(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
金属基材と該金属基材の表面に形成された塗膜とを有する塗装体であって、該塗膜が、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む活性エネルギー線硬化性塗料により得られ、 前記活性エネルギー線硬化性塗料が、 (A)ラジカル重合性オリゴマーであって、該オリゴマーの硬化物のマルテンス硬度が40N/mm2より大きいオリゴマーと、(B)ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーであって、該オリゴマーの硬化物のマルテンス硬度が40N/mm2以下であるオリゴマーとを含み、 (A)ラジカル重合性オリゴマーと(B)ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの質量比(A/B)が85/15〜15/85であリ、 塗膜のマルテンス硬度が10〜250N/mm2であることを特徴とする塗装体。
前記(A)ラジカル重合性オリゴマーが、エステル系(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ系(メタ)アクリレートオリゴマー及びウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマーよりなる群から選択される少なくとも1種のオリゴマーであることを特徴とする請求項1又は2に記載の塗装体。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の塗装体を詳細に説明する。本発明の塗装体は、金属基材と該金属基材の表面に形成された塗膜とを有する塗装体であって、該塗膜が、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む活性エネルギー線硬化性塗料により得られ、塗膜のマルテンス硬度が10〜250N/mm
2であることを特徴とする。ここで、本発明の塗装体は、金属基材表面に形成される塗膜がウレタン結合を有し且つ該塗膜のマルテンス硬度が10〜250N/mm
2であるため、金属基材への塗膜の付着性、加工性及び耐油性に優れる塗膜を備える。このため、本発明の塗装体は、車両用金属部材、具体的には、自動車及び二輪車、トラック等の車両用エンジンブロック等に有用である。
【0019】
本発明において、マルテンス硬度とは、微小硬度計(例えばSHIMADZU製微小硬度計DUH−211)により115°三角錐圧子を使用して、温度20℃、50%相対湿度及び試験力2mNの条件で測定される値である。
【0020】
本発明の塗装体は、金属基材の表面に形成された塗膜のマルテンス硬度が、10〜250N/mm
2の範囲であることを要し、50〜230N/mm
2の範囲であることが好ましく、100〜230N/mm
2の範囲であることが更に好ましい。該塗膜のマルテンス硬度が10N/mm
2未満では、塗膜が柔軟になり塗膜に傷が付きやすく、耐油性が低下する恐れがある。一方、該塗膜のマルテンス硬度が250N/mm
2を超えると、塗膜が硬すぎるために、加工性に劣り、更には金属基材への付着性も低下し、衝撃により塗膜に割れが生じる恐れがある。
【0021】
本発明において、金属基材としては、特に限定されるものではないが、その形状は、例えば板状、シート状、箔状等である。また、該基材を構成する金属としては、鉄鋼、亜鉛めっき鋼、ステンレス鋼、マグネシウム合金、アルミニウム、アルミニウム合金等が挙げられ、中でも、鉄鋼が好ましい。更に、上記金属基材は、各種表面処理、例えば酸化処理が施されてもよい。一例として、アルマイト処理、リン酸塩処理、クロメート処理、ノンクロメート処理等の方法でアルミニウムに酸化処理を施した基材を用いることができる。なお、金属基材には、金属薄膜を表面に備える各種プラスチック基材(その形状は、例えば3次元の構造を持つ筐体及びフィルム等がある)も含まれる。金属の成膜には、蒸着、スパッタ、メッキ法等が利用できる。金属薄膜としては、アルミニウム、錫、亜鉛、金、銀、白金、ニッケル等の金属の薄膜が挙げられる。また、プラスチック基材としては、種々公知なものが使用でき、具体的には、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体)、PC(ポリカーボネート)、アクリル、PS(ポリスチレン)、MS(MMAとスチレンの共重合体)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PPS(ポリフェニレンスルフィド)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、TAC(トリアセチルセルロース)や、これらのポリマーアロイ等が挙げられる。更に、プラスチック基材上に金属薄膜を形成する前に、プラスチック基材上に種々プライマー処理を施しても良い。
【0022】
本発明の塗装体は、金属基材と該金属基材の表面に形成された塗膜とを備えるが、例えば、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む活性エネルギー線硬化性塗料を金属基材の表面に塗布し、その後、活性エネルギー線照射による硬化等により成膜させることによって製造できる。活性エネルギー線硬化性塗料の塗布方法としては、特に制限されず、スプレーコート、ディッピング、ロールコート、ダイコート、エアナイフコート、ブレードコート、スピンコート、リバースコート、グラビアコート、ワイヤーバー等の公知の塗工法や、グラビア印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷等の公知の印刷法が利用できる。また、形成される塗膜は、乾燥膜厚が20〜100μmであることが好ましい。
