(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術の場合、乾燥炉の外側で蛇行修正が行われるため、乾燥炉内の距離が長くなると、乾燥炉内で発生したフィルムの蛇行を蛇行修正ローラだけでは修正しきれず、乾燥炉内での幅方向における処理の均一性が低下するおそれがあった。また、乾燥炉内でのフィルムの蛇行幅が大きくなると、蛇行修正ローラの傾斜角度も大きくなり、その結果、フィルムにしわが発生するおそれがあった。
【0006】
本発明は、基材に対する処理の均一性の低下を抑制しつつ、基材の位置ずれを修正する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、第1の態様は、第1ローラから送り出された基材を第2ローラで巻き取ることによって所定の搬送方向に連続して
搬送する搬送機構によって搬送される基材に対して、規定処理を行う基材処理装置であって、前記搬送機構によって搬送される前記基材の両面のうち少なくとも一方主面に対して、規定処理を行う規定処理部と、前記搬送機構によって搬送される前記基材の搬送経路における一部の区間であって、前記
規定処理部が前記規定処理を行う処理区間において、前記基材が移動する方向に間隔をあけて配列されており、かつ、前記基材の他方主面に接触する位置に配置されている複数のローラと、前記複数のローラのうち
全部の各回転軸の一方側端部を、他方側端部に対して相対的に、前記基材の前記他方主面に交差する方向に沿って移動させる傾動機構と、
前記処理区間よりも前記搬送方向の下流側において、前記基材の前記搬送方向に直交する幅方向
端部の位置を検出する位置検出器と、前記位置検出器によって検出された前記基材の位置に基づいて、前記傾動機構を制御する制御部とを備え
、前記制御部は、前記処理区間に存する前記基材の幅方向の位置が、前記規定処理部が前記基材に対して前記規定処理を均一に実行可能とされる規定処理範囲内に含まれるように、前記傾動機構を制御して前記基材の幅方向の位置を修正し、前記複数のローラの全部が非直線状に配置されていることによって、前記処理区間に存する前記基材の部分がアーチ状に曲げられる。
【0008】
また、第2の態様は、第1の態様に係る基材処理装置であって、前記処理区間に存する前記基材の部分を収容する筐体部、をさらに備え、前記筐体部には、その内部に前記基材よりも幅広である進入口及び退出口が形成されており、前記進入口から前記基材が進入する際の進入方向が、前記退出口から前記基材が退出する際の退出方向と鈍角を成す。
【0011】
また、第
3の態様は、第1
または第
2の態
様に係る基材処理装置であって、前記傾動機構は、前記2つ以上のローラの各他方側の端部を固定する固定部を有する。
【0012】
また、第
4の態様は、第1から第
3の態様のいずれか1態様に係る基材処理装置であって、前記規定処理が、前記基材の一方主面に塗布された処理液を乾燥させる乾燥処理である。
【0013】
また、第
5の態様は、基材に塗膜を形成する塗膜形成システムであって、第1ローラから送り出された基材を第2ローラで巻き取ることによって所定の搬送方向に連続して基材を搬送する搬送機構と、前記搬送機構によって搬送される前記基材の主面に対して、塗工液を吐出するノズルと、前記基材に形成された前記塗工液を乾燥させる乾燥処理を行う乾燥処理部と、前記搬送機構によって搬送される前記基材の搬送経路における一部の区間であって、前記乾燥処理部が前記乾燥処理を行う乾燥処理区間において、前記基材が移動する方向に間隔をあけて配列されており、かつ、前記基材の他方主面に接触する位置に配置されている複数のローラと、前記複数のローラのうち
全部の各回転軸の一方端を、他方端に対して相対的に、前記基材の他方主面に交差する方向に移動させる傾動機構と、
前記乾燥処理区間よりも前記搬送方向の下流側において、前記基材の前記搬送方向に直交する幅方向
端部の位置を検出する位置検出器と、前記位置検出器によって検出された前記基材の位置に基づいて、前記傾動機構を制御する制御部とを備え
