特許第6487721号(P6487721)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6487721平行グリッパ式把持装置及びその制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6487721
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】平行グリッパ式把持装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/08 20060101AFI20190311BHJP
【FI】
   B25J15/08 C
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-42185(P2015-42185)
(22)【出願日】2015年3月4日
(65)【公開番号】特開2016-159411(P2016-159411A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2018年2月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100100011
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 省三
(72)【発明者】
【氏名】高山 俊男
(72)【発明者】
【氏名】小俣 透
【審査官】 田村 耕作
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−012291(JP,A)
【文献】 特開平05−318372(JP,A)
【文献】 実開平01−174750(JP,U)
【文献】 特開2011−245568(JP,A)
【文献】 特開2007−050460(JP,A)
【文献】 特開2010−023185(JP,A)
【文献】 特開平07−276278(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主台座と、
前記主台座上に移動可能に設けられ、第1、第2の突起を有する第1の台座と、
前記主台座上に移動可能に設けられ、前記各第2、第1の突起に対応した第3、第4の突起を有する第2の台座と、
前記第1の台座に嵌め込められた第1の送りねじと、
前記第2の台座に嵌め込められた第2の送りねじと、
前記第1の送りねじに第1のナットを介して取付けられた第1のグリッパと、
前記第2の送りねじに第2のナットを介して取付けられた第2のグリッパと、
前記第1、第2の送りねじを同時に駆動して前記第1、第2のグリッパを対称的に移動させるための第1のモータと、
前記第1、第2の突起間かつ前記第3、第4の突起間の前記主台座上に移動可能に設けられた第3の台座と、
前記第3の台座上に設けられた第2のモータと、
前記第2のモータによって駆動され前記第1、第3の突起間距離または前記第2、第4の突起間距離を拡張するためのトグル機構と
を具備する平行グリッパ式把持装置。
【請求項2】
前記第1の台座の前記第1、第2の突起間距離と前記第2の台座の前記第3、第4の突起間距離とが同一である請求項1に記載の平行グリッパ式把持装置。
【請求項3】
さらに、
前記主台座に設けられ、前記第1の台座の第1の突起及び前記第2の台座の第4の突起の両方を第1の板部材を介して押圧するための第1のばねと、
前記主台座に設けられ、前記第2の台座の第3の突起及び前記第1の台座の第2の突起の両方を第2の板部材を介して押圧するための第2のばねと
を具備する請求項1に記載の平行グリッパ式把持装置。
【請求項4】
さらに、前記主台座に設けられ、前記各第1、第2、第3、第4の突起を個別的に押圧するための4つのばねを具備する請求項1に記載の平行グリッパ式把持装置。
【請求項5】
さらに、
前記第1の送りねじと前記第1のモータとの間に設けられた第1の伝達ギア機構と、
前記第2の送りねじと前記第1のモータとの間に設けられた第2の伝達ギア機構と
を具備する請求項1に記載の平行グリッパ式把持装置。
【請求項6】
前記第1の送りねじのねじ加工方向と前記第2の送りねじのねじ加工方向とが同一であり、
前記第1、第2の伝達ギア機構の一方は回転方向反転ギアを具備する請求項5に記載の平行グリッパ式把持装置。
【請求項7】
前記第1の送りねじのねじ加工方向と前記第2の送りねじのねじ加工方向とが反対である請求項5に記載の平行グリッパ式把持装置。