【0023】
また、上記活性エネルギー線硬化性塗料の硬化は、活性エネルギー線(可視光線、紫外線又は電子線等)の照射により引き起こされる化学反応によって行われる。ここで、活性エネルギー線源としては、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、エキシマレーザー、色素レーザー、LEDランプ等の紫外線源、並びに電子線加速装置等が使用できる。活性エネルギー線の照射エネルギー量(積算光量)は、200〜2,000mJ/cm
2であることが好ましい。
【0024】
また、本発明の塗装体において、上記塗膜は、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む活性エネルギー線硬化性塗料により得られることを要する。ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、分子内にウレタン結合を有するが、これによって、塗膜中にはウレタン結合間の水素結合による結晶部位(ハードセグメント)が存在することになり、耐油性が向上する。また、その他の非結晶部位(ソフトセグメント)により柔軟性が発現して付着性及び加工性が向上する。
【0025】
本発明において、塗膜の形成に用いる活性エネルギー線硬化性塗料(以下、単に本発明の塗料組成物とする)は、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含むことを要するが、塗膜のマルテンス硬度を10〜250N/mm
2の範囲に調整する観点から、本発明の塗料組成物は、(A)ラジカル重合性オリゴマーであって、該オリゴマーの硬化物のマルテンス硬度が40N/mm
2より大きいオリゴマーと、(B)ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーであって、該オリゴマーの硬化物のマルテンス硬度が40N/mm
2以下であるオリゴマーとを含み、(A)ラジカル重合性オリゴマーと(B)ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの質量比(A/B)が85/15〜15/85であることが好ましい。
【0026】
上記(A)ラジカル重合性オリゴマーは、該オリゴマーの硬化物のマルテンス硬度が40N/mm
2より大きいオリゴマーである。ここで、ラジカル重合性オリゴマーとは、活性エネルギー線照射により発生したラジカル種と反応性を示す官能基を有するオリゴマーである。上記(A)ラジカル重合性オリゴマーを配合することにより、塗膜が緻密になりやすくなり、耐油性が良好になり、更に擦り傷が付きにくくなる。
【0027】
本発明において、マルテンス硬度とは、微小硬度計(例えばSHIMADZU製微小硬度計DUH−211)により115°三角錐圧子を使用して、温度20℃、50%相対湿度及び試験力2mNの条件で測定される値である。また、マルテンス硬度の測定に用いられる(A)ラジカル重合性オリゴマーの硬化物は、(A)ラジカル重合性オリゴマー100質量部に対して光重合開始剤10質量部を配合してなる混合物を調製し、脱脂処理を行ったSPCC−SD(冷延鋼板)上で、乾燥膜厚が40μmになるように該混合物を塗布して、水銀ランプ(358mW/cm
2)を用いて、295mJ/cm
2の照射光量を5回照射することで形成される(積算光量:1,475mJ/cm
2)。なお、積算光量の測定には、岩崎電気株式会社製 EYE UV METER UVPF―A1(365nm)を使用できる。また、上記混合物には、酢酸エチル等の乾燥炉で容易に取り除くことができる沸点が80℃以下の有機溶剤を加えてもよい。なお、上記(A)ラジカル重合性オリゴマーは、該オリゴマーの硬化物のマルテンス硬度が40N/mm
2より大きいことを要するが、200N/mm
2以下であることが好ましい。
【0028】
上記(A)ラジカル重合性オリゴマーは、特に限定されないが、数平均分子量が500〜10,000であることが好ましく、耐油性、耐擦り傷性等の塗膜物性の観点から数平均分子量が500〜3,000の範囲であることが更に好ましい。なお、数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーで測定されるポリスチレン換算の数平均分子量である。
【0029】
上記(A)ラジカル重合性オリゴマーは、活性エネルギー線照射時に反応性を示す官能基を1つ以上有する限り特に限定されるものではないが、塗膜の加工性及び耐油性の観点から、官能基数が2〜6の範囲であることが好ましい。官能基数が2未満では、膜の架橋密度が低下して耐油性が低下し易くなり、一方、6を超えると、架橋密度が高くなりすぎるため、加工性が低下する場合がある。ここで、活性エネルギー線照射時に反応性を示す官能基としては、アクリロイルオキシ基(CH
2=CHCOO−)やメタクリロイルオキシ基(CH
2=C(CH
3)COO−)が好ましい。
【0030】
本発明の塗料組成物中において、上記(A)ラジカル重合性オリゴマーの含有量は、5〜50質量%であることが好ましい。
【0031】
