(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
≪熱伝導性熱硬化型接着剤組成物≫
本発明の熱伝導性熱硬化型接着剤組成物(以下、単に接着剤組成物ともいう。)は、エポキシ樹脂(A)と、ジアミン化合物(B)と、ポリイミド樹脂(C)と、熱伝導性充填材(D)とを含有する。
本発明の接着剤組成物は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、エポキシ樹脂(A)、ジアミン化合物(B)、ポリイミド樹脂(C)及び熱伝導性充填材(D)以外の他の成分をさらに含有してもよい。
本発明の接着剤組成物は、液状媒体を含有するものでもよく、含有しないものでもよい。本発明の接着剤組成物を塗布法により基材上に積層させる場合は、液状媒体を含有することが好ましい。
【0010】
<エポキシ樹脂(A)>
「エポキシ樹脂」は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物である。
エポキシ樹脂(A)としては、公知のものを用いる事が出来、例えば、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型骨格を有するノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、およびハロゲン化エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂(A)は、1種を単独で用いてもよく2種以上を組合わせて用いてもよい。
【0011】
エポキシ樹脂(A)としては、硬化物の耐熱性の点では、3官能以上の多官能型エポキシ樹脂が好ましい。接着剤組成物の流動性や硬化物の柔軟性の点では、両末端型のエポキシ樹脂が好ましい。3官能以上の多官能型エポキシ樹脂と両末端型のエポキシ樹脂とを組み合わせてもよい。
多官能型エポキシ樹脂の具体例としては、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂(例えば、日本化薬社製の商品名:EPPN(登録商標)502H)、ナフタレン型エポキシ樹脂(例えば、DIC社製の商品名:4032D、HP4700)、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬社製の商品名:EOCN(登録商標)1022)、プリンテック社製の商品名:VG3101等が挙げられる。
両末端型のエポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂(例えば、三菱化学社製の商品名:jER(登録商標)828、1001)、ビフェニル型エポキシ樹脂(例えば三菱化学社製 商品名:YX−4000)、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(例えばDIC社製 商品名:HP7200)等が挙げられる。
【0012】
エポキシ樹脂(A)は、シリコーン骨格を有していてもよい。
シリコーン骨格を有するエポキシ樹脂としては、例えば信越シリコーン社製の商品名:X−22−163A、側鎖フェニルタイプのシロキサン骨格のエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂(例えば信越シリコーン社製の商品名:X−22−2046)等が挙げられる。
【0013】
<ジアミン化合物(B)>
「ジアミン化合物」は、アミノ基を2つ有する化合物である。ジアミン化合物(B)は、エポキシ樹脂(A)の硬化剤として機能する。硬化剤としてジアミン化合物(B)を用いることで、他のエポキシ硬化剤(例えばノボラックフェノール樹脂)を用いる場合に比べて、接着剤組成物の熱硬化後、硬化物について測定されるTg前後の貯蔵弾性率の変化量が小さくなる。
ジアミン化合物(B)としては、例えば、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジメチル−5,5’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2’,3,3’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン等の芳香族ジアミン化合物;1,3−トリメチレンジアミン、1,4−テトラメチレンジアミン、1,3−ペンタメチレンジアミン、1,5−ペンタメチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタメチレンジアミン、3−メチル−1,5−ペンタメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン等が挙げられる。これらはいずれか1種を単独で用いても2種以上を組合わせて用いてもよい。
上記の中でも、耐熱性、機械的特性、電気的特性、ポットライフの点で、芳香族ジアミン化合物が好ましい。
【0014】
ジアミン化合物(B)は、シリコーン骨格を有していてもよい。
シリコーン骨格を有するジアミン化合物としては、主鎖にジメチルシロキサン骨格を有し、側鎖や両末端にアミノ基を有する変性シリコーン化合物が使用できる。このような変性シリコーン化合物としては、例えば信越シリコーン社製の商品名:KF8010、KF8012等が挙げられる。
【0015】
