特許第6487422号(P6487422)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6487422新しい抗腫瘍剤としてのチエノ[2,3−e]インドール誘導体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6487422
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】新しい抗腫瘍剤としてのチエノ[2,3−e]インドール誘導体
(51)【国際特許分類】
   C07D 495/04 20060101AFI20190311BHJP
   A61K 31/407 20060101ALI20190311BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20190311BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20190311BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20190311BHJP
   A61K 38/00 20060101ALI20190311BHJP
   A61K 47/50 20170101ALI20190311BHJP
【FI】
   C07D495/04 103
   C07D495/04CSP
   A61K31/407
   A61P35/00
   A61P43/00 121
   A61K45/00
   A61K38/00
   A61K47/50
【請求項の数】15
【全頁数】61
(21)【出願番号】特願2016-516939(P2016-516939)
(86)(22)【出願日】2014年9月16日
(65)【公表番号】特表2016-533330(P2016-533330A)
(43)【公表日】2016年10月27日
(86)【国際出願番号】EP2014069681
(87)【国際公開番号】WO2015044003
(87)【国際公開日】20150402
【審査請求日】2017年7月13日
(31)【優先権主張番号】13185935.7
(32)【優先日】2013年9月25日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】307012403
【氏名又は名称】ネルビアーノ・メデイカル・サイエンシーズ・エツセ・エルレ・エルレ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カルダレッリ,マリーナ
(72)【発明者】
【氏名】カルーソ,ミケーレ
(72)【発明者】
【氏名】オルシーニ,パオロ
【審査官】 早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−193989(JP,A)
【文献】 特表2009−525322(JP,A)
【文献】 特表2007−538099(JP,A)
【文献】 特表2005−532287(JP,A)
【文献】 国際公開第98/025900(WO,A1)
【文献】 国際公開第2004/069201(WO,A1)
【文献】 国際公開第00/015641(WO,A1)
【文献】 国際公開第02/096910(WO,A1)
【文献】 米国特許第05659022(US,A)
【文献】 英国特許出願公開第02344818(GB,A)
【文献】 国際公開第2013/149946(WO,A1)
【文献】 MARK S TICHENOR; KAREN S MACMILLAN; JAMES S STOVER; ET AL,RATIONAL DESIGN, SYNTHESIS, AND EVALUATION OF KEY ANALOGUES OF CC-1065 AND THE DUOCARMYCINS,JOURNAL OF THE AMERICAN CHEMICAL SOCIETY,AMERICAN CHEMICAL SOCIETY,2007年11月 1日,VOL:129, NR:45,PAGE(S):14092 - 14099,URL,http://dx.doi.org/10.1021/ja073989z
【文献】 HIDEAKI MURATAKE,PREPARATION OF BENZENE, FURAN, AND THIOPHENE ANALOGS OF DUOCARMYCIN SA EMPLOYING A NEWLY-DEVISED PHE,CHEMICAL AND PHARMACEUTICAL BULLETIN,2000年,V48 N10,P1558-1566
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 495/04
A61K 31/407
A61K 45/00
A61P 35/00
A61P 43/00
A61K 38/00
A61K 47/50
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(II)
【化1】

の化合物であって、
R5が直鎖もしくは分枝鎖のC−Cアルキル、直鎖もしくは分枝鎖のC−Cヒドロキシアルキルまたは直鎖もしくは分枝鎖のC−Cアミノアルキルであり;
R6が、ハロゲンであり;
BMが、式(V):
【化2】
[式中:
Xは、非存在または直鎖もしくは分枝鎖のC−Cアルケニルであり;
YおよびY’は独立して、場合により置換されているアリールまたはヘテロアリールであり;
Uは、式(VI)または(VII):
【化3】
[式中、R3は、水素、または場合により置換されている直鎖もしくは分枝鎖のC−CアルキルおよびC−Cヒドロキシアルキルから選択される基である。]
の部分であり;および
qは0から3の整数である。]
のDNA結合部分であり;
L1が、水素または式(Xj):
【化4】

[式中、R9が、水素、ヒドロキシであるか、または直鎖もしくは分枝鎖のC−Cアルキル、直鎖もしくは分枝鎖のC−Cヒドロキシアルキル、直鎖もしくは分枝鎖のC−Cスルフヒドリルアルキルおよび直鎖もしくは分枝鎖のC−Cアミノアルキルから選択される場合により置換されている基である。]
部分であり;
W1が、非存在、または、
【化5】

[式中
R9とR10のうち一方は非存在であり、他方は、水素、ヒドロキシであるか、または直鎖もしくは分枝鎖のC−Cアルキル、直鎖もしくは分枝鎖のC−Cヒドロキシアルキル、直鎖もしくは分枝鎖のC−Cスルフヒドリルアルキルおよび直鎖もしくは分枝鎖のC−Cアミノアルキルから選択される場合により置換されている基であり;
R11およびR12は各々、独立して、水素、ハロゲン、直鎖もしくは分枝鎖のC−Cアルキルまたは直鎖もしくは分枝鎖のC−Cヒドロキシアルキルであり;
R24およびR25は各々、独立して、水素、ハロゲン、メチル、エチル、直鎖もしくは分枝鎖のC−Cヒドロキシアルキル、直鎖もしくは分枝鎖のC−Cハロアルキルであるか、またはR24とR25が一体となって3から6員の炭素環を形成しており;
mは0から3の整数であり;
はCH、CHN−R13またはN−R13であり、ここで、R13は水素、直鎖もしくは分枝鎖のC−Cアルキル、直鎖もしくは分枝鎖のC−Cヒドロキシアルキルまたは直鎖もしくは分枝鎖のC−Cハロアルキルである。]
からなる群から選択される1つ以上のを含むであり;
Z1が非存在、またはリンカーであり;
ただし:
qが0であり、Y’が式(VIII)、(VIII)’もしくは(VIII)’’:
【化6】
のヘテロシクリル部分である場合、
または
qが1であり、Uが上記に規定した式(VII)の基であり、Yが式(IX)
【化7】
のヘテロシクリル部分であり、Y’が式(VIII)’’’
【化8】
[式中、QはNHまたはOであり、R21は水素、またはベンゼン環上の5位または6位の、−N(Cおよび−C(NH)NHから選択される基である。]
のヘテロシクリル部分である場合、
L1が水素であり、R5がメチルであり、Xが非存在である式(II)の化合物は除外されるものとする
ことを特徴とする化合物およびこの医薬として許容される塩。
【請求項2】
R5が直鎖または分枝鎖のC−Cアルキルであることを特徴とする、請求項1に記載の式(II)の化合物。
【請求項3】
式(IV)の化合物
【化9】

であって、
BMが、式(V)’:
【化10】
[式中:
Xは、非存在または直鎖もしくは分枝鎖のC−Cアルケニルであり;
YおよびY’は独立して、場合により置換されているアリールまたはヘテロアリールであり;
Uは、式(VI)または(VII):
【化11】

[式中、R3は水素、または場合により置換されている直鎖もしくは分枝鎖のC−CアルキルおよびC−Cヒドロキシアルキルから選択される基である。]
の部分であり;
qは0から3の整数である。]
のDNA結合部分であり;
A’が非存在またはAであり、ここで、Aは、−O−、−NH−および−CO−から選択される原子であり;
Lが、非存在、または、
−NHCO−R9(Xa);−NHCOO−R9(Xc);−NH−R9(Xd);
【化12】

[式中:
R9およびR10は各々、独立して、非存在、水素、ヒドロキシであるか、または直鎖もしくは分枝鎖のC−Cアルキル、直鎖もしくは分枝鎖のC−Cヒドロキシアルキル、直鎖もしくは分枝鎖のC−Cスルフヒドリルアルキルおよび直鎖もしくは分枝鎖のC−Cアミノアルキルから選択される場合により置換されている基であり;
各nは独立して、0から2の整数であり、
n1は0から4の整数である。]
から選択される部分であり;
Wが非存在、または、
【化13】

[式中
R9とR10のうち一方は非存在であり、他方は、上記に規定したとおりであり;
R11およびR12は各々、独立して、水素、ハロゲン、直鎖もしくは分枝鎖のC−Cアルキルまたは直鎖もしくは分枝鎖のC−Cヒドロキシアルキルであり;
R24およびR25は各々、独立して、水素、ハロゲン、メチル、エチル、直鎖もしくは分枝鎖のC−Cヒドロキシアルキル、直鎖もしくは分枝鎖のC−Cハロアルキルであるか、またはR24とR25が一体となって3から6員の炭素環を形成しており;
mは、0から3の整数であり;
は、CH、CHN−R13またはN−R13であり、ここで、R13は水素、直鎖もしくは分枝鎖のC−Cアルキル、直鎖もしくは分枝鎖のC−Cヒドロキシアルキルまたは直鎖もしくは分枝鎖のC−Cハロアルキルである。]
からなる群から選択される1つ以上のを含むであり;
Zが非存在、またはリンカーであり;
RMが非存在、またはA、L、WもしくはZから選択される基のうちの少なくとも1つに結合している部分であり;
RM1が非存在、またはL1、W1もしくはZ1から選択される基のうちの少なくとも1つに結合している部分であり;
R5が、直鎖もしくは分枝鎖のC−Cアルキル、直鎖もしくは分枝鎖のC−Cヒドロキシアルキルまたは直鎖もしくは分枝鎖のC−Cアミノアルキルであり;
R6が、ハロゲンであり;
L1が、水素または式(Xj):
【化14】

[式中、R9が、水素、ヒドロキシであるか、または直鎖もしくは分枝鎖のC−Cアルキル、直鎖もしくは分枝鎖のC−Cヒドロキシアルキル、直鎖もしくは分枝鎖のC−Cスルフヒドリルアルキルおよび直鎖もしくは分枝鎖のC−Cアミノアルキルから選択される場合により置換されている基である。]
の部分であり;
W1が、非存在、または、
【化15】

[式中
R9とR10のうち一方は非存在であり、他方は、水素、ヒドロキシであるか、または直鎖もしくは分枝鎖のC−Cアルキル、直鎖もしくは分枝鎖のC−Cヒドロキシアルキル、直鎖もしくは分枝鎖のC−Cスルフヒドリルアルキルおよび直鎖もしくは分枝鎖のC−Cアミノアルキルから選択される場合により置換されている基であり;
R11およびR12は各々、独立して、水素、ハロゲン、直鎖もしくは分枝鎖のC−Cアルキルまたは直鎖もしくは分枝鎖のC−Cヒドロキシアルキルであり;
R24およびR25は各々、独立して、水素、ハロゲン、メチル、エチル、直鎖もしくは分枝鎖のC−Cヒドロキシアルキル、直鎖もしくは分枝鎖のC−Cハロアルキルであるか、またはR24とR25が一体となって3から6員の炭素環を形成しており;
mは0から3の整数であり;
は、CH、CHN−R13またはN−R13であり、ここで、R13は水素、直鎖もしくは分枝鎖のC−Cアルキル、直鎖もしくは分枝鎖のC−Cヒドロキシアルキルまたは直鎖もしくは分枝鎖のC−Cハロアルキルである。]
からなる群から選択される1つ以上の基を含む系であり;
Z1が、非存在、またはリンカーであり;
ただし:
式(IV)の化合物において:
L1が水素であるならば、A’は非存在でなく、L、W、ZまたはRMのうち少なくとも1つは非存在でなく;
A’が非存在であるならば、L、WおよびZは非存在であり、RM1は非存在でない
ことを特徴とする化合物およびこの医薬として許容される塩。
【請求項4】
R5が、直鎖または分枝鎖のC−Cアルキルであることを特徴とする、請求項に記載の式(IV)の化合物。
【請求項5】
A’が非存在であり、L1がLであり、ここで、Lは請求項に記載のとおりであることを特徴とする、請求項に記載の式(IV)の化合物。
【請求項6】
ZおよびZ1が独立して、ペプチドリンカーおよび非ペプチドリンカーから選択され
該非ペプチドリンカーが、
【化16】
[式中
R9とR10のうち一方は非存在であり、他方は請求項3に記載のとおりであり;
pは1から20の整数である。]
から選択される、オリゴエチレングリコール部分またはポリエチレングリコール部分またはその誘導体を含む、非ペプチドリンカーであることを特徴とする、請求項に記載の式(IV)の化合物。
【請求項7】
RMおよびRM1が独立して:
【化17】
[式中、R14は、C−Cアルキルまたは電子求引性基であり;
rは0から7の整数であり;
R11およびR12は請求項に記載のとおりである。]
から選択される部分である、
ことを特徴とする、請求項に記載の式(IV)の化合物。
【請求項8】
R14が、NOおよびCNからなる群から選択される電子求引性基である、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
[(8S)−8−(クロロメチル)−4−ヒドロキシ−2−メチル−7,8−ジヒドロ−6H−チエノ[2,3−e]インドール−6−イル]{5−[2−(ピロリジン−1−イル)エトキシ]−1H−インドール−2−イル}メタノン、
[(8R)−8−(クロロメチル)−4−ヒドロキシ−2−メチル−7,8−ジヒドロ−6H−チエノ[2,3−e]インドール−6−イル]{5−[2−(ピロリジン−1−イル)エトキシ]−1H−インドール−2−イル}メタノン、
(7aS,8aS)−2−メチル−6−({5−[2−(ピロリジン−1−イル)エトキシ]−1H−インドール−2−イル}カルボニル)−6,7,7a,8−テトラヒドロ−4H−シクロプロパ[c]チエノ[2,3−e]インドール−4−オン、
(7aR,8aR)−2−メチル−6−({5−[2−(ピロリジン−1−イル)エトキシ]−1H−インドール−2−イル}カルボニル)−6,7,7a,8−テトラヒドロ−4H−シクロプロパ[c]チエノ[2,3−e]インドール−4−オン、
