、残りの神経細胞は、TAFA4のバス適用の影響をわずかに受けるか又は受けなかった(
図4E1)。TAFA4応答性神経細胞の表現型のキャラクタリゼーションにより、TAFA4は、GAD陽性及びGAD陰性の神経細胞の両方において、同様の外向き電流を誘導したことが示された(
図4E2)。
【0125】
実験データは、TAFA4は、グルタミン酸作動性(glutamergic)興奮(GAD−)及びGABA作動性阻害の介在神経細胞(GAD+)のサブセットを、好ましくは低閾値外向き電流の活性化により、抑制することを示している。特に、興奮伝達が、脊髄の膠様質(脊髄第II層に相当する)における知覚処理を支配するとみられるので、TAFA4によるGABA作動性及びグルタミン酸作動性の神経細胞のこのような二重抑制の全体的な結果は、興奮伝達における低下によって支配されているようであり、それにより、第I層投射神経細胞に伝達される侵害受容性情報の量を減少する。したがって、本発明によるTAFA4化合物は、脊髄介在神経細胞における興奮伝達を減少させることにより、侵害受容性情報を減少する。
【0126】
低閾値電流のなかでも、Ih及びT型カルシウム電流はまた、第IIi層神経細胞の興奮を形付け得る。WT及びTAFA4欠損マウスにおけるIh様電流をキャラクタライズするために、本発明者らは、過分極電流パルスに応答するピーク電位と定常状態電位との差を測定することにより、過分極により誘発される低下を定量した(
図7B1)。本発明者らは、矩形の電位パルス(方法を参照)により誘発された単離されたT型電流が、TAFA4欠損マウスにおけるよりもWTにおいて弱いことが多かったことを見出した(
図7C1)。統計学的分析により、WTと比較して、TAFA4欠損の第IIi層神経細胞では、T型電流密度が有意に上昇することが明らかとなった(
図7C2;p=0.001)。
【0127】
総合すると、上記の結果は、第IIi層神経細胞では、TAFA4が、低閾値外向き電流の強度を、直接的又は間接的に調節することを示している。
【0128】
IV. 神経障害性疼痛を有する動物におけるTAFA4の髄腔内投与の鎮痛効果
IV.1. 神経障害性疼痛モデルSN1
SNIモデル(神経部分損傷、Decosterd and Woolf, 2000; Pain, Vol. 87, p 149-158によって開発)を用いた。SNIモデルは、脛骨分岐部の、及び坐骨神経の総腓骨神経の、横断切片からなり:腓腹神経は、インタクトなままである。後者は次いで、実質的な機械的アロディニアと共に、神経障害性疼痛の兆候を発症する。SNIモデルは、以下の多くの利点を有する:
・ 神経障害性疼痛が持続的である。このため、TAFA4の繰り返し注射による馴化現象を把握することができる。
・ 産生される疼痛が強い。
・ このモデルは、非常に再現性がある。
【0129】
IV.2. 用量−効果の研究
最適な濃度を決定するために、「速い」炎症性疼痛モデル(1%カラギーナン)で、最初の試験を行った。
【0130】
手順:
18匹の8週齢の雄性TAFA4−KOマウスを用いる。
組換えヒトTAFA4(#5099-TA, R&D, バッチ#PXC0213101)を、3種類の異なる濃度(12.5μg/mL、50μg/mL、及び200μg/mL)で、0.9%NaClに再懸濁する。
ベースラインを決定するためのアップ/ダウン法を用いたフォンフライ式フィラメント測定。
後ろ足におけるカラギーナン(1%)20μlの足底内注射。
炎症性疼痛の発生をチェックするための、注射4時間後の応答閾値の測定。
24時間後、新たな測定を行う。
次いで、3種類の異なる濃度(12.5μg/mLではn=6;50μg/mLではn=5;200μg/mLではn=6)でのTAFA4溶液10μlの盲検法による髄腔内注射を行う。
応答閾値の測定を、注射30分後に行う。
【0131】
結果:
結果を
図8に示す。機械的アロディニアの発生が、カラギーナンの注射4時間後に観察され、その後24時間維持される。各TAFA4溶液10μlの注射により、フォンフライ式フィラメントに対する閾値応答の強力な増大が誘導された。3種類の試験濃度により、カラギーナンにより誘導される疼痛における統計学的に有意な減少が誘導された(