ジアミン化合物(B)のアミン価は、30〜100KOHmg/gであることが好ましく、40〜90KOHmg/gがより好ましく、50〜80KOHmg/gがさらに好ましい。アミン価が上記範囲の上限値以下であれば、接着剤組成物の熱硬化後に測定されるTg前後の貯蔵弾性率の変化量がより小さくなる。アミン価が上記範囲の下限値以上であれば、低温速硬化性に優れる。アミン価が上限値以下であれば、貯蔵安定性に優れる。
アミン価は、樹脂1g中に含有するアミノ基を中和するのに必要とする塩酸の当量と同量の水酸化カリウムのmg数であり、一般的にはJIS K 7237に準じて求められる。
【0016】
<ポリイミド樹脂(C)>
「ポリイミド樹脂」とは、主鎖中に酸イミド結合を有する重合体の総称である。
ポリイミド樹脂(C)としては、溶剤可溶性又は可溶融性のものが好ましい。
【0017】
ポリイミド樹脂(C)としては、シリコーン骨格を有するものが好ましい。
一般的にポリイミド樹脂は剛直なものであり、これを含む接着剤組成物の硬化物は低温で加工しにくい。特に熱伝導性充填材(D)を多量に含むと、接着剤組成物の硬化物の可撓性が低くなり、割れるなどの問題が発生しやすい。ポリイミド樹脂(C)がシリコーン骨格を有していれば、シリコーン骨格を有しない場合に比べて、ガラス転移温度(以下、「Tg」とも記す。)や貯蔵弾性率が低くなり、低温での加工性、可撓性が高まる。
【0018】
シリコーン骨格としては、硬さ、耐熱性、接着性等の観点から、平均重合度が2〜33(分子量としては、約250〜3000)のポリシロキサン骨格が好ましく、平均重合度が4〜24(分子量としては約400〜2000)のポリシロキサン骨格がより好ましい。
【0019】
シリコーン骨格を有するポリイミド樹脂としては、例えば、少なくとも下記式(I)で示される構造単位を有するものが挙げられる。
このポリイミド樹脂は、下記式(II)で示される構造単位及び下記式(III)で示される構造単位のいずれか一方又は両方をさらに有していてもよい。式(II)で示される構造単位を有することで、耐熱性や絶縁性がより高まる。式(III)で示される構造単位は、エポキシ基と反応するエポキシ反応性基である水酸基またはカルボキシル基を有しており、この構造単位を含むことで耐熱性がより高まる。
【0020】
【化1】
(式中、W
1は直接結合、炭素数1〜4のアルキレン基、−O−、−SO
2−又は−CO−を表し、R
1及びR
6はそれぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキレン基または下記式(1)で示される基を表し、R
2〜R
5はそれぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基を表し、nは2〜33の整数を表し、Ar
1は下記式(2)又は(3)で示される2価の芳香族基を表し、Ar
2は1個又は2個の水酸基またはカルボキシル基を有する2価の芳香族基を表す。)
【0021】
【化2】
(式中、Alkは炭素数1〜4のアルキレン基を表す。)
【0022】
【化3】
(式中、W
2は直接結合、炭素数1〜4のアルキレン基、−O−、−SO
2−又は−CO−を表し、W
3は、炭素数1〜4のアルキレン基を表し、Z
1及びZ
2はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。)
【0023】
ポリイミド樹脂(C)において、上記式(I)で示される構造単位と、上記式(II)で示される構造単位及び式(III)で示される構造単位の合計とのモル比は、5:95〜50:50が好ましい。
また、式(II)で示される構造単位と式(III)で示される構造単位とのモル比は、0:100〜99:1が好ましく、80:20〜95:5がより好ましく、50:50〜95:5がさらに好ましい。
【0024】
ポリイミド樹脂(C)のTgとしては、特に限定されるものではないが、35〜180℃程度が好ましい。
ポリイミド樹脂(C)の分子量は、溶融性を考慮し、15000〜70000程度が好ましい。ポリイミド樹脂(C)の分子量が上記下限値未満の場合は、膜の靭性、延性が損なわれ、脆くなるおそれがあり、上記上限値よりも大きい場合は、溶剤溶解性が低下し、加工性が劣ることや、接着剤としての溶融性が低下し、加工温度が高くなり、実用に供しにくい。
ポリイミド樹脂(C)の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)にて、テトラヒドロフラン(THF)を溶離液として用いて測定される、ポリスチレン換算の数平均分子量である。
【0025】
ポリイミド樹脂(C)は、市販のものを用いてもよく、公知の製造方法により製造したものを用いてもよい。
ポリイミド樹脂(C)は、テトラカルボン酸無水物とジアミン化合物との環化重縮合によって合成することができる。
例えば前記式(I)で示される構造単位を有するポリイミド樹脂は、下記式(IV)で示されるテトラカルボン酸二無水物と、下記式(V)で示されるジアミノシロキサン化合物と、必要に応じて下記式(VI)で示されるジアミン化合物及び下記式(VII)で示されるジアミン化合物のいずれか一方又は両方とを、有機溶媒中で重縮合させ、得られたポリアミック酸を閉環によりイミド化することによって得ることができる。
【0026】
【化4】
(式中、W
1、R
1〜R
6、n、Ar
1、Ar
2はそれぞれ前記した定義と同一のものを表す。)
【0027】
前記式(IV)で示されるテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、3,4,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4’,4’−ビフタル酸二無水物等が挙げられる。
【0028】
