(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電着塗料は、ポリイミド、ポリアミド、エポキシ及びポリアミドイミドのうちのいずれかからなることを特徴とする請求項1に記載の積層バスバーユニットの製造方法。
前記積層構造とする工程の後に、前記電極端子部を被覆する完全硬化した塗装膜を除去して該電極端子部を露出させる工程を設けることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の積層バスバーユニットの製造方法。
前記電着塗料は、ポリイミド、ポリアミド、エポキシ及びポリアミドイミドのうちのいずれかからなることを特徴とする請求項5に記載の積層バスバーユニットの製造方法。
前記空間保持部材は、ガラスビーズ又はシリカビーズ、あるいは前記電着塗料と同類のシート状部材のうちのいずれかからなることを特徴とする請求項5又は請求項6のいずれかに記載の積層バスバーユニットの製造方法。
前記積層構造とする工程の後に、前記電極端子部を被覆する完全硬化した塗装膜を除去して該電極端子部を露出させる工程を設けることを特徴とする請求項5〜請求項7のいずれかに記載の積層バスバーユニットの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記構成からなる積層型ブスバーアセンブリ100は、バスバー101、102を樹脂モールド部103で囲覆するに際しては、上型と下型とで形成されたキャビティ内にセットされたバスバー101、102を、成形樹脂を使用したインサートインジェクション成形によって形成するものである。そのため、形状及び寸法等の仕様の異なる積層バスバーユニットが求められる場合は、その都度新規に金型の設計及び製作が必要となり、設計から製品の立ち上げまでに時間がかかって製品化のタイミングを逸するおそれがある。また、金型の設計及び製作費用を含む初期導入費用が嵩んで製造コストを押し上げる要因となる。
【0006】
積層型ブスバーアセンブリ100の薄型化及びバスバー101、102間のキャパシタンスの増加のためにバスバー101、102間の間隔を狭くすると、インジェクション成形時に、特にバスバー101、102間の隙間に成形樹脂のウェルドライン、ショート及びボイドが発生し、バスバー101、102間の耐圧不良の要因となるおそれがある。
【0007】
積層型ブスバーアセンブリ100を装置に実装する際の組立配線等の作業によって加わる応力や長期の使用における熱履歴によって、バスバー101、102と樹脂モールド部103との間で剥離が生じ、長期使用に対する信頼性を損ねる可能性がある。
【0008】
そこで、本発明は上記問題に鑑みて創案なされたもので、その目的とするところは、形状及び寸法等の仕様の異なる積層型ブスバーアセンブリ(本発明では、「積層バスバーユニット」と呼称する)の要求に対して容易に対応できて製品立ち上げまでの時間が短く、金型の設計及び製作費用等の初期導入費用を含む製造コストも低コストであり、且つ電気的及び経時的信頼性を含む長期信頼性を確保することが可能な積層バスバーユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載された発明は、複数のバスバーによる積層構造の積層バスバーユニットの製造方法であって、夫々が2個所以上に電極端子部を有する複数の金属平板状のバスバーを準備する工程と、前記複数のバスバーの夫々の全面に耐熱性及び絶縁性を有する電着塗料を用いた電着塗装によって塗装膜を析出させる工程と、前記塗装膜が形成された前記複数のバスバーのうち所定のバスバーの塗装膜に加熱処理を施して完全硬化させる工程と、前記塗装膜が形成された前記複数のバスバーのうち前記所定のバスバー以外のバスバーに加熱処理を施して半硬化させる工程と、前記完全硬化の塗装膜を有するバスバーと前記半硬化の塗装膜を有するバスバーを交互に重ね合せて加圧加熱処理を施して前記半硬化の塗装膜を完全硬化させることにより、前記複数のバスバーを完全硬化した塗装膜で接着して積層構造とする工程と、を有することを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の請求項2に記載された発明は、請求項1において、前記電着塗料は、ポリイミド、ポリアミド、エポキシ及びポリアミドイミドのうちのいずれかからなることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の請求項3に記載された発明は、請求項1又は請求項2のいずれかにおいて、前記塗装膜を析出させる工程の前に、前記複数のバスバーの夫々の電極端子部にマスキングを施す工程と、前記積層構造とする工程の後に、前記マスキングを除去して前記電極端子部を露出させる工程と、を設けることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の請求項4に記載された発明は、請求項1又は請求項2のいずれかにおいて、前記積層構造とする工程の後に、前記電極端子部を被覆する完全硬化した塗装膜を除去して該電極端子部を露出させる工程を設けることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の請求項5に記載された発明は、複数のバスバーによる積層構造の積層バスバーユニットの製造方法であって、夫々が2個所以上に電極端子部を有する複数の金属平板状のバスバーを準備する工程と、前記複数のバスバーの夫々の全面に耐熱性及び絶縁性を有する電着塗料を用いた電着塗装によって塗装膜を析出させる工程と、前記塗装膜が形成された前記複数のバスバーに加熱処理を施して半硬化させる工程と、前記半硬化の塗装膜を有するバスバー間に空間保持部材を挟んで重ね合せて加圧加熱処理を施して前記半硬化の塗装膜を完全硬化させることにより、前記複数のバスバーを完全硬化した塗装膜で接着して積層構造とする工程と、を有することを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の請求項6に記載された発明は、請求項5において、前記電着塗料は、ポリイミド、ポリアミド、エポキシ及びポリアミドイミドのうちのいずれかからなることを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の請求項7に記載された発明は、請求項5又は請求項6のいずれかにおいて、前記空間保持部材は、ガラスビーズ又はシリカビーズ、あるいは前記電着塗料と同類のシート状部材のうちのいずれかからなることを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明の請求項8に記載された発明は、請求項5〜請求項7のいずれかにおいて、前記塗装膜を析出させる工程の前に、前記複数のバスバーの夫々の電極端子部にマスキングを施す工程と、前記積層構造とする工程の後に、前記マスキングを除去して前記電極端子部を露出させる工程と、を設けることを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明の請求項9に記載された発明は、請求項5〜請求項7のいずれかにおいて、 前記積層構造とする工程の後に、前記電極端子部を被覆する完全硬化した塗装膜を除去して該電極端子部を露出させる工程を設けることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、電着塗装によって塗装膜が形成された複数のバスバーのうち所定のバスバーの塗装膜を完全硬化させると共に所定のバスバー以外のバスバーの塗装膜を半硬化させ、完全硬化の塗装膜を有するバスバーと半硬化の塗装膜を有するバスバーを交互に重ね合せて半硬化の塗装膜を完全硬化させることにより、複数のバスバーが完全硬化した塗装膜によって接着されてなる積層構造の積層バスバーユニットを作製する。
【0019】