N−[6−(2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−1−イル)ヘキサノイル]−L−バリル−N−カルバモイル−N−[4−({[{2−[({[(8S)−8−(クロロメチル)−2−メチル−6−({5−[2−(ピロリジン−1−イル)エトキシ]−1H−インドール−2−イル}カルボニル)−7,8−ジヒドロ−6H−チエノ[2,3−e]インドール−4−イル]オキシ}カルボニル)(メチル)アミノ]エチル}(メチル)カルバモイル]オキシ}メチル)フェニル]−L−オルニチンアミドおよび
N−[6−(2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−1−イル)ヘキサノイル]−L−バリル−N−カルバモイル−N−[4−({[{2−[({[(8R)−8−(クロロメチル)−2−メチル−6−({5−[2−(ピロリジン−1−イル)エトキシ]−1H−インドール−2−イル}カルボニル)−7,8−ジヒドロ−6H−チエノ[2,3−e]インドール−4−イル]オキシ}カルボニル)(メチル)アミノ]エチル}(メチル)カルバモイル]オキシ}メチル)フェニル]−L−オルニチンアミド
からなる群より選択される、請求項に記載の化合物またはこの医薬として許容される塩。
【請求項10】
治療有効量の請求項1に記載の式(II)の化合物または請求項に記載の式(IV)の化合物、および少なくとも1種類の医薬として許容される賦形剤、担体または希釈剤を含む医薬組成物。
【請求項11】
1種類以上の化学療法剤をさらに含む、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
請求項1に記載の式(II)の化合物または請求項に記載の式(IV)の化合物またはこの医薬として許容される塩および1種類以上の化学療法剤を含む、抗がん治療における同時、個別または逐次使用するための併用調製物としての製剤品。
【請求項13】
請求項1に記載の式(II)の化合物または請求項に記載の式(IV)の化合物を含む医薬。
【請求項14】
がんの治療のための医薬の製造における請求項1に記載の式(II)の化合物または請求項に記載の式(IV)の化合物の使用。
【請求項15】
タンパク質、ペプチド、アプタマー、ポリマーおよびナノ粒子からなる群から選択されるビヒクルとのコンジュゲートの調製における、請求項に記載の式(IV)の化合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DNA結合部分につながれた(tethered)チエノ[2,3−e]インドール部分を含む新規な類型のアルキル化剤、この調製方法、該アルキル化剤を含む医薬組成物および特定の哺乳動物腫瘍の治療におけるこの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
広範な化学物質が現在、がんの治療に利用可能である。抗がん研究における取り組みにも関わらず、がんは依然として、迫りくる捕らえどころのない標的である;従って、新しい抗がん剤の必要性が依然として存在している。
【0003】
アルキル化剤は、がんの治療のために60年以上にわたって使用されている細胞毒性剤であるが、このレパートリーは増え続けている。この薬剤は、細胞周期のすべての期において直接DNAに作用し、DNA鎖の破壊を引き起こし、異常塩基対合、細胞分裂の阻害に至り、最終的に細胞死がもたらされる。
【発明の概要】
【0004】
本発明により、DNA結合部分につながれたチエノ[2,3−e]インドール部分を含む新規な類型のアルキル化剤を提供する。
【0005】
チエノ[2,3−e]インドール誘導体はGB2344818およびTichenor,M.S.et al.,Journal of the American Chemical Society 2007,129,14092−99に記載されている;前述の文献の一部の具体的な化合物は本発明の一般式のものから除外される。
【0006】
従って、本発明の第1の目的は、式(I)または(II)
【0007】
【化1】
の化合物であって、
式中:
R5が水素、直鎖もしくは分枝鎖のC−Cアルキル、直鎖もしくは分枝鎖のC−Cヒドロキシアルキルまたは直鎖もしくは分枝鎖のC−Cアミノアルキルであり;
R6がハロゲンであり;
BMが、式(V):
【0008】
【化2】

[式中:
Xは非存在(null)または直鎖もしくは分枝鎖のC−Cアルケニルであり;
YおよびY’は独立して、場合により置換されているアリールまたはヘテロアリールである。]
のDNA結合部分であり;
Uは、式(VI)または(VII):
【0009】
【化3】
[式中、R3は水素、または場合により置換されている直鎖もしくは分枝鎖のC−CアルキルおよびC−Cヒドロキシアルキルから選択される基であり;
qは0から3の整数である。]
の部分であり;
L1が水素またはLであり、ここで、Lは非存在または条件付きで切断可能な部分であり;
W1が非存在、または1つ以上の自壊性基(self−immolative group)を含む自壊性の系(self−immolative system)であり;
Z1が非存在、またはペプチドリンカー、非ペプチドリンカーもしくはペプチドおよび非ペプチドのハイブリッドリンカーである;
ただし:
1)qが0であり、Y’が式(VIII)、(VIII)’もしくは(VIII)’’:
【0010】
【化4】
のヘテロシクリル部分である場合、
または
2)qが1であり、Uが上記に規定した式(VII)の基であり、Yが式(IX)
【0011】
【化5】
のヘテロシクリル部分であり、Y’が式(VIII)’’’
【0012】
【化6】
[式中、QはNHまたはOであり、R21は水素またはベンゼン環上の5位または6位の−N(Cおよび−C(NH)NHから選択される基である。]
のヘテロシクリル部分である場合、
L1が水素であり、R5がメチルであり、Xが非存在である式(I)の化合物または式(II)の化合物は除外されるものとする
化合物およびこの医薬として許容される塩を提供することである。
【0013】
細胞毒性薬は、種々の機構で急速に増殖している細胞に対して、通常、DNAの複製に直接または間接的に干渉することにより作用するものである。この治療法は種々の腫瘍型に有効であったが、幾つかの制限を有する場合があり得る:細胞増殖に対する干渉は、実際には、頻繁に増殖する正常細胞、例えば骨髄、消化管の細胞および毛嚢にも影響を及ぼす。このような組織に対する用量限界副作用(免疫抑制、消化管毒性および脱毛に至る。)のため、腫瘍が完全に根絶され得る薬物濃度に達し得ない。
【0014】
また、細胞毒性薬は、一部の場合で最適でない物理化学的特性を示し、適切な薬物動態特性を欠き、患者における使用が制限されることがあり得る。
【0015】
細胞毒性薬を、該薬物を輸送し、従って腫瘍標的化を改善し得る分子または該薬物の薬物動態特性を修飾し得る分子にコンジュゲートさせることは、上記の課題を解決するために行われているストラテジーの一例である。細胞毒性薬と、より良好な標的送達を可能にする、可溶性および一部の場合では他の薬物動態特性を改善する(例えば、該薬物の半減期および局所濃度を増大させる。)、および薬物の性能を改善するタンパク質、ペプチドまたはアプタマー、ポリマーまたはナノ粒子とのコンジュゲーションの種々の例が報告されている。
【0016】
実際、得られるコンジュゲートは、細胞毒性剤とコンジュゲートさせた特異的分子の性質に応じて、可溶性、細胞透過性、インビボ治療域、制御放出、標的到達能の点で改善された特性を有する。
【0017】
この理由のため、種々の型の分子とコンジュゲートさせるのに適した官能基付与型細胞毒性剤の開発に対する要望が高まっている。
【0018】
また、本発明により、細胞毒性活性を有する以外に種々の型の求核剤とコンジュゲートさせるのにも適した官能基付与型アルキル化剤を提供する。
【0019】
さらなる一態様において、本発明は、式(III)および(IV)
【0020】
【化7】
の官能基付与型チエノ[2,3−e]インドールであって、
[式中:
BMが、式(V)’:
【0021】
【化8】
[式中:
X、Y、U、Y’およびqは上記に規定したとおりである。]
のDNA結合部分であり、];
Aが、−O−、−NH−および−CO−から選択される原子であり;
A’が非存在またはAであり、ここで、Aは上記に規定したとおりであり;
Lは非存在または条件付きで切断可能な部分であり;
Wが非存在、または1つ以上の自壊性基を含む自壊性の系であり;
Zが非存在、またはペプチドリンカー、非ペプチドリンカーもしくはペプチドおよび非ペプチドのハイブリッドリンカーであり;
RMが非存在、またはA、L、WもしくはZから選択される基のうちの少なくとも1つに結合している反応性部分であり;
RM1が非存在、またはL1、W1もしくはZ1から選択される基のうちの少なくとも1つに結合している反応性部分であり;
R5、R6、L1、W1およびZ1が上記に規定したとおりであり;
ただし:
1)式(III)の化合物において、L、W、ZまたはRMのうち少なくとも1つは非存在でなく;
2)式(IV)の化合物において:
a)L1が水素であるならば、A’は非存在でなく、L、W、ZまたはRMのうち少なくとも1つは非存在でなく;
b)A’が非存在であるならば、L、WおよびZは非存在であり、RM1は非存在でない
官能基付与型チエノ[2,3−e]インドールおよびこの医薬として許容される塩に関する。
【0022】
L1が水素または条件付きで切断可能な部分であり、O−L1結合またはO−W1結合またはO−Z1結合またはO−RM1結合が破壊されてこれによりOH官能部が生成している場合、式(II)または(IV)の化合物は、文献に報告された充分に検討された反応機構によって、それぞれ式(I)または(III)の化合物に変換され得ることに注意されたい(例えば、Baiard,R;et al.,J.Am.Chem.Soc.1963,85,567−578;Zhao,R.Y.et al.J.Med.Chem.2012,55,766−782参照)。
【0023】
また、式(III)の化合物は1つの官能基付与部位を有するものであるが、
【0024】
【化9】
【0025】
式(IV)の化合物は1つまたは2つの官能基付与部位を有するものであり得ることに注意されたい。
【0026】
具体的には、式(IV)の化合物は:
式(IV)’の化合物の場合のようにA’がAであり、L1が水素であるか、
【0027】
【化10】
または
式(IV)’’’の化合物の場合のようにA’が非存在であり、L1が水素でない
【0028】
【化11】
場合、1つの官能基付与部位を有するものであり、これは、L、W、Zおよび/またはRMはBMに直接結合され得ないからである。
【0029】
式(IV)の化合物は:
式(IV)’’の化合物の場合のようにA’がAであり、L1がLである
【0030】
【化12】
場合、2つの官能基付与部位を有するものである。
【0031】
また、本発明により、標準的な合成変換からなる方法によって調製される式(I)、(II)、(III)および(IV)の化合物、および異性体、互変異性体、水和物、溶媒和物、複合体、代謝産物、プロドラッグ、担体、N−オキシドの合成方法を提供する。
【0032】
また、本発明により、治療を必要とする哺乳動物に有効量の上記に規定した式(I)、(II)、(III)または(IV)の化合物を投与することを含む、がんの治療方法を提供する。治療を必要とする哺乳動物は、例えばヒトであり得る。
【0033】
また、本発明により、がん、細胞増殖障害およびウイルス感染の治療方法において使用するための上記に規定した式(I)、(II)、(III)または(IV)の化合物を提供する。
【0034】
好ましくは、上記に規定した式(I)、(II)、(III)または(IV)の化合物は、特定の型のがん、例えば限定されないが:癌、例えば、膀胱、乳房、結腸、腎臓、肝臓、肺(例えば、小細胞肺がん)、食道、胆嚢、卵巣、膵臓、胃、子宮頸部、甲状腺、前立腺および皮膚の癌(例えば、扁平上皮癌);リンパ球系の造血器腫瘍、例えば、白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ヘアリー細胞リンパ腫およびバーキットリンパ腫;骨髄系の造血器腫瘍、例えば、急性および慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群および前骨髄球性白血病;間葉起源の腫瘍、例えば、線維肉腫および横紋筋肉腫;中枢神経系および末梢神経系の腫瘍、例えば、星状細胞腫神経芽細胞腫、神経膠腫および神経鞘腫;他の腫瘍、例えば、黒色腫、精上皮腫、奇形癌、骨肉腫、色素性乾皮症、角化棘細胞腫、甲状腺濾胞がん、カポジ肉腫および中皮腫の治療方法において使用するためのものである。
【0035】
さらに、上記に規定した式(I)、(II)、(III)または(IV)の化合物は、特定の細胞増殖障害、例えば、良性前立腺過形成、家族性大腸腺腫症(FAP)、神経線維腫症、乾癬、アテローム性動脈硬化に付随する血管平滑筋細胞増殖、肺線維症、関節炎、糸球体腎炎ならびに術後の狭窄および再狭窄などの治療方法において使用するためのものである。
【0036】
また、上記に規定した式(I)、(II)、(III)または(IV)の化合物は、腫瘍の血管新生および転移の抑止方法において使用するためのもの、ならびに臓器移植拒絶および移植片対宿主病の治療方法において使用するためのものである。
【0037】
また、本発明により、治療有効量の上記に規定した式(I)、(II)、(III)もしくは(IV)の化合物またはこの医薬として許容される塩および少なくとも1種類の医薬として許容される賦形剤、担体および/または希釈剤を含む医薬組成物を提供する。
【0038】
さらに、本発明により、式(I)、(II)、(III)または(IV)の化合物および1種類以上の化学療法剤を含む医薬組成物を提供する。
【0039】
さらに、本発明により、式(I)、(II)、(III)または(IV)の化合物を既知の抗がん治療(放射線療法または化学療法レジメンなど)との組合せで、細胞増殖抑制剤もしくは細胞毒性剤、抗生物質型の薬剤、アルキル化剤、代謝拮抗剤、ホルモン剤、免疫学的薬剤、インターフェロン型薬剤、シクロオキシゲナーゼ阻害薬(例えば、COX−2阻害薬)、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害薬、テロメラーゼ阻害薬、チロシンキナーゼ阻害薬、抗増殖因子受容体剤、抗HER2剤、抗EGFR剤、抗血管新生剤(例えば、血管新生阻害薬)、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害薬、ras−rafシグナル伝達経路阻害薬、細胞周期阻害薬、他のcdkの阻害薬、チューブリン結合剤、トポイソメラーゼI阻害薬、トポイソメラーゼII阻害薬などとの組合せで含む医薬組成物を提供する。
【0040】
さらに、本発明により、上記に規定した式(I)、(II)、(III)または(IV)の化合物またはこの医薬として許容される塩および1種類以上の化学療法剤を含む、抗がん治療における同時、個別または逐次使用するための併用調製物としての製剤品を提供する。
