特許第6487846号(P6487846)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6487846プリンテッドエレクトロニクス用銅ペースト組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6487846
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】プリンテッドエレクトロニクス用銅ペースト組成物
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/09 20060101AFI20190311BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20190311BHJP
   H01B 1/00 20060101ALI20190311BHJP
   C09D 11/52 20140101ALI20190311BHJP
【FI】
   H05K1/09 A
   H01B1/22 A
   H01B1/00 M
   H01B1/00 L
   C09D11/52
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-539508(P2015-539508)
(86)(22)【出願日】2013年10月29日
(65)【公表番号】特表2016-502752(P2016-502752A)
(43)【公表日】2016年1月28日
(86)【国際出願番号】KR2013009664
(87)【国際公開番号】WO2014069866
(87)【国際公開日】20140508
【審査請求日】2016年10月21日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0121743
(32)【優先日】2012年10月31日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2013-0128938
(32)【優先日】2013年10月29日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】502081871
【氏名又は名称】ドンジン セミケム カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100164448
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 雄輔
(74)【代理人】
【識別番号】100178685
【弁理士】
【氏名又は名称】田浦 弘達
(72)【発明者】
【氏名】キム ソンベ
(72)【発明者】
【氏名】イ スンヒョク
(72)【発明者】
【氏名】リム ジュンヒャン
(72)【発明者】
【氏名】ハン ジュキョン
(72)【発明者】
【氏名】ユ ヒョンソク
(72)【発明者】
【氏名】キム ヨンモ
【審査官】 ゆずりは 広行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−118449(JP,A)
【文献】 特表2012−523082(JP,A)
【文献】 特開2012−178334(JP,A)
【文献】 米国特許第04400214(US,A)
【文献】 国際公開第2009/115643(WO,A1)
【文献】 国際公開第2006/080247(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/083813(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/000833(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/09
H05K 1/16
C09D 11/00−13/00
H01B 1/00− 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)表面に有機物がコーティングされた銅(Cu)ナノ粒子、表面に有機物がコーティングされた銅−異種金属ナノ粒子の混合物40乃至90重量%、
b)バインダー樹脂1乃至30重量%、
c)モノマーおよびオリゴマー1乃至20重量%、
d)硬化剤0.1乃至3重量%、および
e)残量の溶媒