本発明の塗料組成物において、(A)ラジカル重合性オリゴマーと、後述する(B)ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの質量比(A/B)は、塗膜の加工性及び耐油性の観点から、85/15〜15/85であることが好ましく、塗膜の加工性及び耐油性をより改善する観点から、85/15〜40/60であることが更に好ましい。(A)ラジカル重合性オリゴマーと(B)ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの合計に占める(A)ラジカル重合性オリゴマーの割合が85質量%を超えると、塗膜の加工性が低下し、一方、該(A)ラジカル重合性オリゴマーの割合が15質量%未満では、耐油性が低下する。なお、(B)ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを使用せず、(A)ラジカル重合性オリゴマーのみを使用した場合(即ち質量比(A/B)が100/0)である場合、活性エネルギー線の照射に伴い膜の内部応力が大きくなるため、金属基材への付着性及び加工性が低下する。
【0032】
上記(A)ラジカル重合性オリゴマーとしては、エステル系(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ系(メタ)アクリレートオリゴマー及びウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマー等が挙げられる。また、上記(A)ラジカル重合性オリゴマーは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0033】
エステル系(メタ)アクリレートオリゴマーは、例えば、多塩基酸又はその酸無水物と多価アルコールから合成される水酸基含有ポリエステルと(メタ)アクリル酸を反応させることによって得られるエステル系(メタ)アクリレートオリゴマーが挙げられる。ここで、多塩基酸としては、フタル酸、コハク酸、アジピン酸、グルタル酸、セバチン酸、イソセバチン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ダイマー酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ピメリン酸、アゼライン酸等が挙げられる。また、多価アルコールとしては、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。
【0034】
エポキシ系(メタ)アクリレートオリゴマーは、例えば、エポキシ樹脂(好ましくは脂環式エポキシ樹脂)に(メタ)アクリル酸を付加させることによって得られる(メタ)アクリル酸変性エポキシ樹脂が挙げられる。ここで、変性に供されるエポキシ樹脂は、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS又はフェノールボラックと、エピクロルヒドリンとを反応させることによって得られる。また、変性に供される脂環式エポキシ樹脂は、例えば、シクロペンタジエンオキシド又はシクロヘキセンオキシドと、エピクロルヒドリンとを反応させることによって得られる。
【0035】
ウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマーは、例えば、イソシアネート化合物とポリオール化合物とヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート化合物とを反応させることによって得られるウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマーが挙げられる。ここで、イソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が挙げられる。また、ポリオール化合物としては、水素化ビスフェノールAとエチレンオキサイドとの付加物、水素化ビスフェノールA、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン等が挙げられる。ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート化合物としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸の水酸基含有アルキルエステルが挙げられる。
【0036】
上記(B)ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、該オリゴマーの硬化物のマルテンス硬度が40N/mm
2以下であるオリゴマーである。上記(B)ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、該オリゴマーの硬化物のマルテンス硬度が40N/mm
2以下であるため、金属に対する付着性及び加工性を向上させることができる。なお、(B)ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの硬化物は、マルテンス硬度が0.2〜40N/mm
2の範囲であることが好ましく、0.3〜10N/mm
2の範囲であることがより好ましい。該マルテンス硬度が0.2N/mm
2未満では、膜が柔軟になりすぎ、塗膜表面に傷がつきやすく、耐油性等の塗膜性能が低下する恐れがある。
【0037】
