(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フックは、前記板状遮蔽材の裏面に当接する遮蔽材当接板部と、前記遮蔽材当接板部の上端部から後方に突出してその先端部が下方に折れ曲がる上部係止板部と、前記遮蔽材当接板部の下端部から後方に突出してその先端部が下方に折れ曲がる下部係止板部とを備えており、
前記フック受け部材は、前記支柱当接板部の下端部から前方に突出した第二突出部と、当該第二突出部の先端部から上方に立ち上がる第二立上り部と、前記第二立上り部の上端から前方に傾斜する傾斜部とをさらに備え、
前記傾斜部は、前記フックを装着する際の前後方向の位置決めガイドとなる
ことを特徴とする請求項1に記載の遮蔽構造体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の遮蔽構造体では、遮蔽体ごとに枠体および走行手段を必要とするため遮蔽体以外の構造体が複雑な形状になっていた。また、遮蔽体は上下方向と左右方向の両方向において端部同士を重合させているので、部分的に4枚重なる部分が発生し表面の凹凸が大きくなる。そのため、遮蔽体を支持するフレームと遮蔽体との間に隙間が発生する問題があった。
【0007】
特許文献2の遮蔽構造体では、上下の横部材の支持位置を遮蔽体の厚さ方向にずらす構造とするため、仮設フレームが複雑な形状になっていた。また、遮蔽体は上下方向と左右方向の両方向において端部同士を重合させているので、遮蔽体が部分的に4枚重なる部分が発生し表面の凹凸が大きくなる。そのため、遮蔽体を支持するフレームと遮蔽体との間に隙間が発生する問題があった。
【0008】
このような観点から本発明は、複数の板状遮蔽材を隙間なく設置可能な遮蔽構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための請求項1に係る発明は、骨組フレーム体と、前記骨組フレーム体に取り付けられる複数の板状遮蔽材とを備える遮蔽構造体であって、前記骨組フレーム体は、複数の支柱部材と、前記支柱部材間に架け渡された横部材とを備えており、前記板状遮蔽材は、上下方向および左右方向にずらされた状態で重ね合わされた2枚の遮蔽板と、前記支柱部材に係止するためのフックとを備え、上下方向に隣り合う前記板状遮蔽材のうち、一方の前記板状遮蔽材の表面側の前記遮蔽板と、他方の前記板状遮蔽材の裏面側の前記遮蔽板とが重なり合っていて、隣り合う前記板状遮蔽材の表面同士が面一になっており、左右方向に隣り合う前記板状遮蔽材のうち、一方の前記板状遮蔽材の表面側の前記遮蔽板と、他方の前記板状遮蔽材の裏面側の前記遮蔽板とが重なり合っていて、隣り合う前記板状遮蔽材の表面同士が面一になっており、前記フックは、前記板状遮蔽材の表面側から見てフック全体が前記遮蔽板の面内におさまる状態で取り付けられ、前記支柱部材の表面に固定されたフック受け部材に係合されており、前記フック受け部材は、前記支柱部材の表面に当接する支柱当接板部と、前記支柱当接板部の上端部から前方に突出した第一突出部と、当該第一突出部の先端部から立ち上がった第一立上り部とを備え、前記第一立上り部の幅方向中央には、上向きに開口した凹部が形成されており、前記凹部の左右幅寸法は、2つの前記フックが
前記凹部の幅方向に並んで係止可能な長さであり、前記凹部の側辺部は、
当該側辺部の上端に近いほど前記第一立上り部の外側面に近くなるように傾斜しており、前記凹部
の側辺部は、前記フックを装着する際の左右方向の位置決めガイドとなることを特徴とする遮蔽構造体である。
【0010】
このような構成によれば、一方の板状遮蔽材の表面側の遮蔽板と、他方の板状遮蔽材の裏面側の遮蔽板とが重なり合うので、隙間なく板状遮蔽材を設置することができ、ひいては、放射線を遮蔽することができる。さらに、板状遮蔽材は、2枚の遮蔽板をずらして固定する構成であるので、容易に形成することができる。また、左右方向に隣り合う板状遮蔽材同士も隙間なく設置することができる。
さらに、板状遮蔽材は、支柱に対して前方から後方に押し込んだ後に下降させるだけで、容易に係止させることができる。板状遮蔽材の取付高さを調整できる。さらに、フックの上下両方で係止できるので、板状遮蔽材の係止状態を確実に確保できるとともに、風などによるがたつきを防止できる。
