特許第6487789号(P6487789)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6487789制御棒貯蔵装置および制御棒貯蔵装置の改造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6487789
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】制御棒貯蔵装置および制御棒貯蔵装置の改造方法
(51)【国際特許分類】
   G21C 19/07 20060101AFI20190311BHJP
【FI】
   G21C19/07 700
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-123450(P2015-123450)
(22)【出願日】2015年6月19日
(65)【公開番号】特開2017-9364(P2017-9364A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2017年9月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩倉 成良
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 淳
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 光幸
【審査官】 大門 清
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭63−072597(JP,U)
【文献】 実開昭59−098399(JP,U)
【文献】 特開平07−191183(JP,A)
【文献】 特開昭56−112691(JP,A)
【文献】 特開昭55−101093(JP,A)
【文献】 特開昭55−046140(JP,A)
【文献】 米国特許第4434092(US,A)
【文献】 米国特許第6047037(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵プールの底面に設置される基部と、前記基部に立設された支柱と、前記支柱の上部に取り付けられて左右に延在し、制御棒に備わる枠状の上部ハンドル部を介して前記制御棒を支持するハンガ部材と、を備え、
前記ハンガ部材は、
左右方向の中央部から左右方向の両端部に向かうにつれて上方へ傾斜するような傾斜角度で延在しており、
前記ハンガ部材の前記傾斜角度は、前記ハンガ部材の高さ方向の大きさが、前記上部ハンドル部の高さ方向の枠内に収まる大きさとなる角度に設定されていることを特徴とする制御棒貯蔵装置。
【請求項2】
前記ハンガ部材は、
外力を受けた際に上下方向に振動するようになっており、
振動の下限位置で、略水平姿勢または略水平姿勢よりも上方へ傾斜する姿勢を保つことを特徴とする請求項1に記載の制御棒貯蔵装置。
【請求項3】
前記ハンガ部材には、制御棒を係止する切欠部が形成されており、
前記切欠部は、平らな底部と、前記底部から立ち上がる側部と、を備えており、
前記底部は、前記ハンガ部材の振動の下限位置にて、略水平または前記ハンガ部材の中央部に向けて下る傾斜状に配されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の制御棒貯蔵装置。
【請求項4】
前記傾斜角度は、水平な基準面に対して、10度以上15度以下であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の制御棒貯蔵装置。
【請求項5】
前記傾斜角度は、水平な基準面に対して、10度未満であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の制御棒貯蔵装置。
【請求項6】
前記傾斜角度は、水平な基準面に対して、15度より大きいことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の制御棒貯蔵装置。
【請求項7】
貯蔵プールの底面に設置される基部と、前記基部から上方へ延在する支柱と、前記支柱の上部に取り付けられて左右に延在し、制御棒に備わる枠状の上部ハンドル部を介して前記制御棒を支持するハンガ部材と、を備えた制御棒貯蔵装置の改造方法であって、
前記ハンガ部材の左右方向の中央部に対して前記ハンガ部材の左右の端部を治具で持ち上げ、前記ハンガ部材の高さ方向の大きさが、前記上部ハンドル部の高さ方向の枠内に収まる大きさとなるように、前記ハンガ部材の左右方向の中央部から前記ハンガ部材の左右方向の両端部に向かうにつれて、前記ハンガ部材が上方へ傾斜するような傾斜角度にしたことを特徴とする制御棒貯蔵装置の改造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯蔵プールに設置される制御棒貯蔵装置および制御棒貯蔵装置の改造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
沸騰水型原子力発電所において、点検等の目的で炉心から全数あるいは比較的多数の制御棒を取り出すことがある。この場合、制御棒は、再び炉心に戻して再使用する必要があることから、貯蔵プール内で一時的に健全な状態を維持して貯蔵、保管する必要がある。
