特許第6487435号(P6487435)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6487435歯縁部を機械加工する方法、およびこの目的のために設計された機械加工ステーション
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6487435
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】歯縁部を機械加工する方法、およびこの目的のために設計された機械加工ステーション
(51)【国際特許分類】
   B23F 19/10 20060101AFI20190311BHJP
【FI】
   B23F19/10
【請求項の数】20
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-530373(P2016-530373)
(86)(22)【出願日】2014年7月15日
(65)【公表番号】特表2016-525455(P2016-525455A)
(43)【公表日】2016年8月25日
(86)【国際出願番号】EP2014001930
(87)【国際公開番号】WO2015014448
(87)【国際公開日】20150205
【審査請求日】2017年5月11日
(31)【優先権主張番号】102013012797.1
(32)【優先日】2013年7月31日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500120211
【氏名又は名称】グリーソン − プァウター マシネンファブリク ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カート クラインバッハ
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン クレチェル
(72)【発明者】
【氏名】マシアス フィリッピン
(72)【発明者】
【氏名】エドガー ヴェッペルマン
【審査官】 山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−008221(JP,A)
【文献】 米国特許第02683399(US,A)
【文献】 特開2013−000882(JP,A)
【文献】 米国特許第02295148(US,A)
【文献】 特公昭51−020755(JP,B1)
【文献】 特開2002−103139(JP,A)
【文献】 特表2014−516807(JP,A)
【文献】 特開2000−005932(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23F 19/10,5/16,5/20,19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に向く面(3)のそれぞれと歯付き加工品(2)の歯側面の間の歯縁部を切削加工する方法であって、切削縁部を持つ切削工具(1)が前記歯付き加工品(2)の前記歯縁部から材料を、前記歯付き加工品(2)がその加工品歯車軸(Z)の周りに回転するときの切削動作によって除去する方法において、前記切削工具が歯付き外郭を有すること、並びに、材料除去切削作業のために、その歯付き外郭の軸(ZW)の周りを回転する前記切削工具が、切削加工されるべき前記歯付き加工品(2)と回転係合状態にされ、処理中の前記歯付き加工品と前記切削工具の回転軸(Z、ZW)が、ゼロとは異なる軸交差角度(Σ)で互いに対して位置付けられており、
加工品歯車輪郭の中心と前記切削工具の中心の間の接続線に直交して延びる平面に対する、前記切削工具の回転軸のゼロにならない傾斜角度(η)の結果として、切削運動の切削方向(s)が前記歯側面に直交して進む方向成分を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ゼロにならない軸交差角度の結果として、切削運動の切削方向(s)が、前記切削加工される歯縁部に隣り合う歯側面に沿って歯幅の方向に進む方向成分を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記軸交差角度(Σ)が少なくとも4°、好ましくは少なくとも8°、とりわけ少なくとも12°である、および/または前記軸交差角度が45°未満、好ましくは35°未満、とりわけ25°未満であることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