請求項2に係る発明は、前記フック受け部材は、前記支柱当接板部の下端部から前方に突出した第二突出部と、当該第二突出部の先端部から上方に立ち上がる第二立上り部と、前記第二立上り部の上端から前方に傾斜する傾斜部とをさらに備え、前記傾斜部は、前記フックを装着する際の前後方向の位置決めガイドとなることを特徴とする。
【0012】
請求項2に係る発明は、前記フックは、前記板状遮蔽材の裏面に当接する遮蔽材当接板部と、前記遮蔽材当接板部の上端部から後方に突出してその先端部が下方に折れ曲がる上部係止板部と、前記遮蔽材当接板部の下端部から後方に突出してその先端部が下方に折れ曲がる下部係止板部とを備えて
おり、前記フック受け部材は、前記支柱当接板部の下端部から前方に突出した第二突出部と、当該第二突出部の先端部から上方に立ち上がる第二立上り部と、前記第二立上り部の上端から前方に傾斜する傾斜部とをさらに備え、前記傾斜部は、前記フックを装着する際の前後方向の位置決めガイドとなることを特徴とする。このような構成によれば、板状遮蔽材は、支柱に対して前方から後方に押し込んだ後に下降させるだけで、容易に係止させることができる。
【0013】
請求項
3に係る発明は、前記
遮蔽材当接板部と前記2枚の遮蔽板は、ボルトおよびナットにて一体化されていることを特徴とする。このような構成によれば、複数の部材からなる板状遮蔽材を容易に形成することができる。
【0016】
請求項
4に係る発明は、前記遮蔽板は、2枚のスキン材にコア材を挟み込んだ両面クラッド構造の金属複合材からなり、前記スキン材は、アルミニウム合金製板材からなるとともに、前記コア材は、アルミニウム粉末と、タングステン粉末またはホウ素粉末の少なくとも一方とを混合させてなり、前記遮蔽板は、前記スキン材と前記コア材とを一体に熱間圧延してなることを特徴とする。このような構成によれば、加工性および耐食性に優れた遮蔽板を容易に形成することができる。また、コア材の粉末材料をホウ素(B4C)粉末変更することで、中性子線の遮蔽性能を確保できる。なお、タングステン粉末とホウ素(B4C)粉末を同時にアルミニウム粉末に混合させてもよい。
【0017】
請求項
5に係る発明は、前記支柱部材および前記横部材は、アルミニウム合金製の押出形材もしくは鋼材からなることを特徴とする。支柱部材および横部材をアルミニウム合金製の押出形材から構成すれば、強度や耐食性に優れた骨組フレーム体とすることができるほか、アルミニウムの軽量性を生かした組み立て作業の容易化や、リサイクル性に優れた骨組フレーム体を提供することができる。支柱部材および横部材を鋼材から構成すれば、剛性の高い骨組フレーム体とすることができるとともに、骨組フレーム体の製造コストを低減できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、複数の板状遮蔽材を隙間なく設置することができるので、遮蔽性能の高い遮蔽構造体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の実施形態を、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。遮蔽構造体は、仮設の遮蔽壁として利用される。遮蔽構造体は、たとえば、放射性廃棄物受入施設などにおいて、ダンプ、トラックなどの受入れヤードと管理棟の間に設けられ、管理棟内の線量低減を実現させる。
図1および
図8に示すように、遮蔽構造体1は、骨組フレーム体10と、この骨組フレーム体10に取り付けられる複数の板状遮蔽材30とを備えている。なお、
図1では、後記するフック受け部材70を図示するために、右端部上半の遮蔽構造体1の図示を省略している。
【0021】
骨組フレーム体10は、複数の支柱部材11と、支柱部材11,11間に架け渡された横部材16とを備えている。支柱部材11は、主柱11aと間柱11bとからなる。主柱11aは、基礎2から立ち上がる支柱部材11であって、下端部が基礎2に固定されている。横部材16は、隣り合う主柱11a間に架け渡されている。横部材16は、複数の所定高さに設置されている。上下の横部材16は、互いに平行に配置されている。間柱11b(
図8では図示せず)は、上下の横部材16間に架け渡されている。隣り合う支柱部材11,11間、または互いに平行に配置されて隣り合う横部材16,16間には、適宜補強ブレース20が架け渡されている。
【0022】
