特許第6487623号(P6487623)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6487623
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】接合方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/12 20060101AFI20190311BHJP
   B23K 103/10 20060101ALN20190311BHJP
【FI】
   B23K20/12 310
   B23K20/12 320
   B23K20/12 330
   B23K20/12 346
   B23K103:10
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-41738(P2014-41738)
(22)【出願日】2014年3月4日
(65)【公開番号】特開2015-166107(P2015-166107A)
(43)【公開日】2015年9月24日
【審査請求日】2016年8月4日
【審判番号】不服2017-14849(P2017-14849/J1)
【審判請求日】2017年10月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004743
【氏名又は名称】日本軽金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀 久司
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 伸城
【合議体】
【審判長】 平岩 正一
【審判官】 篠原 将之
【審判官】 西村 泰英
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−125495(JP,A)
【文献】 特開2000−202645(JP,A)
【文献】 特開平2−299777(JP,A)
【文献】 特開昭53−106352(JP,A)
【文献】 特開昭52−41143(JP,A)
【文献】 特開2009−148811(JP,A)
【文献】 特許第6056786(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/12
B23K 103/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の金属部材の一端側の端面同士を突き合わせて突合せ部を形成する準備工程と、
前記金属部材の表面側から前記突合せ部に摩擦攪拌を行う第一の本接合工程と、
前記金属部材の裏面側から前記突合せ部に溶接を行う第二の本接合工程と、を含み、
前記金属部材はアルミニウム又はアルミニウム合金で形成されており、
前記第一の本接合工程では、前記金属部材の他端側に対して一端側が高くなるように前記金属部材を傾斜させた状態で摩擦攪拌を行い、
前記第一の本接合工程終了後に摩擦攪拌で発生したバリを除去して前記金属部材の表面を平坦にするとともに前記両金属部材を裏返し、
前記第二の本接合工程では、前記金属部材の平坦面を前記金属部材の表面側に配置された冷却板の表面と面接触させた状態で、前記突合せ部の延長方向に沿って前記冷却板の冷却流路を配設することにより、前記突合せ部を集中的に冷却しつつ溶接を行うことを特徴とする接合方法。
【請求項2】
前記準備工程では、架台と前記金属部材の裏面側との間にスペーサーを配置するとともに、前記スペーサーを用いて前記他端側に対して前記一端側が高くなるように前記各金属部材を傾斜させることを特徴とする請求項1に記載の接合方法。
【請求項3】
前記架台は、前記冷却板を備えていることを特徴とする請求項2に記載の接合方法。
【請求項4】
前記金属部材を載置する架台に凸部を設けておき、前記準備工程では、前記凸部を用いて前記他端側に対して前記一端側が高くなるように前記各金属部材を傾斜させることを特徴とする請求項1に記載の接合方法。
【請求項5】
前記金属部材を載置する架台に傾斜載置部を設けておき、前記準備工程では、前記傾斜載置部を用いて前記他端側に対して前記一端側が高くなるように前記金属部材の少なくともいずれか一方を傾斜させることを特徴とする請求項1に記載の接合方法。
【請求項6】
前記第二の本接合工程では、裏面側の前記突合せ部に沿って形成された凹溝に溶接を行い、当該凹溝に溶接金属を充填することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の接合方法。
【請求項7】