、前記制御部は、前記乾燥処理区間に存する前記基材の幅方向の位置が、前記乾燥処理部が前記基材に対して前記乾燥処理を均一に実行可能とされる規定処理範囲内に含まれるように、前記傾動機構を制御して前記基材の幅方向の位置を修正し、前記複数のローラの全部が非直線状に配置されていることによって、前記乾燥処理区間に存する前記基材の部分がアーチ状に曲げられる。
【0014】
また、第
6の態様は、第1ローラから送り出された基材を第2ローラで巻き取ることによって所定の搬送方向に連続して
搬送する搬送機構によって搬送される基材に対して、規定処理を行う基材処理方法であって、(a)前記搬送機構によって搬送される前記基材の両面のうち少なくとも一方主面に対して、規定処理を行う工程と、(b)
前記規定処理が行われる処理区間よりも前記搬送方向の下流側において、前記基材の前記搬送方向に直交する幅方向
端部の位置を検出する工程と、(c)前記(b)工程にて検出された前記基材の位置に応じて、前記搬送機構によって搬送される前記基材の搬送経路における一部の区間であって、前記規定処理が行われる処理区間において、前記基材が移動する方向に間隔をあけて配列されており、かつ、前記基材の他方主面に接触する位置に配置されている複数のローラの
全部の各回転軸の一方側端部を、他方側端部に対して相対的に、前記基材の前記他方主面に交差する方向に沿って移動させ
て、前記処理区間に存する前記機材の幅方向の位置が、前記基材に対して前記規定処理を均一に実行可能とされる規定処理範囲内に含まれるように、前記基材の幅方向の位置を修正する工程とを含
み、
前記複数のローラの全部が非直線状に配置されることによって、前記処理区間に存する前記基材の部分がアーチ状に曲げられる。
【0015】
また、第
7の態様は、基材に塗膜を形成する塗膜形成方法であって、(A)第1ローラから送り出された基材を第2ローラで巻き取る搬送機構によって所定の搬送方向に連続して前記基材を搬送する工程と、(B)前記搬送機構によって搬送される前記基材の主面に対して、塗工液を吐出する工程と、(C)前記基材に形成された前記塗工液を乾燥させる乾燥処理を行う工程と、(D)
前記乾燥処理が行われる乾燥処理区間よりも前記搬送方向の下流側において、前記基材の前記搬送方向に直交する幅方向
端部の位置を検出する工程と、(E)前記(D)工程にて検出された前記基材の位置に応じて、前記搬送機構によって搬送される前記基材の搬送経路における一部の区間であって、前記乾燥処理が行われる乾燥処理区間において、前記基材が移動する方向に間隔をあけて配列されており、かつ、前記基材の他方主面に接触する位置に配置されている複数のローラの
全部の各回転軸の一方側端部を、他方側端部に対して相対的に前記基材の前記他方主面に交差する方向に沿って移動させ
て、前記乾燥処理区間に存する前記基材の幅方向の位置が、前記基材に対して前記乾燥処理を均一に実行とされる規定処理範囲内に含まれるように、前記基材の位置を修正する工程とを含
み、
前記複数のローラの全部が非直線状配置されることによって、前記乾燥処理区間に存する前記基材の部分がアーチ状に曲げられる。
【発明の効果】
【0016】
第1から第
7の態様によると、搬送機構によって搬送される基材に位置ずれが発生した際、規定処理を行う処理区間に配された複数のローラを傾動させることによって、その位置ずれを修正できる。このため、処理区間で位置ずれが発生した場合でも、処理区間内で修正できる。したがって、処理の均一性を確保できる。また、複数のローラを傾動させることで、単一のローラのみで位置ずれを修正する場合よりも、各ローラの傾動量を小さくできる。したがって、位置ずれをより確実に修正できるとともに、基材にしわが生じることを抑制できる。
また、処理区間において、基材をアーチ状に曲げて搬送することで、処理区間の直線距離を変えずに、基材の搬送距離を長くすることができる。また、複数のローラによって基材をアーチ状に支持するため、直線的に支持する場合よりも、各ローラの基材と接触する面の面積(抱き角)を大きくすることができる。したがって、各ローラを傾動させた際に、基材をより確実に引っ掛けることができる。よって、基材の位置ずれをより確実に修正できる。