【請求項8】
主台座と、
前記主台座上に移動可能に設けられ、第1、第2の突起を有する第1の台座と、
前記主台座上に移動可能に設けられ、前記第2、第1の突起に対応した第3、第4の突起を有する第2の台座と、
前記第1の台座に嵌め込められた第1の送りねじと、
前記第2の台座に嵌め込められた第2の送りねじと、
前記第1の送りねじに第1のナットを介して取付けられた第1のグリッパと、
前記第2の送りねじに第2のナットを介して取付けられた第2のグリッパと、
前記第1、第2の送りねじを同時に駆動して前記第1、第2のグリッパを対称的に移動させるための第1のモータと、
前記第1、第2の突起間かつ前記第3、第4の突起間の前記主台座上に移動可能に設けられた第3の台座と、
前記第3の台座上に設けられた第2のモータと、
前記第2のモータによって駆動され前記第1、第3の突起間距離または前記第2、第4の突起間距離を拡張するためのトグル機構と
を具備する平行グリッパ式把持装置において、
前記第1のモータに第1の駆動電流を供給して前記第1、第2の送りねじを回転させることにより前記第1、第2のグリッパを把持対象物に接触させる把持対象物接触段階と、
前記把持対象物接触段階の後に、前記第1のモータへの前記第1の駆動電流の供給を持続させて前記第1、第2の台座を移動させ、前記第1の台座の前記第1または第2の突起及び前記第2の台座の前記第3または第4の突起を前記第2のモータ及び前記トグル機構に接触させる差動機構的動作段階と、
前記差動機構的動作段階の後に、前記第1のモータへの前記第1の駆動電流の供給を停止すると共に前記第2のモータへ第2の駆動電流を供給して前記トグル機構を駆動させるトグル駆動段階と
を具備する平行グリッパ式把持装置の制御方法。
【請求項9】
前記第1の台座の前記第1または第2の突起及び前記第2の台座の前記第3または第4の突起の前記第2のモータ及び前記トグル機構への接触を前記第1のモータの制動電流によって検出して前記差動機構的動作段階から前記トグル駆動段階へ進む請求項8に記載の平行グリッパ式把持装置の制御方法。
【請求項10】
前記第1の台座の前記第1または第2の突起及び前記第2の台座の前記第3または第4の突起の前記第2のモータ及び前記トグル機構への接触を接触センサによって検出して前記差動機構的動作段階から前記トグル駆動段階へ進む請求項8に記載の平行グリッパ式把持装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は開閉両方向に力を発揮できる平行グリッパ式把持装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
産業用マニピュレータ等において、把持対象物を把持する把持装置は高速かつ大きな把持力を必要とする。
【0003】
従来の把持装置は、把持対象物を把持するための単一のグリッパと、台座と、グリッパを台座に対して回転可能に保持するウォームホイールと、ウォームホイールとウォームギアを構成するウォームスクリューと、ウォームスクリューを駆動する第1のモータと、第1のモータを固定載置し、台座上で移動可能な台車と、台車上に設けられた立体トグル機構及び立体トグル機構を駆動するための減速比の大きい減速機を備えた第2のモータとを備えている(参照:特許文献1)。
【0004】
上述の従来の把持装置において、第1のモータを第1の方向に回転させると、ウォームスクリューが第1の方向に回転してウォームホイールも回転する。この結果、ウォームホイールに保持されたグリッパが把持対象物のたとえば上部に接触する。その後、さらに第1のモータを第1の方向の回転を持続させると、差動機構的動作によりウォームホイールの回転が停止してウォームスクリューがウォームホイールの回転に対して反対方向に移動し、従って、第1のモータと共に台車が台座上で一方向に移動する。この場合、ウォームスクリューが移動する間、つまり、第1の台車が移動する間は、把持対象物に対するグリッパの把持力はほとんど変化しない。この結果、台車が台座の一端で停止すると、第1のモータの回転を停止させると共に第2のモータを回転させて立体トグル機構を駆動させる。この結果、立体トグル機構の大きな押圧力によって第1のモータと共に台車を上述の方向と反対方向に移動させることによりウォームスクリューが移動してウォームホイールをさらに回転させ、グリッパが把持対象物の上部を強く把持することになる。このように、第1のモータによって高速にグリッパを把持対象物の上部に接触させて差動機構的動作をさせた後に、第2のモータによる立体トグル機構の駆動によってグリッパが大きな把持力によって把持対象物の上部を強く把持する(参照:特許文献1の図3の(a)、(b)、(c))。
