特許第6487817号(P6487817)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6487817
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】電動パワーステアリング装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 5/04 20060101AFI20190311BHJP
   G01L 3/10 20060101ALI20190311BHJP
【FI】
   B62D5/04
   G01L3/10 317
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-187022(P2015-187022)
(22)【出願日】2015年9月24日
(65)【公開番号】特開2017-61210(P2017-61210A)
(43)【公開日】2017年3月30日
【審査請求日】2018年3月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120260
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅昭
(74)【代理人】
【識別番号】100137604
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 淳
(72)【発明者】
【氏名】前原 秀雄
【審査官】 小野田 達志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−055910(JP,A)
【文献】 特開2006−182078(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 5/04
G01L 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動パワーステアリング装置であって、
操舵トルクが入力される入力シャフトと、
トーションバーを介して前記入力シャフトと連結された出力シャフトと、
前記入力シャフトと前記出力シャフトに亘って取付けられ、前記操舵トルクを検出するトルクセンサと、
前記入力シャフト、前記出力シャフト、及び前記トルクセンサを収容するハウジングと、
前記トルクセンサの検出結果に基づいて、操舵補助トルクを発生する電動モータと、
前記トルクセンサと前記電動モータの駆動を制御するコントローラとを電気的に接続する信号線と、
前記トルクセンサに設けられ、前記信号線が接続されるコネクタと、を備え、
前記ハウジングは、
前記入力シャフトを回転自在に支持する第1ハウジングと、
前記第1ハウジングに締結され、前記出力シャフトを回転自在に支持する第2ハウジングと、を有し、
前記第2ハウジングは、
内外周面に亘って貫通して形成され、前記信号線を前記第2ハウジング内に引き込むための貫通孔と、
内周面に窪んで形成され、軸方向に延びる窪み部と、を有し、
前記貫通孔を通じて前記第2ハウジング内に引き込まれた前記信号線は、前記窪み部を通って前記トルクセンサの外周を横切り、前記トルクセンサの前記コネクタに接続されてなる
ことを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項2】
前記窪み部は、前記コネクタに対する前記信号線の抜き差し方向に窪んで形成されることを特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動パワーステアリング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ハウジング本体に貫通形成された窓孔を通じてハウジング本体内に引き込まれるハーネスを介して電動モータの駆動を制御するECUとトルクセンサの制御基板とが接続される電動パワーステアリング装置が開示されている。ハーネスとトルクセンサの制御基板とはコネクタを介して接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−55910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の電動パワーステアリング装置において、ハーネスをハウジング本体内に引き込むための窓孔がトルクセンサに設けられるコネクタよりも下方に位置する場合には、ハーネスをトルクセンサのコネクタに導くために、ハウジング本体の内周とトルクセンサの外周との間の隙間を、ハーネスの直径以上に設定する必要がある。この場合、ハウジング本体が径方向へ大型化してしまい、車両への電動パワーステアリング装置の搭載性が悪化する。