本発明において、マルテンス硬度とは、微小硬度計(例えばSHIMADZU製微小硬度計DUH−211)により115°三角錐圧子を使用して、温度20℃、50%相対湿度及び試験力2mNの条件で測定される値である。また、マルテンス硬度の測定に用いられる(B)ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの硬化物は、(B)ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー100質量部に対して光重合開始剤10質量部を配合してなる混合物を調製し、脱脂処理を行ったSPCC−SD(冷延鋼板)上で、乾燥膜厚が40μmになるように該混合物を塗布して、水銀ランプ(358mW/cm
2)を用いて、295mJ/cm
2の照射光量を5回照射することで形成される(積算光量:1,475mJ/cm
2)。なお、積算光量の測定には、岩崎電気株式会社製 EYE UV METER UVPF―A1(365nm)を使用できる。また、上記混合物には、酢酸エチル等の乾燥炉で容易に取り除くことができる沸点が80℃以下の有機溶剤を加えてもよい。
【0038】
上記(B)ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、数平均分子量が800〜15,000の範囲であることが好ましく、1,000〜10,000の範囲であることがより好ましい。該数平均分子量が800未満では、膜の柔軟性が低下し易いため、金属に対する付着性及び加工性が低下する場合があり、一方、15,000より大きい場合、膜が柔軟になりすぎ、塗膜の擦り傷性及び耐油性が低下する恐れがある。なお、数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーで測定されるポリスチレン換算の数平均分子量である。
【0039】
上記(B)ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、活性エネルギー線照射時に反応性を示す官能基として、アクリロイルオキシ基(CH
2=CHCOO−)又はメタクリロイルオキシ基(CH
2=C(CH
3)COO−)を1つ以上有するが、官能基数が2〜6の範囲であることが好ましい。官能基数が2未満では、硬化性が低下し、塗膜の耐油性が低下する傾向にあり、一方、6を超えると、膜の柔軟性が低下し易いため、金属に対する付着性及び加工性が低下する場合がある。
【0040】
上記(B)ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、分子内にウレタン結合を有するが、これによって、ウレタン結合間の水素結合による結晶部位(ハードセグメント)が存在することになり、耐油性が向上する。また、その他の非結晶部位(ソフトセグメント)により柔軟性が発現して付着性および加工性が向上する。ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、上述したように、例えば、イソシアネート化合物とポリオール化合物とヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート化合物とを反応させることによって得られる。
【0041】
本発明の塗料組成物中において、上記(B)ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの含有量は、5〜70質量%であることが好ましく、5〜40質量%であることがより好ましい。(B)ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの含有量が5質量%未満では、活性エネルギー線の照射に伴い膜の内部応力が大きくなるため、金属基材への付着性及び加工性が低下する場合がある。一方、70質量%を超えると、耐水性、耐湿性、耐油性等の塗膜物性が低下し、更には、膜が柔軟になりすぎ、膜に傷がつきやすくなる。また、上記(B)ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0042】
本発明の塗料組成物は、更に(C)ラジカル重合性酸モノマーを含むことが好ましく、該(C)ラジカル重合性酸モノマーの含有量は0.5〜10.0質量%であることが好ましい。(C)ラジカル重合性酸モノマーを用いることにより、金属基材への付着性を向上させることができるが、(C)ラジカル重合性酸モノマーの含有量が0.5質量%未満では、金属に対する付着性の向上効果が不十分である。また、(C)ラジカル重合性酸モノマーの含有量が10.0質量%を超えると、耐湿性等の塗膜物性が低下する。
【0043】
なお、(C)ラジカル重合性酸モノマーとは、活性エネルギー線照射時に反応性を示す官能基と酸基とを有するモノマーである。ここで、活性エネルギー線照射時に反応性を示す官能基としては、アクリロイルオキシ基(CH
2=CHCOO−)やメタクリロイルオキシ基(CH
2=C(CH
3)COO−)が好ましい。また、酸基としては、例えばスルホン酸基、リン酸基、カルボン酸基等が挙げられる。
【0044】
上記(C)ラジカル重合性酸モノマーは、酸価が5〜800mgKOH/gであることが好ましく、50〜400mgKOH/gの範囲であることが更に好ましい。酸価が5mgKOH/g未満では、金属に対する付着性が不十分である場合があり、一方、800mgKOH/gを超えると、塗膜が水分を保持し易くなるため、金属がさび易くなり、耐湿性等の塗膜物性が低下する場合がある。なお、酸価とは試料1gを中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数である。