これにより、異なる仕様の要求に対する製品化に必要となるのはバスバーの打ち抜き用のプレス金型程度である。そのため、新規製品に対する対応が容易で製品立ち上げまでの時間が短縮でき、インジェクション金型を用いた場合に比べて金型製作費等の初期費用を含む製造コストの低コスト化を図ることができる。
【0020】
また、塗装膜は、インジェクション成形で発生するようなウェエルドラインやショートなどの不具合は製法上発生することがなく、ボイドの発生についても十分に抑制することができる。
【0021】
更に、電着塗装にポリイミド、ポリアミド、エポキシ、好ましくはポリアミドイミド等の高耐熱性で高い機械強度を有する塗料を用いるため、使用時に加わる応力や熱履歴によって生じる剥離といった不具合の発生が十分に抑制され、電気的及び経時的信頼性を含む長期信頼性を確保することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、この発明の好適な実施形態を
図1〜
図10を参照しながら、詳細に説明する(同一部分については同じ符号を付す)。尚、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの実施形態に限られるものではない。
【0024】
図1は本発明に係る第1の実施形態の積層バスバーユニットの説明図であり、
図1(a)は平面図、
図1(b)は
図1(a)のA−A断面図である。
【0025】
本実施形態の積層バスバーユニット1は、金属部材からなる第1バスバー10及び第2バスバー20の2本のバスバーの夫々が、優れた耐熱性及び絶縁性を有するポリイミド、ポリアミド、エポキシ、好ましくはポリアミドイミド等からなる樹脂被覆層12及び22で被覆されると共に、互いのバスバー10、20が樹脂被覆層12、22で接着されて2層構造の積層バスバーユニット1が形成されている。
【0026】
積層バスバーユニット1を構成する第1バスバー10は、長板状の延長部10aと該延長部10aの両端部から延長方向に略垂直な方向に突出する一対の電極端子部10b、10cを有し、同様に、積層バスバーユニット1を構成する第2バスバー20は、長板状の延長部20aと該延長部20aの両端部から延長方向に略垂直な方向に突出する一対の電極端子部20b、20cを有している。
【0027】
第1バスバー10の延長部10a及び第2バスバー20の延長部20aはいずれも電流路(電力路)の役割を担い、第1バスバー10の一対の電極端子部10b、10c及び第2バスバー20の電極端子部20b、20cの夫々の一方の電極端子部10b、20b同士は、外部電源の(+)側電極及び(−)側電極に接続されて外部から供給される電力を受電する役割を担い、他方の電極端子部10c、20c同士は外部機器の(+)側電極及び(−)側電極に接続されて、第1バスバー10及び第2バスバー20を通った電力を外部機器に給電する役割を担う。
【0028】
換言すると、第1バスバー10と第2バスバー20はほぼ同一の形状寸法を有し、長手方向に相対的にずらして対面配置した位置関係にある。
【0029】
第1バスバー10と第2バスバー20は、互いの延長部10a、20a同士が対面して所定の間隔を均一に保って平行に延設され、第1バスバー10の一対の電極端子部10b、10c及び第2バスバー20の一対の電極端子部20b、20cを除く全面に亘って樹脂被覆層12及び22で被覆されており、同時に、互いに平行に延設された延長部10a、20a同士の間の隙間も樹脂被覆層12、22で埋められて該延長部10a、20a同士が樹脂被覆層12、22を介して接着されている。
【0030】
次に、上記構成の積層バスバーユニットについて、その製造方法を
図2を参照して説明する
【0031】
まず、
図2(a)に示すバスバー準備工程において、例えば、打ち抜き用のプレス金型を用いた打ち抜き加工によって、互いに所定のほぼ同一形状寸法に加工された金属部材からなる平板状の第1バスバー10及び第2バスバー20の2本のバスバーを準備する。
【0032】