*p<0.05)。
【0132】
SNI神経障害性疼痛モデルにおける髄腔内注射によるTAFA4の鎮痛効果の以降の試験には、これらの濃度(12.5;50、及び200μg/mL)を用いた。
【0133】
IV.3. SNI動物における髄腔内注射
手順:
8週齢のWT C57Bl6マウスで実験を行う。42匹のマウスを使用した。組換えヒトTAFA4(#5099-TA, R&D, バッチ#PXC0213101)を、3種類の異なる濃度(12.5μg/mL、50μg/mL、及び200μg/mL)で、0.9%NaClに再懸濁する。陰性対照として、200μg/mLBSA溶液を用いる。アップ/ダウン法によりフォンフライ式フィラメントを用いてマウスのベース閾値を測定した後、SNIモジュールを設置する。マウスに麻酔をかけ、脛骨神経及び腓骨神経の結紮を実行して、これら2種の神経を切断する。インタクトなままの腓腹神経は、きわめて速やかに神経障害を発症する。外科処置の3日後、神経障害の発生を確認する。それにより、同側の足のフォンフライ式フィラメントに対する応答閾値の減少を観察する。
【0134】
外科処置の7日後、応答閾値を再度測定する。次いで、3種類のTAFA4溶液(12.5μg/mLでn=10;50μg/mLでn=10;200μg/mLでn=9)及びBSA溶液(n=10)それぞれ10μlを、盲検的に髄腔内注射する。
【0135】
応答閾値を、注射後30分、2時間、4時間、6時間、次いで24時間に測定する。
【0136】
結果:
結果を
図9に示す。髄腔内注射後、3種類のTAFA4溶液については応答閾値の有意な増大が、注射後30分と速やかに観察された。一方、BSAの注射は、マウスの応答閾値に対して影響を与えなかった。2時間後、3種類の濃度について、鎮痛効果はその最大で維持される。4時間後、TAFA4 2μgの注射を受けたマウスは、依然、高い応答閾値を示す(**:p<0.01;*:p<0.05)。本発明者らはまた、TAFA4又はBSA溶液の髄腔内注射後、反対側の足の応答も観察し、統計学的な差は観察されなかった(
図10を参照)。
【0137】
これらの結果は、3種類の試験したTAFA4濃度の髄腔内投与により、神経障害性疼痛に対して実質的に同等の鎮痛作用が惹起されたことを示している。最強濃度(200μg/ml、すなわちTAFA4 2μg)の効果が長期に続く。更に、TAFA4は、反対側の足の応答において変化がなかったことにより示されるように、知覚神経細胞の神経インパルス活性を阻害しなかった。
【0138】
V. 神経障害性疼痛を有する動物における皮下TAFA4の鎮痛効果
本実施例は、皮下注射後の神経障害性疼痛モデルに対するTAFA4の鎮痛効果を説明する。
【0139】
V.1. 用量−効果研究
皮下試験し得る用量を把握するために、限られた数のTAFA4−KOマウスにおいて、炎症性疼痛モデル(1%カラギーナン)に対する最初の「速い」試験を行った。
【0140】
手順:
9匹の8週齢の雄性TAFA4−KOマウスを用いる。グラム当たり10μlの注射のために、組換えヒトTAFA4(#5099-TA, R&D, バッチ#PXC0213101)を、2種類の異なる濃度(10μg/mL及び30μg/mL)で、0.9%NaClに再懸濁する。ベースラインを決定するためのアップ/ダウン法によるフォンフライ式フィラメントを用いた測定。後ろ足へのカラギーナン(1%)20μlの足底内注射。注射24時間後の応答閾値の測定と、それに続く2種類の異なる濃度(100μg/kgでn=3;300μg/kgでn=3)でのTAFA4溶液、又は30mg/kg(n=3)でのプレガバリン溶液の実験者に盲検の皮下注射。
【0141】
化合物の注射30分後と、引き続く2時間及び4時間後の応答閾値の測定。
【0142】
結果:
結果を
図11に示す。カラギーナンの注射後、マウスは、機械的アロディニアを発症した。プレガバリンの注射により、応答閾値の増大が引き起こされる。同様に、TAFA4の注射もまた、100μg/kgで応答閾値の統計学的に有意な増大を誘発し、300μg/kgでは、はるかに強力な増大を誘発した。
