(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記チョーク部は、前記シリンダ、前記ピストンロッド及び前記ピストンとは別体に形成され、前記シリンダ、前記ピストンロッド及び前記ピストンのいずれかに取り付けられることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の緩衝器。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る緩衝器について説明する。ここでは、作動流体として作動油が用いられる油圧緩衝器について説明するが、作動水等の他の流体を作動流体として用いてもよい。
【0032】
<第1実施形態>
まず、
図1から
図3を参照して、本発明の第1実施形態に係る緩衝器100について説明する。緩衝器100は、例えば、車両(図示せず)の車体と車軸との間に設けられ減衰力を発生させて車体の振動を抑制する装置であり、「モノチューブショックアブソーバ」とも呼ばれる。
【0033】
緩衝器100は、
図1に示すように、作動油が封入されるシリンダ10と、シリンダ10内に摺動自在に挿入されるバルブディスクとしてのピストン20と、シリンダ10に進退自在に挿入されるピストンロッド30と、を備える。ピストンロッド30は、ピストン20に連結され、シリンダ10の外部へ延出する。
【0034】
シリンダ10は、略筒状のチューブ11と、チューブ11の一端部に設けられるロッドガイド12及びオイルシール13と、チューブ11の他端部に設けられるキャップ部材14と、を有する。
【0035】
ロッドガイド12は、ピストンロッド30を摺動自在に支持する。オイルシール13は、シリンダ10からの作動油の漏れを防止するとともにシリンダ10内への異物の流入を防止する。ピストンロッド30とオイルシール13とにより、チューブ11の一方の開口11aが閉塞される。ロッドガイド12及びオイルシール13は、筒状のチューブ11の一端部を内側に折り曲げるかしめ加工により、チューブ11に固定される。
【0036】
キャップ部材14は、溶接によりチューブ11に固定され、チューブ11の他方の開口11bを閉塞する。チューブ11を塑性加工により有底筒状に形成することによって、キャップ部材14をチューブ11に設けることなくチューブ11の他端が閉塞されてもよい。
【0037】
キャップ部材14には、車両に取り付けられる連結部材60が設けられる。ピストンロッド30の一端部の外周面には、車両の連結部(図示せず)に螺合する雄ねじ30aが形成される。連結部材60が車両に取り付けられ雄ねじ30aが車両の連結部に螺合することにより、緩衝器100が車両に搭載される。
【0038】
ピストン20は、その中心に孔21を有する環状に形成される。ピストン20の孔21にはピストンロッド30の他端部が挿通される。ピストンロッド30の他端部の外周面には雄ねじ30bが形成される。ナット31が雄ねじ30bに螺合することにより、ピストン20がピストンロッド30の一端部に固定される。
【0039】
ピストン20は、シリンダ10の内部を、ピストン20よりもロッドガイド12側に位置する伸側室1(流体室)と、ピストン20よりもキャップ部材14側に位置する圧側室2(流体室)とに区画する。伸側室1と圧側室2には作動油が封入される。
【0040】
また、緩衝器100は、シリンダ10内に気室3を画成するフリーピストン40を備える。気室3は、圧側室2よりもキャップ部材14側に位置し、フリーピストン40により圧側室2と隔てられる。気室3には気体が封入される。
【0041】
フリーピストン40はシリンダ10に摺動自在に挿入される。フリーピストン40の外周には、気室3の気密性を保持するシール部材41が設けられる。
【0042】
緩衝器100が収縮してピストンロッド30がシリンダ10に進入すると、フリーピストン40は気室3を縮小する方向に移動し、気室3は、進入したピストンロッド30の体積の分だけ収縮する。緩衝器100が伸長してピストンロッド30がシリンダ10から退出すると、フリーピストン40は気室3を拡大する方向に移動し、気室3は、退出したピストンロッド30の体積の分だけ膨張する。このように、気室3は、緩衝器100の動作に伴うシリンダ10内の容積変化を補償する。
【0043】
図2は、ピストン20を圧側室2側から見た底面図である。
図1及び
図2に示すように、ピストン20は、伸側室1と圧側室2とを連通する通路22,23を有する。ピストン20の伸側室1側には、環状のリーフバルブ24aを有する減衰バルブ24が設けられる。ピストン20の圧側室2側には、環状のリーフバルブ25aを有する減衰バルブ25が設けられる。