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、コンパクトな電動パワーステアリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、電動パワーステアリング装置であって、操舵トルクが入力される入力シャフトと、トーションバーを介して入力シャフトと連結された出力シャフトと、入力シャフトと前記出力シャフトに亘って取付けられ、操舵トルクを検出するトルクセンサと、入力シャフト、出力シャフト、及びトルクセンサを収容するハウジングと、トルクセンサと電動モータの駆動を制御するコントローラとを電気的に接続する信号線と、トルクセンサに設けられ、信号線が接続されるコネクタと、を備え、ハウジングは、入力シャフトを回転自在に支持する第1ハウジングと、第1ハウジングに締結され、前記出力シャフトを回転自在に支持する第2ハウジングと、を有し、第2ハウジングは、信号線を前記第2ハウジング内に引き込むための貫通孔と、内周面に窪んで形成され、軸方向に延びる窪み部と、を有し、貫通孔を通じて前記第2ハウジング内に引き込まれた信号線は、窪み部を通ってトルクセンサの外周を横切り、トルクセンサの前記コネクタに接続されてなることを特徴とする。
【0007】
第1の発明では、貫通孔を通じて第2ハウジング内に引き込まれた信号線は、第2ハウジングの内周面に窪んで形成された窪み部を通じてトルクセンサのコネクタへ導かれる。信号線をトルクセンサのコネクタへ導くための窪み部は、第2ハウジングの内周面に部分的に形成されるものであるため、ハウジングの径方向への大型化を最小限に抑えることができる。
【0008】
第2の発明は、窪み部は、コネクタに対する信号線の抜き差し方向に窪んで形成されることを特徴とする。
【0009】
第2の発明では、窪み部を、信号線をトルクセンサのコネクタに接続する際の作業スペースとして利用することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、コンパクトな電動パワーステアリング装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る電動パワーステアリング装置の構成図である。
図2】本発明の実施形態に係る電動パワーステアリング装置の断面図である。
図3】本発明の実施形態に係る電動パワーステアリング装置の分解斜視図である。
図4】アッシーが第2ハウジングに組み付けられた状態を示す斜視図である。
図5】アッシーが第2ハウジングに組み付けられた状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る電動パワーステアリング装置100について説明する。
【0013】
電動パワーステアリング装置100は、車両に搭載され、ドライバによるステアリングホイール1の操舵を補助する装置である。
【0014】
本実施形態では、ドライバによる操舵トルクと電動モータ21による操舵補助トルクとがそれぞれ独立してラックシャフト12に入力されるデュアルピニオン式の電動パワーステアリング装置100について説明する。
【0015】
まず、図1を参照して、電動パワーステアリング装置100の全体構成について説明する。
【0016】
電動パワーステアリング装置100は、ドライバの操舵によるステアリングホイール1の回転に応じて車輪2を転舵させる転舵機構10と、ドライバの操舵を補助するアシスト機構20と、ドライバによってステアリングホイール1を通じて入力される操舵トルクを検出するトルクセンサ40と、トルクセンサ40の検出結果に基づいて電動モータ21の駆動を制御するコントローラ30と、を備える。
【0017】
転舵機構10は、ステアリングホイール1に連結されステアリングホイール1の回転に応じて回転するステアリングシャフト11と、ステアリングシャフト11の回転に応じて車輪2を転舵させるラックシャフト12と、を有する。
【0018】
ステアリングシャフト11は、ドライバによるステアリングホイール1の操舵に伴って回転する入力シャフト13と、車輪2を転舵するラックシャフト12に連係する出力シャフト15と、入力シャフト13と出力シャフト15を連結するトーションバー14と、を有する。
【0019】
出力シャフト15の下部には、ラックシャフト12に形成されたラック12aと噛み合う第1ピニオン16が形成される。ステアリングホイール1が操舵されると、ステアリングシャフト11が回転し、その回転が第1ピニオン16及びラック12aによってラックシャフト12の直線運動に変換され、ナックルアーム4を介して車輪2が転舵される。
【0020】
アシスト機構20は、操舵補助トルクの動力源である電動モータ21と、電動モータ21の駆動力が伝達されるピニオン軸22と、電動モータ21の回転を減速してピニオン軸22に伝達する減速機構3と、を有する。減速機構3は、電動モータ21の出力軸に連結されたウォームシャフト3aと、ウォームシャフト3aと噛み合うと共にピニオン軸22に連結されたウォームホイール3bと、からなる。
【0021】