【0041】
また別の態様では、本発明により、医薬として使用するための上記に規定した式(I)、(II)、(III)もしくは(IV)の化合物またはこの医薬として許容される塩を提供する。
【0042】
さらに、本発明により、抗がん活性を有する医薬の製造における上記に規定した式(I)、(II)、(III)もしくは(IV)の化合物またはこの医薬として許容される塩の使用を提供する。
【0043】
最後に、本発明により、コンジュゲートの調製における上記に規定した式(I)、(II)、(III)もしくは(IV)の化合物またはこの医薬として許容される塩の使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】コンジュゲートA1の質量スペクトルを示し、x軸に分子量(m/z)を表すとともに、秒当たりカウント(cps)で示した強度をy軸に表す。
図2】コンジュゲートA1のHPLCプロフィールを示し、x軸に時間(分)を表すとともに、UV吸光度(mAU)をy軸に表す。
図3】コンジュゲートA1のカテプシンでの2時間の処理後のHPLCプロフィールを示し、x軸に時間(分)を表すとともに、UV吸光度(mAU)をy軸に表す。
図4a】放出された化合物1の質量スペクトルを示し、x軸に分子量(m/z)を表すとともに、秒当たりカウント(cps)で示した強度をy軸に表す。
図4b】放出された化合物A3(化合物1の前駆体)の質量スペクトルを示し、x軸に分子量(m/z)を表すとともに、秒当たりカウント(cps)で示した強度をy軸に表す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
特に記載のない限り、以下の用語および語句は、本明細書で用いる場合、以下の意味を有していることを意図する。
【0046】
用語「直鎖もしくは分枝鎖のC−Cアルキル」により、本発明者らは、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシルなどの基のいずれかを意図する。
【0047】
用語「直鎖もしくは分枝鎖のC−Cアルコキシ」により、本発明者らは、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシなどの基のいずれかを意図する。
【0048】
用語「直鎖もしくは分枝鎖のC−Cアルキル」により、本発明者らは、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチルなどの基のいずれかを意図する。
【0049】
用語「直鎖もしくは分枝鎖のC−Cヒドロキシアルキル」により、本発明者らは、1から4個の炭素原子を有し、ヒドロキシル基を有する炭化水素基、例えば、ヒドロキシメチル、2−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシブチル、2−ヒドロキシブチルなどを意図する。
【0050】
用語「直鎖もしくは分枝鎖のC−Cハロアルキル」により、本発明者らは、1から4個の炭素原子を有し、塩素、臭素またはフッ素などのハロゲン原子を有する炭化水素基を意図する。かかる基の非限定的な例はクロロメチル、2−クロロエチル、3−クロロプロピル、3−クロロブチル、フルオロメチル、2−フルオロエチル、3−フルオロプロピル、3−フルオロブチル、ブロモメチル、2−ブロモエチル、3−ブロモプロピル、3−ブロモブチルなどである。
【0051】
用語「直鎖もしくは分枝鎖のC−Cアミノアルキル」により、本発明者らは、例えば、2−アミノエチル、3−アミノプロピル、4−アミノブチル、3−アミノブチルなどの基のいずれかを意図する。
【0052】
用語「直鎖もしくは分枝鎖のC−Cスルフヒドリルアルキル」により、本発明者らは、1から4個の炭素原子を有し、スルフヒドリル基を有する炭化水素基、例えば、メルカプトメチル、2−メルカプトエチル、3−メルカプトプロピル、3−メルカプトブチル、2−メルカプトブチルなどを意図する。
【0053】
用語「C−Cシクロアルキル」は、本明細書で用いる場合、飽和または不飽和の非芳香族のすべて炭素の単環式の環をいい、これは、1つの環からなるものであってもよく、一体に縮合している2つ以上の環からなるものであってもよい。例としては、限定されないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、1,3−シクロヘキサジエニル、デカリニル、および1,4−シクロヘキサジエニルが挙げられる。
【0054】
用語「C−Cアルケニル」により、本発明者らは、2から4個の炭素原子および任意の位置に二重結合を有する分枝または非分枝の不飽和炭化水素基、例えば、エテニル、1−プロペニル、2−プロペニル、1−メチル−エテニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニルなどを意図する。
【0055】
用語「ハロゲン」により、本発明者らは、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を意図する。
【0056】
用語「アリール」は、本明細書で用いる場合、場合によりさらに単結合によって互いに縮合または連結している1から2つの環系の単環、二環または多環の炭素環式の炭化水素をいい、ここで、該炭素環式の環のうち少なくとも1つは芳香族であり、ここで、用語「芳香族」は、完全に共役したπ電子結合系をいう。かかるアリール基の非限定的な例はフェニル、α−またはβ−ナフチル基である。
【0057】
用語「ヘテロアリール」は、本明細書で用いる場合、酸素、窒素およびイオウ中から選択される1から4個のヘテロ原子を有する芳香族の複素環式の環、典型的には4から7員の複素環をいい、ここで、窒素およびイオウは場合により酸化されていてもよく、窒素は場合により4級化されていてもよく;前記ヘテロアリール環は、場合によりさらに、1つの環または一体に縮合している2つ以上の環、芳香族および非芳香族の炭素環式および複素環式の環に縮合または連結していてもよい。ヘテロ原子同士が互いに直接連結されていてもよい。ヘテロアリール基の例としては、限定されないが、ピリジニル、ピリミジル、フラニル、ピロリル、トリアゾリル、ピラゾリル、ピラジニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、チエニル、インドリル、ベンゾフラニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、プリニル、インダゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、キノキサリニル、イソキノリル、およびキノリルが挙げられる。一実施形態では、ヘテロアリール基は1から4個のヘテロ原子を含むものである。「Cヘテロアリール基」は、ヘテロ芳香族基の環系内に存在している炭素は1個しかない(従って、場合により存在する置換基内の炭素原子はカウントされない。)ことを示していることに注意されたい。かかるヘテロ芳香族基の一例はテトラゾリル基である。
【0058】
用語「ヘテロシクリル」は、本明細書で用いる場合、1つの環または一体に縮合している2つ以上の環からなるものであり得る飽和または不飽和の非芳香族のC−Cの炭素環式の環をいい、ここで、1から4個の炭素原子が窒素、酸素、イオウなどのヘテロ原子で置き換えられており、前記ヘテロ原子同士が互いに直接連結されていてもよく;窒素およびイオウは場合により酸化されていてもよく、窒素は場合により4級化されていてもよい。ヘテロシクリル基の非限定的な例は、例えば、テトラヒドロフラニル、ピロリジニル、ピペリジニル、1,4−ジオキサニル、デカヒドロキノリニル、ピペラジニル、オキサゾリジニルおよびモルホリニルである。
【0059】
用語「脱離基」は、置換反応で別の基によって置換され得る基をいう。かかる脱離基は当該技術分野でよく知られており、例としては、限定されないが、ハライド(フルオリド、クロリド、ブロミド、およびヨージド)、アジド、スルホネート(例えば、場合により置換されているC−Cアルカンスルホネート、例えばメタンスルホネートおよびトリフルオロメタンスルホネート、または場合により置換されているC−C12アルキルベンゼンスルホネート、例えばp−トルエンスルホネート)、スクシンイミド−N−オキシド、p−ニトロフェノキシド、ペンタフルオロフェノキシド、テトラフルオロフェノキシド、カルボキシレート、アミノカルボキシレート(カルバメート)ならびにアルコキシカルボキシレート(カーボネート)が挙げられる。飽和炭素における置換では、ハライドおよびスルホネートが好ましい脱離基である。カルボニル炭素における置換では、例えば、ハライド、スクシンイミド−N−オキシド、p−ニトロフェノキシド、ペンタフルオロフェノキシド、テトラフルオロフェノキシド、カルボキシレートまたはアルコキシカルボキシレート(カーボネート)が脱離基として使用され得る。用語「脱離基」はまた、脱離反応、例えば、電子カスケード反応またはスピロ環化反応の結果、脱離する基をいう。この場合、例えば、ハライド、スルホネート、アジド、アミノカルボキシレート(カルバメート)またはアルコキシカルボキシレート(カーボネート)が脱離基として使用され得る。
【0060】
用語「活性エステル」は、エステル部分のアルコキシ基が良好な脱離基である官能基をいう。かかるアルコキシ基の例としては、限定されないが、スクシンイミド−N−オキシド、p−ニトロフェノキシド、ペンタフルオロフェノキシド、テトラフルオロフェノキシド、1−ヒドロキシベンゾトリアゾールおよび1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール、ならびに同等の脱離能を有する基が挙げられる。非置換アルキル系アルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシおよびt−ブトキシは良好な脱離基として適格ではなく、従って、メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステルおよびt−ブチルエステルは活性エステルであるとはみなされない。
【0061】
用語「求核剤」は、求核性基を有する分子をいう。用語「求核性基」は、化学反応において求電子性基に電子対を供与して化学結合を形成する種をいう。かかる求核性基の例としては、限定されないが、ハロゲン、アミン、ナイトライト、アジド、アルコール、アルコキシドアニオン、カルボキシレートアニオン、チオール、チオレートなどが挙げられる。
【0062】
用語「求電子性基」は、化学反応において求核性基から電子対を受容して化学結合を形成する種をいう。かかる求電子性基の例としては、限定されないが、エステル、アルデヒド、アミド、ケトンなどが挙げられる。
【0063】
用語「アルキル化部分」は、1つ以上の切断性結合の破壊後も依然として残っており、核酸鎖に共有結合されていても、されていなくてもよい構造部をいう。
【0064】
用語「非天然アミノ酸」は、天然に存在するアミノ酸のD−立体異性体をいう。
【0065】
式(I)、(II)、(III)または(IV)の化合物の医薬として許容される塩としては、無機酸または有機酸、例えば、硝酸、塩酸、臭化水素酸、硫酸、過塩素酸、リン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、フマル酸、乳酸、シュウ酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、イセチオン酸およびサリチル酸を用いた酸付加塩が挙げられる。
【0066】
式(I)、(II)、(III)または(IV)の化合物の医薬として許容される塩としてはまた、無機塩基または有機塩基、例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属、特にナトリウム、カリウム、カルシウム アンモニウムまたはマグネシウムの水酸化物、炭酸塩または重炭酸塩、非環式または環式のアミンを用いた塩も挙げられる。
【0067】
不斉中心または別の形態の異性中心が本発明の化合物に存在する場合、あらゆる形態のかかる異性体(1種類または複数種)、例えばエナンチオマーおよびジアステレオマーを包含していることを意図する。不斉中心を含む化合物は、ラセミ混合物、エナンチオマー的に富化した混合物として使用してもよく、ラセミ混合物をよく知られた手法を用いて分離してもよく、個々のエナンチオマーを単独で使用してもよい。化合物が不飽和炭素−炭素二重結合を有するものである場合、シス(Z)異性体とトランス(E)異性体の両方が本発明の範囲に含まれる。
【0068】
化合物が互変異性形態で存在し得るものである場合、平衡状態で存在していようと大部分が一方の形態で存在していようと、各形態が本発明に包含されることが想定される。
【0069】
DNA結合部分BM
BM部分は、式(I)、(II)、(III)または(IV)の化合物をDNAの二本鎖と結合または会合させる結合部分である。該結合部分は、該誘導体のDNAに対する親和特性を改善し得るか、またはアルキル化剤のアルキル化反応性を改善し得るか、またはDNAの種々の配列を標的化し、これにより該化合物の標的特異性をモジュレートし得る。
【0070】
好ましくは、式(I)または(II)の化合物において、BM部分は、上記に規定した式(V)の基であり、
ここで、Xは非存在であるか、または式(XIV):
【0071】
【化13】
[式中、R3は独立して、同じまたは異なるものであり、上記に規定したとおりである。]
のアルケニル基であり;
Uおよびqは上記に規定したとおりであり;
Y(存在する場合)は:
【0072】
【化14】
から選択される基であり;
Y’は:
【0073】
【化15】
[式中、R3は上記に規定したとおりであり、R15、R16およびR20は独立して、水素、ヒドロキシ、−NO、場合により置換されている直鎖もしくは分枝鎖のC−CアルキルもしくはC−Cアルコキシ、シアノ、−COOH、−CONHR22、−NR22R23または−O−(C−Cアルキル)−NR22R23であり、ここで、R22およびR23は独立して水素もしくはC−Cアルキルであるか、またはR22とR23が一体となって3から7員のヘテロシクリルを形成している。]
から選択される基である。
【0074】
より好ましくは、式(I)または(II)の化合物において、BM部分は、上記に規定した式(V)の基であり、
ここで、XおよびUは上記に規定したとおりであり;
qは0から2の整数であり;
Y(存在する場合)は、
【0075】
【化16】
[式中、R3は上記に規定したとおりである。]
から選択される基であり;
Y’は:
【0076】
【化17】
[式中、R3は上記に規定したとおりであり、R15、R16およびR20は独立して、水素、または場合により置換されている直鎖もしくは分枝鎖のC−CアルキルもしくはC−Cアルコキシ、−CONHR22または−O−(C−Cアルキル)−NR22R23であり、ここで、R22およびR23は上記に規定したとおりである。]
