(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
(建具の全体構成)
本発明の建具を、建物開口部に取り付けられる枠体に対して、障子を内倒し開閉自在に支持する内倒し窓の実施形態を用いて説明する。
本発明の実施形態に係る建具は、
図1乃至3に示すように、上枠11,下枠12及び左、右縦枠13,14を四周に組んでなり建物開口部に配置される枠体1に対して、上框21,下框22及び左、右縦框23,24を四周に組んで内周にガラス等パネルを装着してなる障子2を、障子2の下辺を軸にして室内側に開放する内倒し窓として構成されており、ワイヤ部材4を使用して窓の開閉を操作している。
【0010】
枠体1を構成する上枠11は、
図2に示すように、建物開口部に固定され枠体1の内周面を形成する中空の上枠本体部111と、上枠本体部111の室外側下面より下方に垂下される室外側垂下壁部112と、上枠本体部111の室内外方向やや室内寄りから下方に垂下され、室内側面に気密材を保持する気密材取付壁113とからなる。
下枠12は、建物開口部に固定され枠体1の内周面を形成するとともに室外側下方に中空の水切り部を有する下枠本体部121と、下枠本体部121の室内側に立ち上がる中空構造の立上壁122と、立上壁122に取り付けられて上方に延びる下枠補助枠123とから構成されている。
下枠補助枠123は、その上方室内側に障子2を内倒し自在に支持する支持部123aを有するとともに、上方室外側には、室内側面に気密材を保持する気密材保持片123bを有している。
【0011】
枠体1を構成する左右の縦枠13、14は、
図3に示すように、略同一形状をなしており、それぞれ建物開口部に固定され枠体1の内周面を形成する左、右縦枠本体部131,141と、左、右縦枠本体部131,141の内周面の室外側部位に形成される室外側中空部132,142と、室外側中空部132,142から内周方向に延設される左、右外壁部133,143と、左、右縦枠本体部131,141の内周面の室内外方向やや室内寄りの部位から内周方向に延設され、室内側面に気密材を保持する気密材取付壁134,144とから構成されている。
【0012】
障子2を構成する上框21は、
図2に示すように、障子2の上方外周面を形成する中空部の内周側にガラス間口21aを有する上框本体部211と、上框本体部211の外周面の室内側端より上方に延設される上框室内壁部212とから構成されている。
障子2を構成する下框22は、障子2の下方外周面を形成し、内周側にガラス間口22aを構成する室外側間口壁221aを有する下框本体部221と、下框本体部221の外周側室外側端より下方に延接される室外側外周壁222と、下框本体部221の室内側端から下方に設けられる開閉軸受部223と、下框本体部221の室内側内周面に取り付けられてガラス間口を構成する押縁224とから形成されている。
【0013】
障子2を構成する左右の縦框23、24は、
図3に示すように、略同一形状をなしており、それぞれ障子2の外周面を形成する中空部の室外側端内周面にガラス間口23a,24aを構成する室外側間口壁231a,241aを有してなる左、右縦框本体部231,241と、左、右縦框本体部231,241の室内側端から外周方向に延設される室内側壁232,242と、左、右縦框本体部231,241の室内側内周面に取り付けられてガラス間口を構成する押縁233,243とから構成されている。
そして、枠体1の下枠12の支持部123aに対して、障子2の下框22の開閉軸受部223を可動自在に係合することで、障子2が枠体1に対して内倒し自在に支持されて、下枠12の支持部123aを中心にして障子2が開閉自在に支持される。
【0014】
(ワイヤ通し部品の構成)
本実施形態にかかる内倒し窓の枠体1には、障子2の開閉操作のためのワイヤ部材4が掛け回されており、
図1(b)に示すように、障子2等に掛け回されたワイヤ部材4の先端は枠体1の左縦枠13の内周面から左縦枠13内部に案内されたのち、左縦枠13の室内側面から出て下方に向かい、操作者が操作することのできる高さにまで案内されている。
そして、左縦枠13には、ワイヤ部材4を左縦枠13の内周面から室内側面に案内するためのワイヤ通し部品5が取り付けられている。以下、ワイヤ通し部品5について説明する。
【0015】
ワイヤ通し部品5は、
図2,3に示すように、左縦枠13の室外側中空部132に固定され、左縦枠13の内周側から導入されるワイヤ部材4を左縦枠13の室内側に案内する内周側通し部材51と、左縦枠13の左縦枠本体部131の室内側面に固定され、左縦枠13の室内側に案内されたワイヤ部材4を左縦枠13の室内側面から下方に向かって案内する室内側通し部材52から構成されている。