図6に示すように、支柱部材11は、アルミニウム合金製の押出形材からなる。支柱部材11は、断面略矩形形状を呈しており、4つの側面部を備えている。主柱11aと間柱11bは、同じ断面形状である。支柱部材11には、ボルトBの頭部が収容される収容溝12が形成されている。収容溝12は、支柱部材11の長手方向に沿って形成されている。収容溝12は、4つの側面部にそれぞれ2列ずつ形成されている。収容溝12は、支柱部材11の長手方向全長に渡って形成されている。収容溝12に収容されるボルトBは、支柱部材11と横部材16とを固定するためのものであり、例えば六角ボルトが用いられている。収容溝12の溝幅寸法は、ボルトBの頭部の二面幅の寸法より大きく、対角距離より小さくなっている。これによって、ボルトBは、収容溝12内を長手方向に移動可能でありながらも、回転が阻止された状態となる。一対の収容溝12,12は、互いに平行に形成されている。
【0023】
収容溝12の開口端には、一対の係止部13,13が形成されている。係止部13は、溝側壁から溝の内側に向かって延在している。係止部13,13は、収容溝12の全長に渡って形成されている。係止部13,13の外面は、支柱部材11の側面と面一になっている。係止部13,13の離間距離は、ボルトBの軸部の外径よりも僅かに大きい寸法になっている。ボルトBの軸部は、係止部13,13間を通過して、支柱部材11の側面から突出する。ボルトBの頭部は、収容溝12の長手方向(押出方向)の端部から挿入される。ボルトBは、軸部が係止部13,13間の隙間から突出した状態で、溝長手方向に沿って、所望の位置まで移動される。係止部13は、ボルトBの頭部の座面に当接し、収容溝12からのボルトBの抜け落ちを防止している。
【0024】
横部材16は、支柱部材11と同じ断面形状(幅寸法も同じ)を呈しており、各側面部に収容溝12,12が形成されている。横部材16は、支柱部材11と同様にアルミニウム合金製の押出形材からなる。
【0025】
以下に支柱部材11と横部材16との取合い構造を説明する。まず、主柱11aと横部材16との取合い構造を説明する。
図1、
図5および
図6に示すように、主柱11aと横部材16との連結部分では、横部材16の端面が、主柱11aの側面に当接している。主柱11aと横部材16は、火打金具21を介して連結されている。主柱11aの上部に連結される横部材16は、支柱部材11の上端から火打金具21の設置スペース分下がった位置に設置されている(
図1参照)。
【0026】
火打金具21は、互いに直交する2つの長尺部材のコーナー部のL字の内側に設けられる連結部材である。主柱11aと横部材16との連結部分では、火打金具21は、横部材16の端部の上面と下面の二か所に設けられている。火打金具21は、L字状に屈曲した当接板部22と、当接板部22の両端部間に架け渡される傾斜板部23とを備えている。当接板部22は、一方の長尺部材(支柱部材11)の外周面に当接する第一当接板22aと、他方の長尺部材(横部材16)の外周面に当接する第二当接板22bとを備えている。主柱11aと横部材16との取合いでは、第一当接板22aが主柱11aの側面に当接し、第二当接板22bが横部材16の上面または下面に当接している。第一当接板22aと第二当接板22bの先端には、ボルト孔(図示せず)がそれぞれ形成されている。
【0027】
傾斜板部23は、第一当接板22aの先端部と第二当接板22bの先端部間に斜めに架け渡された補強斜材である。傾斜板部23の一端は、第一当接板22aの先端部のうちボルト孔よりも基端側に接続され、傾斜板部23の他端は、第二当接板22bの先端部のうちボルト孔よりも基端側に接続される。傾斜板部23は第一当接板22aに対して45度の傾斜角度を成すとともに、第二当接板22bに対しても45度の傾斜角度を成す。
【0028】
火打金具21のボルト孔には、収容溝12に頭部が収容されたボルトBの軸部(長尺部材の外周面から突出している)が貫通している。ボルトBの軸部には、ナットNが螺合しており、ボルトBの頭部の座面とナットNとで、当接板部22と、収容溝12の係止部13,13が挟持される。これによって、支柱部材11と第一当接板22aが連結されるとともに、横部材16と第二当接板22bが連結される。つまり、火打金具21を介して、主柱11a(支柱部材11)と横部材16とが連結される。
【0029】
次に、