から選択される基である。
【0077】
好ましくは、式(III)または(IV)の化合物において、BM部分は、上記に規定した式(V)’の基であり、
ここで、Xは非存在、または上記に規定した式(XIV)のC−Cアルケニルであり;
Uおよびqは上記に規定したとおりであり;
Y(存在する場合)およびY’は独立して、式:
【0078】
【化18】
[式中、R3は上記に規定したとおりであり、R15、R16およびR20は独立して、水素、ヒドロキシ、−NO、場合により置換されている直鎖もしくは分枝鎖のC−CアルキルもしくはC−Cアルコキシ、シアノ、−COOH、−CONHR22、−NR22R23または−O−(C−Cアルキル)−NR22R23であり、ここで、R22およびR23は独立して水素もしくはC−Cアルキルであるか、またはR22とR23が一体となって3から7員のヘテロシクリルを形成している。]
の群から選択される基である。
【0079】
より好ましくは、式(III)または(IV)の化合物において、BM部分は、上記に規定した式(V)’の基であり、
ここで、XおよびUは上記に規定したとおりであり;
qは0から2の整数であり;
Y(存在する場合)は
【0080】
【化19】
[式中、R3は上記に規定したとおりである。]
から選択され;
Y’は:
【0081】
【化20】
[式中、R3は上記に規定したとおりであり、R15、R16およびR20は独立して、水素または場合により置換されている直鎖もしくは分枝鎖のC−CアルキルもしくはC−Cアルコキシ、−CONHR22または−O−(C−Cアルキル)−NR22R23であり、ここで、R22およびR23は上記に規定したとおりである。]
から選択される基である。
【0082】
条件付きで切断可能な部分LまたはL1
LまたはL1部分(存在する場合)は、特定の条件内または特定の条件下に供されると化学的、光化学的、物理的、生物学的または酵素的方法によって切断され得る条件付きで切断可能な基である。このような条件の一例は、例えば、本発明の化合物を、Lおよび/またはL1の加水分解をもたらす水性環境に供すること、または本発明の化合物を、Lおよび/またはL1を認識して切断する酵素が含まれた環境に供すること、または、本発明の化合物を、Lおよび/またはL1の還元および/または除去をもたらす還元条件下に供すること、または、本発明の化合物を、Lおよび/またはL1の酸化および除去をもたらす酸化条件下に供すること、または、本発明の化合物を、切断をもたらす放射線(例えば、UV光)との接触状態に供すること、または、本発明の化合物を、Lおよび/またはL1の切断をもたらす熱との接触状態に供することであり得る。このような条件は、本発明の化合物を動物(例えば哺乳動物、例えばヒト)に投与した直後に、循環系内のユビキタス酵素の存在により満たされるものであり得る。択一的に、前記条件は、該化合物が特定の器官、組織、細胞、細胞成分標的、または細菌標的、ウイルス標的もしくは微生物標的に局在する場合に、例えば、内部要因(例えば、標的特異的酵素もしくは低酸素)の存在または外部要因(例えば、放射線、磁場)の適用によって満たされるものであってもよい。
【0083】
LまたはL1の切断は、式(III)の化合物もしくは式(IV)(この場合、A’がAである。)の化合物におけるAとL間の結合、または式(II)もしくは(IV)の化合物における酸素とL1間の結合が破壊されることを意味する:
【0084】
【化21】
【0085】
式(IV)の化合物において、2つの条件付きで切断可能な基が存在する場合があり得ることに注意されたい。この場合、該2つの部分は同じであってもそうでなくてもよく、切断に同じ条件が必要とされるものであってもそうでなくてもよい。
【0086】
一実施形態では、Lおよび/またはL1は、体の他の箇所と比べて標的細胞の近傍もしくは内部に存在する酵素もしくは加水分解性条件によって切断される部分、または標的細胞の近傍もしくは内部のみに存在する酵素もしくは加水分解性条件によって切断される部分であり得る。標的部位特異性が、標的部位における選択的形質転換および/または前記Lおよび/またはL1の切断に基づいてのみ達成される場合、切断を引き起こす条件は、好ましくは少なくともある程度、標的部位特異的であるはずであることを認識することが重要である。
【0087】
一実施形態では、Lおよび/またはL1の切断は細胞内で起こる。
【0088】
別の実施形態では、Lおよび/またはL1の切断は細胞外で起こる。
【0089】
別の実施形態では、Lおよび/またはL1の切断はユビキタス細胞内酵素によって起こり得る。
【0090】
好ましい一実施形態では、Lおよび/またはL1は、循環系内に存在するユビキタス酵素(例えば、エステラーゼ)または細胞内酵素(例えば、プロテアーゼおよびホスファターゼなど)、またはpH制御型加水分解によって切断され得る部分であり得る。従って、Lおよび/またはL1は、場合により連結原子(1個もしくは複数)Aまたは酸素と一体となって、インビボで切断され得るカルバメート基、ウレア基、エステル基、アミド基、イミン基、ヒドロキシルアミノ基、エーテル基またはリン酸基を形成し得る。
【0091】
より好ましい一実施形態では、Aが−O−であり、LおよびL1が独立して、非存在であるか、または:−NHCO−R9(Xa);−NHCOO−R9(Xc);−NH−R9(Xd);
【0092】
【化22】
[式中:
R9およびR10は各々、独立して、非存在、水素、ヒドロキシであるか、または直鎖もしくは分枝鎖のC−Cアルキル、直鎖もしくは分枝鎖のC−Cヒドロキシアルキル、直鎖もしくは分枝鎖のC−Cスルフヒドリルアルキルおよび直鎖もしくは分枝鎖のC−Cアミノアルキルから選択される基であり;
各nは独立して、0から2の整数であり、
n1は0から4の整数である。]
から選択される基である。
【0093】
別のより好ましい実施形態では、Aが−N−であり、
Lが非存在であるか、または:
【0094】
【化23】
[式中:
R9およびn1は上記に規定したとおりであり、
L1は非存在であるか、または上記に規定した(Xa)、(Xc)、(Xd)、(Xe)、(Xf)、(Xj)および(Xk)から選択される基である。]
から選択される基である。
【0095】
別のより好ましい実施形態では、Aが非存在であり、L1が上記に規定した基(Xa)、(Xc)、(Xd)、(Xe)、(Xf)、(Xj)および(Xk)である。
【0096】
別のより好ましい実施形態では、Aが−CO−であり、Lが非存在であるか、または:
【0097】
【化24】
[式中:
R9、R10およびn1は上記に規定したとおりであり、
L1は非存在であるか、または上記に規定した(Xa)、(Xc)、(Xd)、(Xe)、(Xf)、(Xj)および(Xk)から選択される基である。]
から選択される基である。
【0098】
別のより好ましい実施形態では、A’が非存在であり、L1が、上記に規定した(Xa)、(Xc)、(Xd)、(Xe)、(Xf)、(Xj)および(Xk)から選択される基である。
【0099】
自壊性の系WまたはW1
WまたはW1基(存在する場合)は、式(III)および(IV)の化合物では、安定な様式で一方の側からL部分またはA部分(Lが非存在である場合)をZ部分またはRM部分(Zが非存在である場合)につなぐ自壊性の系;式(II)の化合物では、安定な様式で一方の側からL1部分または酸素(L1が非存在である場合)をZ1に、またはさらに式(IV)の化合物ではRM1(Z1が非存在である場合)につなぐ自壊性の系である。L−W、A−W、L1−W1またはO−W1結合は、上記のように特定の条件内または特定の条件下に供されて化学的、光化学的、物理的、生物学的または酵素的方法によって活性化されると不安定になり得、場合により、対応する部分:
【0100】
【化25】
の放出がもたらされることがあり得る。
【0101】
式(IV)の化合物では、2つの自壊性の系が存在する場合があり得ることに注意されたい。この場合、該2つの系は同じであってもそうでなくてもよく、切断に同じ条件が必要とされるものであってもそうでなくてもよい。
【0102】
自壊性の系は、式(II)、(III)または(IV)の化合物内に、例えば、可溶性を改善するため、またはアルキル化部分と反応性部分間の空間を改善するために組み込まれ得;また、前記自壊性の系は、求核剤に対するRMまたはRM1の反応性をモジュレートするものであってもよい。
【0103】
自壊性の系は当業者に知られており、例えば、WO2002/083180およびWO2004/043493に記載のもの;またはTranoy−Opalinsi,A.et al.,Anticancer Agents in Medicinal Chemistry,2008,8,618−637に記載のものを参照のこと。自壊性の系の他の例としては、限定されないが、場合により置換されている4−アミノ酪酸アミド、適切に置換されたビシクロ[2.2.1]およびビシクロ[2.2.2]環系または2−アミノフェニルプロピオン酸アミドが挙げられる(WO2005/079398、WO2005/105154およびWO2006/012527;Greenwald,R.B.,et al,.Adv.Drug Delivery Rev.2003,55,217−250;Kingsbury,W.D.;et al,.J.Med.Chem.1984,27,1447−1451参照)。
【0104】
好ましい一実施形態では、WまたはW1は、連結原子(1個もしくは複数)L、L1、A、Z、Z1、RM、RM1もしくは酸素と一体となって、活性化されると場合により切断され得るカーボネート結合基、カルバメート結合基、ウレア結合基、エステル結合基、アミド結合基またはエーテル結合基を形成し得る。
【0105】
好ましい一実施形態では、WおよびW1が独立して、非存在であるか、または:
【0106】
【化26】
[式中
R9とR10のうち一方は非存在であり、他方は上記に規定したとおりであり;
R11およびR12は各々、独立して、水素、ハロゲン、直鎖もしくは分枝鎖のC−Cアルキルまたは直鎖もしくは分枝鎖のC−Cヒドロキシアルキルであり;
R24およびR25は各々、独立して、水素、ハロゲン、メチル、エチル、直鎖もしくは分枝鎖のC−Cヒドロキシアルキル、直鎖もしくは分枝鎖のC−Cハロアルキルであるか、またはR24とR25が一体となって3から6員の炭素環を形成しており;
mは0から3の整数であり;
はCH、CHN−R13またはN−R13であり、ここで、R13は水素、直鎖もしくは分枝鎖のC−Cアルキル、直鎖もしくは分枝鎖のC−Cヒドロキシアルキルまたは直鎖もしくは分枝鎖のC−Cハロアルキルである。]
から独立して選択される1つ以上の自壊性基を含む自壊性の系である。
より好ましい一実施形態では、WおよびW1は独立して、非存在であるか、または:
【0107】
【化27】
[式中、R9とR10のうち一方は非存在であり、他方は上記に規定したとおりであり;
、m、R11、R12、R13、R24およびR25は上記に規定したとおりである。]
から選択される基である。
【0108】
ZまたはZ1リンカー
ZまたはZ1リンカー(存在する場合)は、ペプチド性(Z)、非ペプチド性(Z)またはハイブリッド型(Z)であり得、ここで、前記ハイブリッド型リンカーはペプチド性と非ペプチド性のものであり;式(II)、(III)または(IV)の化合物において、前記ZまたはZ1リンカーは、それぞれWまたはW1から、上記のように特定の条件内または特定の条件下に供されると化学的、光化学的、物理的、生物学的または酵素的方法によって切断され得るものである:
【0109】
【化28】
【0110】
ZまたはZ1リンカーは直鎖であっても分枝鎖であってもよい。
【0111】
ZもしくはZ1とこの左側部分間の結合またはZもしくはZ1と場合によりRMもしくはRM1間の結合は、エステル結合、アミド結合、カーボネート結合、カルバメート結合、ジスルフィド結合またはカルバメート結合であり得る。
【0112】
一実施形態では、ZおよびZ1の両方が非存在である。
【0113】
別の実施形態では、ZまたはZ1のうち一方が非存在である。
【0114】
別の実施形態では、Zおよび/またはZ1は、タンパク質分解性酵素、プラスミン、カテプシン、β−グルクロニダーゼ、ガラクトシダーゼ、前立腺特異抗原(PSA)、ウロキナーゼ型プラスミノゲン活性化因子(u−PA)またはマトリックスメタロプロテイナーゼファミリーの構成員によって切断され得るペプチドリンカーZである。
【0115】
別の実施形態では、Zおよび/またはZ1は、1つ以上の非ペプチド水溶性部分を含むものであり得る非ペプチドリンカーZである。この場合、該リンカーは、式(II)、(III)または(IV)の化合物の水溶性に寄与する。
【0116】
別の実施形態では、Zは、式(II)、(III)または(IV)の化合物の凝集を低減させる1つ以上の非ペプチド部分を含むものであり得る非ペプチドリンカーであり、該部分は、式(II)、(III)または(IV)の化合物の水溶性を増大させる部分(1つまたは複数)でもあるものであってもよく、そうでなくてもよい。
【0117】
例えば、非ペプチド水溶性のZリンカーは、オリゴエチレングリコール部分もしくはポリエチレングリコール部分またはこの誘導体を含むものであり得る。
【0118】
別の実施形態では、Zおよび/またはZ1は、一般式:
−Z
のペプチド残基と非ペプチド残基の両方を含むものであり得るハイブリッド型リンカーZであり、
式中、Zはペプチドリンカーであり、Zは非ペプチドリンカーである。ハイブリッド型リンカーは、式(II)、(III)もしくは(IV)の化合物の可溶性に寄与するものであり得る、および/またはタンパク質分解性酵素によって、例えばマトリックスメタロプロテイナーゼファミリーの構成員によって切断され得る基質であり得る。
【0119】
好ましい一実施形態では、Zは、天然L−アミノ酸、非天然D−アミノ酸、合成アミノ酸またはこの任意の組合せを含む単一アミノ酸、ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド、およびオリゴペプチド部分から選択され、このとき、C末端アミノ酸残基またはN末端アミノ酸残基のうち一方はW、LもしくはAに、またはW1、L1もしくは酸素に連結され、−COOH基または−NH基を有する他方の末端アミノ酸末端部は場合によりRMまたはRM1に連結される。
【0120】
より好ましい一実施形態では、Zは、C末端を介してWもしくはW1に連結されているか、またはWが非存在である場合はLに連結されているか、またはW1が非存在である場合はL1に連結されているか、またはWとLの両方が非存在である場合はAに連結されているか、または、W1とL1の両方が非存在である場合は酸素に連結されているジペプチドまたはトリペプチドである。
【0121】
別のより好ましい実施形態では、該ジペプチドまたはトリペプチドのC末端アミノ酸残基は、グリシン、リシン、アラニン、アルギニンおよびシトルリンから選択され;N末端アミノ酸残基は、任意の天然または非天然アミノ酸から選択され;好ましくは、トリペプチドの場合、真ん中のアミノ酸残基は、ロイシン、イソロイシン、メチオニンおよびフェニルアラニンから選択される。