【0005】
逆に、第1のモータを第2の方向に回転させると、ウォームスクリューが第2の方向に回転してウォームホイールも回転する。この結果、ウォームホイールに保持されたグリッパが把持対象物のたとえば下部に接触する。その後、さらに第1のモータを第2の方向の回転を持続させると、差動機構的動作によりウォームホイールの回転が停止してウォームスクリューがウォームホイールの回転に対して反対方向に移動し、従って、第1のモータと共に台車が台座上で反対方向に移動する。この場合も、ウォームスクリューが移動する間、つまり、第1の台車が移動する間は、把持対象物に対するグリッパの把持力はほとんど変化しない。この結果、台車が台座の他端で停止すると、第1のモータの回転を停止させると共に第2のモータを回転させて立体トグル機構を駆動させる。この結果、立体トグル機構の大きな押圧力によって第1のモータと共に台車を上述の方向と反対方向に移動させることによりウォームスクリューが移動してウォームホイールをさらに回転させ、グリッパが把持対象物の下部を強く把持することになる。このように、第1のモータによって高速にグリッパを把持対象物の下部に接触させて差動機構的動作をさせた後に、第2のモータによる立体トグル機構の駆動によってグリッパが大きな把持力によって把持対象物の下部を強く把持する(参照:特許文献1の図7の(a)、(b)、(c))。
【0006】
上述の従来の把持装置を適用した従来の平行グリッパ式把持装置においては、ウォームホイールに結合された単一のグリッパの代りに、直列に結合されたねじ加工方向が異なる左送りねじ及び右送りねじをウォームホイールに結合し、左送りねじ及び右送りねじにナットを介して左グリッパ及び右グリッパの2つのグリッパを平行に取付ける(参照:特許文献1の図10)。これにより、第1のモータによって高速に左右グリッパを把持対象物に接触させた後に差動機構的動作をさせた後に、第2のモータによる立体トグル機構の駆動によって左右グリッパが大きな把持力で把持対象物を強く把持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4581117号公報
【特許文献2】特開2010−23185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述の従来の平行グリッパ式把持装置においては、第1、第2のモータによる駆動はウォームギア(ウォームスクリュー及びウォームホイール)と送りねじとを介して左右グリッパに伝播するので、高速駆動に限度があるという課題がある。また、ウォームギアと左右対称に結合された2つの送りねじとの組合せを必要とするので、製造コストが高いという課題もある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するために、本発明に係る平行グリッパ式把持装置は、主台座と、主台座上に移動可能に設けられ、第1、第2の突起を有する第1の台座と、主台座上に移動可能に設けられ、各第2、第1の突起に対応した第3、第4の突起を有する第2の台座と、第1の台座に嵌め込められた第1の送りねじと、第2の台座に嵌め込められた第2の送りねじと、第1の送りねじに第1のナットを介して取付けられた第1のグリッパと、第2の送りねじに第2のナットを介して取付けられた第2のグリッパと、第1、第2の送りねじを同時に駆動して第1、第2のグリッパを対称的に移動させるための第1のモータと、第1、第2の突起間かつ第3、第4の突起間の主台座上に移動可能に設けられた第3の台座と、第3の台座上に設けられた第2のモータと、第2のモータによって駆動され第1、第3の突起間距離または第2、第4の突起間距離を拡張するためのトグル機構とを具備するものである。
【0010】
