(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0003】
一般的に、パターニング膜を形成するためには、蒸着やスピンコーティングなどによって薄膜を形成した後にフォトマスク工程によってパターンを間接的に形成するか、形成しようとするパターンを基板上に直接印刷する方法がある。
【0004】
一方、最近の感光膜マスクを用いることのできない大面積が求められる半導体素子またはディスプレイ素子の製造工程においては、工程を容易にするためにマスクの製作だけで成膜とパターンを同時に形成できるシャドーマスク(shadow mask)を適用している。
【0005】
パターニングをするためには基板上にアライメントマークが一定位置に存在しなければならず、このアライメントマークとマスクのアライメントホールの位置を整列した後にパターニング作業を行うことになる。
【0006】
マスクと基板の整列基準となるアライメントマークは基板上にパターン工程ステップ前に別途に形成し、一般的に金属膜を蒸着した後にフォト工程によって十字架、円形、正方形の形態でパターニングしており、また他の方法としては、インクをプリンティングするか、レーザで直接基板にアライメントマークを形成したりもする。
【0007】
すなわち、多層膜を形成する本工程の他にアライメントマークを形成するための付加的な工程が追加されるという問題点がある。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明をより具体的に説明する。
【0014】
従来のシャドーマスクを用いた蒸着工程システムを
図1に概略的に示す。
図1に示すように、従来のシャドーマスクを用いた蒸着工程システムは、基板ホルダー10に基板20が付着され、シャドーマスクトレー50にシャドーマスク40が付着されたシステムを利用する。
【0015】
従来技術においては、基板上の必要な部分に有機物を蒸着するためにシャドーマスクを用いる。この時、基板とシャドーマスクの間のアライメントは大変重要であり、精密に調節されなければならない。すなわち、真空蒸着機内で基板とシャドーマスクをアライメントさせるアライメントシステムが必要となる。
【0016】
また、基板を付着する基板ホルダーとシャドーマスクを付着するシャドーマスクトレーが必要となり、基板の大きさが大きくなるほど、工程システムの荷重が増加するという問題点がある。よって、基板とシャドーマスクの間のアライメントを精密にするために、基板および/またはシャドーマスクの垂れ現象を克服する必要がある。
【0017】
また、従来技術においてはシャドーマスクシステムの移動時に振動などによるアライメントの歪みが発生する可能性があるため、当該技術分野ではシャドーマスクシステムを用いた蒸着工程に対する改善が必要である。
【0018】
そこで、本発明の一実施状態による積層体は、基板、および前記基板上に備えられ、有機物を含むマスクを含む。
【0019】
本発明においては、基板上に有機物などを蒸着させる工程において、別途のシャドーマスクシステムを利用することなく、基板上に有機物マスクを直接具備させることを特徴とする。すなわち、前記基板上に備えられた有機物マスクがシャドーマスクの役割を果たすことができる。
【0020】
本発明の一実施状態において、前記基板の材料は本発明による積層体を適用しようとする分野に応じて適切に選択することができ、好ましい例としてはガラス、無機材料基板、プラスチック基板、その他のフレキシブル基板などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
本発明の一実施状態において、前記有機物マスクは印刷方法によって基板上に形成することができる。より具体的には、前記印刷方法は、有機物マスクを形成する材料を基板上に目的とするパターン形態で転写した後に焼成する方式によって行われることができる。前記転写方法は特に限定されないが、凹版またはスクリーンなどパターン転写媒体にパターンを形成し、それを利用して所望のパターンを導電膜上に転写することができる。前記パターン転写媒体にパターン形態を形成する方法は当該技術分野で周知の方法を利用することができる。
【0022】
前記印刷方法は特に限定されず、オフセット印刷、リバースオフセット印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷などの印刷法を利用することができる。オフセット印刷は、パターンが彫られた凹版にペーストを満たした後、ブランケット(blanket)と呼ばれるシリコンゴムに1次転写をした後、前記ブランケットと基板を密着させて2次転写をする方式によって行われることができる。スクリーン印刷は、パターンがあるスクリーン上にペーストを位置させた後、スキージーを押して、空間が空いたスクリーンを通じて直接的に基板にペーストを位置させる方式によって行われることができる。グラビア印刷は、ロール上にパターンが彫られたブランケットを巻き、ペーストをパターン内に満たした後、基板に転写させる方式によって行われることができる。本発明においては、前記方式が各々単独で用いられてもよく、前記方式が複合的に用いられてもよい。また、その他の当業者に周知の印刷方式を利用してもよい。