【0122】
別のより好ましい実施形態では、Zはペンタペプチドを含むものであり、このとき、C末端アミノ酸は、任意の天然または非天然アミノ酸から選択され、N末端アミノ酸残基は6−アミノヘキサン酸である。
【0123】
好ましい一実施形態では、Zは、オリゴエチレングリコール部分もしくはポリエチレングリコール部分またはこの誘導体を含むものであり得る。
【0124】
より好ましい一実施形態では、Zは:
【0125】
【化29】
[式中
R9とR10のうち一方は非存在であり、他方は上記に規定したとおりであり;
pは1から20の整数である。]
から選択される基である。
【0126】
好ましい一実施形態では、Zは:
ペプチド部分Z、ここで、Zは、天然L−アミノ酸を含む単一アミノ酸、トリペプチドまたはテトラペプチドである、および
オリゴエチレングリコール部分もしくはポリエチレングリコール部分またはこの誘導体を含む非ペプチド部分Z
を含むハイブリッド型の部分である。
【0127】
反応性部分RMまたはRM1
RM部分またはRM1部分(存在する場合)は、求核剤(即ち、求核性基を有する分子)または求電子剤(即ち、求電子性基を有する分子)と比較的穏やかな条件下で反応し得る反応性基であって、該反応性部分の事前の官能基付与を必要とすることなく反応し得る反応性基である;該反応性部分と前記求核剤または求電子剤との前記反応は、いくらかの熱、圧力、触媒、酸および/または塩基の適用のみ必要とする。従って、RM部分またはRM1部分のうち一方が存在する場合、式(III)または(IV)の化合物は種々の型の求核剤または求電子剤とコンジュゲートする。
【0128】
RMおよびRM1部分の両方が非存在である場合、式(III)または(IV)の化合物は、A、L、L1、W、W1、ZおよびZ1部分(1つまたは複数)上に存在する1つ以上の求核性基(例えば、アミノ、チオール、ヒドロキシル)または求電子性基(例えば、カルボン酸基)を介して種々の型の求核剤または求電子剤とコンジュゲートし得る。
【0129】
式(III)の化合物では、RM部分はA、L、WもしくはZ基のうちの1つ以上に連結され得;式(IV)の化合物では、RMは、A、L、WもしくはZ基のうちの1つ以上および/またはL1、W1、Z1基のうちの1つ以上に連結され得るか、または酸素原子に連結され得るかのいずれかである:
【0130】
【化30】
【0131】
反応性部分の例としては、限定されないが、カルバモイルハライド、アシルハライド、活性エステル、アンヒドリド、α−ハロアセチル、α−ハロアセトアミド、マレイミド、イソシアネート、イソチオシアネート、ジスルフィド、チオール、ヒドラジン、ヒドラジド、スルホニルクロリド、アルデヒド、メチルケトン、ビニルスルホン、ハロメチルおよびメチルスルホネートが挙げられる。
【0132】
本発明の好ましい一実施形態では、求核剤の求核性基がNH、NH、SHまたはOHである場合、RMおよびRM1が独立して、非存在であるか、または:
【0133】
【化31】
[式中、R14はC−Cアルキルまたは電子求引性基、好ましくはNOおよびCNであり;
rは0から7の整数であり;
R11およびR12は上記に規定したとおり、好ましくはC−Cアルキルである。]
から選択される基である。
【0134】
本発明の別の好ましい実施形態では、求電子剤の求電子性基がCOOHである場合、RMおよびRM1は独立して、非存在であるか、または:
【0135】
【化32】
から選択される基である。
【0136】
最も好ましい一実施形態では、RMおよびRM1のうち少なくとも一方が非存在でない。
【0137】
好ましくは、本発明により、R5が直鎖または分枝鎖のC−Cアルキルである上記に規定した式(I)または(II)の化合物を提供する。
【0138】
より好ましくは、本発明により、L1が水素または式(Xj)
【0139】
【化33】
[式中、R9は水素、ヒドロキシであるか、または直鎖もしくは分枝鎖のC−Cアルキル、直鎖もしくは分枝鎖のC−Cヒドロキシアルキル、直鎖もしくは分枝鎖のC−Cスルフヒドリルアルキルおよび直鎖もしくは分枝鎖のC−Cアミノアルキルから選択される場合により置換されている基である。]
の条件付きで切断可能な部分であることを特徴とする、上記に規定した式(II)の化合物を提供する。
【0140】
好ましくは、本発明により、R5が直鎖または分枝鎖のC−Cアルキルであることを特徴とする、上記に規定した式(III)または(IV)の化合物を提供する。
【0141】
より好ましくは、本発明により、A’が非存在であり、L1がL(ここで、Lは上記に規定したとおりである。)であることを特徴とする、上記に規定した式(IV)の化合物を提供する。
【0142】
より好ましくは、本発明により、LおよびL1が独立して、非存在または:
−NHCO−R9(Xa);−NHCOO−R9(Xc);−NH−R9(Xd);
【0143】
【化34】
[式中:
R9およびR10は各々、独立して、非存在、水素、ヒドロキシであるか、または直鎖もしくは分枝鎖のC−Cアルキル、直鎖もしくは分枝鎖のC−Cヒドロキシアルキル、直鎖もしくは分枝鎖のC−Cスルフヒドリルアルキルおよび直鎖もしくは分枝鎖のC−Cアミノアルキルから選択される場合により置換されている基であり;
各nは独立して、0から2の整数であり、
n1は0から4の整数である。]
から選択される条件付きで切断可能な部分であることを特徴とする、上記に規定した式(III)または(IV)の化合物を提供する。
【0144】
より好ましくは、本発明により、WおよびW1が独立して:
【0145】
【化35】
[式中
R9とR10のうち一方は非存在であり、他方は上記に規定したとおりであり;
R11およびR12は各々、独立して、水素、ハロゲン、直鎖もしくは分枝鎖のC−Cアルキルまたは直鎖もしくは分枝鎖のC−Cヒドロキシアルキルであり;
R24およびR25は各々、独立して、水素、ハロゲン、メチル、エチル、直鎖もしくは分枝鎖のC−Cヒドロキシアルキル、直鎖もしくは分枝鎖のC−Cハロアルキルであるか、またはR24とR25が一体となって3から6員の炭素環を形成しており;
mは0から3の整数であり;
はCH、CHN−R13またはN−R13であり、ここで、R13は水素、直鎖もしくは分枝鎖のC−Cアルキル、直鎖もしくは分枝鎖のC−Cヒドロキシアルキルまたは直鎖もしくは分枝鎖のC−Cハロアルキルである。]
から独立して選択される1つ以上の自壊性基を含む自壊性の系であることを特徴とする、上記に規定した式(III)または(IV)の化合物を提供する。
【0146】
より好ましくは、本発明により、ZおよびZ1が独立して、ペプチドリンカー、好ましくは、ジペプチドリンカーもしくはトリペプチドリンカー、または
【0147】
【化36】
[式中
R9とR10のうち一方は非存在であり、他方は上記に規定したとおりであり;
pは1から20の整数である。]
から選択されるオリゴエチレングリコール部分もしくはポリエチレングリコール部分またはこの誘導体を含む非ペプチドリンカーであることを特徴とする、上記に規定した式(III)または(IV)の化合物を提供する。
【0148】
より好ましくは、本発明により、RMおよびRM1が独立して:
【0149】
【化37】
[式中、R14はC−Cアルキルまたは電子求引性基、好ましくはNOおよびCNであり;
rは0から7の整数であり;
R11およびR12は上記に規定したとおりである。]
から選択される反応性部分であることを特徴とする、上記に規定した式(III)または(IV)の化合物を提供する。
【0150】
本発明の限定されない具体的な好ましい化合物(compd:化合物)(場合により医薬として許容される塩の形態)は以下のもの:
[(8S)−8−(クロロメチル)−4−ヒドロキシ−2−メチル−7,8−ジヒドロ−6H−チエノ[2,3−e]インドール−6−イル]{5−[2−(ピロリジン−1−イル)エトキシ]−1H−インドール−2−イル}メタノン(化合物1)
[(8R)−8−(クロロメチル)−4−ヒドロキシ−2−メチル−7,8−ジヒドロ−6H−チエノ[2,3−e]インドール−6−イル]{5−[2−(ピロリジン−1−イル)エトキシ]−1H−インドール−2−イル}メタノン(化合物2)
(7aS,8aS)−2−メチル−6−({5−[2−(ピロリジン−1−イル)エトキシ]−1H−インドール−2−イル}カルボニル)−6,7,7a,8−テトラヒドロ−4H−シクロプロパ[c]チエノ[2,3−e]インドール−4−オン(化合物3)
(7aR,8aR)−2−メチル−6−({5−[2−(ピロリジン−1−イル)エトキシ]−1H−インドール−2−イル}カルボニル)−6,7,7a,8−テトラヒドロ−4H−シクロプロパ[c]チエノ[2,3−e]インドール−4−オン(化合物4)
N−[6−(2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−1−イル)ヘキサノイル]−L−バリル−N−カルバモイル−N−[4−({[{2−[({[(8S)−8−(クロロメチル)−2−メチル−6−({5−[2−(ピロリジン−1−イル)エトキシ]−1H−インドール−2−イル}カルボニル)−7,8−ジヒドロ−6H−チエノ[2,3−e]インドール−4−イル]オキシ}カルボニル)(メチル)アミノ]エチル}(メチル)カルバモイル]オキシ}メチル)フェニル]−L−オルニチンアミド(化合物5)および
N−[6−(2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−1−イル)ヘキサノイル]−L−バリル−N−カルバモイル−N−[4−({[{2−[({[(8R)−8−(クロロメチル)−2−メチル−6−({5−[2−(ピロリジン−1−イル)エトキシ]−1H−インドール−2−イル}カルボニル)−7,8−ジヒドロ−6H−チエノ[2,3−e]インドール−4−イル]オキシ}カルボニル)(メチル)アミノ]エチル}(メチル)カルバモイル]オキシ}メチル)フェニル]−L−オルニチンアミド(化合物6)
である。
【0151】
本発明の式(I)、(II)、(III)または(IV)の任意の具体的な化合物(場合により医薬として許容される塩の形態)の参考例については、実験のセクションおよび特許請求の範囲を参照されたい。
【0152】
また、本発明により、後述する反応経路および合成スキームを使用し、当該技術分野で利用可能な手法および容易に入手可能な出発物質を用いることによる、上記に規定した式(I)、(II)、(III)または(IV)の化合物の調製方法を提供する。本発明の一部の特定の実施形態の調製を以下の実施例に記載しているが、当業者には、記載の調製例は、本発明の他の実施形態を調製するために容易に適合され得ることが認識されよう。例えば、実例を示していない本発明による化合物の合成は、当業者に自明の改良によって、例えば、干渉基を適切に保護すること、当該技術分野で知られた他の適切な試薬に変更すること、反応条件の常套的な改良を行うことによって行われ得る。択一的に、本明細書で言及しているか、または当該技術分野で知られた他の反応は、本発明の他の化合物の調製に対して適合性を有すると認知されているものである。
【0153】
本発明により、上記に規定した式(I)または(III)の化合物の調製方法であって、以下の工程:
a)式(II)または(IV)
【0154】
【化38】
[式中
L1は水素、W1、Z1であり、RM1は非存在であり、R5、R6、BM、A’、L、W、ZおよびRMは上記に規定したとおりである。]
の化合物を変換させて、それぞれ上記に規定した式(I)または(III)の化合物およびこの医薬として許容される塩を得ること
を含むことを特徴とする方法を提供する。
【0155】
従って、式(I)または(III)の化合物の調製は以下のスキーム1に示される:
スキーム1
【0156】
【化39】
【0157】
工程a)に従い、反応が、当該技術分野で報告されたよく知られた手順によって行われる(例えば、Boger,D.L;J.Am.Chem.Soc.1996,118,2301−2302参照)。一例(該方法を限定することを意図するものでない。)は塩基性条件の使用、例えば、TEA、NaHCOまたはDBUの使用などである。該反応は、DCMもしくはDMF中またはこれらの混合物中で、20℃から還流温度までの範囲の温度にて30分から約24時間までの範囲の時間行われる。
【0158】
また、本発明により、上記に規定した式(II)の化合物、即ち、L1が水素である式(II)’の化合物およびL1が水素でない式(II)’’の化合物の調製方法であって、以下の工程:
b)式(XVI)
【0159】
【化40】
[式中、R17はハロゲン、OHまたはカルボン酸基の活性化部分、例えば活性エステルであり、BMは上記に規定した式(V)の結合部分である。]
の化合物を、式(XVII)
【0160】
【化41】
[式中、R18は水素または保護基、例えばベンジル、またはOH官能部の活性化基、例えばトリフレート(O−Tf)もしくは活性エステルであり、R5およびR6は上記に規定したとおりである。]
の化合物と反応させること;
場合により、該保護部(存在する場合)を除去すること、次いで、
c)得られた式(II)’
【0161】
【化42】
[式中、R5、R6およびBMは上記に規定したとおりである。]
の化合物を、式(XVIII)
R19−L1−W1−Z1(XVIII)
[式中、R19は非存在、水素、O−Tf、NH基の活性化部分、好ましくはトシルまたはR17であり、ここで、R17は上記に規定したとおりであり、
L1、W1およびZ1は上記に規定したとおりであり、これらのうち少なくとも1つは非存在でない。]
の化合物と反応させて、
式(II)’’
【0162】
【化43】
[式中、L1は、水素以外は上記に規定したとおりであり、L1、W1およびZ1のうちの少なくとも1つが非存在でなく、
R5およびR6は上記に規定したとおりである。]
の化合物およびこの医薬として許容される塩を得ること
を含むことを特徴とする方法を提供する。
【0163】
従って、式(II)の化合物の調製は以下のスキーム2に示される:
スキーム2
【0164】
【化44】
【0165】
また、本発明により、上記に規定した式(IV)の化合物、即ち、A’がAであり、L1が水素である式(IV)’の化合物およびA’がAであり、L1が水素でない式(IV)’’の化合物の調製方法であって、以下の工程:
d)式(XIX)
【0166】
【化45】
[式中、A’はAであり、ここで、Aは上記に規定したとおりであり、
BMは上記に規定した式(V)’の結合部分である。]
の化合物を、式(XX)
【0167】
【化46】
[式中、R19は上記に規定したとおりであり、
L、W、ZおよびRMは上記に規定したとおりであり、これらのうち少なくとも1つは非存在でない。]
の化合物と反応させること;
e)得られた式(XXI)
【0168】
【化47】
[式中、A’はAであり、ここで、Aは上記に規定したとおりであり、
BM、L、W、ZおよびRMは上記に規定したとおりである。]
の化合物を、上記に規定した式(XVII)
【0169】
【化48】
【0170】
の化合物と反応させること;