傾斜角度(η)が少なくとも8°、好ましくは少なくとも16°、とりわけ少なくとも24°である、および/または前記傾斜角度が80°未満、好ましくは60°未満、とりわけ40°未満であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
切削速度が少なくとも10m/分、好ましくは少なくとも20m/分、とりわけ少なくとも50m/分であり、および/または前記切削速度が450m/分未満、好ましくは300m/分未満、さらに好ましくは200m/分未満、とりわけ150m/分未満であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記切削工具(1)と前記歯付き加工品(2)が、処理中の加工品の歯車軸(Z)に平行な方向成分を有する互いに対する運動をさせられ、前記歯縁部を完全に仕上げる働きをすることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記切削工具が、拡張された係合領域での切削加工処理をもたらす、とりわけ前記歯縁部の完全な仕上げをもたらす構造を有して設計されることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記軸方向に向く端面での前記歯縁部の切削加工中に、前記切削工具と前記歯付き加工品が、処理中の前記加工品の歯車軸に平行な方向成分を持つ相対運動をさせられないことを特徴とする請求項1乃至、またはのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
軸方向に向く端面(3)のそれぞれと歯付き加工品(2)の歯側面の間の歯縁部を機械加工する機械加工ステーションであって、前記歯付き外郭を持つ機械加工されるべき加工品を保持する働きをする、駆動され回転する加工品スピンドルと、工具を保持する働きをする、駆動され回転する工具スピンドルとを備える機械加工ステーションにおいて、ゼロとは異なる軸交差角度(Σ)が工具スピンドル軸と加工品スピンドル軸(Z)の間に設定され得ること、並びに、機械加工されるべき前記歯付き加工品(2)と前記工具(1)の歯付き外郭の間の、ゼロとは異なる軸交差角度Σでの回転係合のためのスピンドルの回転運動を、とりわけ請求項1乃至のいずれか一項に定義された方法により制御するコントローラデバイスが提供され、ゼロとは異なる傾斜角度(η)が、前記工具スピンドル軸と前記歯付き外郭の中心と前記工具の中心の間の接続線と直交して延びる平面との間に設定され得ることを特徴とする機械加工ステーション。
【請求項10】
直線運動軸を持つ、具体的には、前記加工品スピンドル軸に対し半径方向の方向成分を持つ、とりわけ前記加工品スピンドル軸の半径方向に延びる、第1の機械軸(X)を持つことを特徴とする請求項に記載の機械加工ステーション。
【請求項11】
前記加工品スピンドルと前記工具スピンドルの間の前記加工品スピンドル軸と平行な方向成分を持つ相対運動を生じさせる機械軸が設けられることを特徴とする請求項または1に記載の機械加工ステーション。
【請求項12】
前記軸交差角度(Σ)を設定する働きをする回転軸と直交する、並びに前記加工品スピンドル軸と直交する方向成分を含むさらなる回転機械軸が設けられることを特徴とする請求項乃至11のいずれか一項に記載の機械加工ステーション。
【請求項13】
前記加工品スピンドル軸と直交して延びる平面にある方向成分を含む第2の直線機械軸が設けられ、前記方向成分が、前記平面への第1の機械軸の投影像とは直線的に独立していることを特徴とする請求項乃至11のいずれか一項に記載の機械加工ステーション。
【請求項14】
前記工具が円板形であることを特徴とする請求項乃至13のいずれか一項に記載の機械加工ステーション。
