特許第6487600号(P6487600)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6487600
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】燃料電池セル
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/86 20060101AFI20190311BHJP
   H01M 8/0247 20160101ALI20190311BHJP
   H01M 8/1213 20160101ALI20190311BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20190311BHJP
【FI】
   H01M4/86 U
   H01M8/0247
   H01M8/1213
   !H01M8/12 101
   !H01M8/12 102C
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-228873(P2018-228873)
(22)【出願日】2018年12月6日
【審査請求日】2018年12月6日
(31)【優先権主張番号】特願2017-238729(P2017-238729)
(32)【優先日】2017年12月13日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】前川 友理
(72)【発明者】
【氏名】藤崎 真司
(72)【発明者】
【氏名】龍 崇
(72)【発明者】
【氏名】大森 誠
【審査官】 守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−099322(JP,A)
【文献】 特表2016−527670(JP,A)
【文献】 特開2008−243750(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/02
H01M 4/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板と
前記支持基板上に配置される発電素子部と、
を備え、
前記発電素子部は、前記支持基板側から順に、内側電極、電解質、及び外側電極を有し、
前記外側電極は、外側電極活性部と、外周縁部の少なくとも一部を除いて前記外側電極活性部を覆うように配置される外側電極集電部と、を有し、
前記外側電極活性部は、露出した前記外周縁部において、前記電解質に向かって延びるガス供給用凹部を有する、
燃料電池セル。
【請求項2】
前記ガス供給用凹部は、前記外側電極活性部上に形成された切込みである、
請求項1に記載の燃料電池セル。
【請求項3】
前記ガス供給用凹部は、前記外側電極活性部と前記外側電極集電部との境界部に配置される、
請求項1又は2に記載の燃料電池セル。
【請求項4】
前記ガス供給用凹部は、前記外側電極活性部と前記外側電極集電部との境界部に沿って前記支持基板の幅方向に延びる、
請求項1から3のいずれかに記載の燃料電池セル。
【請求項5】
前記ガス供給用凹部は、前記外側電極活性部と前記外側電極集電部との境界部に沿って前記支持基板の長手方向に延びる、
請求項1から3のいずれかに記載の燃料電池セル。
【請求項6】
前記外側電極集電部は、前記外側電極活性部よりも厚い、
請求項1から5のいずれかに記載の燃料電池セル。
【請求項7】
前記外側電極活性部は、複数の前記ガス供給用凹部を有し、
前記各ガス供給用凹部は、互いに間隔をあけて配列する、
請求項1から6のいずれかに記載の燃料電池セル。
【請求項8】
前記各ガス供給用凹部は、前記支持基板の幅方向に沿って配列する、
請求項7に記載の燃料電池セル。
【請求項9】
前記各ガス供給用凹部は、前記支持基板の長手方向に沿って配列する、
請求項7に記載の燃料電池セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池セルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池セルは、支持基板、及び発電素子部を有している(例えば特許文献1参照)。発電素子部は、支持基板上に支持されている。発電素子部は、燃料極、電解質、及び空気極を有している。空気極は、空気極活性層と、空気極集電層とを有している。空気極集電層は、空気極活性層を覆うように配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−64961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような構成の燃料電池セルでは、空気極集電層は、電流経路の断面積を大きくするために、空気極活性層よりも厚く形成されていることが好ましい。しかし、空気極集電層を厚くすると、空気極活性層への空気の供給量が不足するおそれがある。
