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(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
CD1dタンパク質と、前記CD1dタンパク質と共有結合している請求項1〜12のいずれか一項に記載の修飾された糖脂質とを含む、修飾された糖脂質/タンパク質複合体。
前記修飾された糖脂質/タンパク質複合体が、標的抗原に特異的な抗体またはその断片をさらに含み、ここで前記抗体またはその抗原結合性断片が前記CD1dに結合している、請求項13または14に記載の修飾された糖脂質/タンパク質複合体。
請求項13〜17のいずれか一項に記載の修飾された糖脂質/抗体複合体、または請求項18に記載の組成物を含む医薬組成物であって、前記組成物が、糖脂質との結合が共有結合ではないタンパク質により生じる免疫応答に比して、被検者の免疫応答を増強しまたは改変する、医薬組成物。
ウイルス性疾患、細菌性疾患、真菌性疾患、寄生虫症、増殖性疾患、自己免疫疾患、および炎症性疾患からなる群から選択される疾患の治療のための、請求項19に記載の医薬組成物。
請求項13〜17のいずれか一項に記載の修飾された糖脂質/タンパク質複合体、または請求項18に記載の組成物を含む医薬組成物であって、被検者の抗原に対する免疫応答を誘導するための医薬組成物。
【発明を実施するための形態】
【0085】
本発明は、組成物、単離細胞、ワクチン、および方法を提供するもので、これらは、免疫応答、例えば、一次および/または二次免疫応答を増強させる、すなわち、誘発、刺激または促進するために有用である。本明細書は、CD1dなどのタンパク質と安定した共有結合を可能にするベンゾフェノンのような官能基を含む修飾された糖脂質を記載する。また、修飾された糖脂質および物理的に会合したタンパク質(例えば、CD1d)を含む複合体、並びにその合成および使用方法も本明細書で提供される。ある実施形態では、修飾された糖脂質または修飾された糖脂質/タンパク質複合体は、CD1d拘束性ナチュラルキラーT(「NKT」)細胞の活性に影響を与えることによって免疫応答をさらに増強させる。本明細書に記載する修飾された糖脂質および修飾された糖脂質/タンパク質複合体は、望ましい免疫応答、例えば、マイコバクテリア(Mycobacteria)抗原、腫瘍、異種抗原、または標的分子に対する免疫応答の刺激に有用である。免疫応答は、細菌性病原体;例えば、マイコバクテリア(Mycobacteria)、例えば、ヒトに結核を引き起こす結核菌(Mycobacterium tuberculosis);他の感染因子;または腫瘍に起因する疾患の予防、治療または改善に有用となり得る。いくつかの実施形態では、他の箇所に記載のとおり特定の形態の糖脂質を使用しており、本発明を使用して炎症応答または自己免疫応答を主にTH1からTH2応答へと方向転換させることができる。例えば、米国特許出願公開第2006/0052316号および第2010/0183549号に例が記載さているが、その各々を参照することによりその全体が本明細書に取り込まれる。
【0086】
自然免疫系は、外来病原体に対する非常に攻撃的な防御免疫応答と、正常組織に対して免疫寛容性を維持する必要性との間でバランスをとっている。近年、多くの異なる細胞種間の相互作用がこのバランス維持に寄与という認識が高まっている。そのような相互作用は、例えば、TH1型T細胞による炎症誘発性サイトカイン(例えば、インターフェロン−ガンマ)産生またはTH1活性を抑制するTH2型T細胞によるインターロイキン4(IL−4)産生のいずれかの偏った応答をもたらす。数多くの異なる動物モデルにおいて、T細胞のTH1への偏りにより腫瘍または感染性病原体に対する防御免疫が有利に働くことがわかっているが、T細胞のTH2への偏りは、細胞媒介性自己免疫疾患の発症を予防する重要因子となり得る。免疫刺激が攻撃的な細胞性免疫をもたらすか、またはそのような応答の下方制御をもたらすのかを決定する条件は、組織それぞれが、異なる免疫応答を有利に働かせるよう相互作用する抗原提示細胞(APC)とリンパ球系統との特有のセットで構成されているという意味で高度に局部的である。例えば、至適条件下では、正常組織に局在する樹状細胞(DC)は、免疫寛容性の相互作用を有利に働かせるとともに細胞媒介性自己免疫に対して障壁として機能する成熟の系統と段階を主に示すことができ、一方、腫瘍または感染部位は、強力な細胞媒介性免疫応答を刺激する成熟骨髄樹状細胞を誘引することになる。
【0087】
NKT細胞は、TH1およびTH2両サイトカインを分泌する珍しい能力を有し、強力な細胞障害機能並びに調節機能が炎症、自己免疫および腫瘍免疫において確認されている(Bendelac et al., Science 268:863 (1995);Chen and Paul, J Immunol 159:2240 (1997);およびExley et al., J Exp Med 186:109 (1997))。また、NKT細胞は、そのα−βTCRを介して刺激を受けるとIL−4とIFN−γとを短時間に大量産生することでも知られている(Exley et al., J. Exp. Med. 186:109 (1997)。
【0088】
CD1d拘束性NKT細胞は、局所環境での免疫刺激結果を明確にするうえで重要な役割を果たすと思われる、非通常型T細胞の独特のクラスである。この細胞は、T細胞系統およびナチュラルキラー(NK)細胞系統双方のマーカーの発現を、より大きなクラスのNKT細胞と共有している。したがって、NKT細胞はNK細胞のような自然免疫の一部と考えられており、その頻度はヒトにおいて健常個人で全Tリンパ球の2.0%にもなる(Gumperz et al., J Exp Med 195:625 (2002);Lee et al., J Exp Med 195:637 (2002))。
【0089】
CD1d拘束性NKT細胞は、単形性MHCクラスIb分子であるCD1dにより提示される脂質および糖脂質抗原に特異的であることから、他のNKT細胞と区別される(Kawano et al., Science 278:1626-1629 (1997))。CD1dは、β2ミクログロブリンとと会合するMHCにコードされない分子であり、構造的に古典的MHCクラスI分子と関連している。CD1dは、脂質尾部または疎水性ペプチドの炭化水素鎖の結合に特化した疎水性抗原結合ポケットを有する。Zeng et al., Science 277: 339-345, (1997)。CD1dは、海綿に由来するa−グリコシル化スフィンゴ脂質、α−ガラクトシルセラミド(α−GalCer)、およびα結合しているガラクトースまたはグルコースは有するがマンノースは有していないセラミド様糖脂質抗原などの関連分子を結合することで知られている。Kawano et al., Science 278:1626-1629 (1997);およびZeng et al., Science 277: 339-345 (1997)。本明細書に論じるように、α−GalCerまたは抗原提示細胞のCD1dと結合した関連分子を用いた刺激によりCD1d拘束性NKT細胞を活性化させることができるため、この非通常型T細胞サブセットの機能解析が大幅に容易になった。炎症がない場合、CD1d拘束性NKT細胞は、胸腺、肝臓および骨髄のような特定の組織に選択的に局在することが示されており(Wilson et al., Trends Mol Med 8:225 (2002))、NKT細胞の抗腫瘍活性が例えば、マウス肝転移において調査されている。
【0090】
このCD1d拘束性NKT細胞のうち、高度に保存されたabT細胞受容体(TCR)を発現するのが本明細書で「iNKT細胞」といわれるサブセットである。ヒトでは、このインバリアントTCRはVβ11と結合したVα24Jα15で構成されるが、マウスでは、この受容体は相同性の高いVa14Ja18およびVβ8.2を含んでいる。他のCD1d拘束性NKT細胞は、より可変性のあるTCRを発現する。CD1d拘束性T細胞のTCRインバリアント(不変)クラスおよびTCRバリアント(可変)クラスはいずれもα−GalCerを負荷したCD1d四量体の結合により検出することができる(Benlagha et al., J Exp Med 191:1895-1903 (2000);Matsuda et al., J Exp Med 192:741-754 (2000);およびKaradimitris et al., Proc Natl Acad Sci USA 98:3294-3298 (2001))。本明細書で定義するCD1d拘束性NKT細胞(CD1d拘束性NKT)は、インバリアントまたはバリアントTCRを発現し、かつ、α−GalCerもしくは関連セラミド様糖脂質抗原いずれかを負荷したCD1dを結合するまたは同CD1dで活性化される細胞を含む。本明細書で定義するCD1d拘束性NKT細胞(CD1d−NKT)は、インバリアントまたはバリアントTCRを発現する細胞、並びに、α−GalCerを負荷したCD1d、または、OCHなどの分子を含むα結合したガラクトースもしくはグルコースを有するが、長鎖を短縮したスフィンゴシン塩基(C14に対しC5)およびアシル鎖(C26に対しC24)を有する点でα−GalCerとは異なる関連スフィンゴ脂質(Miyamoto et al., Nature 413:531-4 (2001))を負荷したCD1dのいずれかを結合するもしくは同CD1dで活性化される細胞を含む。
【0091】
CD1d拘束性NKTは、CD1dを発現する標的に対する直接的な細胞障害活性を有することがわかった。しかしながら、CD1d拘束性NKTが免疫応答に及ぼす作用は、他のリンパ球の動員が直接的な相互作用によって、または、おそらくさらに重要なことには、DCとの相互作用による間接的動員によって増幅される可能性が高い。CD1d拘束性NKTは、免疫応答初期に大量のIL−4およびIFN−γを分泌する独特の能力を有する。IFN−γの分泌は、インターロイキン12(IL−12)を産生するDCの活性化を誘導する。IL−12は、NKT細胞によるIFN−γの分泌をさらに刺激するとともにNK細胞の活性化ももたらし、さらなるIFN−γが分泌される。
【0092】
CD1d拘束性NKTは、IL−4およびIFN−γ双方を急速に大量に分泌することができるので、免疫応答の偏りは、作用が優勢なサイトカインが炎症誘発性IFN−γであるか、抗炎症性IL−4であるかに依存することになる。このことは、一部は、CD1d拘束性NKTの異なるサブセットの相対度数の関数であると報告されている。これらのサブセットには、(i)CD4およびCD8ともに陰性であり、炎症誘発性IFN−γおよびTNF−αの分泌を含むTH1型応答を主にもたらすインバリアントCD1d拘束性NKT母集団、並びに(ii)CD4陽性であり、IL−4、IL−5、IL−10およびIL−13といった抗炎症性Th2型サイトカインの分泌を含むTH1型とTH2型双方の応答をもたらすCD1d拘束性NKTの分離母集団が含まれる(Lee et al., J Exp Med 195:637-41 (2002);およびGumperz et al., J Exp Med 195:625-36 (2002))。さらに、NKT細胞活性は、CD1dに結合した特定のセラミド様糖脂質に応じて区別して調節される(例えば、米国特許第7,772,380号を参照のこと))。本発明の組成物は、CD1dが、これらの機能的に異なるセラミド様糖脂質およびその関連α−グリコシルセラミドと選択的に会合する実施形態を含む。CD1d拘束性NKTサブセットの活性化に影響を及ぼす局所因子には、サイトカイン環境のほか、重要なことに、その環境に動員されるDCが含まれる。
【0093】
セラミド様糖脂質ファミリー(すなわち、α−ガラクトシルセラミド(α−GalCer)および関連α−グリコシルセラミド)は、マウスNKT細胞による強いCD1d拘束性応答を刺激することが示された(Kawano et al., 1997)。これらの化合物にはαアノマーのヘキソース(NKT細胞を認識するために活性であるガラクトースまたはグルコース)が含有され、βアノマーの糖類しか含有しない哺乳類組織に一般に見られるセラミドとは区別する。これらの化合物は、それらが最初に単離された資源である天然の海綿に見られることが知られており、α−GalCerを担癌マウスに注射したときに免疫が活性化されたことにより劇的な腫瘍拒絶が誘導されたことが明らかになってから免疫学者が関心を寄せるところとなった(Kobayashi et al., Oncol.Res. 7:529-534 (1995))。その後、この活性は、CD1d依存性機構によりNKT細胞を急速に活性化させるα−GalCerの能力と結びつけられた。現在では、α−GalCerはCD1dに結合し、それにより、NKT細胞のTCRに対する測定可能な親和性を有する分子複合体を作ることがわかっている(Naidenko et al., J Exp.Med. 190:1069-1080 (1999);Matsuda et al., J Exp.Med. 192:741 (2000);Benlagha et al., J Exp.Med. 191:1895-1903 (2000))。したがって、α−GalCerは、インビトロおよびインビボいずれにおいても大部分のNKT細胞を活性化させることができる強力な薬剤を提供する。
【0094】
最も広く研究された、文献ではKRN7000といわれるNKT活性化α−GalCerは、齧歯類におけるそれらの抗癌活性に基づき海綿から単離されたα−GalCerの天然型と同様の構造を有する合成分子である(Kawano et al., Science 278:1626-1629 (1997);Kobayashi et al., 1995;Iijima et al., Bioorg. Med. Chem. 6:1905-1910 (1998);Inoue et al., Exp. Hematol. 25:935-944 (1997);Kobayashi et al., Bioorg. Med. Chem. 4:615-619 (1996a) and Biol. Pharm. Bull. 19:350-353 (1996b);Uchimura et al., Bioorg. Med. Chem. 5:2245-2249 (1997a);Uchimura et al., Bioorg. Med. Chem. 5:1447-1452 (1997b);Motoki et al., Biol. Pharm. Bull. 19:952-955 (1996a);Nakagawa et al., Oncol. Res. 10:561-568 (1998);Yamaguchi et al., Oncol. Res. 8:399-407 (1996))。切断されたスフィンゴシン塩基を有する、あるKRN7000の合成類似体は、実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)マウスモデルにおいて高い自己免疫抑制能を示した(Miyamoyo et al., Nature 413:531-534 (2001))。α−GalCerスフィンゴシン塩基が変化している他のバリアントが米国特許第5,936,076号で同定されている。
【0095】
1997年11月から現在までの膨大な文献では、KRN7000が哺乳類の免疫系を活性化する機序について研究されてきた(Kawano et al., Science 278:1626-1629 (1997);Benlagha et al., J Exp. Med. 191:1895-1903 (2000);Burdin et al., Eur. J Immunol. 29:2014-2025 (1999);Crowe et al., J. Immunol. 171:4020-4027 (2003);Naidenko et al., J Exp. Med. 190:1069-1080 (1999);Sidobre et al., J. Immunol. 169:1340-1348 (2002);Godfrey et al., Immunol. Today 21:573-583 (2000);Smyth and Godfrey, Nat. Immunol. 1:459-460 (2000))。これらの研究では、ほとんどの造血細胞並びに上皮細胞の一部と他の細胞系統に発現されるCD1dタンパク質にKRN7000が結合することが、KRN7000の作用として最も近い機構であると一様に示している。KRN7000がCD1dに結合すると分子の複合体が作られ、これはその親和性の高さから、ナチュラルキラーT細胞(NKT細胞)と呼ばれるTリンパ球のサブセットのT細胞抗原受容体(TCR)により認識される。KRN7000/CD1d複合体が認識されるとNKT細胞の急速な活性化が起こる。NKT細胞は、肝臓、脾臓などのリンパ器官に存在し、あらゆる組織への高い輸送能を有する。活性化されたNKT細胞は、広範なケモカインおよびサイトカインを急速に分泌するほか、樹状細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞など他の細胞種を活性化させる能力も有している。NKT細胞の活性化に続くKRN7000/CD1d複合体による一連の事象には、免疫系に対する下流の強い作用があることが示された。これは、例えば、特定の型の感染の状況においては、感染に対する適応免疫を高め治癒を促進するアジュバント効果をもたらし得る。または、特定の型の自己免疫疾患の状況においては、KRN7000によるNKT細胞の活性化により、組織破壊を抑制し疾患を改善するように自己免疫応答過程を改変することができる。
【0096】
多数の間接的機構がCD1d拘束性NKT細胞の防御効果に寄与している。インビボでのα−GalCer投与によるNKT細胞の活性化により、NK細胞が同時に活性化される(Eberl and MacDonald, Eur. J. Immunol. 30:985-992 (2000),;およびCarnaud et al., J. Immunol. 163:4647-4650 (1999))。NKT細胞欠失マウスでは、α−GalCerはNK細胞による細胞障害活性を誘導できない。NKT細胞は、古典的MHCクラスI拘束性の細胞障害性T細胞の誘導も高める(Nishimura et al., Int Immunol 12:987-94 (2000);およびStober et al., J Immunol 170:2540-8 (2003))。
【0097】
以下に詳述するように、本発明は糖脂質を含む。本明細書で使用する場合、「糖脂質」とは、一般構造G−L(ここで、Lは脂質およびGは炭水化物である)で表される親油性部分に結合した炭水化物部分を含む化学的化合物をいう。本明細書で使用する場合、「脂質」とは、脂肪、油、および有機溶媒などの非極性溶媒に可溶性である有機化合物をいう。「親油性」という用語は、脂肪、油、脂質、および有機溶媒などの非極性溶媒に溶解する有機化合物の特性をいう。親油性化合物は、水にやや溶けにくいまたは不溶性である。いくつかの実施形態では、Gは糖類であり、ヘキソースまたはペントースであってよく、また、単糖類、二糖類、三糖類、オリゴ糖類もしくは多糖類、またはその誘導体であってよい。対象となる糖類には、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、果糖、マルトース、ラクトースおよびショ糖が含まれる。糖と脂質の間の結合は、任意のO原子で、通常1、2、3または4位で、より一般には1位であってよい。結合は、アルファ型またはベータ型立体配置であってよい。いくつかの具体的な実施形態では、結合はアルファ型立体配置である。
【0098】
いくつかの実施形態では、糖脂質は、構造
【化23】
(ここで、Lは脂質であり、かつ、RはH、ペントース糖、ヘキソース、オリゴ糖類もしくは多糖類;または、C
1〜C
26低級アルキルなどのアルキル、アリールもしくはアルケニル基であって、そのアルキルは任意で置換され、その置換基にアルキル、アリール、アルケニル、アラルキル、アラルケニル(aralkenyl)、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル(cycloalkylalkyl)もしくはシクロアルキルアルケニル(cycloalkylalkenyl )基を非限定的に含んでよいアルキル、アリールもしくはアルケニル基からなる群から選択される;並びに、1つまたは複数のN、SまたはOヘテロ原子を含有してよい)を有してよい。それぞれのO原子は、例えば、グルコース、ガラクトース、マンノースなど、αまたはβの配向状態にあってよい。
【0099】
数多くの脂質をLとして用いることができ、C8〜C30脂肪酸、長鎖一級アルコール、長鎖アミノアルコール、長鎖ジヒドロキシまたはトリヒドロキシ塩基を有する脂肪酸アミド等が含まれる。例えば、グリコシル部分(1または数単位)は、脂肪族アルコールもしくはヒドロキシ脂肪族アルコールの1つのヒドロキシル基、または脂肪酸のカルボニル基に結合していてよい。好適な脂質の非限定的な例として、セラミド、スフィンゴミエリン、セレブロシド等が挙げられ、スフィンゴシン、ジヒドロスフィンゴシン、C20ジヒドロスフィンゴシン、フィトスフィンゴシン、C20フィトスフィンゴシン、デヒドロフィトスフィンゴシン、およびスフィンガジエニンが含まれる。
【0100】
いくつかの実施形態では、糖脂質はセラミド様糖脂質、例えば、本明細書でα−GalCerともいうα−ガラクトシルセラミドであるか、またはその類似体(α−C−GalCer等)であり、類似体は、糖とスフィンゴイド塩基間のO−グリコシド結合ではなくC−グリコシド結合を含有する。
【0101】
セラミドは、長鎖塩基すなわちスフィンゴイドのN−アシル親油性誘導体であり、動物ではスフィンゴシン、植物ではフィトスフィンゴシンとしてよく見られる。一般に、N−アシル親油性部分は脂肪酸であり、これは実施形態によっては、C3〜C27の長い炭素鎖を含む。これらの脂肪酸炭素鎖は、置換、非置換、飽和、不飽和、分岐、非分岐であるアルキル、アルケニルまたはアルキニル鎖であり得る。本明細書で使用する場合、「セラミド」という用語にはセラミド類似体、合成セラミドまたは天然セラミドのいずれも含まれる。
【0102】
本明細書で使用する場合、「セラミド様糖脂質」および「糖脂質セラミド」という用語は同じ意味で使用される。セラミド様糖脂質は、N−アシル親油性部分およびスフィンゴシン部分またはその類似体(例えば、セラミド)を含む糖脂質であり、一般式(VII)で表され、式中、式(VII)のR2は、直鎖もしくは分岐、置換もしくは非置換のアルキル、アルケニルもしくはアルキニル鎖、または置換もしくは非置換、飽和もしくは不飽和の環、または置換または非置換であるアリール環であり得る。
【化24】
【0103】
この式(VII)において、R4は炭水化物であり、それ以外の分子はセラミドまたはその類似体である。いくつかの実施形態では、R4は糖類であり得る。R4が糖類であるセラミド様糖脂質は本明細書ではグリコシルセラミドという。いくつかの実施形態では、糖類はヘキソースまたはペントースまたはその類似体であってよい。他のいくつかの実施形態では、ヘキソースまたはペントースまたはその類似体は、単糖類、二糖類、三糖類、オリゴ糖類もしくは多糖類、またはその誘導体であり得る。R4の糖類がガラクトシド(α型またはβ型結合)であるセラミド様糖脂質は、本明細書ではガラクトシルセラミドという。いくつかの実施形態では、R4はα−ガラクトシドである。いくつかの実施形態では、Aは、存在する場合、−O−、−CH2−もしくは-S;または単結合であり得る。いくつかの特定の実施形態では、AはOである。
【0104】
R1およびR2は、同一または異なり得る。いくつかの実施形態では、R1、R2、またはその両方は、置換または非置換であるアルカン、アルケン、シクロアルキル;ヘテロ原子で置換される複数のアルカンもしくはアルケン;または置換もしくは非置換である複数のアリールもしくはヘテロアリールであり得る。いくつかの特定の実施形態では、R1、R2、またはその両方は、ヘテロ原子、環、またはアリール環を鎖内に組み込んで有する、置換または非置換であるアルキルもしくはアルケニル鎖であり得る。いくつかの実施形態では、R1、R2、またはその両方は連続または非連続の二重結合を含有する。これらの二重結合は、E/Z立体配置であり得る。いくつかの実施形態では、R2は、少なくとも1つのヒドロキシル基が結合している、飽和または不飽和の長鎖C3〜C27アルキルもしくはアルケン基であり得る。
【0105】
特定の実施形態では、R1は直鎖もしくは分岐のC
1〜C
27アルカンもしくはC
2〜C
27アルケンであるか;またはR1は−C(OH)−R3であり、ここでR3は直鎖もしくは分岐のC