図7を参照して間柱11bと横部材16との取合い構造を説明する。図示するように、間柱11bと横部材16との連結部分は、間柱11bの上部では、間柱11bの上端面が横部材16の下面に当接し、間柱11bの下部では、間柱11bの下端面が横部材16の上面に当接している(
図7では間柱11bの上部のみ図示)。
【0030】
間柱11bと横部材16との連結部分では、火打金具21は、間柱11bの両側の二か所に設けられている。間柱11bの上部と横部材16との連結部分に配置された火打金具21は、第一当接板22aが間柱11bの側面に当接し、第二当接板22bが上段の横部材16の下面に当接している。図示しないが、間柱11bの下部と横部材16との連結部分に配置された火打金具21は、第一当接板22aが間柱11bの側面に当接し、第二当接板22bが下段の横部材16の上面に当接している。
【0031】
図1に示すように、火打金具21は、支柱部材11を介在して直交する横部材16,16間にも設けられ、横部材16,16同士の連結を補強する。横部材16,16同士の補強構造では、第一当接板22aが一方の横部材16の側面に当接し、第二当接板22bが他方の横部材16の側面に当接している。また、火打金具21は、基礎2と支柱部材11との連結にも用いられている。この部分の火打金具21の幅寸法は、支柱部材11の幅寸法よりも大きい(
図1参照)。
【0032】
図2および
図3に示すように、板状遮蔽材30は、放射線の遮蔽性能を備えた板材であって、2枚の遮蔽板31,31と、支柱部材11に係止するためのフック50とを備えている。2枚の遮蔽板31,31は、ともに同一形状且つ同一厚さであって、横長矩形形状を呈している。一方の遮蔽板31は、他方の遮蔽板31に対して、遮蔽板31の高さ方向(縦方向)にオフセットしている。具体的には、手前側(表面側)の遮蔽板31が奥側(裏面側)の遮蔽板31に対して下方にオフセットしている。これによって、板状遮蔽材30の上下方向両端部には、段差部32がそれぞれ形成されることとなる。段差部32のオフセット距離は、たとえば10mm程度である。
【0033】
また、本実施形態では、一方の遮蔽板31は、他方の遮蔽板31に対して、遮蔽板31の幅方向(横方向)にもオフセットしている。これによって、板状遮蔽材30の幅方向両端部には、段差部33がそれぞれ形成されることとなる。段差部33のオフセット距離は、たとえば10mm程度である。
【0034】
縦方向に隣り合う板状遮蔽材30,30のうち、上方の板状遮蔽材30の下端の段差部32と、下方の板状遮蔽材30の上端の段差部32とが組み合わさることで、上方の板状遮蔽材30の表面側の遮蔽板31と、下方の板状遮蔽材30の裏面側の遮蔽板31とが重なり合う。そして、隣り合う板状遮蔽材30,30の表面同士が面一になっている。
【0035】
また、横方向に隣り合う板状遮蔽材30,30のうち、一方の板状遮蔽材30の側部の段差部33と、他方の板状遮蔽材30の側部の段差部33とが組み合わさることで、一方の板状遮蔽材30の表面側の遮蔽板31と、他方の板状遮蔽材30の裏面側の遮蔽板31とが重なり合う。そして、隣り合う板状遮蔽材30,30の表面同士が面一になっている。
【0036】
遮蔽板31は、2枚のスキン材にコア材を挟み込んだ両面クラッド構造の金属複合材からなる。スキン材はアルミニウムとマグネシウムを備えたアルミニウム合金製板材からなり、コア材はアルミニウム粉末とタングステン粉末とを混合させてなる。遮蔽板31は、板状遮蔽材30として組み付けたときに作業員が人力で運搬可能な重量となる大きさになっている。具体的には、遮蔽板31は、幅1000mm、高さ200mm程度に形成されており、厚さ5mmの場合に、1枚の重量が9.15kg程度となる。このような遮蔽板31の重量であれば、2枚の遮蔽板31,31とフック50,50を合わせて、板状遮蔽材30の総重量が18.5kg程度となるので、人力で運搬可能である。なお、板状遮蔽材30の形状や重量は一例であって、適宜変更可能である。
【0037】
このような構成の遮蔽板31を形成するに際しては、まず、アルミニウム合金を圧延してケース状に形成されたスキン材内に、アルミニウム粉末とタングステン粉末とを混合させたコア材を充填する。このとき、タッピングを行いながら、コア材の空隙率を減少させる。その後、他方のスキン材で粉末を覆い、枠材で四周を囲む。その後、予熱、圧延、平坦化の手順で一体に熱間圧延する。最後に枠材を切断して、放射線の遮蔽性能を有する遮蔽板31が形成される。このような遮蔽板31では、コア材におけるタングステン粉末の混合量を増加すると、放射線の遮蔽性能が高くなる。遮蔽板31は、2枚合わせて必要な放射線遮蔽性能を得られる厚さに形成されている。なお、コア材に、ホウ素(B4C)粉末を追加すれば、さらに中性子線の遮蔽性能を付与することができる。