前記式(V)で示されるジアミノシロキサン化合物としては、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン(例えば、アミノプロピル末端のジメチルシロキサンの4量体ないし8量体等)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシメチル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノフェノキシメチル)ポリジメチルシロキサン,1,3−ビス(2−(3−アミノフェノキシ)エチル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、α,ω−ビス(2−(3−アミノフェノキシ)エチル)ポリジメチルシロキサン,1,3−ビス(3−(3−アミノフェノキシ)プロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、α,ω−ビス(3−(3−アミノフェノキシ)プロピル)ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。
上記のジアミノシロキサン化合物において、ポリシロキサンの場合は平均重合度が2〜33(分子量としては、約250〜3000)であることが好ましく、平均重合度が4〜24(分子量としては約400〜2000)であることが好ましい。
【0029】
前記式(VI)で示されるジアミン化合物としては、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2’−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、ベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、3,3’−ジアミノビフェニル、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−メチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−クロロ−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3,5−ジメチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,1’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1’−ビス[3−クロロ−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[3−メチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスアニリン、4,4’−[1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスアニリン、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビス(2,6−ジメチルビスアニリン)等が挙げられる。これらのジアミン化合物は2種以上を併用してもよい。
【0030】
前記式(VII)で示されるジアミン化合物としては、2,5−ジヒドロキシ−p−フェニレンジアミン、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,3’−ジヒドロキシ−3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、2,2’−ビス[3−ヒドロキシ−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[3−ヒドロキシ−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,3’−ジカルボキシ−3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジカルボキシ−3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジカルボキシベンジジン、2,2’−ビス[3−カルボキシ−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[3−カルボキシ−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン等が挙げられる。これらのジアミン化合物は2種以上を併用してもよい。
【0031】
有機溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルミアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン等の硫黄含有溶媒、フェノール、クレゾール、キシレノール等のフェノール系溶媒、アセトン、テトラヒドロフラン、ピリジン、テトラメチル尿素等が挙げられる。
【0032】
上記のテトラカルボン酸二無水物と、ジアミノシロキサン化合物等のジアミン化合物とを重縮合させ、ポリアミック酸を生成させる反応は、例えば、−20〜150℃、好ましくは0〜60℃の温度で数十分間ないし数日間の条件で行うことができる。