積層バスバーユニット1を構成する第1バスバー10は、長板状の延長部10aと該延長部10aの両端部から延長方向に略垂直な方向に突出する一対の電極端子部10b、10cを有し、積層バスバーユニット1を構成する第2バスバー20は、長板状の延長部20aと該延長部20aの両端部から延長方向に略垂直な方向に突出する一対の電極端子部20b、20cを有している(
図1参照)。
【0033】
次に、
図2(b)の塗膜工程において、予め、第1バスバー10の一対の電極端子部10b、10c及び第2バスバー20の一対の電極端子部20b、20cの夫々にマスキングを施し、一対の電極端子部10b、10cを除く第1バスバー10の全面及び一対の電極端子部20b、20cを除く第2バスバー20の全面に亘って塗装膜11及び21を形成する。
【0034】
第1バスバー10の塗装膜11及び第2バスバー20の塗装膜21はいずれも、優れた耐熱性及び絶縁性を有する、例えばポリイミド、ポリアミド、エポキシ、好ましくはポリアミドイミド等の樹脂溶液による電着塗料を用いて従来の電着塗装プロセスによって表面に析出させることにより形成する。
【0035】
次に、
図2(c)の塗装膜の加熱硬化工程において、第1バスバー10を適宜な温度で加熱処理することにより、塗装膜11を焼き付け乾燥して完全硬化した樹脂被覆層12を形成する。これにより、所定の厚みで且つ厚みが均一の樹脂被覆層12を得ることができる。なお、第1バスバー10の表面に析出した塗装膜11にピンホールがある場合、該ピンホールは加熱処理時に周囲の電着塗料によって埋め合わされて延着塗料が充足されるため、樹脂被覆層12の厚みの均一性が確保される。
【0036】
一方、第2バスバー20は、適宜な温度で加熱処理することにより、塗装膜21を半硬化させて軟質状態の樹脂被覆層22を形成する。
【0037】
最後に、
図2(d)の貼り合わせ工程において、完全硬化した樹脂被覆層12で被覆された第1バスバー10と半硬化した樹脂被覆層22で被覆した第2バスバー20とを、互いの延長部10a、20a同士を長手方向に相対的に所定の距離だけずらして重ね合わせ、両面側から適宜な圧力で加圧した状態を保持しながら適宜な温度で加熱処理することにより、第2バスバー20の半硬化状態の樹脂被覆層22を、加圧により層厚が薄く変形された状態で焼き付け乾燥による再硬化によって完全硬化させる。これにより、第1バスバー10と第2バスバー20とが夫々の樹脂被覆層12、22同士の接着によって貼り合わされてなる2層構造の積層バスバーユニット1が完成する。
【0038】
なお、積層バスバーユニットの多量生産に対しては、積層バスバーユニットを多連化して製造工程に投入する。そのため、上記貼り合わせ工程の後に、図示しないが、多連の積層バスバーユニットを所定のダイシング位置で切断することにより個々の積層バスバーユニットに個片化するダイシング工程を設ける。
【0039】
発明者達は、樹脂被覆層による金属板の接着強度について、熱衝撃試験による確認試験を行った。以下に、その試験サンプル、試験条件、試験方向及び試験結果について説明する。
【0040】
試験サンプルは、
図3((a)は平面図、(b)は側面図)にあるように、板厚が1.2mm、幅が20mm、長さが100mmの第1金属板70と、板厚が1.2mm、幅が10mm、長さが100mmの第2金属板71を用い、ポリアミドイミド樹脂溶液を用いた電着塗装プロセスによって形成された塗装膜を加熱処理によって完全硬化させた第1金属板70に、同様に、ポリアミドイミド樹脂溶液を用いた電着塗装プロセスによって形成された塗装膜を加熱処理によって半硬化させた第2金属板71の先端から18mmの間を重ね合わせ、両面側から適宜な圧力で加圧した状態を保持しながら加熱処理することにより、第2金属板71の半硬化状態の樹脂被覆層を再硬化によって完全硬化させることにより層圧を0.1mm(平均)とする樹脂被覆層72を介して接着一体化した。
【0041】