また、本発明に係る平行グリッパ式把持装置の制御方法は、上述の平行グリッパ式把持装置において、第1のモータに第1の駆動電流を供給して第1、第2の送りねじを回転させることにより第1、第2のグリッパを把持対象物に接触させる把持対象物接触段階と、把持対象物接触段階の後に、第1のモータへの第1の駆動電流の供給を持続させて第1、第2の台座を移動させ、第1の台座の第1または第2の突起及び第2の台座の第3または第4の突起を第2のモータ及びトグル機構に接触させる差動機構的動作段階と、差動機構的動作段階の後に、第1のモータへの第1の駆動電流の供給を停止すると共に第2のモータへ第2の駆動電流を供給してトグル機構を駆動させるトグル駆動段階とを具備するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、第1、第2のモータによる駆動は、ウォームギアを介さずに、送りねじを介して第1、第2のグリッパに伝播するので、高速駆動が可能となる。また、ウォームギアと左右対称に結合された2つの送りねじとの組合せを不要とするので、製造コストを低減できる。さらに、トグル機構は両方向に把持力を発揮するので、グリッパの把持力を大きくできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る平行グリッパ式把持装置の実施の形態を示す正面図である。
図2図1の左台座、右台座の拡大斜視図である。
図3図1の立体トグル機構の例を示す斜視図であって、(A)は動作前状態を示し、(B)は動作後状態を示す。
図4図1の平行グリッパ式把持装置の第1の把持動作を説明するための正面図である。
図5図1の平行グリッパ式把持装置の第2の把持動作を説明するための正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は本発明に係る平行グリッパ式把持装置の実施の形態を示す正面図である。
【0014】
図1において、主台座1−0上に左台座1−1、右台座1−2が対向して左右に移動可能に設けられている。
【0015】
左台座1−1には送りねじ2−1が嵌め込められ、送りねじ2−1にはナット3−1を介して左グリッパ4−1が取付けられている。また、右台座1−2には送りねじ2−2が嵌め込められ、送りねじ2−2にはナット3−2を介して右グリッパ4−2が取付けられている。
【0016】
送りねじ2−1、2−2はモータ5によって同時に回転駆動される。この場合、送りねじ2−1に対するモータ5の伝達ギア機構6−1と送りねじ2−2に対するモータ5の伝達ギア機構6−2は、ほぼ同一であるが、伝達ギア機構6−1には、回転方向反転ギア6aが付加されている点で異なる。尚、送りねじ2−1のねじ加工方向と送りねじ2−2のねじ加工方向とが反対であれば、回転方向反転ギア6aは不要である。従って、送りねじ2−1、2−2は互いに逆方向に回転駆動される。また、伝達ギア機構6−1、6−2のギアは長く、従って、左右に移動しても、移動力をグリッパ4−1、4−2に伝達可能となっている。ナット3−1及び左グリッパ4−1とナット3−2及び右グリッパ4−2とは左右対称的に移動する。さらに、モータ5の回転は減速せずに伝達ギア機構6−1、6−2を介して送りねじ2−1、2−2に伝達されるので、モータ5による送りねじ2−1、2−2の回転駆動は小さなトルクで行われて高速である。
【0017】
図2の(A)に詳細を示すごとく、左台座1−1の下側に突起1−1a、1−1bが設けられ、また、図2の(B)に詳細を示すごとく、右台座1−2の下側に各突起1−1b、1−1aに対応した突起1−2a、1−2bが設けられている。この場合、突起1−1aは2つあり、また、突起1−1bは2つあり、突起1−2a、1−2bが突起1−1a間、突起1−1b間で移動できるようになっている。但し、突起1−1a、1−1b及び突起1−2a、1−2bの数は任意である。また、突起1−1aと突起1−1bとの間隔は突起1−2aと突起1−2bとの間隔と同一である。
【0018】
ばね7−1は板部材7−10を介して左台座1−1の突起1−1a及び右台座1−2の突起1−2bの両方を押圧でき、また、ばね7−2は板部材7−20を介して右台座1−2の突起1−2a及び左台座1−1の突起1−1bの両方を押圧できる。従って、把持対象物が中央に存在すれば、左台座1−1の突起1−1a、1−1bと右台座1−2の突起1−2a、1−2bとは左右対称の位置となっている。つまり、把持対象物がグリッパ1−1、1−2の中間に存在すれば、左台座1−1、右台座1−2及び左グリッパ4−1、右グリッパ4−2は左右対称に移動する。たとえば、左台座1−1が左側へ移動しかつ右台座1−2が右側へ移動すると、ばね7−1は板部材7−10を介して左台座1−1の突起1−1aのみを押圧し、かつばね7−2は板部材7−20を介して右台座1−2の突起1−2aのみを押圧する。逆に、左台座1−1が右側へ移動しかつ右台座1−2が左側へ移動すると、ばね7−1は板部材7−10を介して右台座1−2の突起1−2bのみを押圧し、かつばね7−2は板部材7−20を介して左台座1−1の突起1−1bのみを押圧する。