【0044】
減衰バルブ24は、ピストンロッド30の外周面に形成される段部30cと、ピストン20と、により挟持される。減衰バルブ25は、ピストン20とナット31とにより挟持される。
【0045】
緩衝器100の収縮動作時には、ピストン20は、伸側室1を拡大し圧側室2を縮小する方向に移動する。そのため、伸側室1の圧力が低下し圧側室2の圧力が上昇する。伸側室1と圧側室2の圧力差により、減衰バルブ24は開弁して通路22における作動油の流れを許容する。このとき、減衰バルブ25は閉弁状態を保ち、通路23における作動油の流れを遮断する。
【0046】
減衰バルブ24の開弁に伴い、圧側室2内の作動油が通路22を通って伸側室1に移動する。このとき、減衰バルブ24は、通路22を通って伸側室1に移動する作動油の流れに抵抗を与える。つまり、減衰バルブ24は、収縮動作時の減衰力発生部である。
【0047】
緩衝器100の伸長動作時には、ピストン20は、伸側室1を縮小し圧側室2を拡大する方向に移動する。そのため、伸側室1の圧力が上昇し圧側室2の圧力が低下する。伸側室1と圧側室2の圧力差により、減衰バルブ25は開弁して通路23における作動油の流れを許容する。このとき、減衰バルブ24は閉弁状態を保ち、通路22における作動油の流れを遮断する。
【0048】
減衰バルブ25の開弁に伴い、伸側室1内の作動油が通路23を通って圧側室2に移動する。このとき、減衰バルブ25は、通路23を通って圧側室2に移動する作動油の流れに抵抗を与える。つまり、減衰バルブ25は、収縮動作時の減衰力発生部である。
【0049】
また、緩衝器100は、ひとつづきのチョーク通路51が貫通して形成されるチョーク部50をさらに備える。チョーク通路51の内壁は一体形成される。チョーク通路51は、減衰バルブ24,25を迂回して伸側室1と圧側室2とを常時連通する。
【0050】
図3は、チョーク部50の斜視図である。
図1及び
図3に示すように、チョーク部50は、円柱状の軸部52と、軸部52の端面52aに設けられる六角柱状のヘッド部53と、を有する。軸部52とヘッド部53とは一体に形成される。
【0051】
軸部52の外周面には雄ねじ(図示せず)が設けられる。ピストン20には断面円形の複数の孔26が形成され、各孔26の内周面には、軸部52の雄ねじに螺合する雌ねじ(図示せず)が設けられる。軸部52の雄ねじと孔26の雌ねじとが螺合することにより、チョーク部50がピストン20に取り付けられる。
【0052】
つまり、本実施形態では、緩衝器100は、ピストン20に設けられるねじ部90をさらに備え、ねじ部90にチョーク部50が設けられる。ねじ部90は、シリンダ10、ピストンロッド30に設けられてもよい。
【0053】
複数の孔26は、ピストン20の中心軸に対して対称に位置し、複数のチョーク部50がピストン20の中心軸に対して対称に配置される。そのため、ピストン20の重心をピストン20の中心軸上に位置させるのが容易であり、ピストン20の偏りを防ぐことができる。
【0054】
チョーク部50は、雄ねじと雌ねじとの螺合によりピストン20に取り付けられる形態に限られない。例えば、軸部52の外径が孔26の内径と略同一にされ、孔26と軸部52との嵌合によりチョーク部50がピストン20に取り付けられてもよい。
【0055】
チョーク通路51は、軸部52の他端面(チョーク部50の第1端面)52bからヘッド部53の上面(チョーク部50の第2端面)53aまで螺旋状にひとつづきに軸部52の軸方向に形成される。このようなチョーク通路51を有するチョーク部50は、3Dプリンタ等を用いた付加製造技術により製作される。
【0056】
チョーク通路51は、ピストン20の速度が低いときに、減衰力を発生させる。チョーク通路51による減衰力の発生について、具体的に説明する。
【0057】
減衰バルブ24,25は、ピストン20の速度が低く伸側室1と圧側室2の圧力差が小さい場合には、開弁しないことがある。この場合、減衰バルブ24が通路22における作動油の流れを遮断し減衰バルブ25が通路23における作動油の流れを遮断するので、伸側室1及び圧側室2内の作動油は通路22,23を通らず、減衰バルブ24,25は減衰力を発生しない。
【0058】
チョーク通路51は減衰バルブ24,25を迂回して形成されるので、チョーク通路51における作動油の流れは、減衰バルブ24,25の開閉に関わらず許容される。そのため、緩衝器100の動作時には、シリンダ10内の作動油は、チョーク通路51を通って伸側室1と圧側室2との間を行き来する。このとき、チョーク通路51は、チョーク通路51を通る作動油の流れに抵抗を与える。