前記第二の本接合工程では、前記第一の本接合工程で形成された塑性化領域に溶接金属を接触させつつ溶接を行うことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩擦攪拌による金属部材同士の接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属部材同士を接合する方法として、摩擦攪拌接合(FSW=Friction Stir Welding)が知られている。摩擦攪拌接合とは、回転ツールを回転させつつ金属部材同士の突合せ部に沿って移動させ、回転ツールと金属部材との摩擦熱により突合せ部の金属を塑性流動させることで、金属部材同士を固相接合させるものである。
【0003】
特許文献1には、金属部材同士の端部同士を突き合わせて形成された突合せ部に回転ツールを挿入して、金属部材同士の表面側及び裏面側から突合せ部を摩擦攪拌接合する発明が開示されている。摩擦攪拌接合を行うと、回転ツールの移動軌跡に塑性化領域が形成されるが、当該塑性化領域が熱収縮するため、接合後の金属部材同士が凹状となるように変形してしまう。
【0004】
一方、表面側から摩擦攪拌を行った後に、裏面側から溶接を行って金属部材同士を接合することも考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−290092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
金属部材同士の表面側から摩擦攪拌を行った後に金属部材同士を裏返すと、金属部材同士が上方に凸状となるように反った状態となる。金属部材の裏面側から溶接を行うときに、金属部材同士が反った状態であると溶接作業が困難となるという問題がある。かかる問題を解消するために、例えば、特許文献1に示すように、表面側を摩擦攪拌した後の金属部材をロール部材で挟持しつつ当該金属部材に対してロール部材を相対移動させて、凹状に変形した金属部材を平坦にすればよいが、当該矯正作業が煩雑になる。
【0007】
また、溶接によっても金属部材に熱が作用するため、摩擦攪拌と同じように接合後の金属部材同士が凹状に変形してしまう。したがって、金属部材同士の裏面側から突合せ部に溶接を行った後も、再度矯正作業を行わなければならず、作業手間がかかるという問題がある。
【0008】
このような観点から、本発明は、摩擦攪拌による金属部材同士の接合方法において、接合された金属部材を容易に平坦にすることができる接合方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決するために本発明は、一対の金属部材の一端側の端面同士を突き合わせて突合せ部を形成する準備工程と、前記金属部材の表面側から前記突合せ部に摩擦攪拌を行う第一の本接合工程と、前記金属部材の裏面側から前記突合せ部に溶接を行う第二の本接合工程と、を含み、前記金属部材はアルミニウム又はアルミニウム合金で形成されており、前記第一の本接合工程では、前記金属部材の他端側に対して一端側が高くなるように前記金属部材を傾斜させた状態で摩擦攪拌を行い、前記第一の本接合工程終了後に摩擦攪拌で発生したバリを除去して前記金属部材の表面を平坦にするとともに前記両金属部材を裏返し、前記第二の本接合工程では、前記金属部材の平坦面を前記金属部材の表面側に配置された冷却板の表面と面接触させた状態で、前記突合せ部の延長方向に沿って前記冷却板の冷却流路を配設することにより、前記突合せ部を集中的に冷却しつつ溶接を行うことを特徴とする。
【0010】
かかる接合方法によれば、第一の本接合工程を行う際に、金属部材同士を予め傾斜させておき、摩擦攪拌接合後の熱収縮を利用することで、接合された金属部材を平坦にすることができる。これにより、金属部材同士が平坦な状態で第二の本接合工程を行うことができる。また、第一の本接合工程後にバリ切除工程を行うことで、第二の本接合工程において、金属部材がガタつくことなく安定して溶接を行うことができる。
【0011】
また、第二の本接合工程を行う際に、冷却板で金属部材を冷却しながら溶接を行うため、溶接後の熱収縮の発生を抑制することができる。これにより、第二の本接合後の金属部材同士を平坦にすることができる。また、第一の本接合工程後にバリを除去することで、冷却板と金属部材との接触面積を大きくすることができるため冷却効率を高めることができる。
【0012】
また、前記準備工程では、架台と前記金属部材の裏面側との間にスペーサーを配置するとともに、前記スペーサーを用いて前記他端側に対して前記一端側が高くなるように前記各金属部材を傾斜させることが好ましい。また、前記架台は、前記冷却板を備えていることが好ましい。
【0013】
かかる接合方法によれば、突合せ部が高くなるように金属部材を容易に傾斜させることができる。また、冷却板を備えた架台を用いることで、接合に用いられる装置点数を削減することができる。
【0014】
