(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
正極集電体上に正極活物質層が形成された正極および負極集電体上に負極活物質層が形成された負極が、セパレータを介して交互に積層されて構成された電極ユニットと、リチウム塩の非プロトン性有機溶媒溶液よりなる電解液とを備えた蓄電デバイスであって、
蓄電デバイスの満充電の状態から、満充電の電圧の半分の電圧まで0.75〜1.25時間かけて放電したときの容量をセル容量a(mAh)とし、蓄電デバイスの満充電の状態の負極を、負極電位が1.5V(Li/Li+ )になるまで放電させたときの容量を完全負極容量b(mAh)とし、前記負極を0Vにて12時間にわたって定電流−定電圧充電(CCCV充電)したときの容量を総負極充電容量c(mAh)とするとき、0.35≦a/b≦0.95、0.55≦b/c≦1.00、0.35≦a/c≦0.55を満たし、前記正極活物質層の電極密度が0.54g/cm3 〜0.7g/cm3 で、且つ前記正極活物質層の電極目付量が70g/m2 〜110g/m2 であることを特徴とする蓄電デバイス。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の蓄電デバイスは、基本的に、正極と負極とを、セパレータを介して交互に積層あるいは捲回させた電極ユニットを外装容器内に有する。外装容器は、円筒型、角型、ラミネート型等を適宜使用することができ、特に限定されない。
本発明の蓄電デバイスにおいて、「正極」とは、放電の際に電流が流出し、充電の際に電流が流入する側の極を意味し、「負極」とは、放電の際に電流が流入し、充電の際に電流が流出する側の極を意味する。
【0010】
本明細書において、「ドープ」とは、吸蔵、吸着または挿入を意味し、正極活物質にリチウムイオンおよびアニオンの少なくとも一方が入る現象、あるいは、負極活物質にリチウムイオンが入る現象をいう。また、「脱ドープ」とは、脱離、放出を意味し、正極活物質からリチウムイオンもしくはアニオンが脱離する現象、または負極活物質からリチウムイオンが脱離する現象をいう。
【0011】
本発明の蓄電デバイスは、負極および正極の少なくとも一方にリチウムイオンを予めドープするのが好ましい。負極にリチウムイオンを予めドープするのがより好ましい。
負極および正極の少なくとも一方にリチウムイオンを予めドープする方法としては、例えば、金属リチウム等をリチウム極として蓄電デバイスに配置し、負極および正極の少なくとも一方とリチウム極との電気化学的接触によって、リチウムイオンをドープさせる方法が用いられる。
【0012】
本発明の蓄電デバイスでは、リチウム極をセル中に局所的に配置して電気化学的接触させることによっても、負極および正極の少なくとも一方にリチウムイオンを均一にドープすることができる。
【0013】
本発明の蓄電デバイスは、例えば、表裏面を貫通する孔を有した正極集電体に正極活物質層を形成した正極、第1のセパレータ、表裏面を貫通する孔を有した負極集電体に負極活物質層を形成した負極、第2のセパレータの順に捲回または積層させ、正極と接触しないように第1のセパレータの余剰部に少なくとも1つのリチウム極を配置し、負極集電体とリチウム極を短絡させて、電極ユニットを構成する。角型、円筒型またはラミネート状の外装容器に電極ユニットを封入した後、電解液を充填させることで、リチウム極からのリチウムイオンのドープが開始され、負極活物質層中にリチウムイオンをドープすることができる。これにより、蓄電デバイスを構成する。
【0014】
本発明の蓄電デバイスの具体例としては、リチウムイオンキャパシタおよびリチウムイオン二次電池をあげることができるが、なかでもリチウムイオンキャパシタであるのが好ましい。
【0015】
本発明において、リチウムイオンキャパシタとは、正極が分極性電極であり、負極が非分極性電極である、リチウムイオンを含有する蓄電デバイスを意味する。
リチウムイオンキャパシタの正極材料としては、活性炭、ポリアセン等の比表面積の大きな材料が好ましく用いられ、負極の材料としては、黒鉛、難黒鉛化炭素、天然黒鉛よりなる芯粒子の表面がタールもしくはピッチ由来の黒鉛化物質によって被覆されている黒鉛系複合粒子、および、芳香族系縮合ポリマーの熱処理物であって水素原子および炭素原子の原子数比(水素原子/炭素原子)が0.50〜0.05であるポリアセン系骨格構造を有するポリアセン系有機半導体(PAS)等の炭素質材料、チタン酸リチウム等の金属酸化物、シリコン、スズ等の金属合金等が好ましく用いられる。リチウムイオンキャパシタとしては、負極が、予めリチウムイオンをドープした負極であるのが好ましい。負極が、予めリチウムイオンをドープした負極であるリチウムイオンキャパシタは、充電操作から蓄電デバイスの使用開始ができるので好ましい。本発明のリチウムイオンキャパシタは、エネルギー密度が31.5Wh/L以上であるのが好ましく、33Wh/L以上であるのがさらに好ましい。
【0016】
本発明において、リチウムイオン二次電池とは、正極および負極が非分極性電極である、リチウムイオンを含有する蓄電デバイスを意味する。リチウムイオン二次電池の正極材料としては、コバルト酸リチウム、リン酸鉄リチウム等の遷移金属複合酸化物等が好ましく用いられる。負極材料としては、黒鉛、難黒鉛化炭素等の炭素質材料、チタン酸リチウム等の金属酸化物、シリコン、スズ等の金属合金等が好ましく用いられる。
【0017】