また、均一な処理が実行可能とされる規定処理範囲内に収まるように、基材の位置ずれを修正できる。
【0017】
第2の態様によると、筐体部内で外部から仕切られた空間内で基材を処理できる。進入方向及び退出方向が鈍角を成すようにすることで、進入方向及び退出方向を平行とする場合と比べて、筐体部内の直線距離を同一としつつ、基材の搬送距離を長くすることができる。
【0020】
第
3の態様によると、他方側端部を固定しつつ、一方側端部を移動させることで、各ローラを傾動することができる。
【0021】
第
4の態様によると、乾燥処理区画における搬送距離が比較的長い場合であっても、基材の位置ずれを乾燥処理区画内で修正できるため、乾燥処理が不均一になることを抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、この実施形態に記載されている構成要素はあくまでも例示であり、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。また、図面においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数が誇張または簡略化して図示されている場合がある。
【0024】
<1.実施形態>
図1は、実施形態に係る乾燥処理部30A,30Bを備えた塗膜形成システム1を示す概略構成図である。
【0025】
この塗膜形成システム1は、例えば長尺状の金属箔である基材5をロールtoロール方式にて連続搬送しつつ、その基材5の両面に電極材量である活性質を含む塗工液を塗工する。そして、その塗工液の乾燥処理を行うことによって、リチウムイオン二次電池の電極製造を行う。
【0026】
塗膜形成システム1は、塗工部10A,10B、乾燥処理部30A,30B、搬送機構60及び制御部7を備えて構成される。制御部7は、システム全体を制御するように構成されている。
【0027】
搬送機構60は、巻出しローラ61(第1ローラ)、巻き取りローラ62(第2ローラ)及び複数の補助ローラ63を備えている。長尺の基材5は、巻出しローラ61から送り出されて複数の補助ローラに案内されつつ、巻き取りローラ62によって巻き取られる。複数の補助ローラ63は、連続搬送される基材5の搬送経路上の適宜の位置に配置されている。長尺の基材5は、塗工部10A、乾燥処理部30A、塗工部10B、乾燥処理部30Bの順にロールtoロール方式で連続搬送される。基材5が搬送機構60によって搬送される方向(矢符DR1で示す方向)を、「搬送方向」と称する。なお、搬送方向は、固定の一方向に限定されるものではない。
図1に示す例では、基材5の搬送方向は、複数の補助ローラ63によって適宜変更される。補助ローラ63の個数及び配置位置については、
図1に示すものに限定されるものではなく、必要に応じて適宜に増減することができる。
【0028】
塗工部10A,10Bは、搬送機構60によって搬送される基材5の表裏面に対して塗工液を塗工するように構成されている。塗工部10Aは、基材5の表裏面のうち一方側主面に向けて塗工液を吐出するノズル11Aを備えており、塗工部10Bは、基材5の両面のうち他方側主面に向けて塗工液を吐出するノズル11Bを備えている。各ノズル11A,11Bは、基材5の幅方向(基材5の表面に平行な方向であって、上記搬送方向に直交する方向)に沿った延びるスリット状の吐出口を備えたスリットノズルとして構成されている。
【0029】
ノズル11A,11Bには、図示を省略する送液機構によって、所定の塗工液が送液される。ノズル11A,11Bが吐出する塗工液は同一であってもよいが、これらは異なる種類の塗工液であってもよい。
【0030】