場合により、該保護部(存在する場合)を除去すること、次いで、
f)得られた式(IV)’
【0171】
【化49】
[式中、A’はAであり、ここで、Aは上記に規定したとおりであり、
L、W、ZおよびRMは上記に規定したとおりであり、これらのうち少なくとも1つは非存在でなく、
R5、R6およびBMは上記に規定したとおりである。]
の化合物を、式(XX)’
【0172】
【化50】
[式中、R19は上記に規定したとおりであり、L1は、水素を除いて上記に規定したとおりであり、W1、Z1およびRM1は上記に規定したとおりであり、これらのうち少なくとも1つは非存在でない。]
の化合物と反応させて、式(IV)’’
【0173】
【化51】
[式中、L1は、水素を除いて上記に規定したとおりであり、
W1、Z1およびRM1は上記に規定したとおりであり、これらのうち少なくとも1つは非存在でなく、
A’はAであり、ここで、Aは上記に規定したとおりであり、
L、W、ZおよびRMは上記に規定したとおりであり、
R5、R6およびBMは上記に規定したとおりである。]
の化合物およびこの医薬として許容される塩を得ること
を含むことを特徴とする方法を提供する。
【0174】
また、本発明により、上記に規定した式(IV)の化合物、即ち、上記に規定した式(IV)’の化合物およびA’がAであり、ここで、Aは、OH、NHおよびCOOHから選択される飽和基であり、L1が水素でない式(IVa)’’の化合物の調製方法であって、以下の工程:
d’)式(XIX)の化合物を上記に規定した式(XVII)の化合物と反応させること;場合により、保護部(存在する場合)を除去すること、次いで、
e’)得られた式(XV)
【0175】
【化52】
[式中、A’はAであり、ここで、Aは、OH、NHおよびCOOHから選択される飽和基であり、
R5、R6およびBMは上記に規定したとおりである。]
の化合物を、上記に規定した式(XX)の化合物と反応させること;
場合により
f’)得られた式(IV)’
【0176】
【化53】
[式中、A’はAであり、ここで、Aは上記に規定したとおりであり、
R5、R6、BM、L、W、ZおよびRMは上記に規定したとおりである。]
の化合物を上記に規定した式(XX)’の化合物と、上記に規定した式(IV)’’の化合物および医薬として許容される塩が得られるように反応させること
または
e’’)上記に規定した式(XV)の化合物を上記に規定した式(XX)’の化合物と反応させること;場合により
f’’)得られた式(IVa)’’
【0177】
【化54】
[式中、L1は、水素を除いて上記に規定したとおりであり、W1、Z1およびRM1は上記に規定したとおりであり、これらのうち少なくとも1つは非存在でなく、
A’はAであり、ここで、Aは、OH、NHおよびCOOHから選択される飽和基であり、R5、R6およびBMは上記に規定したとおりである。]
の化合物を、上記に規定した式(XX)の化合物と反応させて、上記に規定した式(IV)’’の化合物および医薬として許容される塩を得ること
を含むことを特徴とする方法を提供する。
【0178】
従って、式(IV)の化合物、即ち、上記に規定した式(IV)’、(IV)’’または(IVa)’’の化合物の調製は以下のスキーム3に示される:
スキーム3
【0179】
【化55】
【0180】
工程c)、d)、f)、e’)、f’)、e’’)およびf’’)に従い、カップリングが有機溶媒中で、好ましくはDMF中で、縮合剤、例えばDCC、EDCなどの存在下で(一般的なカップリング試薬については、例えば、Amino Acids,Peptides and Proteins in Organic Chemistry:Building Blocks,Catalysis and Coupling Chemistry,Volume 3;Andrew B.Hughes,Ayman El−Faham,Fernando Albericioを参照)またはエーテル結合による連結(bound linking)の場合は、J.O.C.2002,67,1866−1872;Bioorg.Med.Chem.1996,4,1379−1391に報告されたものと同様の手順に従って行われる。また、以下の実験の部に報告した具体的な化学的条件も参照のこと。
【0181】
工程b)、e)およびd’)に従い、カップリング反応は好ましくは、20℃から還流温度までの範囲の温度で、場合により塩基の存在下で、30分から約24時間までの範囲の時間行われる。式(XVII)および(XIX)の化合物は既知のもの、または当業者に知られた方法によって調製され得るもの、またはGB2344818(上掲)もしくはJ.Med.Chem.2003,(46)の第634項から第637頁に報告されているものである。
【0182】
式(XVI)、(XVIII)、(XX)および(XX)’の化合物は既知のもの、または当業者に知られた方法によって調製され得るもの、またはAnticancer Agents in Med Chem 2008,(8)の第618頁から第637頁もしくはWO2010/009124に報告されているものである。
【0183】
また、本発明により、上記に規定した式(IV)の化合物、即ち、A’が非存在であり、L1が水素でない式(IV)’’’の化合物の調製方法であって、以下の工程:
e’’’)式(II)’
【0184】
【化56】
[式中、A’は非存在であり、
R4およびR6は上記に規定したとおりであり、
BMは上記に規定した式(V)の結合部分である。]
の化合物を、式(XX)’
【0185】
【化57】
[式中、L1は上記に規定したとおりであるが水素ではなく、
R19、W1、Z1およびRM1は上記に規定したとおりである。]
の化合物と反応させて、式(IV)’’’
【0186】
【化58】
[式中、A’は非存在であり、
L1は、水素を除いて上記に規定したとおりであり、
R5、R6およびBMは上記に規定したとおりであり、
W1、Z1およびRM1は上記に規定したとおりであり、これらのうち少なくとも1つは非存在でない。]
の化合物およびこの医薬として許容される塩を得ること
を含むことを特徴とする方法を提供する。
【0187】
従って、A’が非存在である式(IV)の化合物の調製は以下のスキーム4に示される:
スキーム4
【0188】
【化59】
【0189】
工程e’’’)に従い、カップリングが上記のe’’)に記載のようにして行われる。
【0190】
上記のすべてのことから、当業者には、式(I)、(II)、(III)および(IV)の化合物を前述の種々の方法のいずれか1つに従って調製する場合、出発物質またはこの中間体に場合により存在する、不要な副反応をもたらし得る官能基は、慣用的な手法に従って適正に保護する必要があることは明らかであろう。同様に、これらの後者のものを遊離の脱保護化合物に変換することは、既知の手順に従って行われ得る。
【0191】
容易に認識されようが、上記の方法に従って調製した式(I)、(II)、(III)および(IV)の化合物が異性体混合物として得られた場合、これらを慣用的な手法を用いて式(I)、(II)、(III)および(IV)の単一の異性体に分離することは本発明の範囲に含まれる。
【0192】
好ましくは、L1が水素以外は上記に規定したとおりである式(II)の化合物またはRMおよび/またはRM1が非存在でなく、R5、R6、BM、A’、L、W、Z、L1、W1およびZ1は上記に規定したとおりである式(IV)の化合物を:
g)式(XXII)
R17−RM(XXII)
[式中、R17は上記に規定したとおりであり、RMは上記に規定したとおりであるが非存在でない。]
の化合物と反応させて、RMが上記に規定したとおりであるが非存在でない対応する式(IV)の化合物を得、
次いで、場合により
h)式(XXII)’
R17−RM1(XXII)’
[式中、R17は上記に規定したとおりであり、RM1は上記に規定したとおりであるが非存在でない。]
の化合物と反応させて、
RM1が上記に規定したとおりであるが非存在でない対応する式(IV)の化合物を得る。
【0193】
g)およびh)に記載の工程は、場合により逆の順番で、即ち最初に工程h)、次いで工程g)が行われ得ることを強調することが重要である。
【0194】
工程g)およびh)に従い、カップリングが上記のb)に記載のようにして行われる。
【0195】
式(XXII)および(XXII)’の化合物は、市販されているもの、または既知の化合物、または当業者に知られた方法によって調製され得るもの、またはAnticancer Agents in Med Chem 2008,(8)の第618頁から第637頁もしくはWO2010/009124に報告されているものである。
【0196】
式(XXI)の化合物は、工程i)、k)、l)、m)、o)またはp)のうちの1つに従って調製され得る。
【0197】
好ましくは、A’が−OHであり、BMが上記に規定したとおりである式(XIX)の化合物を:
i)式(XX)
【0198】
【化60】
[式中、R19は非存在であり、
Lは式(Xf’)
【0199】
【化61】
の基であり、
式中、R9は水素、ヒドロキシであるか、または直鎖もしくは分枝鎖のC−Cアルキル、直鎖もしくは分枝鎖のC−Cヒドロキシアルキル、直鎖もしくは分枝鎖のC−Cスルフヒドリルアルキルおよび直鎖もしくは分枝鎖のC−Cアミノアルキルから選択される場合により置換されている基であり;
nは上記に規定したとおりであり、
W、ZおよびRMは非存在であるか、
または
R9は非存在であり、
W、ZもしくはRMのうち少なくとも1つは非存在でない。]
の化合物と反応させて、式(XXI)
【0200】
【化62】
[式中、A’は−O−であり、Lは式(Xf)の基であり、W、ZおよびRMは上記に規定したとおりであり、BMは式(V)’の基である。]
の化合物を得るか;または
k)式(XX)
【0201】
【化63】
[式中、R19は活性化−NH−基、好ましくはトシルであり、
Lは式−NHCOR9(Xa)、−NHCOO−R9(Xc)または−NH−R9(Xd)の基であり;
ここで、R9は水素、ヒドロキシであるか、または直鎖もしくは分枝鎖のC−Cアルキル、直鎖もしくは分枝鎖のC−Cヒドロキシアルキル、直鎖もしくは分枝鎖のC−Cスルフヒドリルアルキルおよび直鎖もしくは分枝鎖のC−Cアミノアルキルから選択される場合により置換されている基であり、
W、ZおよびRMは非存在であるか、
または
R9は非存在であり、
W、ZもしくはRMのうち少なくとも1つは非存在でない。]
の化合物と反応させて、式(XXI)
【0202】
【化64】
[式中、A’は−O−であり、Lは式(Xa)、(Xc)、(Xd)の基であり、BM、W、ZおよびRMは上記に規定したとおりである。]
の化合物を得るか;
または
l)式(XX)
【0203】
【化65】
[式中、R19はR17であり、ここでR17は−OHであり、
Lは式(Xe)
【0204】
【化66】
の基であり、
式中、R9およびR10は各々、独立して、水素であるか、または直鎖もしくは分枝鎖のC−Cアルキル、直鎖もしくは分枝鎖のC−Cヒドロキシアルキル、直鎖もしくは分枝鎖のC−Cスルフヒドリルアルキルおよび直鎖もしくは分枝鎖のC−Cアミノアルキルから選択される場合により置換されている基であり、W、ZおよびRMは非存在であるか、
または
R9またはR10のうち一方は非存在であり、W、ZもしくはRMのうち少なくとも1つは非存在でない。]
の式の化合物と反応させて、式(XXI)
【0205】
【化67】
[式中、A’は−O−であり、Lは式(Xe)の基であり、BM、W、ZおよびRMは上記に規定したとおりである。]
の化合物を得る。
【0206】
工程i)に従い、反応が有機溶媒中で、好ましくはDCMまたはDMF中で、PTSAの存在下で、20℃から還流温度までの範囲の温度にて30分から約24時間までの範囲の時間行われる。保護基の除去は、文献に報告された既知の手順を用いて行われる(例えば、Protective Groups in Organic Synthesis;Theodora W.Greeen,Peter G.M.Wuts参照)。
【0207】
工程k)に従い、反応が有機溶媒中で、好ましくはエーテル、ジオキサンまたはこれらとLiHMDSの混合物中で、−10℃から50℃の範囲の温度で30分から約24時間までの範囲の時間行われる。保護基の除去は、文献に報告された既知の手順を用いて行われる(例えば、Protective Groups in Organic Synthesis;Theodora W.Greeen,Peter G.M.Wuts参照)。
【0208】
工程l)に従い、反応が有機溶媒中で、好ましくはDCM、THF、CHCNまたはCCl中で、場合により塩基(好ましくはDIPEA)の存在下で、−10℃から50℃の範囲の温度で30分から約24時間までの範囲の時間行われる。
【0209】
好ましくは、A’が−OHまたは−NHであり、BMが上記に規定したとおりである式(XIX)の化合物を:
m)式(XX)
【0210】
【化68】
[式中、R19はR17であり、ここで、R17はカルボン酸基の活性化部分、好ましくはピロリジン−2,5−ジオン−1イルであり、Lは式(Xj)または(Xk)
【0211】
【化69】
の基であり、
式中、R9は水素、ヒドロキシであるか、または直鎖もしくは分枝鎖のC−Cアルキル、直鎖もしくは分枝鎖のC−Cヒドロキシアルキル、直鎖もしくは分枝鎖のC−Cスルフヒドリルアルキルおよび直鎖もしくは分枝鎖のC−Cアミノアルキルから選択される場合により置換されている基であり、
W、ZおよびRMは非存在であるか、
または
R9は非存在であり、W、ZもしくはRMのうち少なくとも1つは非存在でない。]
の化合物と反応させて、式(XXI)
【0212】
【化70】
[式中、A’は−O−または−NHであり、Lは式(Xj)または(Xk)の基であり、BM、W、ZおよびRMは上記に規定したとおりである。]
の化合物を得る。
【0213】
工程m)に従い、カップリング反応が有機溶媒中で、好ましくはDCM中で、塩基性条件(例えば、TEA、DMAP)で行われる。該反応は0℃から還流温度までの範囲の温度で30分から約24時間までの範囲の時間行われる。
【0214】
好ましくは、A’が−COOHであり、BMが上記に規定したとおりである式(XIX)の化合物を:
o)式(XX)
【0215】
【化71】
[式中、Lは非存在であり、
Wは式(XIa)、(XIc)、(XId)、(XIk)および(XIj)
【0216】
【化72】
の基であり、
式中、R9は水素であり、
R10は水素、ヒドロキシであるか、または直鎖もしくは分枝鎖のC−Cアルキル、直鎖もしくは分枝鎖のC−Cヒドロキシアルキル、直鎖もしくは分枝鎖のC−Cスルフヒドリルアルキルおよび直鎖もしくは分枝鎖のC−Cアミノアルキルから選択される場合により置換されている基であり、
R24、R25、R13、mおよびAは上記に規定したとおりであり、W、ZおよびRMは非存在であるか、
または
R10は非存在であり、W、ZもしくはRMのうち少なくとも1つは非存在でなく、R24、R25、R13、mおよびAは上記に規定したとおりである。]
の化合物と反応させて、式(XXI)