【0005】
本発明の課題は、外側電極活性部へのガスの供給量を確保することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある側面に係る燃料電池セルは、支持基板と、支持基板上に配置される発電素子部と、を備えている。発電素子部は、支持基板側から順に、内側電極、電解質、及び外側電極を有する。外側電極は、外側電極活性部と、外側電極集電部とを有する。外側電極集電部は、外側電極活性部の外周縁部の少なくとも一部を除いて外側電極活性部を覆うように配置される。外側電極活性部は、露出した外周縁部において、電解質に向かって延びるガス供給用凹部を有する。
【0007】
この構成によれば、ガス供給用凹部から外側電極活性部内にガスを十分に供給することができる。この結果、外側電極集電部に覆われた外側電極活性部へのガスの供給量を確保することができる。
【0008】
好ましくは、ガス供給用凹部は、外側電極活性部上に形成された切込みである。
【0009】
好ましくは、ガス供給用凹部は、外側電極活性部と外側電極集電部との境界部に配置される。この構成によれば、外側電極活性部の外側電極集電部に覆われた部分へのガスの供給量をより確実に確保することができる。
【0010】
好ましくは、ガス供給用凹部は、外側電極活性部と外側電極集電部との境界部に沿って支持基板の幅方向に延びる。
【0011】
好ましくは、ガス供給用凹部は、外側電極活性部と前記外側電極集電部との境界部に沿って支持基板の長手方向に延びる。
【0012】
好ましくは、外側電極集電部は、外側電極活性部よりも厚い。
【0013】
好ましくは、外側電極活性部は、複数のガス供給用凹部を有する。各ガス供給用凹部は、互いに間隔をあけて配列する。
【0014】
好ましくは、各ガス供給用凹部は、支持基板の幅方向に沿って配列する。
【0015】
好ましくは、各ガス供給用凹部は、支持基板の長手方向に沿って配列する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、外側電極活性部へのガスの供給量を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】セルスタック装置の斜視図。
図2】セルスタック装置の断面図。
図3】燃料マニホールドの斜視図。
図4】燃料電池セルの斜視図。
図5】燃料電池セルの断面図。
図6】燃料電池セルの平面図。
図7】燃料電池セルの拡大断面図。
図8】燃料電池セルの断面図。
図9】燃料電池セルの断面図。
図10】変形例に係る燃料電池セルの平面図。
図11】変形例に係る燃料電池セルの平面図。
図12】変形例に係る燃料電池セルの平面図。
図13】変形例に係る燃料電池セルの平面図。
図14】変形例に係る燃料電池セルの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る燃料電池セルを用いたセルスタック装置の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、長手方向は支持基板の長手方向を意味し、幅方向は支持基板の幅方向を意味する。
【0019】
図1及び図2に示すように、セルスタック装置100は、燃料マニホールド200と、複数の燃料電池セル301と、を備えている。
【0020】
[燃料マニホールド]
図3に示すように、燃料マニホールド200は、燃料ガスを各燃料電池セル301に分配するように構成されている。燃料マニホールド200は、中空状であり、内部空間を有している。燃料マニホールド200の内部空間には、導入管201を介して燃料ガスが供給される。燃料マニホールド200は、互いに間隔をあけて並ぶ複数の貫通孔202を有している。各貫通孔202は、燃料マニホールド200の天板203に形成されている。各貫通孔202は、燃料マニホールド200の内部空間と外部とを連通する。
【0021】
[燃料電池セル]
図2に示すように、各燃料電池セル301は、燃料マニホールド200から延びている。詳細には、各燃料電池セル301は、燃料マニホールド200の天板203から上方(x軸方向)に延びている。すなわち、各燃料電池セル301の長手方向(x軸方向)は、上方に延びている。
【0022】
各燃料電池セル301の長手方向(x軸方向)の長さは、100〜300mm程度とすることができる。また、各燃料電池セル301は、燃料電池セル301の厚さ方向(z軸方向)に間隔をあけて並んでいる。この燃料電池セル301同士の間隔は、1〜5mm程度とすることができる。
【0023】
図4及び図5に示すように、燃料電池セル301は、複数の発電素子部10と、支持基板20と、複数のインターコネクタ31と、を備えている。
【0024】
[支持基板]