本発明の蓄電デバイスは、蓄電デバイスの満充電の状態から、満充電の電圧の半分の電圧まで0.75時間〜1.25時間かけて放電したときの容量をセル容量a(mAh)とし、蓄電デバイスの満充電の状態の負極を、負極電位が1.5V(Li/Li
+ )になるまで放電させたときの容量を完全負極容量b(mAh)とし、前記負極を0Vにて12時間にわたって定電流−定電圧充電(CCCV充電)したときの容量を総負極充電容量c(mAh)としたとき、0.35≦a/b≦0.95、0.55≦b/c≦1.00、0.35≦a/c≦0.55を満たし、前記正極活物質層の電極密度が0.54g/cm
3〜0.7g/cm
3で、且つ前記正極活物質層の電極目付量が70g/m
2〜110g/m
2であるという特徴を有する。
【0018】
本発明において、蓄電デバイスの満充電の状態とは、ガス発生や抵抗の上昇などの不具合が無く、長期にわたって使用できる最大電圧の範囲内で任意に設定した充電状態を意味する。蓄電デバイスの満充電の電圧は、蓄電デバイスの種類、正負極の材料構成、および電解液組成に依存する。リチウムイオンキャパシタでは、満充電の電圧は、3.6V〜4.0V程度であり、リチウムイオン二次電池では、満充電の電圧は、4.1V〜4.5V程度である。リチウムイオンキャパシタおよびリチウムイオン二次電池では、満充電時において、負極の電位は、0.2V(Li/Li
+ )以下であるのが好ましく、0.1V(Li/Li
+ )以下であるのがさらに好ましい。満充電の電圧以上の電圧印加は、蓄電デバイスの劣化を招くので好ましくない。
【0019】
セル容量aは、セルサイズによっても変化するが、所定容量の正極活物質、負極活物質を使用する場合、負極活物質の質量に対する正極活物質の質量を調整することによって制御することができる。具体的には、例えば負極を構成する負極活物質層の目付が一定である場合には、正極活物質層の目付を大きくするほど、セル容量aを大きくすることができる。
【0020】
〔セル容量aの測定方法〕
セル容量aは、満充電の状態から、満充電の電圧の半分の電圧まで放電するときの放電時間が0.75時間〜1.25時間となる電流値(以下、「電流値α」という。)で放電させることによって測定される。具体的には、まず、蓄電デバイスを、電流値αの定電流にてセル電圧が満充電に係る設定電圧になるまで充電した後、当該設定電圧の定電圧を印加する定電流−定電圧充電(CCCV充電)を30分間行って満充電の状態にする。次いで、この状態から、電流値αの定電流にて、設定電圧の半分の電圧になるまで放電する。この充放電を5回繰り返すことで蓄電デバイスを定常状態とし、5回目に放電したときに測定される容量が、セル容量aとされる。
【0021】
一例を挙げると、例えば、セル容量が200mAh程度とされる蓄電デバイスの場合、200mA(電流値α)の定電流にてセル電圧が3.8Vになるまで充電した後、3.8Vの定電圧を印加する定電流−定電圧充電(CCCV充電)を30分間行って満充電の状態にし、次いで、この状態から200mA(電流値α)の定電流にてセル電圧が1.9Vになるまで放電することにより、セル容量aを測定することができる。この際の放電に要する時間は約1時間となる。仮に2000mAの定電流にて放電した場合、セルの内部抵抗にもよるが、放電時間が6分以下となり、0.75時間を大きく下回るため、蓄電デバイスが有している正確なセル容量aを測定することはできない。
なお、本発明で規定している0.75時間〜1.25時間とは、いかような値を取り得るわけではなく、約1時間前後で半分の電圧に放電ができる電流値を導き出して放電する目安時間を規定しているものである。具体的には0.9時間〜1.1時間の範囲で放電できる電流値を設定することが好ましい。
【0022】
完全負極容量bは、負極を構成する負極活物質に満充電時にドープされるリチウムイオンの量を調整することによって制御することができる。具体的には、例えばリチウム極の厚みを大きくするほど、完全負極容量bを大きくすることができる。また、正極の容量を大きくすると、完全負極容量bを大きくすることができる。
【0023】
〔完全負極容量bの測定方法〕
蓄電デバイスの完全負極容量bは、満充電状態の蓄電デバイスにおける各負極に係る下記測定によって得られる負極容量の合計である。
完全負極容量bは、まず、蓄電デバイスを、電流値αの定電流にてセル電圧が設定電圧になるまで充電した後、設定電圧の定電圧を印加する定電流−定電圧充電(CCCV充電)を30分間行って満充電の状態にする。次いで、この満充電させた蓄電デバイスを、例えば、アルゴンボックス内にて正極と負極が短絡しないように分解して負極を取り出し、この負極を作用極とし、対極および参照極にリチウム金属板からなる電極板を各々用いて負極容量測定用の3極セルを組み立て、これを電流値βの定電流にて負極電位が1.5Vになるまで放電してその負極容量を測定する。測定した負極容量に総負極枚数をかけることで完全負極容量bが得られる。
ここに、電流値βは、蓄電デバイスを構成する負極が1つのみである場合は電流値αと同じ値となり、蓄電デバイスを構成する負極が複数であり、かつ、各負極が同一の構成を有する場合は電流値αを負極の数で除した値となる。
蓄電デバイスに3つ以上の負極が含有されている場合は、負極容量測定用の3極セルを作製するための負極としては、最外部に位置される負極以外の負極を選択して取り出すことが必要とされる。
【0024】