を含むことを特徴とするプリンテッドエレクトロニクス用銅ペースト組成物であって、
前記異種金属が亜鉛またはアルミニウムであることを特徴とし、
前記a)が、純粋な銅ナノ粒子に有機物がコーティングされたもの30−70重量部と、銅−異種金属ナノ粒子に有機物がコーティングされたもの70−30重量部とが混合された100重量部であることを特徴とするプリンテッドエレクトロニクス用銅ペースト組成物。
【請求項2】
前記ナノ粒子は、平均粒子大きさが50乃至1,000nmであることを特徴とする請求項1に記載のプリンテッドエレクトロニクス用銅ペースト組成物。
【請求項3】
前記銅−異種金属が、銅100重量部に対して異種金属1乃至30重量部が混合されたことを特徴とする請求項1に記載のプリンテッドエレクトロニクス用銅ペースト組成物。
【請求項4】
前記有機物がアミンであることを特徴とする請求項1に記載のプリンテッドエレクトロニクス用銅ペースト組成物。
【請求項5】
前記有機物が粒子の0.1乃至4重量%であることを特徴とする請求項1に記載のプリンテッドエレクトロニクス用銅ペースト組成物。
【請求項6】
前記バインダー樹脂が、セルロース系、エポキシ系、ポリエステル系樹脂およびこれらのうちの一つ以上混合して製造された共重合体からなる群より選択された1種以上のものであることを特徴とする請求項1に記載のプリンテッドエレクトロニクス用銅ペースト組成物。
【請求項7】
前記モノマーおよびオリゴマーが、アクリル系、ウレタン系およびエポキシ系からなる群より選択された1種以上のものであることを特徴とする請求項1に記載のプリンテッドエレクトロニクス用銅ペースト組成物。
【請求項8】
前記硬化剤が、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、イソシアネート、無水フタル酸からなる群より選択された1種以上のものであることを特徴とする請求項1に記載のプリンテッドエレクトロニクス用銅ペースト組成物。
【請求項9】
前記溶媒が、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルピロリドン、テルピネオールおよびこれらの混合物からなる群より選択された1種以上のものであることを特徴とする請求項1に記載のプリンテッドエレクトロニクス用銅ペースト組成物。
【請求項10】
請求項1によるプリンテッドエレクトロニクス用銅ペースト組成物を基に印刷した後、乾燥および焼成を遂行する段階を含むことを特徴とする電子印刷(プリンテッドエレクトロニクス)方法。
【請求項11】
前記基板がポリイミドフィルムであることを特徴とする請求項10に記載の電子印刷(プリンテッドエレクトロニクス)方法。
【請求項12】
前記印刷がスクリーン印刷であることを特徴とする請求項10に記載の電子印刷(プリンテッドエレクトロニクス)方法。
【請求項13】
前記焼成が150−200℃で行われることを特徴とする請求項10に記載の電子印刷(プリンテッドエレクトロニクス)方法。
【請求項14】
請求項10による電子印刷(プリンテッドエレクトロニクス)方法によって製造された電子印刷(プリンテッドエレクトロニクス)物品。
【請求項15】
前記電子印刷(プリンテッドエレクトロニクス)物品が軟性回路基板であることを特徴とする請求項14に記載の電子印刷(プリンテッドエレクトロニクス)物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンテッドエレクトロニクス用銅ペースト組成物に係り、より詳しくは酸化が抑制された銅ナノ粒子を含み、電気伝導度、基板との接着力および印刷性に優れたプリンテッドエレクトロニクス用銅ペースト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンテッドエレクトロニクス(printed electronics)技術は、溶液工程が可能な多様な機能性インク素材(functional ink materials)を直接印刷工程を用いて多様な電子素子および部品あるいはモジュールを製作する技術であって、RFIDタグ、照明、ディスプレイ、太陽電池、電池(Battery)など半導体や素子、回路などが用いられるほとんど全ての領域に適用することができる。
【0003】