支持基板20は、支持基板20の長手方向(x軸方向)に沿って延びる複数のガス流路21を内部に有している。各ガス流路21は、互いに実質的に平行に延びている。支持基板20は、第1主面22aと、第2主面22bと、複数の凹部23と、桟部24とを有している。第2主面22bは、第1主面22aと反対側の面である。第2主面22b、および第2主面22b上の構成は、第1主面22a、及び第1主面22a上の構成と実質的に同じであるため、その詳細な説明を省略する。
【0025】
各凹部23は、第1主面22aに形成されている。各凹部23は、支持基板20の長手方向(x軸方向)において、互いに間隔をあけて配置されている。なお、各凹部23は、支持基板20の幅方向(y軸方向)の両端部には形成されていない。
【0026】
桟部24は、一対の凹部23の間に配置される。このため、支持基板20の長手方向において、凹部23と桟部24とが交互に配置される。
【0027】
支持基板20は、電子伝導性を有さない多孔質の材料によって構成される。支持基板20は、例えば、CSZ(カルシア安定化ジルコニア)から構成され得る。或いは、支持基板20は、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成されてもよいし、NiO(酸化ニッケル)とY(イットリア)とから構成されてもよいし、MgO(酸化マグネシウム)とMgAl(マグネシアアルミナスピネル)とから構成されてもよい。支持基板20の気孔率は、例えば、20〜60%程度である。
【0028】
[発電素子部]
各発電素子部10は、支持基板20の第1主面22a上に支持されている。各発電素子部10は、支持基板20の幅方向(y軸方向)に延びている。各発電素子部10は、支持基板20の長手方向において、互いに間隔をあけて配置されている。すなわち、本実施形態に係る燃料電池セル301は、いわゆる横縞型の燃料電池セルである。
【0029】
長手方向に隣り合う発電素子部10は、インターコネクタ31によって互いに電気的に接続されている。なお、特に限定されるものではないが、第1主面22a上に支持される発電素子部10の数は、5〜15個程度である。
【0030】
図5に示すように、各発電素子部10は、燃料極4(内側電極の一例)、電解質5、及び空気極6(外側電極の一例)を有している。支持基板20側から、燃料極4,電解質5,空気極6の順で支持基板20上に支持されている。また、各発電素子部10は、反応防止膜7をさらに有している。反応防止膜7は、電解質5と空気極6との間に配置されている。
【0031】
[燃料極]
燃料極4は、電子伝導性を有する多孔質の材料から構成される焼成体である。燃料極4は、燃料極集電部41と燃料極活性部42とを有する。各燃料極4は、支持基板20上に配置されている。各燃料極4は、支持基板20の長手方向(x軸方向)において、互いに間隔をあけて配置されている。
【0032】
[燃料極集電部]
燃料極集電部41は、凹部23内に収容されている。詳細には、燃料極集電部41は、凹部23内に充填されており、凹部23と同様の外形を有する。各燃料極集電部41は、第3主面411を有している。
【0033】
燃料極集電部41の第3主面411は、支持基板20の第1主面22aと実質的に同一面上にある。すなわち、支持基板20の第1主面22aと、各燃料極集電部41の第3主面411とによって、一つの面が構成されている。なお、第3主面411は、第1主面22aと完全に同一面上になくてもよい。例えば、第1主面22aと第3主面411との間に、20μm以下程度の段差があってもよい。第3主面411は平坦面を構成している。第3主面411上には、燃料極活性部42、又はインターコネクタ31を収容するような凹部は形成されていない。
【0034】
燃料極集電部41は、電子伝導性を有する。燃料極集電部41は、燃料極活性部42よりも高い電子伝導性を有していることが好ましい。燃料極集電部41は、酸化物イオン伝導性を有していてもよいし、有していなくてもよい。
【0035】
燃料極集電部41は、例えば、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成され得る。或いは、燃料極集電部41は、NiO(酸化ニッケル)とY(イットリア)とから構成されてもよいし、NiO(酸化ニッケル)とCSZ(カルシア安定化ジルコニア)とから構成されてもよい。燃料極集電部41の厚さ、及び凹部23の深さは、50〜500μm程度である。
【0036】
[燃料極活性部]
燃料極活性部42は、燃料極集電部41の第3主面411上に配置されている。このため、燃料極活性部42は、凹部23から突出している。すなわち、燃料極活性部42は、燃料極集電部41に埋設されていない。燃料極活性部42の端縁は、第3主面411上において、燃料極集電部41の端縁よりも内側に形成されている。詳細には、燃料極活性部42は、燃料極集電部41よりも平面視(z軸方向視)の面積が小さい。そして、燃料極活性部42は、第3主面411内に収まっている。
【0037】