【0059】
このように、チョーク通路51は、ピストン20の低速時に、減衰力を発生させる。
【0060】
チョーク通路51による減衰力は、チョーク通路51の流路断面(作動油の流れ方向と直交する断面をいう)と、チョーク通路51の流路長(作動油の流れ方向に沿った長さをいう)と、に依存する。具体的には、チョーク通路51による減衰力は、チョーク通路51の流路断面が小さいほど大きく、チョーク通路51の流路長が長いほど大きい。このため、チョーク通路51の流路断面及び流路長は、ピストン20の低速時において要求される減衰力に応じて設計される。
【0061】
チョーク通路51による減衰力をより大きくするために、チョーク通路51の流路断面を小さくすることが考えられる。しかし、チョーク通路51の流路断面を小さくすると、作動油中の固体がチョーク通路51に詰まるおそれがある。
【0062】
例えば、作動油中に異物が含まれることがある。また、磁気粘性流体緩衝器では、作動油中に強磁性を有する微粒子が含まれる。異物及び強磁性の微粒子といった固体がチョーク通路51に詰まることにより、チョーク通路51における作動油の流れが遮断され、チョーク通路51が減衰力発生部として作動しないおそれがある。
【0063】
このような理由から、チョーク通路51の流路長を長くすることにより、チョーク通路51による減衰力を大きくすることが望ましい。
【0064】
本実施形態では、チョーク通路51が螺旋状に形成されるので、チョーク部50は、チョーク通路51の流路長と同じ長さを必要としない。つまり、チョーク通路51の流路長を延長しても、チョーク部50をシリンダ10の軸方向に大型化させる必要がない。したがって、緩衝器100は、小型でより大きい減衰力を発生することができる。
【0065】
また、本実施形態では、チョーク通路51がチョーク部50を貫通して形成されるため、チョーク部50の寸法公差を管理すればよく、チョーク部50以外の部分の寸法公差、例えばピストン20の孔26の寸法公差を厳しく管理する必要がない。したがって、緩衝器100を容易に製造することができる。
【0066】
チョーク通路51は、螺旋状に形成される形態に限られず、屈曲部51aを有する形状であればよく、例えば、渦状、ジグザグ状、略環状かつジグザグ状、又は略環状かつ螺旋状に形成されていても良い。また、チョーク通路51は、
図4、
図5、
図6に示す形状であっても良い。
【0067】
図4は、チョーク通路51の一の例を示す斜視図である。
図4に示す例では、チョーク通路51は、チョーク部50の第1端面52bと第2端面53aとの間を貫通する直線状の貫通通路部51bと、貫通通路部51bから分岐する分岐通路部51c,51dと、を有する。分岐通路部51c,51dは、第2端面53aに開口する。そして、分岐通路部51c,51dが屈曲している。つまり、分岐通路部51c,51dが屈曲部51aを有する。屈曲部51aは、屈折してもよいし、湾曲してもよい。
【0068】
チョーク通路51が屈曲部51aを有するので、チョーク部50は、チョーク通路51の流路長と同じ長さを必要としない。したがって、緩衝器100は、小型でより大きい減衰力を発生することができる。
【0069】
また、
図4に示すように、通路部51b,51c,51dの流路断面は異なっていてもよい。
【0070】
図5は、チョーク通路51の他の例を示す斜視図である。
図5に示す例では、チョーク通路51は、チョーク通路の開口から直線状に延在する第1通路部51eと、第1延在通路部51eに沿って直線状に延在する第2通路部51fと、第1通路部51eと第2通路部51fとを接続する接続部51gと、を有する。接続部51gは、作動油の流れの方向を反対方向に変える。
【0071】
接続部51gが作動油の流れの方向を反対方向に変えるので、チョーク部50は、チョーク通路51の流路長と同じ長さを必要としない。したがって、緩衝器100は、小型でより大きい減衰力を発生することができる。
【0072】
図6は、チョーク通路51のさらに他の例を示す斜視図である。
図6に示す例では、チョーク通路51は、チョーク通路の開口から直線状に延在する第1通路部51eと、第1通路部51eの延在方向と略直交する方向に直線状に延在する複数の第2通路部51hと、第1通路部51eと複数の第2通路部51hの1つとを接続する第1接続部51iと、第2通路部どうしを接続する第2接続部51jと、を有する。第1接続部51iは、作動油の流れの方向を略90度変える。第2接続部51jは、作動油の流れの方向を反対方向に変える。
【0073】