このようなプリンテッドエレクトロニクスに使用されるインク材料のうち、導電性インク材料は各種電子素子の電極、配線などに主に使用され、この時形成される導電性ラインに必要な最も重要な物性は伝導度であり、その次に重要な要求事項は低い工程温度、低い製造単価およびインクの安定性などが挙げられる。現在主に用いられていたり活発に研究されている導電性インク材料としては、導電性高分子溶液、金属ナノ粒子が分散された溶液、カーボンナノチューブ(CNT)分散溶液およびこれに対する複合体材料が挙げられる。
【0004】
現在最も活発に研究されている金属ナノ粒子の場合、高い伝導度を有しているが、これらを分散させるために使用される分散剤を除去するために比較的に高い焼成温度(>150℃)が要求され、製造単価も高い方である。
【0005】
最近までこのような金属インクペーストとしては主に球形のマイクロ(μm)大きさの銀(Ag)から構成された組成物が用いられており、銀から構成されたペーストは製造しやすく安定性が優れ印刷後にも安定的であるという長所があるため広く応用されているが、価格が流動的であり高いため生産製品の単価に良くない影響を与えるしかなく、球形のマイクロ銀粒子は低温で高い電気伝導度を実現しにくいという短所がある。
【0006】
このような問題を解決するために、各種印刷工程で高価の銀を代替できると共に既存び工程にそのまま適用が可能な銅(Cu)から構成されたペースト組成物に対する関心が高まっているが、銅は大気圧で酸化がよく起こるという短所がある。
【0007】
よって、このような従来の多くの費用がかかる銀組成物や銅組成物の酸化問題を解決し、下部基板との接着力が向上した銅ペースト組成物に対する開発が切実であるのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記のような問題点を解決するために、本発明は、銅の酸化が抑制され優れた電気伝導度、接着力および印刷性を示すことができるプリンテッドエレクトロニクス用銅ペースト組成物を提供することを目的とする。
【0009】
本発明はまた、前記プリンテッドエレクトロニクス用銅ペースト組成物を用いて優れた電気伝導度、接着力および印刷性を示すことができるプリンテッドエレクトロニクス方法および前記方法によって製造されたプリンテッドエレクトロニクス物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明は、
a)表面に有機物がコーティングされた銅(Cu)ナノ粒子、銅−異種金属ナノ粒子またはこれらの混合物40乃至90重量%;
b)バインダー樹脂1乃至30重量%;
c)モノマーおよびオリゴマー1乃至20重量%;
d)硬化剤0.1乃至3重量%;および
e)残量の溶媒
を含むことを特徴とするプリンテッドエレクトロニクス用銅ペースト組成物を提供する。
【0011】
また、本発明は、プリンテッドエレクトロニクス用銅ペースト組成物を基材に印刷した後、乾燥および焼成を遂行する段階を含むことを特徴とするプリンテッドエレクトロニクス方法を提供する。また、本発明は、前記プリンテッドエレクトロニクス方法によって製造されたプリンテッドエレクトロニクス物品を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によるプリンテッドエレクトロニクス用銅ペースト組成物は、湿式合成法で合成され表面に有機物が薄くコーティングされた銅ナノ粒子、銅−異種金属ナノ粒子またはこれらの混合物を用いることによって大気圧でも優れた伝導度および印刷性を示すことができ、特に銅−異種金属ナノ粒子を用いる場合、接着力が優れるので、高価の銀粒子に代わって多様なプリンテッドエレクトロニクス分野に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】合成例1で合成された銅ナノ粒子を示す写真である。
図2】合成例1で合成された銅ナノ粒子のEDAX表面分析結果を示すグラフである。
図3】合成例1で合成された銅ナノ粒子の熱分析および有機物含量測定結果を示すグラフである。
図4】実施例1の組成物をポリイミドフィルムの上に印刷し焼成した結果を示す写真である。
図5】実施例1の組成物の印刷性を評価した結果を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明による乾燥および焼成が同時に可能な印刷用(プリンテッドエレクトロニクス用)銅ペースト組成物は、a)表面に有機物がコーティングされた銅(Cu)ナノ粒子、銅−異種金属ナノ粒子またはこれらの混合物40乃至90重量%;b)バインダー樹脂1乃至30重量%;c)モノマーおよびオリゴマー1乃至20重量%;d)硬化剤0.1乃至3重量%;およびe)残量の溶媒を含むことを特徴とする。
