(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6487670
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】ボールバルブ
(51)【国際特許分類】
F16K 5/06 20060101AFI20190311BHJP
E03D 11/13 20060101ALI20190311BHJP
【FI】
F16K5/06 C
F16K5/06 A
E03D11/13
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-225881(P2014-225881)
(22)【出願日】2014年11月6日
(65)【公開番号】特開2016-89971(P2016-89971A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】上野 聡志
【審査官】
松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2008/0283787(US,A1)
【文献】
特開2010−001964(JP,A)
【文献】
実公昭42−015520(JP,Y1)
【文献】
特開2012−237345(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 5/00 − 5/22
F16K 11/00 −11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータによりボール弁体を回転させることにより、バルブの開閉を行うものであって、バルブボディと該ボール弁体との間にリング状のボールシート及び該ボディと該ボールシートとの間に配置された弾性部材を有し、異物が混在する流体に用いられるボールバルブにおいて、
前記ボールシートは、前記ボール弁体と接触する接触凸部及び前記ボール弁体との間に所定の第1隙間を形成する延設部により構成されていること、
前記ボールシートは、一対のものであって、各々の前記ボールシートの間に所定の第2隙間が形成されていること、
前記ボールシートが摩耗しても前記弾性部材の弾力性で前記ボールシートが前記ボール弁体に押し付けられるので、シール性を維持することができること、
を特徴とするボールバルブ。
【請求項2】
請求項1に記載のボールバルブにおいて、
前記ボール弁体を回転させるとき、前記第1隙間に前記異物が侵入することがないこと、
を特徴とするボールバルブ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のボールバルブにおいて、
前記バルブボディを構成するバルブキャップは、前記ボール弁体側の内周端部に前記ボールシートの内周面と嵌合する凸部が形成されていること、
を特徴とするボールバルブ。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載のボールバルブにおいて、
前記異物は、トイレットペーパであり、
前記ボールバルブは、負圧により前記トイレットペーパを吸引する簡易トイレに用いられること、
を特徴とするボールバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータによりボール弁体を回転させることにより、バルブの開閉を行うものであって、ボディと該ボール弁体との間にリング状のボールシート及び該ボディと該ボールシートとの間に配置された弾性部材を有し、異物が混在する流体に用いられるボールバルブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
高齢化が進んだ現代では、介護を必要とする要介護者が増加する傾向にある。介護において、排泄は重要事項の一つである。
しかし、要介護者が排泄のためにトイレまで行くとき、転倒する恐れがあった。また、排泄のための付き添いが必要である場合、排泄物の後始末等、介護者に対し負担が大きくなっていた。これらを防止するため、介護ベッドの近くに設置する移動式簡易トイレの需要が高まっている。従来の簡易トイレは、においや後始末に対する問題があったが、近年、簡易トイレが普及し、においや後始末の問題を解消する水洗式の簡易トイレが開発されている。
【0003】