1〜C
26アルカンもしくはC
2〜C
26アルケンであるか;またはR1はC
6〜C
27アルカンもしくはアルケンであり、ここで(i)前記C
6〜C
27アルカンもしくはアルケンはC
5〜C
15シクロアルカン、C
5〜C
15シクロアルケン、複素環、もしくは芳香環で置換されるか、または(ii)前記C
6〜C
27アルカンもしくはアルケンがそのC
6〜C
27アルキルもしくはアルケニル鎖内にC
5〜C
15シクロアルカン、C
5〜C
15シクロアルケン、複素環、もしくは芳香環を含むか;またはR1は任意で置換された芳香環、またはアラルキルである。
【0106】
上記実施形態のいくつかにおいて、R2は置換または非置換、分岐または非分岐である、アルキル、アルケニルまたはアルキニル鎖である。いくつかの特定の実施形態では、R2は、以下の(a)〜(e)の1つであり、(a)-CH
2(CH
2)
xCH
3、(b)−CH(OH)(CH
2)
xCH
3、(c)−CH(OH)(CH
2)
xCH(CH
3)
2、(d)-CH=CH(CH
2)
xCH
3、(e)−CH(OH)(CH
2)
xCH(CH
3)CH
2CH
3、ここでXは0〜40の範囲の整数である。
【0107】
他のいくつかの実施形態では、R2は−CH(OH)(CH
2)
xCH
3であり、ここでXは4〜17の範囲の整数である。いくつかの特定の実施形態では、R2は−CH(OH)(CH
2)
13CH
3である。
【0108】
セラミド様糖脂質の非限定的な例を本明細書に記載するが、例えば、米国特許出願公開第2006/0052316号(Porcelli)、米国特許出願公開第2006/0211856号(Tsuji)、米国特許出願公開第2006/0116331号(Jiang)、米国特許出願公開第2006/0074235号(Hirokazu et al.)、米国特許出願公開第2005/0192248号(Tsuji et al.)、米国特許出願第2004/0127429(Tsuji)、および米国特許出願第2003/0157135号(Tsuji et al.)にも記載があり、これらすべては参照によりその全体が本明細書に取り込まれる。
【0109】
ある実施形態では、修飾されたセラミド様糖脂質はグリコシルセラミドまたはその類似体またはα−ガラクトシルセラミドまたはその類似体を含む。
【0110】
いくつかの実施形態では、グリコシルセラミドまたはその類似体は、式I
【化25】
[式中、R1は直鎖もしくは分岐C
1〜C
27アルカンもしくはC
2〜C
27アルケンであるか;またはR1は−C(OH)−R3であり、ここでR3は直鎖もしくは分岐のC
1〜C
26アルカンもしくはC
2〜C
26アルケンであるか;またはR1はC
6〜C
27アルカンもしくはアルケンであり、ここで(i)前記C
6〜C
27アルカンもしくはアルケンはC
5〜C
15シクロアルカン、C
5〜C
15シクロアルケン、複素環、もしくは芳香環で置換されるか、または(ii)前記C
6〜C
27アルカンもしくはアルケンは、そのC
6〜C
27アルキルもしくはアルケニル鎖内にC
5〜C
15シクロアルカン、C
5〜C
15シクロアルケン、複素環、もしくは芳香環を含む;R2は、以下の(a)〜(e)の1つであり、(a)−CH
2(CH
2)
xCH
3、(b)−CH(OH)(CH
2)
xCH
3、(c)−CH(OH)(CH
2)
xCH(CH
3)
2、(d)−CH=CH(CH
2)
xCH
3、(e)−CH(OH)(CH
2)
xCH(CH
3)CH
2CH
3、ここでXは4〜17の範囲の整数である;R4はα結合もしくはβ結合の単糖であるか、またはR1が直鎖もしくは分岐のC
1〜C
27アルカンである場合はR4は、
【化26】
であり、AはOまたは−CH
2である]を含む。
【0111】
別の実施形態では、α−ガラクトシルセラミドまたはその類似体は、式II:
【化27】
[式中、R1は直鎖もしくは分岐のC
1〜C
27アルカンもしくはC
2〜C
27アルケンであるか;またはR1は−C(OH)−R3であり、ここでR3は直鎖もしくは分岐のC
1〜C
26アルカンまたはC
2〜C
26アルケンである;およびR2は、以下の(a)〜(e)の1つであり、(a)−CH
2(CH
2)
xCH
3、(b)−CH(OH)(CH
2)
xCH
3、(c)−CH(OH)(CH
2)
xCH(CH
3)
2、(d)−CH=CH(CH
2)
xCH
3、(e)−CH(OH)(CH
2)
xCH(CH
3)CH
2CH
3、ここでXは4〜17の範囲の整数である]を含む。
【0112】
別の実施形態では、修飾されたセラミド様糖脂質は、式III:
【化28】
[式中、Rは−C(O)R1であり、ここでR1は直鎖もしくは分岐C
1〜C
27アルカンもしくはC
2〜C
27アルケンであるか;またはR1は−C(OH)−R3であり、ここでR3は直鎖もしくは分岐のC
1〜C
26アルカンもしくはC
2〜C
26アルケンであるか;またはR1はC
6〜C
27アルカンもしくはアルケンであり、ここで(i)前記C
6〜C
27アルカンもしくはアルケンはC
5〜C
15シクロアルカン、C
5〜C
15シクロアルケン、複素環、もしくは芳香環で置換されるか、または(ii)前記C
6〜C
27アルカンもしくはアルケンがそのC
6〜C
27アルキルもしくはアルケニル鎖内にC
5〜C
15シクロアルカン、C
5〜C
15シクロアルケン、複素環、もしくは芳香環を含むか;またはR1は任意で置換された芳香環、またはアラルキルであり、かつR2は、以下の(a)〜(e)の1つであり、(a)−CH
2(CH
2)
xCH
3、(b)−CH(OH)(CH
2)
xCH
3、(c)−CH(OH)(CH
2)
xCH(CH
3)
2、(d)−CH=CH(CH
2)
xCH
3、(e)−CH(OH)(CH
2)
xCH(CH
3)CH
2CH
3、ここでXは4〜17の範囲の整数である]を含むα−ガラクトシルセラミドまたはその類似体を含む。
さらなる実施形態では、R1は
【化29-1】
【化29-2】
[ここで、( )はR1が式IIIの化合物に結合する箇所を表す]からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、R1は光反応性基で置換される。光反応性基は、R1基の任意の適切な位置でR1基に結合している。例えば、いくつかの実施形態では、光反応性基は、R1基フェニル環に結合している。他のいくつかの実施形態では、光反応性基は、フェニル環のペンデント(pendent)置換基に結合している。
【0113】
別の実施形態では、α−ガラクトシルセラミドまたはその類似体(2S、3S、4R)−1−O−(α−D−ガラクトピラノシル)−N−ヘキサコサノイル−2−アミノ−1,3,4−オクタデカントリオール(KRN7000)または(2S,3S)−1−O−(α−D−ガラクトピラノシル)−N−ヘキサコサノイル−2−アミノ−1,3−オクタデカンジオール)を含む。
【0114】
別の実施形態では、α−ガラクトシルセラミドまたはその類似体(2S、3S、4R)−1−CH
2−(α−ガラクトピラノシル)−N−ヘキサコサノイル−2−アミノ−1,3,4−オクタデカントリオール(α−C−GalCer)を含む。
【0115】
他のセラミド様糖脂質の非限定的な例は、米国特許第7,273,852号;米国特許第6,531,453号;および米国特許第5,936,076号、米国特許第7,772、380号に記載されており、これらはすべて参照によりその全体が本明細書に取り込まれる。
【0116】
本明細書でいう「修飾された糖脂質」には、タンパク質(例えば、CD1d)への安定な共有結合を可能にする官能基を含む糖脂質が含まれる。この用語は、かかる官能基を含むよう人の介入により修飾されたされた天然に生じる糖脂質を包含し、合成糖脂質も意味する。
【0117】
本発明の修飾された糖脂質は、タンパク質(例えば、CD1d)への安定な共有結合を可能にする官能基を糖脂質のアシル鎖内部またはアシル鎖末端に含んでよい。修飾された糖脂質がセラミド様糖脂質であるいくつかの実施形態では、セラミド様糖脂質はアシル鎖などのN−アシル親油性部分の内部または末端で修飾されたされる。
【0118】
いくつかの実施形態では、CD1dなどのタンパク質への安定な共有結合を形成する官能基は、光化学的または熱で活性化される基であり得る。いくつかの実施形態では、このような官能基を光化学的に活性化させることができる。本明細書で使用する場合、「光反応性基」または「光反応性官能基」という用語は、化学的には不活性であるが、光源からのエネルギーに暴露されると反応性になる官能基をいう。光反応性基は、可視光または実施形態によっては紫外光を照射すると反応性になり得る。
【0119】
特定の実施形態では、UV光を使用して活性化が可能な光反応性基が選択されるが、その理由は、そのような基を有する化合物(例えば、光反応性基を有する糖脂質)をタンパク質(例えば、CD1d)に加えることができ、しかも、共有結合形成のタイミングをUV照射により任意の時点で制御可能であるためである。
【0120】
どの光反応性官能基でも本発明に使用できる。いくつかの実施形態では、糖脂質とCD1dタンパク質との共有結合の形成に使用できる光反応性基には、アリールアジド、アジドメチルクマリン、ベンゾフェノン、アントラキノン、特定のジアゾ化合物、ジアジリンおよびプソラーレン誘導体のいずれか1つが含まれる。一般に、光反応性官能基を有する化合物とCD1dタンパク質との光活性化反応は、以下のスキーム1のように示すことができる。
【化30】
スキーム1
【0121】
いくつかの実施形態では、アリールアジドおよびジアジリンを光反応性官能基として使用できる。いくつかの具体的な実施形態では、以下の光反応性官能基を使用できる(スキーム2)
【化31】
スキーム2
【0122】
波線の結合は、これらの光反応性官能基が糖脂質に結合する位置を表し、糖脂質のアシル側鎖の内部または末端などである。
【0123】
いくつかの実施形態では、長い紫外線を照射(例えば、300〜460nm)して活性化され得る光反応性官能基を本願に開示の方法および組成物で使用する。
【0124】
本発明いくつかの実施形態では、糖脂質の親油性基はアシル結合を介して炭水化物基に連結される。アシル結合はOまたはNなどいずれを介していてもよい。その点において、「アシル側鎖」は、下記で示される:
【化32】
【0125】
アシル側鎖は、直鎖でも分岐でもよい。アシル側鎖が直鎖である実施形態では、直鎖アシル側鎖(タンパク質への安定な共有結合を可能にする官能基は含まない)の長さという場合、カルボニル炭素を含む。いくつかの実施形態では、直鎖アシル側鎖は約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、またはそれ以上の数の原子(水素を除く)を有し、これには1つまたは複数のヘテロ原子を含むことができる。
【0126】
これらの実施形態のいくつかにおいて、直鎖アシル側鎖は、少なくとも11個の原子(水素を除く)を有し、これには1つまたは複数のヘテロ原子を含むことができる。ある実施形態では、アシル側鎖は約11〜約14個の原子(水素を除く)を含む。
【0127】
ある実施形態では、直鎖アシル側鎖は以下の構造の1つを有する:
【化33】
ここでYは、存在する場合、-O−、−CH
2−、−S−、−OCH
2−、−SCH
2−、−CH
2CH
2−であるか;または結合であり、かつ、PRGは光反応性基である。
【0128】
いくつかの実施形態では、糖脂質はセラミド様糖脂質である。上記実施形態のいくつかにおいて、糖脂質はセラミド様糖脂質であり、光反応性官能基は、セラミド様糖脂質のN−アシル親油性部分に結合している。特定の実施形態では、光反応性官能基は脂肪酸アシル側鎖の内部または末端で結合している。特定の実施形態では、セラミド様糖脂質はグリコシルセラミドまたはその類似体である。その他の実施形態では、セラミド様糖脂質はα型またはβ型結合のガラクトシルセラミドまたはその類似体である。
【0129】
特定の実施形態では、糖脂質に加える光反応性官能基はベンゾフェノン基である。「ベンゾフェノン」という用語は当業者に十分に理解されている。一般に、ベンゾフェノンは、下記に示す一般式C
6H
5−CO−C
6H
5で表される。
【化34】
【0130】
本明細書で使用する場合、ベンゾフェノンまたはその類似体を本発明の特定の実施形態で使用することができる。例えば、実施形態によっては、フェニル基等価体(すなわちチオフェンなど)をフェニル基の代わりに使用できる。他のいくつかの実施形態では、類似体のフェニル基は他の官能基で置換されてよい。他のいくつかの実施形態では、フェニル基およびその類似体は非置換である。
【0131】
したがって、本発明の修飾された糖脂質は、ベンゾフェノン基を含んでよい。これらの実施形態のいくつかにおいて、糖脂質は糖脂質のアシル鎖上のベンゾフェノン基を含む。特定の実施形態では、ベンゾフェノン基は、セラミド様糖脂質のN−アシル親油性部分に共有結合している。これらの実施形態のいくつかにおいて、ベンゾフェノン基はセラミド様糖脂質のアシル鎖の末端にある。前記修飾された糖脂質の非限定的な例を表1に示す。
【表1】
【0132】
したがって、いくつかの実施形態では、式(VII)のR1はベンゾフェノン部分で置換される。特定の実施形態では、ベンゾフェノン部分は末端で置換される。他のいくつかの実施形態では、式(VII)のR1は以下の式(VIII)
【化35】
[式中、Yは-O−、−CH
2−または-S−であり、かつ、Gは直鎖もしくは分岐のC
1〜C
27アルカンもしくはC
2〜C
27アルケンであるか;またはGは−C(OH)−R3であり、ここでR3は直鎖もしくは分岐のC
1〜C
26アルカンもしくはC
2〜C
26アルケンである]で表されるか;またはR1はC
6〜C
27アルカンもしくはアルケンであり、ここで(i)前記C
6〜C
27アルカンもしくはアルケンはC
5〜C
15シクロアルカン、C
5〜C
15シクロアルケン、複素環、もしくは芳香環で置換されるか、または(ii)前記C
6〜C
27アルカンもしくはアルケンがそのC
6〜C
27アルキルもしくはアルケニル鎖内にC
5〜C
15シクロアルカン、C
5〜C
15シクロアルケン、複素環、もしくは芳香環を含むか;またはR1は任意で置換された芳香環、またはアラルキルである。
【0133】
いくつかの実施形態では、式(VII)のR1は以下の式(IX)
【化36】
[式中、Yは-O−、−CH
2−または-S−であり、nは0〜30の範囲の整数である]で表される。いくつかの実施形態では、nは3〜17の範囲の整数である。
【0134】
本願に開示の修飾された糖脂質および修飾された糖脂質/タンパク質複合体は、本明細書に開示する方法を含め、当技術分野において公知の任意の方法を用いて合成することができる。
【0135】
本発明のある実施形態によると、ベンゾフェノン修飾された糖脂質の一般的な合成は、スキーム3で示される。したがって、式(IV)のベンゾフェノンカルボン酸誘導体を好適な活性化剤で活性化し、式(V)のセラミド様糖脂質を用いたペプチドカップリングを介して反応させ、所望のベンゾフェノン−修飾された糖脂質を得る。当業者に公知の、アミンとカルボン酸のペプチドカップリングに好適な任意の活性化剤、試薬および溶媒を、ベンゾフェノンカルボン酸誘導体(IV)とセラミド様糖脂質(V)のカップリング反応に使用することができる。
【化37】
スキーム3
【0136】
いくつかの実施形態では、Yは-O−、−CH
2−または-S−である;Gは直鎖もしくは分岐のC
1〜C
27アルカンもしくはC
2〜C
27アルケンであるか;またはGは−C(OH)−R3であり、ここでR3は直鎖もしくは分岐のC
1〜C
26アルカンもしくはC
2〜C
26アルケンである;またはR1はC
6〜C
27アルカンもしくはアルケンであり、ここで(i)前記C
6〜C
27アルカンもしくはアルケンはC
5〜C
15シクロアルカン、C
5〜C
15シクロアルケン、複素環、もしくは芳香環で置換されるか、または(ii)前記C
6〜C
27アルカンもしくはアルケンは、そのC
6〜C
27アルキルもしくはアルケニル鎖内にC
5〜C
15シクロアルカン、C
5〜C
15シクロアルケン、複素環、もしくは芳香環を含む;R
4は置換もしくは非置換である、糖またはその類似体である;Aは、存在する場合、-O−、−CH
2−であるか;または単結合である;並びにR
2は置換または非置換であるC
3〜C
40アルキル、アルケニルまたはアルキニル鎖である。いくつかの実施形態では、Gは-(CH
2)
n−であり、ここでnは0〜20の範囲の整数であるとともにYはOである。他のいくつかの実施形態では、式(VI)のベンゾフェノン基を含む修飾された糖脂質のR2は以下の(a)〜(e):(a)-CH
2(CH
2)
xCH
3、(b)−CH(OH)(CH
2)
xCH
3、(c)−CH(OH)(CH
2)
xCH(CH
3)
2、(d)-CH=CH(CH
2)
xCH
3、(e)−CH(OH)(CH
2)
xCH(CH
3)CH
2CH
3の1つであり、ここでXは0〜40の範囲の整数である。
【0137】
他の実施形態のいくつかにおいては、式(VI)のベンゾフェノン基を含む修飾された糖脂質のR2は−CH(OH)(CH
2)
xCH
3であり、ここでXは4〜17の範囲の整数である。いくつかの特定の実施形態では、式(VI)のベンゾフェノン基を含む修飾された糖脂質のR2は−CH(OH)(CH
2)
13CH
3である。他のいくつかの実施形態では、R4はα−ガラクトシルである。
【0138】
本発明のいくつかの実施形態によると、Gが-(CH
2)
n−である式(IV)(ここでnは0〜20の範囲の整数であり、YはOである)のベンゾフェノンカルボン酸誘導体は、スキーム4および5にしたがって合成することができる。
【化38】
スキーム4
【0139】
したがって、好適な脱離基を含むベンゾフェノン誘導体(A)をジオール誘導体(B)と反応させヒドロキシル誘導体(C)を形成する。当業者に公知の任意の好適な脱離基Lをこの反応に使用できる。いくつかの実施形態では、脱離基Lは、Br、Cl、I、トシル、メシルなどであり得る。いくつかの特定の実施形態では、脱離基Lは臭素である。次いで、アルコールを酸化させて酸を得るのに好適な任意の酸化剤を用いてヒドロキシル誘導体を酸化させ、YはOであるカルボキシル酸誘導体(IV)を得る。特に、一級アルコールを酸に酸化させる酸化剤は、当技術分野において周知である。いくつかの実施形態では、酸化剤は重クロム酸ピリジニウム(PDC)である。
【化39】
スキーム5
【0140】
いくつかの実施形態では、Gが-(CH
2)
n−である式(V)(ここで、ここでnは0〜20の範囲の整数であり、YはOである)のベンゾフェノンカルボン酸誘導体は、スキーム3に図示するように合成することができる。したがって、ベンゾフェノン誘導体(A)をCaCO
3の存在下でTHF/H
2Oと反応させ、対応するアルコール誘導体(D)を形成する。その後、アルコール誘導体Dを塩基条件下で脱離基Lを含むカルボン酸誘導体と反応させ、YはOであるベンゾフェノンカルボン酸誘導体(IV)を得る。当業者に公知の任意の好適な脱離基Lをこの反応に使用できる。いくつかの実施形態では、脱離基Lは、Br、Cl、I、トシル、メシルなどであり得る。いくつかの特定の実施形態では、脱離基Lは臭素である。
【0141】
本発明の修飾された糖脂質/タンパク質複合体において、修飾された糖脂質をタンパク質、例えば、CD1dタンパク質と「物理的に会合」させ、「修飾された糖脂質/CD1d複合体」を製造する。ある実施形態では、修飾された糖脂質/CD1d複合体は異種抗原または標的分子をさらに含む。「物理的に会合する」とは、CD1dタンパク質との直接的な相互作用を意味する。ある実施形態では、セラミド様糖脂質はCD1dタンパク質と共有結合的手段により物理的に会合している。いくつかの実施形態では、異種抗原または標的分子、またはその両方は、CD1dタンパク質と物理的に会合している(例えば、共有結合的手段により)。
【0142】
光反応性基を含む修飾された糖脂質は、修飾された糖脂質をタンパク質と接触させ、修飾された糖脂質に光(例えば、可視光または紫外光)を照射することにより、タンパク質(例えば、CD1d)と共有結合させることができる。光反応性基がベンゾフェノン基であるいくつかの実施形態では、ベンゾフェノン基を含む修飾された糖脂質は、修飾された糖脂質をタンパク質と接触させ、ベンゾフェノン−修飾された糖脂質およびタンパク質に紫外光(すなわち、波長が約10nm〜約400nmである光)を照射することによりタンパク質(例えば、CD1d)と共有結合させることができる。特定の実施形態では、修飾された糖脂質とタンパク質を溶液中でインキュベートすることにより2個の分子を接触させる。これらの実施形態のいくつかにおいて、溶液には緩衝生理食塩液が含まれる。ある実施形態では、修飾された糖脂質およびタンパク質に、波長の長い(すなわち、約300nm〜約460nmであり、約300、305、310、315、320、325、330、335、340、345、350、355、360、365、370、375、380、385、390、395、400、405、410、415、420、425、430、435、440、445、450、455、および460nmを含むが、これらに限定されない)紫外光を照射する。ある実施形態では、修飾された糖脂質およびタンパク質に、波長が約365nmのUVを照射する。いくつかの実施形態では、修飾された糖脂質およびタンパク質に、試料から約1インチ上方に置いたUVランプを用いて照射する。いくつかの実施形態では、修飾された糖脂質およびタンパク質への照射は、約5分、約10分、約15分、約30分、約40分、約50分、約1時間、約2時間、またはより長時間行う。特定の実施形態では、修飾された糖脂質およびタンパク質に約1時間照射する。
【0143】
修飾された糖脂質物理的に会合したタンパク質の検出は、当業者に公知の方法でによって達成可能である。修飾された糖脂質をタンパク質、例えば、CD1dタンパク質に安定して結合させることにより、修飾された糖脂質/CD1d複合体を作製することができる。ある実施形態では、本発明の組成物により、糖脂質およびタンパク質、例えば、CD1dタンパク質を抗原提示細胞に同時投与できる。
【0144】
本発明の修飾された糖脂質/タンパク質複合体は、単一糖脂質を含むことができるか、または糖脂質の不均一混合物を含むことができる。即ち、単一のタンパク質または複数のタンパク質を、単一糖脂質と物理的に会合させることも、糖脂質混合物と物理的に会合させることもできる。
【0145】
本明細書で使用する場合「任意で置換された」という用語は、非置換であるか、またはハロゲン(F、Cl、Br、I)、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、もしくはアルコキシなどの1つまたは複数の置換基で置換されることを意味する。
【0146】
本明細書で「アルキル」という用語を単独でまたは他の基の一部として使用する場合、1〜18個の炭素または指定個数の炭素を典型的に有する直鎖または分岐した脂肪族飽和炭化水素をいう。そのような実施形態の1つでは、アルキルはメチルである。非限定的な例示的アルキル基としては、エチル、n−プロピル、イソプロピルなどが挙げられる。
【0147】
「置換アルキル」という用語は本明細書で使用する場合、上記で定義したように1つまたは複数のハロゲン(F、Cl、Br、I)置換基を有するアルキルをいう。
【0148】
「複素環」という用語は本明細書で使用する場合、3〜10員の単環式または二環式複素環で、ヘテロ原子を最大4個含む、飽和環、非芳香不飽和環、または芳香環を意味する。各ヘテロ原子は、独立に、四級化できる窒素;酸素;並びにスルホキシドおよびスルホンを含む硫黄から選択される。複素環は、窒素、硫黄、または炭素原子を介して結合され得る。代表的複素環には、ピリジル、フリル、チオフェニル、ピロリル、オキサゾリル、イミダゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、イソオキサゾリル、ピラゾリル、イソチアゾリル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、モルホリニル、ピロリジノニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、ヒダントイニル、バレロラクタミル,オキシラニル,オキセタニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロピリンジニル、テトラヒドロピリミジニル、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロチオピラニル、キノリニル、−イソキノリニル、−クロモニル、−クマリニル、−インドリル、−インドリジニル、−ベンゾ[b]フラニル、−ベンゾ[b]チオフェニル、−インダゾリル、−プリニル、−4H−キノリジニル、−イソキノリル、−キノリル、−フタラジニル、−ナフチリジニル、−カルバゾリル等が含まれる。複素環という用語にはヘテロアリールも含まれる。