【請求項15】
前記工具が段階研磨外郭を有することを特徴とする請求項乃至14のいずれか一項に記載の機械加工ステーション。
【請求項16】
前記工具(10)が、拡張された係合領域での機械加工処理をもたらす、とりわけ軸方向に向く1つの端面での前記歯縁部の完全な仕上げをもたらす構造を有して構成されることを特徴とする請求項乃至11のいずれか一項に記載の機械加工ステーション。
【請求項17】
前記工具(10)が、前記工具の回転軸(ZW)の方向で測定されるその傾斜面の高さが変化する領域を有することを特徴とする請求項乃至12のいずれか一項に記載の機械加工ステーション。
【請求項18】
前記工具(10)の傾斜面が少なくとも部分的に螺旋の形で上昇することを特徴とする請求項13に記載の機械加工ステーション。
【請求項19】
歯付き加工品を機械加工する歯車切削機であって、請求項乃至18のいずれか一項に記載の機械加工ステーションを有し、および/または、請求項1乃至のいずれか一項に記載の方法の実行の際に本歯車切削機を制御するコントローラデバイスを有する歯車切削機において、とりわけ、軟切削処理、例えばホビング、歯車形成、または動力丸削り仕上げによって、処理中の加工品上に歯車の歯を作り出すさらなる機械加工ステーションを有することを特徴とする歯車切削機。
【請求項20】
機械加工ステーションおよび/または歯車切削機のコントローラデバイスに対し実行されると、請求項1乃至のいずれか一項に記載の方法の実行の際に、前記機械加工ステーションおよび/または歯車切削機を制御することを特徴とするコントローラプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯車の軸方向に向く面と歯側面の間の歯縁部を機械加工する方法、並びにこの方法を実施するように設計された機械加工ステーション、および機械加工ステーションに備えられる歯車切削機に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の方法は、例えば特許文献1に開示されている既知の最新技術に属する。歯車が製造されるチップ切削処理は、軸方向に向く面と境界を接する歯縁部に沿ってバリを生じさせるので、歯縁部に対する機械加工作業が実施される。このバリが除去される必要があることには、幾つかの理由がある。例えば、歯車の軸方向に向く端面は、平面取付け面または基準面としての役割を果たすので、その平面性がバリによって損なわれることになる。さらに、加工品が硬化された後、歯車が動力伝達装置内で動作しているときにバリが後で分裂し、それによって歯側面または動力伝達装置の一部分が損壊されるかもしれないというリスクがある。その上、この種のバリはまた、歯車または歯付き加工品を取り扱う人に怪我をさせる恐れもある。歯縁部自体に対処せずにバリをただ単に除去したとすれば、硬化処理の際に歯縁部が浸炭の結果としてガラス硬化し、応力を受けて剥離するかもしれないというリスクがある。
【0003】
これらの欠点を無くすために、幾つかの方法が当技術分野で開発された。例えば特許文献2に開示されたそのような方法は、歯縁部を面取り部に塑性再形成することに関係し、歯縁部の領域内の加工品の材料が、加工品と回転歯係合している面取りホイールによって押し戻される。しかし、この処理で作り出される二次バリもまた、それらが砥石研磨または研削などの後続の硬仕上げ処理において、バリがそれぞれの硬仕上げ工具の早すぎる損耗を引き起こし得る問題を呈示するので、後で除去されなければならないことになる。それによってこのような二次バリが除去され得る方法が、特許文献3で教示されている。
【0004】
接触圧のもとで塑性変形によって面取り部を生成することの代替形態として、切削処理によって歯縁部に面取り部を作り出すことが可能である。特許文献1によれば、少なくとも1つの切削縁部を持つ実質的円筒形工具が工具スピンドルに取り付けられる。半径方向切込み運動がこの面取り工具を歯付き加工品の端面との機械加工係合の状態にした後に、面取り部が歯車の歯の縁部に作り出される。特許文献1に開示された設計構成では、両端面における面取り工具の切削運動は常に、歯車輪郭の中心の方に向けられ得る。その発明の主題は、歯縁部の面取り部が切削作業によって生成される歯縁部の処理法である。