燃料極活性部42は、酸化物イオン伝導性を有するとともに、電子伝導性を有する。燃料極活性部42は、燃料極集電部41よりも酸化物イオン伝導性を有する物質の含有率が大きい。詳細には、燃料極活性部42における、気孔部分を除いた全体積に対する酸化物イオン伝導性を有する物質の体積割合は、燃料極集電部41における、気孔部分を除いた全体積に対する酸化物イオン伝導性を有する物質の体積割合よりも大きい。
【0038】
燃料極活性部42は、例えば、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成され得る。或いは、燃料極活性部42は、NiO(酸化ニッケル)とGDC(ガドリニウムドープセリア)とから構成されてもよい。燃料極活性部42の厚さは、5〜30μmである。
【0039】
[電解質]
電解質5は、燃料極4上に配置される。詳細には、電解質5は、燃料極活性部42を覆うように配置される。また、電解質5は、支持基板20上に配置されている。すなわち、電解質5は、桟部24上に配置されている。電解質5は、燃料極集電部41の外周縁部上にも配置されている。
【0040】
電解質5は、あるインターコネクタ31から他のインターコネクタ31まで支持基板20の長手方向(x軸方向)に延びている。支持基板20の長手方向において、電解質5とインターコネクタ31とが交互に配置されている。また、電解質5は、支持基板20を覆うように配置されている。
【0041】
電解質5は、イオン伝導性を有し且つ電子伝導性を有さない緻密な材料から構成される焼成体である。電解質5は、例えば、YSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)から構成され得る。或いは、電解質5は、LSGM(ランタンガレート)から構成されてもよい。
【0042】
[反応防止膜]
反応防止膜7は、緻密な材料から構成される焼成体である。反応防止膜7は、電解質5と空気極活性部61との間に配置されている。反応防止膜7は、電解質5内のYSZと空気極活性部61内のSrとが反応して電解質5と空気極活性部61との界面に電気抵抗が大きい反応層が形成される現象の発生を抑制するために設けられている。反応防止膜7は、電解質5と空気極集電部62との間にも配置されている。反応防止膜7は、例えば、GDC=(Ce,Gd)O(ガドリニウムドープセリア)から構成され得る。反応防止膜7の厚さは、例えば、3〜50μm程度である。なお、反応防止膜7は、電解質5と空気極集電部62との間にも配置されるように長手方向(x軸方向)に延びていてもよい。
【0043】
[空気極]
空気極6は、電子伝導性を有する多孔質の材料から構成される焼成体である。空気極6は、電解質5を基準に、燃料極4と反対側に配置されている。空気極6は、空気極活性部61(外側電極活性部の一例)と空気極集電部62(外側電極集電部の一例)とを有している。
【0044】
[空気極活性部]
空気極活性部61は、反応防止膜7上に配置されている。空気極活性部61は、酸化物イオン伝導性を有するとともに、電子伝導性を有する。空気極活性部61は、空気極集電部62よりも酸化物イオン伝導性を有する物質の含有率が大きい。詳細には、空気極活性部61おける、気孔部分を除いた全体積に対する酸化物イオン伝導性を有する物質の体積割合は、空気極集電部62における、気孔部分を除いた全体積に対する酸化物イオン伝導性を有する物質の体積割合よりも大きい。
【0045】
図6に示すように、空気極活性部61は、外周縁部611の少なくとも一部を除いて空気極集電部62によって覆われている。すなわち、空気極活性部61は、外周縁部611の少なくとも一部が露出している。本実施形態では、空気極活性部61の外周縁部611のうち、支持基板20の幅方向(y軸方向)の両端部、及び支持基板20の長手方向(x軸方向)の一方の端部が露出している。なお、長手方向又は幅方向において、空気極活性部61の露出した部分の長さdは、例えば、0.02〜2mm程度である。
【0046】
図6及び図7に示すように、空気極活性部61は、露出した外周縁部611において、複数の空気供給用凹部612(ガス供給用凹部の一例)を有している。各空気供給用凹部612は、幅方向(y軸方向)において互いに間隔をあけて配置されている。
【0047】
空気供給用凹部612は、空気極活性部61と空気極集電部62との境界部に配置されている。また、空気供給用凹部612は、空気極活性部61と空気極集電部62との境界部に沿って、支持基板20の幅方向(y軸方向)に延びている。
【0048】
空気供給用凹部612は、電解質5に向かって延びている。本実施形態では、空気供給用凹部612は、反応防止膜7に到達していないが、反応防止膜7に到達していてもよい。空気供給用凹部612は、空気極活性部を2つに分断しないように形成されている。空気供給用凹部612は、切込みとして形成されている。
【0049】