【0038】
フック50は、遮蔽板31の左右両端側にそれぞれ配置されている。フック50は、遮蔽材当接板部51と上部係止板部52と下部係止板部53とを備えてなる。
【0039】
遮蔽材当接板部51は、板状遮蔽材30の裏面に当接する部位であって、縦長の矩形形状を呈している。遮蔽材当接板部51の上端部と下端部には、ボルト孔(図示せず)がそれぞれ形成されている。遮蔽材当接板部51は、ボルトBおよびナットNを介して遮蔽板31に固定されている。ボルトBは、2枚の遮蔽板31,31と遮蔽材当接板部51のボルト孔を貫通しており、遮蔽板31,31と遮蔽材当接板部51を固定している。
【0040】
上部係止板部52は、突出部52aと垂下り部52bと傾斜部52cとを備えている。突出部52aは、遮蔽材当接板部51の上端部から後方に突出した部分である。垂下り部52bは、突出部52aの先端から下方に垂れ下がった部分である。傾斜部52cは、垂下り部52aの下端から後方に傾斜した部分である。傾斜部52cは、板状遮蔽材30を設置する際の上側の位置決めガイド(奥行き方向のガイド)の役目を果たす。遮蔽材当接板部51と垂下り部52aとの隙間寸法は、後記するフック受け部材70の上部受け部材72の立上り部72bの厚さ寸法と同等である。
【0041】
下部係止板部53は、突出部53aと垂下り部53bと傾斜部53cとを備えている。突出部53aは、遮蔽材当接板部51の下端部から後方に突出した部分である。垂下り部53bは、突出部53aの先端から下方に垂れ下がった部分である。傾斜部53cは、垂下り部53aの下端から後方に傾斜した部分である。傾斜部52cは、板状遮蔽材30を設置する際の下側の位置決めガイド(奥行き方向のガイド)の役目を果たす。遮蔽材当接板部51と垂下り部52bとの隙間寸法は、後記するフック受け部材70の下部受け部材73の立上り部73bと傾斜部73cが嵌まる寸法となっている。
【0042】
図4および
図8に示すように、フック受け部材70は、支柱部材11の表面(板状遮蔽材30に対向する面)に固定されている。フック受け部材70は、支柱部材11の長手方向に沿って所定ピッチ(板状遮蔽材30の高さ寸法と同じ長さのピッチ)で複数設けられている。フック受け部材70は、支柱当接板部71と上部受け板部72と下部受け板部73とを備えてなる。
【0043】
支柱当接板部71は、支柱部材11の表面に当接する部位であって、矩形形状を呈している。支柱当接板部71の上端部と下端部には、ビス孔(図示せず)がそれぞれ形成されている。ビス孔は、支柱当接板部71の左右幅方向中間部に形成されている。支柱当接板部71は、ビスVを介して支柱部材11に固定されている。ビスVは、支柱部材11の左右幅方向中間を貫通している。
【0044】
上部受け板部72は、突出部72aと立上り部72bとを備えている。突出部72aは、支柱当接板部71の上端部から前方に突出する部分である。立上り部72bは、突出部72aの先端から上方に立ち上がった部分である。立上り部72bと、フック50の上部係止板部52の垂下り部52aが互いに噛み合って、フック50の上部が係止される。上部受け板部72は、支柱当接板部71と同じ左右幅寸法を備えている。上部受け板部72の立上り部72bには、板状遮蔽材30側から見て、幅方向中央に凹部74が形成されている。凹部74の底辺部は、フック50の上部係止板部52が係止される部分である。凹部74の左右幅寸法は、2つの上部係止板部52が幅方向に並んで係止可能な長さである。凹部74の側辺部は、外側に傾斜しており、フック50を装着する際の位置決めガイド(左右方向のガイド)の役目を果たす。
【0045】
下部受け板部73は、突出部73aと立上り部73bと傾斜部73cとを備えている。突出部73aは、支柱当接板部71の下端部から前方に突出する部分である。立上り部72bは、突出部73aの先端から上方に立ち上がる。傾斜部53cは、立上り部73aの上端から前方に傾斜した部分である。傾斜部73cは、板状遮蔽材30を設置する際の下側の位置決めガイド(奥行き方向のガイド)の役目を果たす。
【0046】