試験条件は、−40℃/15分〜165℃/15分を1サイクル(30分)とする500サイクル、1000サイクル、2000サイクル及び3000サイクルの熱衝撃試験を行った。試験サンプル数(n)は、各熱衝撃サイクル数に対してn=3とした。
【0042】
試験方法は、JIS K6850[接着剤−剛性被着材の引張せん断接着強さ試験方法]に基づき、試験速度を0.3mm/分とした。
【0043】
試験結果は、
図4の表にあるように、温度変動幅200℃以上の厳しい熱衝撃試験に晒されたにもかかわらず、初期値(約200kgfの引張強度、約11MPaのせん断強度)に対して3000サイクルの熱衝撃試験後の平均引張荷重が約90kgf、平均せん断強度が約5MPaを維持している。また、言い換えると、3000サイクルの熱衝撃試験後の平均引張強度は約90kgfで初期値の約45%の強度維持率を有し、平均せん断強度も約5MPaで初期値の約45%の強度維持率を有している。
【0044】
なお、上記接着強度試験とは別に、300℃/5分の高温加熱試験を行ったが、各金属板55、56間の剥離は確認されなかった。
【0045】
積層バスバーユニットを上述した製造方法で作製することにより、製造工程が電着塗膜工程、加熱硬化工程及び貼り合わせ工程で完結するため、形状及び寸法等の仕様の異なる積層バスバーユニットの要求毎に必要となるのは、バスバーの打ち抜き用のプレス金型程度である。そのため、積層バスバーユニットの要求仕様に対して容易に対応できて製品立ち上げまでの時間を短くすることができ、インジェクション金型を用いた場合に比べて金型の設計及び製作費用等の初期導入費用を含む製造コストを低コストにすることができる。
【0046】
また、第1バスバーと第2バスバーとを接着する樹脂被覆層は、インジェクション成形で発生するようなウェエルドラインやショートなどの不具合は製法上発生することがなく、ボイドの発生についても十分に抑制することができる。
【0047】
更に、電着塗装にポリイミド、ポリアミド、エポキシ、好ましくはポリアミドイミド等の高耐熱性で高い機械強度を有する塗料を用いるため、使用時に加わる応力や熱履歴によって生じる剥離といった不具合の発生が十分に抑制され、電気的及び経時的信頼性を含む長期信頼性を確保することができる。
【0048】
第2の実施形態として
図5((a)は平面図、(b)は(a)のB−B断面図)にあるように、樹脂被覆層12が被覆された第1バスバー10と樹脂被覆層22が被覆された第2バスバー20との間の接着部に空間保持部材25を配置することにより、第1バスバー10と第2バスバー20との間の間隔を適宜な間隔に且つ均一に確保することも可能である。
【0049】
具体的には、
図6(a)にあるように、予め、所定の形状寸法に加工すると共に一対の電極端子部10b、10cにマスキングを施した金属平板からなる第1バスバー10及び所定の形状寸法に加工すると共に一対の電極端子部20b、20cにマスキングを施した金属平板からなる第2バスバー20の2本のバスバーを準備し、一対の電極端子部10b、10cを除く第1バスバー10の全面及び一対の電極端子部20b、20cを除く第2バスバー20の全面に亘って電着塗装プロセスにより塗装膜11、21を形成する(
図5参照)。
【0050】
次に、
図6(b)にあるように、第1バスバー10及び第2バスバー20の夫々の塗装膜11、21に対して加熱処理を施すことにより半硬化した樹脂被覆層12、22とする。
【0051】
最後に、
図6(c)にあるように、第1バスバー10及び第2バスバー20の互いの接着面側の半硬化の樹脂被覆層12、22の間に、均一な径を有す複数のガラスビーズあるいはシリカビーズ等からなる空間保持部材25をほぼ一定の間隔で配置し、空間保持部材25を挟んで第1バスバー10及び第2バスバー20を重ね合わせ、両面側から適宜な圧力で加圧した状態を保持しながら加熱処理することにより、第1バスバー10及び第2バスバー20の夫々の半硬化状態の樹脂被覆層12、22を完全硬化させる。これにより、互いの間隔が空間保持部材25に保持された第1バスバー10及び第2バスバー20が夫々の樹脂被覆層12、22同士の接着によって貼り合わされてなる2層構造の積層バスバーユニット2が形成される。