一例を挙げると、例えば、200mAhのセル容量を有し、同一の構成の11枚の負極を有する蓄電デバイスの場合、200mA(電流値α)の定電流にてセル電圧が3.8Vになるまで充電した後、3.8Vの定電圧を印加する定電流−定電圧充電(CCCV充電)を30分間行って満充電の状態にする。次いで、この満充電させた蓄電デバイスを、アルゴンボックス内にて正極と負極が短絡しないように分解して最内部に位置される負極を取り出し、この負極を作用極とし、対極(作用極の両面に配置)および参照極にリチウム金属板からなる電極板を各々用いて負極容量測定用の3極セルを組み立て、これを18.2mA(電流値β:200mA÷11枚)の定電流にて負極電位が1.5Vになるまで放電してその負極容量を測定し、この値を11倍することにより、完全負極容量bを得ることができる。
本発明における、完全負極容量bに対するセル容量aの割合(a/b)は、0.35≦a/b≦0.95である。a/bが0.35未満の場合、エネルギー密度が低下する。一方、a/bが0.95より大きい場合は、サイクル試験時にリチウム析出が生じやすく耐久性が悪くなるとともに、リチウム消費による容量低下がはやくなり、特性が悪化する。a/bは、0.36≦a/b≦0.93であるのが好ましく、特に、0.45≦a/b≦0.7を満たすことが好ましい。
【0025】
また、本発明の蓄電デバイスにおける負極は、負極を0Vにて12時間にわたって定電流−定電圧(CCCV)充電したときの容量を総負極充電容量c(mAh)としたとき、0.55≦b/c≦1.00を満たし、また、0.35≦a/c≦0.55を満たすことが必要である。
総負極充電容量cに対する完全負極容量bの割合b/cが上記の範囲にあることにより、蓄電デバイスに高い容量維持率が得られて高い耐久性が得られる。一方、b/cが0.55未満の場合、リチウムが不足しサイクル耐久性が悪化する。また、1.00を超える場合は、リチウムが析出しやすくサイクル特性が悪化する。0.55≦b/c≦1.00が好ましく、特に、0.70≦b/c≦0.90を満たすことが好ましい。
【0026】
また、総負極充電容量cに対するセル容量aの割合a/cが0.35未満の場合、エネルギー密度が低下する。一方、a/cが0.55より大きい場合、サイクル試験時の容量低下が大きくなり耐久性が悪くなる。0.36≦a/c≦0.54が好ましく、特に、0.4≦a/c≦0.5を満たすことが好ましい。
【0027】
総負極充電容量cは、負極に含有させる負極活物質の種類および質量を調整することによって制御することができる。具体的には、例えば,負極活物質層中の負極活物質の質量比率を大きくするほど、総負極充電容量cを大きくすることができる。例えば、負極活物質として黒鉛、黒鉛系複合粒子とポリアセン系有機半導体(PAS)とを同じ重量で比較すると、PASを用いた場合の方が総負極充電容量cは大きくなる。
【0028】
〔総負極充電容量cの測定方法〕
蓄電デバイスの総負極充電容量cは、当該蓄電デバイスを構成する各負極に係る下記測定によって得られる各負極容量の合計である。
総負極充電容量cは、具体的には、まず、完全負極容量bを測定するための負極容量測定用の3極セルを、電流値βの定電流にて負極電位が0Vになるまで充電して、0Vの定電圧を印加する定電流−定電圧充電(CCCV充電)を12時間行い、このときの負極容量を測定することにより、総負極充電容量cが得られる。
蓄電デバイスに複数の負極が含有されており、かつ、各負極が同一の構成を有する場合は、総負極充電容量cは、負極容量測定用の3極セルにおいて測定された負極容量に、蓄電デバイスに含有される負極数を掛けることにより求められる。
【0029】
次に、本発明の蓄電デバイスを構成する、各構成要素について説明する。
〔集電体〕
正極および負極には、それぞれ電気を受配電する正極集電体および負極集電体が備えられている。このような正極集電体および負極集電体としては、貫通孔が形成された集電体を用いることが好ましい。正極集電体および負極集電体における貫通孔の形態、数等は特に限定されず、正極および負極の少なくとも一方に対向して配置されたリチウム極から電気化学的に供給されるリチウムイオンおよび電解液中のリチウムイオンが各電極集電体に遮断されることなく、電極の表裏間を移動できるように設定することができる。
【0030】
〔正極集電体〕
正極集電体としては、貫通孔を有する多孔質集電体を用いることができる。
貫通孔を有する正極集電体としては、例えば機械的な打ち込みによって裏表面を貫通する貫通孔が形成されたエキスパンドメタルやパンチングメタルや、CO
2 レーザー、YAGレーザー、UVレーザーなどによるレーザー加工によって裏表面を貫通する貫通孔が形成された集電体や、エッチング、電解エッチングによって表裏面に貫通孔が形成された集電体を用いることができる。
【0031】
正極集電体の材質としては、アルミニウム、ステンレス鋼等を用いることができ、特にアルミニウムが好ましい。また、正極集電体の厚みは特に限定されないが、通常、1μm〜50μmであればよく、5μm〜40μmが好ましく、10μm〜40μmが特に好ましい。
【0032】
正極集電体の貫通孔の気孔率(%)は、20%〜50%が好ましく、20%〜40%がより好ましい。ここで、正極集電体の気孔率(%)は下記式(1)により求めることができる。
気孔率(%)=〔1−(正極集電体の質量/正極集電体の真比重)/(正極集電体の見かけ体積)〕×100 (1)
【0033】
〔正極活物質〕