【0005】
本発明には、機械加工されるべき歯付き加工品の形状に関してもまたより多くの適応性を提供することを目指して、上述したものと同じ一般的な種類の方法を改善する目的がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開第102009019433号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1279127号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第102009018405号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第2537615号明細書
【発明の概要】
【0007】
方法指向の観点から本発明はこの課題を、上の文に名づけられているより進歩したバージョンの方法によって解決し、これは本質的に、機械加工工具が歯付き外郭を有すること、並びに、材料除去切削作業のために、その歯付き外郭の軸の周りに回転する機械加工工具が、機械加工されるべき歯付き加工品と回転係合の状態にされ、機械加工工具および加工中の歯付き加工品の回転軸が互いに対して、ゼロとは異なる軸交差角度に位置付けられていることを特徴とする。
【0008】
したがって、上述の最新技術と比較して、本発明は、機械加工工具が歯付き外郭を有し、また歯付き工具外郭の軸が、歯縁部が機械加工されている歯付き加工品の歯車軸に対して軸交差角度で傾斜しているので、完全に異なる関与機械軸の運動学的配置に基づく。運動学的には、これは、関与回転軸の互いに斜めの位置を特徴とする交差はすば歯車伝達に類似している。通常はΣと標示される軸交差角度に達するには、平行状態の回転軸から始め、次に回転軸の1つを歯付き加工品と工具のそれぞれの中心間の接続線(両方の回転軸に直角の接続線)の周りに旋回させる。なお、いずれにしても当業者には軸交差角度の意味が、例えば動力丸削り仕上げの文脈でよく知られていよう。機械軸、運動学および切削条件、並びに用語の定義についての図による説明が、特許文献4に見出される。
【0009】
したがって、軸を交差角度で互いに対して斜めにすることによって、切削速度が軸間の交差角度並びに機械加工工具の回転速度に依存する切削機構が生み出される。工具の切削縁部は、工具の歯縁部によって形成される。
【0010】
したがって、ゼロとは異なる角度で軸が互いに交差する結果として、切削運動の切削方向は、機械加工される歯縁部と隣り合う歯側面に沿った歯幅の方向に動く方向成分を有することができる。
【0011】
歯側面の方向に直交する方向成分を切削運動の切削方向に加えるために特に好ましい手順は、工具の回転軸を、歯付き加工品の中心と工具の中心の間の接続線に直交して延びる平面に対して、ゼロとは異なる傾斜角度に設定することである。したがって、工具は加工品軸Zに向かう方向に傾けられる(図2)。これは、歯縁部の上に至る輪郭形成接触線を得る特に簡単なやり方である。この傾斜角はまた、接触平面に対する工具の平面の傾斜に対応する。
【0012】
したがって、それによって決定された機械加工係合のための軸の相互位置は、平行位置の軸から始めて、直線的に独立している2つの回転軸の周りの回転によって設定され得る。あるいは、軸の交差角度はまた、1つだけの軸の周りで回転を行い、直線変位に、中心の接続線(両方の軸に直交している線)並びに歯付き加工品および機械加工工具の回転軸の一方に対して垂直な変位成分を加えることによって設定されることもできる。この種の変位は、(投影で見た)軸の交差点と、機械加工作業の係合点(接触点)との間の非ゼロオフセットを特徴とする。この変位に従うと、最初に設定された軸間の交差角度は、有効交差角度と傾斜角度を合成したものと考えられ得る。
【0013】
さらに、中心間の接続の方向は半径方向であり、これはまた、純粋切込みまたはプランジ切削送り動作のための、本発明の方法における切込み軸の方向として使用されることもできる。
【0014】