ピニオン軸22の下部には、ラックシャフト12に形成されたラック12aと噛み合う第2ピニオン23が形成される。電動モータ21が回転すると、減速機構3を介してピニオン軸22が回転し、その回転が第2ピニオン23及びラック12aによってラックシャフト12の直線運動に変換され、ラックシャフト12に操舵補助トルクが付与される。
【0022】
トルクセンサ40は、入力シャフト13と出力シャフト15との回転角度差に基づいてトーションバー14に付与される操舵トルクを検出する。
【0023】
トルクセンサ40の制御基板(図示せず)とコントローラ30とは、信号線としてのケーブル36を介して電気的に接続される。ケーブル36を通じて、コントローラ30からトルクセンサ40への電源の供給が行われると共に、トルクセンサ40にて検出された操舵トルク信号がコントローラ30へ出力される。
【0024】
次に、図2及び図3を参照して、電動パワーステアリング装置100の構造について詳しく説明する。
【0025】
入力シャフト13、トーションバー14、出力シャフト15、及びトルクセンサ40は、一体部品のアッシー70として構成される。具体的には、入力シャフト13と出力シャフト15はトーションバー14を介して連結され、トルクセンサ40は入力シャフト13と出力シャフト15に亘って取り付けられる。入力シャフト13と出力シャフト15はトーションバー14の捩れ量に応じて相対回転し、トルクセンサ40はその相対回転による入力シャフト13と出力シャフト15の回転角度差に基づいて操舵トルクを検出する。アッシー70は、ハウジング5内に収容される。
【0026】
トルクセンサ40は、操舵トルクを検出してその信号をコントローラ30へ出力する制御基板を収容するケース本体41と、ハウジング5に係合してハウジング5に対するケース本体41の相対回転を規制するための係合部42と、ケーブル36が接続されるコネクタ43と、を有する。
【0027】
ケース本体41は、入力シャフト13が挿通する略環状形状であり、入力シャフト13の外周面に回転自在に設けられる。係合部42は、ケース本体41の外周面41aから径方向に突出して形成される。コネクタ43は、ケーブル36の先端に設けられたオス形状のコネクタ37が挿入される取付口(取付部)43aを有するメス形状のコネクタである。コネクタ43は、取付口43aがハウジング5の内面に対向するようにケース本体41の上面に配置される。取付口43aは、好ましくは、その軸方向が入力シャフト13の軸方向と垂直となる向きに配置される。ただ、取付口43aは、ハウジング5の内面に対向する向きであれば、その軸方向が入力シャフト13の軸方向に対して僅かに傾斜するように配置してもよい。コネクタ43は取付口43aがハウジング5の内面に対向するように配置されるため、ケーブル36の先端のコネクタ37をコネクタ43に接続する際には、コネクタ37を、ステアリングシャフト11の軸方向と垂直な向きから取付口43a内に挿入することになる。
【0028】
ハウジング5は、入力シャフト13を回転自在に支持する第1ハウジング50と、第1ハウジング50に締結され、出力シャフト15を回転自在に支持する第2ハウジング60と、を有する。第2ハウジング60は、ラックシャフト12を収容するラックハウジング90と一体に形成される。なお、第2ハウジング60とラックハウジング90とを別体に形成するようにしてもよい。
【0029】
第1ハウジング50は、小径部51と、小径部51と比較して大きい内径を有する大径部52と、を有する。
【0030】
小径部51の内周面には段部51aが形成され、段部51aには軸受94が係止される。入力シャフト13は、軸受94を介して第1ハウジング50に回転自在に支持される。小径部51の端面には、入力シャフト13が挿通する開口部51bが形成される。小径部51内には、開口部51bを通じて内部への異物の侵入を防ぐシール部材95が、軸受94と並んで設けられる。
【0031】
大径部52は、外周面から径方向外側に突出して形成されボルト91が締結される締結部53を有する。大径部52内には、トルクセンサ40の一部、具体的にはケース本体41の上部側が収容される。
【0032】
第2ハウジング60は、大径部61と、大径部61と比較して小さい内径を有する中径部62と、中径部62と比較して小さい内径を有する小径部63と、を有する。なお、図3及び4では、大径部61のみを図示し、中径部62及び小径部63の図示を省略している。
【0033】
大径部61内には、トルクセンサ40の一部、具体的にはケース本体41の下部側が収容される。このように、トルクセンサ40は、第1ハウジング50の大径部52と第2ハウジング60の大径部61とに亘って収容される。大径部61は、外周面61aから径方向外側に突出して形成された窓部65と、内周面61bに結合されトルクセンサ40の係合部42が係合する回転止め部66と、内周面61bに窪んで形成された窪み部67と、外周面61aから径方向外側に突出して形成されボルト91が締結される締結部68と、を有する。
【0034】
