特許第6487616号(P6487616)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6487616
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】熱乾燥型エッチングレジスト組成物
(51)【国際特許分類】
   C03C 15/00 20060101AFI20190311BHJP
   C08K 3/00 20180101ALI20190311BHJP
   C08K 5/54 20060101ALI20190311BHJP
   C08L 61/00 20060101ALI20190311BHJP
   C08L 101/08 20060101ALI20190311BHJP
【FI】
   C03C15/00 D
   C08K3/00
   C08K5/54
   C08L61/00
   C08L101/08
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-117517(P2013-117517)
(22)【出願日】2013年6月4日
(65)【公開番号】特開2014-234329(P2014-234329A)
(43)【公開日】2014年12月15日
【審査請求日】2016年3月3日
【審判番号】不服2017-16607(P2017-16607/J1)
【審判請求日】2017年11月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】310024066
【氏名又は名称】太陽インキ製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【復代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(72)【発明者】
【氏名】西尾 一則
(72)【発明者】
【氏名】大野 義弘
【合議体】
【審判長】 大橋 賢一
【審判官】 小川 進
【審判官】 山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−37059(JP,A)
【文献】 特開2009−76814(JP,A)
【文献】 特開平7−316825(JP,A)
【文献】 特開平9−194231(JP,A)
【文献】 特開平10−12604(JP,A)
【文献】 特開2007−128052(JP,A)
【文献】 特開2005−309097(JP,A)
【文献】 特開2008−145715(JP,A)
【文献】 松沢 好次,電子部品への応用 レジストインキ,日本印刷学会誌,1996年,第33巻第1号,P.8−14
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C15/00
C08K 3/00
C08K 5/54
C08L61/00
C08L101/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)フェノール樹脂として、フェノールノボラック樹脂及びクレゾールノボラック樹脂の少なくとも1種、
(B)シランカップリング剤、
(C)無機フィラー、及び、
(D)有機溶剤を含有し、
感光性材料を含まず、
前記(C)無機フィラーは、タルクのみからなり、
100〜120℃の乾燥後にレジストが形成され、当該レジストは1〜5質量%の水酸化ナトリウム水溶液または水酸化カリウム水溶液にて剥離可能であることを特徴とする、
ガラスエッチング用の熱乾燥型エッチングレジスト組成物。
【請求項2】
さらに、カルボキシル基含有樹脂を含むことを特徴とする請求項1に記載の熱乾燥型エッチングレジスト組成物。
【請求項3】
前記(B)シランカップリング剤の配合量が、前記(A)フェノール樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部であることを特徴とする請求項に記載の熱乾燥型エッチングレジスト組成物。
【請求項4】
前記(B)シランカップリング剤の配合量が、前記(A)フェノール樹脂とカルボキシル基含有樹脂の混合物100質量部に対して0.1〜10質量部であることを特徴とする請求項2に記載の熱乾燥型エッチングレジスト組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱乾燥型エッチングレジスト組成物、特にガラスエッチングに用いられる熱乾燥型エッチング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラスエッチングは、電子材料、光学材料、および計測器などのガラス躯体に対して従来より適用されている手法である。ガラスエッチングでは、例えば、エッチング対象とされるガラス基板の表面に樹脂組成物を塗布し、これを硬化させてエッチングレジストを形成する。
【0003】
このようなレジスト用の組成物として、特許文献1に記載されたような紫外線硬化型組成物が知られている。特許文献1のガラスエッチング用レジスト組成物は、未硬化の状態でガラス基材の表面に塗装後、所望のパターン形状が得られるようにマスクを介して紫外線露光により硬化し、現像により未硬化部分を除去することによりレジスト膜とされる。
【0004】