【0045】
上記(C)ラジカル重合性酸モノマーとしては、リン酸基含有(メタ)アクリレート、カルボン酸基含有(メタ)アクリレート、スルホン酸基含有(メタ)アクリレート等が挙げられるが、中でもリン酸基含有(メタ)アクリレートであることが好ましい。リン酸基含有(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、ジメチルホスフェートエチルアクリレート、ジエチルホスフェートエチルアクリレート、2−アクリロイルオキシエチルリン酸、ビスアクリロイルオキシエチルホスフェート、トリスアクリロイルオキシエチルホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルリン酸、ビスメタクリロイルオキシエチルホスフェート、エトキシ化リン酸トリ(メタ)アクリレートが挙げられる。カルボン酸基含有(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、ピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレ−ト、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリル酸エステル、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジまたはモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−アクリロイルヘキサヒドロエチルコハク酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノアクリレート、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、2−メタクロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクロイルオキシエチルフタル酸、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピルフタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルフタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリル酸安息香酸エステルが挙げられる。スルホン酸基含有(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸が挙げられる。また、サートマー社製CD9050、CD9051、CD9053、共栄社化学株式会社製HOA−MS(N)、ダイセル・オルネクス株式会社製β−CEA等が市販されている。上記(C)ラジカル重合性酸モノマーは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0046】
本発明の塗料組成物は、更に、(D)酸化物微粒子を含むことが好ましい。酸化物微粒子を添加することで、耐油性が顕著に向上する傾向を示す。耐油性が顕著に向上する理由は定かではないが、酸化物微粒子を添加することで膜の内部応力が低下して金属との付着がより強固になったこと、更には、酸化物微粒子が塗膜中に分散していることで、油成分が膜内部へ浸入することを防止していることが要因として挙げられる。
【0047】
上記(D)酸化物微粒子としては、平均粒子径が1nm〜100nmの範囲で透明性が高いものが挙げられ、例えば、乾式シリカ、湿式シリカ等のシリカ微粒子、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化錫、酸化セリウム、酸化アンチモン、インジウム錫混合酸化物及びアンチモン錫混合酸化物、酸化アルミニウム等の金属酸化物微粒子等が挙げられるが、中でも、酸化アルミニウム微粒子がより好ましい。
【0048】
上記(D)酸化物微粒子は、透明性、硬化性及び耐油性の観点から、その平均粒子径が10〜50nmであることが好ましい。粒子の粒子径が大きくなると、硬化に使用する光の透過率が低下し、膜の硬化性に悪影響を及ぼし、更に表面に凹凸ができるため膜の光沢が低下する傾向にある。なお、(D)酸化物微粒子の平均粒子径は、粒子のブラウン運動の速度を利用した動的光散乱法によって測定できる。
【0049】
本発明の塗料組成物中において、上記(D)酸化物微粒子の含有量は、1.0〜6.0質量%であることが好ましい。該(D)酸化物微粒子の含有量が1.0質量%未満では、油成分が膜内部へ侵入して耐油性が低下する場合があり、一方、6.0質量%を超えると、膜の硬化性が低下するために耐油性等の塗膜物性が低下する場合や、更には塗膜表面に凹凸ができるため膜の光沢が低下する場合もある。なお、上記(D)酸化物微粒子は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0050】
同様に、本発明の塗装体においては、上記塗膜が、平均粒子径が1nm〜100nmの範囲である(D)酸化物微粒子を含むことが好ましく、(D)酸化物微粒子の平均粒子径は10〜50nmの範囲であることが更に好ましい。なお、塗膜中の(D)酸化物微粒子の含有量は1.0〜20.0質量%であることが好ましく、1.0〜6.0質量%であることがより好ましい。
【0051】