従来、この種の技術として、特許文献1に記載されるボールバルブの構造がある。ボールバルブは、ボールバルブの2次側にあるタンクを真空ポンプにより負圧にした状態で開閉動作を行う。これにより、排泄物やトイレットペーパは水とともにタンクへ吸引される。真空で吸引することにより、一挙にトイレットペーパ等を吸引することができるため、トイレットペーパ等を流すための水を必要最低限に抑えることができる。また、同じ容量のタンクで、トイレの使用可能回数を増やすことができ、介護者の負担を軽減させる。または、タンクを小型化することができ、限られたスペースに置く必要がある簡易トイレを小型化することができる。
また、このような簡易トイレは、小さい真空ポンプであっても、使用の際、一定の時間が経てばタンクへ吸引するための真空圧を保つことができる。そのため、真空ポンプを小さくすることができ、小型化だけでなく、コストを抑えることができる。
【0004】
従来技術であるボールバルブ110の構造を
図8に示す。
ボールバルブ110は、バルブ部111と、中空貫通孔103aを有するボール弁体103を制御するアクチュエータ部112とから構成されている。バルブ部111内には、ボール弁体103が配置され、ボール弁体103が、アクチュエータ部112内に有する図示しないアクチュエータにより、90度回転されることにより、バルブの開閉を行う。
【0005】
バルブ部111は、
図8に示すように、外形はバルブボディ本体104とバルブキャップ105により構成されている。バルブボディ本体104とバルブキャップ105の間には、ボールバルブ110の開閉を行うボール弁体103を中心に、左右に各々リング状のボールシート101A、101B、及びOリング102A、102Bが構成されている。ボールシート101A、101Bはポート付近にのみに形成されているため、バルブ部111内でボールシート101A、101Bとボール弁体103が形成する空間Pがある。ボールシート101A、101Bは、ボール弁体103とバルブボディ本体104の間を流体が漏れることを防止するため取付けられている。Oリング102A、102Bは、ボールシート101A、101Bをボール弁体103に押し当てて流体が漏れないようにするために取付けられている。
図9に示すように、バルブボディ本体104のアクチュエータ部112との接合面には、シャフト孔104aが形成されている。シャフト孔104aには、90度回転可能なシャフト107が挿入されている。シャフト107を挿入した際のシャフト孔104aとの空間には、流体の漏れを防止するためのOリング108がある。
【0006】
一方、液溜まりを問題とする分野では、特許文献2に記載されるボールバルブの構造がある。液溜まりを防止するため、余分な空間がなく、ボールシートがボール弁体のほぼ全面と摺動するように形成されている。このようなボールバルブは、液体が流れることしか想定されておらず、異物が流れることは想定されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010-1964号公報
【特許文献2】実用新案登録第2586250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来のボールバルブには、次のような問題があった。
すなわち、特許文献1に記載のボールバルブ110のうち、ボール弁体103が回転されることにより、流路が形成される状態を上面から見た作用図を時系列的に示した図を
図10に示す。
図10中(A)は弁閉状態で、(B)から(C)の弁開途中の状態を経て、(D)の弁開状態となる。
図10中(A)の弁閉状態から、ボール弁体103が回転し始めて(B)の状態となるとき、バルブ部111内でボールシート101とボール弁体103が形成する空間Pに流体が流れ込む。そのため、流体は流路を示す矢印X、Y、Zに分岐してしまう。さらにボール弁体103が(B)から(C)の状態に回転するとき、ボールバルブ110は、(A)の弁閉状態から約5秒で一気に(D)の弁開状態となる。そのため、矢印XとZに分岐した流体、特に便器内のトイレットペーパのような異物が、ボールシート101とボール弁体103との接触部付近M、Nで噛み込む恐れがある。
【0009】
一方、上記問題を解決するために、ボールシートがボール弁体の全体を覆う特許文献2の構造が考えられる。しかし、特許文献2に記載のボールバルブでは、ボールシートがボール弁体のほぼ全面を摺動するため、ボール弁体が回転するのに摺動抵抗が高い。摺動抵抗が高い場合、ボールバルブを回転させるためのモータを大きくすれば問題ない。しかし、真空ポンプやモータを大きくすると、コストがかかるため、介護ベッドの近くに設置する移動式簡易トイレに使用する場合には、費用等の面で困難となる恐れがある。