好ましい実施形態では、軸の交差角度は少なくとも4°、より好ましくは少なくとも8°、とりわけ少なくとも12°である。他方で交差角度は、適当な限度の45°を超えてはならず、好ましくは35°未満、とりわけ25°未満でなければならない。これは、十分に速い切削速度を可能にすると同時に、機械加工工具の設計に過度の要求を課さない。
【0015】
傾斜角度に関して、好ましい傾斜量は少なくとも8パーセント、好ましくは少なくとも16パーセント、とりわけ少なくとも24パーセントである。他方で傾斜は、80パーセントを越えてはならず、好ましくは60パーセント未満、とりわけ40パーセント未満でなければならない。この傾斜の設定は、上記で指定された交差角度の設定と特に組合せて、輪郭形成接触線が適切な経路をたどることを保証する。
【0016】
上記で論じられたように、機械加工工具の回転軸周りの回転速度は、切削速度を決定する要因の1つである。他の運動の軸の設定が行われているならば、機械加工工具の回転速度は、切削速度が少なくとも10m/分、好ましくは少なくとも30m/分、とりわけ少なくとも50m/分となる値に好ましくは設定される。上限としては、450m/分未満、好ましくは300m/分未満、とりわけ200m/分未満であるが150m/分を除外しない切削速度が想定される。これは、機械加工時間の節約と工具の十分な動作寿命の間の適当な妥協を可能にする。
【0017】
歯側面がどんな場合にも、歯元側面と歯先円側面の間で完全な機械加工処理にかけられることを保証するために、輪郭形成接触線は、歯間隙の歯縁部領域全体にわたって押される必要がある。本発明によれば、これが達成される主な幾つかのやり方がある。
【0018】
第1の可能性として、工具および歯付き加工品は、加工品の歯付き外郭の軸に平行な方向成分を有する互いに対する運動をさせられることができる。これは、動力丸削り仕上げの処理と類似の、歯付き外郭の軸に沿った、または工具軸に沿った運動であり得る。傾斜角度が大きい場合、このバージョンを使用することは特に有利である。
【0019】
考えられるところでは、この場合、歯付き加工品の幾つかの歯縁部(いずれにせよ歯縁部の幾つかの領域)は、例えば機械加工工具の歯付き外郭の歯縁部に配置されている切削縁部の幾つかの領域と接触することさえできない。
【0020】
他方で、機械加工工具の歯付き外郭は、全外周に沿って延びることが、これがたとえ好ましい構成であっても不要である。原則として、切削縁部を担持する単一の歯で十分である。この場合には、適切に小さい軸方向切込み速度が選択されなければならない。
【0021】
あるいは、この効果を生み出す構造もまた、機械加工工具自体に組み込まれ得る。この構成概念の詳細が、デバイス特許請求の範囲との関連で以下に説明される。
【0022】
この後者の可能性に関しては、場合によって、例えば歯付き加工品の軸、または工具軸と平行に向けられる切込み運動を完全に無くすことが実現可能であり得る。これは、歯付き外郭を担持する加工品がまた前者の近くに、歯縁部を仕上げる処理で損壊されることから安全が確保される必要のある肩を有する場合に、特に有利である。この場合、工具の幾つかの異なる歯が各間隙と係合状態になって、セグメント中の各間隙の2つの歯縁部を回転順に機械加工する。
【0023】
デバイス指向の観点から、本発明は、軸方向に向く端面のそれぞれと歯付き加工品の歯側面の間の歯縁部を仕上げる機械加工ステーションを提供し、これは、ゼロとは異なる交差角度が工具スピンドル軸と加工品スピンドル軸の間に設定されることができ、並びに、歯付き加工品と工具の歯付き外郭の間の、ゼロとは異なる軸交差角度での回転係合のためのスピンドルの回転運動を制御するコントローラデバイスが提供されるという特徴によって、本質的に区別される。
【0024】