【0023】
グラビアオフセット印刷法またはリバースオフセット印刷法の場合、ブランケットが有する離型特性によってインクあるいはペーストが基板にほぼ大部分転写されるため、別途のブランケット洗浄工程が必要でない。前記凹版は基板を精密エッチングして製造することができる。前記凹版は金属板をエッチングして製造してもよく、または、高分子樹脂による光学的パターニングによって製造してもよい。
【0024】
前記有機物マスクを形成できる材料は、印刷方法によってマスクを形成できる材料であれば、当該技術分野で周知の材料を用いることができ、特に限定されるものではない。より具体的には、前記有機物マスクはポリイミド、ポリエチレン、ポリ塩化ビニルなどを1種以上含むことができるが、これらのみに限定されるものではない。
【0025】
本発明の一実施状態による積層体の一具体例を
図2に示す。
図2によれば、本発明の一実施状態による積層体は、基板20、および前記基板20上に備えられ、有機物を含むマスク30を含む。
【0026】
前記有機物を含むマスクはパターンの形態であってもよく、前記有機物を含むマスクは逆テーパー角を有する形状であってもよいが、これらのみに限定されるものではない。前記逆テーパー角を有する形状は2回以上の印刷工程によって製造されることができるが、これのみに限定されるものではない。
【0027】
また、本発明の一実施状態による有機発光素子の製造方法は、前記積層体を用いて第1電極、有機物層および第2電極のうち1種以上を形成するステップを含む。
【0028】
より具体的には、本発明の一実施状態による有機発光素子の製造方法は、基板上に有機物を含むマスクを形成するステップを含む。前記有機物の材料、有機物を含むマスクの形成方法などは前述した通りであるので、それに関する具体的な説明は省略する。
【0029】
本発明の一実施状態において、前記基板およびマスクを含む積層体上に蒸着工程によって第1電極、有機物層、第2電極などを形成するステップを含むことができる。前記第1電極、有機物層および第2電極を形成する工程中、蒸着工程によって第1電極、有機物層または第2電極を形成する工程に、前記基板およびマスクを含む積層体を用いることができる。
【0030】
本発明の一実施状態において、前記第1電極、有機物層および第2電極のうち1種以上を形成した後、前記有機物を含むマスクを除去するステップをさらに含むことができる。
【0031】
例えば、前記基板およびマスクを含む積層体上に第1電極、有機物層または第2電極を蒸着工程によって形成した後、前記有機物を含むマスクを除去することができる。
【0032】
前記有機物を含むマスクの除去方法は当該技術分野で周知の方法を利用することができ、より具体的にはフィルムデラミネーション(film delamination)方法を利用することができるが、これのみに限定されるものではない。
【0033】
本発明の一実施状態において、前記基板およびマスクを含む積層体上に蒸着工程によって第1電極を形成した後、前記有機物を含むマスクを除去することができる。その後、当該技術分野で周知の方法を利用して前記第1電極上に有機物層および第2電極を順次形成することによって、有機発光素子を製造することができる。
【0034】
前記第1電極は、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、チタニウム、インジウム、イットリウム、リチウム、ガドリニウム、アルミニウム、白金、金、タングステン、タンタル、銅、銀、スズおよび鉛のうちから選択された1種以上で形成されることができる。
【0035】
また、第1電極は透明導電酸化物で形成されることもできる。ここで、前記透明導電酸化物は、インジウム(In)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、セリウム(Ce)、カドミウム(Cd)、マグネシウム(Mg)、ベリリウム(Be)、銀(Ag)、モリブデン(Mo)、バナジウム(V)、銅(Cu)、イリジウム(Ir)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、タングステン(W)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、アルミニウム(Al)、およびランタン(La)のうちから選択された少なくとも1つの酸化物であってもよい。
【0036】
