特許第6487844号(P6487844)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6487844セラミック相を有する積層ガラス物品およびその物品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6487844
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】セラミック相を有する積層ガラス物品およびその物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 27/012 20060101AFI20190311BHJP
   B32B 18/00 20060101ALI20190311BHJP
   C03B 23/203 20060101ALI20190311BHJP
   C03B 32/02 20060101ALI20190311BHJP
   C03B 17/06 20060101ALI20190311BHJP
【FI】
   C03B27/012
   B32B18/00 B
   C03B23/203
   C03B32/02
   C03B17/06
【請求項の数】9
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-535814(P2015-535814)
(86)(22)【出願日】2013年10月4日
(65)【公表番号】特表2015-532257(P2015-532257A)
(43)【公表日】2015年11月9日
(86)【国際出願番号】US2013063403
(87)【国際公開番号】WO2014055837
(87)【国際公開日】20140410
【審査請求日】2016年10月4日
(31)【優先権主張番号】61/744,850
(32)【優先日】2012年10月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】ビール,ジョージ ハルシー
(72)【発明者】
【氏名】ボーク,ヘザー デブラ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンカタラマン,ナテサン
【審査官】 和瀬田 芳正
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第03673049(US,A)
【文献】 特開昭48−055211(JP,A)
【文献】 特表2006−525150(JP,A)
【文献】 特開2011−136902(JP,A)
【文献】 特開昭63−151647(JP,A)
【文献】 特表2014−521582(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 17/00−17/06
C03B 23/00−35/26
C03B 40/00−40/04
C03C 1/00−14/00
C03C 21/00
B32B 18/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フュージョンドロー法により、リチウムが豊富なガラス組成物から構成された第1と第2のクラッド層の間に挟まれた、ナトリウムが豊富な(リチウム欠損)ガラス組成物から構成されたコア層を備えた積層構造を形成する工程、および
前記積層構造を熱処理して、前記第1と第2のクラッド層の少なくとも一方から前記コア層にリチウムイオンを拡散させ、該コア層から該第1と第2のクラッド層の少なくとも一方にナトリウムイオンを拡散させ、セラミック相が形成されるようにする工程、
を有してなる方法であって、
前記第1及び第2のクラッド層の少なくとも一つが、圧縮応力を有する、
方法。
【請求項2】
前記積層構造に核生成させ、セラミック相を成長させるのに十分に該積層構造が加熱される、2回目の熱処理工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記積層構造が、前記第1と第2のクラッド層の少なくとも一方に圧縮応力を加えるのに十分に加熱される、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記セラミック相がベータスポジュメン相である、請求項1から3いずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記積層構造を形成する工程の後であって、前記熱処理の前に、前記積層構造を切断する工程をさらに含む、請求項1から4いずれか1項記載の方法。