正極活物質としては、リチウムイオンおよびテトラフルオロボレート等の少なくとも1種のアニオンを可逆的にドープ・脱ドープ可能な物質が用いられ、例えば活性炭粉末が挙げられる。活性炭の比表面積は、1900m
2 /g〜3000m
2 /gであることが好ましく、さらに、1950m
2 /g〜2800m
2 /gであることが好ましい。また、活性炭の50%体積累積径(D50)は、活性炭の充填密度の観点から、2μm〜8μmが好ましく、特に2μm〜5μmが好ましい。活性炭の比表面積および50%体積累積径(D50)が前記範囲にあると、蓄電デバイスのエネルギー密度をさらに向上させることができる。ここで、50%体積累積径(D50)の値は、例えば、マイクロトラック法により求められる。
【0034】
〔正極活物質層〕
正極活物質層は、正極集電体に、正極活物質を塗布、印刷、射出、噴霧、蒸着または圧着等により付着させることによって形成される。この正極活物質層の厚みは、片面の厚みが55μm〜95μmが好ましく、60μm〜90μmがより好ましく、65〜80μmが特に好ましい。正極活物質層の層厚を上記範囲にすることにより、正極活物質層内を移動するイオンの拡散抵抗を小さくするとこができ、これにより、内部抵抗を下げることができる。そして、正極容量を大きくすることができることから、セル容量を大きくすることができ、その結果、蓄電デバイスの高容量化を図ることができる。
【0035】
〔正極活物質層:電極密度〕
正極活物質層の電極密度は、0.54g/cm
3〜0.7g/cm
3である。正極活物質層の電極密度が0.54g/cm
3未満の場合、エネルギー密度が低下する。一方、正極活物質層の電極密度が0.7g/cm
3より大きい場合、プレドープ性が悪くなり、サイクル特性が悪化する。正極活物質層の電極密度は、0.54g/cm
3〜0.68g/cm
3であるのが好ましく、0.6g/cm
3〜0.68g/cm
3であるのが更に好ましい。
正極活物質層の電極密度は、通常、蓄電デバイスを解体することによって得られた正極をジエチルカーボネートで洗浄処理して100℃で真空乾燥した後、正極活物質層の質量および正極活物質の外形体積(見掛けの体積)を測定し、正極活物質層の質量を当該正極活物質層の外形体積によって除することによって求められる。ここで、「正極活物質層の外形体積」とは、正極活物質層の縦寸法、横寸法および厚み寸法を測定し、その測定値に基づいて算出される体積である。
なお、電極密度を上記範囲に設定する方法としては、ロールプレス等によって形成する方法が挙げられる。
【0036】
〔正極活物質層:目付量〕
正極活物質層の電極目付量は、70g/m
2〜110g/m
2である。
正極活物質層の目付量は、正極活物質層の電極目付量が70g/cm
2未満の場合、エネルギー密度が低下する。一方、正極活物質層の電極目付量が110g/cm
2より大きい場合、抵抗が上昇するため、サイクル特性が悪化する。正極活物質層の電極目付量は、75g/m
2〜110g/m
2であるのが好ましい。
正極活物質層の目付量は、蓄電デバイスを解体することによって得られた正極をジエチルカーボネートで洗浄処理して100℃で乾燥した後、活物質層部分を所定の面積に打ち抜いて質量測定後、活物質層を剥離して集電体の質量を測定し、活物質層の質量を面積で除することによって算出される。
【0037】
〔負極集電体〕
負極集電体としては、ステンレス鋼、銅、ニッケル等を用いることができる。
負極集電体の厚みは特に限定されないが、通常1μm〜50μmであり、5μm〜40μmが好ましく、10μm〜30μmが特に好ましい。
【0038】
負極集電体には表裏面を貫通する孔を有していることが好ましく、その貫通孔の孔径は、例えば、0.5μm〜400μmであり、0.5μm〜350μmであることが好ましく、1μm〜330μmであることが特に好ましい。
また、負極集電体の貫通孔の気孔率(%)は、20%〜70%が好ましく、20%〜60%がより好ましい。ここで、負極集電体の気孔率(%)は下記式(2)により求めることができる。
気孔率(%)=〔1−(負極集電体の質量/負極集電体の真比重)/(負極集電体の見かけ体積)〕×100 (2)
貫通孔を有する負極集電体としては、例えば、機械的な打ち込みによって裏表面を貫通する貫通孔が形成されたエキスパンドメタルやパンチングメタルや、CO
2 レーザー、YAGレーザー、UVレーザーなどによるレーザー加工によって裏表面を貫通する貫通孔が形成された集電体や、エッチングによって表裏面に貫通孔が形成された集電体を用いることができる。
【0039】
〔負極活物質〕
負極活物質としては、リチウムイオンを可逆的にドープ・脱ドープ可能である物質のうち、黒鉛系粒子を用いることが好ましい。具体的には、黒鉛、難黒鉛化炭素、天然黒鉛よりなる芯粒子の表面がタールもしくはピッチ由来の黒鉛化物質によって被覆されている黒鉛系複合粒子、および、芳香族系縮合ポリマーの熱処理物であって水素原子および炭素原子の原子数比(水素原子/炭素原子)が0.50〜0.05であるポリアセン系骨格構造を有するポリアセン系有機半導体(PAS)からなる群から選ばれる少なくとも一つを用いることが好ましい。PASの場合、水素原子と炭素原子との原子数比が0.50を超える場合は、電子伝導性が低くなるため、セルの内部抵抗が低くなるおそれがある。一方、該原子数比が0.05を下回る場合は、単位重量当たりの容量が低下するため、セルのエネルギー密度が低下するおそれがある。