【0010】
本発明は、上記問題点を解決するためのものであり、ボールシートとボール弁体の空間に異物が噛み込むことを抑止する、低コストで耐異物性の高いボールバルブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のボールバルブは、上記課題を解決するために、次のような構成を有している。
(1)アクチュエータによりボール弁体を回転させることにより、バルブの開閉を行うものであって、バルブボディと該ボール弁体との間にリング状のボールシート及び該ボディと該ボールシートとの間に配置された弾性部材を有し、異物が混在する流体に用いられるボールバルブにおいて、前記ボールシートは、前記ボール弁体と接触する接触凸部及び前記ボール弁体との間に所定の第1隙間を形成する延設部により構成されていること、
前記ボールシートは、一対のものであって、各々の前記ボールシートの間に所定の第2隙間が形成されていること、前記ボールシートが摩耗しても前記弾性部材の弾力性で前記ボールシートが前記ボール弁体に押し付けられるので、シール性を維持することができること、を特徴とする。
(2)(1)に記載のボールバルブにおいて、前記ボール弁体を回転させるとき、前記第1隙間に前記異物が侵入することがないこと、を特徴とする。
【0012】
(3)(1)
又は(2)に記載のボールバルブにおいて、前記バルブボディを構成するバルブキャップは、前記ボール弁体側の内周端部に前記ボールシートの内周面と嵌合する凸部が形成されていること、を特徴とする。
(4)(1)乃至
(3)のいずれか1つに記載のボールバルブにおいて、前記異物は、トイレットペーパであり、前記ボールバルブは、負圧により前記トイレットペーパを吸引する簡易トイレに用いられること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のボールバルブは、次のような作用、効果を奏する。
(1)アクチュエータによりボール弁体を回転させることにより、バルブの開閉を行うものであって、バルブボディと該ボール弁体との間にリング状のボールシート及び該ボディと該ボールシートとの間に配置された弾性部材を有し、異物が混在する流体に用いられるボールバルブにおいて、前記ボールシートは、前記ボール弁体と接触する接触凸部及び前記ボール弁体との間に所定の第1隙間を形成する延設部により構成されていること、を特徴とするので、バルブボディ内でボールシートとボール弁体が形成する空間が狭いため、トイレットペーパ等の異物が侵入することを抑止することができ、ボールシートの接触凸部とボール弁体の間に異物が噛み込むことを抑止することができる。また、所定の第1隙間が形成されていることにより、ボール弁体が回転する際の摺動抵抗が小さく、モータを大きくする必要がないため、小型化するとともに、コストを抑えることができ、介護ベッドの近くに設置する移動式簡易トイレに使用することができる。
【0014】
(2)(1)に記載のボールバルブにおいて、前記ボール弁体を回転させるとき、前記第1隙間に前記異物が侵入することがないこと、を特徴とするので、バルブ部内でボールシートとボール弁体が形成する空間が狭いため、ボールシートの接触凸部とボール弁体の間に異物が噛み込むことを防止することができる。
【0015】
(3)(1)又は(2)に記載のボールバルブにおいて、前記ボールシートは、一対のものであって、各々の前記ボールシートの間に所定の第2隙間が形成されていること、を特徴とするので、ボールシートが摩耗してもOリングの弾性力でボールシートがボール弁体に押し付けられるので、シール性を維持することができる。
【0016】
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載のボールバルブにおいて、前記バルブボディを構成するバルブキャップは、前記ボール弁体側の内周端部に前記ボールシートの内周面と嵌合する凸部が形成されていること、を特徴とするので、ボール弁体が回転してもボールシートがずれることがなく、バルブキャップとボールシートの間に異物が侵入することを防ぐとともに、摺動抵抗の上昇を抑えることができる。