ノズル11A,11Bは、スリット状の吐出口に繋がる流路を規定するためのシム及びマニホールド等を備える。また、ノズル11A,11Bには、それぞれの位置及び姿勢を調整するための不図示の機構が付設されている。送液機構から各ノズル11A,11Bに送給された塗工液は、スリット状の吐出口から基材5の表面に吐出される。
【0031】
乾燥処理部30A,30Bは、搬送機構60によって所定の搬送方向に連続して搬送される基材5に対して、乾燥処理を行う。乾燥処理部30A,30Bは、規定処理を行う基材処理装置の一例である。
【0032】
より具体的には、乾燥処理部30Aは、塗工部10Aの下流側に設けられている。乾燥処理部30Aは、塗工部10Aで塗工された基材5の一方側主面の塗工液を乾燥させることによって、当該一方側主面に塗膜を形成するように構成されている。乾燥処理部30Bは、塗工部10Bの下流側に設けられている。乾燥処理部30Bは、塗工部10Bで塗工された基材5の他方側主面の塗工液を乾燥させることによって、当該他方側主面に塗膜を形成するように構成されている。なお、乾燥処理部30A,30Bの構成は略同一であるため、以下では、乾燥処理部30Aの構成について主に説明する。
【0033】
乾燥処理部30Aは、筐体部31と傾動ローラ群33を備えている。
【0034】
図2は、実施形態に係る乾燥処理部30Aの一部を示す概略側面図である。なお、
図2では、筐体部31が断面図で図示されている。
図1または
図2に示すように、筐体部31は、複数のチャンバ311と、当該複数のチャンバ311間を連結する複数の連結部312とを備えている。各チャンバ311の上流側には基材5を内部に進入させるための入口313が形成されており、下流側には基材5を退出させるための出口314が形成されている。そして、隣どうしに配されたチャンバ311,311のうち、一方の出口314と他方の入口313とが、連結部312を介して連結されている。連結部312は、筒状に形成されており、基材5を通すための空間を形成しており、その開口面積は、各チャンバ311の開口面積よりも小さい。複数のチャンバ311の各々が連結部312によって接続されることによって、筐体部31が乾燥処理を行うための1つの空間を形成している。そして、筐体部31全体では、基材5の搬入口313Aは、最も上流側に配されたチャンバ311の入口313となっており、基材5の搬出口314Aは、最も下流側に配されたチャンバ311の出口314となっている。搬入口313A及び搬出口314Aは、基材5よりも幅広に形成されている。
【0035】
各チャンバ311の内部には、表面乾燥部35及び裏面乾燥部37が付設されている。表面乾燥部35は、塗工液が塗工された側の主面(一方側主面)に熱風を供給することによって加熱し、直接的に塗工液を乾燥させる。また、裏面乾燥部37は、塗工液が塗工された一方主面とは逆側の他方主面に熱風を供給して、基材5を加熱することによって、間接的に塗工液を乾燥させる。
【0036】
なお、表面乾燥部35及び裏面乾燥部37は、熱風を供給する代わりにチャンバ311内の雰囲気を加熱するヒータ(ハロゲンヒータ等)等で構成することもできる。また、裏面乾燥部37は省略されてもよい。
【0037】
傾動ローラ群33は、基材5が搬送機構60によって移動する方向に沿って所定間隔で配列されている。各傾動ローラ331は、各チャンバ311のそれぞれに配されている。
図1または
図2に示すように、本例では、チャンバ311毎に1つの傾動ローラ331が配されているが、数量はこれに限定されない。例えば、一部または全部のチャンバ311に、2本以上の傾動ローラ331が配されていてもよい。
【0038】
各傾動ローラ331は、基材5の塗工液が塗布された一方主面とは反対側の他方主面に接触する位置に配されており、基材5の他方主面に接触してこれを支持する。本実施形態では、筐体部31は側面視においてアーチ状(弧状)に湾曲しており、各傾動ローラ331もこの形状に対応して非直線状であるアーチ状に配列されている。すなわち、複数の傾動ローラ331の高さ位置が、搬送方向上流側から下流側に向けて、低い位置から次第に高くなり、そして再び低くなるように配置されている。