【請求項6】
第1のガラスクラッド層と第2のガラスクラッド層との間に配置されたガラスコア層を備えた積層ガラスシートであって、前記ガラスコア層と前記ガラスクラッド層との間の接合部の1つに配置されたセラミック相をさらに備え、
前記第1のガラスクラッド層及び前記第2のガラスクラッド層は、20℃から300℃の温度範囲で、前記ガラスコア層のCTEと等しいか、或いはより小さなCTEを有し、前記ガラスコアのCTEと前記第1及び第2のガラスクラッド層のCTEとの差が、5×10−7/℃以内であり、
前記ガラスコア層が、ナトリウムが豊富な(リチウム欠損)ガラス組成物から構成され、前記第1及び第2のガラスクラッド層が、リチウムが豊富なガラス組成物から構成される、
積層ガラスシート。
【請求項7】
前記第1のガラスクラッド層および前記第2のガラスクラッド層に圧縮応力が加えられている、請求項6記載の積層ガラスシート。
【請求項8】
前記ガラスコア層の第1の表面が前記第1のガラスクラッド層に直接隣接しており、該ガラスコア層の第2の表面が前記第2のガラスクラッド層と直接隣接している、請求項6または7記載の積層ガラスシート。
【請求項9】
LCDディスプレイとLEDディスプレイ、コンピュータモニタ、現金自動預入支払機(ATM)を含む家庭用または商業用の電子機器におけるカバーガラスまたはガラスバックプレーン用途、携帯電話、パーソナル・メディア・プレーヤー、およびタブレット型コンピュータを含む携帯用電子機器のタッチスクリーンまたはタッチセンサ用途、太陽光発電用途、建築用ガラス用途、自動車または車両用ガラス用途、もしくは商業用または家庭電化製品用途への請求項6から8いずれか1項記載の積層ガラスシートの使用。
【発明の詳細な説明】
【優先権】
【0001】
本出願は、その内容が依拠され、ここに全てが引用される、2012年10月4日に出願された米国仮特許出願第61/744850号の米国法典第35編第119条の下での優先権の恩恵を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本明細書は、広く、ガラス層とセラミック相から構成された物品に関し、より詳しくは、第1と第2のガラスクラッド層の間に挟まれたガラスコア層を備え、少なくともコア層とクラッド層との間の接合部に、ベータスポジュメン相などのセラミック相を有する、積層物品に関する。
【背景技術】
【0003】
カバーガラス、ガラスバックプレーンなどのガラス物品が、LCDディスプレイとLEDディスプレイ、コンピュータモニタ、現金自動預入支払機(ATM)などの家庭用と商業用の電子機器の両方に採用されている。これらのガラス物品のあるものは、ガラス物品に、利用者の指および/またはスタイラス器具を含む様々な物体が接触することを必然的に伴う「タッチ」機能を備えることがあり、それゆえ、ガラスは、損傷を受けずに定期的な接触に耐えるほど十分に頑丈でなければならない。さらに、そのようなガラス物品は、携帯電話、パーソナル・メディア・プレーヤー、およびタブレット型コンピュータなどの携帯用電子機器に組み込まれることもある。これらの機器に組み込まれるガラス物品は、関連機器の輸送中および/または使用中に損傷を受けやすいであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、電子機器に使用されるガラス物品は、実際の使用からの日常的な「タッチ」の接触だけでなく、機器が輸送されているときに生じることのある偶発的な接触と衝撃にも耐えることのできる向上した強度を必要とするであろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示によれば、少なくとも、ガラスコア層と直接隣接したガラスクラッド層との間の接合部に位置する、いくつかの実施の形態において、積層ガラス物品に亘り位置する、ベータスポジュメン相などのセラミック相を有する積層ガラス物品を形成する方法が開示されている。いくつかの実施の形態において、ベータスポジュメンガラスセラミックシート、またはベータスポジュメンガラスセラミックを有する積層ガラス物品を形成する方法がここに開示されている。
【0006】
いくつかの実施の形態において、フュージョン積層法により、リチウムが豊富なガラス組成物から形成されたクラッド層およびナトリウムが豊富な(リチウム欠損)ガラス組成物から形成されたコア層を有する積層ガラスシートを形成し;その積層ガラスシートを熱処理して、コア層とクラッド層との間でアルカリイオンを交換し;2回目に積層ガラスシートを熱処理して、積層ガラスシート内で核生成しセラミック相を成長させることによって、ベータスポジュメンガラスセラミックシートを形成する方法が開示されている。