【0217】
【化73】
[式中、A’は−CO−であり、Lは非存在であり、Wは式(XIa)、(XIc)、(XId)、(XIk)および(XIj)の基であり、BM、W、ZおよびRMは上記に規定したとおりである。]
の化合物を得る。
【0218】
工程0)に従い、カップリング反応が、文献でよく知られた条件を用いて行われる(例えば、Scott,C.J.et al.J.Med.Chem.2005,48,1344−1358;Amino Acids,Peptides and Proteins in Organic Chemistry:Building Blocks,Catalysis and Coupling Chemistry,Volume 3;Andrew B.Hughes,Ayman El−Faham,Fernando Albericio参照)。
【0219】
好ましくは、A’が−OHまたは−NHであり、BMが上記に規定したとおりである式(XIX)の化合物を:
p)式(XX)
【0220】
【化74】
[式中、R19は非存在であり、Lは非存在であり、Wは式(XIa)、(XIc)、(XIk)、(XIj)および(XIf)
【0221】
【化75】
の基であり、
式中、R10は−OHであり、
R9は水素、ヒドロキシであるか、または直鎖もしくは分枝鎖のC−Cアルキル、直鎖もしくは分枝鎖のC−Cヒドロキシアルキル、直鎖もしくは分枝鎖のC−Cスルフヒドリルアルキルおよび直鎖もしくは分枝鎖のC−Cアミノアルキルから選択される場合により置換されている基であり、
R24、R25、R13、mおよびAは上記に規定したとおりであり、W、ZおよびRMは非存在であるか、
または
R9は非存在であり、W、ZもしくはRMのうち少なくとも1つは非存在でなく、R24、R25、R13、mおよびAは上記に規定したとおりである。]
の化合物と反応させて、式(XXI)
【0222】
【化76】
[式中、A’は−O−または−NH−であり、Lは非存在であり、Wは式(XIa)、(XIc)、(XIk)、(XIj)および(XIf)の基であり、BM、W、ZおよびRMは上記に規定したとおりである。]
の化合物を得る。
【0223】
工程p)に従い、カップリング反応が上記のo)に記載のようにして、またはJ.O.C.2002,67,1866−11872;Bioorg.Med.Chem.1996,4,1379−1391に報告されたものと同様の手順に従って行われる。
【0224】
工程i)からm)およびp)はまた、式(IV)’の化合物を式(IV)’’の化合物に、式(XX)’の化合物との反応によって変換させるため(工程f)または式(XV)の化合物を式(IV)’’’の化合物に、式(XX)’の化合物との反応によって変換させるため(工程e’’)または式(II)’の化合物を式(II)’’の化合物に、式(XVIII)の化合物との反応によって変換させるため(工程c)または式(XV)の化合物を式(IV)’の化合物に、式(XX)の化合物との反応によって変換させるため(工程e’)または式(IV)’’’の化合物を式(IV)’’の化合物に、式(XX)の化合物との反応によって変換させるため(工程f’’)にも使用され得る。
【0225】
薬理学
本発明の化合物は抗腫瘍剤として有用である。
【0226】
従って、哺乳動物、例えばヒトまたは動物が、これに医薬として有効な量の式(I)、(II)、(III)または(IV)の化合物を投与することを含む方法によって治療され得る。
【0227】
ヒトまたは動物の病状がこの方法で改善または好転され得る。
【0228】
式(I)、(II)、(III)または(IV)の化合物の細胞毒性の評価は、以下に記載するようにして評価される。
【0229】
インビトロ細胞増殖アッセイ
A2780ヒト卵巣がん細胞およびMCF7ヒト乳がん細胞(1250細胞/ウェル)を白色384ウェルプレート内の完全培地(RPMI1640またはEMEM+10%ウシ胎仔血清)中に播種し、播種の24時間後に、化合物(0.1%DMSOに溶解)で処理した。細胞を37℃、5%COでインキュベートし、72時間後、プレートを、CellTiter−Gloアッセイ(Promega)を製造業者の使用説明書に従って用いて処理した。
【0230】
CellTiter−Gloは、代謝活性細胞の指標であるATPの存在の定量に基づいた均一系の方法である。ATPは、ルシフェラーゼとD−ルシフェリンにより光の発生がもたらされることに基づいたシステムを用いて定量される。発光シグナルは培養中に存在している細胞の数に比例する。
【0231】
簡単には、25μL/ウェルの試薬溶液を各ウェルに添加し、5分間の振盪後、マイクロプレートの読み値をルミノメータによって得る。発光シグナルは培養中に存在している細胞の数に比例する。
【0232】
式(I)または(II)の本発明の代表化合物を、上記の具体的なインビトロ細胞増殖アッセイで試験した。
【0233】
試験した化合物はすべて、A2780ヒト卵巣がん細胞において<0.5μM(<500nM)のIC50値を有するものである。
【0234】
従って、当業者には認識され得るように、これらの代表化合物すべて、抗腫瘍療法に特に好都合である。
【0235】
さらに、本発明の式(III)または(IV)の官能基付与型化合物はコンジュゲートさせるのに適切である。
【0236】
式(III)または(IV)の官能基付与型誘導体がコンジュゲートを形成し得る能力は、誘導体を求核性基(例えば、システインアミノ酸のSH基)とコンジュゲートすることにより評価した。
【0237】
コンジュゲートの調製
2nmolのシステイン(MW:121Da)を2nmolの式(IV)の官能基付与型化合物、即ち化合物5(MW:1221Da)と反応させた。
【0238】
反応液を21℃で1時間、ホウ酸バッファー50mM pH8,DTPA 2mM,NaCl 50mMの存在下でインキュベートしてコンジュゲートA1(m/z=1343(MH+))を得、次いで、逆相HPLC法(PLRP−Sカラム1000Å 8μM 150×2.1mm)を用いたHPLC ESI−MSにより、オルトゴナルESI源を有するAgilent 1946シングル四重極型質量分析検出器と対にした1100 Agilent HPLC装置で解析した。
【0239】
【化77】
【0240】
図1はコンジュゲートA1の質量スペクトルを示し、x軸に分子量(m/z)を表すとともに、秒当たりカウント(cps)で示した強度をy軸に表す。
【0241】
図2は、コンジュゲートA1のHPLCプロフィールを示し、x軸に時間(分)を表すとともに、UV吸光度(mAU)をy軸に表す。
【0242】
コンジュゲートからの薬物部分の放出
本発明の範囲を限定することを意図しない一例として、コンジュゲートからの式(II)の化合物の放出を、カテプシンの存在下で以下に報告するようにして行った。
【0243】
コンジュゲートA1を0.2単位のカテプシンB(酢酸ナトリウムバッファー(pH5.5)中)および1mMのCysとともに40℃で2時間インキュベートした。
【0244】
コンジュゲートA1の消失および式(II)の対応化合物、即ち化合物1の放出ならびにこの前駆体A3の放出により、該コンジュゲートのペプチドリンカーZの破壊が確認される。
【0245】
コンジュゲートからの式(II)の化合物の完全な放出はHPLC ESI−MS解析によって観察した。
【0246】
図3は、コンジュゲートA1のカテプシンでの2時間の処理後のHPLCプロフィールを示し、x軸に時間(分)を表すとともに、UV吸光度(mAU)をy軸に表す。
【0247】
図4aは、放出された化合物1の質量スペクトルを示し、x軸に分子量(m/z)を表すとともに、秒当たりカウント(cps)で示した強度をy軸に表す。
【0248】
図4bは、放出された化合物A3(化合物1の前駆体)の質量スペクトルを示し、x軸に分子量(m/z)を表すとともに、秒当たりカウント(cps)で示した強度をy軸に表す。
【0249】
本発明の化合物は、単独の薬剤として、または択一的に、既知の抗がん治療、例えば、放射線療法または化学療法レジメンとの併用で、細胞増殖抑制剤もしくは細胞毒性剤、抗生物質型の薬剤、アルキル化剤、代謝拮抗剤、ホルモン剤、免疫学的薬剤、インターフェロン型薬剤、シクロオキシゲナーゼ阻害薬(例えば、COX−2阻害薬)、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害薬、テロメラーゼ阻害薬、チロシンキナーゼ阻害薬、抗増殖因子受容体剤、抗HER剤、抗EGFR剤、抗血管新生剤(例えば、血管新生阻害薬)、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害薬、ras−rafシグナル伝達経路阻害薬、細胞周期阻害薬、他のcdkの阻害薬、チューブリン結合剤、トポイソメラーゼI阻害薬、トポイソメラーゼII阻害薬などとの併用でのいずれかで投与され得る。
【0250】
固定用量として製剤化される場合、かかる併用製剤品には、後述する投薬量範囲内の本発明の化合物と、承認された投薬量範囲内のその他の医薬活性薬剤が使用される。
【0251】
式(I)、(II)、(III)または(IV)の化合物は、併用製剤が不適切な場合では、既知の抗がん剤と逐次使用され得る。
【0252】
哺乳動物、例えばヒトへの投与に適した本発明の式(I)、(II)、(III)または(IV)の化合物は、通常の経路ならびに患者の年齢、体重、体調および投与経路に応じた投薬量レベルによって投与され得る。
【0253】
例えば、式(I)の化合物の経口投与に採用される適切な投薬量は、1回の投薬あたり約1から約300mgの範囲で1日1回から5回であり得る。本発明の化合物は、さまざまな投薬形態で、例えば、経口では錠剤、カプセル剤、糖衣錠もしくはフィルムコート錠、液状の液剤もしくは懸濁剤の形態で;経直腸では坐剤の形態で、;非経口で、例えば、皮下、筋肉内もしくは静脈内および/または髄腔内および/または脊髄内注射または輸注で投与され得る。
【0254】
本発明にはまた、医薬として許容される賦形剤(これは担体または希釈剤であり得る。)を伴った式(I)の化合物またはこの医薬として許容される塩を含む医薬組成物も包含される。
【0255】
本発明の化合物を含む医薬組成物は、通常、慣用的な方法に従って調製され、適切な医薬形態で投与される。例えば、固形経口形態には活性化合物と一緒に、希釈剤、例えば、ラクトース、デキストロース、サッカロース、セルロース、コーンスターチもしくはイモデンプン;滑沢剤、例えば、シリカ、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウムもしくはステアリン酸カルシウムおよび/またはポリエチレングリコール;結合剤、例えば、デンプン、アラビアガム、ゼラチン メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースもしくはポリビニルピロリドン;崩壊剤、例えば、デンプン、アルギン酸、アルギネートもしくはデンプングリコール酸ナトリウム;発泡性混合物;染料;甘味料;湿潤剤、例えば、レシチン、ポリソルベート、ラウリルスルホネート;ならびに、一般に、医薬製剤に使用される無毒性で薬理学的に不活性な物質が含有され得る。このような医薬調製物は既知の様式で、例えば、混合、造粒、打錠、糖衣形成またはフィルムコーティング過程によって製造され得る。
【0256】
経口投与のための液状分散剤は、例えば、シロップ剤、乳剤および懸濁剤であり得る。一例として、シロップ剤には担体として、サッカロースまたはサッカロースとグリセリンおよび/またはマンニトールとソルビトールが含有され得る。
【0257】
懸濁剤および乳剤には担体の例として、天然ガム、寒天、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはポリビニルアルコールが含有され得る。筋肉内注射用の懸濁剤または液剤には活性化合物と一緒に、医薬として許容される担体、例えば、滅菌水、オリーブ油、オレイン酸エチル、グリコール、例えば、プロピレングリコールおよび、所望であれば、適量のリドカイン塩酸塩が含有され得る。静脈内注射または輸注用の液剤は担体として滅菌水を含有しているものであり得るか、または好ましくは該液剤は滅菌された水性の等張性生理食塩水溶液の形態であり得るか、または該液剤はプロピレングリコールを担体として含有しているものであり得る。坐剤には活性化合物と一緒に、医薬として許容される担体、例えば、ココアバター、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル界面活性剤またはレシチンが含有され得る。
【0258】
次に、本発明をより充分に説明する目的で、なんら本発明を限定することなく以下の実施例を示す。
【実施例】
【0259】
本発明の式(I)の幾つかの化合物の合成的調製を以下の実施例に記載する。また、以下の実施例に従って調製した本発明の化合物をH−NMRおよび/または計算精密質量データESI(+)によって特性評価した。
【0260】
H−NMRスペクトルは25℃の一定温度で、5mm H z軸PFG Indirect Detection Cold−Probeまたは択一的に5mm H z軸PFG Triple Resonance Probeを備えたVarian INOVA 500分光計(Hに対して499.8MHzで操作した。)にて記録した。
【0261】
化学シフトは残留溶媒シグナルを基準にして示した。データを以下のとおりに報告する:化学シフト(δ)、多重度(s=一重項、d=二重項、t=三重項、q=四重項、br.s=ブロード一重項、td=二重項の三重項、dd=二重項の二重項、ddd=二重項の二重項の二重項、m=多重項)、結合定数(Hz)、およびプロトン数。
【0262】
計算精密質量データESI(+)は、前述(M.Colombo,F.Riccardi−Sirtori,V.Rizzo,Rapid Commun.Mass Spectrom.2004,18,511−517)のAgilent 1100ミクロHPLCシステムと直接連結させたWaters Q−Tof Ultima質量分析計にて取得した。
【0263】
以下の実施例ならびに本出願書類全体を通して、以下の略号は以下の意味を有する。定義していない場合、用語はこの一般に認められている意味を有する。
【0264】
【表1】
【0265】
[実施例1]
工程b,工程e’’’
【0266】
【化78】
【0267】
N−[6−(2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−1−イル)ヘキサノイル]−L−バリル−N5−カルバモイル−N−{4−({[{2−[({[(8S)−8−(クロロメチル)−2−メチル−6−({5−[2−(ピロリジン−1−イル)エトキシ]−1−インドール−2−イル}カルボニル)−7,8−ジヒドロ−6H−チエノ[2,3−e]インドール−4−イル]オキシ}カルボニル)(メチル)アミノ]エチル}(メチル)カルバモイル]オキシ}メチル)フェニル]−L−オルニチンアミド(化合物5)
【0268】
工程b