また、定期検査で定期的に制御棒を交換する場合にも同様に、貯蔵プール内で貯蔵、保管される。
【0003】
従来、貯蔵プール内で制御棒を貯蔵する技術として特許文献1に開示されたものが知られている。
特許文献1は、交換作業等での取扱上の制限および放射線遮へいの観点から、比較的水深を確保可能な貯蔵プール内で制御棒を貯蔵するものである。特許文献1では、水深の深いエリアとなる部分に貯蔵ラックを配置し、当該ラックに真上から制御棒を挿入してラック内に制御棒を着座させ、制御棒を貯蔵、保管している。
【0004】
ここで、水深の深いエリアは燃料体の貯蔵のためのスペースが主であり、特許文献1では、燃料体の貯蔵スペースを広くするために、ラック同士を上下に重ねている。つまり、水深の深いエリアにおいて、制御棒の貯蔵スペースは、極力狭く抑えたいという制約がある。このため、水深の深いエリアでは、制御棒の貯蔵容量も最小限にする必要があり、前記した炉内の点検等で多くの制御棒を一度に取り出す場合には、その貯蔵、保管が可能となるだけの十分な貯蔵容量を確保することが難しいといった問題があった。
【0005】
そこで、貯蔵プール内で比較的スペースに余裕のある水深の浅いエリアを制御棒の貯蔵、保管スペースとして有効利用することが考えられる。しかし、水深の浅いエリアは、制御棒の取扱、貯蔵時の放射線遮へいの観点から、水深の深いエリアと同様に制御棒を扱うことができないという制約がある。
【0006】
このため水深の浅いエリアでは、特許文献2に開示されているように、貯蔵ハンガを用いて、放射線遮へいの観点から所定の水深を維持した状態で水平方向に制御棒を移動させ、ハンガに制御棒を吊り下げる方法がとられている。
また、特許文献3に開示されているように、ゲート状の部品が開閉する構造の貯蔵ラックを用い、水平方向から制御棒をラックに挿入する方法がとられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭60−21491号公報
【特許文献2】実開昭59−98399号公報
【特許文献3】特公昭61−48877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2の制御棒貯蔵装置は、図8に示すように、装置100の上端に設けられたハンガとしての水平バー部材101に、制御棒50の上部ハンドル部51を吊り下げて貯蔵、保管を行う構造である。しかしながら、設備に適用される耐震条件のうち、特に上下方向の加速度が大きい場合には、図9に示すように、水平バー部材101が上下に振動し、吊り下げた制御棒50が装置の外側に飛び跳ねて脱落するおそれがあった。この場合、制御棒50が貯蔵プールP内に落下することにより、貯蔵プールP内の重要度の高い他機器を損傷させるおそれもあった。
【0009】
また、特許文献3の制御棒貯蔵設備は、設備に貯蔵した制御棒の荷重をラックの下部構造(底部)で受けるため、耐震・強度の維持は可能である。しかしながら、制御棒をラック内に挿入する際に、事前にゲート状の部品を開けておき、制御棒挿入後に同部品を閉め、制御棒の貯蔵後にもラックの強度を確保する必要があるといった貯蔵前後の準備・復旧作業が伴う煩雑さがあった。また、貯蔵ラックの構造が複雑になるという課題があった。
【0010】
そこで本発明は、構造が簡単であるとともに、制御棒の貯蔵・保管作業が行い易く、しかも、吊り下げた制御棒の脱落を好適に防止することができる制御棒貯蔵装置および制御棒貯蔵装置の改造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の制御棒貯蔵装置は、貯蔵プールの底面に設置される基部と、前記基部に立設された支柱と、前記支柱の上部に取り付けられて左右に延在し、制御棒に備わる枠状の上部ハンドル部を介して前記制御棒を支持するハンガ部材と、を備え、前記ハンガ部材は、左右方向の中央部から左右方向の両端部に向かうにつれて上方へ傾斜するような傾斜角度で延在しており、前記ハンガ部材の前記傾斜角度は、前記ハンガ部材の高さ方向の大きさが、前記上部ハンドル部の高さ方向の枠内に収まる大きさとなる角度に設定されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の制御棒貯蔵装置の改造方法は、貯蔵プールの底面に設置される基部と、前記基部から上方へ延在する支柱と、前記支柱の上部に取り付けられて左右に延在し、制御棒に備わる枠状の上部ハンドル部を介して前記制御棒を支持するハンガ部材と、を備えた制御棒貯蔵装置の改造方法であって、前記ハンガ部材の左右方向の中央部に対して前記ハンガ部材の左右の端部を治具で持ち上げ、前記ハンガ部材の高さ方向の大きさが、前記上部ハンドル部の高さ方向の枠内に収まる大きさとなるように、前記ハンガ部材の左右方向の中央部から前記ハンガ部材の左右方向の両端部に向かうにつれて、前記ハンガ部材が上方へ傾斜するような傾斜角度にしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、構造が簡単であるとともに、制御棒の貯蔵・保管作業が行い易く、しかも、吊り下げた制御棒の脱落を好適に防止することができる制御棒貯蔵装置および制御棒貯蔵装置の改造方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態の制御棒貯蔵装置を示す正面図である。