この機械加工ステーションの利点は、本発明の方法の利点から生じる。したがって、好ましい実施形態の機械加工ステーションは、加工品スピンドル軸に対し半径方向の方向成分を持つ切込みの直線運動軸、とりわけ第1の機械軸を有することができる。適切には、機械加工ステーションはまた、加工品スピンドル軸に対し平行な方向成分を持つ加工品スピンドルと工具スピンドルの間の相対運動を可能にする機械軸を有する。これは一方で、軸方向切込み運動を実現することを可能にする。別の好都合な態様として、それは、機械加工工具の軸方向位置が変更されることを可能にし、これは、歯幅が変化する加工品の機械加工では特に有利である。その上、この特徴はまた、軸方向に向く1つの端面での歯縁部の機械加工と反対側の端面での歯縁部の機械加工との間で、加工品に対する工具の軸方向位置を変更するために用いられ得る。さらに好ましい特徴として、歯付き加工品外郭の中心と工具の中心の間の接続線に直交して延びる平面に対して、ゼロとは異なる傾斜角度が工具スピンドル軸のために設定され得る。
【0025】
考えられる実施形態では、軸の交差角度を設定する役割を果たす軸に直交し、かつ加工品スピンドル軸に直交する方向成分を含む、さらなる回転機械軸が想定される。それ故に、軸の交差角度および傾斜角度は、2つの回転機械軸によって設定される。
【0026】
しかし、別の、より好ましい実施形態は、加工品スピンドル軸に直交して延びる平面内に方向成分を持つ第2の機械軸を有し、方向成分は、平面への第1の機械軸の投影像とは直線的に独立している。実際的な構成では、これは、半径方向の切込み方向Xのための、加えて、加工品スピンドル軸に直交して進む方向Yのための交差摺動ステージであり得る。Y方向の摺動ステージの変位の結果として、半径方向軸X周りの回転によって最初に設定された軸の交差角度が傾斜成分ηを受ける。というのは、工具スピンドル軸の向きは変位の間変化しないのに対して、加工品および工具のそれぞれの中心間の連結器軸は変化するからである。
【0027】
工具の形状に関して、後者は、好ましくは円板形であることができ、具体的には軸寸法が10cm未満、好ましくは7cm未満、とりわけ4cm未満である。適切には、工具の歯付き外郭は段階研磨仕上げになっており、したがって、動力丸削り仕上げにも好都合である基本形状を有する。
【0028】
さらに、機械加工工具は、工具軸に平行な切込み運動の効果を生み出す構造で設計され得る。これは、工具がその歯の傾斜面の高さが変化する領域を有する設計によって好ましくは達成される。切削縁部のある傾斜面を歯が担持するので、したがって本発明はまた、それ自体が保護に値する概念として、切削作業において歯縁部から材料を除去することによって各端面と歯側面の間の歯縁部を仕上げる機械加工工具を開示し、この機械加工工具の切削縁部に隣り合う傾斜面は、工具の回転軸の方向で測定される高さが変化する。
【0029】
前述の構成概念は、機械加工工具の特別な実施形態で実現され、工具の傾斜面は、少なくとも一部は螺旋の形で上昇する。傾斜面の基本形状は、加えて、段階研磨によって形成され得る。
【0030】
工具および歯付き加工品の回転軸の互いに対する位置に加えて、螺旋ピッチの結果として1回転で得られる高さは、この場合、追加の切込み運動がない輪郭形成接触線によって取り除かれる縁部セグメントの長さの決定因子になる。
【0031】
本発明はさらに、前述の説明による機械加工ステーションを用いて歯付き加工品を機械加工する歯車切削機を提供する。この歯車切削機は、軟切削処理、例えばホビング、歯車形成、または動力丸削り仕上げ、によって加工品上に歯を作り出す働きをするさらなる作業ステーションにとりわけ備えられ得る。さらに、本発明による方法に対する保護はまた、この方法が実装されるコントローラプログラムにも及ぶ。
【0032】
本発明による方法は、内歯車並びに外歯車の歯縁部の機械加工に用いられ得る。
【0033】
本発明のさらに区別をつける特徴、詳細および利点は、添付の図面を参照する以下の説明により明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】第1の見る方向で見られた、工具と機械加工されるべき歯車輪郭の間の係合の幾何学的配置を概略的に示す図である。
図2】第2の見る方向で見られた、図1に示されたようなものと同じ機械加工係合を概略的に示す図である。
図3a】歯縁部の機械加工に使用される軸の位置を示す図である。
図3b図3aとの比較のための、動力丸削り仕上げに使用される軸の位置を示す図である。