【0019】
左台座1−1の突起1−1aと突起1−1bとの間及び右台座1−2の突起1−2aと突起1−2bとの間にあっては、主台座1−0上に左右に移動可能である台座1−3が設けられ、モータ8、減速機8a及び立体トグル機構9が中台座1−3上に設けられている。この場合、モータ8の回転は減速機8aを介して立体トグル機構9に伝達されるので、立体トグル機構9の駆動は高速でないが、大きなトルクで行われる。
【0020】
図1の立体トグル機構9は、図3に詳細を示すごとく、2つの板材91、92と、板材91、92間に配置された2つ以上たとえば3つのリンク93、94、95とによって構成されている(参照:特許文献2の図2)。リンク93、94、95の各端部は板材91、92の互いに平行に対向する面上に回転中心から偏心した位置に回転自在に取り付けられている。従って、減速機7aを介してモータ7の大きなトルクで板材91、92を相対的に、図3の(B)の矢印で示すごとく、回転させると、図3の(A)に示す動作前の板材91、92間の縮小状態の小さな距離DAは図3の(B)に示す動作後の板材91、92間の拡張状態の大きな距離DBとなる。この場合、図3の(B)の拡張状態では、リンク93、94、95は伸び切った状態であり、従って、エネルギーを消費せずに大きな押圧力を維持できる。尚、図1の立体トグル機構9は、図3の構造に限定されず、他のトグル構造でもよい。
【0021】
制御ユニット10はモータ5、7を制御するためのものであって、たとえばマイクロコンピュータによって構成される。制御ユニット10は、モータ5に対して順方向駆動電流I1または逆方向駆動電流I1’を供給すると共に、モータ5からの回転停止による制動電流I2を受ける。また、制御ユニット10は、モータ8に対して順方向駆動電流I3または逆方向駆動電流I3’を供給する。
【0022】
図1の制御ユニット10による図1の平行グリッパ式把持装置の第1の動作を図4を参照して説明する。この第1の動作は把持対象物Xを左グリッパ4−1、右グリッパ4−2を閉じて把持する動作である。また、立体トグル機構9は動作前状態にあって、縮小状態に初期化されているものとする。
【0023】
始めに、図4の(A)の把持対象物接触段階を参照すると、制御ユニット10はモータ5に順方向駆動電流I1を供給する。従って、モータ5が順方向に回転する。この結果、伝達ギア機構6−1による送りねじ2−1の回転によって左グリッパ4−1が右側へ移動し、伝達ギア機構6−2による送りねじ2−2の回転によって右グリッパ4−2が左側へ移動する。最後に、左グリッパ4−1及び右グリッパ4−2が把持対象物Xに接触して左グリッパ4−1及び右グリッパ4−2は停止する。
【0024】
左グリッパ4−1及び右グリッパ4−2が停止しても、モータ5の順方向回転は持続するので、図4の(B)の差動機構的動作段階に進む。差動機構的動作段階においては、送りねじ2−1の回転によって左台座1−1が左側へ移動し、従って、突起1−1a、1−1bも左側へ移動し、ばね7−1が突起1−1aを押圧する。同様に、送りねじ2−2の回転によって右台座1−2が右側へ移動し、従って、突起1−2a、1−2bも右側へ移動し、ばね7−2が突起1−2aを押圧する。この結果、突起1−1bが立体トグル機構9に接触すると共に、突起1−2bがモータ8に接触し、従って、左台座1−1及び右台座1−2の移動が停止してモータ5は停止する。尚、差動機構的動作段階においては、左グリッパ4−1と右グリッパ4−2との把持力はほとんど変化しない。このモータ5の停止を制御ユニット10はモータ5の制動電流I2によって検出すると、図4の(C)に示すトグル駆動段階に進む。
【0025】
トグル駆動段階においては、制御ユニット10はモータ5への順方向駆動電流I1の供給を停止し、順方向駆動電流I3をモータ8に所定時間供給する。この結果、立体トグル機構9が駆動して台座1−1の突起1−1b及び台座1−2の突起1−2bを、矢印で示すごとく、両方向に押し広げる。つまり、立体トグル機構9は両方向に押圧力を発揮する。従って、左グリッパ4−1及び右グリッパ4−2により大きな把持力を発生させる。この状態で、制御ユニット10はモータ8への順方向駆動電流I3の供給を停止するが、左グリッパ4−1と右グリッパ4−2との大きな把持力は立体トグル機構9の拡張状態によって消費電力なしで維持され、グリッパ開による把持動作は終了する。
【0026】
尚、次の把持動作を行う前に、制御ユニット10はモータ8へ逆方向駆動電流I3’を所定時間供給して立体トグル機構9を縮小状態に初期化しておく。