第1接続部51iが作動油の流れの方向を略90度変え第2接続部51jが作動油の流れを反対方向に変えるので、チョーク部50は、チョーク通路51の流路長と同じ長さを必要としない。したがって、緩衝器100は、小型でより大きい減衰力を発生することができる。
【0074】
第2通路部51hの延在方向は、第1通路部51eの延在方向と略直交している必要はなく、第1通路部51eの延在方向と交差していればよい。また、第1接続部51iは、作動油の流れの方向を略90度変える必要はなく、作動油の流れの方向を、第1通路部と第2通路部との間の角度分、変えられればよい。
【0075】
チョーク部50は、
図7に示すように、ピストンロッド30に取り付けられていてもよい。また、図示しないが、チョーク部50は、シリンダ10に取り付けられていても良い。
【0076】
チョーク部50が、シリンダ10、ピストン20、及びピストンロッド30とは別体に形成されシリンダ10、ピストン20又はピストンロッド30に取り付けられるので、チョーク部50の交換が容易である。そのため、チョーク通路51の流路長又は形状を変更する際には、チョーク部50を交換すればよく、シリンダ10、ピストン20、及びピストンロッド30に変更を加える必要がない。したがって、緩衝器100の汎用性を高めることができる。
【0077】
チョーク部50は、
図8に示すようにピストン20と一体に形成されてもよいし、図示しないがシリンダ10又はピストンロッド30と一体に形成されてもよい。チョーク部50をシリンダ10、ピストン20又はピストンロッド30と一体に形成することにより、緩衝器100の製造時に、チョーク部50をシリンダ10、ピストン20又はピストンロッド30に取り付ける工程が不要になる。したがって、緩衝器100の製造にかかる時間を短縮することができる。
【0078】
チョーク部50と一体に形成されるシリンダ10、ピストン20又はピストンロッド30は、3Dプリンタ等を用いた付加製造技術により製作される。
【0079】
次に、緩衝器100の動作について、
図1を参照して説明する。
【0080】
まず、緩衝器100の収縮動作について説明する。
【0081】
緩衝器100の収縮動作時には、ピストン20は、伸側室1を拡大し圧側室を縮小する方向に移動する。その結果、伸側室1の圧力が低下し、圧側室2の圧力が上昇する。
【0082】
ピストン20の速度が高い場合には、伸側室1と圧側室2の圧力差が大きく、減衰バルブ24は開弁して通路22における作動油の流れを許容する。このとき、減衰バルブ25は閉弁状態を保ち、通路23における作動油の流れを遮断する。したがって、圧側室2内の作動油が、通路22とチョーク通路51とを通って伸側室1に移動する。
【0083】
減衰バルブ24は、通路22を通って伸側室1に移動する作動油の流れに抵抗を与え、伸側室1と圧側室2の圧力差を生じさせて減衰力を発生させる。
【0084】
チョーク通路51の流路断面は通路22の流路断面よりも小さく、チョーク通路51を流れる作動油の量は、通路22を流れる作動油の量に比べて少ない。したがって、チョーク通路51を通る作動油の流れに生じる抵抗力は、減衰バルブ24を通過する作動油の流れに生じる抵抗力よりも小さい。つまり、緩衝器100の減衰力は、チョーク通路51ではほとんど発生せず、主に減衰バルブ24により発生する。
【0085】
ピストン20の速度が低い場合には、伸側室1と圧側室2の圧力差が小さい。そのため、減衰バルブ24,25は閉弁状態を保ち、通路22,23における作動油の流れを遮断する。したがって、圧側室2内の作動油は、チョーク通路51を通って伸側室1に移動する。
【0086】
チョーク通路51は、チョーク通路51を通って伸側室1に移動する作動油の流れに抵抗を与え、伸側室1と圧側室2の圧力差を生じさせて減衰力を発生させる。つまり、緩衝器100の減衰力は、チョーク通路51により発生する。
【0087】
次に、緩衝器100の伸長動作について説明する。
【0088】
ピストン20の速度が高い場合には、伸側室1と圧側室2の圧力差が大きいので、減衰バルブ25は開弁し、減衰バルブ24は閉弁状態を保つ。したがって、伸側室1内の作動油は、主に通路23を通って圧側室2に移動する。減衰バルブ25は、通路23を通って圧側室2に移動する作動油の流れに抵抗を与え、伸側室1と圧側室2の圧力差を生じさせて減衰力を発生させる。
【0089】
ピストン20の速度が低い場合には、伸側室1と圧側室2の圧力差が小さいので、減衰バルブ24,25は閉弁状態を保つ。したがって、伸側室1内の作動油は、チョーク通路51を通って圧側室2に移動する。チョーク通路51は、チョーク通路51を通って伸側室1に移動する作動油の流れに抵抗を与え、伸側室1と圧側室2の圧力差を生じさせて減衰力を発生させる。
