特許第6487613号(P6487613)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6487613
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】IL−33発現抑制剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/899 20060101AFI20190311BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20190311BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20190311BHJP
【FI】
   A61K36/899
   A61P43/00 111
   A61P17/00
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-3347(P2019-3347)
(22)【出願日】2019年1月11日
【審査請求日】2019年1月11日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505025195
【氏名又は名称】キコヘッド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104444
【弁理士】
【氏名又は名称】上羽 秀敏
(72)【発明者】
【氏名】浄弘 貴子
【審査官】 鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−212786(JP,A)
【文献】 特表2010−505944(JP,A)
【文献】 特開2018−118965(JP,A)
【文献】 特開平11−80011(JP,A)
【文献】 特開2017−31110(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00−36/9068
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
竹チップを準備する工程と、
前記準備された竹チップを50〜89℃で焙煎する工程と、
前記焙煎された竹チップを乾燥する工程と、
前記乾燥された竹チップを5〜39℃の抽出溶媒に浸漬することにより前記竹チップから有効成分を抽出する工程とを含む、IL−33発現抑制剤の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の製造方法であって、
前記抽出溶媒はブチレングリコール水溶液又は水を含む、IL−33発現抑制剤の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の製造方法であって、
前記乾燥する工程は前記竹チップを天日干しする、IL−33発現抑制剤の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法であって、
前記IL−33発現抑制剤はアトピー性皮膚炎に用いられる、IL−33発現抑制剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IL−33(インターロイキン33)発現抑制剤の製造方法に関し、特に、アトピー性皮膚炎に用いられるIL−33発現抑制剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2005−200393号公報(特許文献1)は、竹酢液を含有するクリーム状組成物を開示する。特許文献1には、「竹酢液は、抗菌・抗酸化機能、アトピー性皮膚炎・水虫に対する治療効果、血糖値を下げる効果および肝機能の向上・骨粗しょう症の改善・歯周病や口内炎に対する効果、消臭効果等々の特異な効能から従来より期待されてきた材料であり、竹酢液そのままに水やアルコールを配合して使用されてきた。しかしながら、竹酢液に独特の強い臭気があり、皮膚に塗布すると不快感があり、また液状であるために皮膚に塗布しづらく携帯にも不便であるという欠点があった。」(段落0002)、「竹酢液は、竹の乾留による公知の方法で得ることができる。また、オートクレーブ中に竹を入れ、高温の蒸気で加圧と圧力開放を繰り返す方法により竹を繊維状に粉砕するとき、オートクレーブ底部に溜まる液体としても得ることができる。」と記載されている(段落0009参照)。
【0003】
特開2003−212786号公報(特許文献2)は、竹の抽出成分を有効成分とする皮膚外用薬を開示する。特許文献2には、「これらの竹が切り取られたものを、チップ状にした粉砕物を、本発明の原料物質とする。粉砕物は、抽出操作を考慮して粉状としたものを用いる。」(段落0006)、「本発明では、竹の粉砕物を水、又は有機溶剤で処理して抽出物を用いる。」(段落0007)と記載されている。