また、前記金属部材を載置する架台に凸部を設けておき、前記準備工程では、前記凸部を用いて前記他端側に対して前記一端側が高くなるように前記各金属部材を傾斜させることが好ましい。
また、前記金属部材を載置する架台に傾斜載置部を設けておき、前記準備工程では、前記傾斜載置部を用いて前記他端側に対して前記一端側が高くなるように前記金属部材の少なくともいずれか一方を傾斜させることが好ましい。
【0015】
かかる接合方法によれば、突合せ部が高くなるように金属部材を容易に傾斜させることができる。
【0016】
また、前記第二の本接合工程では、裏面側の前記突合せ部に沿って形成された凹溝に溶接を行い、当該凹溝に溶接金属を充填することが好ましい。
【0017】
かかる接合方法によれば、溶接を容易に行うことができる。
【0018】
また、前記第二の本接合工程では、前記第一の本接合工程で形成された塑性化領域に溶接金属を接触させつつ溶接を行うことが好ましい。
【0019】
かかる接合方法によれば、突合せ部の深さ方向の全体を接合することができるため、接合部の水密性及び気密性を高めることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る接合方法よれば、接合された金属部材を容易に平坦にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第一実施形態に係る接合方法を示す断面図であって、(a)は第一架台を示し、(b)は準備工程を示す。
図2】第一実施形態に係る接合方法を示す断面図であって、(a)は第一の本接合工程を示し、(b)はバリ切除工程を示す。
図3】第一実施形態に係る接合方法を示す断面図であって、(a)は第二の本接合工程の接合前を示し、(b)は第二の本接合工程の接合後を示す。
図4】第二実施形態に係る接合方法を示す断面図であって、(a)は第一の本接合工程を示し、(b)は第二の本接合工程を示す。
図5】第三実施形態に係る接合方法を示す断面図であって、(a)は第一の本接合工程を示し、(b)は凹溝形成工程を示す。
図6】第三実施形態に係る充填工程を示す断面図である。
図7】架台の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第一実施形態]
本発明の第一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。まずは、本実施形態で用いる第一架台について説明する。
【0023】
図1の(a)に示すように、第一実施形態に係る接合方法では、第一架台Kを用いる。第一架台Kは、冷却板K1と、クランプK2と、冷却流路K3とで構成されている。第一架台Kは、図1の(b)に示すように、金属部材1,1を接合する際に用いられる台であるとともに、金属部材1,1を冷却することができる。
【0024】
冷却板K1は、金属製であって、直方体を呈する。冷却板K1は、伝熱性の高い金属で形成されていることが好ましい。クランプK2は、冷却板K1の表面に複数個設けられている。クランプK2は、冷却板K1に金属部材1,1を移動不能に拘束する部材である。
【0025】
冷却流路K3は、冷却媒体(冷水又は冷気)が流通する流路である。冷却流路K3の配設位置、配設本数は特に制限されるものではないが、後記する突合せ部Jに近い位置において、突合せ部Jの延長方向に沿って配設されていることが好ましい。
【0026】
次に、第一実施形態に係る接合方法について説明する。図1の(b)に示すように、第一実施形態では、金属部材1,1の端部同士を突き合わせて形成された突合せ部Jを摩擦攪拌及び溶接によって接合する。第一実施形態に係る接合方法では、準備工程と、第一の本接合工程と、バリ切除工程と、第二の本接合工程とを行う。
【0027】
準備工程は、突合せ部Jが高くなるように、金属部材1,1を第一架台Kに固定する工程である。準備工程では、金属部材1,1の一端側の端面1a,1aを突き合わせて突合せ部Jを形成しつつ、金属部材1,1の一端側をスペーサー10の上に配置する。また、金属部材1,1の他端側をクランプK2で固定する。つまり、金属部材1,1の他端側に対して一端側(端面1a,1a側)が高くなるように金属部材1,1を傾斜させる。これにより、突合せ部Jが最も高くなる状態で金属部材1,1が固定される。
【0028】
金属部材1は、金属製の板状部材である。金属部材1,1は、同等の形状になっている。また、金属部材1,1は同等の材料で形成されている。金属部材1の材料は、摩擦攪拌可能な金属であれば特に制限されないが、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、チタン、チタン合金、 マグネシウム、マグネシウム合金等から適宜選択すればよい。
【0029】