【0090】
このように、緩衝器100では、ピストン20の高速時には減衰バルブ24,25が減衰力を発生させ、ピストン20の低速時にはチョーク通路51が減衰力を発生させる。したがって、緩衝器100は、ピストン20の速度に関わらず、減衰力を発生させることができる。
【0091】
以上の第1実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0092】
チョーク通路51がチョーク部50を貫通して形成されるため、チョーク部50の寸法公差を管理すればよく、チョーク部50以外の部分の寸法公差を厳しく管理する必要がない。したがって、緩衝器100を容易に製造することができる。
【0093】
また、チョーク通路51が屈曲部51aを有するため、チョーク通路51の流路長を延長する際にチョーク部50を大型化させる必要がない。したがって、緩衝器100は、小型でより大きい減衰力を発生することができる。
【0094】
チョーク部50が、シリンダ10、ピストン20、及びピストンロッド30とは別体に形成されシリンダ10、ピストン20又はピストンロッド30に取り付けられる形態では、チョーク部50の交換が容易である。したがって、チョーク通路51の流路長又は形状の変更が容易であり、緩衝器100の汎用性を高めることができる。
【0095】
チョーク部50が、シリンダ10、ピストン20又はピストンロッド30と一体に形成される形態では、緩衝器100の製造時に、チョーク部50をシリンダ10、ピストン20又はピストンロッド30に取り付ける工程を必要としない。したがって、緩衝器100の製造にかかる時間を短縮することができる。
【0096】
<第2実施形態>
次に、
図9を参照して、本発明の第2実施形態に係る緩衝器200について説明する。緩衝器200は、「ツインチューブショックアブソーバ」とも呼ばれ、緩衝器100と同様に、減衰力を発生させて車体の振動を抑制する装置である。ここでは、第1実施形態における構成と同じ構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0097】
図9に示すように緩衝器200は、チューブ11を覆って配設されるアウターチューブ15を備える。以下において、チューブ11を、アウターチューブ15と明確に区別するために、「インナーチューブ11」と称することもある。
【0098】
インナーチューブ11とアウターチューブ15との間には、作動油を貯留するリザーバ4(流体室)が形成される。リザーバ4には、作動油と圧縮気体が封入される。圧縮気体は、緩衝器200の動作に伴うシリンダ10内の容積変化を補償する。
【0099】
アウターチューブ15は略筒状に形成される。ロッドガイド12及びオイルシール13は、アウターチューブ15の一端部に設けられる。オイルシール13は、作動油及び圧縮気体が伸側室1及びリザーバ4から漏れることを防止するとともに、異物が伸側室1及びリザーバ4へ流入することを防止する。ロッドガイド12及びオイルシール13は、筒状のアウターチューブ15の一端部を内側に折り曲げるかしめ加工により、アウターチューブ15に固定される。
【0100】
キャップ部材14は、アウターチューブ15の他端部に設けられる。キャップ部材14は、溶接によりアウターチューブ15に固定され、アウターチューブ15の他方の開口15bを閉塞する。キャップ部材14には、連結部材60が設けられる。
【0101】
インナーチューブ11には、インナーチューブ11の開口11bを閉塞するように、バルブディスクとしてのベースバルブ70が設けられる。このように、ベースバルブ70は、圧側室2とリザーバ4とを区画する。
【0102】
ベースバルブ70は、圧側室2とリザーバ4とを連通する通路71,72を有する。ベースバルブ70の圧側室2側には、環状のリーフバルブ73aを有するチェックバルブ73が設けられる。ベースバルブ70のリザーバ4側には、環状のリーフバルブ74aを有する減衰バルブ74が設けられる。
【0103】
チェックバルブ73は、緩衝器200の伸長動作時に圧側室2とリザーバ4の圧力差により開弁し、通路71における作動油の流れを許容する。また、チェックバルブ73は、緩衝器200の収縮動作時には、閉弁状態を保ち通路71における作動油の流れを遮断する。
【0104】
減衰バルブ74は、緩衝器200の収縮動作時に圧側室2とリザーバ4の圧力差により開弁し、通路72における作動油の流れを許容するとともに、圧側室2から通路72を通ってリザーバ4に移動する作動油の流れに抵抗を与える。また、減衰バルブ74は、緩衝器200の伸長動作時には、閉弁状態を保ち通路72における作動油の流れを遮断する。