ポリアミック酸のイミド化の方法としては、加熱により脱水閉環させる方法、脱水閉環触媒を用いて化学的に閉環させる方法等が挙げられる。加熱により脱水閉環させる場合、反応温度は150〜400℃、好ましくは180〜350℃あり、反応時間は数十分〜数日間、好ましくは2時間〜12時間である。化学的に閉環させる場合の脱水閉環触媒としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、安息香酸等の酸無水物があり、閉環反応を促進させるピリジン等を併用することが好ましい。該触媒の使用量は、ジアミン化合物総量の200モル%以上が好ましく、300〜1000モル%がより好ましい。
【0033】
<熱伝導性充填材(D)>
熱伝導性充填材(D)としては、公知のものを用いる事が出来、例えば、酸化珪素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化マグネシウム等の金属酸化物;窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素等の金属窒化物;炭化珪素等の金属炭化物;水酸化マグネシウム等の金属水酸化物;等が挙げられる。これらはいずれか1種を単独で用いても2種以上を組合わせて用いてもよい。
熱伝導性充填材(D)としては、絶縁性の観点から、酸化アルミニウム(アルミナ)、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素等が好ましい。
【0034】
熱伝導性充填材(D)の形状としては、破砕による不定形の微粒子、球状、板状、球状などが適用できる。一般的に、不定形な形状の微粒子では熱伝導に対する効果が高く、好ましい。
粒径や形状の異なる複数の微粒子を使用する事で、充填量を高くして、より熱伝導性を高めることができる。熱伝導性充填材同士の隙間に粒径の小さなもしくは、または形状の異なる充填材が充填される事により充填率が向上する事により熱伝導率は高くなる。例えば、球状のアルミナ粒子において、平均粒径10μmのものと平均粒径3μmのものとを併用し、熱伝導性充填材(D)の全量に対する平均粒径の大きい方の粒子の割合を50体積%以上にする事で、より高い熱伝導率が得られる。球状のアルミナ粒子とりん片状の窒化ホウ素粒子とを併用することも出来る。
ここで平均粒径は、市販のレーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(例えば、マイクロトラック・ベル株式会社製、MT3000シリーズなど)を用いて、レーザー回折・散乱法による粒度分布の測定値から、累積分布によるメディアン径(d50、体積基準)として求めることができる。
【0035】
熱伝導性充填材(D)は、樹脂成分との濡れ性、接着性向上や特性向上の為に、表面処理が施されていてもよい。
表面処理としては、例えば、酸化膜処理、シランカップリング剤による表面処理、チタネート系カップリング剤による表面処理等が挙げられる。
例えば熱伝導性充填材が窒化アルミニウムの場合には、プレッシャークッカー試験の条件(例えば121℃100%RH2.1atm)に暴露されると、アンモニアが発生する。アンモニアは半導体パッケージ等においては好まれない物質であり、例えばシリカにより表面被覆されていることで、アンモニアの発生が抑制される。
【0036】
表面処理としては、シランカップリング剤による表面処理が好ましい。シランカップリング剤で表面処理されていることで、熱伝導性充填材(D)が接着剤組成物中により均一に分散する。また樹脂成分との界面の密着性が向上し、強度が向上する。また電子部品の実装における半田耐熱性が向上する。
シラカップリング剤としては、公知のものを用いる事が出来、例えば、エポキシシラン、アミノシラン、ビニルシラン、アクリルシラン等が挙げられる。具体的にはビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
シランカップリング剤による表面処理量は、熱伝導性充填材(D)100質量部に対して、0.2〜1質量部が好ましい。
【0037】
<他の成分>
他の成分としては、例えば、硬化速度をコントロールする目的等で、イミダゾール類、ジアミン類、トリフェニルホスフィン類の硬化促進剤、触媒を含有する事ができる。
シラカップリング剤を、熱伝導性充填材(D)の表面処理に用いずに、そのまま接着剤組成物に含有させてもよい。その場合は、シランカップリング剤の含有量は、接着剤組成物の全量に対して0.15〜0.8質量%程度が好ましい。
【0038】
<液状媒体>
液状媒体としては、上記の各成分を溶解又は分散するものが好ましく、公知の液状媒体の中から適宜選択できる。液状媒体の具体例としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ヘキサメチルリン酸トリアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリドン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、アセトン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、メチルセロソルブ、セロソルブアセテート、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトニトリル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジクロロエタン、トリクロロエタン等が挙げられる。
【0039】
<各成分の含有量>
接着剤組成物中、エポキシ樹脂(A)の含有量は、接着剤組成物の樹脂分(100質量%)に対して30〜55質量%が好ましく、35〜45質量%がより好ましい。エポキシ樹脂(A)の含有量が上記範囲の下限値以上であれば、接着性が良好である。上記上限値以下であれば、製膜時の膜性が良好である。