【0039】
なお、全ての傾動ローラ331のうち一部の傾動ローラ331のみが他の傾動ローラ331とは異なる高さに配されていてもよい。例えば、中間付近の傾動ローラ331のみがアーチ状に配されており、その前後に配された2つ以上の傾動ローラ331が同じ高さに配されていてもよい。
【0040】
各傾動ローラ331は、受動的に回転するフリーローラとして構成されている。ただし、搬送機構60によって搬送される基材5の搬送速度に同期して、一部または全部の傾動ローラ331が能動的に回転するよう、回転駆動部を設けてもよい。
【0041】
基材5は、筐体部31内では、これらの傾動ローラ331によって支持されることで、幅方向から見た側面視においてアーチ状に湾曲する。このように基材5を湾曲させることによって、乾燥処理区間12Aの直線距離を変えずに、基材5の搬送距離を長くすることができる。
【0042】
以上のように、本実施形態では、1つの筐体部31内に配された複数の表面乾燥部35及び複数の裏面乾燥部37が、基材5の一方主面に塗工された塗工液を乾燥させる。このため、複数の表面乾燥部35及び複数の裏面乾燥部37が配置された区間が、基材5の搬送経路における一部の区間である乾燥処理区間12Aに相当する。この乾燥処理区間12Aにおいて、複数の傾動ローラ331がアーチ状に配列されている。そして、筐体部31は、乾燥処理区間12Aに存する基材5の部分を収容する。乾燥処理区間12Aでは、筐体部31によって、外気を遮断した空間内で乾燥処理が行われるため、乾燥処理の均一性をより一層高めることができる。なお、必ずしも筐体部31内で乾燥処理が行われる必要はなく、筐体部31を省略することも妨げられない。
【0043】
また、筐体部31内では、複数の傾動ローラ331がアーチ状に配されているため、当該複数の傾動ローラ331によって支持される基材5の中心軸がアーチ状に湾曲する。このため、
図1に示すように、基材5が、進入口313Aにおける基材5の搬送方向(進入方向。矢符DR2で示す。)と、退出口314Aにおける基材5の搬送方向(退出方向。矢符DR3で示す。)とは、側面視において鈍角を成している。このように進入方向と波退出方向とが鈍角を成すように基材5の搬入及び搬出を行うことで、進入方向及び退出方向を平行とした場合と比べて、筐体部31内の直線距離を同一としつつ、基材5の搬送距離を長くすることができる。
【0044】
乾燥処理部30Bにおいても、筐体部31の各チャンバ311に、表面乾燥部35及び裏面乾燥部37が配されている。すなわち、複数の表面乾燥部35及び複数の裏面乾燥部37が配置された区間が、乾燥処理区間12Bとなっている。そして、この乾燥処理区間12Bにおいて、複数の傾動ローラ331がアーチ状に配列されている。
【0045】
図3は、実施形態に係る傾動機構41を説明するための概略正面図である。各傾動ローラ331、乾燥処理部30A,30Bは、
図3に示すように、各傾動ローラ331を傾動させる傾動機構41を備えている。
【0046】
傾動機構41は、各傾動ローラ331の一端部に取付けられている移動部411と、各傾動ローラ331の他端部に取付けられている固定部413と、各移動部411を上下に移動させるための駆動源としてのモータ415とが設けられている。なお、移動部411の駆動源として、モータ415の代わりに、例えばシリンダ(空圧式、水圧式または油圧式のもの)等を採用してもよい。移動部411の移動方向は、傾動ローラ331によって支持される基材5の主面に交差する方向となっている。
【0047】
固定部413は、傾動ローラ331の軸の他端部を、その高さ位置を変更しないで回動可能に支持する。このため、モータ415の駆動力によって移動部411が上下に昇降することで、傾動ローラ331が、
図3中破線で示すように、固定部413周りに一端部が上下に回動する。これによって、傾動ローラ331の回転軸が、水平軸HX1に対して傾斜する。
【0048】