ガラス基板はこの状態で、フッ酸系のエッチング液に浸漬され、レジストに被覆されていない部分が除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−128052公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の方法では、レジストを形成するために、組成物に対するマスクの配置、露光、及び現像の各工程が必須であり、作業が複雑である。更に、特許文献1の方法により硬化したレジストをガラス基板から除去する場合には、水酸化ナトリウム水溶液に、例えば60℃で15分程度の浸漬が必要とされ、作業性に改善の余地がある。
【0007】
本発明は、上述の従来技術の問題を解消するためになされたものであり、その目的は、露光、及び現像の各工程が不要であり、かつレジストをガラス基板から容易に除去することが可能なエッチングレジスト組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、
(A)フェノール樹脂、
(B)シランカップリング剤、
(C)フィラー、及び、
(D)有機溶剤を含有することを特徴とする熱乾燥型エッチングレジスト組成物により達成される。
【0009】
本発明の熱乾燥型エッチングレジスト組成物は、エッチング対象の基板上に塗布して熱乾燥させることにより基板に良好に密着し、エッチング液に対する耐性にも優れるため、基板を良好に保護し、高精度のエッチングを可能とする。また、エッチング完了後には、短時間で容易に除去される。なお、本発明のエッチングレジスト組成物は、光硬化型ではなく、熱乾燥型であるため、感光性材料、例えば、光酸発生剤、光開始剤を含まなくてよい。
【0010】
本発明のエッチングレジストは光硬化ないし熱硬化を行わなくとも、例えば、50〜120℃の乾燥のみにより基板を良好に保護可能な状態とされる。すなわち、本発明のエッチングレジストはエッチング液に対して優れた耐性を有し、エッチング処理中の基板からの剥離も生じない。
【0011】
更に、フェノール樹脂が、フェノールノボラック樹脂及びクレゾールノボラック樹脂の少なくとも1種であることが好ましい。これより、エッチングレジスト組成物が熱乾燥のみによって優れたエッチング耐性を保持可能となり、同時に、使用後にはアルカリにより短時間で除去可能とされる。また、本発明は、カルボキシル基含有樹脂を含むことが好ましい。本発明の熱乾燥型エッチングレジスト組成物は、ガラスのエッチング用に特に好ましく用いられる。
【0012】
また、本発明の熱乾燥型エッチングレジスト組成物によりガラス基板等の基板に対してスクリーン印刷を行い、エッチングレジスト組成物を熱乾燥させてレジストとし、フッ酸等を主成分とするエッチング液により基板をエッチング処理することを特徴とする基板の製造方法が得られる。
【0013】
本発明の製造方法によると、エッチングレジスト組成物により所望のパターンの印刷が行われ、これを熱乾燥させることにより、マスキング、露光および現像工程といった複雑な処理を行うことなく直接的にレジストが形成され、経済性及び作業性が飛躍的に向上する。また、本発明の製造方法ではレジストの基板に対する密着性が高いために、レジストの剥離が生じにくく、基板上に、レジストのパターンに忠実な、高い精度のエッチング加工が行われる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の熱乾燥型エッチングレジスト組成物は、比較的低温の熱乾燥のみによっても基板に良好に密着するため、基板をエッチング液から良好に保護し、エッチング中のレジストの剥離が生じない。また、エッチング完了後には、レジストは短時間で容易に除去される。また、本発明のエッチングレジストはエッチング液に対して優れた耐性を有するため、エッチング処理中の基板からの剥離も生じない。
【0015】
さらに、本発明のガラス基板の製造方法では、スクリーン印刷により、エッチングレジスト組成物が、所望のパターンで基板に直接的に塗布され、熱乾燥により基板に対して密着性が高く、剥離の生じにくいレジストが形成される。
【0016】
本発明の熱乾燥型エッチングレジスト組成物、及びこれを用いたガラス基板の製造方法を用いることにより、きわめて高い精度のガラスエッチングが可能とされる。さらに、本発明の熱乾燥型エッチングレジスト組成物は、全ての成分を混合した1液型とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の熱乾燥型エッチングレジスト組成物(以下、レジスト組成物ともいう)は、
(A)フェノール樹脂、
(B)シランカップリング剤、
(C)フィラー、及び、
(D)有機溶剤を含有する。
【0018】
本発明のレジスト組成物は、熱乾燥によりエッチングレジストとしての機能を発揮するため、光硬化させる必要はなく、エチレン性不飽和基を有する化合物、光開始剤などを含まなくてよい。
【0019】
以下、上記各成分(A)から(D)について説明する。
【0020】
(成分A)フェノール樹脂
フェノール樹脂としては、フェノールノボラック樹脂、アルキルフェノールノボラック樹脂、トリアジン構造含有フェノールノボラック樹脂、ビスフェノール型ノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、及びアルキルクレゾールノボラック樹脂を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0021】