図2】一実施形態の制御棒貯蔵装置のハンガ部材を示す拡大正面図である。
図3】(a)はハンガ部材の切欠部を示す拡大正面図、(b)は変形例のハンガ部材の切欠部を示す拡大正面図、(c)は振動の下限位置におけるハンガ部材の切欠部の様子を示す拡大正面図である。
図4】制御棒の貯蔵・保管作業時の様子を示す正面図である。
図5】ハンガ部材の上下振動の様子を示す正面図である。
図6】貯蔵プールに制御棒貯蔵装置を複数設置した状態を示す模式斜視図である。
図7】制御棒貯蔵装置の改造手順を示すハンガ部材の拡大正面図である。
図8】従来技術の説明図である。
図9】従来技術の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る制御棒貯蔵装置の実施形態について図面を参照して説明する。ここで、以下の説明において、「上下」「左右」を言うときは、図1図2に示す方向を基準とする。
【0016】
図1に示すように、制御棒貯蔵装置1は、貯蔵プールPの底面P1を利用して底面P1に設置されるものである。制御棒貯蔵装置1は、基部10と、支柱20と、ハンガ部材30とを備えている。
【0017】
基部10は、傾斜桟11を備えている。傾斜桟11は支柱20を支持している。傾斜桟11の下端部は、図示しない固定手段によって、貯蔵プールPの底面P1に固定されている。
【0018】
支柱20は、基部10に支持されて立設されており、制御棒50(図4参照)の荷重に耐え得る強度、剛性を備えている。支柱20の上端21には、ハンガ部材30が取り付けられている。ハンガ部材30は、溶接やボルトを用いた固定手段によって支柱20に固定されている。
【0019】
ハンガ部材30は、制御棒50(図4参照)を支持する部材である。ハンガ部材30は、図2に示すように、左右に延在する板状の部材からなり、正面視で略V字状を呈している。ハンガ部材30は、左右方向の中央部32から左右方向の両端部33a,33bに向かうにつれて上方へ傾斜するように延在している。
【0020】
ハンガ部材30は、地震等の外力を受けた際に、制御棒50を支持した状態のまま上下方向に振動するようになっている。この際、ハンガ部材30は、図5に示すように、振動の下限位置で、略水平姿勢(水平方向にハンガ部材30が延在する姿勢)を採るように構成されている。つまり、ハンガ部材30は、地震等の外力を受けた際に、左右両端部33a,33bが水平な基準面Sよりも下側に垂れ下がり難い構成となっている。
【0021】
本実施形態では、水平な基準面Sに対する傾斜角度θ1(図2参照)が、10度以上15度以下に設定している。傾斜角度θ1は、制御棒50を貯蔵する際等の取合い、および前記した地震等の外力による上下方向の振動量を考慮して設定される。つまり、制御棒50の上部ハンドル部51の枠内(図4参照)寸法に、ハンガ部材30の高さ寸法が収まるように傾斜角度θ1を設定している。また、前記のように地震等の外力を受けた際の振動の下限位置で、ハンガ部材30が略水平姿勢を採るように設定している。
【0022】
ハンガ部材30の上縁には、所定間隔を置いて切欠部31が形成されている。切欠部31は、図3(a)に示すように、略コ字状を呈しており、底部31aと、一側部31bと、他側部31cと、を備えている。底部31aは平であり、略水平に形成されている。一側部31bは、底部31aの一端部(図3(a)では底部31aの左端部)から略鉛直に立ち上がっている。他側部31cは、底部31aの他端部(図3(a)では底部31aの右端部)からハンガ部材30の中央部32側に向けて傾斜状に立ち上がっている。
【0023】
このような制御棒貯蔵装置1に制御棒50を支持する場合には、図4に示すように、ハンガ部材30の左右側方から制御棒50をクレーン(不図示)等により水平移動させて、ハンガ部材30に制御棒50を近づける。この場合、制御棒50の水深(水厚)を確保しながら制御棒50を移動させる。
【0024】
その後、水平移動を継続して、制御棒50の上部ハンドル部51にハンガ部材30の端部33a(33b)を挿通させ、切欠部31の位置に制御棒50が来たらクレーンにより制御棒50を下降させる。これにより、切欠部31に上部ハンドル部51が係止され、ハンガ部材30に制御棒50が支持される。
【0025】
本実施形態では、ハンガ部材30の傾斜角度θ1(図2参照)が10度以上15度以下に設定され、上部ハンドル部51の枠内に、ハンガ部材30の高さが収まるようにしてあるので、水平移動を行うだけで、上部ハンドル部51にハンガ部材30を挿通させることができる。つまり、制御棒50に対して上下方向の移動を加えることなく、ハンガ部材30に沿う制御棒50の移動が可能である。したがって、貯蔵時等におけるクレーンの操作が簡単であり、貯蔵・保管作業が行い易い。
【0026】
しかも、ハンガ部材30の傾斜角度θ1を10度以上15度以下に設定しているので、地震等の外力を受けた際の振動の下限位置で、ハンガ部材30が略水平姿勢を採るようになり、ハンガ部材30の左右両端部33a,33bが水平面よりも下側に垂れ下がり難くなる。したがって、吊り下げた制御棒50が装置の外側に飛び跳ねて脱落するのを好適に防止することができる。