【0052】
なお、空間保持部材25を用いることにより、バスバーの長さが長大化した場合でも各バスバー間の均一な間隔が確実に確保できると共に、空間保持部材25の大きさ(径)を適宜に選ぶことによりバスバー間の間隔を容易に所望の間隔に設定することができる。このように、互いのバスバーを接着する樹脂被覆層に異種部材からなる空間保持部材が含まれたとしても、長大化したバスバーの接着面積が大きいため、せん断引張強度を実用上支障のない程度に確保することができる。
【0053】
第3の実施形態として、上記ガラスあるいはシリカビーズからなる空間保持部材に代わって、樹脂被覆層を形成する樹脂部材(電着塗料)と同類のシート材を空間保持部材とすることも可能である。具体的には
図7((a)は平面図、(b)は(a)のC−C断面図)にあるように、例えば、ポリアミドイミドからなる樹脂被覆層12で被覆された第1バスバー10と、同様にポリアミドイミドからなる樹脂被覆層22で被覆された第2バスバー20とをポリアミドイミド(PAI)シートからなる空間保持部材25を介して接着して2層構造の積層バスバーユニット3としたものである。
【0054】
本実施形態の積層バスバーユニット3に係る製造工程は図示しないが、一対の電極端子部10b、10cを除く第1バスバー10の全面及び一対の電極端子部20b、20cを除く第2バスバー20の全面に亘って電着塗装プロセスによって塗装膜を形成した後、適宜な温度で加熱処理することにより夫々の塗装膜を半硬化させて樹脂被覆層12、22を形成し、夫々が半硬化状態の樹脂被覆層12、22で被覆された第1バスバー10と第2バスバー20とでPAIシートからなる空間保持部材25を挟んで重ね合わせ、両面側から適宜な圧力で加圧した状態を保持しながら適宜な温度で加熱処理することにより、半硬化状態の樹脂被覆層12、22を焼き付け乾燥による再硬化によって完全硬化させる。これにより、樹脂被覆層12が被覆された第1バスバー10と樹脂被覆層22が被覆された第2バスバー20とがPAIシートからなる空間保持部材25を介した接着によって貼り合わされてなる2本のバスバーによる2層構造の積層バスバーユニット3が完成する。
【0055】
空間保持部材25としてPAIシートを用いた積層バスバーユニット3は、接着層となる樹脂被覆層12、22を形成する樹脂部材(電着塗料)と同類のシート材を用いているため、良好な接着力によって高いせん断引張強度を得ることができる。
【0056】
上記実施形態1〜3は、第1バスバー10及び第2バスバー20の2本のバスバーを用いた2層構造の積層バスバーユニット1、2、3であったが、積層バスバーユニットは必ずしも2層構造に限られるものではなく、第4の実施形態(
図8((a)は平面図、(b)は(a)のD−D断面図)参照)として、例えば、樹脂被覆層32が被覆された第1バスバー30、樹脂被覆層37が被覆された第2バスバー35及び樹脂被覆層42が被覆された第3バスバー40の3本のバスバーによる3層構造の積層バスバーユニット4も可能である。
【0057】
その場合は、
図9(a)にあるように、予め、所定の形状寸法に加工すると共に一対の電極端子部30b、30cにマスキングを施した金属平板からなる第1バスバー30、所定の形状寸法に加工すると共に一対の電極端子部35b、35cにマスキングを施した金属平板からなる第2バスバー35及び所定の形状寸法に加工すると共に一対の電極端子部40b、40cにマスキングを施した金属平板からなる第3バスバー40の3本のバスバーを準備し、一対の電極端子部30b、30cを除く第1バスバー30の全面、一対の電極端子部35b、35cを除く第2バスバー35の全面及び一対の電極端子部40b、40cを除く第3バスバー40の全面に亘って電着塗装プロセスにより塗装膜31、36、41を形成する(
図8参照)。
【0058】