【0015】
以下、各成分について説明する。
a)表面に有機物がコーティングされた銅ナノ粒子
市中で一般に販売されている1μm以上の銅粒子は低温で粒子間融着が起こりにくいため低抵抗を実現するのが難しく、長時間加熱して融着させる場合、酸化が先に起こりながら伝導度を完全に失う短所がある。また、市中で販売される銅粒子の場合、表面にコーティングされた有機物がないため容易に酸化される。
【0016】
本発明で使用可能な表面に有機物がコーティングされた銅ナノ粒子は、純粋な銅ナノ粒子に有機物がコーティングされるか、銅−異種金属ナノ粒子に有機物がコーティングされるか、またはこれらの混合物であり得る。前記で異種金属は当分野で通常使用する銅より酸化が速い金属であれば制限なく使用されてもよいが、亜鉛またはアルミニウムであるのが好ましい。また、純粋銅ナノ粒子はポリイミドおよびポリマー基板との接着力においてポリマー成分を添加しても優れた結果を示さず、特に焼成時に粒子同士が融着しながら粒子間境界面が大きくなり、これにより収縮率が大きくなるため基板との収縮率差によって接着力が良くない短所があるが、銅より酸化が速い金属、具体的な一例として亜鉛やアルミニウムを固溶体形態に銅−異種金属ナノ粒子を形成する場合、粒子間融着時に粒子間境界面の大きさを調節しながら基板との収縮率差を減らすことによって接着力が良くなる長所がある。前記銅−異種金属ナノ粒子において、前記銅と異種金属の含量比率は銅100重量部に対して異種金属が1乃至30重量部で混合されていることがよい。
【0017】
本発明で前記ナノ粒子は球状であり、平均粒子大きさが50乃至1,000nm、好ましくは100乃至500nmであり、表面に有機物がコーティングされ酸化が抑制されたものであることを特徴とする。本発明による銅ナノ粒子は、一定以上の酸素が存在する大気圧上で熱が加えられても表面にコーティングされた有機膜によって酸化が抑制される。
【0018】
前記有機物は、アミン、脂肪酸、脂肪族アミンまたはメルカプト類であってもよく、表面有機物の含量は0.1乃至10重量%であるのが好ましい。前記範囲内の場合、銅の酸化を防止しながら目的する電気伝導度を同時に満足させることができる。
【0019】
前記銅ナノ粒子は、通常の方法、例えば、湿式合成法を用いて製造することができる。
【0020】
発明のペースト組成物において前記銅ナノ粒子は40乃至90重量%で含まれ、40重量%未満で添加される場合、相対的にバインダー含量が高くなり所望の伝導度を達成することができず、90重量%を超える場合、印刷のための粘弾性特性が急激に悪くなりながら印刷性能が顕著に落ちる問題がある。好ましくは、本発明のペースト組成物において前記銅ナノ粒子は純粋な銅ナノ粒子30−70重量部と銅−異種金属ナノ粒子70−30重量部が混合されていることがよい。
【0021】
b)バインダー樹脂
本発明ではペースト組成物に接着力および印刷のためのレオロジー特性を付与するためにバインダー樹脂を含む。
【0022】
本発明で使用可能なバインダー樹脂としては、セルロース(Cellulose)系、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、セルロースアセテーブチレート、カルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂およびこれらのうちの一つ以上混合して製造された共重合体であることがよい。
【0023】
本発明で前記バインダー樹脂は1乃至30重量%で含まれ、1重量%未満で添加される場合、ペーストの粘度が高くなるため印刷性が悪くなり、前記含量が30重量%を超える場合、ペーストの粘度が低くなりながら印刷後にパターンが広く広がり、焼成後に伝導度および分散安定性が低下し保管安定性が低下するようになる。
【0024】
c)モノマーまたはオリゴマー
本発明では組成物の流動性(Viscosity)特性を高めるためにモノマーまたはオリゴマーを使用する。
【0025】
本発明で使用可能なモノマーおよびオリゴマーとしては、アクリル系、ウレタン系およびエポキシ系からなる群より選択された1種以上、例えば、ウレタンアクリレート、多官能基アクリレート、ポリエステルアクリレートウレタンなどを用いることができ、分子量が10,000以下であるのが好ましい。
【0026】