接着剤組成物中の樹脂分とは、接着剤組成物中の固形分から熱伝導性充填材(D)を除いたものである。
接着剤組成物中の固形分とは、エポキシ樹脂(A)、ジアミン化合物(B)、ポリイミド樹脂(C)、熱伝導性充填材(D)及び他の成分の合計である。
【0040】
ジアミン化合物(B)の含有量は、ジアミン化合物(B)のアミノ基が、エポキシ樹脂(A)のエポキシ基1モルに対して0.92〜1.03モルとなる量が好ましく、0.95〜1.00モルとなる量がより好ましい。ジアミン化合物(B)の含有量が上記範囲の下限値以上であれば、熱硬化速度が向上し、熱硬化工程の簡略化が可能で、上記上限値以下であれば、接着性が良好である。
【0041】
ポリイミド樹脂(C)の含有量は、接着剤組成物の樹脂分(100質量%)に対して30〜60質量%が好ましく、40〜50質量%がより好ましい。ポリイミド樹脂(C)の含有量が上記範囲の下限値以上であれば、より優れた絶縁性、可撓性が得られ、上記上限値以下であれば、接着剤組成物の溶融性が充分に確保でき、加工温度が高くならず、溶融時の被着体への濡れ性が良好である。
【0042】
熱伝導性充填材(D)の含有量は、接着剤組成物中の樹脂分100質量部に対して200〜1000質量部が好ましく、350〜700質量部がより好ましい。熱伝導性充填材(D)の含有量が上記範囲の下限値以上であれば、熱伝導性がより優れ、上記上限値以下であれば、接着性、熱溶融性、絶縁性がより優れる。
【0043】
<接着剤組成物の特性>
本発明の接着剤組成物は、熱硬化後において測定される、Tgでの貯蔵弾性率に対するTg−30℃での貯蔵弾性率の比率が300%以下であり、Tgでの貯蔵弾性率に対するTg+30℃での貯蔵弾性率の比率が40%以上である。
Tgでの貯蔵弾性率に対するTg−30℃での貯蔵弾性率の比率は、Tg−30℃での貯蔵弾性率(Pa)/Tgでの貯蔵弾性率(Pa)×100により求められる値であり、以下、「貯蔵弾性率比率(Tg−30℃/Tg)」とも記す。
Tgでの貯蔵弾性率に対するTg+30℃での貯蔵弾性率の比率は、Tg+30℃での貯蔵弾性率(Pa)/Tgでの貯蔵弾性率(Pa)×100により求められる値であり、以下、「貯蔵弾性率比率(Tg+30℃/Tg)」とも記す。
「熱硬化後」とは、接着剤組成物が加熱により完全硬化した状態を示す。接着剤組成物が完全硬化しているかどうかは、示差走査熱量測定(DSC)等により確認できる。
なお、通常、Tg−30℃での貯蔵弾性率>Tgでの貯蔵弾性率>Tg+30℃での貯蔵弾性率である。
【0044】
貯蔵弾性率比率(Tg−30℃/Tg)が300%以下、かつ貯蔵弾性率比率(Tg+30℃/Tg)が40%以上であることは、一般的なエポキシ含有の熱伝導性熱硬化型接着剤と比較して、Tg前後における貯蔵弾性率の変化が小さいことを示す。Tg前後における貯蔵弾性率の変化が小さければ、高温時においても優れた絶縁性を維持できる。例えばシリコン系半導体の動作温度領域である150℃程度での絶縁破壊電圧が、非動作時の温度領域(例えば25℃)での絶縁破壊電圧と比較して充分に維持される。
つまり、接着剤組成物の硬化物のTg前後における貯蔵弾性率の変化が小さいため、低温(例えば半導体の非動作時の温度領域)から高温(例えば半導体の動作温度領域)まで温度が変化する際の硬さの変化が緩やかであり、被着体との間に歪み(応力)が生じにくい。そのため、低温から高温への温度変化の際、あるいは低温から高温、高温から低温への温度変化が繰り替えされた際に、接着剤組成物から形成された層の破壊が生じにくく、優れた絶縁性を維持できる。また、被着体と硬化物の間に歪みが生じにくいことから、硬化物が被着体から剥離しにくく、接着信頼性に優れる。さらに、硬化物が被着体から剥離しにくいことで、硬化物と被着体との界面に空隙(エアギャップ)が生じにくく、熱伝導性が損なわれにくい。
貯蔵弾性率比率(Tg−30℃/Tg)は、250%以下が好ましく、200%以下がより好ましい。
貯蔵弾性率比率(Tg+30℃/Tg)は、40%以上が好ましく、50%以上がより好ましい。
【0045】
貯蔵弾性率は、熱硬化後の接着剤組成物に対する動的粘弾性試験により測定される。Tgは、貯蔵弾性率と損失弾性率の比として得られる損失正接がピークとなる温度として測定される。
貯蔵弾性率比率(Tg−30℃/Tg)及び貯蔵弾性率比率(Tg+30℃/Tg)は、接着剤組成物に含まれる各成分の種類、含有量等により調整できる。例えば、ジアミン化合物(B)のアミン価が前記の好ましい上限値以下であれば、Tg前後における貯蔵弾性率の変化が小さくなる傾向がある。
【0046】
前記熱硬化後において測定されるTgでの貯蔵弾性率は、特に限定されないが、5.00×10
7〜5.00×10
8Paが好ましく、8.00×10
7〜3.00×10
8Paがより好ましい。Tgでの貯蔵弾性率が上記上限値以下であれば、温度が変化する際に生じる歪みや熱膨張に対する耐性が優れる。Tgでの貯蔵弾性率が上記下限値以上であれば、せん断応力に対する耐性が良好である。
【0047】
前記熱硬化後において測定されるTgは、特に限定されないが、130〜250℃が好ましく、160〜220℃がより好ましい。Tgが高いと一般的には耐熱性が良好となるが、低温領域での弾性率は高くなる傾向があり、加工性や応力緩和性に劣るという問題がある。
【0048】
<作用効果>