【0149】
本明細書で「アリール」という用語を単独でまたは他の基の一部として使用する場合、フェニル、1−ナフチルのように6〜14個の炭素原子を典型的に有する(すなわち、C
6〜C
14アリール)単環式および二環式の芳香環系をいう。
【0150】
「置換されたアリール」という用語を本明細書で使用する場合、ハロゲン(F、Cl、Br、I)またはアルコキシなどの1つまたは複数の置換基を有する、上記で定義したアリールをいう。
【0151】
本明細書で「アラルキル」という用語を単独でまたは他の基の一部として使用する場合、1つまたは複数のアリール置換基を有する、上記で定義したアルキルをいう。非限定的な例示的アラルキル基は、ベンジル、フェニルエチル、ジフェニルメチル等を含む。
【0152】
本明細書で「アルコキシ」という用語を単独でまたは他の基の一部として使用する場合、末端酸素原子に結合しているアルキルをいう。非限定的な例示的アルコキシ基は、メトキシ、エトキシなどを含む。
【0153】
「アルカン」という用語を本明細書で使用する場合、直鎖または分岐の非環状飽和炭化水素を意味する。代表的直鎖アルカンには、−メチル、−エチル、−n−プロピル、−n−ブチル、−n−ペンチル、−n−ヘキシル、−n−ヘプチル、−n−オクチル、−n−ノニルおよび−n−デシルが含まれる。代表的分岐アルカンには、−イソプロピル、−sec−ブチル、−イソブチル、−tert−ブチル、−イソペンチル、−ネオペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、3−エチルブチル、1,1−ジメチルブチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1−メチルヘキシル、2−メチルヘキシル、3−メチルヘキシル、4−メチルヘキシル、5−メチルヘキシル、1,2−ジメチルペンチル、1,3−ジメチルペンチル、1,2−ジメチルヘキシル、1,3−ジメチルヘキシル、3,3−ジメチルヘキシル、1,2−ジメチルヘプチル、1,3−ジメチルヘプチル、および3,3−ジメチルヘプチルが含まれる。
【0154】
「アルケン」という用語を本明細書で使用する場合、炭素−炭素二重結合を少なくとも1つ有する直鎖または分岐の非環状炭化水素を意味する。代表的直鎖および分岐アルケンには、−ビニル、−アリル、−1−ブテニル、−2−ブテニル、−イソブチレニル、−1−ペンテニル、−2−ペンテニル、−3−メチル−1−ブテニル、−2−メチル−2−ブテニル、−2,3−ジメチル−2−ブテニル、−1−ヘキセニル、−2−ヘキセニル、−3−ヘキセニル、−1−ヘプテニル、−2−ヘプテニル、−3−ヘプテニル、−1−オクテニル、−2−オクテニル、−3−オクテニル、−1−ノネニル、−2−ノネニル、−3−ノネニル、−1−デセニル、−2−デセニル、−3−デセニルなどが含まれる。
【0155】
「シクロアルカン」という用語を本明細書で使用する場合、3〜15個の炭素原子を有する飽和環状炭化水素を意味する。代表的シクロアルカンは、シクロプロピル、シクロペンチルなどである。
【0156】
本明細書で「アルキルシクロアルケン」という用語を単独でまたは他の基の一部として使用する場合、上記で定義したシクロアルカンを結合しているアルキルをいう。
【0157】
「シクロアルケン」という用語を本明細書で使用する場合、環状系内に炭素−炭素二重結合を少なくとも1つを有し、5〜15個の炭素原子を有する、単環式非芳香族炭化水素をいう。代表的シクロアルケンには、−シクロペンテニル、−シクロペンタジエニル、−シクロヘキセニル、−シクロヘキサジエニル、−シクロヘプテニル、−シクロヘプタジエニル、−シクロヘプタトリエニル、−シクロオクテニル、−シクロオクタジエニル、−シクロオクタトリエニル、−シクロオクタテトラエニル、−シクロノネニル−シクロノナジエニル、−シクロデセニル、−シクロデカジエニルなどが含まれる。「シクロアルケン」という用語には、ビシクロアルケンおよびトリシクロアルケンも含まれる。「ビシクロアルケン」という用語は本明細書で使用する場合、環の1つに炭素−炭素二重結合を少なくとも1つ有し、8〜15個の炭素原子を有する二環式炭化水素環系を意味する。代表的ビシクロアルケンには、−インデニル、−ペンタレニル、−ナフタレニル、−アズレニル、−ヘプタレニル、−1,2,7,8−テトラヒドロナフタレニル等が含まれるが、これらに限定されない。「トリシクロアルケン」という用語は本明細書で使用する場合、環の1つに炭素−炭素二重結合を少なくとも1つ有し、8〜15個の炭素原子を有する三環式炭化水素環系を意味する。代表的トリシクロアルケンには、−アントラセニル、−フェナントレニル、−フェナレニル等が含まれるが、これらに限定されない。
【0158】
「芳香環」という用語は本明細書で使用する場合、単環式と二環式を含めた5〜14員芳香族炭素環、および三環式環系を意味する。代表的芳香族環は、フェニル、ナプチル、アントリルおよびフェナントリルである。
【0159】
「オキソ」という用語を本明細書で使用する場合、酸素への二重結合を意味する.すなわち、C=Oとなる。
【0160】
「単糖」という用語は本明細書で使用する場合、炭水化物を構成するためのブロックとなる任意の単糖類を意味する。単糖の例として、グルコース、フコース、ガラクトース、およびマンノースが挙げられる。
【0161】
「ヒドロキシル」という用語は本明細書で使用する場合とは、水素1個と酸素1個が結合して構成され、その酸素が他の原子、例えば、炭素と共有結合している官能基をいう。本発明の「ヒドロキシル保護糖脂質」は、保護基とカップリングさせたヒドロキシル基を有する、糖脂質、例えば、合成糖脂質を含む。
【0162】
本発明の修飾された糖脂質は、タンパク質(例えば、CD1d)に安定な共有結合を形成できる官能基が含まれるよう修飾されたされている。タンパク質がCD1dであり、修飾された糖脂質がセラミド様糖脂質である実施形態では、「安定である修飾されたセラミド様糖脂質/CD1d複合体」は修飾されたセラミド様糖脂質がCD1dに共有結合している複合体であり、かかる複合体は有意なナチュラルキラーT(NKT)細胞刺激活性を保つことができるか、またはセラミド様糖脂質のCD1dとの会合が、インビトロでインキュベーション後、生物学的に機能的な複合体に特異的なL363などの抗体によって検出されるコンホメーションで維持される複合体である(Yu et al. (2007) J Immunol Methods 323:11-23、これを参照することによりその全体が本明細書に取り込まれる)。いくつかの実施形態では、安定である修飾されたセラミド様糖脂質/CD1d複合体は、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約95%、もしくはそれ以上のNKT細胞刺激活性を保つか、またはインビトロでのインキュベーションから約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約1週間、もしくはそれ以上の期間後、L363などの抗体により検出される機能的複合体を保つ。これらの実施形態のいくつかにおいて、インビトロでのインキュベーションは室温で行われる。特定の実施形態では、インビトロでのインキュベーション緩衝生理食塩液(例えば、PBS+0.05%Triton X-100)中で行われる。ある実施形態では、安定である修飾されたセラミド様糖脂質はCD1dに共有結合しており、かかる複合体は、インビトロでのインキュベーションを室温にて約2または約3日間行った後、少なくとも約75%のNKT細胞刺激活性を保つことができる。
【0163】
修飾された糖脂質はタンパク質、例えば、CD1dと共有結合による相互作用で物理的に会合することができる。本明細書における「修飾された糖脂質複合体」または「修飾された糖脂質/タンパク質複合体」は、CD1dのようなタンパク質と物理的に会合している修飾された糖脂質を含む。本明細書で使用する場合、用語「物理的に会合する」とは、2個の分子が共有結合または非共有結合の相互作用(例えば、水素結合、イオン結合、ファンデルワールス力、疎水性相互作用)により直接または間接的に(例えば、介在分子を介して)互いに結合している、2分子間の相互作用をいう。いくつかの実施形態では、修飾された糖脂質/タンパク質複合体は、共有結合相互作用を可能にする修飾された糖タンパク質の官能基(例えば、ベンゾフェノン基)によりタンパク質に共有結合している修飾された糖タンパク質を含む。本発明の修飾された糖脂質は、任意のタンパク質と(例えば、共有結合で)物理的に会合させることができる。いくつかの実施形態では、修飾された糖脂質(例えば、修飾されたセラミド様糖脂質)はCD1dと(例えば、共有結合した)物理的に会合している。タンパク質がCD1dである修飾された糖脂質/タンパク質複合体は本明細書において「修飾された糖脂質/CD1d複合体」という。
【0164】
本明細書で使用する場合、「CD1dタンパク質」という用語は、糖脂質およびβ2ミクログロブリンに結合することができる、完全長CD1dタンパク質、断片、もしくはそのバリアント、またはその断片もしくはバリアントを包含する。CD1d分子は、β
2ミクログロブリンと会合する、主要組織適合性複合体抗原様糖タンパク質ファミリーのメンバーであり、皮質胸腺細胞、B細胞、樹状細胞、皮膚のランゲルハンス細胞、および消化管上皮細胞の表面に発現する。CD1dは主に消化管の樹状細胞または上皮細胞に発現する。CD1ファミリーメンバーは、糖脂質を抗原として提示することに関与している。特に、CD1dはTリンパ球の別個のサブセット、すなわちIL−4およびINF−γを分泌するNK1 T細胞を活性化することによりサイトカインの緊張度を制御する。CD1糖タンパク質はすべてクローニングされ解析されている。CD1糖タンパク質、特にCD1dの詳細な考察については、例えば、Balk et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:252-256 (1989);Kojo et al., Biochem. Biophy. Res. Comm. 276:107-111 (2000);Kojo et al., J. Rheumatology 30:2524-2528 (2003);Kang and Cresswell, Nature Immunology 5:175-181 (2004);Im et al., J. Biol. Chem. 279:299-310 (2004);Dutronc and Porcelli, Tissue Antigens 60:337-353 (2002)を参照のこと。なお、これらを参照することによりその全体が本明細書に取り込まれる。
【0165】
完全長CD1dは、シグナル配列、細胞外ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインからなる。完全長CD1dポリペプチドは長さ335のアミノ酸である。
【0166】
ヒトCD1d配列は当技術分野で公知であり、Genbankのaccession number NP_001757。これは、配列番号1に記載されている。
【0167】
ヒトCD1dバリアントには、変異:T64Sを有するポリペプチドが含まれるが、これに限定されない。
【0168】
マウスCD1dの配列は、Genbankに以下のaccession numberで記載されている:NP_031665。ラットCD1dの配列は、Genbankに以下のaccession numberで記載されている:NP_058775。ヒツジCD1dの配列は、Genbankに以下のaccession numbersで記載されている:O62848およびQ29422。チンパンジーCD1dの配列は、Genbankに以下のaccession numberで記載されている:NP_001065272。ウサギCD1dの配列は、Genbankに以下のaccession numbersで記載されている:P23043。
【0169】
CD1dの細胞外ドメインは、α1ドメイン、α2ドメイン、およびα3ドメインのの3ドメインからなる。α1およびα2ドメインは、抗原結合部位を含む。α3ドメインは、β
2ミクログロブリンの会合部位を含む。
【0170】
本明細書で使用するCD1dドメイン名称を表2に記載の通り定義する。
【表2】
【0171】
当業者には理解されるように、上記に挙げたドメインの開始および終了残基は、使用するコンピュータモデリングプログラムまたはドメイン決定に用いる方法により変動し得る。
【0172】
本発明のいくつかの実施形態は、可溶性CD1dポリペプチドを含む、修飾された糖脂質/CD1d複合体を提供する。上記表1には、CD1dポリペプチドのさまざまなドメインが記載されている。可溶性CD1dポリペプチドには、一般に、α1、α2、およびα3ドメインを含む、ポリペプチドの細胞外ドメインの一部または全部が含まれる。可溶性CD1dポリペプチドは、一般に、膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインの一部またはすべてを欠失している。当業者であれば理解されるように、CD1dの細胞外ドメイン全体には、C末端またはN末端いずれの末端でもアミノ酸をさらに、またはより少なく含んでよい。
【0173】
本発明の方法および組成物に使用するCD1dポリペプチドには、最大20個までのアミノ酸置換を除き、基準アミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含むか、本質的に同アミノ酸配列からなるか、または同アミノ酸配列からなるCD1dポリペプチドが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、基準アミノ酸配列は、配列番号1のアミノ酸a〜295、配列番号1のアミノ酸21〜b、および配列番号1のa〜b、からなる群から選択され、ここでaは1〜100の任意の整数、bは201〜301の任意の整数であり、ここでCD1dポリペプチドは、β
2ミクログロブリンと会合しセラミド様糖脂質を結合する。ある実施形態では、可溶性CD1dポリペプチドは配列番号1のアミノ酸21〜295を含む。別の実施形態では、可溶性CD1dポリペプチドは配列番号1のアミノ酸20〜295、20〜296、20〜297、20〜298、20〜299、20〜300および20〜301を含む。
【0174】
本願に開示の方法および組成物のために、修飾された糖脂質/タンパク質複合体がCD1dタンパク質を含む実施形態では、かかる複合体はCD1dタンパク質と物理的に会合(例えば、共有結合)しているβ2ミクログロブリンをさらに含む。これらの実施形態のいくつかにおいて、β2ミクログロブリンはCD1dのアミノ末端に共有結合している。
【0175】
ある実施形態では、本発明のCD1d複合体は可溶性CD1dポリペプチドまたはポリペプチド断片と会合する、β2ミクログロブリンポリペプチドを含む。β
2ミクログロブリンは、すべての有核細胞表面に主要組織適合性複合体(MHC)クラスI分子の細胞外小サブユニットとして存在し、免疫応答に積極的に関与する。β
2ミクログロブリンの詳細な考察については、例えば、Peterson et al., Adv. Cancer Res. 24:115-163 (1977);Sege et al., Biochemistry 20:4523-4530 (1981)を参照のこと。なお、これらを参照することによりその全体が本明細書に取り込まれる。
【0176】
完全長β
2ミクログロブリンは分泌タンパク質で、シグナル配列およびIg様ドメインを含む。完全長CD1dポリペプチドは長さ119のアミノ酸である。
【0177】
ヒトβ
2ミクログロブリン配列は当技術分野で公知であり、Genbankのaccession number NP_004039である。本明細書では配列番号2として記載されている。
【0178】
ヒトβ
2ミクログロブリンのバリアントには、変異:A20G、P52Q、S55V、およびY86YSの1つまたは複数を有するポリペプチドが含まれるが、これらに限定されない。
【0179】
マウスのβ2ミクログロブリン配列は、Genbankに以下のaccession numberで記載されている:NP_033865。ブタのβ2ミクログロブリン配列は、Genbankに以下のaccession numberで記載されている:NP_999143。ラットのβ
2ミクログロブリン配列は、Genbankに以下のaccession numberで記載されている:NP_036644。チンパンジーのβ2ミクログロブリン配列は、Genbankに以下のaccession numberで記載されている:NP_001009066。ウサギのβ2ミクログロブリン配列は、Genbankに以下のaccession numberで記載されている:P01885。ヒツジのβ2ミクログロブリン配列は、Genbankに以下のaccession numberで記載されている:NP_001009284。上記のGenbank accession numbersはすべて、参照により本明細書に組み込まれる。
【0180】
本明細書で使用するβ
2ミクログロブリンのドメイン名称を表3に記載の通り定義する
【表3】
【0181】
当業者には理解されるように、上記に挙げたドメインの開始および終了残基は、使用するコンピュータモデリングプログラムまたはドメイン決定に用いる方法により変動し得る。
【0182】
本発明の修飾された糖脂質/CD1d複合体は、β2ミクログロブリンポリペプチドの断片、バリアント、またはその誘導体を含んでよい。上記表3には、β2ミクログロブリンポリペプチドのさまざまなドメインが記載されている。本発明のβ2ミクログロブリンポリペプチドは一般に、ポリペプチドの分泌部分の一部または全部を含む。
【0183】
本発明の方法に使用するためのヒトのβ2ミクログロブリンポリペプチドには、最大20個までのアミノ酸置換を除き、基準アミノ酸配列(例えば、配列番号2)と同一のアミノ酸配列を含むか、本質的に同アミノ酸配列からなるか、または同アミノ酸配列からなるβ2ミクログロブリンポリペプチドが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、基準アミノ酸配列は、配列番号2のアミノ酸a〜119、配列番号2のアミノ酸21〜b、および配列番号2のa〜bからなる群から選択され、ここでaは15〜25の任意の整数、bは100〜119の任意の整数であり、ここで前記β2ミクログロブリンポリペプチドはCD1dと会合し、セラミド様糖脂質の結合を支持する。ある実施形態では、β2ミクログロブリンポリペプチドは配列番号2のアミノ酸21〜113を含む。ある実施形態では、β2ミクログロブリンポリペプチドは配列番号2のアミノ酸21〜119を含む。
【0184】
「基準アミノ酸配列」とは、アミノ酸置換は導入しない特定の配列を指す。当業者であれば理解するように、置換をまったく行わない場合、本発明の「単離ポリペプチド」は基準アミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む。
【0185】
本明細書に記載するCD1dまたはβ2ミクログロブリンポリペプチドは、置換、挿入または欠失などのさまざまな変更を有してよい。ポリペプチド内で置換可能な例示的アミノ酸としては、塩基性側鎖(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)を有するアミノ酸、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、極性無電荷側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分岐側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が挙げられる。
【0186】
本明細書に記載するポリペプチドおよび基準ポリペプチドと、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%同一である、CD1dまたはβ2ミクログロブリンポリペプチドの対応断片も意図される。
【0187】
当技術分野において公知のように、2つのポリペプチド間の「配列同一性」は、1つのポリペプチドのアミノ酸配列をもう一つのポリペプチドの配列と比較することにより決定される。本明細書で論じる場合、任意の個々のポリペプチドが別のポリペプチドと少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%または95%同一であるかどうかは、BESTFITプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package, Version 8 for Unix(登録商標), Genetics Computer Group, University Research Park, 575 Science Drive, Madison, WI 53711)など非限定的な当技術分野で公知の方法およびコンピュータのプログラム/ソフトウェアを使用して決定できる。BESTFITは、Smith and Watermanの局所的相同性アルゴリズム(Advances in Applied Mathematics 2:482-489 (1981))を使用して2配列間で最も相同性の高いセグメントを検索する。ある具体的な配列が、例えば、本発明の基準配列と95%同一であるかどうか決定するためにBESTFITまたは任意の他の配列アラインメントプログラムを使用する場合、当然のことながら、そのパラメータ設定は、同一性割合が基準ポリペプチド配列の完全長に対して計算され、かつ、相同性におけるギャップが基準配列の総アミノ酸数の最大5%まで許容されるようにする。
【0188】
可溶性CD1dポリペプチドは、膜貫通ドメインのアミノ酸の一部または全部を含有してよいが、ただし、ポリペプチドが水溶液、例えば、生理溶液中で可溶性を維持できる場合である。好ましくは、約20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1以下の膜貫通ドメインのアミノ酸が含まれ、好ましくは膜貫通ドメインのアミノ酸はまったく含まれない。
【0189】
さらに、β2ミクログロブリン断片は本発明において有用である。本発明において有用であるためには、β2ミクログロブリン断片はCD1d分子との会合能を保たなければならないと考えられる。好ましくは、約20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1以下のβ2ミクログロブリンのアミノ酸が欠失され、好ましくはβ2ミクログロブリンのアミノ酸はまったく欠失されない。
【0190】
可溶性CD1dポリペプチドまたはβ2ミクログロブリンポリペプチドいずれでも、そのポリペプチド末端に少数、通常20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1以下のアミノ酸を導入することが望まれる場合がある。アミノ酸の欠失または挿入は、通常、構築して好都合な制限部位を得る、プロセッシングシグナルを付加する、操作を簡便化する、発現レベルを改善するなどの必要性の結果としてなされることになる。さらに、同様の理由から、1つまたは複数のアミノ酸を異なるアミノ酸で置換することが望まれる場合があるが、通常、任意の1ドメインで約10、9、8、7、6、5、4、3、2または1個を超えるアミノ酸置換は行わない。
【0191】
CD1dおよびβ2ミクログロブリンは任意の哺乳類または鳥類種、例えば、霊長類(特に、ヒト)、齧歯類、ウサギ、ウマ、ウシ、イヌ科、ネコ科などにとって自家であってよい。β2ミクログロブリンは典型的にはインビボで炎症性ではない。しかしながら、異種免疫応答のリスク低減のため、修飾された糖脂質/CD1d複合体の投与対象と同じ種に由来するβ2ミクログロブリンを使用することが好ましい。
【0192】
可溶性CD1dポリペプチドおよびβ2ミクログロブリンポリペプチドを別々に製造し、これらを会合させて安定であるヘテロ二重鎖複合体を形成させてよく、または両方のサブユニットを単一細胞に発現させてもよい。
【0193】
