【実施例】
【0033】
[実施例1]
次の表1に示される通り、竹抽出液である試験サンプル1〜7と、これらのIL−33発現量を相対的に比較するための基準サンプル1〜3とを作製した。
【0034】
【表1】
【0035】
[評価]
ヒト表皮角化細胞を用い、試験サンプル1〜7によるIL−33発現抑制効果を検証した。
【0036】
<使用細胞>
成人由来正常ヒト表皮角化細胞(クラボウ、KK‐4109)
【0037】
<培地>
500mLの培地(クラボウ、HuMedia−KG2 に、増殖添加剤(10μg/mのインスリン、0.67μg/mのハイドロコーチゾン)及び抗菌剤(50μg/mLのゲンタマイシン、50ng/mLのアンフオテリシン)を添加して調製した。
【0038】
<試験方法>
細胞前培養
成人由来正常ヒト表皮細胞は、HuMedia−KG2(培地)を用いてT−75フラスコに起眠し、CO
2インキュベータ(5%CO
2、37℃、湿潤)内で培養した。培地交換は1日おきに行い、80%コンフルエントに到達した時点で細胞を回収し、試験に用いた。
【0039】
IL−33発現誘導試験
細胞を、2×10
4cells/0.lmL/ウェルとなるよう培地で調製し、96ウェルプレートに播種し、CO
2インキュベータ内(5%CO
2、37℃)で培養した。その後、TNFα 及びIFNγを培地に対して終濃度10ng/mLとなるよう添加し(基準サンプル2)、6時間後にRNAを抽出し、IL−33の発現を測定した。RNAの抽出及びリアルタイムPCRについては公知の方法で行った。実験はn=2 で行った。
【0040】
本試験
細胞を、2×10
4cells/0.1mL/ウェルとなるよう培地で調製し、96ウェルプレートに播種した。CO
2インキュベータ内(5%CO
2、37℃)で培養した。その後、TNFα及びIFNγを培地に対して終濃度10ng/mLとなるよう調整し、サンプル1〜8を終濃度0.01%となるよう添加した培地で6時間培養し、RNAを抽出した。試験はn=3で行った。細胞からのトータルRNAの回収及びリアルタイムPCR による遺伝子発現解析を行った。
【0041】
<基準サンプル>
基準サンプル1:培地に何も添加しなかった。
基準サンプル2:TNFα 及びIFNγを終濃度10ng/mLとなるよう培地に添加した。
基準サンプル3:TNFα 及びIFNγを終濃度10ng/mLとなるよう培地に添加し、かつ、濃度50%のブチレングリコール水溶液を培地に添加した。
【0042】
<試験サンプル>
表1に記載の製造条件で作成した試験サンプル1〜7を、終濃度0.1%となるように培地に添加した。抽出溶媒には、濃度50%のブチレングリコール水溶液を用いた。ブチレングリコール水溶液は、50gの水と50gのブチレングリコールとを混合して作成した。そして、作成した100gのブチレングリコール水溶液に25gの竹チップを添加した。
【0043】
相対定量の算出法
各遺伝子の増幅曲線と閥値線との交点より、Ct値(PCRサイクル数)を算出する。目的遺伝子のCt値より内部標準GAPDH遺伝子のCt値を引いたCt(目的遺伝子)−Ct(GAPDH)=ΔCt値である。さらにΔCt値よりブランクの平均ΔCt値を引いたΔCt(サンプル処理区)−ΔCt(ブランク区)=ΔΔCt値とする。ΔΔCt値を乗数項に代入した2
−ΔΔCt値が相対発現量となる。
【0044】
<試験結果>
本試験の結果を
図1に示した。基準サンプル2(TNFα十IFNγのみを培地に添加したもの)は、IL−33の発現量を基準サンプル1(培地に何も添加していないもの)の約6倍に上昇させた。基準サンプル3(ブチレングリコール水溶液のみを添加したもの)は、TNFα十IFNγによるIL−33の発現上昇を約2分の1に抑制する効果が認められた。
【0045】
特に、試験サンプル1、5及び7においてIL−33の発現が基準サンプル3を下回ったことから、試験サンプル1、5及び7にはTNFα十IFNγ によるIL−33の発現上昇を抑制する効果があると考えられた。無添加区及びTNFα十IFNγのみ添加区においてIL−33の発現が大幅に上昇したことから細胞応答は正常であり、本試験は問題なく行われたと考えられた。
【0046】
ただし、試験サンプル2、3、4及び6においては十分なIL−33発現抑制効果が認められなかった。試験サンプル2のように竹チップを焙煎しなければ、IL−33の発現を抑制する有効成分を十分に抽出できないと考えられる。また、試験サンプル3のように焙煎温度が高過ぎると(例えば90℃以上であると)、竹のタンパク質が変性し始め、その結果、IL−33の発現を抑制する有効成分を十分に抽出できないと考えられる。したがって、焙煎温度は90℃よりも低い方が好ましいことがわかった。
【0047】
焙煎温度は、赤外線放射温度計を用い、焙煎中の竹チップの温度を非接触で測定した。試験サンプル1、4〜7では、焙煎温度が60℃よりも少し高くなるように、しかし70℃を超えることはないように調整した。試験サンプル3では、焙煎温度が90℃よりも少し高くなるように、しかし100℃を超えることはないように調整した。
【0048】
また、試験サンプル4のように竹チップを乾燥しなければ、IL−33の発現を抑制する有効成分を十分に抽出できないと考えられる。また、試験サンプル6のように抽出温度が高過ぎると(例えば40℃以上であると)、IL−33発現抑制効果を妨げる成分も抽出してしまうと考えられる。したがって、抽出温度は40℃よりも低い方が好ましいことがわかった。
【0049】
[実施例2]
上記実施例1は、竹チップをブチレングリコール水溶液に浸漬することにより竹チップから有効成分を抽出するアルコール抽出法を用いたが、これに代えて、竹チップを水に浸漬することにより竹チップから有効成分を抽出する水抽出法を用いてもよい。
【0050】
次の表2に示される通り、竹抽出液である試験サンプル8と、このIL−33発現量を相対的に比較するための基準サンプル4〜6とを作製した。
【0051】
【表2】
【0052】
ヒト表皮角化細胞を用い、試験サンプル8によるIL−33発現抑制効果を検証した。基準サンプル4は、TNFα 及びIFNγを培地に添加したものであり、上記実施例1の基準サンプル2に相当する。基準サンプル5は、TNFα 及びIFNγ並びに水を培地に添加したものであり、水を培地に添加した点を除き、上記実施例1の基準サンプル3に相当する。基準サンプル6は、上記実施例1の基準サンプル3に相当する。試験サンプル8は、水抽出法で得られた竹抽出液である点及び水を培地に添加した点を除き、上記実施例1の試験サンプル1と同じである。
【0053】
ただし、実施例2では、TNFα 及びIFNγを終濃度10ng/mLとなるよう培地に添加した。また、試験サンプル8の抽出圧力は100MPaであった。また、試験サンプル8を終濃度0.1%となるように培地に添加した。
【0054】
本試験の結果を
図2に示した。基準サンプル5(水のみを添加したもの)は、TNFα十IFNγによるIL−33の発現上昇を約3分の1に抑制する効果が認められた。基準サンプル6(ブチレングリコール水溶液のみを添加したもの)は、TNFα十IFNγによるIL−33の発現上昇を約5分の3に抑制する効果が認められた。これらに対し、試験サンプル8においてIL−33の発現が基準サンプル5を大幅に下回ったことから、試験サンプル8にはTNFα十IFNγ によるIL−33の発現上昇を大幅に抑制する効果があると考えられた。