以上説明した本発明の接着剤組成物にあっては、エポキシ樹脂(A)と、ジアミン化合物(B)と、ポリイミド樹脂(C)と、熱伝導性充填材(D)とを含有し、熱硬化後において測定される貯蔵弾性率比率(Tg−30℃/Tg)が300%以下、かつ貯蔵弾性率比率(Tg+30℃/Tg)が40%以上であり、Tg前後において特性の変化が小さい。すなわち、Tg付近の高温領域において、接着剤組成物の分子結合状態などの様態が維持されやすいため、高温時においても優れた絶縁性や熱伝導性を維持できる。また、接着信頼性にも優れる。
すなわち、本発明の接着剤組成物は、硬化する前は、加熱により溶融し、被着体(ヒートシンク、回路基板等)に圧着でき、熱による硬化後は、加熱されても溶融しない。
銅箔等の被着体の表面には微細な凹凸が存在するが、被着体の表面に接着剤組成物を配置して加熱すると、接着剤組成物が溶融し、凹凸が埋まる。そのため、接着剤組成物と被着体との間に空隙が生じにくく、また熱伝導性充填材(D)を含むため、熱伝導効果に優れる。
また、ポリイミド樹脂(C)を含むため、接着剤組成物やその硬化物は高い絶縁性を有する。絶縁性が必要な用途に用いる場合、より薄膜で必要な絶縁性を担保できるため、熱抵抗が低減可能で、放熱効果が高まる。また、ポリイミド樹脂(C)によって可撓性が付与されており、絶縁性や接着性が損なわれにくい。ポリイミド樹脂(C)の代わりに、アクリルニトリルブタジエンゴムやアクリルゴム等の他の熱可塑性樹脂を使用しても可撓性を付与できるが、これら他の熱可塑性樹脂は、ポリイミド樹脂(C)に比べて、熱分解温度が低い、高温に放置されると劣化しやすい、絶縁破壊電圧や接着力の温度依存性が大きい等の傾向にある。ポリイミド樹脂(C)を用いることで、そのような問題を回避できる。
そして、エポキシ樹脂(A)の硬化剤としてジアミン化合物(B)を用い、熱硬化後において測定される貯蔵弾性率比率(Tg−30℃/Tg)が300%以下、かつ貯蔵弾性率比率(Tg+30℃/Tg)が40%以上であるため、前述のとおり、高温時においても優れた絶縁性や熱伝導性を維持でき、接着信頼性にも優れる。
【0049】
<用途>
本発明の接着剤組成物の用途としては、特に限定されないが、上記の効果を奏する点から、絶縁性を有するTIMとして、半導体素子とヒートシンクとを備える半導体モジュールの組み立てに好適に用いられる。
図1に、半導体素子とヒートシンクとを備える半導体モジュールの一例を示す。
この例の半導体モジュール10は、半導体素子1と、半導体素子1が実装された回路基板3と、金属製のヒートシンク5と、回路基板3とヒートシンク5とを接着するTIM層7とを備える。
TIM層7は、本発明の接着剤組成物の熱硬化物からなる。TIM層7によって回路基板3とヒートシンク5とが接着されるとともに絶縁されている。
半導体モジュール10の動作時には、半導体素子1で熱が発生する。半導体素子1で生じた熱は、回路基板3及びTIM層7を伝わってヒートシンク5に移動し、ヒートシンク5から大気中に放出される。
【0050】
半導体モジュール10は、例えば、半導体素子1が実装された回路基板3と、ヒートシンク5との間に、本発明の接着剤組成物からなる熱伝導性熱硬化型接着シートを配置し、加熱して接着シートを硬化させることにより製造できる。熱伝導性熱硬化型接着シートについては後で詳しく説明する。又は、本発明の接着剤組成物として液状媒体を含む液状のもの(後述する塗料)を調製し、この塗料を、ヒートシンク5(又は半導体素子1が実装された回路基板3)に塗布し、乾燥して接着層を形成し、この接着層の上に、半導体素子1が実装された回路基板3(又はヒートシンク5)を配置し、加熱して接着層を硬化させることにより製造できる。
【0051】
≪熱伝導性熱硬化型接着シート≫
本発明の熱伝導性熱硬化型接着シート(以下、単に接着シートともいう。)は、本発明の接着剤組成物からなる。すなわち、エポキシ樹脂(A)と、ジアミン化合物(B)と、ポリイミド樹脂(C)と、熱伝導性充填材(D)とを含有し、熱硬化後において測定される貯蔵弾性率比率(Tg−30℃/Tg)が300%以下で、貯蔵弾性率比率(Tg+30℃/Tg)が40%以上である。
【0052】
接着シートにおいて、熱伝導性充填材(D)の最大粒径は、接着シートの厚みの1/2以下であることが好ましい。つまり接着シートの厚みは、熱伝導性充填材(D)の最大粒径の2倍以上であることが好ましい。熱伝導性充填材(D)は、絶縁破壊電圧が低く、また絶縁破壊は局部的に最弱点において発生する事から、接着シート中で、熱伝導性充填材(D)の部位が厚みの半分以上を占めた時に、絶縁破壊電圧の極端な低下を引き起こす場合がある。熱伝導性充填材(D)の最大粒径が接着剤シートの厚さの1/2以下であれば、熱伝導性充填材(D)の粒子間に絶縁性の樹脂が存在することで、個々の粒子が破壊をされても、樹脂によりブロックされることで、絶縁破壊電圧の極端な低下が抑制される。
【0053】
本発明の接着シートの厚みは、50〜300μmが好ましく、80〜200μmがより好ましい。接着シートの厚みが上記上限値以下であれば、熱伝導性がより優れる。熱伝導の点では、被着体の表面の凹凸を吸収できる厚さであれば、なるべく薄いほうが好ましいが、一方で、銅箔などの粗面を有する被着体の場合には、その凹凸により接着剤の実効厚さが薄くなり、絶縁破壊特性の低下などもある。また厚さが薄い場合には、それに適した熱伝導性充填材の選択が必要になる。そのため、厚みが上記下限値以上であることが好ましい。
【0054】
本発明の接着シートは、単層でもよく多層でもよい。
例えば接着シートの厚みが厚い場合には、本発明の接着剤組成物からなる層を複数積層して本発明の接着シートとしてもよい。
【0055】
本発明の接着シートの片面又は両面に保護フィルムが積層されて、保護フィルム付き接着シートとされてもよい。