【0007】
いくつかの実施の形態において、低い液相線粘度を有し、そけゆえ、自然にフュージョン成形可能ではないであろうリチウムの豊富なガラス組成物を調製する工程を含む方法が開示されている。このリチウムの豊富なガラス組成物は、フュージョン積層法においてクラッド層として使用される。液相線粘度がそれより高いナトリウムが豊富な(リチウム欠損)ガラス組成物は、フュージョン積層法により積層体のコアを形成するために使用される。フュージョン積層法による積層構造の形成後、その積層体は熱処理されて、クラッドからのリチウムイオンがコアに拡散し、コアからのナトリウムイオンがクラッドに拡散する。次いで、2回目の熱処理工程を使用して、ガラス積層体に核生成し、ベータスポジュメン相を成長させる。
【0008】
別の組の実施の形態において、第1のガラスクラッド層と第2のガラスクラッド層との間に配置されたガラスコア層を備えたガラス物品であって、ベータスポジュメン相も備えたガラス物品が開示されている。これらの実施の形態のいくつかにおいて、コアガラスは第1の表面およびこの第1の表面と反対の第2の表面を有することがあり、第1のガラスクラッド層はガラスコア層の第1の表面に融合されることがあり、第2のガラスクラッド層はガラスコア層の第2の表面に融合されることがある。他の実施の形態において、第1の拡散ガラス層がガラスコア層と第1のガラスクラッド層との間に配置されることがあり、さらに、第2の拡散ガラス層がガラスコア層と第2のガラスクラッド層との間に配置されることがあり、これらの拡散層は、例えば、フュージョン成形過程中に、または1つ以上のフュージョン板引き後の熱処理工程において形成されるであろう。
【0009】
いくつかの実施の形態において、第1のガラスクラッド層と第2のガラスクラッド層は、1種類以上のリチウム含有ガラス組成物から形成され、いくつかの実施の形態において、第1のガラスクラッド層と第2のガラスクラッド層は、1種類以上のリチウムの豊富なガラス組成物から形成され、いくつかの実施の形態において、第1のガラスクラッド層と第2のガラスクラッド層は、ガラスコア層などに対して、リチウムの豊富な、ナトリウムの欠損したガラス組成物、1種類以上から形成される。
【0010】
いくつかの実施の形態において、ガラスコア層は、ナトリウム含有ガラス組成物から形成され、いくつかの実施の形態において、ガラスコア層は、ナトリウムの豊富なガラス組成物から形成され、いくつかの実施の形態において、ガラスコア層は、ガラスクラッド層などに対して、ナトリウムの豊富な、リチウムの欠損したガラス組成物から形成される。
【0011】
いくつかの実施の形態において、フュージョン積層法による積層構造の形成後、その積層構造は熱処理されて、クラッドからのリチウムイオンをコアに拡散させ、コアからのナトリウムイオンをクラッドに拡散させる。次いで、2回目の熱処理工程を使用して、ガラス積層体に核生成し、ベータスポジュメン相を成長させる。
【0012】
別の態様において、高い透明性と、高い誘電率、並びに高い強度と靭性を併せ持つ、フュージョン成形された強誘電性ガラスセラミック系マルチタッチ式ディスプレイ物品がここに開示されている。いくつかの実施の形態において、そのような物品には、ガラス強化のためのイオン交換過程が必要ない。フュージョン成形されたガラスセラミックは、透明な強誘電性ガラスセラミック基板に基づくマルチタッチの容量式ディスプレイ装置に使用できる。この強誘電性ガラスセラミック基板は、積層フュージョンドロー法でガラスシートを形成した後、アニールサイクルを使用することによって製造できる。この強誘電性ガラスセラミックの透明性は、基板内の微結晶サイズを可視光の波長と比べて大きくするのに十分に長いアニールサイクルを使用することによって達成できる(前方散乱の場合)。さらに小さい微結晶が存在すると、純粋なガラスの誘電率と比べて、誘電率が約10倍増加し得る。
【0013】
前記ガラス組成物およびそのガラス組成物から形成されたガラス物品の追加の特徴および利点は、以下の詳細な説明に述べられており、一部は、その説明から当業者には容易に明白となるか、または以下の詳細な説明、特許請求の範囲、並びに添付図面を含む、ここに記載された実施の形態を実施することによって認識されるであろう。
【0014】