空気供給用凹部612の深さは、例えば、0.010〜0.1mm程度とすることができる。空気供給用凹部612の深さは、例えば、空気極活性部61の厚さの10〜100%程度である。また、空気供給用凹部612の幅方向(y軸方向)の長さは、10〜100mm程度とすることができる。また、平面視(z軸方向視)における空気供給用凹部612の開口面積は、0.1〜10mm程度とすることができる。なお、空気供給用凹部612の深さは、空気供給用凹部612の任意の点における切断面において画像ソフトなどを用いて測定することができる。また、空気供給用凹部612の幅方向の長さ、及び開口面積は、平面視において、画像ソフトなどを用いて測定することができる。
【0050】
空気極活性部61は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)から構成され得る。或いは、空気極活性部61は、LSF=(La,Sr)FeO(ランタンストロンチウムフェライト)、LNF=La(Ni,Fe)O(ランタンニッケルフェライト)、又は、LSC=(La,Sr)CoO(ランタンストロンチウムコバルタイト)等から構成されてもよい。空気極活性部61は、LSCFから構成される第1層(内側層)とLSCから構成される第2層(外側層)との2層によって構成されてもよい。空気極活性部61の厚さは、例えば、10〜100μmである。
【0051】
[空気極集電部]
空気極集電部62は、空気極活性部61上に配置されている。空気極集電部62は、空気極活性部61の外周縁部の一部を除いて空気極活性部61を覆っている。空気極集電部62は、空気極活性部61から、隣の発電素子部10に向かって延びている。詳細には、空気極活性部61は、隣の発電素子部10の燃料極集電部41上に配置されるインターコネクタ31まで延びている。
【0052】
空気極集電部62は、電子伝導性を有する多孔質の材料から構成される焼成体である。空気極集電部62は、空気極活性部61よりも高い電子伝導性を有していることが好ましい。空気極集電部62は、酸化物イオン伝導性を有していてもよいし、有していなくてもよい。
【0053】
空気極集電部62は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)から構成され得る。或いは、空気極集電部62は、LSC=(La,Sr)CoO(ランタンストロンチウムコバルタイト)から構成されてもよい。或いは、空気極集電部62は、Ag(銀)、Ag−Pd(銀パラジウム合金)から構成されてもよい。その他にも、空気極集電部62は、La(Ni、Fe、Cu)O等で構成することができる。空気極集電部62は、空気極活性部61上において、空気極活性部61よりも厚い。例えば、空気極活性部61上における空気極集電部62の厚さは、空気極活性部61の厚さの100〜2500%程度である。具体的には、空気極集電部62の厚さは、例えば、50〜500μm程度である。
【0054】
[インターコネクタ]
図5に示すように、インターコネクタ31は、支持基板20の長手方向(x軸方向)において隣り合う発電素子部10を電気的に接続するように構成されている。詳細には、インターコネクタ31は、一方の発電素子部10の燃料極集電部41と、他方の発電素子部10の空気極集電部62とを電気的に接続している。
【0055】
インターコネクタ31は、燃料極集電部41の第3主面411上に配置されている。すなわち、インターコネクタ31は、燃料極集電部41に埋設されていない。インターコネクタ31は、第3主面411上において、燃料極活性部42と間隔をあけて配置されている。
【0056】
インターコネクタ31は、電子伝導性を有する緻密な材料から構成される焼成体である。インターコネクタ31は、例えば、LaCrO(ランタンクロマイト)から構成され得る。或いは、インターコネクタ31は、(Sr,La)TiO(ストロンチウムチタネート)から構成されてもよい。インターコネクタ31の厚さは、例えば、10〜100μmである。
【0057】
[表裏間接続部材]
図4及び図8に示すように、表裏間接続部材8は、第1主面22a上の発電素子部10と、第2主面22b上の発電素子部10とを電気的に直列に接続している。詳細には、表裏間接続部材8は、ガス排出側に配置された第1及び第2主面22a、22b上の各発電素子部10を互いに電気的に接続している。なお、ガス排出側に配置された第2主面22b上の発電素子部10は、空気極集電部62を有しておらず、空気極集電部62の代わりに表裏間接続部材8を有している。そして、表裏間接続部材8は、第2主面22b上の発電素子部10の空気極活性部61と、第1主面22a上の発電素子部10の燃料極集電部41上に配置されたインターコネクタ31とを電気的に接続する。
【0058】
表裏間接続部材8は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)、LSC=(La,Sr)CoO(ランタンストロンチウムコバルタイト)、或いは、La(Ni、Fe、Cu)O等で構成することができる。