なお、各チャンバ311に設けられた各傾動ローラ331のうち、一部が傾動しない通常のローラに置き換えられてもよい。ただし、1つの乾燥処理区間12A,12Bのそれぞれについて、2つ以上の傾動ローラ331が配列されていることが好ましい。
【0049】
傾動機構41は、例えば乾燥処理区間12Aの傾動ローラ群33を、単一のモータ415で傾動されるように構成されており、各傾動ローラ331を同一角度で傾斜するように傾動駆動する。ただし、傾動ローラ331毎、もしくは、複数の傾動ローラ331毎にモータ415が備えられていてもよい。この場合、傾動機構を、傾動ローラ331毎、もしくは複数の傾動ローラ331毎に個別に傾動させるように構成してもよい。
【0050】
上述したように、各傾動ローラ331によって、基材5をアーチ状に湾曲させて支持するため、基材5を直線的に支持する場合よりも、各傾動ローラ331の基材5と接触する接触面の面積(抱き角θ)を大きくすることができる。したがって、各傾動ローラ331を傾動させた際に、基材5により確実に引っ掛けることができる。よって、基材5の位置ずれをより確実に修正できる。なお、抱き角θとは、傾動ローラ331の回転中心と上記接触面の搬送方向上流側端部とを結ぶ線と、上記回転中心と上記接触面の搬送方向下流側端部とを結ぶ線が成す角度をいう(
図2参照)。
【0051】
また、移動部411が設けられる側、及び、固定部413が設けられる側は、全ての傾動ローラ331で一致していてもよいし、異なっていてもよい。各傾動ローラ331において、同じ側に移動部411を設けた場合、モータ415の駆動を各移動部411に伝達する各駆動伝達機構が、搬送経路に対して同じ側に配されることとなるため、メンテナンスが容易となる。
【0052】
なお、傾斜させる際の角度(水平軸HX1からの固定部413周りの回動角度)は、位置検出器51A,51Bから送られてくる基材5の位置情報に基づき、制御部7の傾動機構制御部711によって決定される。
【0053】
例えば、位置検出器51Aによって、乾燥処理区間12Aにおいて、基材5が固定部413側にずれていることが検出された場合、傾動機構41は、移動部411を下方へ移動させる。これによって、傾動機構41は、傾動ローラ331の移動部411側端部が、の固定部413側端部よりも低い位置となるように傾動させる。これによって、基材5を移動部411側にずらすことができ、位置ずれを修正することができる。また、基材5が反対側に位置ずれしている場合には、これとは反対方向に傾動するよう制御される。
【0054】
なお、位置検出器51Aは、乾燥処理区間12Aの途中に設けられていてもよい。また、位置検出器51Bについても、同様に乾燥処理区間12Bの途中に設けられていてもよい。
【0055】
図4は、実施形態に係る制御部7と他の要素との電気的な接続を示すブロック図である。制御部7は、演算装置としてのCPU71、読み取り専用のROM72、主にCPU71のワーキングエリアとして使用されるRAM73及び不揮発性の記録媒体である記憶部74を備えている。制御部7は、表示部75、操作部76、モータ415及び位置検出器51A,51Bと接続されている。
【0056】
CPU71は、記憶部74に格納されているプログラムPG1を読み取りつつ実行することによって、RAM73または記憶部74に記憶されている各種データについての演算処理を行う。このように、制御部7は、CPU71、ROM72、RAM73及び記憶部74を備えた一般的なコンピュータとして構成されている。
【0057】
図4に示す傾動機構制御部711は、CPU71が記憶部74に記憶されたプログラムPG1にしたがって動作することによって実現される機能モジュールである。傾動機構制御部711は、位置検出器51Aまたは位置検出器51Bから送られてくる基材5の幅方向の位置情報を取得し、所定の演算処理を行って、乾燥処理区間12Aに配された傾動機構41のモータ415または乾燥処理区間12Bに配されたモータ415を駆動するように構成されている。
【0058】