上記芳香族系縮合ポリマーとは、芳香族炭化水素化合物とアルデヒド類との縮合物をいう。芳香族炭化水素化合物としては、例えばフェノール、クレゾール、キシレノール等が挙げられ、また、アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラール等が挙げられる。
【0040】
負極活物質としては、その粒度は、出力向上の点から50%体積累積径(D50)が1.0μm〜10μmの範囲にある黒鉛系粒子が好ましく、2μm〜5μmの範囲にある黒鉛系粒子がより好ましい。50%体積累積径(D50)が1.0μm未満の黒鉛系粒子は、その製造が困難であり、また充電時にガスが発生するなどして耐久性が低下するおそれがある。一方、50%体積累積径(D50)が10μmを超える黒鉛系粒子では、内部抵抗が充分に小さい蓄電デバイスを得ることが困難となる。
また、負極活物質は、比表面積が0.1m
2 /g〜200m
2 /gであることが好ましく、より好ましくは0.5m
2 /g〜50m
2 /gである。負極活物質の比表面積が0.1m
2 /g未満である場合には、得られる蓄電デバイスの抵抗が高くなり、一方、負極活物質の比表面積が200m
2 /gを超える場合には、得られる蓄電デバイスの充電時の不可逆容量が高くなり、充電時にガスが発生するなどして耐久性が低下するおそれがある。
黒鉛系粒子の50%体積累積径(D50)は、例えば、マイクロトラック法により求められる値である。
【0041】
〔負極活物質層〕
負極活物質層は、負極集電体に、負極活物質を塗布、印刷、射出、噴霧、蒸着または圧着等により付着させることによって形成される。この負極活物質層の厚みは、正極活物質層の質量とのバランスによって好ましい範囲は変わるが、片面の厚みが10μm〜80μmであればよく、10μm〜65μmが好ましく、10μm〜50μmがより好ましい。負極活物質層の層厚を上記範囲にすることにより、必要な負極容量を確保することができ、かつ、負極活物質層内を移動するイオンの拡散抵抗を小さくすることができ、これにより、内部抵抗を下げることができる。
【0042】
〔バインダ〕
上記のような正極活物質層を有する正極および負極活物質層を有する負極の作製は、通常用いられる既知の方法によって行うことができる。
例えば、各電極(正極または負極)は、各活物質粉末(正極活物質または負極活物質)と、バインダと、必要に応じて、導電材、カルボキシメチルセルロース(CMC)等の増粘剤とを、水または有機溶媒に加えて混合し、得られるスラリーを集電体に塗布する方法、あるいは当該スラリーをシート状に成形して集電体に貼付することにより、作製することができる。
【0043】
上記の各電極の作製において、バインダとしては、例えば、SBR等のゴム系バインダ、ポリ四フッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデン等をアクリル系樹脂でシード重合させた含フッ素系樹脂、またはアクリル系樹脂等を用いることができる。
また、導電材としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、グラファイト、金属粉末等が挙げられる。
バインダおよび導電材の各々の添加量は、用いる活物質の電気伝導度、作製される電極形状等によっても異なるが、いずれも、通常、活物質に対して2質量%〜20質量%が好ましく、特に2質量%〜10質量%がより好ましい。
【0044】
〔セパレータ〕
本発明の蓄電デバイスにおけるセパレータとしては、JISP8117に準拠した方法により測定された透気度が1sec〜200secの範囲内にある材料を用いることができる。具体的には、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、セルロース、ポリオレフィン、セルロース/レーヨンなどから構成される不織布や微多孔質膜等の中から適宜選択して用いることができ、特にポリエチレン、ポリプロピレンまたはセルロース/レーヨン製の不織布を用いることが好ましい。
セパレータの厚みは、例えば、5μm〜20μmであり、5μm〜15μmであることが好ましい。セパレータの厚みが、5μm未満の場合、短絡が生じやすくなる。一方、20μmより大きい場合、抵抗が高くなる。
【0045】
〔電解液〕
本発明の蓄電デバイスにおいては、電解液として、リチウム塩の非プロトン性有機溶媒電解質溶液が用いられる。
【0046】
〔電解液の非プロトン性有機溶媒〕
電解液を構成する非プロトン性有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(以下、「EC」ともいう。)、プロピレンカーボネート(以下、「PC」ともいう。)、ブチレンカーボネート等の環状カーボネート、ジメチルカーボネート(以下、「DMC」ともいう。)、エチルメチルカーボネート(以下、「EMC」ともいう。)、ジエチルカーボネート(以下、「DEC」ともいう。)、メチルプロピルカーボネート等の鎖状カーボネートが挙げられる。これらのうちの2種以上を混合した混合溶媒を用いてもよい。
本発明において電解液を構成する非プロトン性有機溶媒は、環状カーボネートおよび鎖状カーボネート以外の有機溶媒、例えば、γ−ブチロラクトン等の環状エステル、スルホラン等の環状スルホン、ジオキソラン等の環状エーテル、プロピオン酸エチル等の鎖状カルボン酸エステル、ジメトキシエタン等の鎖状エーテル等を含有していてもよい。
【0047】
〔電解質〕
電解液における電解質のリチウム塩としては、例えば、LiClO