2.5mLの乾燥DMFに溶解させた(8S)−(ベンジルオキシ)−8−(クロロメチル)−2−メチル7,8−ジヒドロ−6H−チエノ[2,3−e]インドール(19.2mg,0.056mmol)(J.Am.Chem.Soc.2007,129,14092に報告されたとおりに調製)に、5−[2−(ピロリジン−1−イル)エトキシ]−1H−インドール−2−カルボン酸(26mg,0.095mmol)とEDC・HCl(43mg,0.22mmol)を添加した。反応混合物を窒素雰囲気下で一晩撹拌し、EtOAcで希釈し、NaCOの水中飽和溶液で洗浄した。有機相をNaSOで脱水し、濾過し、エバポレートして乾固させた。粗製生成物をカラムクロマトグラフィー(DCM/MeOH/NH(MeOH中)=100/1/1)によって精製し、[(8S)−4−(ベンジルオキシ)−8−(クロロメチル)−2−メチル7,8−ジヒドロ−6H−チエノ[2,3−e]インドール−6−イル]{5−[2−(ピロリジン−1−イル)エトキシ]−1H−インドール−2−イル}メタノン(30mg,89%収率)を得た。
【0269】
ESI MS:m/z 600(MH+)
H NMR(500MHz,acetone)δ 1.73(m,4H)、2.52(m,7H)、2.87(t,J=5.8Hz,3H)、4.00(m,1H)、4.13(m,5H)、4.67(dd,J=10.8,4.2Hz,1H)、4.88(m,1H)、5.27(s,2H)、6.97(dd,J=8.9,2.5Hz,1H)、7.13(d,J=1.6Hz,1H)、7.19(d,J=2.33Hz,1H)、7.20(m,1H)、7.35(m,1H)、7.42(m,2H)、7.49(d,J=8.9Hz,1H)、7.57(d,J=7.4Hz,2H)、8.14(s,1H)、10.71(br.s.,1H)
【0270】
脱保護
[(8S)−8−(クロロメチルH−ヒドロキシ−2−メチル−7,8−ジヒドロ−6H−チエノ[2,3−e]インドール−6−イル]{5−[2−(ピロリジン−1−イル)エトキシ]−1H−インドール−2−イル}メタノン(化合物1)
【0271】
【化79】
【0272】
[(8S)−4−(ベンジルオキシ)−8−(クロロメチル)−2−メチル−7,8−ジヒドロ−6H−チエノ[2,3−e]インドール−6−イル]{5−[2−(ピロリジン−1−イル)エトキシ]−1H−インドール−2−イル}メタノン(28mg,0.0466mmol)を2mLのEtOAc中3.5M HCl中で1時間撹拌し、エバポレートして乾固させた。生成物をTHF(8mL)と25%水性HCONH(0.175mL)に溶解させ、10%Pd−C(25mg)を添加した。得られた混合物を室温で16時間撹拌し、セライトに通して濾過し、濃縮し、クロマトグラフィー精製(DCM/MeOH/濃HCl 100/5/0.1)後に[(8S)−8−(クロロメチル)−4−ヒドロキシ−2−メチル−7,8−ジヒドロ−6H−チエノ[2,3−e]インドール−6−イル]{5−[2−(ピロリジン−1−イル)エトキシ]−1H−インドール−2−イル}メタノン塩酸塩(13mg,51%収率)を得た。
【0273】
ESI MS:m/z 510(MH+)
H NMR(500MHz,METHANOL−d)δ 2.10(br.s.,4H)、2.62(s,3H)、3.32(m,2H)3.50(m,2H)、3.70(t,J=6.4Hz,1H)、3.86(dd,J=11.1,7.8Hz,1H)、4.03(m,1H)、4.09(dd,J=11.1,3.4Hz,1H)、4.36(t,J=5.0Hz,2H)、4.64(dd,J=11.1,3.4Hz,1H)、4.80(t,J=9.9Hz,1H)、7.08(dd,J=8.9,2.6Hz,1H)、7.13(s,1H)、7.18(m,1H)、7.30(d,J=2.6Hz,1H)、7.48(d,J=8.9Hz,1H)、7.76(br.s.,1H)
【0274】
同様にして、以下の化合物を調製した:
[(8R)−8−(クロロメチル)−ヒドロキシ−2−メチル−7,8−ジヒドロ−6H−チエノ[2,3−e]インドール−6−イル]{5−[2−(ピロリジン−1−イル)エトキシ]−1H−インドール−2−イル}メタノン(化合物2)
【0275】
【化80】
【0276】
ESI MS:m/z 510(MH+)
【0277】
工程e’’’ 標題化合物
【0278】
【化81】
【0279】
[(8S)−8−(クロロメチル)−4−ヒドロキシ−2−メチル−7,8−ジヒドロ−6H−チエノ[2,3−e]インドール−6−イル]{5−[2−(ピロリジン−1−イル)エトキシ]−1H−インドール−2−イル}メタノン塩酸塩(10mg,0.0183mmol)、カルボノクロリジン酸4−ニトロフェニル(22mg,0.11mmol)およびトリエチルアミン(0.021mL,0.146mmol)の1mLの乾燥DCM/1mLの乾燥THF中の溶液を窒素雰囲気下で6時間撹拌した。溶媒をエバポレートし、残渣をジエチルエーテルで処理した。得られた析出物を濾過し、ジエチルエーテルで洗浄し、真空乾燥させた。この化合物を乾燥DCM(2mL,10%の乾燥DMF含有)に溶解させ、N−[6−(2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−1−イル)ヘキサノイル]−L−バリル−N−カルバモイル−N−{4−[({メチル[2−(メチルアミノ)エチル]カルバモイル}オキシ)メチル]フェニル}−L−オルニチンアミド塩酸塩(XX)’(以下に報告したとおりに調製)(30mg,0.04mmol)とトリエチルアミン(0.016mL,0.11mmol)を添加した。反応混合物を窒素雰囲気下で一晩撹拌し、溶媒をエバポレートし、標題化合物(8mg,36%収率)をカラムクロマトグラフィー精製(DCM/MeOH=85/15)後に得た。
【0280】
ESI MS:m/z 1222(MH+)
H NMR(500MHz,METHANOL−d)δ 0.99(m,6H)、1.24−1.90(m,10H)、2.03(m,4H)、2.07(m,1H)、2.27(m,2H)、2.54(m,3H)、2.93−3.05(m,6H)、3.13−3.42(m,2H)、3.45(m,4H)、3.64(m,2H)、4.09(m,1H)、4.15(d,1H)、4.30(m,2H)、4.47(m,1H)、5.00−5.17(m,2H)、6.77(m,2H)、6.99−7.65(m,9H)、7.99(br.s.,1H)
【0281】
同様にして、以下の化合物を調製した:
N−[6−(2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−1−イル)ヘキサノイル]−L−バリル−N−カルバモイル−N−{4−({[{2−[({[(8R)−8−(クロロメチル)−2−メチル−6−({5−[2−(ピロリジン−1−イル)エトキシ]−1H−インドール−2−イル}カルボニル)−7,8−ジヒドロ−6H−チエノ[2,3−e]インドール−4−イル]オキシ}カルボニル)(メチル)アミノ]エチル}(メチル)カルバモイル]オキシ}メチル)フェニル]−L−オルニチンアミド(化合物6)
【0282】
【化82】
【0283】
ESI MS:m/z 1222(MH+)
【0284】
中間体の調製
N−[6−(2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−1−イル)ヘキサノイル]−L−バリル−N−カルバモイル−N−{4−[({メチル[2−(メチルアミノ)エチル]カルバモイル}オキシ)メチル]フェニル}−L−オルニチンアミド塩酸塩(化合物XX)’
【0285】
【化83】
【0286】
工程a
N−[(9H−フルオレン−9−イルメトキシ)カルボニル]−L−バリル−N−カルバモイル−N−[4−(ヒドロキシメチル)フェニル]−L−オルニチンアミド(1.3g,2.16mmol)(EP0624377A2に報告されたとおりに調製)と炭酸ビス(4−ニトロフェニル)(1.32g,4.34mmol)を6mLの乾燥DMFに窒素雰囲気下で溶解させ、DIPEA(0.75mL,4.35mmol)を添加し、得られた溶液を室温で1時間撹拌した。ジエチルエーテル(120mL)を添加し、生じた析出物を濾別し、ジエチルエーテルで洗浄し、真空乾燥させ、N−[(9H−フルオレン−9−イルメトキシ)カルボニル]−L−バリル−N−カルバモイル−N−[4−({[(4−ニトロフェノキシ)カルボニル]オキシ}メチル)フェニル]−L−オルニチンアミド(1.47g,89%収率)を得た。
【0287】
【化84】
【0288】
ESI MS:m/z 767(MH+)
H NMR(400MHz,DMSO−de)δ 0.86(d,J=6.7Hz,3H)、0.88(d,J=6.7Hz,3H)、1.30−1.52(m,2H)、1.60(m,1H)、1.69(m,1H)、1.99(m,1H)、2.90−3.10(m,2H)、3.93(dd,J=8.9,7.0Hz,1H)、4.14−4.34(m,3H)、4.42(m,1H)、5.24(s,2H)、5.39(s,2H)、5.97(t,J=5.5Hz,1H)、7.32(m,2H)、7.42(m,5H)、7.55(m,2H)、7.65(d,J=8.4Hz,2H)、7.74(t,J=7.9Hz,2H)、7.88(d,J=7.6Hz,2H)、8.12(d,J=7.4Hz,1H)、8.31(m,2H)、10.12(s,1H)
【0289】
工程b
N−[(9H−フルオレン−9−イルメトキシ)カルボニル]−L−バリル−N−カルバモイル−N−[4−({[(4−ニトロフェノキシ)カルボニル]オキシ}メチル)フェニル]−L−オルニチンアミド(310mg,0.404mmol)とメチル[2−(メチルアミノ)エチル]カルバミン酸2−(ビフェニル−4−イル)プロパン−2−イル(132mg,0.404mmol)を乾燥DMF(6mL)に溶解させ、窒素雰囲気下で室温にて3時間撹拌した。溶媒をエバポレートし、得られた粗製生成物をカラムクロマトグラフィー(DCM/EtOH=9/1)によって精製し、N−[(9H−フルオレン−9−イルメトキシ)カルボニル]−L−バリル−N−{4−[10−(ビフェニル−4−イル)−4,7,10−トリメチル−3,8−ジオキソ−2,9−ジオキサ−4,7−ジアザウンデス−1−イル]フェニル}−N−カルバモイル−L−オルニチンアミド(200mg,52%収率)を得た。
【0290】
【化85】
【0291】
ESI MS:m/z 954(MH+)
H NMR(500MHz,DMSO−de)δ 0.86(m,6H)、1.21−1.64(m,4H)、1.69(s.,6H)、2.00(m,1H)、2.62−3.08(m,10H)、3.44(m,2H)、3.93(t,J=7.6Hz,1H)、4.22(m,1H)、4.30(m,1H)、4.42(m,1H)、4.94−5.03(m,2H)、5.39(s,2H)、5.96(m,1H)、7.25−7.46(m,11H)、7.45−7.66(m,6H)、7.74(m,2H)、7.89(m,2H)、8.11(br.s.,1H)、10.06(br.s.,1H)
【0292】
工程c
N−[(9H−フルオレン−9−イルメトキシ)カルボニル]−L−バリル−N−{4−[10−(ビフェニル−4−イル)−4,7,10−トリメチル−3,8−ジオキソ−2,9−ジオキサ−4,7−ジアザウンデス−1−イル]フェニル}−N−カルバモイル−L−オルニチンアミド(200mg,0.21mmol)の乾燥DMF(6mL)溶液にピペリジン(0.105mL,1mmol)を添加した。得られた溶液を室温で2時間撹拌し、濃縮乾固して粗製L−バリル−N−{4−[10−(ビフェニル−4−イル)−4,7,10−トリメチル−3,8−ジオキソ−2,9−ジオキサ−4,7−ジアザウンデス−1−イル]フェニル}−N−カルバモイル−L−オルニチンアミドを得、これをさらに精製せずに使用した。この粗製中間体を乾燥DCM(6mL)に溶解させ、1−{6−[(2,5−ジオキソピロリジン−1−イル)オキシ]−6−オキソヘキシル}−1H−ピロール−2,5−ジオン(130mg,0.42mmol)とトリエチルアミン(0.088mL,0.63mmol)を添加した。得られた溶液を室温で一晩撹拌し、溶媒をエバポレートし、残渣をカラムクロマトグラフィー(DCM/EtOH=10/1)によって精製し、N−[(9H−フルオレン−9−イルメトキシ)カルボニル]−L−バリル−N−{4−[10−(ビフェニル−4−イル)−4,7,10−トリメチル−3,8−ジオキソ−2,9−ジオキサ−4,7−ジアザウンデス−1−イル]フェニル}−N−カルバモイル−L−オルニチンアミド(150mg,77%収率)を得た。
【0293】
【化86】
【0294】
ESI MS:m/z 925(MH+)
H NMR(500MHz,DMSO−de)δ 0.81(d,J=6.7Hz,3H)、0.84(d,J=6.7Hz,3H)、1.18(m,2H)、1.36(m,1H)、1.40−1.52 8m,6H)、1.60(m,1H)、1.69(s,6H)、1.97(m,1H)、2.08−2.23(m,2H)、2.63−2.96(m,8H)、2.90(m,1H)、3.01(m,1H)、3.23−3.34(m,2H)、3.36(m,2H)、3.45(m,2H)、4.19(t,J=7.4Hz,1H)、4.38(m,1H)、4.95−5.05(m,2H)、5.40(s,2H)、5.97(d,J=5.6Hz,1H)、6.99(s,2H)、7.25−7.41(m,5H)、7.45(m,2H)、7.53−7.66(m,6H)、7.80(d,J=9Hz,1H)、8.08(d,J=7.0Hz,1H)、9.99(m,1H)、10.76(br.s.,1H)
【0295】
工程e 標題中間体
N−[(9H−フルオレン−9−イルメトキシ)カルボニル]−L−バリル−N−{4−[10−(ビフェニル−4−イル)−4,7,10−トリメチル−3,8−ジオキソ−2,9−ジオキサ−4,7−ジアザウンデス−1−イル]フェニル}−N−カルバモイル−L−オルニチンアミド(50mg,0.054mmol)を5mLの乾燥THFに溶解させ、塩酸(ジオキサン中4M,0.3mL)を添加した。溶液を3分間撹拌した。得られた析出物を濾別し、THFで洗浄し、真空乾燥させ、このようにして標題化合物(XX)’(36mg,92%収率)を得た。
【0296】
ESI MS:m/z 687(MH+)
H NMR(500MHz,METHANOL−d)δ 0.97(d,J=6.8,Hz,3H)、0.98(d,J=6.8,Hz,3H)、1.31(m,2H)、1.54−1.67(m,6H)、1.76(m,1H)、1.89(m,1H)、2.08(m,1H)、2.28(t,J=7.5Hz,2H)、2.64−2.75(m,3H)、2.98(s,3H)、3.11(m,1H)、3.20(m,3H)、3.48(t,J=7.1Hz,2H)、3.61(t,J=5.7Hz,2H)、4.14(d,J=7.5,Hz 1H)、4.50(dd,J=9.1,4.9Hz,1H)、5.11(s,2H)、6.79(s,2H)、7.35(d,J=8.3Hz,2H)、7.60(d,J=8.3Hz,2H)
図1
図2
図3
図4a
図4b