本発明の塗料組成物は、更に、(E)着色顔料、体質顔料及び防錆顔料よりなる群から選択される少なくとも1種の顔料を含んでもよい。ここで、顔料は、一般的に無機顔料と有機顔料に分類され、無機顔料には無機酸化物の一部も含まれ得るが、上述の(D)酸化物微粒子は、平均粒子径が1nm〜100nmの範囲で透明性が高いものであるのに対し、無機顔料に属する無機酸化物は、通常、平均粒子径が100nmを超え且つ10μm以下の範囲であり、上記(D)酸化物微粒子とは異なる成分である。なお、ここでいう無機顔料に属する無機酸化物の平均粒子径は、レーザー回折・散乱法により測定できる。上記着色顔料としては、白色顔料(酸化チタン等)、黒色顔料(カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、ボーンブラック、黒鉛、鉄黒、アニリンブラック等)、黄色顔料(黄色酸化鉄、チタンイエロー、モノアゾイエロー、縮合アゾイエロー、アゾメチンイエロー、ビスマスバナデート、ベンズイミダゾロン、イソインドリノン、イソインドリン、キノフタロン、ベンジジンイエロー、パーマネントイエロー等)、橙色顔料(パーマネントオレンジ等)、赤色顔料(赤色酸化鉄、ナフトールAS系アゾレッド、アンサンスロン、アンスラキノニルレッド、ペリレンマルーン、キナクリドン系赤顔料、ジケトピロロピロール、ウォッチングレッド、パーマネントレッド等)、紫色顔料(コバルト紫、キナクリドンバイオレット、ジオキサジンバイオレット等)、青色顔料(コバルトブルー、フタロシアニンブルー、スレンブルー等)、緑色顔料(フタロシアニングリーン等)等を挙げることができる。なお、これら着色顔料は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、体質顔料としては、タルク、クレー、シリカ、マイカ、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ガラスビーズ等を挙げることができる。なお、これらの体質顔料は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、防錆顔料としては、酸化亜鉛、リン酸亜鉛、リン・ケイ酸亜鉛、リン酸アルミニウム、リン酸アルミニウム亜鉛、リン酸カルシウム亜鉛、亜リン酸亜鉛、亜リン酸カルシウム、亜リン酸アルミニウム、シアナミド亜鉛カルシウム、亜鉛処理されたポリリン酸アルミニウム、トリポリリン酸二水素アルミニウム、モリブデン酸亜鉛カルシウム、モリブデン酸亜鉛、リンモリブデン酸亜鉛、リンモリブデン酸アルミニウム等を挙げることができる。なお、これら防錆顔料は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。本発明の塗料組成物中において、上記(E)顔料の含有量は、0.1〜45.0質量%であることが好ましく、10〜45.0質量%であることが更に好ましい。
【0052】
同様に、本発明の塗装体においては、上記塗膜が、(E)着色顔料、体質顔料及び防錆顔料よりなる群から選択される少なくとも1種の顔料を含んでもよいが、塗膜中の(E)顔料の含有量は0.1〜45.0質量%であることが好ましく、10〜45.0質量%であることが更に好ましい。
【0053】
本発明の塗料組成物は、必要に応じて、光重合開始剤を含むことができる。上記光重合開始剤としては、α−アミノケトン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、フォスフィンオキサイド系化合物等が挙げられるが、硬化性の観点から、照射する活性エネルギー線の波長と光重合開始剤の吸収波長ができるだけ重複するものが好ましい。更に、光重合開始剤の開始反応を促進させるため、光増感剤等の助剤を併用することも可能である。
【0054】
上記光重合開始剤の具体例としては、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンゾフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチル−ベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルーフォスフィンオキサイド、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等が挙げられる。これらの中でも、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイドが、塗料の硬化性の観点から好ましい。なお、これら光重合開始剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
上記光重合開始剤の市販品としては、Irgacure184、369、651、500(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製 商品名);LucirinLR8728、Irgacure819、LucirinTPO(BASF社製 商品名);Darocure1116、1173(以上、メルク社製 商品名);ユベクリルP36(UCB社製 商品名)等が挙げられる。
【0056】
本発明の塗料組成物中において、上記光重合開始剤の含有量は、例えば2.0〜10.0質量%であることが好ましい。
【0057】
本発明の塗料組成物には、その他の成分として、本発明の目的を害しない範囲内で、ラジカル重合性単官能モノマー(フェノキシエチルアクリレート等)、顔料分散剤、表面調整剤、増粘剤、消泡剤、レベリング剤等の各種添加剤を配合することができ、更には、耐候性の向上を目的として紫外線吸収剤や酸化防止剤を配合することができる。