ビスフェノール型ノボラック樹脂としては、ビスフェノールA型ノボラック樹脂、ビスフェノールF型ノボラック樹脂、ビスフェノールS型ノボラック樹脂などが挙げられる。
【0022】
かかるフェノール樹脂の市販品としては、フェノライトTD−2090、フェノライトTD−2131(大日本印刷株式会社製)、ベスモールCZ−256−A(DIC株式会社製)、シヨウノールBRG−555、シヨウノールBRG−556(昭和電工株式会社製)、CGR−951(昭和高分子株式会社製)等を挙げることができる。これらのフェノール樹脂を、単独で、あるいは2種類以上を適宜組合せて用いることができる。本発明では、フェノール樹脂が、フェノールノボラック樹脂及びクレゾールノボラック樹脂の少なくとも1種が好ましい。これらの樹脂の場合、保存安定性に優れる。
【0023】
本発明では、カルボキシル基含有樹脂及びフェノール樹脂の混合物を用いてもよいが、フェノール樹脂のみを用いる場合には、フェノールノボラック樹脂を用いることにより、塗膜のエッチング耐性が優れたものとされる。
【0024】
(カルボキシル基含有樹脂)
カルボキシル基含有樹脂としては、従来のカルボキシル基を有する樹脂を使用できる。カルボキシル基含有樹脂を配合することにより、レジストのクラック耐性を向上させることができる。カルボキシル基含有樹脂としては、例えば、カルボキシル基を含む(メタ)アクリルモノマーの(共)重合体、及び(メタ)アクリレート変性樹脂の少なくとも1種が用いられる。
【0025】
ここで、(メタ)アクリルモノマーとは、アクリル酸、メタアクリル酸、(メタ)アクリレート、およびこれらの混合物を総称し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタアクリレートおよびこれらの混合物を総称する用語とする。他の類似の表現についても同様である。
【0026】
更に、(共)重合体とは単独重合体、共重合体、またはこれらの混合物を意味する。
以下に具体例を示す。
【0027】
カルボキシル基を含む(メタ)アクリルモノマーの(共)重合体
カルボキシル基を含む(メタ)アクリルモノマーの(共)重合体は、スチレンモノマーと(メタ)アクリル酸モノマーとに由来する単位構造を有する共重合体である。スチレンモノマーとは、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン等の単独または混合物であり、好ましくはスチレンである。
【0028】
(メタ)アクリル酸系モノマーは、アクリル酸、メタアクリル酸等であり、アクリル酸が好ましい。
【0029】
スチレン−(メタ)アクリル共重合体は、例えばベンゼン、トルエン、エチルベンゼン及びキシレン等のアルキルベンゼン類やアセトンやメチルエチルケトン等のケトン類、ヘキサンやシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素等の溶媒を用いた溶液重合により、必要に応じて有機過酸化物等の重合開始剤、連鎖延長剤等を用いて製造することができる。上記の他、スチレン−(メタ)アクリル共重合体は、塊状重合法、懸濁重合法等公知の重合方法によっても製造可能である。
【0030】
さらに、上記の(メタ)アクリルモノマーに代えて、又はこれと共に、ヒドロキシル基及び/又はグリシジル基を有する(メタ)アクリルモノマーを用いてもよく、上記のスチレンモノマー代えて、又はこれと共に、グリシジル基及び/又はヒドロキシル基を有するスチレンモノマーを用いていてもよい。これらのモノマーを用いる場合にも、上記と同様の方法により、カルボキシル基の他に、更にヒドロキシル基及び/又はグリシジル基を有する(メタ)アクリルモノマー共重合体を製造することが可能である。
【0031】
カルボキシル基を含む(メタ)アクリルモノマーは各種市販されており、例えばジョンクリル67、ジョンクリル678、ジョンクリル586、ジョンクリル587、ジョンクリル611、ジョンクリル680、ジョンクリル682、ジョンクリル683、ジョンクリル690(以上、ジョンソンポリマー(株)製アクリル樹脂)が挙げられる。また必要に応じて、複数の樹脂を組み合わせることも可能である。
【0032】
カルボキシル基を有する(メタ)アクリレート変性樹脂
カルボキシル基を有する(メタ)アクリレート変性樹脂としては、(メタ)アクリレートで変性されたエポキシ樹脂及び/又は(ポリ)フェノール樹脂を使用することができる。
【0033】
これらの例としては、以下の材料を挙げることができる。
【0034】
(1)ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂の部分酸無水物変性物と、(メタ)アクリル酸との重付加反応により得られる、カルボキシル基を有する(メタ)アクリレート変性樹脂、
(2)2官能またはそれ以上の多官能(固形)エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、側鎖に存在する水酸基に2塩基酸無水物を付加させた、カルボキシル基を有する(メタ)アクリレート変性樹脂、
(3)2官能(固形)エポキシ樹脂の水酸基をさらにエピクロロヒドリンでエポキシ化した多官能エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、生じた水酸基に2塩基酸無水物を付加させることにより得られるカルボキシル基を有する(メタ)アクリレート変性樹脂、