本発明の方法および組成物に使用する可溶性CD1dポリペプチドおよびβ2ミクログロブリンポリペプチドは、当業者に既知の種々の技術を用いて、多数の細胞、例えば、形質転換細胞株JY、BM92、WIN、MOC、およびMG、並びにCHOから単離してよい。機能的融合分子の構築も可能であり、そこでは、β2ミクログロブリンまたはその断片のカルボキシル末端とCD1dまたはその断片のアミノ末端とがリンカーにより連結されている。
【0194】
さらに、さまざまな種のCD1dおよびβ2ミクログロブリンのアミノ酸配列が知られており、これらのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドがクローニングされているため、こうしたポリペプチドは、組換え法を用いて作製可能である。CD1d鎖およびβ2ミクログロブリン鎖またはその融合産物をコードする領域を、大腸菌、酵母、昆虫細胞、哺乳類細胞または他の好適な細胞などの適切な宿主に別々に発現した発現ベクターに挿入する。
【0195】
用語「ワクチン」とは、動物に投与した場合に、例えば、抗原、例えば、異種抗原に対する免疫応答刺激において有用である組成物をいう。本明細書で使用する場合、「異種」抗原は、外来生物種に由来する抗原、または、同種由来の場合は、意図的に人が介入してその天然型から組成が実質的に修飾されている抗原である。
【0196】
ある実施形態では、修飾された糖脂質複合体を異種抗原または標的分子とともに投与してよい。その他の実施形態では、異種抗原、例えば、免疫原性ポリペプチド、または標的分子を送達するために、本発明の修飾された糖脂質/タンパク質複合体を「抗原担体」として使用する。例えば、別の病原体に由来する抗原(例えば、細菌抗原(例えば、サルモネラ(Salmonella)、リステリア(Listeria)、炭疽菌(Bacillus anthracis)、および赤痢菌(Shigella)抗原)、真菌抗原、寄生虫抗原(例えば、マラリア原虫(Plasmodium)のマラリア抗原)、もしくはウイルス抗原(例えば、HIV、SIV、HPV、RSV、インフルエンザまたは肝炎(HAV、HBV、およびHCV)のウイルス抗原)、または腫瘍特異抗原に由来する抗原を送達するために、その抗原担体として修飾された糖脂質/タンパク質複合体を使用できる。
【0197】
本発明の組成物は、修飾された糖脂質と物理的に会合している細胞(例えば、ウイルス細胞、真菌細胞、細菌細胞)を含む.米国特許出願公開第2010/0183549号の記載内容は、それを参照することによりその全体が本明細書に取り込まれものであるが、その米国特許出願公開第2010/0183549号に記載のとおり、細菌細胞を糖脂質と培養することにより、糖脂質等のセラミド様糖脂質を細菌細胞と物理的に会合させることができる。したがって、いくつかの実施形態では、最初に細菌細胞を、光反応性基を含む修飾された糖脂質と培養して修飾された糖脂質が細菌細胞の細胞壁と会合できるようにし、次いで、光源(例えば、紫外光)を照射して修飾された糖脂質が細菌細胞表面に共有結合できるようにすることにより、修飾された糖脂質を細菌細胞を物理的に会合させることができる。
【0198】
いくつかの実施形態では、本発明の修飾された糖脂質/タンパク質複合体は、かかる複合体を標的にするために機能する、被検者の体の特定の細胞、組織、器官、または領域に対する標的分子(例えば、モノクローナル、キメラ、ヒト化、ヒト、二機能性などを含むがこれらに限定されない抗体、またはその抗原結合性断片で、例えば、Fab部、F(ab')2部、およびFv断片のような抗原結合性断片、並びに一本鎖抗体)を含む。これらの実施形態のいくつかにおいて、標的分子は、細胞表面マーカーなどの標的抗原に特異的に結合する抗体または抗原結合性断片であり、米国特許出願公開第2006/0269540号に教示があるが、これを参照することによりその全体が本明細書に取り込まれる。タンパク質(例えば、CD1d)は、リンカー配列もしくはリンカー分子で直接またはそれを介して、標的分子(例えば、抗体またはその抗原結合性断片)に直接結合させても融合させてもよい。ある実施形態では、タンパク質(例えば、CD1d)を多価の化合物により標的分子(例えば、抗体またはその断片)に結合させる。
【0199】
タンパク質がCD1dである実施形態では、標的分子は、CD1d分子またはβ2ミクログロブリンいずれにも結合させることができる。標的分子が抗体である実施形態では、タンパク質(例えば、CD1dまたはβ2ミクログロブリン)を抗体の軽鎖または重鎖いずれに結合させてもよい。国際出願公開第9964597号はそれを参照することにより全体が本明細書に組み込まれるが、その教示にあるように、変異をβ2ミクログロブリンに導入して、構築が容易になるようクラスI重鎖に対する親和性を高めるとともに、融合タンパク質の安定性を高めることが可能である。
【0200】
タンパク質(例えば、CD1dまたはβ2ミクログロブリン)は、抗体のカルボキシル末端またはアミノ末端いずれに結合させてもよく、またはカルボキシル末端またはアミノ末端以外の部位で抗体に結合させてよい。修飾された糖脂質/タンパク質複合体に含まれるタンパク質がCD1dであるいくつかの実施形態では、、抗体またはその抗原結合性断片はCD1dのカルボキシル末端に結合している。これらの実施形態のいくつかにおいて、一本鎖Fv断片(scFv)のアミノ末端はCD1dのカルボキシル末端に結合している。
【0201】
ある実施形態では、標的分子(例えば、抗体またはその抗原結合性断片)は、腫瘍細胞の細胞表面マーカーに特異的である。本発明いくつかの実施形態では、癌は頭頸部癌、胃癌、食道癌、胃癌、大腸癌、結腸癌腫、肝癌および肝内胆管癌、膵癌、肺癌、小細胞肺癌、喉頭癌、乳癌、悪性黒色腫、多発性骨髄腫、肉腫、横紋筋肉腫、リンパ腫、濾胞性非ホジキンリンパ腫、白血病、T細胞およびB細胞白血病、ホジキンリンパ腫、B細胞リンパ腫、卵巣癌、子宮癌、子宮頸癌、前立腺癌、生殖器癌、腎癌、精巣癌、甲状腺癌、膀胱癌、形質細胞腫または脳腫瘍である。
【0202】
腫瘍関連抗原には、CEAのような汎腫瘍抗原(Sundblad Hum. Pathol. 27, (1996) 297-301, llantzis Lab. Invest. 76(1997), 703-16)、EGFR I型(Nouri, Int. J. Mol. Med. 6 (2000), 495-500)およびEpCAM(17-1A/KSA/GA733-2, Balzar J. Mol. Med. 77 (1999), 699-712)を含む。EGFR I型は特に神経膠腫に過剰発現し、EpCAMは結腸癌腫に過剰発現する。EGFR II型(Her-2/neu, ERBB2 Sugano Int. J. Cancer 89 (2000), 329-36)およびTAG−72糖タンパク質(sTN antigen, Kathan Arch. Pathol. Lab. Med. 124 (2000), 234-9)は、乳癌において上方制御される。EGFR欠失ネオエピトープも腫瘍関連抗原としての役割を果たす可能性がある(Sampson Proc. Natl. Acad. Sci. U S A 97 (2000), 7503-8)。A33(Ritter Biochem. Biophys. Res. Commun. 236 (1997), 682-6), Lewis-Y (DiCarlo Oncol. Rep. 8 (2001), 387-92)、Cora抗原(CEA-related Cell Adhesion Molecule CEACAM 6, CD66c, NCA-90, Kinugasa lnt. J. Cancer 76 (1998), 148-53)、およびMUC−1(ムチン)という抗原は、結腸癌腫に関連している(lida Oncol. Res. 10 (1998), 407-14)。Thomsen−Friedenreich抗原(TF、Gal1B−3GaINAca1−0−Thr/Ser)は結腸癌腫に見られるほか(Baldus Cancer 82 (1998), 1019-27)乳癌にも見られる(Glinsky Cancer. Res. 60 (2000), 2584-8)。頭頸部癌におけるLy−6(Eshel J. Biol. Chem. 275 (2000), 12833-40)およびデスモグレイン4、並びに消化管癌腫におけるE−カドヘリンのネオエピトープの過剰発現について記載がなされている(Fukudome Int. J. Cancer 88 (2000), 579-83)。前立腺特異的膜抗原(PSMA, Lapidus Prostate 45 (2000), 350-4)、前立腺幹細胞抗原(PSCA, Gu Oncogene 191 (2000) 288-96)およびSTEAP(Hubert, Proc Natl Acad Sci U S A 96 (1999), 14523-8)は、前立腺癌に関連している。胎児型アセチルコリン受容体(AChR)サブユニットのアルファおよびガンマは、横紋筋肉腫特異的な免疫組織化学マーカーである(RMS, Gattenlohner Diagn. Mol. Pathol. 3 (1998), 129-34)。
【0203】
CD20と濾胞性非ホジキンリンパ腫(Yatabe Blood 95 (2000), 2253-61, Vose Oncology (Huntingt) 2 (2001) 141-7)、CD19とB細胞リンパ腫(Kroft Am. J. Clin. Pathol. 115 (2001), 385-95)、Wue−1形質細胞特異抗原と多発性骨髄腫(Greiner Virchows Arch 437 (2000), 372-9)、CD22とB細胞白血病(dArena Am. J. Hematol. 64 (2000), 275-81)、CD7とT細胞白血病(Porwit-MacDonald Leukemia 14 (2000), 816-25)、およびCD25と特定T細胞・B細胞型白血病(Wu Arch. Pathol. Lab. Med. 124 (2000), 1710-3)の関連について記載がなされている。CD30はホジキンリンパ腫に関連している(Mir Blood 96 (2000), 4307-12)。黒色腫において、メラノーマ関連コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(MCSP, Eisenmann Nat. Cell. Biol. 8 (1999), 507-13)およびガングリオシドGD3(Welte Exp Dermatol 2 (1997), 64-9)の発現が観察されているが、GD3は小細胞肺癌でも見られる(SCLC, Brezicka Lung Cancer 1 (2000), 29-36)。ガングリオシドGD2の発現は、SCLCおよび神経芽細胞腫において上方制御もされる(Cheresh et al. Cancer Res. 10 (1986), 5112-8)。卵巣癌はMuellerian抑制物質(MIS)受容体II型(Masiakos Clin. Cancer Res. 11 (1999), 3488-99)に関連しており、腎臓および子宮頸癌腫はカルボアンヒドラーゼ(carboanhydrase)9の発現に関連している(MN/CAIX, Grabmaier lnt. J. Cancer 85 (2000) 865-70)。CA19−9は膵癌で高レベルで発現していることが見出された(Nazli Hepatogastroenterology 47 (2000), 1750-2)。
【0204】
腫瘍細胞表面抗原の他の例は、乳癌および卵巣癌に発現するHer2/neu(Zhang, H. et al., Experimental & Molecular Pathology 67:15-25 (1999));乳癌に発現するCM−1(Chen, L. et al., Acta Academiae Medicinae Sinicae 19(2):150-3);肺腺癌および肺大細胞癌に発現する28K2(Yoshinari, K. et al., Lung Cancer 25:95-103 (1999));頭頸部扁平上皮癌に発現するE48およびU36(Van Dongen, G.A.M.S. et al., Anticancer Res. 16:2409-14 (1996));食道癌腫、および黒色腫に発現するNY−ESO−1、Jager, E. et al., J. Exp. Med. 187:265-70 (1998);Jager, E. et al., International J. Cancer 84:506-10 (1999));膀胱癌腫に発現するKU−BL1−5(Ito, K. et al., AUA 2000 Annual Meeting, Abstract 3291 (2000));結腸癌腫に発現するNY CO 1−48(Scanlan, M.J. et al., International J. Cancer 76:652-8 (1998));黒色腫に発現するHOM MEL 40(Tureci, O. et al., Cancer Res. 56:4766-72 (1996));卵巣癌に発現するOV569(Scholler, N. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:11531-6 (1999));神経芽細胞腫および腎細胞腫に発現するChCE7(Meli, M.L. et al., International J. Cancer 83:401-8 (1999));結腸癌腫に発現するCA19−9(Han, J.S. et al., Cancer 76:195-200 (1995));卵巣癌に発現するCA125(O'Brien, T.J. et al., International J. Biological Markers 13:188-95 (1998));および黒色腫および神経芽細胞腫に発現するガングリオシド(GM2、GD2、9−o−アセチル−GD3、GD3)(Zhang, S. et al., Cancer Immunol. Immunotherapy 40:88-94 (1995))がある。
【0205】
本願に開示の方法の特定の実施形態では、腫瘍関連抗原は、Lewis Y、CEA、Muc−1、erbB−2、−3および−4、Ep−CAM、E−カドヘリンネオエピトープ、EGF−受容体(例えば、EGFR I型またはEGFR II型)、EGFR欠失ネオエピトープ、CA19−9、Muc−1、LeY、TF−、Tn抗原、sTn抗原、TAG−72、PSMA、STEAP、Cora抗原、CD7、CD19とCD20、CD22、CD25、Ig−aとIg−B、A33とG250、CD30、MCSPとgp100、CD44−v6、MT−MMPS、(MIS)受容体II型、カルボアンヒドラーゼ(carboanhydrase)9、F19抗原、Ly6、デスモグレイン4、PSCA、Wue−1、TM4SF抗原(CD63、L6、CO−29、SAS)、胎児型アセチルコリン受容体(AChR)サブユニットのアルファおよびガンマ、CM−1、28K2、E48、U36、NY−ESO−1、KU−BL1−5、NY CO 1−48、HOM MEL 40、OV569、ChCE7、CA19−9、CA125、GM2、GD2、9−o−アセチル−GD3、およびGD3からなる群から選択される。
【0206】
別の実施形態では、標的分子(例えば、抗体またはその抗原結合性断片)は、CD1d拘束性NKT細胞の細胞表面マーカーに特異的である。特異抗体が標的とするNKT細胞マーカーの好適な非限定例は、CD161、CD56、または(NKTサブセットに対しては)CD4陽性CD1d拘束性NKT上のCCR4またはCCR1もしくはCCR6ダブルネガティブ(CD4、CD8いずれも陰性)CD1d拘束性NKTである。これは、癌または感染などNKT活性が低いために生じる疾患または症状の治療に特に有用である。さらに、NKT細胞活性はCD1dに結合した個々のセラミド様糖脂質に応じて調節が異なる(例えば、米国特許第7,772,380号を参照のこと。なお、それを参照することによりその全体が本明細書に取り込まれる)ことから、本発明の組成物には、CD1dとこれらの機能的に異なるセラミド様糖脂質との選択的会合を用いる実施形態、および関連するα−グリコシルセラミドを含み、これにより、NKT活性が高い、すなわち有害(例えば、Th1の過剰活性)な結果である疾患、例えば、重症筋無力症(Reinhardt et al. Neurology 52:1485-87,1999)、乾癬(Bonish , J. Immunol. 165:4076-85,2000)、潰瘍性大腸炎(Saubermann et al. Gastroenterology 119:119-128, 2000)、および原発性胆汁性肝硬変(Kita et al. Gastroenterology 123:1031-43,2002)を調節できる。
【0207】
別の実施形態では、標的分子(例えば、抗体またはその抗原結合性断片)は、自己免疫疾患または炎症応答の標的組織の細胞表面マーカーに特異的である。好ましい実施形態では、修飾された糖脂質/CD1d複合体がかかる部位を標的とする際、局所組織抗原に特異的な標的分子(例えば、抗体またはその抗原結合断片)にこの複合体をカップリングさせることによりなされる。その後、局所組織細胞に集められた、修飾された糖脂質/CD1d複合体は、CD1d拘束性NKT細胞の動員と活性化をもたらし、自己免疫応答または炎症応答を調節する一連の事象を誘発することになる。関連する組織特異的抗原は、自己免疫疾患および炎症性疾患に応じて異なり得る。
【0208】
脱髄性疾患、特に、多発性硬化症の場合は、標的分子(例えば、抗体またはその抗原結合性断片)は、MBP(ミエリン塩基性タンパク質)、PLP(ミエリンプロテオリピドタンパク質)、またはMOG(ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質)に特異的である。特定の実施形態では、標的分子(例えば、抗体またはその抗原結合性断片)は、MOGに特異的である。
【0209】
インスリン産生膵ベータ細胞の破壊に続く若年発症I型糖尿病の場合は、標的分子(例えば、抗体またはその抗原結合性断片)は、GT3ガングリオシド、IGRP(膵島特異的グルコース−6−ホスファターゼ関連タンパク質)、またはSUR1などの膵ベータ細胞の標的抗原に特異的である(Proks P et al., Diabetes:51 Suppl 3:S368-76, 2002)。最近、この疾患における自己免疫破壊の初期標的は膵島周囲シュワン細胞であるという記載がなされている(Winer S et al: Nature Medicine 9:198-205, 2003)。したがって、本発明の他の好ましい実施形態では、若年発症I型糖尿病を治療または診断するために、標的分子(例えば、抗体またはその抗原結合性断片)は、シュワン細胞特異的抗原グリア線維性酸性タンパク(GFAP)、およびS100ベータに特異的である。
【0210】
自己免疫および炎症性疾患を治療するための、本願開示のその他の実施形態では、修飾された糖脂質/CD1d複合体と、II型コラーゲンに特異的な標的分子(例えば、抗体またはその抗原結合性断片)とを含む接合体を侵された関節に注射し関節リウマチを治療する;修飾された糖脂質/CD1d複合体と、サイログロブリンまたはTSH受容体に特異的な標的分子とを含む接合体に甲状腺を標的にさせて橋本甲状腺炎およびグレーブス病を治療する;および修飾された糖脂質/CD1d複合体と、K+/H+アデノシントリホスファターゼ特異的な標的分子とを含む接合体を、悪性貧血または萎縮性胃炎(胃壁細胞)の治療に用いる。
【0211】
その他の実施形態では、標的分子(例えば、抗体またはその抗原結合性断片)は、感染した細胞または組織の細胞表面マーカーに特異的である。好ましい実施形態では、修飾された糖脂質/CD1d複合体は、これを感染因子でコードされる抗原に特異的な標的分子(例えば、抗体またはその抗原結合性断片)にカップリングさせることにより感染部位を標的にさせる。感染因子が異なる場合は関連抗原は異なる場合がある。本願に開示の方法の特定の実施形態では、感染細胞の表面マーカーは、ウイルス外被抗原、例えば、ヒトレトロウイルス(HTLV−1および−2、HIV−1および−2)もしくはヒトヘルペスウイルス(HSV1および2、CMV、EBV)の抗原;ヘマグルチニン、例えば、インフルエンザウイルス(インフルエンザA、BまたはC)のもの;風疹ウイルス由来の糖タンパク質E1およびE2;または狂犬病ウイルスのRGPからなる群から選択される。
【0212】
その他の実施形態では、標的分子は、他の感染性ウイルス、細菌、真菌、原虫または蠕虫によりコードされる抗原に特異的である。
【0213】
ある実施形態では、標的分子(例えば、抗体またはその抗原結合性断片)は、プロフェッショナル抗原提示細胞の細胞表面マーカーに特異的である。これらの実施形態のいくつかにおいて、標的分子は、樹状細胞、例えば、CD83、DEC205、CMRF−44(Fearnley DB et al. Blood 89:3708-16,1997)、CMRF−56(Hock BD et al. Tissue Antigens 53:320-34,1999)、BDCA−1、BDCA−2、BDCA−3、およびBDCA−4(Dzionek A et al. J. Immunol. 165:6037-6046,2000)の細胞表面マーカーに特異的である。その他の実施形態では、標的分子は、Toll様受容体(TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR7、TLR9)マンノース受容体、およびマンナン結合レクチン(MBL)などの抗原提示細胞のマーカー;並びに、DC−SIGN(C型レクチンである、DC非インテグリンICAM−3受容体)、ALCAM、DC−LAMPなど、ホスファチジルセリン受容体を含むアポトーシス細胞の他の多数の受容体を含む、樹状細胞に特異的な別のマーカーに特異的である。標的分子は、B細胞またはマクロファージ等の別のプロフェッショナル抗原提示細胞の細胞表面マーカーに特異的であってよい。CD19、CD20およびCD22は、B細胞に発現し、他の抗原提示細胞の他のマーカーについて記載がなされている。
【0214】
その他の実施形態では、標的分子(例えば、抗体またはその抗原結合性断片)は、樹状細胞サブセットの細胞表面マーカーに特異的である。本発明の特定の実施形態では、修飾された糖脂質/CD1d複合体は、この複合体を、CD83、DEC205、CMRF−44、CMRF−56、DC−SIGN、Toll様受容体(TLR)(TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR7、TLR9など)、マンノース受容体、マンナン結合レクチン(MBL)、ALCAM、DC−LAMP、ホスファチジルセリン受容体、BDCA−1、BDCA−2、BDCA−3またはBDCA−4(neuropilin, Tordjman R et al. Nature Immunol. 3:477-82,2002)などのDC表面抗原マーカーに特異的な標的分子にカップリングさせることによってDCを標的とする。
【0215】
用語「抗原」およびその関連用語「抗原性」は本明細書で使用する場合、抗体またはT細胞受容体に特異的に結合する物質をいう。
【0216】
用語「免疫原」およびその関連用語「免疫原性」は本明細書で使用する場合、動物、例えば哺乳類における抗体および/または細胞免疫応答などの免疫応答を誘導する能力をいう。免疫原が抗原性でもある可能性はあるが、「抗原」は、そのサイズまたはコンホメーションのため、必ずしも「免疫原」ではない場合がある。「免疫原性組成物」は、被検者に免疫応答を誘導し、例えば、その「免疫原性組成物」内に含有される1つまたは複数の抗原を特異的に認識する抗体を誘導する。ある実施形態では、免疫原性本発明の組成物は、修飾された糖脂質/CD1d複合体および異種抗原または標的分子を含む。
【0217】
「免疫応答」という用語は、抗原または免疫原に応答する、免疫系の細胞活性を含むことを意味する。このような活性には、抗体産生、細胞傷害活性、リンパ球増殖、サイトカイン放出、炎症、貪食作用、抗原提示等が含まれるが、これらに限定されない。所与の抗原または免疫原に対する高度に特異的な免疫応答、例えば、特異抗体の産生または特異的Tリンパ球の産生は、本明細書では「適応免疫応答」という。所与の抗原に非特異的な免疫応答、例えば、NKおよびNKT細胞によるサイトカイン放出は本明細書では「自然免疫応答」という。免疫応答の例としては、抗体反応または細胞、例えば、細胞障害性T細胞またはNKT細胞の応答が含まれる。
【0218】