スペーサー10は、冷却板K1の中央に配置される板状部材である。スペーサー10は、突合せ部Jの延長方向に沿って配置される。スペーサー10の材料は特に制限されるものではない。
【0030】
金属部材1,1が第一架台Kに固定されると、端面1a,1aの下端は当接した状態となるが、端面1a,1aの上端はわずかに離間した状態となる。本実施形態に係る「突合せ部」とは、端面1a,1aが突き合わされており、端面1a,1a間で形成される空間断面がV字状を呈する状態も含むものである。
【0031】
金属部材1,1の傾斜角度は特に限定されないが、金属部材1,1の材質、各部位の寸法、後記する本接合工程の入熱量や接合後の熱収縮等を考慮して、第一の本接合工程後の熱収縮によって金属部材1,1が平坦になるような傾斜角度を適宜設定すればよい。
【0032】
第一の本接合工程は、突合せ部Jに対して金属部材1,1の表面1b,1b側から摩擦攪拌接合を行う工程である。図1の(b)に示すように、第一の本接合工程は、本実施形態では回転ツールGを用いる。回転ツールGは、円柱状を呈するショルダ部G1と、ショルダ部G1の下端面から突出する攪拌ピンG2とで構成されている。攪拌ピンG2は、錐台形状を呈する。
【0033】
図2の(a)に示すように、第一の本接合工程では、金属部材1,1の表面1b,1b側から突合せ部Jに対して回転した回転ツールGの攪拌ピンG2を挿入する。そして、突合せ部Jに沿って回転ツールGを相対移動させる。
【0034】
本実施形態では、ショルダ部G1の下端面を、表面1b,1bよりも数ミリ程度押し込んで摩擦攪拌を行う。回転する回転ツールGによって端面1a,1aの金属が摩擦攪拌されて金属部材1,1が接合される。回転ツールGの移動軌跡には、塑性化領域W1が形成される。金属部材1,1に対する攪拌ピンG2の挿入深さは適宜設定すればよいが、攪拌ピンG2の先端を突合せ部Jの深さ方向の1/2以上の位置まで挿入することが好ましい。第一の本接合工程が終了したら、クランプK2を解除して金属部材1,1を放置する。また、第一架台Kからスペーサー10を取り除く。
【0035】
図2の(b)に示すように、バリ切除工程は、第一の本接合工程で発生したバリVを切除する工程である。バリ切除工程では、金属部材1,1の表面1b,1bに発生したバリVを切除して表面1b,1bを平担にする。
【0036】
第二の本接合工程は、第一架台Kの冷却流路K3に冷却媒体を流して金属部材1,1を冷却しつつ、突合せ部Jに対して金属部材1,1の裏面1c,1c側から溶接を行う工程である。図3の(a)に示すように、第二の本接合工程では、まず、金属部材1,1を裏返し、クランプK2を介して第一架台Kに金属部材1,1を移動不能に拘束する。金属部材1,1の表面1b,1bは、冷却板K1の表面と面接触する。図3の(b)に示すように、第二の本接合工程では、金属部材1,1の裏面1c,1cから突合せ部Jに対して溶接を行う。溶接の種類は特に制限されないが、本実施形態では、TIG溶接又はMIG溶接等の肉盛溶接を行う。
【0037】
溶接によって突合せ部Jには溶接金属Uが形成される。溶接金属Uの深さは適宜設定すればよく、本実施形態のように塑性化領域W1と溶接金属Uとの間に隙間があってもよいし、塑性化領域W1と溶接金属Uとが接触するようにしてもよい。また、溶接金属Uの表面と金属部材1,1の裏面1c,1cとを面一にするために、溶接後に溶接金属Uの一部を切削してもよい。以上の工程によって金属部材1,1が接合される。
【0038】
以上説明した本実施形態に係る接合方法によれば、第一の本接合工程を行う際に、金属部材1,1同士を予め傾斜させておき、摩擦攪拌接合後の熱収縮を利用することで、第一の本接合工程後に接合された金属部材1,1を平坦にすることができる。これにより、金属部材1,1を裏返しても金属部材1,1が平坦となっているため、第二の本接合工程を好適に行うことができる。
【0039】
また、第二の本接合工程を行う際に、冷却板K1で金属部材1,1を冷却しながら摩擦攪拌を行うため、第二の本接合工程後の熱収縮の発生を抑制することができる。これにより、第二の本接合工程後の金属部材1,1を容易に平坦にすることができる。
【0040】
また、第一の本接合工程後にバリ切除工程を行うことで、冷却板K1と金属部材1,1との接触面積を大きくすることができるため冷却効率を高めることができる。また、第一の本接合工程後にバリ切除工程を行うことで、第二の本接合工程において、金属部材1,1がガタつくことなく安定して溶接を行うことができる。また、突合せ部Jの延長方向に沿って冷却流路K3を配設することにより、摩擦熱が発生する部分を集中的に冷却することができるため、冷却効率を高めることができる。
【0041】