【0027】
次に、図1の制御ユニット10による図1の平行グリッパ式把持装置の第2の動作を図5を参照して説明する。この第2の動作は把持対象物Yを左グリッパ4−1、右グリッパ4−2を押し広げて把持する動作である。また、この場合も、立体トグル機構9は動作前状態にあって、縮小状態に初期化されているものとする。
【0028】
始めに、図5の(A)の把持対象物接触段階を参照すると、制御ユニット10はモータ5に逆方向駆動電流I1’を供給する。従って、モータ5が逆方向に回転する。この結果、伝達ギア機構6−1による送りねじ2−1の回転によって左グリッパ4−1が左側へ移動し、伝達ギア機構6−2による送りねじ2−2の回転によって右グリッパ4−2が右側へ移動する。最後に、左グリッパ4−1及び右グリッパ4−2が把持対象物Yに接触して左グリッパ4−1及び右グリッパ4−2は停止する。
【0029】
左グリッパ4−1及び右グリッパ4−2が停止しても、モータ5の逆方向回転は持続するので、図5の(B)の差動機構的動作段階に進む。差動機構的動作段階においては、送りねじ2−1の回転によって左台座1−1が右側へ移動し、従って、突起1−1a、1−1bも右側へ移動し、ばね7−2が突起1−1bを押圧する。同様に、送りねじ2−2の回転によって右台座1−2が左側へ移動し、従って、突起1−2a、1−2bも左側へ移動し、ばね7−1が突起1−2bを押圧する。この結果、突起1−2aが立体トグル機構9に接触すると共に、突起1−1aがモータ8に接触し、従って、左台座1−1及び右台座1−2の移動が停止してモータ5は停止する。尚、差動機構的動作段階においては、左グリッパ4−1と右グリッパ4−2との把持力はほとんど変化しない。このモータ5の停止を制御ユニット10はモータ5の制動電流I2によって検出すると、図5の(C)に示すトグル駆動段階に進む。
【0030】
トグル駆動段階においては、制御ユニット10はモータ5への逆方向駆動電流I1’の供給を停止し、順方向駆動電流I3をモータ8に所定時間供給する。この結果、立体トグル機構9が駆動して台座1−1の突起1−1b及び台座1−2の突起1−2bを、矢印で示すごとく、両方向に押し広げる。つまり、立体トグル機構9は両方向に押圧力を発揮する。従って、左グリッパ4−1及び右グリッパ4−2により大きな把持力を発生させる。この状態で、制御ユニット10はモータ8への順方向駆動電流I3の供給を停止するが、左グリッパ4−1と右グリッパ4−2との大きな把持力は立体トグル機構9の拡張状態によって消費電力なしで維持され、グリッパの押し広げによる把持動作は終了する。
【0031】
尚、この場合も、次の把持動作を行う前に、制御ユニット10はモータ8へ逆方向駆動電流I3’を所定時間供給して立体トグル機構9を縮小状態に初期化しておく。
【0032】
このように、上述の実施の形態においては、モータ5、8による駆動はウォームギアを用いずに送りねじ2−1、2−2を介して左グリッパ4−1及び右グリッパ4−2に伝播するので、高速駆動が可能である。また、送りねじ2−1、2−2は通常の送りねじでよいので、製造コストを低減できる。さらに、立体トグル機構9は両方向で把持力を発揮できるので、左グリッパ4−1及び右グリッパ4−2の把持力を大きくできる。
【0033】
尚、上述の実施の形態では、モータ5の回転停止を制動電流で検出しているが、突起1−1a、1−1b、1−2a、1−2bとの接触を検出する接触センサ(スイッチ)を設け、このセンサの出力によってモータ5の回転停止を検出してもよい。
【0034】
また、ばね7−1を2つ設け、各ばね7−1で突起1−1a、1−2bを個別的に押圧し、同様に、ばね7−2を2つ設け、各ばね7−2で突起1−2a、1−1bを個別的に押圧するようにしてもよい。この場合、板部材7−10、7−20は不要である。
【0035】
さらに、本発明は上述の実施の形態の自明の範囲のいかなる変更にも適用し得る。
【符号の説明】
【0036】
1:主台座
1−1:左台座
1−1a、1−1b:突起
1−2:右台座
1−2a、1−2b:突起
1−3:中台座
2−1、2−2:送りねじ
3−1、3−2:ナット
4−1:左グリッパ
4−2:右グリッパ
5:モータ
6−1、6−2:伝達ギア機構
6a:回転方向反転ギア
7−1、7−2:ばね
7−10、7−20:板部材
8:モータ
8a:減速機
9:立体トグル機構
91、92:板材
93、94、95:リンク
10:制御ユニット
図1
図2
図3
図4
図5