内周側通し部材51は、
図4に示すように、2カ所にビス孔511aを有する固定板部511と、固定板部511の一面に開口して他面より突出して水平状態で湾曲しながら延びる円弧状ガイド部512と、固定板部511の他面と円弧状ガイド部512の内周との間に設けられた水平リブ部513とから構成されている。
円弧状ガイド部512の内部には、ワイヤ部材4を通すワイヤ通路5aが形成されており、円弧状ガイド部512の内周側面には、ワイヤ通路5a内部と外部とを連通する開口部512aが形成されているとともに、固定板部511と反対側の先端には、接合部512bが形成されている。
【0016】
室内側通し部材52は、
図5に示すように、2カ所にビス孔521aを有する短尺状の固定板部521と、固定板部521の一面の長さ方向略中央位置から湾曲しながら固定板部521に沿うように延設されるワイヤ取出部522と、固定板部521の他面から直角に延びる直線状ガイド部523とから構成されている。ワイヤ取出部522及び直線状ガイド部523の内部には、それぞれワイヤを通すワイヤ通路5aが連続して形成されているとともに、固定板部521と反対側の先端には、接合部523aが形成されている。
【0017】
内周側通し部材51及び室内側通し部材52は、それぞれ二部材により形成されている。
図6(a)に示すように、内周側通し部材51は、固定板部511、水平リブ部513、及び円弧状ガイド部512の略半分である第1円弧状ガイド部分514とで形成される第1内周側通し部材51aと、円弧状ガイド部512の第1円弧状ガイド部分514とは反対の略半分である第2円弧状ガイド部分515により構成される第2内周側通し部材51bとから形成されている。
第1内周側通し部材51aの第1円弧状ガイド部分514の固定板部511側には挿入口514aが設けられるとともに、第1円弧状ガイド部分514の他側には係止部514bが設けられている。
【0018】
第2内周側通し部材51bの一端側には、挿入部515aが設けられるとともに、他端側には、連結首部515bが設けられており、第1内周側通し部材51aの挿入口514aに第2内周側通し部材51bの挿入部515aを挿入するとともに、連結首部515bを係止部514bに嵌め込むことにより、第1内周側通し部材51aと第2内周側通し部材51bとが一体的に連結され、内部にワイヤ通路5aを有する内周側通し部材51が形成される。
【0019】
一方、
図6(b)に示すように、室内側通し部材52は、固定板部521、ワイヤ取出部522の略半分である第1ワイヤ取出部524、及び直線状ガイド部523の略半分である第1直線状ガイド部分525とで形成される第1室内側通し部材52aと、ワイヤ取出部522の第1ワイヤ取出部524とは反対の略半分である第2ワイヤ取出部526と直線状ガイド部523の第1直線状ガイド部分525とは反対の略半分である第2直線状ガイド部分527で構成される第2室内側通し部材52bとから形成されている。
【0020】
第1室内側通し部材52aの固定板部521の第1直線状ガイド部分525側には凹部521bが形成されているとともに第1直線状ガイド部分525の反固定板部521側端部には、挿入部525aが設けられている。
第2室内側通し部材52bの第2ワイヤ取出部526には取付片部526aが形成されており、第2直線状ガイド部分527の端部には、挿入口527aが設けられている。
【0021】
そして、第1室内側通し部材52aの凹部521bに第2室内側通し部材52bの第2ワイヤ取出部526及び取付片部526aを嵌め込むとともに、第1室内側通し部材52aの挿入部525aを第2室内側通し部材52bの挿入口527aに嵌め込み、取付片部526aを固定板部521に対してビス等の固定部材bにより固定することで一体的に連結され、内部にワイヤ通路5aを有する室内側通し部材52が形成される。
【0022】
(ワイヤ通し部品の取り付け)
ワイヤ通し部品5を左縦枠13に固定する固定方法を説明する。
左縦枠13の室外側中空部132のワイヤ通し部品5が取り付けられる部位には、
図3(b)に示すように、左縦枠13の室外側中空部132を貫通する貫通孔132aが形成されており、ワイヤ通し部品5の内周側通し部材51の円弧状ガイド部512を内周側から挿入することができる。貫通孔132aは、見込み方向に長い長孔に形成されており、見込み方向に湾曲する円弧状ガイド部512の挿入を可能にするとともに、円弧状ガイド部512の見込み方向の位置調節を可能にしている。
【0023】
また、左縦枠13の室内側面のワイヤ通し部品5が取り付けられる部位には、
図3(b)に示すように、左縦枠13の左縦枠本体部131を貫通する貫通孔131aが形成されており、ワイヤ通し部品5の室内側通し部材52の直線状ガイド部523を室内側から挿入することができる。