次に、
図9(b)にあるように、3本のバスバーのうち、第1バスバー30及び第3バスバー40の2本のバスバーの夫々の塗装膜31、41に対して加熱処理を施すことにより、完全硬化した樹脂被覆層32、42とする。一方、第2バスバー35の塗装膜36に対しては、熱処理を施すことにより半硬化した樹脂被覆層37とする。
【0059】
最後に、
図9(c)にあるように、半硬化の樹脂被覆層37が被覆された第2バスバー35を、夫々に完全硬化の樹脂被覆層32、42が被覆された第1バスバー30及び第3バスバー40で挟んで重ね合わせ、両面側から適宜な圧力で加圧した状態を保持しながら加熱処理することにより、第2バスバー35の半硬化状態の樹脂被覆層37を完全硬化させる。これにより、第1バスバー30と第2バスバー35の夫々の樹脂被覆層32、37同士の接着、及び第2バスバー35と第3バスバー40の夫々の樹脂被覆層37、42同士の接着によって貼り合わされてなる3本のバスバーによる3層構造の積層バスバーユニット4が形成される。
【0060】
図10((a)は平面図、(b)は(a)のE−E断面図)は第5の実施形態を示すものである。本実施形態は、電極端子部50b、50cを除く全面に樹脂被覆層52が被覆された第1バスバー50、電極端子部55b、55cを除く全面に樹脂被覆層57が被覆された第2バスバー55、電極端子部60b、60cを除く全面に樹脂被覆層62が被覆された第3バスバー60及び電極端子部65b、65cを除く全面に樹脂被覆層67が被覆された第4バスバー65の4本のバスバーが貼り合わされて4層構造の積層バスバーユニット5が形成されている。
【0061】
そして、最下段の第1バスバー50の電極端子部50bと下から3段目の第3バスバー60の電極端子部60b、及び電極端子部50cと電極端子部60cの夫々が加締め等により接続され、同様に、下から2段目の第2バスバー55の電極端子部55bと最上段の第4バスバー65の電極端子部65b、及び電極端子部55cと電極端子部65cの夫々が加締め等により接続されている。
【0062】
本実施形態の積層バスバーユニット5に係る製造工程は図示しないが、一対の電極端子部50b、50cを除く第1バスバー50の全面、一対の電極端子部55b、55cを除く第2バスバー55の全面、一対の電極端子部60b、60cを除く第3バスバー60の全面及び一対の電極端子部65b、65cを除く第4バスバー65の全面に亘って電着塗装プロセスによって塗装膜を形成した後、4層構造の積層バスバーユニット5において一段おきに配置されるバスバー、例えば、第1バスバー50及び第3バスバー60の夫々に形成された塗装膜を加熱処理によって完全硬化させ、それ以外の第2バスバー55及び第4バスバー65の夫々に形成された塗装膜を加熱処理によって半硬化させる。
【0063】
そして、完全硬化した樹脂被覆層52、62が被覆された第1バスバー50及び第3バスバー60と、半硬化した樹脂被覆層57、67が被覆された第2バスバー55及び第4バスバー65とを交互に重ね合わせ、両面側から適宜な圧力で加圧した状態を保持しながら適宜な温度で加熱処理することにより、半硬化状態の樹脂被覆層57、67を焼き付け乾燥による再硬化によって完全硬化させる。これにより、4枚のバスバーによる4層構造の積層バスバーユニットか完成する。
【0064】
この場合、互いに接合された電極端子部50b、60bの夫々を有する第1バスバー50及び第3バスバー60と、互いに接合された電極端子部55b、65bの夫々を有する第2バスバー55及び第4バスバー65が交互に積層された構成となっているため、接合された電極端子部50b、60bと接合された電極端子部55b、65bとの間におけるキャパシタンスを大きくすることができる。具体的には、4本のバスバーの夫々の接着面積が、