前記第1電極は、スパッタリング(Sputtering)法、電子−ビーム蒸着法(E−beam evaporation)、熱蒸着法(Thermal evaporation)、レーザ分子ビーム蒸着法(Laser Molecular Beam Epitaxy、L−MBE)、およびパルスレーザ蒸着法(Pulsed Laser Deposition、PLD)のうちから選択されたいずれか1つの物理気相蒸着法(Physical Vapor Deposition、PVD);熱化学気相蒸着法(Thermal Chemical Vapor Deposition)、プラズマ化学気相蒸着法(Plasma−Enhanced Chemical Vapor Deposition、PECVD)、光化学気相蒸着法(Light Chemical Vapor Deposition)、レーザ化学気相蒸着法(Laser Chemical Vapor Deposition)、金属−有機化学気相蒸着法(Metal−Organic Chemical Vapor Deposition、MOCVD)、および水素化物気相蒸着法(Hydride Vapor Phase Epitaxy、HVPE)のうちから選択されたいずれか1つの化学気相蒸着法(Chemical Vapor Deposition);または原子層蒸着法(Atomic Layer Deposition、ALD)を利用して形成することができる。
【0037】
前記第1電極の抵抗を改善するために補助電極をさらに含むことができる。前記補助電極は導電性シーラント(sealant)および金属からなる群から選択された1種以上を蒸着工程または印刷工程を利用して形成することができる。より具体的には、前記補助電極はCr、Mo、Al、Cu、これらの合金などを含むことができるが、これらのみに限定されるものではない。
【0038】
前記補助電極上に絶縁層をさらに含むことができる。前記絶縁層は、当該技術分野で周知の材料および方法を用いて形成されることができる。より具体的には、一般的なフォトレジスト物質、ポリイミド、ポリアクリル、窒化ケイ素、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物などを用いて形成されることができるが、これらのみに限定されるものではない。前記絶縁層の厚さは10nm〜10μmであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0039】
前記有機物層の具体的な物質、形成方法は特に制限されるものではなく、当該技術分野で周知の物質および形成方法を用いることができる。
【0040】
前記有機物層は、様々な高分子素材を用いて、蒸着法でない溶媒工程(solvent process)、例えば、スピンコーティング、ディップコーティング、ドクターブレード、スクリーン印刷、インクジェット印刷または熱転写法などの方法によってさらに少ない数の層に製造することができる。
【0041】
前記有機物層は発光層を含み、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層および電子注入層のうちから選択された1つ以上を含む積層構造であってもよい。
【0042】
前記正孔注入層を形成できる物質としては、通常、有機物層への正孔注入が円滑になるように仕事関数の大きい物質が好ましい。前記正孔注入物質の具体的な例としてはバナジウム、クロム、銅、亜鉛、金のような金属またはこれらの合金;亜鉛酸化物、インジウム酸化物、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)のような金属酸化物;ZnO:AlまたはSnO
2:Sbのような金属と酸化物の組み合わせ;ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ[3,4−(エチレン−1,2−ジオキシ)チオフェン](PEDT)、ポリピロールおよびポリアニリンのような導電性高分子などが挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。
【0043】
前記電子注入層を形成できる物質としては、通常、有機物層への電子注入が容易になるように仕事関数の小さい物質が好ましい。前記電子注入物質の具体的な例としてはマグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、チタニウム、インジウム、イットリウム、リチウム、ガドリニウム、アルミニウム、銀、スズおよび鉛のような金属またはこれらの合金;LiF/AlまたはLiO
2/Alのような多層構造の物質などがあり、正孔注入電極物質と同一な物質を用いることもできるが、これらのみに限定されるものではない。
【0044】
前記発光層を形成できる物質としては、正孔輸送層と電子輸送層から正孔と電子の輸送を各々受けて結合させることによって可視光線領域の光を出せる物質として、蛍光や燐光に対する量子効率の良い物質が好ましい。具体的な例としては8−ヒドロキシ−キノリンアルミニウム錯体(Alq