4 、LiAsF
6 、LiBF
4 、LiPF
6 、LiN(C
2 F
5 SO
2 )
2 、LiN(CF
3 SO
2 )
2 等が挙げられ、特に、イオン伝導性が高く、低抵抗であることから、LiPF
6 が好適に用いられる。電解液におけるリチウム塩の濃度は、低い内部抵抗が得られることから、0.1mol/L以上であることが好ましく、0.5〜1.5mol/Lであることがより好ましい。
【0048】
本発明の蓄電デバイスは、3.8V〜2.2Vの電圧範囲で、時間率10Cの定電流充放電を10000サイクル行った後の容量維持率が95%以上となる。更に、本発明の蓄電デバイスは、3.8V〜2.2Vの電圧範囲で、時間率10Cの定電流充放電を10000サイクル行った後の内部抵抗上昇率が3%以下となる。これは、本発明の蓄電デバイスが、0.35≦a/b≦0.95、0.55≦b/c≦1.00、0.35≦a/c≦0.55を満たし、前記正極活物質層の電極密度が0.54g/cm
3〜0.7g/cm
3で、且つ前記正極活物質層の電極目付量が70g/m
2〜110g/m
2を満たすことにより、より高い容量維持率を維持でき、内部抵抗の上昇を抑制できることを示すものである。本発明の蓄電デバイスの構成にすることで、高出力化と高エネルギー密度化のトレードオフの関係を良好なバランスを保つことが可能となる。
【0049】
〔蓄電デバイスの構造〕
本発明の蓄電デバイスの構造としては、特に、帯状の正極と負極とをセパレータを介して捲回させる捲回型、板状またはシート状の正極と負極とをセパレータを介して各3層以上積層された積層型、このように積層された構成のユニットを外装フィルム内または角型外装缶内に封入された積層型等が挙げられる。
これらの蓄電デバイスの構造は、例えば、特開2004−266091号公報等により既知であり、それらの蓄電デバイスと同様の構成とすることができる。
【0050】
以上、本発明の実施の形態について具体的に説明したが、本発明は上記の例に限定されず、種々の変更を加えることができる。
例えば、本発明の蓄電デバイスは、捲回型または積層型のリチウムイオンキャパシタに限定されず、リチウムイオン二次電池、他の蓄電デバイスにも好適に適用することができる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定して解釈されない。
【0052】
〔実施例1(S1):セルの作製例1〕
(1)正極の作製
孔径が1μm、厚さが30μmのアルミニウム電解エッチング箔よりなる集電体材料の両面に、導電性塗料(日本黒鉛製バニーハイトT−602DEFK)を、縦型ダイ方式の両面塗工機を用い、塗工幅が100mm、両面合わせた塗布厚みを125μmに設定して両面塗工した後、減圧乾燥させることにより、正極集電体の表裏面に導電層を形成した。
次いで、正極集電体の表裏面に形成された導電層上に、50%体積累積径(D50)の値が3μmで、比表面積が2000m
2 /gの活性炭粒子(キャタラー社製:―CEP21K)(正極活物質)43wt%と、スラリー全体に対してバインダ1.5wt%(JSR社製:TRD201B)とカルボキシルメチルセルロースナトリウム塩(ダイセル社製:1120)2wt%、アセチレンブラック(電気化学工業社製:HS100)2.5wt%、水51wt%とを含有するスラリーを、縦型ダイ方式の両面塗工機を用いて両面塗工した後、減圧乾燥させてロールプレスすることにより、導電層上に電極層である正極活物質層を形成した。
このようにして得られた、正極集電体の導電層および電極層が積層された部分(以下、正極について「塗工部」ともいう。)が60mm×80mm、いずれの層も形成されてない部分(以下、正極について「未塗工部」ともいう。)が60mm×15mmとなるように、60mm×95mmの大きさに切断することにより、正極集電体の両面に電極層が形成されてなる正極を作製した。
【0053】
(2)負極の作製
貫通孔径300μm、気孔率55%、厚さが25μmの銅製ケミカルエッチング箔からなる負極集電体の両面に、50%体積累積径(D50)の値が6μmの黒鉛粒子の表面をピッチコートした黒鉛系複合粒子(1)(日本カーボン社製:AGP30)(負極活物質)40wt%と、SBRバインダ(JSR社製:TRD2001)1wt%とカルボキシルメチルセルロースナトリウム塩(ダイセル社製:1120)1.5wt%、アセチレンブラック(電気化学工業社製:HS100)2wt%、と水55.5wt%とを含有するスラリーを、縦型ダイ方式の両面塗工機を用いて両面塗工した後、乾燥させてロールプレスすることにより、負極集電体の表裏面に電極層である負極活物質層を形成した。
このようにして得られた、負極集電体の電極層が形成された部分(以下、負極について「塗工部」ともいう。)が65mm×85mm、電極層が形成されてない部分(以下、負極について「未塗工部」ともいう。)が65mm×15mmになるように、65mm×100mmの大きさに切断することにより、負極集電体の両面に電極層が形成された負極を作製した。
【0054】
(3)セパレータの作製
厚み15μm、透気度100secのセルロース/レーヨン複合材料からなるフィルムを70mm×91mmに切断してセパレータを作製した。
【0055】
(4)リチウムイオンキャパシタ要素の作製
先ず、正極10枚、負極11枚、セパレータ22枚を用意し、正極と負極とを、それぞれの塗工部は重なるが、それぞれの未塗工部は反対側になり重ならないよう、セパレータ、負極、セパレータ、正極の順で積重し、積層体の4辺をテープにより固定することにより、電極積層ユニットを作製した。