また、第一架台Kと金属部材1,1との間にスペーサー10を配置することにより、金属部材1,1を傾斜させつつ金属部材1,1同士を突き合わせる作業を容易に行うことができる。また、スペーサー10の高さを変更するだけで、金属部材1,1の傾斜角度を変更することができる。
【0042】
また、第一架台Kは、冷却板K1を備えているため、第一の本接合工程及び第二の本接合工程を同じ架台で行うことができるため、接合で用いられる装置点数を削減することができる。
【0043】
なお、本実施形態ではスペーサー10を用いて金属部材1,1を傾斜させたが、突合せ部Jが高くなるように金属部材1,1を傾斜させることが可能であれば、スペーサー10を省略してもよい。
【0044】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係る接合方法について説明する。第二実施形態に係る接合方法では、図4に示すように、冷却板K1及び第二架台Lを用いる点で第一実施形態と相違する。第二実施形態では、第一実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0045】
冷却板K1は、第一実施形態と同様に冷却流路K3を備えている。第二架台Lは、基板L1と、クランプL2と、で構成されている。基板L1は、金属製であって直方体を呈する。基板L1は、伝熱性の高い金属で形成されることが好ましい。
【0046】
第二実施形態に係る接合方法では、準備工程と、第一の本接合工程と、バリ切除工程と、第二の本接合工程とを行う。
【0047】
準備工程では、冷却板K1の上に第二架台Lを配置する。そして、準備工程では、第二架台L上において、金属部材1,1の一端側の端面1a,1aを突き合わせて突合せ部Jを形成しつつ、金属部材1,1の一端側をスペーサー10の上に配置する。また、金属部材1,1の他端側をクランプL2で固定する。つまり、金属部材1,1の他端側に対して一端側が高くなるように金属部材1,1を傾斜させる。これにより、突合せ部Jが最も高くなる状態で金属部材1,1が固定される。
【0048】
第一の本接合工程及びバリ切除工程は、第一実施形態と同等である。図4の(b)に示すように、第二の本接合工程では、まず、バリを切除した金属部材1,1を裏返し、クランプL2を介して金属部材1,1を第二架台Lに移動不能に拘束する。そして、第二の本接合工程では、冷却板K1の冷却流路K3に冷却媒体を流して金属部材1,1を冷却しつつ、突合せ部Jに対して金属部材1,1の裏面1c,1c側から溶接を行う。第二の本接合工程では、塑性化領域W1と溶接金属Uとが接触するように溶接を行う。
【0049】
以上説明した第二実施形態のように、冷却板K1と第二架台Lとを積層させて金属部材1,1を接合してもよい。当該形態であっても、第二の本接合工程において、金属部材1,1を冷却しつつ溶接を行うことができる。また、塑性化領域W1と溶接金属Uとが接触しているため、突合せ部Jの深さ方向の全体を接合することができる。これにより、金属部材1,1の接合強度が向上するとともに、接合部の水密性及び気密性を高めることができる。第二実施形態に係る接合方法においても、第一実施形態と略同等の効果を奏することができる。
【0050】
[第三実施形態]
次に、本発発明の第三実施形態に係る接合方法について説明する。第三実施形態に係る接合方法では、第一の本接合工程と第二の本接合工程とにおいて、異なる架台を用いる点で第一実施形態と相違する。また、第二の本接合工程で凹溝形成工程及び充填工程を行う点で第一実施形態と相違する。第三実施形態に係る接合工程では、第一実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0051】
第三実施形態に係る接合方法では、準備工程と、第一の本接合工程と、バリ切除工程と、第二の本接合工程とを行う。
【0052】
図5の(a)に示すように、準備工程では、第三架台Mに金属部材1,1を移動不能に拘束する。第三架台Mは、基板M1と、クランプM2と、凸部M3とで構成されている。凸部M3は、基板M1の中央に凸設されおり、突合せ部Jの延長方向に沿って延設されている。凸部M3の断面形状は特に制限されるものではない。
【0053】
準備工程では、第三架台M上において、金属部材1,1の一端側の端面1a,1aを突き合わせて突合せ部Jを形成しつつ、金属部材1,1の一端側を凸部M3の上に配置する。また、金属部材1,1の他端側をクランプM2で固定する。つまり、金属部材1,1の他端側に対して一端側(端面1a,1a側)が高くなるように金属部材1,1を傾斜させる。これにより、突合せ部Jが最も高くなる状態で金属部材1,1が固定される。
【0054】
第一の本接合工程及びバリ切除工程は、第一実施形態と同等である。図5の(b)に示すように、第二の本接合工程では、冷却板K1を用いる。冷却板K1の内部には、冷却媒体が流通する冷却流路K3が形成されている。