保護フィルムとしては、例えば、剥離性フィルムを使用できる。使用可能な剥離性フィルムとしては、ポリプロピレンフィルム、フッ素樹脂系フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、紙、および場合によってはそれらにシリコーン樹脂で剥離性を付与したもの等が挙げられる。剥離性フィルムの厚さは、1〜200μmが好ましく、10〜100μmがより好ましい。
剥離性フィルムは、接着シートに対する90゜ピール強度が0.01〜10.0g/cmの範囲にあるものが好ましい。90゜ピール強度が上記の範囲内であると、保護フィルム付き接着シート加工時に剥離性フィルムが簡単に剥離せず、また貼り付け加工時に剥離性フィルムが接着剤層からきれいに剥がれ、作業性が良くなる。90゜ピール強度は、引っ張り試験機により測定される。
接着シートの両面に剥離性フィルムが積層された状態の場合には、一方の面に積層した剥離性フィルムの剥離力と他方の面に積層した剥離性フィルムの剥離力とが異なることが好ましい。
【0056】
本発明の接着シートは、例えば、エポキシ樹脂(A)と、ジアミン化合物(B)と、ポリイミド樹脂(C)と、熱伝導性充填材(D)と、液状媒体と、必要に応じて他の成分を含有する塗料を調製し、この塗料を基材上に塗布し、乾燥することにより製造できる。
このとき、接着シートは、半硬化状態とされてもよい。半硬化状態のコントロール方法は限定しないが、エージング等でコントロールすることが好ましい。
【0057】
接着シートを複数枚作製し、それらを積層して多層の接着シートを得てもよい。また、形成された接着シート上にさらに塗料の塗布し、乾燥するする工程を1回以上行って、多層の接着シートとしてもよい。接着シートの厚みが厚い場合、一度に接着シートを形成する場合には残留溶剤が多くなる傾向にあり、残留溶剤は、被着体と積層した後、熱硬化時に泡の発生などを引き起こすおそれがある。特に金属同士の接着に用いる場合には、揮発する残留溶剤が逃げることが出来ずに、発泡しやすい傾向がある。そのため、厚みが厚い接着シートを製造する場合は、残留溶剤濃度の低減のため、多層にすることが好ましい。接着シート中の残留溶剤濃度は、100ppm以下が望ましく、更に望ましくは50ppm以下である。
【0058】
塗料におけるエポキシ樹脂(A)、ジアミン化合物(B)、ポリイミド樹脂(C)、熱伝導性充填材(D)、液状媒体、他の成分はそれぞれ前記と同様のものが挙げられ、好ましい態様も同様である。
基材としては、例えば前述の剥離性フィルムが挙げられる。
塗料を塗布する方法としては、通常の塗工方式や印刷方式を用いることができる。塗工方式として具体的には、エアドクターコーティング、バーコーティング、ブレードコーティング、ナイフコーティング、リバースコーティング、トランスファロールコーティング、グラビアロールコーティング、キスコーティング、キャストコーティング、スプレーコーティング、スロットオリフィスコーティング、カレンダーコーティング、ダムコーティング、ディップコーティング、ダイコーティング等のコーティング方式が挙げられる。印刷方式として具体的には、グラビア印刷等の凹版印刷、スクリーン印刷等の孔版印刷等が挙げられる。
塗布した塗料を乾燥する際の乾燥温度は、液状媒体を除去できればよく、特に制限はないが、形成される接着シートが半硬化状態となる温度が好ましい。
塗料の固形分濃度と塗布厚み、塗布回数等によって接着シートの厚みを調整できる。
【実施例】
【0059】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。
【0060】
<合成例1>
1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン23.6g(81ミリモル)、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン2.1g(9ミリモル)、アミノプロピル末端ジメチルシロキサン8量体8.1g(10ミリモル)、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物20.0g(100ミリモル)及びN−メチル−2−ピロリドン300mLを用いて、特開2013−249391号公報の合成例4と同様の方法でポリイミド45.6g(収率91%)を得た。このポリイミドの数平均分子量が16000、Tgは105℃であった。
【0061】
<合成例2>
2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン32.0g(78ミリモル)、アミノプロピル末端ジメチルシロキサン8量体17.0g(22ミリモル)、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物35.8g(100ミリモル)及びN−メチル−2−ピロリドン300mLを用いて、特開2013−249391号公報の合成例2と同様の方法でポリイミド78.7g(収率97%)を得た。このポリイミドの数平均分子量は22000、Tgは50℃であった。
【0062】
<実施例1〜6、比較例1〜8>
下記表1〜2に記載の配合に基づいて、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、熱可塑性樹脂、熱伝導性充填材、溶剤を混合し、ビーズミルにより充填材を分散して接着剤組成物を調製した。