図11に示す従来の積層型ブスバーアセンブリ100を構成するバスバー101、102の対面面積と同一であり、且つ4本のバスバーのうちの互いに貼り合わされたバスバー同士の間隔が積層型ブスバーアセンブリ100を構成するバスバー101、102同士の間隔と同一の場合、本実施形態の積層バスバーユニット5は従来の積層型ブスバーアセンブリ100に対して約3倍のキャパシタンスを有するものとなる。
【0065】
なお、上記実施形態1〜5において、少なくとも1本のバスバーが粘性が高い半硬化状態で加圧加熱処理を施すため、気泡が発生したりあるいは気泡を取り込み易い。そのため、加圧加熱を伴う貼り合わせ工程については、積層バスバーユニットに対する要求仕様によっては大気圧環境下において実施できるが、気泡の混入を防ぐために真空中あるいは減圧環境下での実施が好ましい。
【0066】
但し、完全硬化の樹脂被覆層が被覆されたバスバーあるいは硬質の空間保持部材を貼り合わせ工程に投入することにより、互いに対面するバスバー間に完全硬化の樹脂被覆層あるいは硬質の空間保持部材が位置した状態で加圧加熱処理が施される場合は、加圧加熱処理を大気圧環境下で実施することによって気泡が混入したとしても、バスバーの厚み方向の気泡の径が半硬化から薄く変形されて完全硬化した樹脂被覆層の層厚以下に抑えられるため、バスバー間の厚み精度を一定以上に確保することができ、樹脂被覆層による耐圧低下を抑制することができる。
【0067】
上記積層バスバーユニットの製造工程において、塗装膜の塗膜工程の前に電極端子部にマスキングを施すことにより、塗膜工程において電極端子部を除く全面に亘って塗装膜を形成するようにしたが、塗膜工程でバスバー全面に亘って塗装膜を形成し、積層バスバーユニット作製後の後処理工程において電極端子部を露出させることも可能である。具体的には、積層バスバーユニットの電極端子部に被覆された樹脂被覆膜をレーザ加工によって除去する方法等が考えられる。
【0068】
また、樹脂被覆層が被覆されたバスバーの適宜な位置に、塗装工程前のマスキング処理あるいは作製後のレーザ加工によって露出部を設けて該露出部にはんだ接合等によって回路基板等の外部回路の電極部を接合することにより、バスバーと外部回路とが一体化したバスバーモジュールを構成することができる。この場合。バスバーと外部回路とを個別に用意してモジュール化した場合と比較して小型化の実現が期待できる。
【0069】
以上説明したように、本発明の積層バスバーユニットの製造方法は、製造工程が電着塗膜工程、加熱硬化工程及び貼り合わせ工程で完結するため、形状及び寸法等の仕様の異なる積層バスバーユニットの要求毎に必要となるのは、バスバーの打ち抜き用のプレス金型程度である。そのため、積層バスバーユニットの要求仕様に対して容易に対応できて製品立ち上げまでの時間を短くすることができ、インジェクション金型を用いた場合に比べて金型の設計及び製作費用等の初期導入費用を含む製造コストを低コストにすることができる。小ロット生産に対しても容易に対応することができる。
【0070】
また、バスバーを被覆し且つバスバー同士を接着する樹脂被覆層の形成が、電着塗装プロセスによって行われるため、インジェクション成形で発生するようなウェエルドラインやショートなどの不具合は製法上発生することがなく、ボイドの発生についても十分に抑制することができる。
【0071】
また、電着塗装にポリイミド、ポリアミド、エポキシ、好ましくはポリアミドイミド等の高耐熱性で高い機械強度を有する塗料を用いるため、使用時に加わる応力や熱履歴によって生じる剥離といった不具合の発生が十分に抑制され、電気的及び経時的信頼性を含む長期信頼性を確保することができる。
【0072】
更に、金属平板からなる複数のバスバーを樹脂被覆層を介して多重に対面配置する際に、樹脂被覆層の形成を電着塗装及び加圧加熱処理を有する工程によって行うようにした。そのため、対面配置したバスバー間の間隔を小さくすることが可能となってバスバー間のキャパシタンスを大きくすることができ、その結果、例えばスイッチング回路の電源供給ラインに用いることによりバスバー間のキャパシタンスによる良好なデカップリング効果によってサージの抑制が可能となる。