(5)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載のボールバルブにおいて、前記異物は、トイレットペーパであり、前記ボールバルブは、負圧により前記トイレットペーパを吸引する簡易トイレに用いられること、を特徴とするので、ボールシートとボール弁体の間の空間にトイレットペーパ等の異物が侵入することを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態のボールバルブの弁閉状態の断面図である。
【
図2】本実施形態のボールバルブの弁開状態の断面図である。
【
図7】本実施形態のボール弁体が回転されることにより、流路が形成される状態を上面から見た作用図を時系列的に示した図である。
【
図10】従来のボール弁体が回転されることにより、流路が形成される状態を上面から見た作用図を時系列で並べた図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を具体化したボールバルブについて、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に、ボールバルブ1の弁閉状態の断面図を示し、
図2に弁開状態の断面図を示す。
図3に、
図2のE−E断面図を示す。また、
図4に、ボールバルブ1の外観図を示す。
図5に、ボールシート7の平面図を示し、
図6に、
図5のF−F断面図を示す。なお、
図5及び
図6の一点鎖線は、一対のボールシート7A、7Bを配置したときの中心線を示している。また、
図7に、ボール弁体6が回転されることにより、流路が形成される状態を上面から見た作用図を時系列的に示した図を示す。
【0019】
ボールバルブ1は、
図1に示すように、バルブ部3と、ボール弁体6を制御するアクチュエータ部2とから構成されている。アクチュエータ部2内には、モータ15が設置されている。バルブ部3内には、中空貫通孔61を有し、外形が球形状のボール弁体6が配置されている。ボール弁体6の球状壁面を球状外周面62という。ボール弁体6が、モータ15により、回転されることにより、バルブの開閉を行う。
【0020】
バルブ部3の外郭は、バルブボディ本体4と、2つのバルブキャップ5A、5Bにより構成されている。バルブキャップ5Aには、入口ポート51Aが形成され、バルブキャップ5Bには、出口ポート51Bが形成されている。バルブボディ本体4とバルブキャップ5A、5Bの間には、ボールバルブ1の開閉を行うボール弁体6を中心に、左右に一対のリング状のボールシート7A、7B、及びOリング8A、8Bが取り付けられている。ボールシート7A、7Bは、ボール弁体6、バルブボディ本体4、及びバルブキャップ5により形成される内部空間に流体が漏れることを防止するため取付けられている。ボールシート7の材質は、フッ素系樹脂、特にフッ化エチレン樹脂(PTFE)である。
なお、Oリング8は、請求項に記載する「弾性部材」に相当する。また、バルブ部3の外郭を構成するバルブボディ本体4とバルブキャップ5は、請求項に記載する「バルブボディ」に相当する。
【0021】
ボールシート7A、7Bには、
図1、
図3及び
図6に示すように、ボール弁体6の球状外周面62と接触する接触凸部72A、72Bが各々形成されている。ボールシート7A、7Bには、ボール弁体6の球状外周面62を覆うように延設部71A、71Bが各々形成されている。ボールシート7A、7Bとボール弁体6は、接触凸部72A、72Bでのみ接触している。ボールシート7A、7Bは、アクチュエータ部2側を除き、延設部71A、71Bによりボール弁体6を覆うように形成されている。また、ボールシート7A、7Bとボール弁体6の間には、
図1及び
図3に示すように、所定の第1隙間Tがあり、直接的に接触していない。第1隙間Tは、ボール弁体6の外周外側において、液体は進入するが、トイレットペーパ等の異物は侵入することがないようにするために必要な最低限の大きさを有する。実際には、ボールバルブの大きさにより異なるが、本実施形態では、約0.5mm程度の大きさである。また、第1隙間Tがあることにより、ボール弁体6の回転時の摺動抵抗を抑えることができる。
ボールシート7A、7Bの延設部71A、71Bは、互いに接触することはなく、所定の第2隙間S(W=約1mm程度)が形成されている。第2隙間Sがあることにより、ボールシート7の摩耗が進行してもシール性を維持することができる。
【0022】
バルブキャップ5A、5Bのボール弁体6側の内周端部には、