本発明で前記モノマーまたはオリゴマーは1乃至20重量%で含まれ、1重量%未満で添加される場合、バインダーによって弾性特性が過度に高くなることがあり、20重量%を超過する場合、流動性が過度に増加することがある。
【0027】
d)硬化剤
前記バインダー、およびモノマーおよびオリゴマーの組み合わせのみでは多様なプリンテッドエレクトロニクスで基板との接着力を確保できないため、熱焼成によって硬化が可能な硬化剤と共に添加して接着力を高めることができる。
【0028】
本発明で使用可能な硬化剤としては、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、イソシアネート、無水フタル酸などを使用することができる。
【0029】
本発明で前記硬化剤は0.1乃至3重量%で含まれ、0.1重量%未満で添加される場合、十分に硬化が起こらないため接着力の確保が難しく、3重量%を超過する場合、未反応硬化剤によってむしろ接着力を低下させることがある。
【0030】
e)溶媒
本発明ではペーストの粘度を調節しナノ粒子の分散を強化するために溶媒を使用する。
本発明に使用可能な溶媒としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルピロリドン、テルピネオール、などを用いることができ、含量は組成物中の残部の量で含まれる。
【0031】
また、本発明のプリンテッドエレクトロニクス用銅ペースト組成物は、前記成分以外に必要によって当業界で通常使用される添加剤、例えば、酸化防止剤、pH調節剤などを追加的に含むことができる。
【0032】
本発明はまた、前記プリンテッドエレクトロニクス用銅ペースト組成物を基材に印刷した後、乾燥および焼成を遂行する段階を含むプリンテッドエレクトロニクス方法および前記方法によって製造されたプリンテッドエレクトロニクス物品を提供する。
【0033】
本発明によるプリンテッドエレクトロニクス方法では通常使用する多様な印刷工程が適用可能である。例えば、前記印刷は、スクリーン(Screen)印刷、グラビアオフ−セット(Gravure off−set)印刷、グラビアダイレクト(Gravure direct)印刷、インプリンティングなどがあり、好ましくは、スクリーン印刷法である。また、印刷の対象である基板は公知の多様な基板が適用可能であり、例えば、軟性回路基板、ガラス基板などに印刷できる。好ましくは、前記基板は軟性回路基板であり、特にポリイミド(PI)フィルムであることがよい。
【0034】
本発明の前記ペースト組成物は各印刷工程に適合するように最適化されるのが好ましく、ポリイミド(PI)フィルムにスクリーン印刷方法を適用する場合、本発明のペースト組成物は10,000乃至50,000センチポアズ(cps)の粘度範囲を有するのが好ましい。
【0035】
本発明の銅ペースト組成物は、前記のように印刷工程を行った後、当分野で通常使用される焼成方法によって焼成することができ、好ましくは、窒素、酸素またはアルゴン熱風単独、MIR(Middle infra red)ランプ、または熱風とMIRランプを同時に使用して乾燥および焼成することができる。
【0036】
具体的に、本発明による組成物は、220℃以下、好ましくは150乃至200℃の熱い窒素または酸素を供給しながら乾燥、焼成するか、150乃至200℃のMIRランプで乾燥、焼成するのが好ましい。
【0037】
一般的な銅ペースト組成物が大気圧に容易に酸化される反面、本発明による組成物は表面に有機物がコーティングされた銅ナノ粒子を使用することによって大気圧での酸化を最大限抑制できるため電気伝導度が優れるだけでなく、接着力および印刷性が優れているので、高価の銀粒子に代わって多様なプリンテッドエレクトロニクス分野(例えば、RFIDタグ、照明、ディスプレイ、太陽電池、電池(Battery)、半導体、電子素子、回路など)に多様に適用が可能であり、特に軟性回路基板の製造において好ましく適用できる。
【0038】
以下、本発明の理解のために好ましい実施例を提示するが、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範囲が下記の実施例に限定されるのではない。
【実施例】
【0039】
合成例1:純粋銅ナノ粒子の合成
金属前駆体として銅前駆体CuCl30gを水450mlに溶解させた水溶液に、トリエチルアミン22.3gを添加し、緑色の混合溶液がゲル相の薄緑色物質に変わるまで強制攪拌を実施した。その後、ヒドラジン27.5gを徐々に投入して溶液が暗紅色または濃い赤色に変わるまで強制攪拌を実施した。この時、反応温度は45℃で維持した。
