(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6487736
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】カートリッジヒータ
(51)【国際特許分類】
H05B 3/44 20060101AFI20190311BHJP
H05B 3/48 20060101ALI20190311BHJP
【FI】
H05B3/44
H05B3/48
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-56349(P2015-56349)
(22)【出願日】2015年3月19日
(65)【公開番号】特開2016-177950(P2016-177950A)
(43)【公開日】2016年10月6日
【審査請求日】2017年11月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】390008497
【氏名又は名称】日本電熱株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 功
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 健二
【審査官】
根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】
英国特許出願公開第02367227(GB,A)
【文献】
実開昭63−087491(JP,U)
【文献】
実開昭53−165344(JP,U)
【文献】
特開昭62−256396(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/02−3/18
H05B 3/40−3/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱状の絶縁体に形成された軸方向へ延びる軸中心について対称な一対の貫通孔に、発熱線を両端部が前記絶縁体の一端面から導出するように配置し、該絶縁体を有底の金属管に他端面側から挿入して、前記一対の貫通孔と前記発熱線との隙間に絶縁粉末を充填して該発熱線を埋設するとともに、該絶縁体と前記金属管との隙間に絶縁粉末を充填してなるカートリッジヒータであって、
前記発熱線を複数組、備え、
各組の前記発熱線が埋設された一対の貫通孔を前記絶縁体の周方向に沿って等間隔で複数組を形成するとともに、前記貫通孔における該絶縁体の一端面からの長さを、前記複数組の間で互いに異ならせ、
各組の前記発熱線は、前記絶縁体の他端面において当該他端面を跨るようにターンしており、
前記絶縁体の他端面のうち、少なくとも一組の前記発熱線がターンしている部分には段差が設けられ、当該段差の内部に、少なくとも一組の前記発熱線のターンしている部分が配置されていることを特徴とするカートリッジヒータ。
【請求項2】
前記絶縁体の他端面のうち、各組の前記発熱線がターンしている部分には、互いに異なる高さの段差がそれぞれ設けられ、それぞれの当該段差の内部に、各組の前記発熱線のターンしている部分が配置されている請求項1に記載のカートリッジヒータ。
【請求項3】
複数の前記絶縁体を長手方向に連結することで、各組の前記発熱線がターンしている部分の前記カートリッジヒータの長手方向における位置を異ならせるようにした請求項1又は2に記載のカートリッジヒータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカートリッジヒータに関し、更に詳しくは、従来よりも長手方向の温度分布を容易かつ詳細に設定できるカートリッジヒータに関する。
【背景技術】
【0002】
金属管内に絶縁体を介して発熱線を収納したヒータのうちで、金型や熱板に挿入して使用することを目的として、発熱線の両端の電極を金属管の一方の端部から導出させたものは、一般にカートリッジヒータと呼ばれている。通常、このカートリッジヒータは、円筒状の絶縁体の外周面に、発熱線を螺旋状に巻き付けた構造を有している(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
近年では、金型や熱板における熱処理を高度化するために、カートリッジヒータの長手方向の温度分布を精度良く設定できることが求められている。そのためには、互いに抵抗値(発熱量)の異なる複数組の発熱線をヒータ内に収納して、要求される温度分布を満たすように適宜通電する構成が考えられる。
【0004】
しかしながら、上記の特許文献1のような構造では、複数組の発熱線を螺旋状に巻き付けることになるため、発熱線と金属管とが近接したり、発熱線同士が接触したりして短絡するおそれが高くなるとともに、発熱線の発熱量を調整して温度分布を詳細に設定することが困難であるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−192858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、従来よりも長手方向の温度分布を容易かつ詳細に設定することができるカートリッジヒータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成する本発明のカートリッジヒータは、円柱状の絶縁体に形成された軸方向へ延びる軸中心について対称な一対の貫通孔に、発熱線を両端部が前記絶縁体の一端面から導出するように配置し、該絶縁体を有底の金属管に他端面側から挿入して、前記一対の貫通孔と前記発熱線との隙間に絶縁粉末を充填して該発熱線を埋設するとともに、該絶縁体と前記金属管との隙間に絶縁粉末を充填してなるカートリッジヒータであって、
前記発熱線を複数組、備え、各組の前記発熱線が埋設された一対の貫通孔を前記絶縁体の周方向に沿って等間隔で複数組を形成するとともに、前記貫通孔における該絶縁体の一端面からの長さを、前記複数組の間で互いに異ならせ