先の一般的な説明と以下の詳細な説明の両方とも、様々な実施の形態を記載しており、請求項に記載された主題の性質および特徴を理解するための概要または骨子を提供することが意図されているのが理解されよう。添付図面は、様々な実施の形態のさらなる理解を与えるために含まれ、本明細書に包含され、その一部を構成する。図面は、ここに記載された様々な実施の形態を図解しており、説明と共に、請求項に記載された主題の原理と作動を説明する働きをする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】ここに図示され記載された1つ以上の実施の形態による積層ガラス物品の断面図
図2図1のガラス物品を製造するためのフュージョンドロー法を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0016】
これから、ここに開示されたガラスセラミック組成物およびそれを組み込んだ物品の実施の形態を詳しく参照する。その実施例が添付図面に図解されている。できるときはいつでも、図面に亘り、同じまたは同様の部品を参照するために、同じ参照番号が使用される。
【0017】
ここに用いた「液相線粘度」という用語は、液相線温度でのガラス組成物の剪断粘度を称する。
【0018】
ここに用いた「液相線温度」という用語は、ガラス組成物に失透が生じる最高温度を称する。
【0019】
ここに用いた「CTE」という用語は、約20℃から約300℃の温度範囲に亘り平均したガラス組成物の熱膨張係数を称する。
【0020】
「実質的に含まない」という用語は、ガラス組成物中の特定の酸化物成分がないことを記載するために使用した場合、その成分が、1モル%未満の微量で汚染物質としてガラス組成物中に存在することを意味する。
【0021】
ここに記載されたガラス組成物の実施の形態において、構成成分(例えば、SiO2、Al23、Na2Oなど)の濃度は、別記しない限り、酸化物基準のモルパーセント(モル%)で与えられる。
【0022】
ここに記載されたガラス組成物は、必要に応じて、1種類以上の清澄剤を含んでよい。その清澄剤は、例えば、SnO2、As23、Sb23およびそれらの組合せを含んでよい。清澄剤は、ガラス組成物中に、約0モル%以上かつ約0.5モル%以下の量で存在してよい。例示の実施の形態において、清澄剤はSnO2である。これらの実施の形態において、SnO2は、約0モル%超かつ約0.2モル%以下、またはさらには約0.15モル%以下の濃度でガラス組成物中に存在してよい。
【0023】
ここに記載されたいくつかの実施の形態において、ガラス組成物は他の酸化物を微量でさらに含んでもよい。
【0024】
ここに記載された実施の形態において、ガラス組成物は、重金属および重金属を含有する化合物を実質的に含まない。重金属および重金属を含有する化合物を実質的に含まないガラス組成物は、「極めて優しい(SuperGreen)」ガラス組成物と称されることもある。ここに用いた「重金属」という用語は、Ba、As、Sb、Cd、およびPbを称する。
【0025】
ここに開示されたガラス組成物は、フュージョンドロー法に使用するのに、特にフュージョン積層法においてガラスクラッド組成物またはガラスコア組成物として使用するのに、その組成物を適したものとする液相線粘度を有する。
【0026】
ここで図1を参照すると、ここに記載されたガラス組成物は、図1に断面で概略示された積層ガラス物品100などの物品を形成するために使用されることがある。積層ガラス物品100は、概して、ガラスコア層102および一対のガラスクラッド層104a,104bを備えている。ここに記載されたガラス組成物は、ここにより詳しく論じられるように、ガラスクラッド層として使用するのに特に適している。
【0027】
図1は、第1の表面103aおよびその第1の表面103aと反対の第2の表面103bを有するガラスコア層102を示している。第1のガラスクラッド層104aは、ガラスコア層102の第1の表面103aに直接融合されており、第2のガラスクラッド層104bは、ガラスコア層102の第2の表面103bに直接融合されている。セラミック化後に、ガラスクラッド層104a,104bは、ガラスコア層102とガラスクラッド層104a,104bとの間に、接着剤、高分子層、コーティング層などのどのような追加の材料もなく、ガラスコア層102に融合されている。このように、ガラスコア層の第1の表面は第1のガラスクラッド層に直接隣接しており、ガラスコア層の第2の表面は第2のガラスクラッド層に直接隣接している。いくつかの実施の形態において、ガラスコア層102およびガラスクラッド層104a,104bは、フュージョン積層法により形成される。拡散層(図示せず)が、ガラスコア層102とガラスクラッド層104aとの間、またはガラスコア層102とガラスクラッド層104bとの間、もしくはその両方に形成されることがある。