【0040】
遠心分離および沈殿を通じて暗紅色の粉末を回収しメタノールで数回洗浄および回収を繰り返した後、大気圧雰囲気で保管した。
【0041】
前記で製造された銅ナノ粒子を観察した結果、図1に示されているように、製造された銅ナノ粒子は100−120nmの球状であった。また、EDAX表面分析結果、図2に示されているように、銅酸化物が殆どない銅粒子であるのを確認した。
【0042】
また、空気を吹き込みながら熱分析を通じて表面の有機物含量を測定した結果、図3に示されているように、有機物含量はほぼ2%程度に測定され、200℃以下では酸化が抑制されるが、200℃以上では酸化が進行することを確認した。
【0043】
合成例2:銅−亜鉛ナノ粒子の合成
金属前駆体として銅前駆体CuCl30gの代わりに銅前駆体CuCl27gと亜鉛前駆体3gを使用したことを除いては、前記合成例1と同様な方法で銅−亜鉛ナノ粒子を合成した。
【0044】
合成例3:銅−アルミニウムナノ粒子の合成
金属前駆体として銅前駆体CuCl30gの代わりに銅前駆体CuCl27gとアルミニウム前駆体3gを使用したことを除いては、前記合成例1と同様な方法で銅−アルミニウムナノ粒子を合成した。
【0045】
実施例1:プリンテッドエレクトロニクス用銅ペースト組成物の製造
反応器にエチルセルロース重合体10g、溶媒としてテルピネオール72gおよびブチルカルビトール18gを入れ、樹脂が完全に溶けるまで65℃で攪拌した。樹脂が完全に溶けると、前記合成例1で製造された銅ナノ粒子30gにバインダー樹脂8gを入れ完全に混じるまでペーストミキサーを用いて一定以上の速度で攪拌した。このように製造された銅ペーストに3官能基以上のアクリル系単量体のうちのジペンタアリールスリトールヒドロキシペンタアクリレート(DPHA)2.6g程度を添加した後、200℃未満の温度でラジカルを発生して熱硬化が可能な硬化剤で0.2gを添加して完成した。約1分間追加攪拌を行ってペースト組成物を完成した。
【0046】
実施例2:プリンテッドエレクトロニクス用銅ペースト組成物の製造
前記合成例1で製造された銅ナノ粒子30gの代わりに前記合成例2で製造された銅−亜鉛ナノ粒子30gを使用したことを除いては、前記実施例1と同様な方法でペースト組成物を製造した。
【0047】
実施例3:プリンテッドエレクトロニクス用銅ペースト組成物の製造
前記合成例1で製造された銅ナノ粒子30gの代わりに前記合成例1で製造された銅ナノ粒子15gおよび合成例2で製造された銅−亜鉛ナノ粒子15gを使用したことを除いては、前記実施例1と同様な方法でペースト組成物を製造した。
【0048】
実施例4:プリンテッドエレクトロニクス用銅ペースト組成物の製造
前記合成例1で製造された銅ナノ粒子30gの代わりに前記合成例1で製造された銅ナノ粒子15gおよび合成例3で製造された銅−アルミニウムナノ粒子15gを使用したことを除いては、前記実施例1と同様な方法でペースト組成物を製造した。
【0049】
実施例5:プリンテッドエレクトロニクス用銅ペースト組成物の製造
アクリル系単量体の代わりに分子量が2,000以上である多官能基のウレタンアクリレート系のオリゴマーを使用したことを除いては、前記実施例1と同様な方法でペースト組成物を製造した。
【0050】
実施例6:プリンテッドエレクトロニクス用銅ペースト組成物の製造
アクリル系単量体の代わりに分子量500以上であるビスフェノール系のエポキシオリゴマーを使用したことを除いては、前記実施例1と同様な方法でペースト組成物を製造した。
【0051】
実施例7:プリンテッドエレクトロニクス用銅ペースト組成物の製造
エチルセルロース重合体10gの代わりにエチルセルロース重合体8gおよびエポキシ樹脂2gを使用したことを除いては、前記実施例1と同様な方法でペースト組成物を製造した。
【0052】
実施例8:プリンテッドエレクトロニクス用銅ペースト組成物の製造
エチルセルロース重合体10gの代わりにエチルセルロース重合体8gおよびエポキシ樹脂2gを使用し、アクリル系単量体の代わりにウレタン系単量体を使用したことを除いては、前記実施例1と同様な方法でペースト組成物を製造した。
【0053】
実施例9:プリンテッドエレクトロニクス用銅ペースト組成物の製造
エチルセルロース重合体10gの代わりにエチルセルロース重合体8gおよびエポキシ樹脂2gを使用し、アクリル系単量体の代わりにエポキシ系単量体を使用したことを除いては、前記実施例1と同様な方法でペースト組成物を製造した。