そして、左縦枠13の内部において、室外側中空部132の貫通孔132aから挿入された内周側通し部材51の接合部512bと、室内側面の貫通孔131aから挿入された室内側通し部材52の接合部523aとを接合した状態において室内側通し部材52の固定板部521を室内側壁にビス等の固定手段により固定するとともに、内周側通し部材51の固定板部511を室外側中空部132の内周壁にビス等の固定手段により固定することにより、ワイヤ通し部品5を左縦枠13に確実に固定することができる。
【0024】
(ワイヤ通し部品の排水機能)
本実施形態にかかる内倒し窓は、その開閉操作をワイヤ部材によって行っており、ワイヤ部材4の枠内(左縦枠内)での掛け回しにワイヤ通し部品5を用いることによって、ワイヤ部材の案内に滑車等を使う必要がなく、安定した状態で簡潔に行うことができるが、ワイヤ通し部品5の向きによってはワイヤ通し部品5内に水が浸入し、その水が排水されない可能性がある。
そこで、本実施形態の内倒し窓においては、ワイヤ通し部品5に対しての排水機能を備えている。
【0025】
左縦枠13には、
図3に示すように、左縦枠本体部131の内周面の室外側部位に室外側中空部132が形成されており、室外側中空部132は下端を開放するなどして中空部内を外気に開放されている。そして、ワイヤ部材4を案内するワイヤ通し部品5を左縦枠13に設置するに際して、室外側中空部132を貫通するように配置するとともに、室外側中空部132内においてワイヤ通路5aに連通する開口部512aを形成することによって、ワイヤ通し部品5内部に侵入した水を室外側中空部132内に良好に排水することができるように構成されている。
【0026】
具体的には、枠体1を組むに際して、左、右縦枠13,14の内周面に対して上、下枠11,12の端面を突き当ててビス等の固定手段により四周に枠組しているが、その際、左、右縦枠13,14の室外側中空部132,142の下端を下枠12の上面に載置するとともに、室外側中空部132,142の下端が載置された部位に開放孔を形成するなどして、室外側中空部132,142を外気に開放された状態としている。なお、室外側中空部132,142の下端を下枠12上面に載置した状態で室外側中空部132,142が開放された状態であれば、特に開放孔等を形成する必要はない。
【0027】
そして、左縦枠13内を取り回されるワイヤ通し部品5は、室外側中空部132を貫通するように配置されるとともに、
図4(c),(d)に示すように、ワイヤ通し部品5を構成する室内側から遠い部材である内周側通し部材51の円弧状ガイド部512にワイヤ通路5aを外部と連通する開口部512aが形成されている。開口部512aは、ワイヤ通路5aの直径よりも大きな開口寸法をもって形成されており、
図4(d)に示すように、ワイヤ通し部品5が配置された際に、ワイヤ通路5aから開口部512aに向かって下方に傾斜する排水通路が形成されることになり、ワイヤ通路5a内に浸入した水は排水経路を通ってすみやかに室外側中空部132内に排水される。
【0028】
室外側中空部132内に排水された水は、室外側中空部132内を通って下枠12の上面に至り、下枠12上面に形成された排水孔等を通って屋外に排水されることとなる。
【0029】
以上のように、本実施形態の内倒し窓においては、障子を開閉操作するワイヤ部材を縦枠の内周面と室内側面との間でワイヤ通し部材によって案内することにより、ワイヤの取り回しに滑車等を用いることがなく、スムーズな取り回しを行うことができる。
また、ワイヤ通し部品5を、内周側通し部材51と室内側通し部材52とによって構成し、縦枠13に対して、内周面と室内面とから内周側通し部材51と室内側通し部材52を挿入して固定し、枠体の内部で内周側通し部材51と室内側通し部材52とを連結して設置しているので、設置後はぐらつくことなく、安定した取り付けを行うことができる。
さらに、縦枠に外気に連通している中空部を形成するとともに、ワイヤ通し部品5の少なくとも一部は縦枠の中空部内に臨ませ、その部位においてワイヤ通し部品のワイヤ通路の水を中空部内に導く排水経路を形成するので、ワイヤ通し部材内に水が浸入しても、すみやかに排水することができ、室内に水が浸入したり、ワイヤ部材が腐食することを抑制できる。
【0030】
なお、本実施形態の建具においては、ワイヤ通し部品は、ワイヤ部材を縦枠の内周面から見付け面に案内するものであるが、ワイヤ部材の案内は内周面から見付け面への案内に限らず、見付け面同士や見込み面同士の案内や、その他縦枠の上面等へ案内するもの、即ち縦枠の一つの面から他の面へ案内するものであればどのようなものでもよい。