「防御免疫応答」または「治療的免疫応答」という用語は、免疫原に対する免疫応答で、疾患の症状、副作用または進行を予防するまたは少なくとも部分的に停止させる応答をいう。「防御的」とは、疾患に罹患していない被検動物に免疫応答が誘導されることを意味し、ここで、動物が後に疾患に罹患するまたは、例えば、結核菌(M. tuberculosis)への暴露が疑われる場合に、かかる免疫応答により疾患症状が軽減、低下、緩和、または場合によっては完全に予防されることをいう。「治療的」とは、疾患にかかっている被検動物、例えば、結核にかかっているヒトに免疫応答が誘導されることを意味し、ここで、免疫応答により疾患症状が軽減、低下、緩和、または場合によっては完全に予防されることをいうある実施形態では、本願に開示の組成物を使用して感染症もしくは癌または自己免疫疾患もしくは炎症性疾患を有する動物、例えば、ヒトに治療的免疫応答を誘導する。
【0219】
「免疫応答を調節する」という用語は、組成物または治療により、その組成物または治療を用いない場合に比して所与の免疫応答を促進、抑制、または変化させるようなあらゆる方法をいうことを意味する。例えば、アジュバント、例えば、本発明の異種抗原または標的分子を含む修飾された糖脂質/CD1d複合体を使用して抗原、例えば、異種抗原に対する免疫応答を促進させることは、その免疫応答の調節とみなされる。免疫応答を抑制する、例えば、自己免疫作用を予防することも調節である。さらに、免疫応答の変更、例えば、一次TH2応答から一次TH1応答に、またはその逆に変えることは免疫応答調節である。本発明は、修飾された糖脂質/タンパク質複合体(例えば、修飾された糖脂質/CD1d複合体)および異種抗原または標的分子を含む組成物を動物に投与することによって免疫応答を調節する方法を提供する。
【0220】
本発明は、一次および二次免疫応答双方を増強させるために有用な組成物および方法を提供する。ある態様では、一次および/または二次免疫応答は、本発明の修飾された糖脂質/タンパク質複合体(例えば、修飾された糖脂質/CD1d複合体)と一緒に、先に、または直後に投与される、異種抗原または標的分子に対する免疫応答である。ある態様では、修飾された糖脂質/タンパク質複合体を抗原担体として使用し、抗原(例えば、感染因子または腫瘍に対する免疫応答を増強させる異種抗原または標的分子)を送達する。
【0221】
「アジュバント」という用語は、(1)特定の抗原に対する免疫応答を改変もしくは増強させるまたは(2)薬剤作用を増強するまたは補助する能力を有する物質をいう。ある実施形態では、セラミド様糖脂質は、CD1dタンパク質と同時投与の際にアジュバントとして機能する。ある実施形態では、セラミド様糖脂質、例えば、αGalCerまたはその類似体は、CD1dタンパク質および異種抗原または標的分子とともに投与するとアジュバントとして機能する。別の実施形態では、第2のアジュバントを含む。他の好適なアジュバントには、LPS誘導体(例えば、モノホスホリル脂質A(MPL))、TLR9作動薬(例えば、CPG ODNS)、TLR7/8作動薬(例えば、イミキモド)、サイトカインおよび増殖因子;細菌成分(例えば、内毒素、特にスーパー抗原、外毒素および細胞壁成分);アルミニウム系塩;カルシウム系塩;シリカ;ポリヌクレオチド;トキソイド;血清タンパク質、ウイルスおよびウイルス由来物質、毒、毒液、イミダゾキノリン化合物、ポロキサマー、および陽イオン性脂質が含まれるが、これらに限定されない。
【0222】
実にさまざまな物質にさまざまな機構によるアジュバント活性があることがわかっている。免疫原の発現、抗原性または免疫原性を促進することができる化合物はいずれもアジュバントになり得る。本発明のアジュバントとして可能性の高いものには他に、糖脂質;ケモカイン;サイトカインおよびケモカインの産生を誘導する化合物;インターフェロン;ミョウバン、ベントナイト、ラテックス、およびアクリルの粒子等の不活性担体;等のプルロニックブロックポリマーTiterMax(商標)(ブロックコポリマーCRL−8941、スクアレン(代謝性油)および微粒子シリカ安定剤;フロイントアジュバント等のデポー形成剤;界面活性物質等のサポニン、リゾレシチン、レチナール、Quil A、リポソーム、およびプルロニックポリマー製剤;細菌のリポ多糖等のマクロファージ刺激物質;インスリン、ザイモサン、内毒素、およびレバミソール等の代替経路補体活性化物質;非イオン性界面活性剤;ポリ(オキシエチレン)−ポリ(オキシプロピレン)トリブロックコポリマー;mLT;MF59(登録商標);SAF;Ribi(登録商標)アジュバントシステム;トレハロースジミコール酸(TDM);細胞壁骨格(CWS);Detox(登録商標);QS21;Stimulon(登録商標);完全フロイントアジュバント;不完全フロイントアジュバント;マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF);腫瘍壊死因子(TNF);3−O−脱アシル化MPL;CpGオリゴヌクレオチド;ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンエステル、および2つ以上のアジュバントの組み合わせ、が含まれるが、これらに限定されない。
【0223】
ある実施形態では、アジュバントはサイトカインである。本発明の組成物は、サイトカインおよびケモカインの産生を誘導する1つまたは複数のサイトカイン、ケモカイン、または化合物を含むことができる。例には、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、コロニー刺激因子(CSF)、エリスロポエチン(EPO)、インターロイキン2(IL−2)、インターロイキン3(IL−3)、インターロイキン4(IL−4)、インターロイキン5(IL−5)、インターロイキン6(IL−6)、インターロイキン7(IL−7)、インターロイキン8(IL−8)、インターロイキン10(IL−10)、インターロイキン12(IL−12)、インターロイキン15(IL−15)、インターロイキン18(IL−18)、インターフェロンアルファ(IFNα)、インターフェロンベータ(IFNβ)、インターフェロンガンマ(IFNγ)、インターフェロンオメガ(IFNω)、インターフェロンタウ(IFNτ)、インターフェロンガンマ誘導因子I(IGIF)、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF−β)、RANTES(活性化と同時に制御され、正常T細胞に発現、恐らく分泌される:regulated upon activation, normal T-cell expressed and presumably secreted)、マクロファージ炎症性タンパク質(例えば、MIP−1アルファおよびMIP−1ベータ)、リーシュマニア(Leishmania)伸長開始因子(LEIF)、およびFlt−3リガンドが含まれるが、これらに限定されない。
【0224】
ある実施形態では、本発明の組成物は、他成分、例えば、免疫学的活性を有するポリペプチドをさらに含む。例えば、免疫学的活性を有するタンパク質は、toll様受容体(「TLR」)、B7.1またはB7.2等の共刺激分子である。本明細書で使用する「B7」は一般にB7.1またはB7.2をいう。共刺激分子、例えば、T細胞およびNK細胞上でCD28と相互作用する、B7−1(CD80)またはB7−2(CD86)の細胞外ドメインを、本発明で使用する可溶性CD1d複合体の構造中に取り込まれたβ2ミクログロブリンとのアミノ末端融合体として投与することができる。例えば、国際公開第9964597号(1999年12月16日公開)を参照のこと。ある実施形態では、共刺激分子、例えば、B7シグナル伝達分子を本発明の組成物に取り込むことにより、本発明の修飾された糖脂質/CD1d複合体によるNKT細胞の活性化をより有効かつ長時間にすることができる。
【0225】
その他の実施形態では、本発明の組成物は、さらなるアジュバント成分、例えば、LPS誘導体(例えば、MPL)、TLR9作動薬(例えば、CPG ODNS)、TLR7/8作動薬(例えば、イミキモド)、サイトカインおよび増殖因子;細菌成分(例えば、内毒素、特にスーパー抗原、外毒素および細胞壁成分);アルミニウム系塩;カルシウム系塩;シリカ;ポリヌクレオチド;トキソイド;血清タンパク質、ウイルスおよびウイルス由来物質、毒、毒液、イミダゾキノリン化合物、ポロキサマー、陽イオン性脂質、およびToll様受容体(TLR)作動薬など、上記の任意のアジュバントをさらに含む。有効TLR作動薬アジュバントの例には、N−アセチルムラミル−L−アラニン−D−イソグルタミン(MDP)、リポ多糖(LPS)、遺伝子組換えされたおよび/または分解LPS、ミョウバン、グルカン、コロニー刺激因子(例えば、EPO、GM−CSF、G−CSF、M−CSF、PEG化G−CSF、SCF、IL−3、IL6、PIXY321)、インターフェロン(例えば、γ−インターフェロン、α−インターフェロン)、インターロイキン(例えば、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−10、IL−12、IL−15、IL−18)、サポニン(例えば、QS21)、モノホスホリル脂質A(MPL)、3脱−O−アシル化モノホスホリル脂質A(3D−MPL)、非メチル化CpG配列、1−メチルトリプトファン、アルギナーゼ阻害剤、シクロホスファミド、免疫抑制機能を遮断する抗体(例えば、抗CTLA4抗体)、脂質(パルミチン酸残基など)、トリパルミトイル−S−グリセリルシステインリセリル−セリン(tripalmitoyl-S-glycerylcystein lyseryl-serine)(P
3CSS)、およびフロイントアジュバントが含まれるが、これらに限定されない。別の方法またはさらなる方法として、本発明の組成物は、トランスフォーミング増殖因子(TGF、例えば、TGFαおよびTGFβ);αインターフェロン(例えば、IFNα);βインターフェロン(例えば、IFNβ);γインターフェロン(例えば、IFNγ)またはLFA−1もしくはLFA−3等のリンパ球機能関連タンパク質;またはICAM−1またはICAM−2などの等の細胞間接着分子のような、免疫細胞活性化を調節するリンホカインまたはサイトカインをさらに含んでよい。
【0226】
他のアジュバント例としては、イサトリビン(isatoribin)および誘導体(Anadys Pharmaceuticals)、またはイミキモドおよびレシキモドなどのイミダゾキノリンアミン類(Dockrell & Kinghom, J. Antimicrob. Chemother., 48:751-755 (2001)およびHemmi et al., Nat. Immunol., 3:196-200 (2002)、C8−置換もしくはN7、C−8−二置換グアニンリボヌクレオシド等のグアニンリボヌクレオシド類(Lee et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 100:6646-6651 (003)、並びに特開2005−89334;国際公開第99/32122号;国際公開第98/01448号、国際公開第05/092893号;および国際公開第05/092892号に開示の化合物、並びにLee et al., Proc Natl Acad Sci USA, 103(6):1828-1833 (2006)に開示のTLR−7作動薬SM360320(9−ベンジル−8−ヒドロキシ−2−(2−メトキシ−エトキシ)アデニン)などの化合物が挙げられる。
【0227】
イサトリビン(isatoribin)のほか、別のTLR作動薬アジュバントとして、9−ベンジル−8−ヒドロキシ−2−(2−メトキシエトキシ)アデニン(SM360320)およびActilon(登録商標)(Coley Pharmaceutical Group, Inc.)が挙げられる。本発明の組成物と併用可能な他のアジュバントは、PCT国際公開第2005/000348号、米国特許公開第2007/0292418号、および米国特許公開第2007/0287664号に開示されている。
【0228】
本発明の組成物は、免疫原性ポリペプチドをさらに含むことができる。ある実施形態では、本発明の修飾された糖脂質/タンパク質複合体(例えば、修飾された糖脂質/CD1d複合体)は、異種抗原、標的分子または免疫原を送達するための抗原担体として使用することができる。異種抗原、標的分子または免疫原には、免疫原性ポリペプチドを含むことができるが、これに限定されない。
【0229】
「免疫原性ポリペプチド」とは、抗原性または免疫原性ポリペプチド、例えば、エピトープまたはエピトープの組み合わせを有するポリ−アミノ酸物質が包含されることを意味する。本明細書で使用する場合、免疫原性ポリペプチドは、脊椎動物に導入した場合に、脊椎動物の免疫系分子と反応する、すなわち、抗原性であり、その上/または脊椎動物に免疫応答を誘導する、すなわち、免疫原性である、ポリペプチドである。免疫原性ポリペプチドが抗原性でもある可能性はあるが、抗原性ポリペプチドは、そのサイズまたはコンホメーションのため、必ずしも免疫原ではない場合がある。抗原性および免疫原性ポリペプチドの例には、細菌、ウイルス、寄生虫、または真菌などの感染因子由来のポリペプチド;ペットのふけ、植物、塵、および他の環境内のアレルゲン源などのアレルゲン;並びに特定の自己ポリペプチド、例えば、腫瘍関連抗原が含まれるが、これらに限定されない。
【0230】
抗原性または免疫原性ポリペプチドを含む本発明の修飾された糖脂質複合体を使用して、ウイルス性、細菌性、真菌性、および寄生虫感染症の重症度の予防もしくは治療、例えば、治癒、改善、軽減、またはその伝染の予防もしくは低減、並びにアレルギーおよび癌などの増殖性疾患の治療ができる。
【0231】
さらに、抗原性および免疫原性ポリペプチドを含む本発明の修飾された糖脂質/タンパク質複合体を使用して、口腔および咽頭(例えば、舌、口、咽頭)、消化器系(例えば、食道、胃、小腸、結腸、直腸、肛門、肛門管、肛門直腸、肝臓、胆嚢、膵臓)、呼吸器系(例えば、喉頭、肺)、骨、関節、軟部組織(心臓を含む)、皮膚、黒色腫、乳房、生殖器官(例えば、頸部、子宮内膜、卵巣、外陰、腟、前立腺、精巣、陰茎)、泌尿器系(例えば、膀胱、腎臓、尿管などの泌尿器)、眼、脳、内分泌系(例えば、甲状腺などの内分泌)、リンパ腫(例えば、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫)、多発性骨髄腫、白血病(例えば、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病)といった癌を含むが、これらに限定されない癌の重症度を予防または治療、例えば、治癒、改善、または軽減できる。
【0232】
抗原性および免疫原性ポリペプチドを含む本発明の修飾された糖脂質/タンパク質複合体を使用して、感染因子、例えば、ウイルス性、細菌、真菌性、および寄生虫因子に起因する疾患の重症度を予防または治療、例えば、治癒、改善、または軽減できる。
【0233】
ウイルス抗原性および免疫原性ポリペプチドの例には、アデノウイルスポリペプチド、アルファウイルスポリペプチド、カリシウイルスポリペプチド、例えば、カリシウイルスカプシド抗原、コロナウイルスポリペプチド、ジステンパーウイルスポリペプチド、エボラウイルスポリペプチド、エンテロウイルスポリペプチド、フラビウイルスポリペプチド、肝炎ウイルス(AE)ポリペプチド、例えば、B型肝炎コアまたは表面抗原、ヘルペスウイルスポリペプチド、例えば、単純ヘルペスウイルス、単純疱疹ウイルスまたは水痘帯状疱疹ウイルス糖タンパク質、免疫不全ウイルスポリペプチド、例えば、ヒト免疫不全ウイルスエンベロープまたはプロテアーゼ、感染性腹膜炎ウイルスポリペプチド、インフルエンザウイルスポリペプチド、例えば、インフルエンザAヘマグルチニン、ノイラミニダーゼ、または核タンパク質、白血病ウイルスポリペプチド、マールブルグウイルスポリペプチド、オルトミクソウイルスポリペプチド、乳頭腫ウイルスポリペプチド、パラインフルエンザウイルスポリペプチド、例えば、ヘマグルチニン/ノイラミニダーゼ、パラミクソウイルスポリペプチド、パルボウイルスポリペプチド、ペスチウイルスポリペプチド、ピコルナウイルスポリペプチド、例えば、ポリオウイルスカプシドポリペプチド、天然痘ウイルスポリペプチド、例えば、ワクシニアウイルスポリペプチド、狂犬病ウイルスポリペプチド、例えば、狂犬病ウイルス糖タンパク質G、レオウイルスポリペプチド、レトロウイルスポリペプチド、およびロタウイルスポリペプチドが含まれるが、これらに限定されない。
【0234】
細菌抗原性および免疫原性ポリペプチドの例には、放射菌属(Actinomyces)ポリペプチド、桿菌(Bacillus)ポリペプチド、例えば、炭疽菌(Bacillus anthracis)の免疫原性ポリペプチド、バクテロイデス属(Bacteroides)ポリペプチド、百日咳菌(Bordetella)ポリペプチド、バルトネラ属(Bartonella)ポリペプチド、ボレリア(Borrelia)ポリペプチド、例えば、B.ブルグドルフェリ(B. burgdorferi)OspA、ブルセラ属(Brucella)ポリペプチド、カンピロバクター属(Campylobacter)ポリペプチド、カプノサイトファ^ガ属(Capnocytophaga)ポリペプチド、クラミジア(Chlamydia)ポリペプチド、クロストリジウム属(Clostridium)ポリペプチド、コリネバクテリウム(Corynebacterium)ポリペプチド、コクシエラ(Coxiella)ポリペプチド、デルマトフィルス(Dermatophilus)ポリペプチド、腸球菌(Enterococcus)ポリペプチド、エールリッヒア属(Ehrlichia)ポリペプチド、大腸菌属ポリペプチド、野兎病菌(Francisella)ポリペプチド、フソバクテリウム(Fusobacterium)ポリペプチド、ヘモバルトネラ属(Haemobartonella)ポリペプチド、ヘモフィルス(Haemophilus)ポリペプチド、例えば、インフルエンザ菌(H.influenzae)b型外膜タンパク質、ヘリコバクター属(Helicobacter)ポリペプチド、クレブシエラ属(Klebsiella)ポリペプチド、L型菌ポリペプチド、レプトスピラ(Leptospira)ポリペプチド、リステリア(Listeria)ポリペプチド、マイコバクテリア(Mycobacteria)ポリペプチド、マイコプラズマ(Mycoplasma)ポリペプチド、ナイセリア属(Neisseria)ポリペプチド、ネオリケッチア属(Neoリケッチア(Rickettsia))ポリペプチド、ノカルジア(Nocardia)ポリペプチド、パスツレラ属(Pasteurella)ポリペプチド、ペプトコッカス属(Peptococcus)ポリペプチド、ペプトストレプトコッカス(Peptostreptococcus)ポリペプチド、肺炎球菌ポリペプチド、プロテウス属(Proteus)ポリペプチド、シュードモナス(Pseudomonas)ポリペプチド、リケッチア(Rickettsia)ポリペプチド、ロシャリメア属(Rochalimaea)ポリペプチド、サルモネラ(Salmonella)ポリペプチド、赤痢菌(Shigella)ポリペプチド、ブドウ球菌(Staphylococcus)ポリペプチド、レンサ球菌(Streptococcus)ポリペプチド、例えば、化膿レンサ球菌(S. pyogenes)Mタンパク質、トレポネーマ(Treponema)ポリペプチド、およびエルシニア(Yersinia)ポリペプチド、例えば、ペスト菌(Y. pestis)F1およびV抗原が含まれるが、これらに限定されない。
【0235】
寄生虫抗原性および免疫原性ポリペプチドの例には、大腸バランチジウム(Balantidium coli)ポリペプチド、赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)ポリペプチド、肝蛭(Fasciola hepatica)ポリペプチド、ランブル鞭毛虫(Giardia lamblia)ポリペプチド、リーシュマニア(Leishmania)ポリペプチド、およびマラリア原虫(Plasmodium)ポリペプチド(例えば、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)ポリペプチド)が含まれるが、これらに限定されない。
【0236】
真菌抗原性および免疫原性ポリペプチドの例には、アスペルギルス(Aspergillus)ポリペプチド、カンジダ菌(Candida)ポリペプチド、コクシジオデス・イミチス(Coccidiodes immitis)またはコクシディオイデス属(C. posadasii)ポリペプチド、クリプトコッカス(Cryptococcus)ポリペプチド、ヒストプラスマ(Histoplasma)ポリペプチド、ニューモシスチス(Pneumocystis)ポリペプチド、およびパラコクシジオイデス(Paracoccidiodes)ポリペプチドが含まれるが、これらに限定されない。
【0237】
腫瘍関連抗原性および免疫原性ポリペプチドの例には、腫瘍特異的免疫グロブリン可変領域、GM2、Tn、sTn、Thompson−Friedenreich抗原(TF)、Globo H、Le(y)、MUC1、MUC2、MUC3、MUC4、MUC5AC、MUC5B、MUC7、癌胎児性抗原、ヒト絨毛性ゴナドトロピンベータ鎖(hCGベータ)、C35、HER2/neu、CD20、PSMA、EGFRvIII、KSA、PSA、PSCA、GP100、MAGE1、MAGE2、TRP1、TRP2、チロシナーゼ、MART−1、PAP、CEA、BAGE、MAGE、RAGE、および関連タンパク質が含まれるが、これらに限定されない。
【0238】
本発明の組成物は、他の治療剤をさらに含むことができる。治療剤の例には、代謝拮抗薬、アルキル化薬、アントラサイクリン系薬、抗生物質、および抗有糸分裂剤が含まれるが、これらに限定されない。代謝拮抗薬には、メソトレキセート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、5−フルオロウラシル・デカルバジン(decarbazine)が含まれる。アルキル化薬には、メクロレタミン、チオエパ・クロラムブシル(thioepa chlorambucil)、メルファラン、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロトスファミド(cyclothosphamide)、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、およびシス−ジクロロジアミンプラチナム(cis-dichlorodiamine platinum)(II)(DDP)であるシスプラチンが含まれる。アントラサイクリン系薬には、ダウノルビシン(以前はダウノマイシン))およびドキソルビシン(本明細書ではアドリアマイシンともいう)が含まれる。さらなる例には、ミトザントロンおよびビサントレンが含まれる。抗生物質には、ダクチノマイシン(以前はアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、およびアントラマイシン(AMC)が含まれる。抗分裂剤には、ビンクリスチンおよびビンブラスチン(これらは、一般的にビンカアルカロイド系薬といわれる)が含まれる。他の細胞障害性薬物としては、プロカルバジン、ヒドロキシ尿素、アスパラギナーゼ、コルチコステロイド、ミトタン(O,P'−(DDD))、インターフェロンが挙げられる。細胞障害性薬物のさらなる例には、リシン、ドキソルビシン、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エトポシド、テノポシド、コルヒチン(colchicin)、ジヒドロキシアントラシンジオン(dihydroxy anthracin dione)、1−デヒドロテストステロン、およびグルココルチコイドが含まれるが、これらに限定されない。このような治療剤の類似体および同族体は本発明により包含される。
【0239】
本発明の修飾された糖脂質/タンパク質複合体、例えば、ベンゾフェノン修飾された糖脂質/CD1d複合体、またはかかる複合体を含む組成物もしくはワクチン組成物は、直接検出可能なように標識する、または第二の標識免疫試薬と併用使用して、化合物を、例えば、検出または診断のために特異的に結合させることができる。対象標識には、染料、酵素、化学発光物質、粒子、放射性同位体、または直接または間接的に検出可能な他の薬剤を含み得る。別の方法では、第2段階標識、例えば、本発明の化合物の構成物質を対象とする標識抗体を使用できる。
【0240】