表1〜2に記載の配合において、実施例1〜6、比較例2〜3、6〜8における硬化剤の配合量(当量)は、エポキシ樹脂のエポキシ基1モルあたりの硬化剤のアミノ基のモル数を示す。熱伝導性充填材の配合量(phr)は、樹脂分(固形分−熱伝導性充填材)100質量部あたりの熱伝導性充填材の質量部を示す。これら以外の成分の配合量の単位は質量部である。実施例1〜6、比較例1〜8において、熱伝導性充填材としては、熱伝導性充填剤1と熱伝導性充填剤2と熱伝導性充填剤3とを、6:3:1の体積比で用いた。表1〜2には熱伝導性充填剤1〜3の合計量を示した。塗料固形分濃度は、接着剤組成物の全量に対する固形分の割合(質量%)を示す。
【0063】
表1〜2に示す各材料は以下のものを使用した。
エポキシ樹脂1:ビスフェノールA型エポキシ樹脂。
エポキシ樹脂2:ビフェニル型エポキシ樹脂。
エポキシ樹脂3:ジシクロペンタジエン(DCPD)型エポキシ樹脂。
ジアミン1:4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(アミン価:62.1KOHmg/g)。
ジアミン2:3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(アミン価:62.1KOHmg/g)。
ジアミン3:2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(アミン価:102.6KOHmg/g)。
ジアミン4:ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(アミン価:108.1KOHmg/g)。
ノボラック型フェノール樹脂:昭和電工社製の商品名CKM−2400。
イミダゾール:四国化成社製の商品名2MA−OK(2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物)。
ポリイミド1:合成例1で得たポリイミド。
ポリイミド2:合成例2で得たポリイミド。
NBR:アクリルニトリルブタジエンゴム(アクリロニトリル単位含有量:42.5質量%)。
ポリアミド:ポリエーテルエステルアミド(Tg:−62℃)。
熱伝導性充填材1:アルミナ(平均粒径20μm)。
熱伝導性充填材2:アルミナ(平均粒径3μm)。
熱伝導性充填材3:アルミナ(平均粒径0.5μm)。
【0064】
次に、得られた接着剤組成物を、剥離処理されたポリエステルフィルムに、乾燥後の厚みが50μmになるように塗布し、120℃で3分間程度乾燥して接着シートを作製した。次に、接着シート2枚を積層し、厚み100μmの接着シートを得た。
次に、以下の測定及び評価を行った。結果を表1〜2に併記した。
【0065】
[熱硬化後におけるTg、貯蔵弾性率]
作製した接着シートに対して熱硬化処理(常温から175℃まで1時間かけて昇温し、175℃で5時間保持)を行い、測定サンプルを得た。
測定サンプルについて、動的粘弾性試験(オリエンテック社製)を用い、昇温速度:10℃/1分、周波数:11Hz、測定温度:25℃〜300℃の条件で動的粘弾性を測定し、Tg、Tgでの貯蔵弾性率、Tg−30℃での貯蔵弾性率、Tg+30℃での貯蔵弾性率を求めた。
上記の結果から、貯蔵弾性率比率(Tg−30℃/Tg)及び貯蔵弾性率比率(Tg+30℃/Tg)を算出した。
【0066】
[絶縁破壊試験]
作製した接着シートに対して熱硬化処理(常温から175℃まで1時間かけて昇温し、175℃で5時間保持)を行い、測定サンプルを得た。
測定サンプルを温度25℃、湿度60%RHの環境条件下に24時間放置した後、昇圧速度 1kV/secにて直流電圧を印加し、破壊するまで電圧(破壊電圧)を加えた。絶縁破壊強度として、破壊電圧を厚さで除し、1mmあたりの絶縁破壊電圧(kV/mm)を求めた。測定サンプル10個について絶縁破壊電圧を求め、それらの平均値を算出した。
求めた絶縁破壊電圧(25℃)から、絶縁性を以下の基準で評価した。
○:絶縁破壊電圧(25℃)が110kV/mm以上。
△:絶縁破壊電圧(25℃)が100kV/mm以上110kV/mm未満
×:絶縁破壊電圧(25℃)が100kV/mm未満。
【0067】
次に、温度を25℃から150℃に変更した以外は上記と同様にして、測定サンプルの150℃での絶縁破壊電圧を測定し、測定サンプル10個の平均値を算出した。
上記の結果から、次の数式により絶縁破壊電圧比率を算出した。
絶縁破壊電圧比率=(150℃における絶縁破壊電圧)/(25℃における絶縁破壊電圧)×100[%]
求めた絶縁破壊電圧比率から、高温時の絶縁性の維持性を以下の基準で評価した。
○:絶縁破壊電圧比率が90%以上。
△:絶縁破壊電圧比率が80%以上90%未満
×:絶縁破壊電圧比率が80%未満。
【0068】
[熱伝導率]
作製した接着シートを1mm厚さまで加熱により積層し、硬化処理(常温から175℃まで1時間かけて昇温し、175℃で5時間保持)を行って測定サンプルを得た。
測定サンプルについて、アルバック理工株式会社製の熱定数測定装置により熱拡散率を測定した。アルキメデス法により測定サンプルの密度を測定し、DSC法により比熱を測定し、これらから熱伝導率を算出した。通常の有機樹脂が0.1から0.22W/(m・K)であり、熱伝導率が0.6W/(m・K)以上であれば、熱伝導性接着剤といえる。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
上記のとおり、実施例1〜6の接着シートは、絶縁破壊電圧、熱伝導率ともに充分に高く、優れた絶縁性及び熱伝導性を有していた。また、実施例1〜6の接着シートは、比較例1〜8の接着シートと比較し、絶縁破壊電圧比率が高く、高温時においても優れた絶縁性を維持していた。