図1に示すように、ボールシート7A、7Bの一部を覆うように流体の流れ方向に平行に凸部52A、52Bが形成されている。凸部52は、ボールシート7の内周面と隙間なく嵌合するように形成されている。そのため、ボール弁体6が回転してもボールシート7はずれることがない。また、凸部52は、バルブキャップ5とボールシート7との間に異物が侵入することを防ぐとともに、摺動抵抗の上昇を抑止する。また、バルブキャップ5A、5Bのボール弁体6側の外周には、凹部が形成されており、各々Oリング10A、10Bが取付けられる。Oリング10A、10Bにより、バルブボディ本体4とバルブキャップ5A、5Bの間から流体が漏れるのを防止する。
【0023】
バルブボディ本体4のアクチュエータ部2との接合面には、シャフト孔41が形成されている。シャフト孔41には、回転可能なシャフト9が挿入されている。シャフト9を挿入した際のシャフト9とシャフト孔41との間には、シャフトブッシュ11がある。シャフトブッシュ11には、外周に凹部が形成されており、Oリング12が取り付けられている。Oリング12により、バルブボディ本体4との間から流体が漏れるのを防止する。シャフト9には、外周に凹部が2つ形成されており、Oリング13が各々取り付けられている。Oリング13により、シャフトブッシュ11との間から流体が漏れるのを防止する。シャフト9の下方先端部にはシャフト係合凸部91があり、ボール弁体6のボール係合凹部63と嵌合している。シャフト9の上方先端部には、すり割り部が形成され、モータ15の出力軸の二面幅部と連結している。
【0024】
次に、本実施形態に係るボールバルブ1の作用について、
図7を用いて説明する。
図7の(A)に示すボールバルブ1の弁閉状態では、入口ポート51Aでボール弁体6の球状外周面62及びボールシート7Aに流路を遮られているため、流体は出口ポート51Bに流れることはできない。すなわち、ボール弁体6の球状外周面62に沿って流れようとする流体は、ボールシート7Aの接触凸部72Aと球状外周面62とが接触しているため、流れることができない。
【0025】
次に、
図7(A)の弁閉状態から、ボール弁体6が回転し始めて(B)の状態となるとき、主な流路は矢印Gで示す流路である。すなわち、入口ポート51Aからボールシート7側に流れたとしても、矢印G1、G2に示すように、ボールシート7にあたって最終的に矢印Gに合流する。第1隙間Tには、液体は進入するが、異物は侵入しない。そのため、ボール弁体6が回転したときに、トイレットペーパ等の異物がボール弁体6の外周外側に侵入することがない。よって、ボール弁体6が
図7(B)から(C)の状態へ回転するとき、ボールシート7の接触凸部72とボール弁体6の間にトイレットペーパ等の異物が噛み込むことはない。
【0026】
ここで、バルブ部3内でボールシート7とボール弁体6が形成する第1隙間T及び第2隙間Sは、
図10(B)に示す空間Pと比較して狭い。従来のボールバルブ110では、
図10(B)に示すように、弁開途中、ボールシート101A、101Bとボール弁体103の間の空間Pは大きいため、流体はボール弁体103の外周外側に流れ込み、流路は矢印X、Y、Zに分岐する。その結果、ボール弁体103が回転して
図10(C)の状態になると、ボールシート101とボール弁体103の接触部付近M、Nにおいて、トイレットペーパのような異物を噛み込んでしまう恐れがあった。
【0027】
一方、本実施形態のボールバルブ1では、第1隙間Tの大きさは、トイレットペーパがボール弁体6の外周外側を侵入することがないようにするために必要とする最低限の大きさを有するように設定されている。すなわち、本実施形態の第1隙間Tは、約0.5mm程度の大きさを有するため、トイレットペーパのような異物は侵入することができない。特に、便器内のトイレットペーパは重なり合い膨張するため、第1隙間Tに入り込むことはない。そのため、ボールシート7とボール弁体6の間に第1隙間Tがあっても、トイレットペーパ等の異物がボールシート7の接触凸部72とボール弁体6の間で噛み込まれることが抑止される。
【0028】
また、第1隙間Tには、水などの液体は入り込むが、粘性抵抗はない。そのため、第1隙間Tにより、ボール弁体6の回転時の摺動抵抗を抑えることができる。さらに、バルブキャップ5の凸部52はボールシート7の内周面と隙間なく嵌合しているので、バルブキャップ5とボールシート7の間に異物が侵入することにより生じる摺動抵抗を抑えるとともに、ボールシート7A、7B間に第2隙間Sがあることにより、ボールシート7が摩耗してもシール性を維持することができる。よって、ボール弁体6が回転する際の摺動抵抗が小さく、モータを大きくする必要がない。そのため、簡易用トイレを小型化するとともに、コストを抑えることができる。