(4)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物、すなわちポリフェノール化合物と、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドとを反応させて得られるポリアルコール樹脂等の反応生成物に、(メタ)アクリル酸等の不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に、更に多塩基酸無水物を反応させることにより得られるカルボキシル基を有する(メタ)アクリレート変性樹脂、
(5)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の環状カーボネート化合物とを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させることにより得られるカルボキシル基を有する(メタ)アクリレート変性樹脂、及び
(6)上述の(1)〜(5)の樹脂にさらに1分子内に1つのエポキシ基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加してなるカルボキシル基を有する(メタ)アクリレート変性樹脂。
【0035】
上記(1)〜(6)で用いられる酸無水物としては、無水プロピオン酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸等のカルボン酸無水物が用いられる。
【0036】
また、カルボキシル基含有樹脂の酸価は、40〜300mgKOH/gの範囲が適当であり、より好ましくは45〜120mgKOH/gの範囲である。
【0037】
カルボキシル基含有樹脂の酸価が40mgKOH/g以上の場合、アルカリ剥離液により容易に除去でき、一方、300mgKOH/g以下の場合、エッチングにおける耐性が向上する。
【0038】
また、上述のカルボキシル基含有樹脂の重量平均分子量(Mw)は、樹脂骨格により異なるが、一般的に1,000〜150,000、さらには5,000〜100,000の範囲にあるものが好ましい。重量平均分子量(Mw)が1,000以上の場合、エッチング耐性が向上する。一方、重量平均分子量(Mw)が150,000以下の場合、アルカリ剥離液によって容易に除去できる。
【0039】
カルボキシル基含有樹脂の含有量は、エッチングレジスト組成物の固形分100質量部に対して、80質量部以下が好ましく、30〜60質量部であるとより好ましい。カルボキシル基含有樹脂の使用量が80質量%以下の場合、粘度が良好に安定する。また、フェノール樹脂の含有量は、エッチングレジスト組成物の固形分100質量部に対して、80質量部以下が好ましく、30〜50質量部であるとより好ましい。フェノール樹脂の含有量が80質量部以下の場合、密着性が向上する。
【0040】
本発明では、カルボキシル基含有樹脂及びフェノール樹脂の混合物の場合、エッチングレジスト組成物の固形分100質量部に対して、30〜80質量部の範囲が好ましく、45〜70質量部の範囲にあるとより好ましい。カルボキシル基含有樹脂及びフェノール樹脂の混合物の配合量が30質量部以上の場合、エッチング耐性が向上し、80質量部以下の場合、レジスト組成物の取扱性や保存安定性に優れる。
【0041】
(成分(B))シランカップリング剤
本発明のエッチングレジスト組成物は、シランカップリング剤(B)を含む。シランカップリング剤としては、シランカップリング剤は、有機物(有機基)とケイ素から構成され、一般にXnR’(n-1)Si-R”-Y (X=ヒドロキシル、及びアルコキシル等、Y=ビニル基、エポキシ基、スチリル基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、アミノ基、ウレイド基、クロロプロピル基、メルカプト基、ポリスルフィド基、イソシアネート基等)で示される化合物である。分子中に2つ以上の異なった反応基を有するため、通常では非常に結びつきにくい有機材料と無機材料を結ぶ仲介として働き、複合材料の強度向上、樹脂の改質、表面改質などに使用される。
【0042】
シランカップリング剤の具体例は以下の通りである。
【0043】
N−γ−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−γ−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルフェニルジエトキシシラン、2−アミノ−1−メチルエチルトリエトキシシラン、N−メチル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−ブチル−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−ポリオキシエチレンプロピルトリメトキシシラン等。
【0044】
シランカップリング剤の市販品としては、例えば、KA−1003、KBM−1003、KBE−1003、KBM−303、KBM−403、KBE−402、KBE−403、KBM−1403、KBM−502、KBM−503、KBE−502、KBE−503、KBM−5103、KBM−602、KBM−603、KBE−603、KBM−903、KBE−903、KBE−9103、KBM−9103、KBM−573、KBM−575、KBM−6123、KBE−585、KBM−703、KBM−802、KBM−803、KBE−846、KBE−9007(いずれも商品名;信越シリコーン社製)などを挙げることができる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