【0143】
したがって、TAFA4は、カラギーナンモデルにおいて、皮下注射により鎮痛効果を引き起こした。
【0144】
V.2. SNI動物における皮下注射
手順:
実験を、8週齢の雄性WT C57Bl6マウスで行った。48匹のマウスを使用した。組換えヒトTAFA4(#5099-TA, R&D, バッチ#PXC0213101)を、3種類の異なる濃度(3μg/mL、10μg/mL、及び30μg/mL)で、0.9%NaClに再懸濁する。30μg/ml BSA溶液を陰性対照として用いる。アップ/ダウン法によりフォンフライ式フィラメントを用いてマウスのベース閾値を測定した後、SNIモデルを設置する。マウスに麻酔をかけ、脛骨神経及び腓骨神経の結紮を実行して、これら2種の神経を切断する。インタクトなままの腓腹神経は、きわめて速やかに神経障害を発症する。外科処置の3日後、神経障害の発生を確認する。それにより、同側の足のフォンフライ式フィラメントに対する応答閾値における減少を観察する。
【0145】
外科処置の7日後、応答閾値を再度測定する。次いで、TAFA4溶液(30μg/kgでn=11;100μg/kgでn=12;300μg/kgでn=11)及びBSA溶液(n=12)それぞれ100μl/10gを、実験者に盲検で皮下注射する。
【0146】
応答閾値を、注射後1時間、2時間、4時間、6時間、次いで24時間に測定する。
【0147】
結果(
図12):
TAFA4の皮下注射により、注射後1時間と速やかに、応答閾値の強力な増大が誘導された。この効果は、3種類の試験した濃度で少なくとも4時間維持された。髄腔内注射については、効果は、より高い濃度ではより長く続くとみられる。
【0148】
したがって、TAFA4の皮下注射は、SNI神経障害性疼痛モデルにより誘導される機械的アロディニアに対して鎮痛効果を誘導する。研究の継続のために、300μg/kgの濃度を使用した。
【0149】
VI. TAFA4は、副作用なく、持続する鎮痛効果を誘導する
これらの実験の目的は、SNIモデルにおける皮下注射によるTAFA4の鎮痛効果を更に確認し、この作用が、幾つかの注射ポイントを達成することにより維持され安全であることをチェックすることである。
【0150】
手順:
実験は、8週齢の雄性WT C57Bl6マウスで行った。24匹のマウスを使用した。組換えヒトTAFA4(#5099-TA, R&D, バッチ#PXC0213101及び#PXC0214011)を、0.9%NaCl 30μg/mLに再懸濁する。30μg/mLBSA溶液を、陰性対照として使用する。アップ/ダウン法によりフォンフライ式フィラメントを用いてマウスのベース閾値を測定した後、SNIモデルを配置する。マウスに麻酔をかけ、脛骨神経及び腓骨神経の結紮を実行して、これら2種の神経を切断する。インタクトなままの腓腹神経は、きわめて速やかに神経障害を発症する。
【0151】
外科処置の7日後、同側の足のフォンフライ式フィラメントに対する応答閾値の減少が観察される。次いで、TAFA4(300μg/kg)及びBSA溶液10μl/gを盲検法により皮下注射する(BSA及びTAFA4群それぞれについてn=12)。応答閾値を、注射後1時間、2時間、4時間、及び6時間で測定する。同じ実験手順を、外科処置後7日目、14日目、及び21日目に行う。
【0152】
結果(
図13):
外科処置後7日目、14日目、及び21日目に、TAFA4 300μg/kgの皮下注射後に、機械的刺激に対する応答閾値における強力な増大が観察された。初期値(外科処置前)の約40〜50%に達し得る。3つのケースにおいて、曲線下面積の分析により示されるように、効果は同様のままであった(有意差なし)。
【0153】
したがって、これらの結果により、本発明のTAFA4タンパク質又はアゴニストの強力な鎮痛効果が確認される。
【0154】
皮下処置された動物の各種器官(肝、脾、腎、心、及び肺)を取り出し、以降の研究のために凍結した。処置した動物の体重を、実験の間中、観察した。体重曲線に差は観察されなかった(