図5は、実施形態に係る複数の傾動ローラ331の傾動駆動制御を説明するための概略図である。
図5では、基材5のうち、乾燥処理区間12A内を移動する基材5の部分、及び、乾燥処理区間12Aよりも下流側の部分であって、位置検出器51Aで位置検出が行われる部分が図示されている。
【0059】
図5に示すように、位置検出器51Aは、基材5の幅方向端部を検出するように構成されている。位置検出器51Aの構成としては、投光器と光検出器を組合わせたもの、超音波発生器と超音波検出器を組合わせたもの、気流の変化を検出するもの等、種々考えられる。
【0060】
上述したように、傾動機構制御部711は、位置検出器51Aによって基材5の位置ずれが検出された場合、そのずれ量に応じて、各傾動ローラ331を傾動させる。ここでは、
図5に示すように、基材5が、実線で示す規定の位置から、二点鎖線で示す位置にずれたとする。この場合、傾動機構制御部711は、乾燥処理範囲RP1内に収まるように、位置ずれを修正する。なお、乾燥処理範囲RP1は、乾燥処理区間12Aにおいて、基材5(より詳細には、塗工液が塗工された部分)に対して、ある一定基準の乾燥処理が実行可能である幅方向の範囲をいう。ある一定基準の乾燥処理とは、製品製造上最低限必要とされる乾燥処理をいい、より好ましくは、幅方向において均一な乾燥処理をいう。乾燥処理範囲RP1は、乾燥処理区間12Aに配された乾燥手段(ここでは、表面乾燥部35及び裏面乾燥部37)の乾燥処理性能や、チャンバ311の大きさ等によって決まる範囲である。
【0061】
本実施形態では、乾燥処理範囲RP1は、規定の位置にある基材5よりも幅方向に広い。このため、二点鎖線にずれた基材5を、必ずしも実線で示す規定の位置まで戻す必要はなく、少なくとも乾燥処理範囲RP1に収まるように戻せればよい。なお、乾燥処理範囲が基材5の幅よりも狭くなることもあり得る。この場合、基材5の乾燥処理対象部分が、当該乾燥処理範囲に含まれるように、位置ずれが修正されればよい。
【0062】
<傾動駆動制御フロー>
図6は、実施形態に係る傾動機構制御部711が実行する傾動駆動制御のフローを示す図である。なお、この傾動駆動制御は、搬送機構60によって搬送される基材5が乾燥処理区間12Aまたは乾燥処理区間12Bで乾燥処理されている際に実行される。
【0063】
傾動機構制御部711は、傾動駆動制御を開始すると、位置検出器51A,51Bによって、位置ずれが検出されたどうかを判定する(ステップS11)。なお、基材5の位置が、
図5で説明した、乾燥処理範囲RP1の内側でずれたものである場合は、傾動機構制御部711が位置ずれはないと判定するように構成されてもよい。傾動機構制御部711は、位置ずれが検出されるまで、ステップS11の動作を繰り返し行う。
【0064】
傾動機構制御部711は、ステップS11において基材5の位置ずれを検出した場合(ステップS11においてYes)、各傾動ローラ331の傾動量を特定する(ステップS12)。具体的には、傾動機構制御部711は、各移動部411の移動方向、及び移動量を特定する。なお、位置ずれの大きさに応じた各傾動ローラ331の傾動量については、演算によって取得されるようにしてもよい。あるいは、予め、各傾動ローラ331の傾動量を変えて、どの程度位置ずれを修正できるかを実験によって明らかにしておき、必要な修正量に対応した傾動量を特定するようにしてもよい。
【0065】
続いて、傾動機構制御部711は、ステップS12で特定した傾動量に基づき、傾動機構41のモータ415を駆動することによって、各傾動ローラ331を傾動させる(ステップS13)。
【0066】
続いて、傾動機構制御部711は、基材5の位置ずれが修正されたかどうかを判定する(ステップS14)。位置ずれが修正されていない場合は(ステップS14においてNo)、傾動機構制御部711は、ステップS12に戻り、各傾動ローラ331の傾動量を再度特定する。そして、傾動機構制御部711は、当該再度特定された傾動量に合わせて、各傾動ローラ331を傾動させる(ステップS13)。位置ずれが修正された場合は(ステップS14においてYes)、傾動機構制御部711は、各傾動ローラ331の傾動状態を維持させる。