シランカップリング剤の配合量は、フェノール樹脂のみ100質量部に対して、又は、フェノール樹脂とカルボキシル基含有樹脂の混合物100質量部に対して、0.1〜10質量部であることが好ましい。更に好ましくは1〜5質量部以下とされる。シランカップリング剤の配合量が0.1質量部以上場合、本発明のエッチングレジスト組成物が、処理対象である基板を良好に被覆し、一方、10質量部以下の場合、エッチングレジスト組成物が低粘度とされ、取扱いに優れる上、費用を削減することができる。本発明の組成物がシランカップリング剤を全く含まない場合には、ガラス基上で熱乾燥したレジストを、エッチング液に浸漬すると、レジストの剥離が生ずるため、シランカップリング剤の添加が必須とされる。
【0046】
(成分(C))フィラー
本発明では、従来公知のエッチングレジスト用の無機フィラー及び有機フィラーを使用することができる。例えば、無機フィラーとしては、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、タルク、クレー、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等の体質着色剤が挙げられる。これらの無機フィラーは、レジスト組成物調整の際の粘度を適度に調整し、熱乾燥の際に塗膜の硬化収縮を抑制し、基板との密着性を向上させる役割を果たす。このうち、基板との密着性を良好とするためにタルクが特に好ましく用いられる。
【0047】
更に、有機フィラーとしての例としては、架橋ポリメタクリル酸メチル、架橋ポリメタクリル酸ブチル等の樹脂粒子が挙げられる。
【0048】
一般には無機フィラーが用いられるが、これらの有機フィラーを適宜混合することより、レジスト組成物の基板に対する密着性が向上する。
【0049】
無機フィラーの平均一次粒径は15μm以下であることが好ましく、更に好ましくは10μm以下である。平均一次粒径(D50)は、レーザー回折/散乱法により測定することができる。
【0050】
フィラー(C)の配合量は、エッチングレジスト組成物100質量部に対して、20〜70質量部が好ましく、より好ましくは30〜50質量部である。フィラーの配合量が20質量部以上の場合、レジストと基板との密着性が向上し、70質量部以下の場合、組成物の流動性が向上する。
【0051】
(成分(D))有機溶剤
本発明では、本発明のレジスト組成物は、上記成分(A)を有機溶剤に溶解もしくは分散して得られる有機溶剤系組成物として使用することもできる。
【0052】
有機溶剤の具体例としては、
メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール等のアルコール類、
アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、
酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル等のエステル類、
ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類、
n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン等の脂肪族炭化水素類、
ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、及び
クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類等が挙げられる。
【0053】
これらの有機溶剤に可溶量の水を添加して混合したものを溶剤として用いてもよい。これらの溶剤は1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明のレジスト組成物の固形分は、30〜95質量%が好ましく、40〜90質量%がより好ましい。なお、固形分とは、溶剤を除いた成分である。
【0054】
この他、本発明のレジスト組成物には、必要に応じて、表面張力調整剤、界面活性剤、マット剤、膜物性を調整するためのポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラックなどの公知慣用の着色剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系等の消泡剤およびレベリング剤の少なくとも1種を、添加剤として配合することができる。添加剤は、各成分(A)〜(D)の性能を損なわず、添加剤の所望の効果が得られる範囲で、適宜使用量を調節して使用される。
【0055】
上記各成分を配合したエッチングレジスト組成物は、均一な溶液又は分散液として調整後、ガラス基板またはプラスチック基板等の基板に対し、スクリーン印刷等により所望のパターンにて、好ましくは20〜60μm、より好ましくは30〜50μmの膜厚で塗布される。本発明のレジスト組成物は、印刷後、例えば50〜120℃にて、5〜30分間、乾燥炉等において熱乾燥させて、所定の形状を維持可能状態なレジストされる。これにより、基板が所望のパターンで乾燥したレジストで被覆される。この基板を、エッチング液によりエッチング処理することにより、レジストに被覆されていない基板部分がエッチングされる。