【0027】
次に、図7を参照して制御棒貯蔵装置の改造方法について説明する。この改造方法は、既設の制御棒貯蔵装置において、ハンガ部材30Aが水平方向に延在する構成である場合に、治具40を用いてハンガ部材30Aを改造し、ハンガ部材30Aに傾斜角度θ1をもたせるようにしたものである。
【0028】
治具40は、ハンガ部材30Aの中央部32Aに当接する第一底部41と、第一底部41に対してθ1の傾斜角度を有する第二底部42と、を備えている。
【0029】
改造時には、ハンガ部材30Aの中央部32Aに治具40の第一底部41を当接させる。その後、第一底部41を当接させた側の端部33b(33a)を治具で持ち上げ、ハンガ部材30Aを塑性変形させる。同様の作業を、ハンガ部材30Aの反対側について行うことで、ハンガ部材30Aを略V字形状に改造することができる。
【0030】
以上のようにすることで、水平方向に延在する構成のハンガ部材30Aを改造して、傾斜角度θ1を備えたハンガ部材30Aとすることができ、高耐震化を図ることができる。
なお、治具を複数種類用意しておくことで、所望の傾斜角度を有するハンガ部材30Aに改造することができる。また、ハンガ部材に予め傾斜角度が備わる場合にも、治具を用いて、異なる傾斜角度となるように変更することもできる。
【0031】
以上説明した本実施形態によれば、制御棒貯蔵装置1が、基部10と、支柱20と、ハンガ部材30とを備える構成であるので、構造が簡単であり、コストを低減した制御棒50の貯蔵が可能である。
【0032】
また、ハンガ部材30が略V字形状を呈しているので、地震等の外力を受けた場合にもハンガ部材30から制御棒50が脱落し難く、安定した制御棒50の貯蔵・保管が可能である。しかも、地震等の外力を受けた際のハンガ部材30の振動の下限位置で、ハンガ部材30が略水平姿勢を採るので、吊り下げた制御棒50が装置の外側に飛び跳ねて脱落するのを好適に防止することができる。これにより、貯蔵プールP内の重要度の高い他機器を損傷させると言う波及的な影響を最小限に抑えることが可能である。
また、ハンガ部材30が略V字形状を呈しているので、切欠部31から制御棒50が外れた場合に、制御棒50は、ハンガ部材30の中央部32に移動するだけであるので、この場合にも貯蔵プールP内の重要度の高い他機器を損傷させると言う波及的な影響を生じることがない。
【0033】
ここで、図3(b)に示すように、ハンガ部材30の切欠部31Aの底部31aに対して角度θ2を付してもよい。底部31aは、角度θ2によって水平な基準面S(図2参照)から傾斜する状態となる。一方、底部31aは、角度θ2によって、図3(c)に示すように、地震等の外力を受けた際のハンガ部材30の振動の下限位置で、略水平状態となる。このように、ハンガ部材30の振動の下限位置で底部31aが略水平状態となるので、切欠部31Aに吊り下げた制御棒50が安定し、装置の外側に制御棒50が飛び跳ねて脱落するのをより一層好適に防止することができる。
【0034】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更が可能である。
例えば、水平な基準面Sに対する傾斜角度θ1を、10度未満に設定してもよい。このように10度未満に設定することにより、傾斜角度θ1が小さくなるので、制御棒貯蔵装置1への制御棒50の挿入性が向上し作業時間が短縮される。作業時間の短縮はコストの低減に寄与する。
【0035】
また、これとは逆に、水平な基準面Sに対する傾斜角度θ1を、15度より大きく設定してもよい。このように15度より大きく設定することによって、地震時の貯蔵プールP内での制御棒50の保持性をより向上させることができる。
【0036】
また、制御棒貯蔵装置1は、図6に示すように、支柱20の上端部を連結部材35で連結して、貯蔵プールP内に複数並べて設置することができる。この場合、連結部材35の端部35aは、貯蔵プールPの側壁P2に延設して側壁P2に固定するとよい。また、図6では、支柱20の上端部以外の部分にも、連結部材35を利用してハンガ部材30を設置している。これにより、ハンガ部材30の設置数を増やすことができ、より多くの制御棒50(図4参照)を効率よく貯蔵することが可能である。また、連結部材35で連結することによって、制御棒貯蔵装置1相互の強度向上も図ることができる。
【0037】
また、切欠部31の底部31aの水平な基準面Sに対する角度θ2は、適宜設定することができる。この場合、角度θ2を大きくすることにより、振動の下限位置において、底部31aは、ハンガ部材30の中央部32に向けて下る傾斜状に配され、装置の外部に制御棒50が脱落するのをより好適に防止することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 制御棒貯蔵装置
10 基部
20 支柱
21 上部
30 ハンガ部材
30A ハンガ部材
31 切欠部
31a 底部
31b 一側部(側部)
31c 他側部(側部)
32 中央部
33a,33b 端部
40 治具
50 制御棒
P 貯蔵プール
P1 底面
θ1 傾斜角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9