次いで、厚みが46μmの箔状のリチウム金属の大きさが65mm×85mmになるように切断し、厚さ25μmの銅箔(日本製箔社製)に圧着することにより、リチウムイオン供給部材を作製し、このリチウムイオン供給部材を電極積層ユニットのセパレータを介して負極と対向するよう配置した。
そして、作製した電極積層ユニットの10枚の正極の各々の未塗工部に、予めシール部分にシーラントフィルムを熱融着した幅50mm、長さ50mm、厚さ0.15mmのアルミニウム製の正極用電源タブを重ねて溶接した。一方、電極積層ユニットの11枚の負極の各々の未塗工部およびリチウムイオン供給部材の各々に、予めシール部分にシーラントフィルムを熱融着した幅50mm、長さ50mm、厚さ0.2mmの銅製の負極用電源タブを重ねて溶接した。これにより、リチウムイオンキャパシタ要素を得た。
【0056】
(5)リチウムイオンキャパシタの作製
ポリプロピレン層、アルミニウム層およびナイロン層が積層され、寸法が90mm(縦幅)×127mm(横幅)×0.15mm(厚み)で、中央部分に72mm(縦幅)×105mm(横幅)の絞り加工が施された一方の外装フィルム、並びにポリプロピレン層、アルミニウム層およびナイロン層が積層され、寸法が90mm(縦幅)×127mm(横幅)×0.15mm(厚み)の他方の外装フィルムを作製した。
【0057】
次いで、他方の外装フィルム上における収容部となる位置に、上記のリチウムイオンキャパシタ要素を、その電極積層ユニットの正極端子および負極端子の各々が、他方の外装フィルムの端部から外方に突出するよう配置した。この電極積層ユニットに一方の外装フィルムを重ね合わせ、一方の外装フィルムおよび他方の外装フィルムの外周縁部における3辺(正極端子および負極端子が突出する2辺を含む)を熱融着した。
一方、非プロトン性有機溶媒として、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートおよびジエチルカーボネート(体積比で、それぞれ、3:1:4)の混合溶媒を用い、濃度1.2mol/LのLiPF
6 を含む電解液を調製した。
次いで、一方の外装フィルムおよび他方の外装フィルムの間に、上記電解液を注入した後、一方の外装フィルムおよび他方の外装フィルムの外周縁部における残りの一辺を熱融着した。そして、この状態で、10日間放置することにより、リチウム箔(リチウムイオン供給部材)からリチウムイオンを負極にドープした。
上記のようにして、試験用ラミネート外装リチウムイオンキャパシタ(以下、セル1という。)を作製した。なお、同様のセル1を合計で4個作製した。
得られたセル1のセル容量の平均値は190mAhだった。
【0058】
〔正極活物質層:密度〕
1つのセル1を解体することによって得られた正極を、ジエチルカーボネートの入った容器に30分間浸漬して洗浄処理し、100℃で真空乾燥した後、活物質層の存在する任意の場所を2×2cm
2のサイズに2つ切り出し、切り出した1つの正極の重さを電子天秤で測定し、厚みをマイクロメーターで測定した。次いで、活物質層の存在していない未塗工領域の集電体のみを同じにサイズに切り出して電子天秤にて重さを測定し、厚みをマイクロメーターで測定した。得られた集電体のみの重さを正極の重さから差し引いて、正極活物質層の重さを算出した。次いで、得られた集電体のみの厚みを正極の厚みから差し引いて、正極活物質層の厚みを算出し、正極活物質の外形体積(見掛けの体積)を算出した。次いで、正極活物質層の質量を当該正極活物質層の外形体積によって除することによって正極活物質層密度を求めた。
【0059】
〔正極活物質層:目付量〕
正極活物質層の密度を測定する際に作った2cm×2cmの残りの1つの正極の重さを電子天秤で測定し、活物質層を剥離し集電体の質量を測定し、活物質層の質量を面積で除することによって、正極活物質層目付量を算出した。
【0060】
〔セルの性能の評価〕
残りの得られた3つのセル1について、以下のようにして、セル容量a、完全負極容量b、総負極充電容量c、エネルギー密度およびDC−IRを測定すると共に、耐久性試験を行い、特性の評価を行った。
【0061】
(i)セル容量aの測定およびエネルギー密度の計算
セル1の1個に対し、0.19A(電流値α)の定電流にてセル電圧が3.8Vになるまで充電した後、3.8Vの定電圧充電を30分間行った後、0.19Aの定電流にてセル電圧が1.9Vになるまで放電する充放電操作を5回繰り返し行った。5回目の充放電操作における放電の際の容量をセル容量aとした。セル容量aに基づく結果を表1に示す。なお、5回目の充放電操作における放電に要した時間は1.04時間であった。
また、得られたセル容量aと平均セル電圧との積を、セル1の体積で除した値をエネルギー密度(Wh/L)として表1に示す。
【0062】
(ii)完全負極容量bの測定
上記のセル容量aの測定後、セル1を0.19Aの定電流にてセル電圧が3.8Vになるまで充電した後、3.8Vの定電圧充電を30分間行って満充電させた。この満充電させたセル1を分解して負極を取り出し、対極としてリチウム金属板を使用した負極容量測定用セルを組み立て、これを0.0173Aの定電流にて負極電位が1.5V(Li/Li
+ )になるまで放電させたときの負極容量に11(負極枚数)を掛けた値を完全負極容量bとし、完全負極容量bに基づく結果を表1に示す。