ラジカル重合性単官能モノマーは、活性エネルギー線照射時に反応性を示す官能基を1つ有するが酸基を有しないモノマーであり、塗料組成物の粘度調整や、上記ラジカル重合性オリゴマーの溶解性、基材に対する付着性、塗膜の加工性、更には顔料の分散性を向上させるために配合しても良く、その配合量は、塗料組成物中20〜60質量%であることが好ましい。中でも、上記ラジカル重合性オリゴマーの溶解性、基材に対する付着性、塗膜の加工性、更には顔料の分散性の観点からフェノキシエチルアクリレートが好適である。
本発明の塗料組成物は、有機溶剤を含まないことが好ましいが、必要に応じて有機溶剤を配合しても構わない。
【0058】
本発明の塗料組成物は、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと、必要に応じて適宜選択される各種成分とを混合して調製できる。
【実施例】
【0059】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0060】
(組成物1〜9及び12〜14)
表1〜3に示す配合処方に従い、各成分を混合し、約10分間ディスパーで攪拌することによって、各組成物を調製した。
【0061】
(組成物10)
表2に示す配合処方に従い、ライトアクリレートPO−AにTEGO DISPERSE685を溶解させた溶液に、着色顔料と防錆顔料を添加して、約10分間ディスパーを用いて攪拌することで粗練合物を作製した。次いで、その粗練合物をチタニアビーズを用いてペイントシェーカーで練合を行うことで練合物を作製し、該練合物に、その他の成分であるオリゴマー、酸モノマー、光重合開始剤、表面調整剤を混合して、約10分間ディスパーで攪拌することで組成物10を調製した。
【0062】
(組成物11)
表2に示す配合処方に従い、ライトアクリレートPO−AにTEGO DISPERSE685を溶解させた溶液に、着色顔料を添加して、約10分間ディスパーを用いて攪拌することで粗練合物を作製した。次いで、その粗練合物をチタニアビーズを用いてペイントシェーカーで練合を行うことで練合物を作製し、該練合物に、その他の成分であるオリゴマー、酸モノマー、体質顔料、光重合開始剤、表面調整剤を混合して、約10分間ディスパーで攪拌することで組成物11を調製した。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
【表3】
【0066】
表1〜3に記載される材料の詳細を以下に記載する。
EBECRYL 812;ダイセル・サイテック株式会社製エステル系アクリレートオリゴマー(硬化物のマルテンス硬度171.1N/mm
2、官能基数4、ポリスチレン換算数平均分子量800)
EBECRYL 3500;ダイセル・サイテック株式会社製エポキシ系アクリレートオリゴマー(硬化物のマルテンス硬度127.2N/mm
2、官能基数2、ポリスチレン換算数平均分子量850)
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー1;SARTOMER製CN9004(硬化物のマルテンス硬度0.77N/mm
2、ポリスチレン換算数平均分子量9600、官能基数2)
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー2;SARTOMER製CN966J75(硬化物のマルテンス硬度0.36N/mm
2、ポリスチレン換算数平均分子量6900、官能基数2)
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー3;SARTOMER製CN991(硬化物のマルテンス硬度5.09N/mm
2、ポリスチレン換算数平均分子量1200、官能基数2)
酸モノマー1;共栄社化学株式会社製ライトエステルP−1M(2−メタクリロイロキシエチルアシッドホスフェート)
酸モノマー2;共栄社化学株式会社製ライトアクリレートP−1A(N)(2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート)
NANOBYK-3602;ビックケミー製酸化アルミニウム粒子(酸化物微粒子)の分散体(酸化アルミニウム粒子の含有量30質量%、平均粒子径:40nm)
着色顔料;エポニックデグサ製プリンテックスV カーボンブラック(平均一次粒子径25nm)
体質顔料;マコー株式会社製EMB−20(ガラスビーズ)(粒径範囲 2〜20μm)
防錆顔料;テイカ株式会社製K‐WHITE#105(リン酸アルミニウム)(平均粒子径1.6μm)
ライトアクリレートPO−A;共栄社化学製フェノキシエチルアクリレート
TEGO DISPERSE685;TEGO製変性ポリエステル系分散剤
Darocur1173;BASF製重合開始剤、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン
Lucirin TPO;BASF製重合開始剤、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド
表面調整剤;ビックケミー製BYK−UV3500(アクリル基を有するポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン)
【0067】
<成分(A)の硬化物のマルテンス硬度の測定方法>