【0059】
[集電部材]
以上のように構成された燃料電池セル301は、隣り合う燃料電池セル301と、集電部材302によって電気的に接続されている。図2に示すように、集電部材302は、一対の燃料電池セル301間に配置されている。そして、集電部材302は、厚さ方向(z軸方向)において隣り合う燃料電池セル301同士を電気的に接続するよう、導電性を有している。
【0060】
詳細には、集電部材302は、燃料電池セル301のガス供給側において、隣り合う燃料電池セル301同士を接続している。図9に示すように、集電部材302は、ガス供給端部側に配置された空気極集電部62上に配置されている。
【0061】
集電部材302は、ブロック状である。例えば、集電部材302は、直方体状又は円柱状である。集電部材302は、例えば、酸化物セラミックスの焼成体で構成されている。このような酸化物セラミックスとしては、例えば、ペロブスカイト酸化物、又はスピネル酸化物などが挙げられる。ペロブスカイト酸化物としては、例えば、(La,Sr)MnO、又は(La,Sr)(Co,Fe)O等が挙げられる。スピネル酸化物としては、例えば、(Mn,Co)、又は(Mn,Fe)等が挙げられる。この集電部材302は、例えば、可撓性を有していない。
【0062】
集電部材302は、第1接合材101によって、各燃料電池セル301に接合されている。すなわち、第1接合材101は、各集電部材302と各燃料電池セル301とを接合している。第1接合材101は、例えば、(Mn,Co)、(La,Sr)MnO又は(La,Sr)(Co,Fe)O等よりなる群から選ばれる少なくとも1種である。
【0063】
図1及び図2に示すように、各燃料電池セル301は、燃料マニホールド200に支持されている。詳細には、各燃料電池セル301は、第2接合材102によって、燃料マニホールド200の天板203に固定されている。各燃料電池セル301は、燃料マニホールド200の貫通孔202に挿入されている。燃料電池セル301は、貫通孔202に挿入された状態で、第2接合材102によって燃料マニホールド200に固定されている。
【0064】
第2接合材102は、例えば、結晶化ガラスである。結晶化ガラスとしては、例えば、SiO−B系、SiO−CaO系、又はSiO−MgO系が採用され得る。なお、本明細書では、結晶化ガラスとは、全体積に対する「結晶相が占める体積」の割合(結晶化度)が60%以上であり、全体積に対する「非晶質相及び不純物が占める体積」の割合が40%未満のガラスを指す。なお、第2接合材102の材料として、非晶質ガラス、ろう材、又はセラミックス等が採用されてもよい。具体的には、第2接合材102は、SiO−MgO−B−Al系及びSiO−MgO−Al−ZnO系よりなる群から選ばれる少なくとも一種である。
【0065】
[発電方法]
以上のように構成されたセルスタック装置100は、次のようにして発電する。燃料マニホールド200を介して各燃料電池セル301のガス流路21内に燃料ガス(水素ガス等)を流すとともに、支持基板20の両面を酸素を含むガス(空気等)に曝す。
【0066】
以上のように、燃料ガス、及び酸素を含むガスを供給された各発電素子部10において、電解質5の両側面間に生じる酸素分圧差によって起電力が発生する。このセルスタック装置100を外部の負荷に接続すると、空気極6において下記(1)式に示す電気化学反応が起こり、燃料極4において下記(2)式に示す電気化学反応が起こり、電流が流れる。
(1/2)・O+2e→O2− …(1)
+O2−→HO+2e …(2)
【0067】
[製造方法]
次に、燃料電池セル301の製造方法の一例について説明する。
【0068】
まず、上述した支持基板材料を押出成形することによって、ガス流路21を有する支持基板20の成形体を形成する。そして、支持基板20の成形体の第1及び第2主面22a、22bに、燃料極集電部41の成形体を収容するための凹部23を形成する。
【0069】
次に、上述した燃料極集電部材料をペースト化してスクリーン印刷することによって、支持基板20の凹部内に燃料極集電部41の成形体を形成する。
【0070】
次に、上述した燃料極活性部材料をペースト化してスクリーン印刷することによって、燃料極集電部41上に燃料極活性部42の成形体を形成する。
【0071】
次に、上述したインターコネクタ材料をペースト化してスクリーン印刷することによって、燃料極集電部41上にインターコネクタ31の成形体を形成する。
【0072】
次に、上述した電解質材料をペースト化してスクリーン印刷することによって、燃料極4と支持基板20の成形体上に電解質5の成形体を形成する。
【0073】
次に、電解質5の成形体上に反応防止層材料をディップ成形することによって、反応防止膜7の成形体を形成する。
【0074】