以上説明したように、本実施形態に係る遮蔽構造体1によれば、上下方向に隣り合う板状遮蔽材30,30の段差部32,32同士が組み合わさることで、上下の板状遮蔽材同士が面一になる。これによって、支柱部材11に設けられたフック受け部材70に係止された状態で、板状遮蔽材30,30は上下方向において面一な状態を確保できる。
【0047】
さらに、横方向に隣り合う板状遮蔽材30,30の側部の段差部33,33同士が組み合わさることで、左右の板状遮蔽材同士が面一になる。これによって、フック受け部材70に係止された状態で、板状遮蔽材30,30は横方向においても面一な状態を確保できる。以上のように遮蔽構造体1によれば、上下左右の両方向で隙間なく板状遮蔽材30を設置することができ、壁面全体が面一となる。
【0048】
また、遮蔽板31,31の端部同士が前後で重なり合うことで、正面から見たときに板状遮蔽材30,30間に隙間が生じるのを防止できる。したがって、直線的に進行する放射線を確実に遮蔽することができ、放射線の遮蔽性能を向上することができる。
【0049】
さらに、2枚の遮蔽板31,31をずらして固定するだけで、容易に板状遮蔽材30の端部を段状に形成することができるので、板状遮蔽材30の加工手間が省略され製造の簡略化が達成できる。
【0050】
また、フック50を、遮蔽板31の両端側にそれぞれ配置したことによって、板状遮蔽材30を安定した状態で支柱部材11に係止することができる。さらに、フック受け部材70は、上部受け板部72と下部受け板部73とを備えているので、フック50を上下両方で係止することができる。これによって、板状遮蔽材30の係止状態を確実に確保できるとともに、上下でフック50を固定しているので安定度が増し、風などによるがたつきを防止できる。
【0051】
さらに、板状遮蔽材30は、骨組フレーム体10に対して前方から後方に押し込んだ後に下降させるだけで、容易に係止させることができる。さらに、フック受け部材70の高さ調整を行えば、板状遮蔽材30の取付高さを容易に調整できる。
【0052】
また、遮蔽板31は、表面のスキン材がアルミニウム合金にて形成されているので、耐食性、耐候性が良好である。加工性および耐食性に優れた遮蔽板を容易に形成することができる。
【0053】
板状遮蔽材30は、加工性に優れており、組立・解体も容易である。特に、現場にて骨組フレーム体10を組みたててしまえば、板状遮蔽材30の総重量が人力で運搬可能な重量であるので、骨組フレーム体10への組み付け作業を作業員が手作業で行うことが可能となる。なお、板状遮蔽材30の設置作業は、最下段から最上段に向かって、順次行う。また、遮蔽構造体1を解体する際にも、作業員が手作業で板状遮蔽材30を骨組フレーム体10から取り外すことができるので、作業が容易になる。
【0054】
また、コア材の粉末材料をホウ素(B4C)粉末変更することで、中性子線の遮蔽性能を確保できる。なお、タングステン粉末とホウ素(B4C)粉末を同時にアルミニウム粉末に混合させてもよい。
【0055】
さらに、骨組フレーム体10の支柱部材11および横部材16は、アルミニウム合金製の押出形材からなるので、強度や耐食性に優れた骨組フレーム体10とすることができる。また、アルミニウムの軽量性を生かした組み立て作業の容易化や、リサイクル性に優れた骨組フレーム体を提供することができる上に、設計の自由度が高く、あらゆるレイアウトに柔軟に対応することができる。
【0056】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。たとえば、前記実施形態では、骨組フレーム体10の支柱部材11および横部材16をアルミニウム合金製の押出形材で構成しているが、各部を構成する材料および形状は前記のものに限定されるものではない。たとえば、骨組フレーム体10を、押出形材以外のものを用いて構築してもよいし、他の形状のもの(押出形材も含む)を用いて構築してもよい。また、骨組フレーム体10は鋼材にて構成してもよい。鋼材を用いれば、剛性の高い骨組フレーム体10とすることができるとともに、汎用品を利用することで骨組フレーム体の製造コストを低減できる。
【0057】
また、前記実施形態では、板状遮蔽材30を地盤上に設置された骨組フレーム体10に取り付けた場合を例示したが、他のものにも利用可能である。たとえば、板状遮蔽材30をトラックの壁に取り付ければ、放射性物質の運搬手段としても利用できる。