【0067】
続いて、傾動機構制御部711は、傾動駆動制御を終了するかどうか判定する(ステップS15)。傾動機構制御部711は、例えば操作部76を介してオペレータから終了命令を受け付けた場合には(ステップS15においてYes)、傾動駆動制御を終了する。傾動駆動制御を終了しない場合(ステップS15においてNo)、傾動機構制御部711は、ステップS11に戻って、傾動駆動制御の処理を続行する。
【0068】
なお、本フローでは、ステップS12にて傾動量を特定してから、ステップS13にて傾動ローラをその傾動量に合わせて傾動させている。しかしながら、ステップS12では、移動部411を移動させるべき方向のみを特定し、ステップS13でその方向に一定量移動させることで、各傾動ローラ331の傾動させるようにしてもよい。
【0069】
以上のように、本実施形態によると、各乾燥処理区間12A,12Bに配された複数の傾動ローラ331によって、基材5の位置ずれを修正することが可能である。このため、各乾燥処理区間12A,12Bで発生した位置ずれを、各区間内で修正することができる。このため、各乾燥処理区間12A,12Bの距離が延びても、各区間に配された複数の傾動ローラ331によって、位置ずれを修正できる。
【0070】
また、乾燥処理区間12A,12Bに配された複数の傾動ローラ331を傾動するため、個々の傾動ローラ331の傾動量が小さくても、基材5の大きな位置ずれを修正できる。このため、基材5の位置ずれをより確実に修正できるとともに、基材5にしわが発生することを効果的に抑制できる。したがって、乾燥処理区間12A,12Bにおける乾燥処理の均一性が低下することを効果的に抑制できる。
【0071】
<2.変形例>
以上、実施形態について説明してきたが、本発明は上記のようなものに限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0072】
例えば、上記実施形態では、乾燥処理区間12A,12Bにおいて、各傾動ローラ331がアーチ状に配列されている。しかしながら、各区間において、全ての傾動ローラ331が同じ高さに配列されていてもよい。
【0073】
また、上記実施形態では、傾動ローラ331のうち、一方側端部を、固定された他方側端部に対して相対的に昇降させている。しかしながら、両端部を移動させてもよい。例えば、一方側端部を他方側端部に対して相対的に上昇させる場合、一方側端部を上昇させるとともに、他方側端部を下降させるようにしてもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、乾燥処理部30A,30Bで乾燥処理される基材5の位置ずれが修正されている。しかしながら、本発明の適用範囲は、乾燥処理に限定されるものではなく、その他の規定処理においても有効である。例えば、ロールtoロール方式で搬送される基材に対して、液体を供給して処理するような場合にも、本発明は有効である。この場合、液体処理区間に複数の傾動ローラ331が配列される。
【0075】
また、本発明の適用範囲は、リチウムイオン二次電池の電極材料を塗工液として、塗膜を形成する装置またはシステムに限定されるものではない。本発明は、例えばリチウムイオンキャパシタや太陽電池材料(電極材、封止材)の塗工液の塗膜、あるいは、電子材料の絶縁膜や保護膜の塗膜を形成する装置またはシステムにも適用可能である。さらには、本発明は、顔料や接着剤等の塗工液を塗布して塗膜を形成する装置またはシステムにも適用可能である。
【0076】
この発明は詳細に説明されたが、上記の説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。また、上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせたり、省略したりすることができる。