次に、支持基板20、燃料極4、インターコネクタ31、電解質5、及び反応防止膜7それぞれの成形体を共焼成(1300〜1600℃、2〜20時間)する。
【0075】
次に、空気極活性部材料をペースト化して反応防止膜7上にスクリーン印刷することによって、空気極活性部61の成形体を形成する。
【0076】
次に、空気極集電部材料をペースト化して空気極活性部61の成形体上にスクリーン印刷することによって、空気極集電部62の成形体を形成する。
【0077】
次に、空気極活性部61及び空気極集電部62の成形体を焼成(900〜1100℃、1〜20時間)する。そして、空気極活性部61の露出した外周縁部に、空気供給用凹部612を形成する。例えば、刃先の厚さ5μmほどの刃を用いて、空気極活性部61の露出した外周縁部611に切れ込みを入れることによって空気供給用凹部612を形成することができる。
【0078】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0079】
変形例1
上記実施形態では、各空気極活性部61は、複数の空気供給用凹部612を有しているが、1つの空気供給用凹部612のみを有していてもよい。
【0080】
変形例2
上記実施形態では、空気供給用凹部612が長手方向の一方の端部に形成されているが、空気供給用凹部612が形成される位置はこれに限定されない。例えば、図10に示すように、空気供給用凹部612は、幅方向の少なくとも一方の端部に形成されていてもよい。また、空気供給用凹部612は、長手方向の一方の端部、及び幅方向の両端部の全てに形成されていてもよい。
【0081】
変形例3
上記実施形態では、空気供給用凹部612は、空気極活性部61と空気極集電部62との境界部に形成されているが、空気供給用凹部612の形成される位置はこれに限定されない。例えば、空気供給用凹部612は、上記境界部から離れた位置に形成されていてもよい。
【0082】
変形例4
上記実施形態では、空気極活性部61の外周縁部611のうち、幅方向(y軸方向)の両端部と長手方向(x軸方向)の一方の端部が露出しているが、露出される外周縁部611はこれに限定されない。例えば、図11に示すように、長手方向の一方の端部のみが露出していてもよいし、図12に示すように、幅方向の両端部のみが露出していてもよい。
【0083】
変形例5
上記実施形態では、空気供給用凹部612を切込みであるとして説明したが、空気供給用凹部612は切込みに限定されない。例えば、空気供給用凹部612は、ドリルなどによって形成された穴であってもよい。
【0084】
変形例6
上記実施形態では、内側電極を燃料極4とし、外側電極を空気極6としたが、内側電極を空気極6とし、外側電極を燃料極4としてもよい。
【0085】
変形例7
上記実施形態では、支持基板20の凹部23内に燃料極集電部41が収容されているが、燃料電池セル301の構成はこれに限定されない。例えば、支持基板20は凹部23を有していなくてもよい。この場合、燃料極集電部41は、支持基板20の第1主面22a上に配置される。
【0086】
変形例8
上記実施形態では、空気極活性部61は、空気極集電部62よりも酸化物イオン伝導性を有する物質の含有率が大きいが、空気極6の構成はこれに限定されない。例えば、空気極活性部61と空気極集電部62とは、酸化物イオン伝導性を有する物質の含有率が同じであってもよい。例えば、空気極活性部61及び空気極集電部62は、酸化物イオン伝導性を有する材料のみから構成されていてもよい。
【0087】
変形例9
上記実施形態では、各空気供給用凹部612は、幅方向(y軸方向)に沿って配列されているが、これに限定されない。例えば、図13に示すように、各空気供給用凹部612は、支持基板20の長手方向(x軸方向)に沿って配列されていてもよい。各空気供給用凹部612は、互いに間隔をあけて配置されている。また、図14に示すように、各空気供給用凹部612は、支持基板20の幅方向に配列されるとともに、長手方向にも配列されていてもよい。
【符号の説明】
【0088】
4 燃料極
5 電解質
6 空気極
61 空気極活性部
611 外周縁部
612 空気供給用凹部
62 空気極集電部
10 発電素子部
20 支持基板
【要約】
【課題】外側電極活性部へのガスの供給量を確保する。
【解決手段】燃料電池セル301は、支持基板20と、支持基板20上に配置される発電素子部10と、を備えている。発電素子部10は、支持基板20側から順に、内側電極4、電解質5、及び外側電極6を有する。外側電極6は、外側電極活性部61と、外側電極集電部62とを有する。外側電極集電部62は、外側電極活性部61の外周縁部611の少なくとも一部を除いて外側電極活性部61を覆うように配置される。外側電極活性部61は、露出した外周縁部611において、電解質5に向かって延びるガス供給用凹部612を有する。
【選択図】図7
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14