【0004】
特表2010−505944号公報(特許文献3)は、竹抽出物とコガネバナ抽出物とを含有するアトピー性皮膚炎治療用組成物を開示する。特許文献3には、竹抽出物の製造として、「乾燥された竹20kgに、25%のエタノール200Lを加え、混合物を80℃で6時間加熱することによって抽出した。抽出液をろ過し、抽出液の体積が約5Lになるまで濃縮してエタノールを除去した。その後、濃縮された抽出液を室温に冷却した。沈澱物を回収し、乾燥して竹抽出物390gを得た。」(段落0031)、「乾燥された竹20kgに、重量対比10倍の水を加え、混合物を100℃で4時間加熱することによって抽出した。抽出液をろ過し、減圧下で濃縮した。濃縮された抽出液にエタノール10Lを加え、70℃で2時間撹拌した後、室温に冷却した。沈澱物をろ過し、減圧下で濃縮して竹抽出物350gを得た。」(段落0032)と記載されている。
【0005】
特開2010−116377号公報(特許文献4)は、抗菌組成物を開示する。抗菌組成物は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に対する抗菌剤であり、竹抽出物を含有する。特許文献4には、「竹抽出物は、・・・粉末状にしたモウソウチク竹茹部分をエタノール等の水系溶媒中で攪拌し、遠心分離によって得られた上清を濾過して得られてもよい。・・・また、竹抽出物は、・・・竹植物を水蒸気の存在下にて120〜180℃で水蒸気処理し、これを冷却した後、エタノール等を含む抽出溶剤で抽出されてもよい。」(段落0021)と記載されている。
【0006】
特開2011−46636号公報(特許文献5)は、抗ウイルス組成物を開示する。特許文献5には、「抗ウイルス組成物は竹抽出物を含有するものである。そして、当該竹抽出物は、(a)竹植物を水系溶剤によって抽出することによって抽出液を得る工程と、(b)上記抽出液から上記水系溶剤を除去して乾固物を得る工程と、(c)上記乾固物を水に溶解させて水溶性画分を得る工程と、を含む方法によって得られる。」(段落0033)と記載されている。
【0007】
一方、アトピー性皮膚炎の発症には、サイトカインの一種であるIL−33(インターロイキン33)の関与が指摘されている(例えばWO2014/178392A1公報(特許文献6)、WO2015/099175A1公報(特許文献7)、特開2018−118965号公報(特許文献8)参照)。すなわち、皮膚の角化細胞がIL−33を産生し、その結果、アトピー性皮膚炎のほか、花粉症、喘息、アレルギー性鼻炎、炎症性腸疾患などの炎症性疾患を引き起こすと考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−200393号公報
【特許文献2】特開2003−212786号公報
【特許文献3】特表2010−505944号公報
【特許文献4】特開2010−116377号公報
【特許文献5】特開2011−46636号公報
【特許文献6】WO2014/178392A1公報
【特許文献7】WO2015/099175A1公報
【特許文献8】特開2018−118965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した通り、アトピー性皮膚炎の外用剤に用いられる竹酢液は、独特の燻製臭を有するため、人によってはその臭いが不快であると感じることがある。そこで、本発明者は、燻製臭を有する竹酢液の代わりに、竹抽出液を用い、アトピー性皮膚炎の改善効果を検討した。その結果、本発明者は、特定の製造条件下で、IL−33の発現を抑制する有効成分を竹から抽出できるという新たな知見を得た。
【0010】
本発明の目的は、IL−33発現抑制剤の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るIL−33発現抑制剤の製造方法は、竹チップを準備する工程と、準備された竹チップを50〜89℃で焙煎する工程と、焙煎された竹チップを乾燥する工程と、乾燥された竹チップを5〜39℃の抽出溶媒に浸漬することにより竹チップから有効成分を抽出する工程とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、表1に示される各サンプルのIL−33発現抑制効果を検証した試験結果を示したグラフである。
図2図2は、表2に示される各サンプルのIL−33発現抑制効果を検証した試験結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0014】