好適な酵素標識の例には、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ブドウ球菌(Staphylococcus)ヌクレアーゼ、デルタ−5−ステロイドイソメラーゼ、酵母アルコールデヒドロゲナーゼ、アルファ−グリセロールリン酸デヒドロゲナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコース酸化酵素、βガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼ、およびアセチルコリンエステラーゼが含まれるが、これらに限定されない。
【0241】
好適な放射性同位体標識の例としては、
3H、
111In、
125I、
131I、
32P、
35S、
14C、
51Cr、
57To、
58Co、
59Fe、
75Se、
152Eu、
90Y、
67Cu、
217Ci、
211At、
212Pb、
47Sc、
109Pdなどがある。好適な非放射性同位体標識の例としては、
157Gd、
55Mn、
162Dy、
52Tr、および
56Feがある。
【0242】
好適な蛍光標識の例としては、
152Eu標識、フルオレセイン標識、イソチオシアネート標識、ローダミン標識、フィコエリスリン標識、フィコシアニン標識、アロフィコシアニン標識、o−フタルデヒド(o−phthaldehyde)標識、およびフルオレスカミン標識がある。
【0243】
化学発光標識の例としては、ルミナール標識、イソルミナール標識、芳香族アクリジニウムエステル標識、イミダゾール標識、アクリジニウム塩標識、シュウ酸エステル標識、ルシフェリン標識、ルシフェラーゼ標識、およびエクオリン標識がある。
【0244】
核磁気共鳴造影剤の例としては、Gd、Mn、およびFeなどの重金属核がある。
【0245】
上記標識を本発明の糖脂質またはポリペプチドに結合させる典型的な技術はKennedy et al., Clin. Chim. Acta 70:1-31 (1976)、および Schurs et al., Clin. Chim. Acta 81:1-40 (1977)により記載されている。後者で述べられているカップリング技術は、グルタールアルデヒド法、過ヨウ素酸塩法、ジマレイミド法、m−マレイミドベンジル−N−ヒドロキシ−スクシンイミドエステル法であり、これらの方法はすべては、その参照により本明細書に取り込まれる。
【0246】
本発明の組成物の免疫応答調節能は、インビトロアッセイで容易に測定可能である。アッセイに使用するためのNKT細胞には、形質転換NKT細胞株、または哺乳類から単離された、例えば、ヒト由来またはマウスなどのげっ歯類由来のNKT細胞が含まれる。NKT細胞は、CD1d:α−GalCer四量体を結合する細胞を選別することにより哺乳類から単離することができる。例えば、Benlagha et al., J Exp Med 191:1895-1903 (2000);Matsuda et al., J Exp Med 192:741-754 (2000);およびKaradimitris et al., Proc Natl Acad Sci USA 98:3294-3298 (2001)を参照のこと。本発明の化合物または組成物がNKT細胞の活性を調節することができるかどうかを測定する好適なアッセイはは、NKT細胞および抗原提示細胞を共培養し、対象とする特定化合物または組成物を培地に加えて抗原提示細胞またはNKT細胞を直接標的とさせ、IL−4またはIFN−γの産生を測定することにより行う。本発明の化合物または組成物の非存在下で同じく共培養した細胞よりも、IL−4またはIFN−γ産生が有意に促進または抑制されている場合は、NKT細胞の刺激または阻害を示す。
【0247】
アッセイで使用したNKT細胞を、増殖に好適な条件下でインキュベートする。例えば、NKT細胞ハイブリドーマを、5%CO2完全培地(10%FBS、ペニシリン/ストレプトマイシン、L−グルタミンおよび5x10
−5Mの2−メルカプトエタノールを添加したRPMI1640)で約37℃にて好適にインキュベートする。化合物の系統希釈をNKT細胞培地に加えてよい。NKT細胞に加えた化合物の好適濃度は典型的に10
−12〜10
−6Mの範囲であろう。わずかに最大下のNKT細胞活性化を与える抗原用量およびAPC数の使用を、本発明の化合物によるNKT細胞応答の刺激または阻害を検出することに使用できる。
【0248】
別の方法では、IL−4またはIFN−γなどのタンパク質の発現を測定するのではなく、当技術分野で認識されている放射標識技術で測定した場合の抗原依存的T細胞の増殖の変化からNKT細胞活性化の調節について判定することができる。例えば、標識した(例えば、トリチウム標識)ヌクレオチドをアッセイ培地に導入することができる。このようなタグ付けされたヌクレオチドをDNAに組み込みT細胞増殖測定する。本アッセイは、増殖に抗原提示を必要としないNKT細胞、例えば、NKT細胞ハイブリドーマには適さない。本発明の化合物または組成物と接触させたあとのT細胞増殖レベルの差は、複合体がT細胞活性を調節することを示す。例えば、NKT細胞の増殖が抑制された場合は、化合物または組成物が免疫応答を抑制できることを示す。NKT細胞の増殖が促進された場合は、化合物または組成物が免疫応答を刺激できることを示す。
【0249】
さらに、
51Cr放出アッセイを使用して細胞障害活性を測定できる。
【0250】
これらのインビトロアッセイを使用し、免疫応答を適切に調節することができる、修飾された糖脂質および修飾された糖脂質/タンパク質複合体およびこれらを含む組成物の選択および同定が可能である。上記のアッセイ、例えば、IL−4もしくはIFN−γ産生またはNKT細胞増殖の測定を使用して、化合物との接触がT細胞活性化を調節するかどうかを測定する。
【0251】
さらにまたは別の方法では、動物、例えば、マウス、ウサギ、非ヒト霊長類における免疫化惹起実験を使用して、免疫応答を適切に調節することができ、また、ヒトにおいて細菌性疾患、例えば、結核の治療および/または予防に有効であり得る、修飾された糖脂質および修飾された糖脂質/タンパク質複合体およびこれらを含みむ組成物の同定が可能である。
【0252】
本発明の修飾された糖脂質および修飾された糖脂質/タンパク質複合体、組成物、またはワクチン組成物を使用して、疾患を予防できるほか、疾患、例えば、ウイルス性疾患、細菌性疾患、真菌性疾患、寄生虫症、アレルギー性疾患、または増殖性疾患、例えば、癌、または自己免疫性もしくは炎症性疾患を治療的に処置することも可能である。すでに疾患に罹患している個体では、本発明を使用してその動物の免疫系をさらに刺激または調節し、それにより、その疾患または障害に関連する症状を軽減または消失させる。本明細書で定義するように、「治療」とは、動物における特定の疾患症状の重症度を予防、治癒、遅滞、または軽減するため、および/または疾患に罹患している、したがって治療を必要としている動物において特定の期間にわたり疾患の悪化をもたらさないために、1つまたは複数の本発明の修飾された細菌、組成物、またはワクチン組成物を使用することをいう。
【0253】
「予防」または「予防する」という用語とは、まだ疾患に罹患していない動物において免疫を生じさせることで、動物が後にその疾患を発症する傾向にある場合に疾患の症状を予防または軽減するために、1つまたは複数の本発明の修飾された糖脂質、修飾された糖脂質/タンパク質複合体、組成物、またはワクチン組成物を使用することをいう。したがって、本発明の方法は、治療的方法または予防的(preventative or prophylactic)方法ということができる。本発明の任意の修飾された糖脂質、修飾された糖脂質/タンパク質複合体、組成物、またはワクチン組成物が疾患因子に対する完全免疫を提供する、または疾患症状のすべてを完全に治癒もしくは消失させることは必要ではない。
【0254】
本明細書で使用する場合、「治療的および/または予防的免疫を必要としている被検者」とは、特定の疾患症状の重症度を治療する、すなわち、予防、治癒、遅滞、または軽減し、かつ/または特定の期間にわたり疾患の悪化をもたらさないことが望ましい個体をいう。
【0255】
「有効量」は、単回投与でも、または一連の投与の一部でも、個体に投与した場合に治療および/または予防に有効な量である。感染性結核菌(M. tuberculosis)で惹起してから約2週間後、未治療の個体に比べ、例えば、結核菌(M. tuberculosis)に関連する疾患症状の発症率低下または症状の重症度の軽減が投与によりもたらされている場合は、有効量である。この量は、治療対象個体の健康状態および身体状態、治療対象個体の分類学上の群(例えば、ヒト、非ヒト霊長類、霊長類など)、個体の免疫系の応答能、所望する防御の程度、ワクチン製剤、医学的状況の専門的評価、およびその他の関連因子により異なる。有効量は、日常的試験で測定可能な比較的広い範囲になることが予想される。
【0256】
「脊椎動物」という用語は、単数形「脊椎動物(vertebrate)」および複数形「脊椎動物(vertebrates)」を包含し、魚類、爬虫類、および両生類のほか、哺乳類および鳥類を含むことを意図する。
【0257】
「哺乳類」という用語は、単数形「哺乳類(mammal)」および複数形「哺乳類(mammals)」を包含することを意図し、これには、ヒト;類人猿、サル(例えば、ヨザル、リスザル、オマキザル、アカゲザル、アフリカミドリザル、パタスザル、カニクイザル、およびオナガザル)、オランウータン、ヒヒ、テナガザルおよびチンパンジーなどの霊長類;イヌおよびオオカミのようなイヌ科;ネコ、ライオンおよびトラのようなネコ科;ウマ、ロバおよびシマウマのようなウマ科、ウシ、ブタおよびヒツジのような食用動物;シカおよびキリンのような有蹄類;クマのようなクマ科;ならびにウサギ、マウス、フェレット、アザラシ、クジラなど他の動物を含むが、これらに限定されない。特に、哺乳類は、ヒト被験者、食用動物またはコンパニオンアニマルでありうる。
【0258】
「鳥類」という用語は、単数形「鳥(bird)」および複数形「鳥(birds)」を包含することが意図され、カモ、ガチョウ、アジサシ、ミズナギドリ、およびカモメなどの野生水鳥;ならびにシチメンチョウ、ニワトリ、ウズラ、キジ、ガチョウ、およびアヒルなどの家畜鳥類が含まれるが、これらに限定されない。「鳥類」という用語は、ムクドリおよびセキセイインコなどのスズメ目の鳥類も包含する。
【0259】
本発明は、治療または予防を必要とする被検者における疾患を予防または治療する方法を提供し、疾患を有する、またはその疾患に罹患しやすい被検者に、本明細書に記載の修飾された糖脂質または修飾されたセラミド様糖脂質/CD1d複合体等の修飾された糖脂質/タンパク質複合体を含む組成物を投与することを含む。さらなる実施形態では、修飾された糖脂質/タンパク質複合体のタンパク質を、異種抗原を送達するための抗原担体または病原体もしくは腫瘍特異抗原に対する標的分子として使用できる。
【0260】
本発明は、また、免疫応答を調節する、すなわち、刺激または阻害する方法を含み、本明細書に記載する修飾された糖脂質または修飾されたセラミド様糖脂質/CD1d複合体等の修飾された糖脂質/タンパク質複合体を動物に有効量投与することも含む。さらなる実施形態では、組成物は、他の病原体または腫瘍特異抗原に由来する異種抗原もしくは標的分子をさらに含み、免疫応答は異種抗原または標的分子に対する免疫応答のプライミングである。
【0261】
ある実施形態では、本発明の方法は、疾患、例えば、感染症または増殖性疾患にかかっている被検者に、本発明の組成物、例えば、本発明の修飾された糖脂質/CD1d複合体を、前記疾患の進行を変化させるのに十分な量で前記被検者に投与することにより前記疾患を治療することを含む。
【0262】
その他の実施形態では、本発明の方法は、疾患、例えば、感染症または増殖性疾患にかかっており、かかる疾患の予防を必要とする被検者において予防することを含み、この予防を、非修飾糖脂質/CD1d複合体(例えば、光反応性基のないもの)を投与した場合に比べて抗原に対する免疫応答が増強されるのに十分な量の本発明の組成物、例えば、本発明の修飾された糖脂質/CD1d複合体を、その予防を必要とする被検者に投与することにより行う。
【0263】
さらなる実施形態では、治療または予防される疾患は、限定されることなく、ウイルス性、細菌性、真菌性、もしくは寄生虫感染症、アレルギーまたは癌などの増殖性疾患または多発性硬化症、糖尿病、またはシェーグレン症候群などの自己免疫性もしくは炎症性疾患であり得る。具体的には、疾患は、例えば、結核、ハンセン病、結核に似た肺疾患、リンパ節炎、皮膚疾患、播種性疾患、腺ペスト、肺ペスト、野兎病、レジオネラ症、炭疽菌(Anthrax))、腸チフス、パラチフス熱、食中毒、リステリア症、マラリア、HIV、SIV、HPV、RSV、インフルエンザ、肝炎(HAV、HBV、およびHCV)であり得る。
【0264】
別の実施形態では、本発明の方法は、被検者の免疫応答を増強させることを含み、本発明の修飾された糖脂質または修飾された糖脂質/タンパク質複合体(例えば、修飾されたセラミド様糖脂質/CD1d複合体)をかかる被検者に投与することを含み、ここで、かかる修飾された糖脂質または修飾された糖脂質/タンパク質複合体を、抗原に対する抗原特異的CD8T細胞応答を増強し、かつ、ナチュラルキラーT(NKT)細胞の活性を増強させるのに十分な量で前記動物に投与する。
【0265】
本明細書で使用する場合、「それを必要とする被検者」とは、疾患、例えば、細菌感染の症状の重症度を治療する、すなわち、予防、治癒、遅滞、または軽減すること、かつ/または特定の期間にわたり疾患の悪化をもたらさないことが望ましい個体をいう。
【0266】
これらの方法によれば、本発明の修飾された糖脂質または修飾された糖脂質/タンパク質複合体(例えば、修飾されたセラミド様糖脂質/CD1d複合体)、組成物、またはワクチン組成物を、疾患の進行を変えるのに十分な量を投与することができる。
【0267】
「免疫化」(ワクチン投与)は広く一般的な方法であり、使用する本発明のワクチンは、本質的に、能動的な免疫学的予防を意図する任意の調製物でよく、非限定的に死菌強毒株の調製物および生菌弱毒株の調製物が含まれる。Stedman's Illustrated Medical Dictionary (24th edition), Williams & Wilkins, Baltimore, p. 1526 (1982)。場合によっては、有効な防御を誘導するためにワクチンを複数回投与しなければならない;例えば、既知の抗毒素ワクチンは複数回投与しなければならない。
【0268】
本明細書で使用する「プライミング」もしくは「一次」および「ブーストする」もしくは「ブースト」という用語は、それぞれ、初回および追加の免疫化をいい、すなわち、これらの用語が免疫学において通常有する定義に従っている。しかし、ある実施形態、例えば、プライミング成分おと追加免疫成分とが単一製剤になっている実施形態では、「プライム」および「ブースト」の両組成物を同時に投与するため初回および追加の免疫化が必要ない場合がある。McShane H, Curr Opin Mol Ther 4(1):13-4 (2002)およびXing Z and Charters TJ, Expert Rev Vaccines 6(4):539-46 (2007)も参照のこと。いずれも参照により本明細書に組み込まれる。
【0269】
ある実施形態では、1つまたは複数の本発明の組成物を「プライム・ブースト」法において用いる。ある実施形態では、1つまたは複数の本発明のワクチン組成物を脊椎動物に送達し、それにより脊椎動物の細菌抗原、例えば、マイコバクテリア抗原または腫瘍抗原に対する免疫応答をプライミングし、その後、第2の免疫原性組成物をブーストワクチン接種として用いる。ある実施形態では、1つまたは複数の本発明のワクチン組成物を脊椎動物に送達し、それにより脊椎動物の異種抗原または標的分子、例えば、修飾されたセラミド様糖脂質/CD1d複合体により担持される異種抗原または標的分子に対する免疫応答をプライミングし、その後、第2の免疫原性組成物をブーストワクチン接種として用いる。別の実施形態では、1つまたは複数の本発明のワクチン組成物を使用して免疫をプライミングし、その後、第2の免疫原性組成物、例えば、組換え型細菌ワクチンまたは腫瘍ワクチンを使用して抗細菌または抗腫瘍免疫応答をブーストする。ワクチン組成物には、本明細書に記載する免疫原性ポリペプチドをコードする1つまたは複数の遺伝子を発現させるために1つまたは複数のベクターを含めることができる。
【0270】
本発明は、脊椎動物において、病原体、例えば、細菌、真菌、ウイルス、もしくは寄生虫病原体、または腫瘍抗原に対する防御的および/または治療的免疫応答を発生、増強させるか、または調節するための方法をさらに提供し、かかる方法は、治療的および/または予防的免疫を必要としている脊椎動物に本明細書に記載の1つまたは複数の修飾された糖脂質、修飾された糖脂質/タンパク質複合体、組成物、またはワクチン組成物を投与することを含む。これらの実施形態のいくつかにおいて、組成物は修飾されたセラミド様糖脂質/CD1d複合体を含む。ある実施形態では、修飾された糖脂質/CD1d複合体は異種抗原または標的分子をさらに含む。
【0271】
ある実施形態では、本発明の修飾された糖脂質、修飾された糖脂質/タンパク質複合体、組成物、またはワクチン組成物を使用すれば、ワクチンに対する有利な応答を得るために必要な用量を減量できる。このことは、局所および全身の毒性を低減し、ワクチンの安全性プロファイルを高めるという大きな利益をもたらすと考えられる。さらに、このことは、低コストで製造できるという利益を考えられ得る。
【0272】
本発明のある実施形態は、セラミド様糖脂質抗原、例えば、細菌細胞壁のNKT細胞に存在する抗原の単独での複数回投与に対するNKT細胞のアネルギー反応を軽減または消失させる方法を含む。α−GalCerを単独で投与するの複数回投与によりNKT細胞が長期間不応答になることがわかっている。α−GalCerなどの修飾された糖脂質を修飾されたセラミド様糖脂質/CD1d複合体の一部として投与する本発明により、NKT細胞はアネルギーから保護され抗原に応答し、複数回投与の際の応答が長期間になり得る。したがって、NKT細胞は、本発明の修飾されたセラミド様糖脂質を負荷した修飾されたセラミド様糖脂質/CD1d複合体を用いた刺激に応答して活性化され、さらには、NKT細胞は、本発明の修飾されたセラミド様糖脂質を負荷した修飾されたセラミド様糖脂質/CD1d複合体による再度の刺激に応答して再び活性化され得る。
【0273】
本発明の方法によれば、本明細書に記載する修飾された糖脂質または修飾された糖脂質/タンパク質複合体(例えば、セラミド様糖脂質抗原/CD1d複合体)を含む組成物を投与して、動物、例えば、脊椎動物、例えば、哺乳類、例えば、ヒトにおける免疫応答を調節する。ある実施形態では、本発明の方法により、例えば、修飾された糖脂質または修飾された糖脂質/タンパク質複合体(例えば、修飾されたセラミド様糖脂質/CD1d複合体)と前後して、または同時に送達された免疫原に対する免疫応答の増強がもたらされる。本発明の修飾された糖脂質または修飾された糖脂質/タンパク質複合体の投与を、例えば、免疫原とともに行うと、免疫細胞、例えば、NKT細胞またはNK細胞からのサイトカイン放出を典型的にもたらし得る。本発明の組成物、またはワクチン組成物の投与に応答して放出されるサイトカインは、例えば、インターフェロンガンマおよびTNF−アルファといった、TH1型免疫応答に関連するサイトカインである。または、もしくは、さらに、本発明の修飾された糖脂質、組成物、またはワクチン組成物の投与は、TH2型免疫応答に関連したサイトカイン、例えば、IL−4、IL−5、IL−10、またはIL−13の放出をもたらし得る。または、もしくは、さらに、本発明の修飾された糖脂質、組成物、またはワクチン組成物の投与は、他のサイトカイン、例えば、IL−2、IL−1β、IL−12、IL−17、IL−23、TNF−β/LT、MCP−2、オンコスタチン−M、およびRANTESの放出をもたらし得る。放出されるサイトカインの種類を調節する方法には、セラミド様糖脂質/CD1dタンパク質複合体のセラミド様糖脂質抗原の種類を変えることが含まれる。さまざまなセラミド様糖脂質抗原を選択し、それらがNKT細胞または他の免疫細胞のサイトカイン放出に及ぼす影響について調べる試験は、本明細書のほかの部分および米国特許出願公開第2006/0052316号(Porcelli)に記載のインビトロアッセイを使用して実施できるほか、当業者に周知のさらなる方法によって実施することができる。本発明の修飾された糖脂質および修飾された糖脂質/タンパク質複合体(例えば、修飾されたセラミド様糖脂質/CD1d複合体)並びにそれを含むワクチン組成物を投与した場合、NKT細胞の増殖が誘導されること、並びに、NK細胞、CTL、他のTリンパ球、例えば、CD8陽性もしくはCD4陽性Tリンパ球、樹状細胞、Bリンパ球などを含むがこれらに限定されない他の免疫細胞および炎症細胞の動員および・または活性化も誘導されることにより、免疫応答がさらに調節される。
【0274】
ある実施形態では、本発明の修飾された糖脂質または修飾された糖脂質/タンパク質複合体およびそれを含む組成物を投与すると、細胞増殖、1つもしくは複数のサイトカイン産生、または、NK細胞、CTL、他のTリンパ球、例えば、CD8陽性もしくはCD4陽性Tリンパ球、樹状細胞、Bリンパ球などを非限定的に含む、NKT細胞以外の免疫系細胞の動員および/または活性化など、これらに限定されない1つまたは複数のNKT細胞活性に影響を与える。
【0275】
いくつかの実施形態では、修飾された糖脂質とは、1型サイトカイン(例えば、IFNγ)誘導の鈍化を伴って、2型サイトカイン、すなわち、抗炎症性作用を有するサイトカイン(例えば、IL−4)をiNKT細胞に誘導する傾向を示す修飾されたセラミド様糖脂質である。このようなセラミド様糖脂質の非限定的な例は、米国特許第7,772,380号および8,022,043号に記載されており、それぞれ、参照することによりその全体が本明細書に取り込まれる。これらの実施形態のいくつかにおいて、セラミド様糖脂質は以下の2構造の1つを有する。
【化40】
【0276】
本発明のある実施形態では、本発明の修飾された糖脂質または修飾された糖脂質/タンパク質複合体(例えば、修飾されたセラミド様糖脂質/CD1d複合体)を、免疫原、例えば、病原体抗原または腫瘍抗原に対する免疫応答を調節するための組換え型ワクチンとして使用し、これを修飾された糖脂質または修飾された糖脂質/タンパク質複合体(例えば、修飾されたセラミド様糖脂質/CD1d複合体)と一緒にまたはその直前または直後に投与する。したがって、本発明は、動物において免疫原に対する免疫応答誘導する方法を提供し、ここで、かかる方法は、それを必要とする動物に、修飾された糖脂質/タンパク質複合体(例えば、修飾されたセラミド様糖脂質/CD1d複合体)に存在する免疫原を含む組成物を投与することを含む。この実施形態によれば、修飾された糖脂質/CD1d複合体(例えば、修飾されたセラミド様糖脂質/CD1d複合体)を含まない免疫原を投与した場合に比べて、免疫原、例えば、細菌病原体または組換え型細菌により発現している免疫原に対する免疫応答が誘導されるために十分な量の修飾された糖脂質/CD1d複合体(例えば、修飾されたセラミド様糖脂質/CD1d複合体)を投与する。ワクチンとして使用するための修飾された糖脂質または修飾された糖脂質/CD1d複合体は、ある実施形態では、特定の器官、組織、細胞または細胞表面マーカーを標的にすることができ、これらは、例えば、米国特許出願公開第2006/0269540号に記載されており、これを参照することによりその全体が本明細書に取り込まれる。
【0277】
ある実施形態では、本発明の修飾された糖脂質または修飾された糖脂質/タンパク質複合体(例えば、修飾されたセラミド様糖脂質/CD1d複合体)またはそれを含む組成物を、治療的ワクチンとして、例えば、すでに疾患に罹患している動物に投与する。これらの方法によれば、本発明の修飾された糖脂質または修飾された糖脂質/タンパク質複合体により誘発される免疫応答は、疾患の症状を軽減するまたは重症度を下げることにより疾患を治療する、例えば、転帰に影響を与える上で有効であり、この修飾された糖脂質または修飾された糖脂質/タンパク質複合体は、修飾された糖脂質/タンパク質複合体を含まない免疫原を投与する場合に比べて、免疫原に対する免疫応答が調節されるために十分な量で投与する。別の方法では、本発明の修飾された糖脂質または修飾された糖脂質/タンパク質複合体(例えば、修飾されたセラミド様糖脂質/CD1d複合体)およびそれを含む組成物を、その動物が将来罹患することが考えられる感染症などの疾患に対する予防的ワクチン、すなわち、予防するまたは症状を軽減するワクチンとして投与する。これらの方法によれば、修飾された糖脂質または修飾された糖脂質/タンパク質複合体(例えば、修飾されたセラミド様糖脂質/CD1d複合体)により誘発される免疫応答は、疾患の症状を軽減するまたは重症度を下げることにより疾患を予防する、例えば、転帰に影響を与える上で有効であり、この修飾された糖脂質または修飾された糖脂質/タンパク質複合体は、修飾された糖脂質または修飾された糖脂質/タンパク質複合体(例えば、修飾されたセラミド様糖脂質/CD1d複合体)を含まない免疫原を投与する場合に比べて、免疫原に対する免疫応答が調節されるために十分な量で投与する。