【0105】
また、緩衝器200は、チョーク通路81が貫通して形成されるチョーク部80をさらに備える。チョーク通路81は、チェックバルブ73及び減衰バルブ74を迂回して圧側室2とリザーバ4とを常時連通する。
【0106】
チョーク部80は、ベースバルブ70とは別体に形成され、ベースバルブ70に取り付けられる。チョーク部80の構造は、チョーク部50(
図3参照)の構造と同じであるので、ここではその説明を省略する。
【0107】
本実施形態では、チョーク通路81が螺旋状に形成されるので、チョーク部80は、チョーク通路81の流路長と同じ長さを必要としない。つまり、チョーク通路81の流路長を延長しても、チョーク部80をシリンダ10の軸方向に大型化させる必要がない。したがって、緩衝器200は、小型でより大きい減衰力を発生することができる。
【0108】
また、本実施形態では、チョーク通路81がチョーク部80を貫通して形成されるため、チョーク部80の寸法公差を管理すればよく、チョーク部80以外の部分の寸法公差を厳しく管理する必要がない。したがって、緩衝器200を容易に製造することができる。
【0109】
チョーク部80が、ベースバルブ70とは別体に形成されベースバルブ70に取り付けられるので、チョーク部80の交換が容易である。そのため、チョーク通路81の流路長又は形状を変更する際には、チョーク部80を交換すればよく、ベースバルブ70に変更を加える必要がない。したがって、緩衝器200の汎用性を高めることができる。
【0110】
チョーク部80は、ベースバルブ70と一体に形成されてもよい。チョーク部80をベースバルブ70と一体に形成することにより、緩衝器200の製造時に、チョーク部80をベースバルブ70に取り付ける工程が不要になる。したがって、緩衝器200の製造にかかる時間を短縮することができる。
【0111】
チョーク部80と一体に形成されるベースバルブ70は、3Dプリンタ等を用いた付加製造技術により製作される。
【0112】
次に、緩衝器200の動作について、
図9を参照して説明する。
【0113】
まず、緩衝器200の収縮動作について説明する。
【0114】
緩衝器200の収縮動作時には、ピストン20は、伸側室1を拡大し圧側室を縮小する方向に移動する。その結果、伸側室1の圧力が低下し、圧側室2の圧力が上昇する。
【0115】
ピストン20の速度が高い場合には、伸側室1と圧側室2の圧力差が大きく、減衰バルブ24が開弁する。そのため、圧側室2内の作動油は、通路22を主に通って伸側室1に移動する。減衰バルブ24は、通路22を通って伸側室1に移動する作動油の流れに抵抗を与え、伸側室1と圧側室2の圧力差を生じさせて減衰力を発生させる。
【0116】
また、ピストン20の速度が高い場合には、圧側室2とリザーバ4の圧力差が大きいので、減衰バルブ74は開弁して通路72における作動油の流れを許容する。このとき、チェックバルブ73は閉弁状態を保ち、通路71における作動油の流れを遮断する。
【0117】
緩衝器200の収縮動作に伴い、ピストンロッド30がシリンダ10内に進入するので、進入したピストンロッド30の体積分の作動油が、圧側室2から通路72及びチョーク通路81を通ってリザーバ4に移動する。
【0118】
減衰バルブ74は、通路72を通ってリザーバ4に移動する作動油の流れに抵抗を与え、リザーバ4と圧側室2の圧力差を生じさせて減衰力を発生させる。
【0119】
チョーク通路81の流路断面は通路72の流路断面よりも小さく、チョーク通路81を流れる作動油の量は、通路72を流れる作動油の量に比べて少ない。したがって、チョーク通路81を通る作動油の流れに生じる抵抗力は、減衰バルブ74を通過する作動油の流れに生じる抵抗力よりも小さい。
【0120】
つまり、ピストン20の速度が高い場合には、緩衝器200の減衰力は、チョーク通路51,81ではほとんど発生せず、主に減衰バルブ24,74により発生する。
【0121】
ピストン20の速度が低い場合には、伸側室1と圧側室2の圧力差が小さく、減衰バルブ24,25が閉弁状態を保つ。そのため、圧側室2内の作動油は、チョーク通路51を通って伸側室1に移動する。チョーク通路51は、チョーク通路51を通って伸側室1に移動する作動油の流れに抵抗を与え、伸側室1と圧側室2の圧力差を生じさせて減衰力を発生させる。
【0122】
また、ピストン20の速度が低い場合には、圧側室2とリザーバ4の圧力差が小さいので、減衰バルブ74は閉弁状態を保ち、通路72における作動油の流れを遮断する。したがって、圧側室2内の作動油は、進入したピストンロッド30の体積分、チョーク通路81を通ってリザーバ4に移動する。