図4】動力丸削り仕上げによって下にある歯車外郭を作り出す工具の輪郭と比較して、歯縁部の機械加工のための工具の輪郭を示す図である。
図5】歯縁部を機械加工するための工具の特別な形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、本発明の方法の基礎とされている、機械軸の基となる運動学を示す。歯付き外郭2を有する加工品が図1に示され、その歯車軸Zが垂直に向けられているが、歯付き外郭2の個々の歯は、図1の概略図では外形が描かれていない。図1の図面平面における、半径方向の切込み方向Xに直交して延びるその投影像では、歯車輪郭2の歯車軸Zは、工具1の回転軸ZWとで軸交差角度Σを囲む。図示の例では、Σは20°である。この例での軸X、ZおよびYは、長方形の座標系を形成する。
【0036】
図2は、Y方向Y、すなわち図1の見る方向に対して90°回されている見る方向で見られるような工具と加工品の間の係合をさらに図示する。図2から明らかなように、工具1もまた、X方向に直交して延びる平面に対して傾斜しており、具体的には角度ηだけ、この場合は30°傾斜している。図2は、歯付き外郭2の歯側面と、上部で軸方向に向く端面3との間にある歯縁部の機械加工を図示する。下部側の縁部の機械加工では、加工品は、図3の下部面が上面になる一方で、工具の位置が図2に示される作業状態と同じままにとどまるように、裏返しされ得る。あるいは、加工品と工具の間の同じ相対的相互位置付けは、工具の位置を変更することによって達成され得る。この能力は、図2でXと示された軸の周りを工具が180°以上旋回され得る設計によってとりわけ実現され得る。
【0037】
原則として、切削は内側から外へ(間隙の外へ)、または逆に(間隙の中へ)向けられることができる。1つの種類の切削から他へと変更するには、回転の意味がそれに応じて逆にされる必要がある。
【0038】
上記で説明されたように、機械は、設定されるべき軸の所望の位置を可能にするのに第2の回転軸を必要としない。代わりに、動力丸削り仕上げに使用される、かつ図面の投影図における切削係合の位置が投影された軸交差の領域にある、図3bに示された位置から始めて、工具は移動運動(図3の左側に向けられる)を受けさせられることができる。この移動運動では、工具軸の向きは変化しないが工具の中心が移動される。したがって、中心間の接続線に直交して延びる、図3bの図面平面と一致する平面は、比喩的に言えば図面平面の外へ傾けられ、図3aの新しい接続線に対して再び垂直になる。図3aの工具の回転軸はもはやこの平面にはないが、後者から加工品の回転軸に向かう方向の角度で傾斜されている。
【0039】
図3aでは、図3bに示されている個々の歯の外形を省略している。これは、歯縁部を機械加工する工具の輪郭が、図3bに示された動力丸削り仕上げ工具の歯輪郭とは合致しないことを示すことを意図している。むしろ、歯縁部機械加工工具の工具輪郭は、この目的のために修正されている。その理由は、面取り部を作り出すには縁部が、軸方向に向く面の平面内で破壊されなければならず、したがって、速度ベクトルはその面の面取り部と平行でなければならないからである。この修正の例が図4に示されており、実線は動力丸削り仕上げに使用される工具の歯輪郭を表し、破線は面取り工具の対応する輪郭を表す。
【0040】
図5に示された工具10を使用することで、軸方向に向く面の歯縁部の機械加工中に工具をその軸方向に動かす必要をなくする。工具10の歯付き外郭12は、連続して上昇する螺旋の形で回転軸ZWの周りに曲がり、したがって、位置14に断絶部16がある。工具10の、その回転軸周りの完全な単一回転により、輪郭形成接触線が、機械加工されるべき歯車輪郭の歯間隙の両方の歯縁部全体にわたって押されることになり、それによって、歯縁部を機械加工するための特別な時間節約のやり方が得られる。連続螺旋形状は好ましいが必要ではない。複数のセグメントが段で中断されている構成もまた可能である。
【0041】
原則として、塑性変形による歯車歯縁部の面取りとは異なって、切削作業によって歯縁部に面取り部を作り出すことは、後に続く第2のステップを必要としない。これは、加工品の機械加工時間を短縮する。