窓部65には、大径部61の径方向に貫通し、ケーブル36及びコネクタ37を第2ハウジング60内に引き込むための貫通孔65aが形成される。窓部65には、ケーブル36を保持するケーブルホルダ38がボルト39を介して締結される。窓部65とケーブルホルダ38との間にはOリング93(図2参照)が介在され、ハウジング5への雨水や泥水の侵入が防止される。
【0035】
回転止め部66は、ステアリングシャフト11の軸方向に延びる2つのピン66a,66bからなる。2つのピン66a,66bの間隔は、係合部42の幅と略同一に設定される。したがって、係合部42がピン66a,66bの間に挿入されてピン66a,66bに係合した状態では、第2ハウジング60に対するトルクセンサ40の相対回転が規制される。
【0036】
窪み部67は、第2ハウジング60内に引き込まれたケーブル36がケース本体41の外周面41aの外側を上下方向に横切ることができるように、大径部61の内周面61bに軸方向に延びて形成される。ハウジング5の内周面とケース本体41の外周面41aとの隙間は、ハウジング5の径方向への大型化を抑えるために、最小限の隙間に設定される。しかし、ハウジング5の内周面とケース本体41の外周面41aとの隙間が小さいと、ケーブル36がハウジング5の内周面とケース本体41の外周面41aとの間で圧縮されて破損するおそれがある。そこで、本実施形態では、ケーブル36を誘導するための窪み部67が、大径部61の内周面61bに部分的に形成される。窪み部67の径方向の深さは、ケーブル36が圧縮されずにケース本体41の外周面41aを横切ることができる寸法に設定される。つまり、窪み部67の径方向の深さは、ケーブル36の直径に応じて設定される。第1ハウジング50の大径部52の内周面にも、第2ハウジング60の大径部61に形成された窪み部67と連続するように窪み部(図示せず)が形成される。
【0037】
第2ハウジング60の中径部62には段部62aが形成され、段部62aには軸受96が係止される。出力シャフト15の上部側は、軸受96を介して第2ハウジング60に回転自在に支持される。
【0038】
第2ハウジング60の小径部63は、出力シャフト15に形成された第1ピニオン16を取り囲むように形成される。小径部63には、ラックハウジング90の内部と連通する開口部63aが形成される。第1ピニオン16とラックシャフト12のラック12aとは、開口部63aを通じて噛み合う。
【0039】
小径部63の下部には段部63bが形成され、段部63bには軸受97の外輪が係止される。小径部63の下端部は開口して形成され、その開口はプラグ64にて封止される。軸受97の外輪は、段部63bとプラグ64との間で挟持される。このようにして、軸受97の外輪は第2ハウジング60に固定される。また、出力シャフト15の下部には段部15aが形成され、段部15aには軸受97の内輪が係止される。出力シャフト15の下端部にはナット17が締結され、軸受97の内輪は、段部15aとナット17との間で挟持される。このようにして、軸受97の内輪は出力シャフト15に固定される。このように、軸受97の外輪は第2ハウジング60に固定されると共に、軸受97の内輪は出力シャフト15に固定されるため、出力シャフト15の下部側が軸受97を介して第2ハウジング60に回転自在に支持されると共に、第2ハウジング60に対する出力シャフト15の軸方向への移動が規制される。
【0040】
第1ハウジング50と第2ハウジング60は、大径部52の環状の開口端面52aと大径部61の環状の開口端面61cとが互いに当接した状態で、締結部53,68に亘って締結されるボルト91によって固定される。大径部52の開口端面52aと大径部61の開口端面61cとの間には、両者の間をシールする環状のOリング92が設けられる。第1ハウジング50の大径部52には、開口端面52aから突出して形成された環状のインロー部52bが形成される。インロー部52bは、第2ハウジング60の大径部61の内周面61bに嵌合するように形成されるため、インロー部52bによって、第1ハウジング50と第2ハウジング60の径方向へのずれが規制される。
【0041】
以下では、図2〜5を参照して、電動パワーステアリング装置100の組み立て方法について説明する。
【0042】
入力シャフト13、トーションバー14、出力シャフト15、及びトルクセンサ40を、ハウジング5内に収容する前に、図3に示すように、一体部品のアッシー70として組み立てる。
【0043】
ケーブルホルダ38は、ケーブル36を保持した状態で、第2ハウジング60の大径部61の窓部65に固定される。これにより、図3に示すように、ケーブル36及びその先端に設けられたコネクタ37は、窓部65の貫通孔65aを通じて大径部61内に引き込まれる。
【0044】