3);カルバゾール系の化合物;二量体化スチリル(dimerized styryl)化合物;BAlq;10−ヒドロキシベンゾキノリン−金属化合物;ベンゾオキサゾール、ベンズチアゾールおよびベンズイミダゾール系の化合物;ポリ(p−フェニレンビニレン)(PPV)系の高分子;スピロ(spiro)化合物;ポリフルオレン、ルブレン;燐光ホストCBP[[4,4’−bis(9−carbazolyl)biphenyl];などが挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。
【0045】
また、前記発光物質は、蛍光または燐光特性を向上させるために燐光ドーパントまたは蛍光ドーパントをさらに含むことができる。前記燐光ドーパントの具体的な例としては、ir(ppy)(3)(fac tris(2−phenylpyridine) iridium)またはF2Irpic[iridium(III)bis(4,6−di−fluorophenyl−pyridinato−N,C2)picolinate]などが挙げられる。蛍光ドーパントとしては当該技術分野で周知のものを用いることができる。
【0046】
前記電子輸送層を形成できる物質としては、電子注入層から電子の注入を円滑に受けて発光層に移せる物質として、電子に対する移動性の大きい物質が好ましい。具体的な例としては8−ヒドロキシキノリンのAl錯体;Alq
3を含む錯体;有機ラジカル化合物;ヒドロキシフラボン−金属錯体などが挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。
【0047】
前記第2電極はAl、Ag、Ca、Mg、Au、Mo、Ir、Cr、Ti、Pd、これらの合金などを1種以上含むことができるが、これらのみに限定されるものではない。
【0048】
本発明の一実施状態において、前記有機発光素子をカプセル化するステップをさらに含むことができる。前記カプセル化は酸素、水分などの異質物が有機発光素子に侵入するのを防止するためのものであり、当該技術分野で周知の材料、方法などを用いて行うことができる。
【0049】
前記カプセル化工程は有機発光素子の外側を覆う密封部を形成することによって行われることができる。
【0050】
前記密封部は、有機発光素子の外側を覆って有機発光素子を密封できるものであれば、その材料は特に限定されるものではない。例えば、有機発光素子の外側を封止フィルムで圧着するか、金属または金属酸化物を蒸着して密封部を形成するか、樹脂組成物をコーティングおよび硬化して密封部を形成することができる。
【0051】
また、前記密封部は、原子層蒸着法によって金属または金属酸化物を蒸着して形成することができる。ここで、形成される金属層または金属酸化物層は2層以上の構造であってもよい。
【0052】
また、本発明の一実施状態は、前記有機発光素子の製造方法によって製造された有機発光素子を提供する。前記有機発光素子はフレキシブル有機発光素子であってもよい。
【0053】
本発明の一実施状態による有機発光素子は光抽出構造を含むことができる。より具体的には、前記基板と有機発光素子との間に光抽出層をさらに含むことができる。
【0054】
前記光抽出層は、光散乱を誘導して、有機発光素子の光抽出効率を向上できる構造であれば、特に制限されない。より具体的には、前記光抽出層はバインダー内に散乱粒子が分散した構造であってもよい。
【0055】
また、前記光抽出層は、基材上にスピンコーティング、バーコーティング、スリットコーティングなどの方法によって直接形成されるか、フィルム形態で製作して付着する方式によって形成されることができる。
【0056】
なお、前記光抽出層上に平坦層をさらに含むことができる。
【0057】
また、本発明の一実施状態は、前記有機発光素子を含むディスプレイ装置を提供する。ディスプレイ装置において、前記有機発光素子は画素またはバックライトの役割を果たすことができる。その他のディスプレイ装置の構成は当該技術分野で周知のものが適用されることができる。
【0058】
なお、本発明の一実施状態は、前記有機発光素子を含む照明装置を提供する。照明装置において、前記有機発光素子は発光部の役割を果たす。その他の照明装置に必要な構成は当該技術分野で周知のものが適用されることができる。
【0059】
本発明の一実施状態によれば、基板上に有機物マスクを印刷方法によって直接形成することによって、前記有機物マスクが従来のシャドーマスクの役割を果たすことができる。それにより、基板上に有機物などの蒸着工程時、真空蒸着機内のアライメントシステムが不要となり、物流システムの荷重を減少させることができるため、工程上の費用を節減できるという特徴がある。
【0060】
また、従来技術とは異なり、基板上に有機物マスクが付着した状態で移動することができるため、基板の移動時にマスクが歪む問題点が発生しない。よって、本発明は、大型基板の使用時により好ましく適用され、ロールツーロール(roll to roll)蒸着システムにおいてより好ましく適用されることができる。