【0042】
本発明をさらに明確にするために、以下の論議の主目的は、読者が本発明の方法の基礎とされている切削処理を視覚化できるようにすることである。
【0043】
始めに、簡略化された見方では、機械加工工具の歯車歯付き外郭の歯縁部にある、すなわち工具の回転軸ZWに直交して延びる面にある、工具の切削縁部の線要素dιが考察される。スナップショットでは、切削縁部要素dιの方向ベクトルは、例えば(cosθ,sinθ,0)と記述されることができ、ここでθは、切削縁部要素が半径方向軸に対して、例えばスナップショットでは機械加工工具の基準系(XW,YW,ZW)の残りの軸XWに対して、傾斜している角度を表す。
【0044】
切削縁部自体の方向ベクトルに沿う、動いていない加工品に対する運動は、いかなる切削動作も生じさせず、切削縁部要素dιは常に、回転軸ZWに直交して延びる平面内で動く。したがって、以下の説明の目的のために、この平面内にあり、切削縁部要素dιに直交して向けられている切削方向(絶対基準系における)が仮定される。それに応じて、この切削方向は、機械加工工具の残りの基準フレームに対して方向ベクトルsw=(−sinθ,cosθ,0)によって定義され得る。
【0045】
回転軸間に設定されている交差角度Σだけをまず考察すると、これは、工具を切込み軸Xの周りに傾けることと同等であることを表し、そのため切削方向は、傾斜ηを除外するが軸交差角度Σは含めて、空間的に固定された座標系(X,Y,Z)においてsΣ=(−sinθ,cosθcosΣ,cosθsinΣ)として表され得る。
【0046】
この切削方向の第3のベクトル成分はまた、歯車軸と平行な成分がどれだけ軸交差角度に依存するかをも示す。
【0047】
追加の傾斜角度ηのない軸交差角度Σの構成は、動力丸削り仕上げに使用される機械軸の基本配置を表し、最大半径方向切込みによる動力丸削り仕上げによってすでに完成された歯側面の形状を考慮して、処理中の同様な回転歯車に対する相対運動における切削方向は、歯側面に直交する成分を有することができない。この要件が、歯車軸Zの周りに回転される座標系において、切削方向の第1の成分が(この場合は空間的に固定された)成分に直交する(ゼロになる)成分を表し、歯側面に沿った第2の成分が歯高の方向を表すという意味でスナップショットに適用される場合には、sΣの第1の成分がゼロになるように角度χでの回転、すなわち、条件tanχ=tanθ/cosΣが満たされる回転が必要とされる。
【0048】
しかし、本発明の好ましい実施形態では、回転軸ZWは、空間的に固定された系において軸Yの周りに追加的に、具体的には傾き角度ηだけ、傾けられる。したがって、空間的に固定された系(X,Y,Z)において(絶対)切削方向のベクトルは、形式sΣ,η=(cosθsinΣsinη−sinθcosη,cosθcosΣ,cosθsinΣcosη+sinθsinη)をとる。
【0049】
切削方向が形式sΣ,η,χ=(s,s|、sZ)をとる、角度χだけ回転される座標系に変更すると、歯側面に対し垂直の成分について次式に到達する。
【0050】
=(sinΣsinηcosθ−cosηsinθ)×cosχ+cosΣcosθsinχ
したがって、切削方向は、ゼロにならない成分sを有し、これは、切削動作において輪郭線が歯縁部の上に押されるという結果をもたらす。透明性のために値θ=0を挿入すると、sについての結果は
θ=0=sinΣsinη
に変形される。
【0051】
この結果を図で解釈すると、ゼロにならない軸交差角度Σは、好ましい実施形態において追加の傾斜角度の正弦もまた含む、歯側面に対し垂直のベクトル成分を持つ切削方向を実現することを可能にする。その結果、この好ましい実施形態では、処理中の歯車歯輪郭の歯側面に対し垂直に向けられている切削方向のベクトル成分は、因子sinΣ×sinηに主に依存することになる。
【0052】
さらに、本発明は、図面についての説明において提示された実施形態の例に限定されない。むしろ、添付の特許請求の範囲および前述の説明の特徴は、異なる実施形態における本発明の実現のために、本質的、個別的、または複合的なものであり得る。
図1
図2
図3a
図3b
図4
図5