【0056】
本発明により得られる熱乾燥後のレジストは、光硬化を行わない状態で、JIS C 5400の試験方法に従って試験した場合に、鉛筆硬度がF以上の硬度を有する膜として基板に密着して熱乾燥されることが好ましい。
【0057】
また、本発明のレジストは、フッ酸等を主成分とするエッチング液(例えば、フッ酸と、鉱酸(硝酸、リン酸等)との混合物、場合により水、酢酸等の弱酸のいずれか1種以上を含む)に対して良好な耐性を有する。本発明のレジスト組成物から得られるレジストは、上述の熱乾燥後にはエッチング液に対して優れた耐性を有することから、エッチング処理中に基板からの剥離が生じずに、基板を高精度でエッチング処理することができる。
【0058】
さらに、使用後のレジストは希アルカリ水溶液により剥離可能であり、例えば水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等の公知の剥離液にて容易に除去される。水酸化ナトリウムなどアルカリ物質の濃度は、例えば、1〜5質量%である。
【0059】
本発明のレジスト組成物は、スクリーン印刷法の他、グラビア法、グラビアオフセット法などの印刷方法に適用可能である。また、レジスト組成物は複数回に分けて塗布することもできる。その際の塗布方式としては、従来より知られる2コート1ベークなどのウエットオンウエット塗装や、2コート2ベークなどのドライオンウエット塗装が可能である。
【実施例】
【0060】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、以下において特に断りのない限り、「部」は質量部を意味するものとする。
【0061】
実施例1〜3、参考例4及び比較例1
表1に示す成分を、表1に示す割合(単位:部)にて配合し、攪拌機にて予備混合し、3本ロールにて練肉し、レジスト組成物を調製した。
【0062】
上記のようにして作製したレジスト組成物、及びその組成物より得られるレジストについて以下の性質を評価した。
【0063】
1.レジスト組成物の保存安定性
実施例1〜3、参考例4及び比較例1により得られたレジスト組成物を、それぞれ50℃の、恒温恒湿機(ヤマト社製)中に5日間保管した。レジスト組成物調製直後の粘度と、恒温恒湿機における保管後の粘度とを比較し、粘度の上昇(増粘率)を求めた。評価の基準は以下の通りである。
○: 増粘率30%未満
×: 増粘率30%以上
【0064】
2.エッチング耐性/剥離性試験
2−1.レジストの作成
実施例1〜3、参考例4及び比較例1により得られたレジスト組成物を、それぞれ1.2mmのガラス板に対し、スクリーン印刷で膜厚約50μmで印刷した。これを、乾燥炉中、100℃で20分間乾燥し、有機溶剤を蒸発させた。乾燥後の各レジストの膜厚は約30μmであった。
【0065】
2−2.エッチング耐性試験
実施例1〜3、参考例4及び比較例1により得られたレジストから得られたサンプル(それぞれ、サンプル1〜3、参考サンプル4及び比較サンプル1)をフッ酸:硝酸=1:3のエッチング液に10分間浸漬した。
【0066】
各サンプルを取り出し、エッチング液をふき取り後、ガラス基板上のレジストの剥離を目視評価した。評価の基準は以下の通りである。
○ ほとんど剥離なし(面積で10%未満)
エッチングレジストが部分的に剥離した(面積で10%以上〜60%未満)
× エッチングレジストが全体的に剥離した(面積で60%以上)
【0067】
2−3.レジスト除去試験
サンプル1〜3、参考サンプル4及び比較サンプル1を40℃に加温した水酸化ナトリウム水溶液(アルカリ現像液)に20秒間浸漬して、その後水道水で水洗した。基板からのレジスト除去の容易性を目視評価した。評価の基準は以下の通りである。
○ レジスト膜が全体除去
× レジスト膜の除去なし
【0068】
以下の表1に評価結果を示す。
【0069】
【表1】
【0070】
上記結果より、本発明のレジスト組成物は、エッチング耐性に優れ、保存安定性及びレジスト除去性についても優れた効果を示すことがわかる。
【0071】
本発明は上記の実施の形態の構成及び実施例に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々変形が可能である。
【0072】
例えば、上記実施例では、主にガラス基板のエッチングについて記載したが、本発明のレジスト組成物は、合成ゴム等を主成分とするプラスチック基板のエッチング等にも使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
以上説明したように、本発明の熱乾燥型エッチングレジスト組成物は、ガラスエッチング耐性、保存安定性及びレジスト除去性に優れ、電子・電気材料、光学材料、および計測器のガラス躯体のエッチングの他、携帯電話等の通信機器のエッチングに適用される。
【0074】
本発明のレジスト組成物及びこれを用いた製造法によると、スクリーン印刷によるガラス基板への塗布により、複雑な処理工程を得ずに、回路・配線図の描画、貫通孔、凹穴等の形成が行われるため、操作及び経済性の両面で効果的である。
【0075】
また、本発明のレジスト組成物の基板への高い密着性により、基板上に描画された所望のレジストパターン通りの高精度のエッチングが行われるため、携帯電話等、意匠性を重視した製品への適用にも有用である。