次に、アッシー70を第2ハウジング60に組み込む。以下に、具体的に説明する。アッシー70を第2ハウジング60に組み込む際には、大径部61の内周面61bに窪んで形成された窪み部67に沿ってケーブル36を上方に導き、コネクタ37を大径部61の外部へと一時的に退避させる。この状態で、アッシー70を大径部61の開口部から第2ハウジング60内に挿入し、トルクセンサ40の係合部42を回転止め部66に係合させると共に、出力シャフト15を中径部62に配置された軸受96内に挿入する。この際、ケーブル36は窪み部67に沿って上方に延びているため、ケーブル36が大径部61の内周面61bとトルクセンサ40のケース本体41の外周面41aとの間で圧縮されて破損することはない。なお、軸受96は、アッシー70を第2ハウジング60内に挿入する前に、予め出力シャフト15に設けるようにしてもよい。
【0045】
次に、第2ハウジング60の小径部63の下端開口を通じて、軸受97を出力シャフト15の段部15aに係止させると共にナット17を出力シャフト15の下端部に締結し、軸受97を出力シャフト15に固定する。そして、小径部63の下端開口をプラグ64にて封止する。これにより、アッシー70は、第2ハウジング60に固定される。
【0046】
この状態で、大径部61の外部へと退避させているケーブル36の先端に設けられたコネクタ37を、トルクセンサ40のコネクタ43に接続する。図2及び図4に示すように、アッシー70が第2ハウジング60に組み込まれた状態で、コネクタ43は、取付口43aの一部が大径部61の開口端面61cから露出するように配置される。つまり、コネクタ43は、取付口43aが大径部61内に完全に収容されず、部分的に大径部61の開口部から露出して配置される。したがって、コネクタ37をコネクタ43に接続する際に、コネクタ37が大径部61の内周面61bに干渉することがなく、コネクタ43に対するコネクタ37の接続を容易に行うことができる。また、図4及び5に示すように、大径部61の内周面61bに形成された窪み部67は、コネクタ43に対するコネクタ37の抜き差し方向に窪んで形成される。したがって、窪み部67は、コネクタ37をコネクタ43に接続するための作業スペースとしても機能することになる。
【0047】
アッシー70が第2ハウジング60に組み込まれた状態では、図2に示すように、窓部65の貫通孔65aとコネクタ43の取付口43aとは、ステアリングシャフト11の軸方向にずれて位置する。具体的には、窓部65の貫通孔65aは、コネクタ43の取付口43aよりも下方に配置される。そのため、貫通孔65aを通じて大径部61内に引き込まれたケーブル36は、トルクセンサ40のケース本体41の外側を上下方向に横切ってコネクタ43に誘導されることになる。本実施形態では、ケーブル36がケース本体41の外側を上下方向に横切る経路として、大径部61の内周面61bに窪み部67が形成される。窪み部67は、大径部61の内周面61bに部分的に形成されるものであるため、大径部61の径方向への大型化を最小限に抑えることができる。このように、窓部65の貫通孔65aがコネクタ43の取付口43aよりも下方に配置されるレイアウトであっても、大径部61の径方向への大型化を最小限に抑えることができる。
【0048】
アッシー70を第2ハウジング60に組み込み、コネクタ37をトルクセンサ40のコネクタ43に接続した後は、ボルト91を介して第2ハウジング60に第1ハウジング50を締結する。具体的には、大径部52の開口端面52aと大径部61の開口端面61cとを、Oリング92を介在させつつ互いに当接させた状態で、締結部53,68に亘ってボルト91を締結する。
【0049】
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0050】
窓部65の貫通孔65aを通じて第2ハウジング60内に引き込まれたケーブル36は、大径部61の内周面61bに窪んで形成された窪み部67を通じてトルクセンサ40のコネクタ43へ導かれる。ケーブル36をコネクタ43へ導くための窪み部67は、大径部61の内周面61bに部分的に形成されるものであるため、ハウジング5の径方向への大型化を最小限に抑えることができる。よって、コンパクトな電動パワーステアリング装置100が得られる。
【0051】
また、窪み部67によってケーブル36を意図した位置に誘導することができるため、ケーブル36をトルクセンサ40のコネクタ43へ最短経路で誘導することができる。
【0052】
また、ケーブル36は窪み部67内に収容されてその位置が固定されるため、ケーブル36を固定するための部品を削減することができる。
【0053】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0054】