本実施の形態に係るIL−33発現抑制剤の製造方法は、(1)竹チップを準備する工程と、(2)準備された竹チップを50〜89℃で焙煎する工程と、(3)焙煎された竹チップを乾燥する工程と、(4)乾燥された竹チップを5〜39℃の抽出溶媒に浸漬することにより竹チップから有効成分を抽出する工程とを含む。
【0015】
[竹チップ]
竹を適当な大きさに粉砕することにより竹チップを準備する。用いられる竹の種類は、特に限定されないが、例えば、モウソウチク属、マダケ属、ハチク属、ホウソウチク属、シホウチク属、シュドササ属、ササモルフア属、ナリヒラダケ属、トウチク属、オカメザサ属、ササ属、アズマザサ属、ヤダケ属、メダケ属、カンチク属、ホウライチク属などに属する竹を用いることができる。用いられる竹の部位は、特に限定されないが、表皮や竹如などを用いることができる。
【0016】
なお、竹チップを後述する焙煎前に発酵させてもよい。
【0017】
[焙煎]
焙煎温度が50〜89℃(一般的な焙煎温度よりも低い)であれば、後述する実施例で示される通り、IL−33発現抑制効果に優れる有効成分を抽出できる。焙煎温度は90℃よりも低ければよく、好ましい上限は89℃であり、さらに好ましい上限は85℃、80℃、75℃、70℃である。また、焙煎温度の好ましい下限は50℃であり、さらに好ましい下限は55℃、60℃である。焙煎時間は、特に限定されないが、例えば5〜60分、好ましくは25〜35分である。
【0018】
[乾燥]
乾燥は、特に限定されないが、天日干しであれば、後述する実施例で示される通り、IL−33発現抑制効果に優れる有効成分を抽出できる。
【0019】
天日干し時の天候は、特に制限されず、太陽光が竹チップに到達すればよい。また、竹チップがそれを収容している容器の陰になっていてもよい。天日干しの時間は、特に限定されないが、例えば半日〜10日、好ましくは1〜5日である。1日当たりの平均日照時間は約12時間である。また、天日干しの代わりに、紫外線を竹チップに照射してもよい。
【0020】
[抽出]
抽出溶媒は、特に限定されないが、例えば有機溶媒、好ましくは、エチルアルコール、多価アルコールなどのアルコールであり、さらに好ましくは、ブチレングリコール(BG)、ヘキシレングリコール(HG)である。抽出溶媒は水でもよい。
【0021】
抽出温度(有効成分を抽出する時の抽出溶媒の温度)が5〜39℃であれば、後述する実施例で示される通り、IL−33発現抑制効果に優れる有効成分を抽出できる。抽出温度は40℃よりも低ければよく、好ましい上限は39℃であり、さらに好ましい上限は38℃、36℃、34℃、32℃、30℃である。また、抽出温度の好ましい下限は5℃であり、さらに好ましい下限は10℃、15℃、20℃、25℃、30℃である。
【0022】
抽出時間(有効成分を抽出する時間)は、特に限定されないが、たとえば1〜25日、好ましくは5〜15日である。
【0023】
抽出圧力(有効成分を抽出する時に抽出溶媒にかかる圧力)は、特に限定されないが、好ましくは常圧(1013hPa)である。
【0024】
[濾過]
抽出後、有効成分を含有する竹抽出液を濾過することにより竹チップを除去するのが好ましい。
【0025】
[竹チップの大きさ]
上記において、準備された竹チップの大きさは区々であるため、抽出前に、竹チップを大きさで選別するのが好ましい。竹チップの選別は、抽出前であれば、焙煎後若しくは乾燥後でもよく、又は焙煎前でもよい。竹チップの大きさは、特に限定されないが、好ましい上限は、約10mm、約8mm、約6mm、約4mmである。特に、竹チップの大きさが4mm以下であれば、IL−33発現抑制効果に優れる有効成分を抽出しやすくなると考えられる。一方、竹チップが大き過ぎると、有効成分を抽出しにくくなると考えられる。竹チップの大きさの下限は、特に限定されないが、竹チップが小さ過ぎると(例えば2mm未満であると)、竹チップ(又は竹紛)が抽出溶媒を吸収して膨張してしまうため、有効成分を抽出しにくくなると考えられる。
【0026】
例えば、2mm未満の竹チップは、2mmの目開きを有するふるいを通過した竹チップである。4mm未満の竹チップは、4mmの目開きを有するふるいを通過した竹チップである。10mm未満の竹チップは、10mmの目開きを有するふるいを通過した竹チップである。10mm以上の竹チップは、10mmの目開きを有するふるいを通過しなかった竹チップである。ただし、竹チップがほぼ直立してふるいを通過することもあるため、2mm以上の竹チップが2mmの目開きを有するふるいを通過したり、4mm以上の竹チップが4mmの目開きを有するふるいを通過したり、10mm以上の竹チップが10mmの目開きを有するふるいを通過したりする場合がある。また、2mm未満の竹チップが2mmの目開きを有するふるいを通過しなかったり、4mm未満の竹チップが4mmの目開きを有するふるいを通過しなかったり、10mm未満の竹チップが10mmの目開きを有するふるいを通過しなかったりする場合がある。したがって、竹チップの大きさに関し、「未満」、「以上」、「以下」などに厳密な意味はなく、概ねそのような大きさという意味しかない。