【0123】
チョーク通路81は、チョーク通路81を通って伸側室1に移動する作動油の流れに抵抗を与え、リザーバ4と圧側室2の圧力差を生じさせて減衰力を発生させる。
【0124】
つまり、ピストン20の速度が低い場合には、緩衝器200の減衰力は、チョーク通路51,81により発生する。
【0125】
次に、緩衝器200の伸長動作について説明する。
【0126】
ピストン20の速度が高い場合には、伸側室1と圧側室2の圧力差が大きいので、減衰バルブ25は開弁し、減衰バルブ24は閉弁状態を保つ。したがって、伸側室1内の作動油は、主に通路23を通って圧側室2に移動する。減衰バルブ25は、通路23を通って圧側室2に移動する作動油の流れに抵抗を与え、伸側室1と圧側室2の圧力差を生じさせて減衰力を発生させる。
【0127】
ピストン20の速度が低い場合には、伸側室1と圧側室2の圧力差が小さいので、減衰バルブ24,25は閉弁状態を保つ。したがって、伸側室1内の作動油は、チョーク通路51を通って圧側室2に移動する。チョーク通路51は、チョーク通路51を通って伸側室1に移動する作動油の流れに抵抗を与え、伸側室1と圧側室2の圧力差を生じさせて減衰力を発生させる。
【0128】
緩衝器200の伸長動作時には、ピストン20の摺動速度に関わらず、チェックバルブ73は開弁して通路71における作動油の流れを許容する。このとき、減衰バルブ74は閉弁状態を保ち、通路72における作動油の流れを遮断する。
【0129】
緩衝器200の伸長動作に伴い、ピストンロッド30がシリンダ10から退出するので、退出したピストンロッド30の体積分の作動油が、リザーバ4から通路71及びチョーク通路81を通って圧側室2に移動する。
【0130】
チョーク通路81の流路断面は通路71の流路断面よりも小さいので、リザーバ4内の作動油は、主にチョーク通路81を通って圧側室2に移動する。そのため、チョーク通路81は、チョーク通路81を通る作動油の流れに抵抗をほとんど与えず、減衰力を発生させない。
【0131】
このように、緩衝器200では、ピストン20の収縮動作時には減衰バルブ24又はチョーク通路51,81が減衰力を発生させ、ピストン20の伸長動作時には減衰バルブ25又はチョーク通路51が減衰力を発生させる。また、ピストン20の摺動速度が高い場合には減衰バルブ24,25,74が減衰力を発生させ、ピストン20の摺動速度が低い場合にはチョーク通路51,81が減衰力を発生させる。したがって、緩衝器200は、ピストン20の摺動速度に関わらず、減衰力を発生させることができる。
【0132】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0133】
緩衝器100,200は、作動油が封入されるシリンダ10と、シリンダ10に対して進退自在でありシリンダ10から延出するピストンロッド30と、シリンダ10に設けられ伸側室1と圧側室2とを区画する、又は圧側室2とリザーバ4とを区画するピストン20又はベースバルブ70と、伸側室1と圧側室2と連通し、又は圧側室2とリザーバ4とを連通し、屈曲部51aを有するチョーク通路51,81が貫通して形成されるチョーク部50,80と、を備えることを特徴とする。
【0134】
この構成では、チョーク通路51,81がチョーク部50,80を貫通して形成されるため、チョーク部50,80の寸法公差を管理すればよく、チョーク部50,80以外の部分の寸法公差を厳しく管理する必要がない。また、チョーク通路51,81が屈曲部51aを有するため、チョーク通路51,81の流路長を延長する際にチョーク部50,80を大型化させる必要がない。したがって、緩衝器100,200は、小型でより大きい減衰力を発生させることができ容易に製造することができる。
【0135】
また、チョーク部50,80は、シリンダ10、ピストンロッド30、ピストン20及びベースバルブ70のいずれかに一体に形成されることを特徴とする。
【0136】
この構成では、チョーク部50,80がシリンダ10、ピストンロッド30、ピストン20又はベースバルブ70に一体に形成されるので、緩衝器100,200の製造時に、チョーク部50,80をシリンダ10、ピストンロッド30、ピストン20又はベースバルブ70に取り付ける工程を必要としない。したがって、緩衝器100,200の製造にかかる時間を短縮することができる。
【0137】
また、チョーク通路51,81が屈曲部51aを有することを特徴とする。
【0138】
この構成では、チョーク通路51,81が屈曲部51aを有するため、チョーク通路51,81の流路長を延長する際にチョーク部50,80を大型化させる必要がない。したがって、緩衝器100,200を小型化することができる。