本実施形態では、電動パワーステアリング装置100は、操舵トルクが入力される入力シャフト13と、トーションバー14を介して入力シャフト13と連結された出力シャフト15と、入力シャフト13と出力シャフト15に亘って取付けられ、操舵トルクを検出するトルクセンサ40と、入力シャフト13、出力シャフト15、及びトルクセンサ40を収容するハウジング5と、トルクセンサ40の検出結果に基づいて、操舵補助トルクを発生する電動モータ21と、トルクセンサ40と電動モータ21の駆動を制御するコントローラ30とを電気的に接続するケーブル(信号線)36と、トルクセンサ40に設けられ、ケーブル36が接続されるコネクタ43と、を備え、ハウジング5は、入力シャフト13を回転自在に支持する第1ハウジング50と、第1ハウジング50に締結され、出力シャフト15を回転自在に支持する第2ハウジング60と、を有し、第2ハウジング60は、内外周面に亘って貫通して形成され、ケーブル36を第2ハウジング60内に引き込むための貫通孔65aと、内周面61bに窪んで形成され、軸方向に延びる窪み部67と、を有し、貫通孔65aを通じて第2ハウジング60内に引き込まれたケーブル36は、窪み部67を通ってトルクセンサ40の外周を横切り、トルクセンサ40のコネクタ43に接続される。
【0055】
この構成では、貫通孔65aを通じて第2ハウジング60内に引き込まれたケーブル36は、第2ハウジング60の内周面61bに窪んで形成された窪み部67を通じてトルクセンサ40のコネクタ43へ導かれる。ケーブル36をトルクセンサ40のコネクタ43へ導くための窪み部67は、第2ハウジング60の内周面61bに部分的に形成されるものであるため、ハウジング5の径方向への大型化を最小限に抑えることができる。よって、コンパクトな電動パワーステアリング装置100を提供することができる。
【0056】
また、本実施形態では、窪み部67は、コネクタ43に対するケーブル36の抜き差し方向に窪んで形成される。
【0057】
この構成では、窪み部67を、ケーブル36をトルクセンサ40のコネクタ43に接続する際の作業スペースとして利用することができる。
【0058】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0059】
(1)トルクセンサ40は、ステアリングシャフト11の絶対回転角度を検出するアングルセンサの機能も有する構成であってもよい。つまり、トルクセンサ40は、トルクアングルセンサであってもよい。
【0060】
(2)上記実施形態では、ラックシャフト12に形成されたラック12aと噛み合う第1ピニオン16が出力シャフト15に形成されたピニオンタイプの電動パワーステアリング装置100について説明した。しかし、本発明は、出力シャフト15にピニオンが形成されないコラムタイプの電動パワーステアリング装置であってもよい。
【0061】
(3)上記施形態では、ドライバによる操舵トルクと電動モータ21による操舵補助トルクとがそれぞれ独立してラックシャフト12に入力されるデュアルピニオン式の電動パワーステアリング装置100について説明した。しかし、本発明は、ドライバによる操舵トルクと電動モータ21による操舵補助トルクとが共通のステアリングシャフトを介してラックシャフト12に入力されるシングルピニオン式の電動パワーステアリング装置であってもよい。その場合には、アシスト機構20は、出力シャフト15に設けられる。
【0062】
(4)上記実施形態では、アッシー70が第2ハウジング60に組み込まれた状態で、コネクタ43は、取付口43aの一部が大径部61の開口端面61cから露出するように配置される形態について説明した。しかし、これに代わり、アッシー70が第2ハウジング60に組み込まれた状態で、コネクタ43が第2ハウジング60の大径部61内に完全に収容される構成であってもよい。この場合には、アッシー70を第2ハウジング60に組み込む前に、コネクタ37をコネクタ43に接続する必要がある。また、この場合には、窪み部は、第2ハウジング60の大径部61のみに形成すればよく、第1ハウジング50の大径部52に形成する必要がない。このように、本発明では、窪み部は、第2ハウジング60の大径部61及び第1ハウジング50の大径部52のうち少なくとも第2ハウジング60の大径部61に形成される。
【0063】
(5)上記実施形態では、トルクセンサ40のコネクタ43は、取付口43aがハウジング5の内面に対向するように配置されると説明した。しかし、本発明では、取付口43aの向きは限定されない。取付口43aの軸方向と入力シャフト13の軸方向とが一致するように、コネクタ43を配置してもよい。つまり、コネクタ43は、取付口43aが上方を向くように配置してもよい。
【符号の説明】
【0064】
100・・・電動パワーステアリング装置、5・・・ハウジング、12・・・ラックシャフト、12a・・・ラック、13・・・入力シャフト、14・・・トーションバー、15・・・出力シャフト、16・・・第1ピニオン、21・・・電動モータ、23・・・第2ピニオン、30・・・コントローラ、36・・・ケーブル(信号線)、37・・・コネクタ、38・・・ケーブルホルダ、40・・・トルクセンサ、41・・・ケース本体、43・・・コネクタ、50・・・第1ハウジング、52・・・大径部、60・・・第2ハウジング、61・・・大径部、61b・・・内周面、65・・・窓部、65a・・・貫通孔、67・・・窪み部、70・・・アッシー
図1
図2
図3
図4
図5