図14)。更に、各種の取り出した器官を高精度のはかりで秤量してから、4%パラホルムアルデヒド(PFA)中、4℃で一夜置き、次いでショ糖30%中でインキュベートしてから、OCT中、−80℃で低温維持した。試験した器官(肝、脾、腎、心、及び肺)の全てで、処置動物と対照動物との間で差は観察されなかった。
【0155】
したがって、本発明者らの結果は、SNI神経障害性疼痛モデルにおけるTAFA4タンパク質の効果を示している。このモデルによって誘導された機械的アロディニア(応答閾値における減少)は、TAFA4の髄腔内又は皮下注射によって阻害され得る。用いた用量が低い(2μgを髄腔内、及び6〜8μgを皮下)ことに留意することが重要である。更に、反対側の足の応答閾値が、TAFA4の注射後も変わらないままであったので、これは、TAFA4が、神経インパルスを遮断する薬剤としては作用しないことを示している。
【0156】
VII 結論
− 本発明は、TAFA4タンパク質が、疼痛の制御に関与していることを初めて示し、異なる疼痛モデルでの疼痛の処置におけるその有効性を示す。
− 本発明はまた、TAFA4が、小径知覚神経細胞C−LTMRに特異的に発現することを示す。
− 本発明は更に、TAFA4の機能の喪失が、傷害により誘導される機械的及び化学的過敏の増加、及び第IIi層神経細胞の興奮の増大をもたらしたことを示す。
− 本発明はまた、TAFA4
+求心性神経が、末梢における毛嚢を排他的に神経支配し、第II層の最内層を中枢的に投射していることを示す。
− 本発明は、Tafa4が、神経細胞の興奮及び体性感覚の閾値を調節することを示す。
− 本発明は更に、TAFA4タンパク質が、機械的及び化学的に誘導される侵害受容性シグナルを特異的に標的とすることができることを示す。
− 本発明はまた、TAFA4化合物及び組成物が、脊髄介在神経細胞(好ましくは、第IIi層介在神経細胞)のC−LTMR−侵害受容体が媒介する興奮を、例えば当該介在神経細胞上に存在する受容体(カリウムイオンチャネル、カルシウムイオンチャネル、又は低密度リポタンパク質受容体、例えばLRP1、など)の活性の調節を介して、調節することにより、新規な鎮痛経路を活性化することができることを示す。
− 本発明者らはまた、TAFA4が、一次求心性神経においてシナプス前チャネルを調節し得、これが次にシナプス伝達を増大させることを提唱する。シナプス後性的には、「TAFA4作動性」C−LTMR求心性神経は、第I層に属する投射神経細胞に接続される、第IIi層興奮性グルタミン酸作動性及び阻害性GABA作動性/グリシン作動性介在神経細胞のネットワークに向かう。
− 本発明者らは更に、TAFA4欠損マウスにおける機械的及びホルマリン誘導疼痛過敏は、ヒト組換えTAFA4の投与後、WTレベルまで反転したことを示す。
− 本願において発明者らにより示された全ての実験データはまた、C−LTMR誘導TAFA4が、ホルマリン誘発疼痛の第2相を調節することを明らかにした。特に、本明細書に提供されるデータは、TAFA4欠損マウスは、悪化/増強されたホルマリン誘発疼痛を呈したことを示している。本発明者らは、ホルマリンが誘発した侵害防御機構の行動が、C−LTMR知覚神経細胞によって特異的に誘発され得ることを提唱している。
− Tafa4を発現する神経細胞の遺伝的マーキングにより、C−LTMRの生理学的特性の詳細なインビトロ研究が可能になった。パッチクランプ分析により、小キャパシタンス、独特の短期間のAP、TTX耐性Nav1.8電流の存在、及び幾つかの低閾値電流の顕著な同時発現、並びに緩徐及び非常に緩徐に適合する興奮性の機械開口型電流、を有する神経細胞の著しく均一な集団が明らかとなった。
− 野生型(WT)又はTAFA4欠損マウスにおける疼痛の表現型を比較することによって、発明者らは、TAFA4の機能を妨げることが神経細胞の興奮の調節を引き起こし、それが疼痛のシグナル伝達に寄与するという概念の証拠を確立した。特に、本発明者らは、各種疼痛モデルにおいて、TAFA4の機能の損失が、機械的及び化学的過敏を増強することを明確に示した。結論すると、神経細胞の興奮の調節を介して病理学的疼痛シグナル伝達を処置するための活性成分としてのTAFA4の使用。
【0157】
【表1】