【0027】
また、2〜4mmの竹チップは、4mmの目開きを有するふるいを通過したが、2mmの目開きを有するふるいを通過しなかった竹チップである。2〜10mmの竹チップは、10mmの目開きを有するふるいを通過したが、2mmの目開きを有するふるいを通過しなかった竹チップである。4〜10mmの竹チップは、10mmの目開きを有するふるいを通過したが、4mmの目開きを有するふるいを通過しなかった竹チップである。このように、1又は2種以上のふるいを使い分けることにより、所望の大きさの竹チップを選別できる。
【0028】
[濃度調整]
最後に、得られた竹抽出液に対し、水等を添加し、竹抽出液の濃度を調整してもよい。
【0029】
[用途]
上記製造方法により得られたIL−33発現抑制剤(IL−33発現抑制効果を有する有効成分を含有する竹抽出液)は、好ましくは、アトピー性皮膚炎に用いられる。
【0030】
アトピー性皮膚炎用の剤は、アトピー性皮膚炎に起因する皮膚掻痒症等の症状を緩和する外用剤、内用剤(内服剤)、注射剤などである。アトピー性皮膚炎の外用剤は、例えば、クリーム状、ローション状、粉末状に製造される。
【0031】
上記製造方法により得られたIL−33発現抑制剤はまた、花粉症、喘息、アレルギー性鼻炎、炎症性腸疾患などの炎症性疾患を緩和する製剤にも用いられる。
【0032】
以上、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【実施例】
【0033】
[実施例1]
次の表1に示される通り、竹抽出液である試験サンプル1〜7と、これらのIL−33発現量を相対的に比較するための基準サンプル1〜3とを作製した。
【0034】
【表1】
【0035】
[評価]
ヒト表皮角化細胞を用い、試験サンプル1〜7によるIL−33発現抑制効果を検証した。
【0036】
<使用細胞>
成人由来正常ヒト表皮角化細胞(クラボウ、KK‐4109)
【0037】
<培地>
500mLの培地(クラボウ、HuMedia−KG2 に、増殖添加剤(10μg/mのインスリン、0.67μg/mのハイドロコーチゾン)及び抗菌剤(50μg/mLのゲンタマイシン、50ng/mLのアンフオテリシン)を添加して調製した。
【0038】
<試験方法>
細胞前培養
成人由来正常ヒト表皮細胞は、HuMedia−KG2(培地)を用いてT−75フラスコに起眠し、COインキュベータ(5%CO、37℃、湿潤)内で培養した。培地交換は1日おきに行い、80%コンフルエントに到達した時点で細胞を回収し、試験に用いた。
【0039】
IL−33発現誘導試験
細胞を、2×10cells/0.lmL/ウェルとなるよう培地で調製し、96ウェルプレートに播種し、COインキュベータ内(5%CO、37℃)で培養した。その後、TNFα 及びIFNγを培地に対して終濃度10ng/mLとなるよう添加し(基準サンプル2)、6時間後にRNAを抽出し、IL−33の発現を測定した。RNAの抽出及びリアルタイムPCRについては公知の方法で行った。実験はn=2 で行った。
【0040】
本試験
細胞を、2×10cells/0.1mL/ウェルとなるよう培地で調製し、96ウェルプレートに播種した。COインキュベータ内(5%CO、37℃)で培養した。その後、TNFα及びIFNγを培地に対して終濃度10ng/mLとなるよう調整し、サンプル1〜8を終濃度0.01%となるよう添加した培地で6時間培養し、RNAを抽出した。試験はn=3で行った。細胞からのトータルRNAの回収及びリアルタイムPCR による遺伝子発現解析を行った。
【0041】
<基準サンプル>
基準サンプル1:培地に何も添加しなかった。
基準サンプル2:TNFα 及びIFNγを終濃度10ng/mLとなるよう培地に添加した。
基準サンプル3:TNFα 及びIFNγを終濃度10ng/mLとなるよう培地に添加し、かつ、濃度50%のブチレングリコール水溶液を培地に添加した。
【0042】
<試験サンプル>
表1に記載の製造条件で作成した試験サンプル1〜7を、終濃度0.1%となるように培地に添加した。抽出溶媒には、濃度50%のブチレングリコール水溶液を用いた。ブチレングリコール水溶液は、50gの水と50gのブチレングリコールとを混合して作成した。そして、作成した100gのブチレングリコール水溶液に25gの竹チップを添加した。
【0043】
相対定量の算出法