【0028】
ここに記載された積層ガラス物品100の少なくともいくつかの実施の形態において、ガラスクラッド層104a,104bは、平均クラッド熱膨張係数CTEクラッドを有する第1のガラスセラミック組成物から形成され、ガラスコア層102は、平均熱膨張係数CTEコアを有する第2の異なるガラス組成物から形成される。
【0029】
具体的に言うと、ここに記載されたガラス物品100は、ここに引用される、米国特許第4214886号明細書に記載されたプロセスなどのフュージョン積層法によって形成してよい。一例として図2を参照すると、積層ガラス物品を形成するための積層フュージョンドロー装置200は、下側アイソパイプ204の上に配置されている上側アイソパイプ202を備えている。上側アイソパイプ202は樋210を備え、その中に、溶融ガラスクラッド組成物206が溶融装置(図示せず)から供給される。同様に、下側アイソパイプ204は樋212を備え、その中に、溶融ガラスコア組成物208が溶融装置(図示せず)から供給される。ここに記載された実施の形態において、溶融ガラスコア組成物208は、下側アイソパイプ204を越えて溢れるのに適切に高い液相線粘度を有している。
【0030】
溶融ガラスコア組成物208が樋212を満たすと、樋212から溢れて、下側アイソパイプ204の外側成形表面216、218上を流れる。下側アイソパイプ204の外側成形表面216,218は基部220で収束する。したがって、外側成形表面216,218上を流れる溶融ガラスコア組成物208は、下側アイソパイプ204の基部220で再結合し、それによって、積層ガラス構造のガラスコア層102が形成される。
【0031】
同時に、溶融ガラスセラミッククラッド組成物206が、上側アイソパイプ202内に形成された樋210を溢れ、この上側アイソパイプ202の外側成形表面222、224上を流れる。この溶融ガラスセラミッククラッド組成物206は、上側アイソパイプ202の上を流れるのにより低い液相線粘度要件を有し、ガラスとして提示される場合、ガラスコア組成物208と等しいかそれより低いCTE(例えば、約5×10-7以内)を有する。溶融ガラスセラミッククラッド組成物206は、溶融ガラスセラミッククラッド組成物206が下側アイソパイプ204の周りを流れ、下側アイソパイプの外側成形表面216,218上を流れる溶融ガラスコア組成物208と接触して、溶融ガラスコア組成物と融合し、ガラスコア層102の周りにセラミック化前のガラスクラッド層104a,104bを形成するように上側アイソパイプ202によって外側に逸らされる。
【0032】
いくつかの実施の形態において、そのように形成された積層シートでは、クラッドの厚さは、クラッドが圧縮され、コアが張力下になるように、コアガラスの厚さよりもかなり薄くなる。しかし、CTEの差が小さいので、コアにおける引張応力の大きさは、非常に小さく(例えば、10MPa程度以下)、これにより、コアの張力のレベルが低いために、比較的容易に切断できる積層シートを製造することができる。このように、シートは、フュージョンドロー装置から板引きされた積層構造から切断することができ、シートが切断された後、次いで、その切断製品に、適切な熱処理を施すことができる。
【0033】
ここに開示された積層ガラス物品は、制限するものではなく、携帯電話、パーソナル音楽プレーヤー、タブレット型コンピュータ、LCDディスプレイとLEDディスプレイ、現金自動預入支払機などを含む、様々な家庭用電子機器に使用してよい。
【0034】
いくつかの実施の形態において、積層ガラス物品は、熱処理後にクラッド層が不透明、透明または半透明であるガラス組成物から生じるクラッドなどの、不透明、透明または半透明である層を1つ以上備えてもよい。さらに、シート形態でガラスを使用することを採用することができる。
【0035】
請求項に記載された主題の精神および範囲から逸脱せずに、ここに記載された実施の形態に様々な改変および変更を行えることが、当業者には明らかであろう。それゆえ、本明細書は、ここに記載された間笹真名実施の形態の改変および変更を、そのような改変および変更が付随の特許請求の範囲およびその同等物の範囲内に入るという条件で、包含することが意図されている。
【符号の説明】
【0036】
100 積層ガラス物品
102 ガラスコア層
104a,104b ガラスクラッド層
200 積層フュージョンドロー装置
202 上側アイソパイプ
204 下側アイソパイプ
206 溶融ガラスセラミッククラッド組成物
208 溶融ガラスコア組成物
210,212 樋
216,218,222,224 外側成形表面
図1
図2