【0278】
本明細書に記載する方法、修飾された糖脂質、修飾された糖脂質/タンパク質複合体、組成物、またはワクチン組成物は、感染因子(例えば、異種抗原または標的分子、例えば、ウイルス抗原、細菌抗原、真菌抗原、または寄生虫抗原を含む修飾された糖脂質/タンパク質複合体)に対する免疫応答を高めるためにも有用である。本発明の修飾された糖脂質、修飾された糖脂質/タンパク質複合体、組成物、もしくはワクチン組成物で治療が可能な疾患または症状を引き起こす感染因子には、ウイルス性、細菌性、真菌性、および寄生虫因子が含まれるが、これらに限定されない。ウイルス例には、限定されることなく、以下のDNAおよびRNAウイルスファミリーが含まれる:アルボウイルス、アデノウイルス科、アレナウイルス科、アルテリウイルス科、ビルナウイルス科、ブニヤウイルス科、カリチウイルス科、サーコウイルス科、コロナウイルス科、フラビウイルス科、ヘパドナウイルス科(肝炎)、ヘルペスウイルス科(サイトメガロウイルス、単純ヘルペス、帯状疱疹など)、モノネガウイルス(例えば、パラミクソウイルス科、モルビリウイルス、ラブドウイルス科)、オルトミクソウイルス科(例えば、インフルエンザ)、パポーバウイルス科、パルボウイルス科、ピコルナウイルス科、ポックスウイルス科(天然痘またはワクシニアなど)、レオウイルス科(例えば、ロタウイルス)、レトロウイルス科(HTLV−I、HTLV−II、レンチウイルス)、およびトガウイルス科(例えば、ルビウイルス属)。これらのファミリーに入るウイルスは、限定されることなく、以下のような種々の疾患または症状を引き起こし得る:関節炎、細気管支炎、脳炎、眼感染症(例えば、結膜炎、角膜炎)、慢性疲労症候群、肝炎(A、B、C、E、慢性活動性、デルタ)、髄膜炎、日和見感染症(例えば、AIDS)、肺炎、バーキットリンパ腫、水痘、出血熱、麻疹、流行性耳下腺炎、パラインフルエンザ、狂犬病、感冒、ポリオ、白血病、風疹、性感染症、皮膚疾患(例えば、カポジ肉腫、疣贅)、およびウイルス血症。
【0279】
同様に、疾患または症状を引き起こしうる細菌性または真菌性因子を、本発明の方法、修飾された糖脂質、修飾された糖脂質/タンパク質複合体、組成物、またはワクチン組成物により治療または予防することができる。これらには、限定されることなく、以下のグラム陰性およびグラム陽性細菌科並びに真菌が含まれる:放線菌目(Actinomycetales)(例えば、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、マイコバクテリウム属(Mycobacterium)、ノカルジア属(Norcardia))、アスペルギルス症、バチルス科(Bacillaceae)(例えば、炭疽菌(Anthrax))、クロストリジウム属(Clostridium))、バクテロイデス科(Bacteroidaceae)、醸母菌症(Blastomycosis)、百日咳菌(Bordetella)、ボレリア(Borrelia)、ブルセラ症(Brucellosis)、カンジダ症(Candidiasis)、カンピロバクター属(Campylobacter)、コクシジオイデス症(Coccidioidomycosis)、クリプトコッカス症(Cryptococcosis)、皮膚真菌症(Dermatocycoses)、腸内細菌科(Enterobacteriaceae)(クレブシエラ属(Klebsiella)、サルモネラ(Salmonella)、セラチア属(Serratia)、エルシニア(Yersinia))、エリジペロスリックス属(Erysipelothrix)、ヘリコバクター属(Helicobacter)、レジオネラ症(Legionellosis)、レプトスピラ症(Leptospirosis)、リステリア(Listeria)、マイコプラズマ目(Mycoplasmatales)、ナイセリア科(Neisseriaceae)(例えば、アシネトバクター属(Acinetobacter)、淋病(Gonorrhea)、髄膜炎(Menigococcal))、パスツレラ科感染症(Pasteurellacea Infections)(例えば、アクチノバチルス属(Actinobacillus)、ヘモフィルス属(Heamophilus)、パスツレラ属(Pasteurella))、シュードモナス(Pseudomonas)、リケッチア科(Rickettsiaceae)、クラミジア科(Chlamydiaceae)、梅毒(Syphilis)、およびブドウ球菌(Staphylococcus)。これらの細菌科または真菌科は、限定されることなく、以下の疾患または症状を引き起こし得る:菌血症、心内膜炎、眼感染症(結膜炎、結核、ブドウ膜炎)、歯肉炎、日和見感染症(例えば、AIDS関連感染症)、爪周囲炎、人工器官関連感染症、ライター病、百日咳または蓄膿症などの気道感染症、敗血症、ライム病、猫ひっかき病、赤痢、パラチフス熱、食中毒、腸チフス、肺炎、淋病、髄膜炎、クラミジア、梅毒、ジフテリア、ライ病、副結核、結核、ハンセン病、結核に似た肺疾患、リンパ節炎、皮膚疾患、播種性疾患、狼瘡、ボツリヌス中毒症、壊疽、破傷風、膿痂疹、リウマチ熱、猩紅熱、性感染症、皮膚疾患(例えば、蜂巣炎、皮膚真菌症)、毒血症、尿路感染症、創傷感染症。
【0280】
さらに、本発明の方法、修飾された糖脂質、修飾された糖脂質/タンパク質複合体、組成物、またはワクチン組成物を使用して、寄生虫因子に起因する疾患を治療または予防することができる。本発明の化合物で治療可能なものには、以下の群が含まれるが、これらに限定されない:アメーバ症、バベシア症、コクシジウム症、クリプトスポリジウム症、二核アメーバ症、媾疫、外部寄生虫症、ジアルジア症、蠕虫病、リーシュマニア症、タイレリア症、トキソプラズマ症、トリパノソーマ症、およびトリコモナス症。
【0281】
開示の方法によれば、本発明の方法に使用するための修飾された糖脂質、修飾された糖脂質/タンパク質複合体、組成物、またはワクチン組成物は、例えば、筋肉内(i.m.)、静脈内(i.v.)、皮下(s.c.)、または肺内経路により投与することができる。他の好適な投与経路には、気管内、経皮的、眼内、経鼻、吸入、腔内、管内(例えば、膵臓への)、および実質内(すなわち、任意の組織への)投与が含まれるが、これらに限定されない。経皮的送達には、皮内(例えば、真皮または表皮内)、経皮(transdermal)(例えば、経皮(percutaneous))および経粘膜投与(すなわち、皮膚または粘膜組織内への、または経由の投与)が含まれるが、これらに限定されない。腔内投与には、腔内投与には、口、膣、直腸、鼻、腹膜、または腸腔への投与、ならびにくも膜下腔内(すなわち、脊柱管への)、室内(すなわち、脳室または心室への)、心房内(すなわち、心房への)およびくも膜下(すなわち、脳のくも膜下腔への)投与が含まれるが、これらに限定されない。
【0282】
本発明の組成物は好適な担体をさらに含む。このような組成物は、治療上有効な量の修飾された糖脂質または修飾された糖脂質/タンパク質複合体および薬理学的に許容される担体または賦形剤を含む。このような担体には、生理食塩水、緩衝生理食塩水、デキストロース、水、グリセロール、エタノール、およびそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。製剤は投与方法に適しているべきである。
【0283】
用語「薬理学的に許容される」とは、正しい医学的判断の範囲内で、過渡の毒性などの合併症がなく、ヒトまたは動物の組織に接触させるのに好適であり、妥当な利益/リスクの度合いに見合った組成物をいう。いくつかの実施形態では、本発明の組成物およびワクチンは、薬理学的に許容される。
【0284】
本発明の修飾された糖脂質または修飾された糖脂質/タンパク質複合体(例えば、修飾されたセラミド様糖脂質/CD1d複合体)は、一つまたは複数の薬理学的に許容される賦形剤、担体、または希釈剤と組み合わせて、医薬組成物、例えば、ワクチン組成物にして投与することができる。ある実施形態では、医薬組成物、例えば、本発明のワクチン組成物は、異種抗原または標的分子をさらに含む。ヒト患者に投与する場合、本発明の医薬組成物の1回または1日の全使用量は、正しい医学的判断の範囲内で主治医によって決定されることが理解されよう。任意の特定の患者に対する具体的な治療上有効な用量レベルは、達成される応答の種類および程度;別の薬剤を使用する場合は、その具体的組成;患者の年齢、体重、全体的健康状態、性別、および食事;投与の時間、投与経路、および組成物の排泄速度;治療期間;特定の組成物と組み合わせてまたは同時に使用する薬物(化学療法剤など);ならびに医療分野において周知の同様の因子を含む、様々な因子に依存することになる。当技術分野において公知の好適な製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences (latest edition), Mack Publishing Company, Easton, PAに記載されている。。
【0285】
所与の予防または治療処置において使用する組成物は、個々の患者の臨床状態(特に化合物単体での予防または治療の副作用)、化合物の送達部位、投与方法、投与計画などの開業医に公知の因子を考慮に入れて、適切な医療行為を行うための基準に従った方法で製剤化および用量決定を行うことになるしたがって、本明細書における目的のための本発明の化合物の「有効量」は、そのようなことを考慮して決定される。
【0286】
患者に投与する本発明の組成物、例えば、ワクチン組成物の適切な用量は、医師が決定することになる。しかしながら、指標として、本発明の組成物の好適な量は、0.05〜0.1mlの免疫学的に不活性な担体、例えば、医薬担体に懸濁して、1回の投与につき約10
1〜10
12CFUの間、例えば、10
1、10
2、10
3、10
4、10
5、10
6、10
7、10
8、10
9、10
10、10
11、または10
12CFUであり得る。ある実施形態では、本明細書に記載の、疾患を予防または治療する、すなわち、治癒、改善、その重症度を低減、または予防もしくは軽減するのに十分な免疫を誘導するための、本発明のワクチンの有効量は、体重1kgあたり約10
3〜約10
7コロニー形成単位(CFU)/kgである。本発明の組成物は、単回投与または複数回投与でとして投与することができる。本発明のワクチン製剤は、経口投与用のカプセル、溶液、懸濁液、もしくはエリキシル剤などの剤形で、または、例えば、非経口、経鼻もしくは局所投与用の溶液もしくは懸濁液などの製剤のための無菌液で用いることができる。
【0287】
本発明の組成物は、経口、静脈内、直腸、非経口、槽内、皮内、腟内、腹腔内、局所(粉末、軟膏、ゲル、クリーム、滴剤もしくは経皮パッチのように)、口腔、または経口もしくは鼻噴霧で投与することができる。本明細書で使用する「非経口」という用語は、静脈内、筋肉内、腹腔内、胸骨内、皮下、および関節内への注射および注入を含む投与方法を意味する。
【0288】
本発明の組成物、例えば、ワクチン組成物は、公知の方法に従って製剤化することができる。好適な調製方法は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 16th Edition, A. Osol, ed., Mack Publishing Co., Easton, PA (1980)、およびRemington’s Pharmaceutical Sciences, 19th Edition, A.R. Gennaro, ed., Mack Publishing Co., Easton, PA (1995)に記載されており、これらはいずれも、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。組成物は水溶液として投与することができるが、乳剤、ゲル、溶液、懸濁液、凍結乾燥形態、または当技術分野で公知の任意の他の形態で投与することもできる。さらに、組成物は、例えば、希釈剤、結合剤、安定剤、および保存剤を含む、薬理学的に許容される添加物を含有することができる。一旦製剤化すれば、本発明の組成物を被験者に直接投与することができる。治療対象となる被験者は動物でよく、特に、ヒト被験者を治療することができる。
【0289】
本発明の組成物は、通常、水溶液として、または再調製用の凍結乾燥製剤として、単位用量または複数回用量で、例えば、密封したアンプルまたはバイアルに保存されることになる。直接取り込まれた糖脂質アジュバントを含むマイコバクテリア組成物を凍結乾燥することができ、組成物を注射のために再水和および懸濁すると、そのアジュバント活性が完全なまま回復する。凍結乾燥製剤の一例として、10mlバイアルに、滅菌ろ過1%(w/v)水溶液5mlを入れ、得られた混合物を凍結乾燥する。注入溶液は、凍結乾燥組成物を水、例えば、静菌性の注射用水を用いて再調製することにより調製する。
【0290】
本発明は、1つまたは複数の本発明の医薬組成物成分が入った1つまたは複数の容器を含む薬学的パックもしくはキットも提供する。そのような容器に付随するのは、医薬品または生物学的製品の製造、使用、または販売を規制している政府機関によって定められた形式の通知であってよく、この通知はヒトへの投与のための製造、使用、または販売に関する政府機関による承認を反映する。さらに、本発明の組成物は、他の治療的組成物と併用することができる。
【0291】
このような組成物の好適な調製物には、非限定的に、液剤または懸濁液のいずれかとしての注射用物質、注射前に液体に溶解または懸濁するのに適した固体形態が含まれ、これらの調製も可能である。調製物は、乳化してもよく、またはリポソームに封入したポリペプチドであってもよい。有効成分は、薬理学的に許容され、かつ、有効成分と適合性のある賦形剤と混合することが多い。好適な賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール等、およびその組み合わせ。さらに、所望であれば、調製物は、湿潤剤もしくは乳化剤、pH緩衝剤、および/または有効成分の有効性を増強するアジュバントなどの、少量の助剤を含むこともできる。
【0292】
所望であれば、組成物に少量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤を含有させてもよい。組成物は、溶液、懸濁液、乳剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、持効性製剤、または粉末であり得る。経口製剤は、製薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの標準的な担体などを含む。
【0293】
本発明の実施には、特に明記しない限り、細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学、微生物学、組換えDNA、および免疫学の従来の技術を使用し、これらは当技術分野の技術の範囲内である。そのような技術は、文献に十分に説明されている。例えば、Molecular Cloning A Laboratory Manual, 2nd Ed., Sambrook et al., ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press: (1989);Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Sambrook et al., ed., Cold Springs Harbor Laboratory, New York (1992), DNA Cloning, D. N. Glover ed., Volumes I and II (1985);Oligonucleotide Synthesis, M. J. Gait ed., (1984);Mullis et al. U.S. Pat. No: 4,683,195;Nucleic Acid Hybridization, B. D. Hames & S. J. Higgins eds. (1984);Transcription And Translation, B. D. Hames & S. J. Higgins eds. (1984);Culture Of Animal Cells, R. I. Freshney, Alan R. Liss, Inc., (1987);Immobilized Cells And Enzymes, IRL Press, (1986);B. Perbal, A Practical Guide To Molecular Cloning (1984);the treatise, Methods In Enzymology, Academic Press, Inc., N.Y.;Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells, J. H. Miller and M. P. Calos eds., Cold Spring Harbor Laboratory (1987);Methods In Enzymology, Vols. 154 and 155 (Wu et al. eds.);Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology, Mayer and Walker, eds., Academic Press, London (1987);Handbook Of Experimental Immunology, Volumes I-IV, D. M. Weir and C. C. Blackwell, eds., (1986);Manipulating the Mouse Embryo, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., (1986);およびAusubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley and Sons, Baltimore, Maryland (1989)を参照のこと。
【0294】
抗体工学の一般的な原理は、Antibody Engineering, 2nd edition, C.A.K. Borrebaeck, Ed., Oxford Univ. Press (1995)に記載されている。タンパク質工学は、Protein Engineering, A Practical Approach, Rickwood, D., et al., Eds., IRL Press at Oxford Univ. Press, Oxford, Eng. (1995)に記載されている抗体および抗体−ハプテン結合の一般的な原理は、Nisonoff, A., Molecular Immunology, 2nd ed., Sinauer Associates, Sunderland, MA (1984);およびSteward, M.W., Antibodies, Their Structure and Function, Chapman and Hall, New York, NY (1984)に記載されている。さらに、当技術分野において公知であり、具体的に記載がない免疫学における標準的な方法は、一般に、Current Protocols in Immunology, John Wiley & Sons, New York;Stites et al. (eds) , Basic and Clinical -Immunology (8th ed.), Appleton & Lange, Norwalk, CT (1994)およびMishell and Shiigi (eds), Selected Methods in Cellular Immunology, W.H. Freeman and Co., New York (1980)の記載に従う。
【0295】
免疫学の一般的な原理を記載している参考文献資料には、Current Protocols in Immunology, John Wiley & Sons, New York;Klein, J., Immunology: The Science of Self-Nonself Discrimination, John Wiley & Sons, New York (1982);Kennett, R., et al., eds., Monoclonal Antibodies, Hybridoma: A New Dimension in Biological Analyses, Plenum Press, New York (1980);Campbell, A., “Monoclonal Antibody Technology” in Burden, R., et al., eds., Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology, Vol. 13, Elsevere, Amsterdam (1984), Kuby Immunnology 4th ed. Ed. Richard A. Goldsby, Thomas J. Kindt and Barbara A. Osborne, H. Freemand & Co. (2000);Roitt, I., Brostoff, J. and Male D., Immunology 6th ed. London: Mosby (2001);Abbas A., Abul, A. and Lichtman, A., Cellular and Molecular Immunology Ed. 5, Elsevier Health Sciences Division (2005);Kontermann and Dubel, Antibody Engineering, Springer Verlan (2001);Sambrook and Russell, Molecular Cloning: A Laboratory Manual. Cold Spring Harbor Press (2001);Lewin, Genes VIII, Prentice Hall (2003);Harlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press (1988);Dieffenbach and Dveksler, PCR Primer Cold Spring Harbor Press (2003)が含まれる。
【0296】
上記で引用したすべての参考文献、並びに本明細書で引用したすべての参考文献は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0297】
本明細書で使用するすべての技術的及び科学的用語は、同様の意味を持つ。使用する数字に関し、正確さを保証するべく試みがなされた(例えば、量、温度など)が、一部の実験上の誤差及び偏差は考慮されるべきである。。「1つの(a)」または「1つの(an)」実体という用語は、その実体の1つまたは複数を言うことに留意されるべきで、例えば、「タンパク質(a protein)」は1つまたは複数のタンパク質を表すと理解される。したがって、「1つの(a)」(または「1つの(an)」)、「1つまたは複数の」、および「少なくとも1つの」という用語は、本明細書では同じ意味で使用され得る。
【0298】
本明細書および請求項全体を通して、「を含む(comprise)」、「を含む(comprises)」、および「を含む(comprising)」という語は、文脈において特に指定がない限り、非排他的な意味で使用される。
【0299】
本明細書で使用する場合、「約」という用語は、ある値をいう場合、指定された量に対し、いくつかの実施形態では±50%、いくつかの実施形態では±20%、いくつかの実施形態では±10%、いくつかの実施形態では±5%、いくつかの実施形態では±1%、いくつかの実施形態では±0.5%、および、いくつかの実施形態では±0.1%といった変動が包含され、そのよな変動は、開示の方法を実施するまたは開示の組成物を使用するために適切であることを意味する.