(A)ラジカル重合性オリゴマー100質量部に対して光重合開始剤Darocur1173及びLucirin TPOをそれぞれ5質量部配合し、次いで希釈のために酢酸エチル(溶剤)50質量部を配合してクリヤー溶液を調製した。そのクリヤー溶液を、脱脂処理を行ったSPCC−SD(冷延鋼板)上で、乾燥膜厚が40μmになるように塗布して、80℃にて20分間乾燥炉で溶剤を乾燥させ、その後、水銀ランプ(358mW/cm
2)を用いて、295mJ/cm
2の照射光量を5回照射することで、硬化物(塗膜)を形成させた(積算光量:1,475mJ/cm
2)。なお、積算光量の測定には、岩崎電気株式会社製 EYE UV METER UVPF―A1(365nm)を用いた。次に、SHIMADZU製ダイナミック超微小硬度計(圧子 115°三角錐)DUH-211を用いて、温度20℃、50%相対湿度及び試験力2mNの条件で、得られた塗膜のマルテンス硬度を測定した。
【0068】
<成分(B)の硬化物のマルテンス硬度の測定方法>
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー100質量部に対して光重合開始剤Darocur1173及びLucirin TPOをそれぞれ5質量部配合し、次いで希釈のために酢酸エチル(溶剤)50質量部を配合してクリヤー溶液を調製した。そのクリヤー溶液を、脱脂処理を行ったSPCC−SD(冷延鋼板)上で、乾燥膜厚が40μmになるように塗布して、80℃にて20分間乾燥炉で溶剤を乾燥させ、その後、水銀ランプ(358mW/cm
2)を用いて、295mJ/cm
2の照射光量を5回照射することで、硬化物(塗膜)を形成させた(積算光量:1,475mJ/cm
2)。なお、積算光量の測定には、岩崎電気株式会社製 EYE UV METER UVPF―A1(365nm)を用いた。次に、SHIMADZU製ダイナミック超微小硬度計(圧子 115°三角錐)DUH-211を用いて、温度20℃、50%相対湿度及び試験力2mNの条件で、得られた塗膜のマルテンス硬度を測定した。
【0069】
<試験板の作製>
上記組成物1〜14を、脱脂処理を行ったSPCC−SD(冷延鋼板)又はPB-3100(リン酸塩処理鋼板)の表面に、乾燥膜厚が40μmになるように塗布して、水銀ランプ(286mW/cm
2)を用いて、295mJ/cm
2の照射光量を3回照射することで、塗膜を形成し(積算光量:885mJ/cm
2)、試験板を作製した。なお、積算光量の測定には、岩崎電気株式会社製 EYE UV METER UVPF―A1(365nm)を用いた。
【0070】
<塗膜評価>
得られた塗膜のマルテンス硬度を測定すると共に、付着性、加工性、耐油性及び耐湿性の評価を以下のように行った。結果を表4〜6に示す。
【0071】
<付着性>
JIS K5600−5−6(クロスカット法)に従い、2mm間隔100マス目を作製して、セロハンテープ剥離試験を行い、マス目の残存率より評価した。
【0072】
<加工性>
1.0cm×7.5cmに切断した試験板の両端が接触するまで折り曲げ、その折り曲げ部分の塗膜の割れ及び剥離を目視で評価した。
◎;折り曲げ部分を爪で強く削っても、塗膜の割れ及び剥離は全くない。
○;塗膜の割れ及び剥離はないが、折り曲げ部分を爪で強く削ると、わずかに塗膜が剥離する。
△;わずかに塗膜の割れ及び剥離がある。
×;折り曲げ部分の全面に塗膜の割れ及び剥離あり。
【0073】
<耐油性>
50℃に保ったブレーキオイル中に、試験板を24時間浸漬させ、その後の塗膜の状態を目視及び指触で評価した。
◎;光沢及び塗膜の硬さが全く変化していない。
○;目視による光沢の変化は確認できないが、塗膜を爪で削るとわずかに傷がつく。
△;塗膜が少し軟化している。
×;塗膜が軟化して基材から剥離している。
【0074】
<耐湿性>
JIS K5600−7−2.5に準じた試験方法を48時間行い、その後、上述の付着性試験を実施し、塗膜の外観及び付着性の評価結果に基づき、耐湿性を下記の基準で評価した。
○:塗膜外観に異常はなく、付着性試験におけるマス目の残存率が100%である。
△:塗膜外観において僅かな光沢の低下が見られるが、付着性試験におけるマス目の残存率が100%である。
×:塗膜外観にフクレ、ワレ等の著しい異常が見られるか、又は付着性試験においてマス目の剥離が認められる。
【0075】
<塗膜のマルテンス硬度>
SHIMADZU製ダイナミック超微小硬度計(圧子 115°三角錐)DUH-211を用いて、温度20℃、50%相対湿度及び試験力2mNの条件で、得られた塗膜のマルテンス硬度を測定した。
【0076】
表4及び5の結果より、実施例1〜12の塗装体は、金属に対する付着性が良好であり、加工性及び耐油性にも優れることが分かる。一方、比較例1では、塗膜のマルテンス硬度が10〜250N/mm
2の範囲内であるものの、該塗膜の形成に用いた塗料にウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが含まれていないため、金属に対する付着性、加工性及び耐油性が十分ではなかった。また、比較例2では、塗料にウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを用いたが、塗膜のマルテンス硬度が10N/mm
2未満であるため、耐油性が低く、耐湿性も低い結果を示した。比較例3では、塗膜のマルテンス硬度が250N/mm
2を超えており、金属に対する付着性、加工性及び耐油性が十分ではなかった。
【0077】
【表4】
【0078】
【表5】
【0079】
【表6】