、各組の前記発熱線は、前記絶縁体の他端面において当該他端面を跨るようにターンしており、前記絶縁体の他端面のうち、少なくとも一組の前記発熱線がターンしている部分には段差が設けられ、当該段差の内部に、少なくとも一組の前記発熱線のターンしている部分が配置されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のカートリッジヒータによれば、複数組の発熱線を金属管及び互いに接触させることなくヒータ内に収納するとともに、それぞれの組の発熱部における発熱量を、発熱線を配置する長さにより調整するようにしたので、従来よりも長手方向の温度分布を容易かつ詳細に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態からなるカートリッジヒータの長手方向の断面図である。
【
図2】
図1に示すA−A矢視における径方向の断面図である。
【
図3】
図1に示すB−B矢視における径方向の断面図である。
【
図4】絶縁コア材の他端面側の形状を示す斜視図である。
【
図5】絶縁コア材の他端面側の形状の別の例を示す斜視図である。
【
図6】本発明の実施形態からなるカートリッジヒータの応用例における長手方向の断面図である。
【
図7】
図6における径方向の断面図であって、(a)はX−X矢視を、(b)はY−Y矢視を、(c)はZ−Z矢視をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態からなるカートリッジヒータを示す。なお、以下の説明では、発熱線を2組設けた場合を例とするが、3組以上の場合も同様である。
【0011】
このカートリッジヒータは、円柱状の絶縁コア材1に形成された軸方向へ延びる2組の軸中心について対称な一対の貫通孔2A、2Bに、通電により発熱する発熱線3A、3Bを両端部4A、4Bが一端面5から導出するように配置している。そして、その絶縁コア材1を有底の外側金属管7に他端面8側から挿入し、貫通孔2A、2Bと発熱線3A、3Bとの隙間に絶縁粉末6を充填して発熱線3A、3Bを埋設するとともに、絶縁コア材1と外側金属管7との隙間に更に絶縁粉末6を充填した構造を有している。絶縁コア材1と外側金属管7とは、スウェージングやプレス加工により外側金属管7を減径することで一体化されている。
【0012】
なお、金型や熱板の加熱源として使用されるカートリッジヒータには、外径が約10〜20mm、長さが約100〜300mmの寸法仕様のものが一般に用いられる。
【0013】
絶縁コア材1には、酸化マグネシウムの焼結体が用いられる。発熱線3A、3Bの材料には、ニッケル・クロム、鉄・クロム、又は純ニッケルが用いられ、発熱部となる埋設部分9A、9Bの発熱線3A、3Bが螺旋状に加工されている。外側金属管7には、ステンレス、アルミ、銅、鉄、又はチタン製の金属管が、温度範囲及び用途に応じて使い分けられる。また、絶縁粉末6の材料には、酸化マグネシウムが用いられる。
【0014】
発熱線3A、3Bが埋設された一対の貫通孔2A、2Bは、
図2に示すように、絶縁コア材1の周方向に沿って等間隔で形成されている。
【0015】
そして、
図3及び
図4に示すように、絶縁コア材1の他端面8側で発熱線3A、3Bが跨る部分には、互いに異なる高さの段部10A、10Bがそれぞれ形成されており、一対の貫通孔2A、2Bにおける絶縁コア材1の一端面5からの長さL
A、L
Bが、互いに異なるようになっている。
【0016】
このように、2組の発熱線3A、3Bを、外側金属管7及び互いに接触させることなくヒータ内に収納するとともに、それぞれの組の発熱部における発熱量を、発熱線3A、3Bを配置する長さにより調節するようにしたので、従来よりも長手方向の温度分布を容易かつ詳細に設定することができるのである。
【0017】
一対の貫通孔2A、2Bにおける絶縁コア材1の一端面5からの長さL
A、L
Bは、発熱線3A、3Bと外側金属管7の底面との接触を防止するために、
図4に示すように、絶縁コア材1の全長Lよりも短くすることが望ましい。
【0018】
なお、
図5に示す別の例のように、一対の貫通孔2A、2Bのうちの1組について段部10A/10Bを設けない場合(この例では、L
B=L)には、絶縁コア材1の他端面8と外側金属管7の底面との間に、円盤状の絶縁体等を介在させて接触を防止する必要がある。
【0019】
一般に、金型や熱板は、中央部よりも外周部の方が放熱による温度低下が大きくなる。そのため、カートリッジヒータを金型や熱板に挿入して使用する際には、その外周部に相当する部分(カートリッジヒータにおける絶縁コア材1の一端面5側)の方が、中央部(カートリッジヒータにおける絶縁コア材1の他端面8側)よりも大きな発熱量を求められる。
【0020】
そのため、一対の貫通孔2A、2Bにおける絶縁コア材1の一端面5からの長さL
A、L
Bについては、2組のなかでの最大長さに対する最小長さの比(
図4の例では、L
A/L
B)が、0.1以上かつ0.5以下、より好ましくは、0.15以上かつ0.3以下とすることが、実用上の観点から望ましい。
【0021】
2組の一対の貫通孔2A、2Bにそれぞれ埋設された発熱線3A、3Bの間では、上述した発熱線3A、3Bを配置する長さに加えて、発熱線3A、3Bを螺旋状に加工した部分のピッチ、発熱線3A、3Bの線径、及び発熱線3A、3Bの材料から選ばれる少なくとも1つを異ならせることで、より詳細に発熱量を調節することが可能である。なお、発熱線3A、3Bを螺旋状に加工した部分のピッチは、長手方向に沿って連続、不連続のいずれであっても良く、またその大きさを∞(直線状)にしても良い。
【0022】
カートリッジヒータにおいて、2組の一対の貫通孔2A、2Bの間で長さL
A、L
Bを大きく異ならせる場合には、段部10A、10Bの高さの差を大きくすることなく、2個の絶縁コア材1を長手方向に連結して用いることが製造加工面から好ましい。
【0023】
例えば
図6及び
図7に示すように、
図5に示す形状の2個の絶縁コア材1を、2組の一対の貫通孔2A、2Bのみが形成された焼結連結体11を挟んで長手方向に直列に連結して、発熱線3A、3Bが跨る位置を変えるようにすることで、高さの低い段部10Aを形成するだけでも2組の発熱線3A、3B間の長さを大きく異ならせることが可能である。
【0024】
なお、この場合には、絶縁コア材1の他端面8と外側金属管7の底面との間に円盤状の絶縁体等を介在させる必要はない。
【符号の説明】
【0025】
1 絶縁コア材
2A、2B 一対の貫通孔
3A、3B 発熱線
4A、4B 両端部
5 一端面
6 絶縁粉末
7 外側金属管
8 他端面
9A、9B 埋設部分
10A、10B 段部
11 焼結連結体