【0139】
また、チョーク通路51,81が螺旋状にひとつづきに軸方向に形成されることを特徴とする。
【0140】
この構成では、チョーク通路51,81が螺旋状にひとつづきに軸方向に形成されるため、チョーク通路51,81の流路長を延長する際にチョーク部50,80を大型化させる必要がない。円筒状のものの場合、最大限に流路長を長くできる。したがって、緩衝器100,200を小型化することができる。
【0141】
また、チョーク通路51,81の内壁が一体形成されることを特徴とする。
【0142】
この構成では、チョーク通路51,81の内壁が一体形成されるため、チョーク通路51,81の寸法公差を管理すればよく、チョーク通路51,81以外の部分の寸法公差を厳しく管理する必要がない。したがって、緩衝器100,200を容易に製造することができる。
【0143】
また、緩衝器100,200は、シリンダ10、ピストンロッド30、ピストン20及びベースバルブ70の少なくとも1つに設けられるねじ部90を更に備え、ねじ部90にチョーク部50,80が設けられることを特徴とする。
【0144】
この構成では、ねじ部90にチョーク部50,80が設けられるので、ねじ部90の螺合だけでチョーク部50,80がシリンダ10、ピストンロッド30、ピストン20又はベースバルブ70に設けられる。したがって、緩衝器100,200を容易に製造することができる。また、規格変更等、シリンダ10、ピストンロッド30、ピストン20のサイズ等仕様が変わっても、ねじ部90は共通のものを使用することができる。
【0145】
また、チョーク通路51,81は、チョーク部50,80を貫通する貫通通路部51bと、貫通通路部51から分岐しチョーク部50,80の端面53aに開口する分岐通路部51c,51dと、を有し、分岐通路部51c,51dが屈曲することを特徴とする。
【0146】
この構成では、分岐通路部51c,51dが屈曲するので、分岐通路部51c,51dの流路長を延長する際にチョーク部50,80を大型化させる必要がない。したがって、緩衝器100,200を小型化することができる。
【0147】
また、チョーク通路51,81は、チョーク通路51,81の開口から直線状に延在する第1通路部51eと、第1通路部51eに沿って直線状に延在する第2通路部51fと、第1通路部51eと第2通路部51fとを接続し、作動流体の流れの方向を反対方向に変える接続部51gと、を有することを特徴とする。
【0148】
この構成では、接続部51gが第1通路部51eと第2通路部51fとを接続し、作動油の流れの方向を反対方向に変えるので、チョーク通路51,81の流路長を延長する際にチョーク部50,80を大型化させる必要がない。したがって、緩衝器100,200を小型化することができる。
【0149】
また、チョーク通路51,81は、チョーク通路51,81の開口から直線状に延在する第1通路部51eと、第1通路部の延在方向と交わる方向に直線状に延在する複数の第2通路部51hと、第1通路部51eと複数の第2通路部51hの1つとを接続する第1接続部51iと、第2通路部51hどうしを接続し、作動油の流れの方向を反対に変える第2接続部51jと、を有することを特徴とする。
【0150】
この構成では、第1及び第2接続部51i,51jが作動油の流れの方向を変えるので、チョーク通路51,81の流路長を延長する際にチョーク部50,80を大型化させる必要がない。したがって、緩衝器100,200を小型化することができる。
【0151】
また、チョーク部50,80は、シリンダ10、ピストンロッド30、ピストン20及びベースバルブ70とは別体に形成され、シリンダ10、ピストンロッド30、ピストン20又はベースバルブ70のいずれかに取り付けられることを特徴とする。
【0152】
この構成では、チョーク部50,80は、シリンダ10、ピストンロッド30、ピストン20及びベースバルブ70とは別体でありシリンダ10、ピストンロッド30、ピストン20又はベースバルブ70に取り付けられる。チョーク通路51,81は、このようなチョーク部50,80により形成される。そのため、チョーク通路51,81の流路長又は形状を変更する際には、チョーク部50,80を交換すればよく、シリンダ10、ピストンロッド30、ピストン20及びベースバルブ70に変更を加える必要がない。したがって、緩衝器100,200の汎用性を高めることができる。
【0153】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。