【0055】
第二の本接合工程では、凹溝形成工程と、充填工程とを行う。図5の(b)に示すように、凹溝形成工程は、突合せ部Jに沿って凹溝20を形成する工程である。凹溝形成工程では、金属部材1,1の裏面1c,1c側に露出する突合せ部Jに沿って凹溝20を形成する。凹溝20の深さは適宜設定すればよいが、本実施形態では塑性化領域W1の一部も切削するように形成する。凹溝20の断面形状は特に制限されないが、本実施形態では断面矩形状に形成する。
【0056】
充填工程は、冷却板K1で金属部材1,1を冷却しつつ、溶接によって金属部材1,1を接合するとともに溶接金属Uによって凹溝20を充填する工程である。充填工程では、例えば、TIG溶接又はMIG溶接等の肉盛溶接を行って金属部材1,1を溶接し、溶接金属Uで凹溝20を充填する。充填工程により、溶接金属Uは塑性化領域W1と接触する。
【0057】
以上説明した第三実施形態のように、第三架台Mと冷却板K1とを別個に設け、第一の本接合工程は第三架台Mで行い、第二の本接合工程は冷却板K1で行ってもよい。このようにしても、第一実施形態と略同等の効果を奏することができる。凸部M3によっても突合せ部Jが高くなるように金属部材1,1を容易に傾斜させることができる。
【0058】
また、第二の本接合工程では、凹溝20に肉盛溶接を行うことで、溶接作業を容易に行うことができる。また、凹溝20を設けることで、溶接金属Uの表面と金属部材1,1の裏面1c,1cとを面一にすることができる。また、溶接金属Uと塑性化領域W1とを接触させることで、突合せ部J1の深さ方向の全体を接合することができる。これにより、金属部材1,1の接合強度が向上するとともに、接合部の水密性及び気密性を高めることができる。第三実施形態に係る接合方法においても、第一実施形態と略同等の効果を奏することができる。
【0059】
なお、第二実施形態に係る第一の本接合工程(図4の(a)参照)において、第二架台Lに替えて、冷却板K1の上に第三架台Mを積層させて金属部材1,1を接合してもよい。
【0060】
[変形例]
次に、架台の変形例について説明する。図7は、架台の変形例を示す断面図である。図7に示すように、第四架台Nは、基板N1と、クランプN2と、基板N1に設けられた傾斜載置部N4とで構成されている。
【0061】
傾斜載置部N4は、断面三角形状を呈し、傾斜面N4a,N4aを備えている。準備工程では、金属部材1,1の裏面1c,1cを傾斜面N4a,N4aにそれぞれ面接触させつつ、頂点N4bに突合せ部Jが位置するように配置し、クランプN2で固定する。つまり、第四架台Nによっても、金属部材1,1の他端側に対して一端側(端面1a,1a側)が高くなるように金属部材1,1を傾斜させることができる。
【0062】
第二実施形態に係る第一の本接合工程(図4の(a)参照)において、第二架台Lに替えて、冷却板K1の上に第四架台Nを積層させて金属部材1,1を接合してもよい。また、第三実施形態に係る第一の本接合工程(図5の(a)参照)において、第三架台Mに替えて、第四架台Nで金属部材1,1を接合してもよい。このように、傾斜載置部N4を備えた第四架台Nを用いても準備工程及び第一の本接合工程を行うことができる。
【0063】
以上本発発明の実施形態及び変形例について説明したが、本発明の趣旨に反しない範囲において適宜設計変更が可能である。例えば、本実施形態では、金属部材1,1を両方とも同じ角度で傾斜させているが、両者の傾斜角度が異なってもよい。
【0064】
また、傾斜載置部N4は、傾斜面N4a,N4aを備えるようにしたが、これに限定されるものではない。具体的な図示は省略するが、傾斜載置部を水平面と傾斜面N4aとで構成してもよい。この場合の準備工程では、一方の金属部材1を水平面に載置するとともに、他方の金属部材1を傾斜面N4aに載置する。このようにしても、第二の本接合工程において金属部材の他端側に対して一端側が高くなるように傾斜させた状態で摩擦攪拌を行うことができる。
【0065】
また、金属部材1,1の他端側を架台に固定せずに第一の本接合工程及び第二の本接合工程を行ってもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 金属部材
1a 端面
1b 表面
1c 裏面
10 スペーサー
20 凹溝
G 回転ツール
G1 ショルダ部
G2 攪拌ピン
J 突合せ部
K 第一架台(架台)
K1 冷却板
K2 クランプ
K3 冷却流路
L 第二架台(架台)
L1 基板
L2 クランプ
M 第三架台(架台)
M1 基板
M2 クランプ
M3 凸部
N 第四架台(架台)
N1 基板
N2 クランプ
N4 傾斜載置部
U 溶接金属
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7