各遺伝子の増幅曲線と閥値線との交点より、Ct値(PCRサイクル数)を算出する。目的遺伝子のCt値より内部標準GAPDH遺伝子のCt値を引いたCt(目的遺伝子)−Ct(GAPDH)=ΔCt値である。さらにΔCt値よりブランクの平均ΔCt値を引いたΔCt(サンプル処理区)−ΔCt(ブランク区)=ΔΔCt値とする。ΔΔCt値を乗数項に代入した2−ΔΔCt値が相対発現量となる。
【0044】
<試験結果>
本試験の結果を図1に示した。基準サンプル2(TNFα十IFNγのみを培地に添加したもの)は、IL−33の発現量を基準サンプル1(培地に何も添加していないもの)の約6倍に上昇させた。基準サンプル3(ブチレングリコール水溶液のみを添加したもの)は、TNFα十IFNγによるIL−33の発現上昇を約2分の1に抑制する効果が認められた。
【0045】
特に、試験サンプル1、5及び7においてIL−33の発現が基準サンプル3を下回ったことから、試験サンプル1、5及び7にはTNFα十IFNγ によるIL−33の発現上昇を抑制する効果があると考えられた。無添加区及びTNFα十IFNγのみ添加区においてIL−33の発現が大幅に上昇したことから細胞応答は正常であり、本試験は問題なく行われたと考えられた。
【0046】
ただし、試験サンプル2、3、4及び6においては十分なIL−33発現抑制効果が認められなかった。試験サンプル2のように竹チップを焙煎しなければ、IL−33の発現を抑制する有効成分を十分に抽出できないと考えられる。また、試験サンプル3のように焙煎温度が高過ぎると(例えば90℃以上であると)、竹のタンパク質が変性し始め、その結果、IL−33の発現を抑制する有効成分を十分に抽出できないと考えられる。したがって、焙煎温度は90℃よりも低い方が好ましいことがわかった。
【0047】
焙煎温度は、赤外線放射温度計を用い、焙煎中の竹チップの温度を非接触で測定した。試験サンプル1、4〜7では、焙煎温度が60℃よりも少し高くなるように、しかし70℃を超えることはないように調整した。試験サンプル3では、焙煎温度が90℃よりも少し高くなるように、しかし100℃を超えることはないように調整した。
【0048】
また、試験サンプル4のように竹チップを乾燥しなければ、IL−33の発現を抑制する有効成分を十分に抽出できないと考えられる。また、試験サンプル6のように抽出温度が高過ぎると(例えば40℃以上であると)、IL−33発現抑制効果を妨げる成分も抽出してしまうと考えられる。したがって、抽出温度は40℃よりも低い方が好ましいことがわかった。
【0049】
[実施例2]
上記実施例1は、竹チップをブチレングリコール水溶液に浸漬することにより竹チップから有効成分を抽出するアルコール抽出法を用いたが、これに代えて、竹チップを水に浸漬することにより竹チップから有効成分を抽出する水抽出法を用いてもよい。
【0050】
次の表2に示される通り、竹抽出液である試験サンプル8と、このIL−33発現量を相対的に比較するための基準サンプル4〜6とを作製した。
【0051】
【表2】
【0052】
ヒト表皮角化細胞を用い、試験サンプル8によるIL−33発現抑制効果を検証した。基準サンプル4は、TNFα 及びIFNγを培地に添加したものであり、上記実施例1の基準サンプル2に相当する。基準サンプル5は、TNFα 及びIFNγ並びに水を培地に添加したものであり、水を培地に添加した点を除き、上記実施例1の基準サンプル3に相当する。基準サンプル6は、上記実施例1の基準サンプル3に相当する。試験サンプル8は、水抽出法で得られた竹抽出液である点及び水を培地に添加した点を除き、上記実施例1の試験サンプル1と同じである。
【0053】
ただし、実施例2では、TNFα 及びIFNγを終濃度10ng/mLとなるよう培地に添加した。また、試験サンプル8の抽出圧力は100MPaであった。また、試験サンプル8を終濃度0.1%となるように培地に添加した。
【0054】
本試験の結果を図2に示した。基準サンプル5(水のみを添加したもの)は、TNFα十IFNγによるIL−33の発現上昇を約3分の1に抑制する効果が認められた。基準サンプル6(ブチレングリコール水溶液のみを添加したもの)は、TNFα十IFNγによるIL−33の発現上昇を約5分の3に抑制する効果が認められた。これらに対し、試験サンプル8においてIL−33の発現が基準サンプル5を大幅に下回ったことから、試験サンプル8にはTNFα十IFNγ によるIL−33の発現上昇を大幅に抑制する効果があると考えられた。
【要約】
【課題】IL−33発現抑制剤の製造方法を提供する。
【解決手段】IL−33発現抑制剤の製造方法は、竹チップを準備する工程と、準備された竹チップを50〜89℃で焙煎する工程と、焙煎された竹チップを乾燥する工程と、乾燥された竹チップを5〜39℃の抽出溶媒に浸漬することにより竹チップから有効成分を抽出する工程とを含む。
【選択図】図1
図1
図2