【0029】
図7(D)に示すボールバルブ1の弁開状態では、ボール弁体6が90度回転することにより、ボール弁体6の中空貫通孔61が入口ポート51A、出口ポート51Bと一直線に貫通するため、入口ポート51Aから流れてくる流体が中空貫通孔61を通り出口ポート51Bへと流れる。流体がボール弁体6の中空貫通孔61を通過する際にも、ボール弁体6の球状外周面62に沿って流体が流れようとするが、ボールシート7の接触凸部72がボール弁体6の球状外周面62と接触しているため、流体の漏れを防止することができる。
【0030】
以上、説明したように、本実施形態のボールバルブ1によれば、
(1)アクチュエータ部2によりボール弁体6を回転させることにより、バルブの開閉を行うものであって、バルブキャップ5と該ボール弁体6との間にリング状のボールシート7及びバルブキャップ5とボールシート7との間に配置されたOリング8を有し、異物が混在する流体に用いられるボールバルブ1において、ボールシート7は、ボール弁体6と接触する接触凸部72及びボール弁体6との間に所定の第1隙間Tを形成する延設部71により構成されていること、を特徴とするので、バルブ部3内でボールシート7とボール弁体6が形成する空間が狭いため、その空間にトイレットペーパ等の異物が侵入することを抑止することができる。また、所定の第1隙間Tが形成されていることにより、ボール弁体6が回転する際の摺動抵抗が小さく、モータ15を大きくする必要がないため、小型化するとともに、コストを抑えることができ、介護ベッドの近くに設置する移動式簡易トイレに使用することができる。
【0031】
(2)(1)に記載のボールバルブ1において、ボール弁体6を回転させるとき、第1隙間Tにトイレットペーパ等の異物が侵入することがないこと、を特徴とするので、バルブ部3内でボールシート7とボール弁体6が形成する空間が狭いため、その空間にトイレットペーパ等の異物が噛み込むことを防止することができる。
【0032】
(3)(1)又は(2)に記載のボールバルブ1において、ボールシート7は、一対のものであって、各々のボールシート7の間に所定の第2隙間Sが形成されていること、を特徴とするので、ボールシート7が摩耗してもOリング8の弾性力でボールシート7がボール弁体6に押し付けられるので、シール性を維持することができる。
【0033】
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載のボールバルブ1において、バルブ部3を構成するバルブキャップ5は、ボール弁体6側の内周端部にボールシート7の内周面と嵌合する凸部52が形成されていること、を特徴とするので、ボール弁体6が回転してもボールシート7がずれることがなく、バルブキャップ5とボールシート7の間に異物が侵入することを防ぐとともに、摺動抵抗の上昇を抑えることができる。
(5)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載のボールバルブ1において、異物は、トイレットペーパであり、ボールバルブ1は、負圧によりトイレットペーパを吸引する簡易トイレに用いられること、を特徴とするので、ボールシート7とボール弁体6の間の空間にトイレットペーパ等の異物が侵入することを抑止することができる。
【0034】
なお、本実施形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で様々な改良、変形が可能である。
例えば、本実施形態では、ボールバルブ1を簡易トイレに用いているが、業務用の食器等の食洗機、食材を揚げるためのフライヤーなど、異物が混在する流体に用いることができる。
また、本実施形態では、Oリング8を用いているが、皿ばねを用いても良い。
さらに、本実施形態では、モータ15を用いているが、シンクロナスモータやコンデンサーモータ、又は空気圧アクチュエータでも良い。
【符号の説明】
【0035】
1 ボールバルブ
2 アクチュエータ部
3 バルブ部
4 バルブボディ本体
5 バルブキャップ
6 ボール弁体
7 ボールシート
8 Oリング
52 凸部
61 中空貫通孔
62 球状外周面
71 延設部
72 接触凸部
T 第1隙間
S 第2隙間