【0054】
実施例10:プリンテッドエレクトロニクス用銅ペースト組成物の製造
前記合成例1で製造された銅ナノ粒子30gの代わりに前記合成例1で製造された銅ナノ粒子15gおよび合成例2で製造された銅−亜鉛ナノ粒子15gを使用し、アクリル系単量体の代わりにウレタン系単量体を使用したことを除いては、前記実施例1と同様な方法でペースト組成物を製造した。
【0055】
実施例11:プリンテッドエレクトロニクス用銅ペースト組成物の製造
前記合成例1で製造された銅ナノ粒子30gの代わりに前記合成例1で製造された銅ナノ粒子15gおよび合成例2で製造された銅−亜鉛ナノ粒子15gを使用し、アクリル系単量体の代わりにエポキシ系単量体を使用したことを除いては、前記実施例1と同様な方法でペースト組成物を製造した。
【0056】
実施例12:プリンテッドエレクトロニクス用銅ペースト組成物の製造
エチルセルロース重合体10gの代わりにエチルセルロース重合体8gおよびエポキシ樹脂2gを使用し、前記合成例1で製造された銅ナノ粒子30gの代わりに前記合成例1で製造された銅ナノ粒子15gおよび合成例2で製造された銅−亜鉛ナノ粒子15gを使用したことを除いては、前記実施例1と同様な方法でペースト組成物を製造した。
【0057】
実施例13:プリンテッドエレクトロニクス用銅ペースト組成物の製造
エチルセルロース重合体10gの代わりにエチルセルロース重合体8gおよびエポキシ樹脂2gを使用し、前記合成例1で製造された銅ナノ粒子30gの代わりに前記合成例1で製造された銅ナノ粒子15gおよび合成例2で製造された銅−亜鉛ナノ粒子15gを使用し、アクリル系単量体の代わりにウレタン系単量体を使用したことを除いては、前記実施例1と同様な方法でペースト組成物を製造した。
【0058】
実施例14:プリンテッドエレクトロニクス用銅ペースト組成物の製造
エチルセルロース重合体10gの代わりにエチルセルロース重合体8gおよびエポキシ樹脂2gを使用し、前記合成例1で製造された銅ナノ粒子30gの代わりに前記合成例1で製造された銅ナノ粒子15gおよび合成例2で製造された銅−亜鉛ナノ粒子15gを使用し、アクリル系単量体の代わりにエポキシ系単量体を使用したことを除いては、前記実施例1と同様な方法でペースト組成物を製造した。
【0059】
比較例1:プリンテッドエレクトロニクス用銅ペースト組成物の製造
前記合成例1で製造された銅ナノ粒子30gの代わりにアルドリッチ社から購入した銅粒子30gを使用したことを除いては、前記実施例1と同様な方法でペースト組成物を製造した。
【0060】
試験例1
前記実施例1乃至14および比較例1で製造された銅ペースト組成物の物性評価のために、各組成物をパターンが形成されている290メッシュスクリーン網を通してポリイミドフィルムの上に印刷し、形成された塗膜を50℃で乾燥後、200℃で3分間熱風で焼成した後(図4)、マルチテスターで印刷されたパターンに直接測定して伝導度を測定し、印刷されたパターンをASTM D3359の方法で接着力評価を行い、その結果を下記表1に示した。
【0061】
また、各50/50、70/70、90/90、110/110(線幅/空いた空間)で印刷性を評価し、その結果を下記表1および図5(実施例1の組成物)に示した。断線がないものは“o”、断線があるものは“x”と示した。
【0062】
【表1】
【0063】
上記表1に示されているように、本発明による実施例1乃至14の銅ペースト組成物は、市販される一般の銅ナノ粒子を用いた組成物に比べて伝導度、接着力および印刷性が優れていることを確認した。
【0064】
特に、同一な組成物で銅−異種金属ナノ粒子を用いた場合、接着力が大きく増加することを確認し、銅−亜鉛ナノ粒子が下部接着力に最も大きい効果を示した。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明によるプリンテッドエレクトロニクス用銅ペースト組成物は、湿式合成法で合成され、表面に有機物が薄くコーティングされた銅ナノ粒子、銅−異種金属ナノ粒子またはこれらの混合物を使用することによって大気圧でも優れた伝導度および印刷性を示すことができ、特に、銅−異種金属ナノ粒子を使用する場合、接着力が優れるので、高価の銀粒子に代わって多様なプリンテッドエレクトロニクス分野に適用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5