【0063】
(iii)総負極充電容量cの測定
負極容量測定用セルについて、上記の完全負極容量bの測定後、上記のセル容量aの測定と同様にして、0.0173Aの定電流にてセルの電圧が0Vになるまで充電した後、0Vの定電圧充電を12時間行った。このときの負極容量に11(負極枚数)を掛けた値を総負極充電容量cとし、総負極充電容量cに基づく結果を表1に示す。
【0064】
(iv)DC−IRの測定
容量維持率測定前のセルに対し、サイクル試験開始前で1.9A(時間率10C)の定電流でセル電圧が3.8Vになるまで充電し、その後3.8Vの定電圧を印加する定電流−定電圧充電を0.5時間行い、次いで19A(時間率100C)の定電流でセル電圧が2.2Vになるまで放電した。その際の1秒後と3秒後の電圧の近似直線を取って0秒まで外挿し、外挿した電圧と3.8Vとの差(ΔV)を電流値19Aで割った際の値を直流内部抵抗(DC−IR)とする。
【0065】
(v)サイクル特性試験:
〔容量維持率〕
上記のセル1に対して、1.9A(時間率10C)の定電流にてセル電圧が3.8Vとなるまで充電した後、1.9Aの定電流にてセル電圧が2.2Vとなるまで放電する充放電サイクルを10,000回繰り返すサイクル試験を実施した。このサイクル試験における1サイクル目の容量に対する10,000サイクル目の容量の比率を容量維持率として表1に示す。また、容量維持率が95%以上である場合を「○」、90%以上95%未満である場合を「△」、90%未満である場合を「×」として表1に示す。
〔抵抗上昇率〕
容量維持率測定用のセルに対し、サイクル試験開始前後で1.9A(時間率10C)の定電流でセル電圧が3.8Vになるまで充電し、その後3.8Vの定電圧を印加する定電流−定電圧充電を0.5時間行い、次いで19A(時間率100C)の定電流でセル電圧が2.2Vになるまで放電した。この3.8V−2.2Vのサイクルを繰り返し、10回目の直流内部抵抗を測定した。サイクル試験前後での抵抗上昇率が3%以下である場合を「○」、3%より大きく5%以下の場合を「△」、5%より大きい場合を「×」として表1に示す。
【0066】
〔総合判定〕
作製したセルがショートするなどの不具合なく作動し、初期のDC−IRが10.35mΩ以下、エネルギー密度が31.5Wh/Lより大きい場合は、○とする。さらに、容量維持率が95%以上であり、抵抗上昇率が3%以下である場合は、〇とする。前記範囲を外れる場合は×とする。
【0067】
〔実施例2(S2)〜実施例13(S13)および比較例1(C1)〜10(S10)のセルの作製例〕
実施例1のセルの作製例1において、正極活物質層の電極密度と目付量と、a/b、b/c、a/cを表1の通りにすると共に、セパレータ厚みを表1に従って変更したことの他は同様にして、S2〜S13および、C1〜C10を各々4個ずつ作製した。
これらのS2〜S13について、実施例1と同様にして、セル容量a、完全負極容量b、総負極充電容量c、エネルギー密度およびDC-IRを測定すると共に、サイクル特性試験を行い、特性の評価を行った。なお、DC−IR測定とサイクル特性試験では、時間率が実施例1の場合と一致するように、各セルの容量にあわせて電流値を変化させた。
これらの結果に基づく結果を表1に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
表1に示されるように、0.35≦a/b≦0.95、0.55≦b/c≦1.00、0.35≦a/c≦0.55を満たし、前記正極活物質層の電極密度が0.54g/cm
3〜0.7g/cm
3で、且つ前記正極活物質層の電極目付量が70g/m
2〜110g/m
2を満たすセルにすれば、DC-IRが低い、すなわち出力が大きく、エネルギー密度が高く、サイクル試験後の容量低下、抵抗増加を抑制できる性能のバランスが良い蓄電デバイスを得ることができた。
【0070】
C1のセルはa/cが0.54より大きいため、サイクル試験時の容量低下が大きくなり特性が悪化した。
C2のセルはa/cが0.35未満のため、エネルギー密度が低下した。
C3のセルはb/cが1.00を超えるため、サイクル試験時の容量低下が大きくなりセルの特性が悪化した。
C4のセルはb/cが0.55未満のため、サイクル試験時に、容量低下および抵抗増加が生じ特性が悪化した。
C5のセルは正極活物質層の電極目付量が110g/cm
2より大きいため、初期のDC−IRが高く、サイクル試験時に抵抗上昇、容量低下が生じセル特性が悪化した。
C6のセルは正極活物質層の電極目付量が70g/cm
2未満のため、エネルギー密度が低下した。
C7のセルは正極活物質層の電極密度が0.7g/cm
3より大きいため、初期のDC−IRが高く、サイクル試験時に容量低下および抵抗増加が生じ、セルの特性が悪化した。
C8のセルは一方、正極活物質層の電極密度が0.54g/cm
3未満のため、エネルギー密度が低下した。
C9のセルはa/bが0.95より大きいため、サイクル試験時に容量低下および抵抗増加が生じ、セルの特性が悪化した。
C10のセルはa/bが0.35未満のため、サイクル試験時に容量低下および抵抗増加が生じ、セルの特性が悪化した。
上記の結果から、各比較例C1〜C10は、本願発明の構成の何れかを満たさない蓄電デバイスであったため、本願の目的とする出力が大きく、エネルギー密度が高く、サイクル試験後の容量低下、抵抗増加を抑制できる性能のバランスが良い蓄電デバイスを得ることができなかった。