【0300】
値の範囲が提供される場合、文脈で特に明確な指示がない限り、その範囲の上限値と下限値の間に介在する、下限値の10分の1単位までの、各数値、およびそこで述べられている範囲の他の任意の記載値または介在する値は本発明に包含される。これらの小さい範囲の上限値および下限値は、独立して、その小さいほうに含まれてもよく、その範囲において具体的に除外されない限り、それらもまた本発明の範囲内に包含される。。記載された範囲が制限値の1つまたは両方を含む場合、その含まれた制限値のいずれかまたは両方を除外した範囲もまた、本発明に含まれる。
【実施例】
【0301】
実施例1
αGalCer−ベンゾフェノン誘導体の合成
【0302】
α−GalCer−ベンゾフェノン誘導体を合成するための基本スキームを
図1に示す。
【0303】
工程a:モノアルキル化手順の一般的方法。
無水DMF(40mL)に入れたジオール低温溶液(10mmol、4.0eq)に、水素化ナトリウム(10mmol、4.0eq)を0℃にて少しずつ加え、この混合物を30分間攪拌した。次いで、DMF(20mL)に入れた3−ブロモメチル−フェニル−メタノン1(2.5mmol、1.0eq)溶液を滴下した。反応混合物を室温にて一晩攪拌した後、水(100mL)に取り出した。得られた混合物を、その後、CH2Cl2(3×30mL)で抽出した。合わせた有機層を飽和食塩水(30mL)で洗浄して無水Na
2SO
4で乾燥し、減圧濃縮した。その後、残渣を、ヘキサン:酢酸エチル(5:1)を溶離液としてを用いたフラッシュクロマトグラフィーで精製した。
【0304】
工程b:モノアルキル化ベンゾフェノンアルコール誘導体を対応するカルボン酸に酸化させるための一般的方法。
上記で得たモノアルキル化ベンゾフェノン誘導体(1mmol)をTHF(20mL)に溶解させ、重クロム酸ピリジニウム(PDC)(3mmol、3eq)を加えた。反応混合物を室温にて48時間攪拌した後、水(20mL)に取り出した。得られた混合物を、その後、CH2Cl2(3×30mL)で抽出した。合わせた有機層を飽和食塩水(30mL)で洗浄して無水Na
2SO
4で乾燥し、減圧濃縮した。その後、残渣を、10%メタノール入りクロロホルムを溶離液として用いたフラッシュクロマトグラフィーで精製した。
【0305】
工程a’:3−(ヒドロキシメチル)ベンゾフェノン
3−(ヒドロキシメチル)ベンゾフェノン(10mmol)を3−(ブロモメチル)ベンゾフェノン(12mmol)から得るに際し、報告された文献に記載のとおり、後者をCaCO
3の存在下、混合物THF:H
2O(1:1)内で還流させることにより行った。
【0306】
工程b’:ブロモ酸との反応。
DMF(10ml)とヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)(1ml)との混合物に入れた3−(ヒドロキシメチル)ベンゾフェノン(1mmol、1eq)低温溶液に水素化ナトリウム(NaH)(鉱油中60%)(1.2mmol、1.2eq)を0℃にて少しずつ加えた。反応混合物を20分間攪拌してから、DMF(5ml)に溶解させたブロモ酸[n=5、6、9](1.2mmol、1.2eq)それぞれを滴下した。反応物を室温にて一晩放置し、メタノールを使用して過剰のNaHの反応を停止させた。その後、反応物を水(50mL)に取り出し、酢酸エチル(3×40ml)で抽出した。合わせた有機層を飽和食塩水(30mL)で洗浄して無水Na
2SO
4で乾燥し、減圧濃縮した。その後、残渣を、10%メタノール入りクロロホルムを溶離液として用いたフラッシュクロマトグラフィーで精製した。
【0307】
工程c:酸塩化物の形成
工程bおよびb’(0.5mmol)から得られたベンゾフェノンカルボン酸誘導体を、未希釈塩化オキサリル(1mL)に加えて70℃にて2時間撹拌し、その後、溶液が室温まで冷却されてから、アルゴン流下で未反応の塩化オキサリルを除去した。残留揮発性成分を減圧下で除去した。
【0308】
工程d:化合物DB11−1(n=4)、DB12−6(n=6)、DB12−7(n=7)、DB11−2(n=8)、DB12−8(n=9)、DB12−9(n=10)、DB11−3(n=14)の合成
上記で得られた粗カルボン酸塩化物をTHF(1mL)に溶解させ、THF/NaOAc(sat)(1:1、1mL)のアミン溶液(0.5mmol、1eq)に加えた。反応物を一晩激しく撹拌し、その後、有機相を除去した。水相をさらにTHF(2×1mL)で抽出し、合わせた有機相を濃縮した。最後に、残渣をフラッシュクロマトグラフィー(勾配:CHCl
3中HCl
3〜20%MeOH)で精製しアシル化された標的化合物を得た。
【0309】
実施例2
αGalCer−ベンゾフェノン/CD1d複合体の合成
【0310】
α−GalCer−ベンゾフェノン誘導体を合成するための基本スキームを
図2に示す。
【0311】
一般に、可溶性組換え型マウスCD1d(mCD1d)をPBS pH7.2に希釈して400μg/mlとした。糖脂質(すなわち、アルファ−ガラクトシルセラミドのベンゾフェノン誘導体)を100%DMSOに溶解させて最終濃度1mg/mlを得た後、0.1%Triton X-100を含有するPBSに希釈して200μMとした。その後、糖脂質懸濁液を80℃まで5分間加熱し、ボルテックスによる撹拌を30秒間行い、水浴超音波発生装置で5分間超音波処理して、最後に、ボルテックスによる撹拌を30秒間行った。次いで、等容量のCD1dおよび糖脂質のストックを加えて最終濃度200μg/ml CD1d(約4μM)、100μM糖脂質および0.05%TritonX−100とし、これを一晩(16時間)室温にてインキュベートした。CD1d複合体を低結合性96ウェルプレート(100μl/ウェル)に移し、タンパク質をリガンド結合部位に存在する糖脂質に共有結合させた。λ365(固定)を発生する長波長UVランプ(Schleider & Schuell)を試料から1インチ上方の高さに置き、複合体に1時間氷上で照射した。最終結果として、CD1dタンパク質はαGalCer−ベンゾフェノン糖脂質に共有結合させられる。
【0312】
実施例3
糖脂質リガンドの有無によるmCD1dのトリプトファン蛍光スペクトル
【0313】
糖脂質結合がマウスCD1dに及ぼす作用を調べた。糖脂質結合によるmCD1dの蛍光消光をHoribo Jobin Yvon製蛍光分光光度計Fluoromax−3を使用して測定し、そのデータをFluorEssenceソフトウェアを用いて解析した。タンパク質(0.1μM)を糖脂質抗原(4μM)またはリガンドビヒクルいずれかと1cm幅の石英キュベット内で混合して最終容積100μlとし、すでに25℃に設定してある分光計に置いた。試料をλ
295で励起し発光をλ
290からλ
400まで測定した。最大蛍光発光波長の変化は観察されなかったが、すべての糖脂質がさまざまなレベルで蛍光消光を引き起こし、リガンド結合により観察可能な構造的変化がCD1dにもたらされたことを示している。
【0314】
結果を
図3に示す。これらの結果は、DB12−7が、他のベンゾフェノン−修飾された糖脂質(BPGC)に比して最も大きな消光を誘導したことを示しており、この糖脂質の結合親和性が他の被験糖脂質に比して高いことを示唆している。このことは、DB12−7はこの群で最も強力な結合リガンドであることを指してはいるが、この解析で、これらの糖脂質の結合により形成された複合体が、iNKT細胞抗原受容体によって認識されるための適切な構造をとり、適切な生物活性になるかどうかの資料を提供するものではない。
【0315】
実施例4
NKT細胞の活性化(mCD1dを発現しているDC使用)
【0316】
活性化されたナチュラルキラー細胞を、IL−2を分泌する細胞をもとに計算した。具体的には、C57BL/6マウス(100μl培地中10,000細胞)の骨髄由来樹状細胞(BMDC)を96ウェル組織培養プレートのウェルに置き、37℃にて30分間プレートに接着させた。その後、培養物を100μl中5〜0.01μg/mlの範囲のさまざまな濃度のBPGCに37℃にて3時間暴露した。BMDCに取り込まれなかった糖脂質を培地で洗浄して除去した。CD1dによるBPGC提示を検出するため、iNKTハイブリドーマDN3A4−1.2(容積100μl中5000細胞)を加え、37℃18時間のインキュベーション後、上清内のIL−2分泌レベルで刺激を検出した。
【0317】
結果を
図4に示す。これらの結果から、0.1μg/mlの低濃度でDB11−2が最も有効にiNKTを刺激し、本アッセイの生物活性という点では、この糖脂質群で最も強力であることがわかる。DB12−7はそれより低いものの、やはり有意なIL−2分泌を誘導した。
【0318】
実施例5
NKT細胞の活性化(hCD1dを発現しているHeLa細胞使用)
【0319】
活性化されたナチュラルキラー細胞を、IL−2を分泌する細胞をもとに再び計算した。具体的には、プレートに結合したヒトCD1dトランスフェクトHeLa細胞(100μl培地中10,000細胞)を96ウェル組織培養プレートに置き、37℃にて30分間プレートに接着させた。接着HeLa細胞を100μl中5〜0.01μg/mlの範囲のさまざまな濃度のBPGCで37℃にて3時間処理した。糖脂質に取り込まれなかった細胞を培地で洗浄して除去した。CD1dによるBPGC提示を検出するため、iNKTハイブリドーマDN3A4−1.2(容積100μl中5000細胞)を加え、37℃18時間のインキュベーション後、上清内のIL−2分泌レベルで刺激を検出した。
【0320】
結果を
図5に示す。これらの結果から、DB11−2およびDB12−8はヒトCD1dにより提示された場合はiNKT細胞に刺激性であり、これらは0.1μg/mlという低濃度で有効に提示されたことが確認された。
【0321】
実施例6
UV活性化の有無による、プレート結合mCD1dのリガンド結合親和性の検出(mAb L363を用いたELISAによる)
【0322】
マウスのCD1d/αGalCer複合体を検出するため、プレート結合mCD1dのリガンド結合親和性をmAb L363を用いたELISAで測定した。ELISAプレートを、PBS pH8.2中4℃にてmCD1d(10μg/ml、30μl/ウェル)で一晩コーティングした。その後、上清を、結合しなかったタンパク質とともに除去した。糖脂質(5μM、30μl/ウェル)を負荷し25℃にて一晩インキュベートした。上清を再び除去し、複合体をPBSで3回洗浄して結合しなかった糖脂質を除去した。UV活性化を受けた複合体について、溶液(30μl/ウェルPBS)中、UVランプの波長を365nmに固定してUVクロスリンクを実施した(RAD-FREE長波長UVランプ、Schleicher & Schuell)。UVランプを試料から1インチ離して置き、試料を氷上に1時間乗せた。次いで、UV活性化を受けた複合体と受けなかった複合体とを3日間解離させ(i.上清を除去し、PBS200μl+0.05%Triton X-100(PBS−Tx)を加える;ii.25℃にて1日インキュベートする;iii.工程iおよびiiをさらに2回繰り返す)、次いで、ELISAを実施してmAb L363の結合を定量した。
【0323】
結果を
図6A−6Bに示す。CD1d親和性を示したすべての糖脂質およびその複合体は、L363を用いたELISAを使用して検出できよう。プレート結合CD1d:GC複合体をPBS−Tx中で3日間インキュベートした結果、UVを照射せずにクロスリンクさせなかった糖脂質リガンドは有意に解離したが(
図6A)、UVでクロスリンクさせたBPGCは解離しなかった(
図6B)。KRN7000および7DW8−5はUV活性化可能な基を有していないため、これらはいずれもUV暴露に関係なく3日後に解離した。これらの結果から、DB12−8、DB11−2およびDB12−9は本アッセイにおいて免疫反応性複合体形成レベルが最も高く、また、これらの複合体は、UV暴露後に有意な解離を示さなかったことがわかる。
【0324】
実施例7
UV活性化の有無による、プレート結合mCD1dのリガンド結合親和性の検出(iNKT DN3A4−1.2ハイブリドーマ刺激アッセイ)
【0325】
プレート結合mCD1dのリガンド結合親和性をiNKT DN3A4−1.2ハイブリドーマ刺激アッセイ(hybridoma stimulation assay)により検出した。mCD1d(10μg/ml)に糖脂質(5μM)を25℃にて一晩負荷した。ELISAプレートをmCD1d:GC複合体(2.5μg/ml、30μl/ウェル)で4℃12〜18時間PBS pH8.2中でコーティングした。その後、上清を除去し、複合体をPBSで3回洗浄して結合しなかった糖脂質およびタンパク質を除去した。UV活性化を受けた複合体について、溶液(30μl/ウェルPBS)中、UVランプの波長を365nmに固定してUVクロスリンクを実施した(RAD-FREE長波長UVランプ、Schleicher & Schuell)。UVランプを試料から1インチ離して置き、試料を氷上に1時間乗せた。その後、上清を除去し、複合体をPBSで3回洗浄して結合しなかった糖脂質およびタンパク質を除去した。次いで、UV活性化を受けた複合体と受けなかった複合体とを3日間解離させ(i.残留液体をもれなくウェルから除去し、1ウェルにつき200μlのPBS+0.05%Triton X-100を加える;ii.25℃にて24時間インキュベートする;iii.工程iおよびiiをさらに2回繰り返す)。その後、iNKTハイブリドーマDN3A4−1.2細胞(約30,000細胞)を加え、37℃で24時間インキュベートする。複合体のiNKT刺激活性をIL−2のELISAによりiNKTからの分泌を測定した。
【0326】
解離後、予想通り7DW8−5はiNKTを刺激しなかったが、クロスリンクさせなかったmCD1dとDB12−7、DB11−2、DB12−8およびDB12−9との複合体は、解離させた後でも低くはあるがiNKT刺激を少し示した。これは、おそらくこれらの糖脂質の結合親和性が高いために解離が完全ではなかったためであろう。
【0327】
結果を
図7A−7Bに示す。UVクロスリンク後のiNKT刺激アッセイの結果から、DB12−8はCD1dに効果的に結合したことのみならず、他の糖脂質より良好にiNKTハイブリドーマを刺激したことも示している。DB11−2はiNKTハイブリドーマDN3A4−1.2の刺激物質として2番めに最良であることがここでも確認された。
【0328】
実施例8
mCD1dとの複合体におけるDB12−8および7DW8−5の直接比較(L363 ELISAで検出)
【0329】
可溶性組換え型mCD1dタンパク質(10μg/ml)に糖脂質(5μM)を25℃にて一晩0.05%チロキサポール含有pH8.2PBS中で負荷した。mCD1d:GC複合体(10μg/ml、30μl/ウェル)を高結合性ELISAプレート上で、4℃にて一晩コーティングした。実施例6および7に記載のとおりUV暴露およびインキュベーションを行い3日にわたり解離させた。
【0330】
結果を
図8A−8Bに示す。DB12−8および7DW8−5ともに、CD1dに対する親和性を示し、その複合体は、L363を用いたELISAを使用して検出できよう。3日間の長時間解離をさせたことにより、UV暴露に関係なく7DW8−5のシグナルがほぼ完全に消失した。DB12−8もほぼ完全に解離したが、UV照射によるクロスリンクをしていないものに限られ、365nmのUV暴露を受けたものはmCD1d:DB12−8複合体と共有結合的にカップリングしたため、この場合は解離は観察されなかった。
【0331】
実施例9
mCD1d.CEA融合タンパク質との複合体におけるDB12−8および7DW8−5の直接比較(L363 ELISAで検出)
【0332】
mCD1d.CEA(10μg/ml)は、腫瘍関連抗原CEAに特異的である一本鎖Fv抗体断片と遺伝子操作により融合させた組換え型mCD1dタンパク質であり、これに糖脂質(5μM)を25℃にて一晩0.05%チロキサポール含有pH8.2PBS中で負荷した。mCD1d.CEA:GC複合体(10μg/ml、30μl/ウェル)を高結合性ELISA96ウェルプレートのウェル上に4℃にて一晩コーティングした。実施例6および7に記載のとおりUV暴露およびインキュベーションを行い3日間にわたり解離させた。
【0333】
結果を
図9A−9Bに示す。DB12−8および7DW8−5ともに、CD1dに対する親和性を示し、L363を用いたELISAを使用して検出できよう。3日間の長時間解離をさせたことにより、ほぼ完全なUV暴露に関係なく7DW8−5のシグナルが消失した。DB12−8もほぼ完全に解離したが、UV照射によるクロスリンクをしていないものに限られ、365nmのUV暴露を受けたものはmCD1d.CEA−DB12−8複合体と共有結合的にカップリングしたため、この場合は解離は観察されなかった。結果から、DB12−8のシグナルはUV−クロスリンク後有意に増加することが示される。
【0334】
タンパク質および糖脂質の濃度を10倍高くして溶液中の複合体形成のスケールアップを実施した。その結果を
図9C〜9Dに示す。mCD1d.CEA(100μg/ml)にDB12−8(50μMそれぞれ)を25℃にて一晩0.05%チロキサポール含有pH8.2PBS中で負荷した。DB12−8:mCD1d.CEA複合体を10μg/mlまで希釈し、高結合性ELISAプレート(30μl/ウェル)上に4℃にて一晩をコーティングした。実施例6および7に記載のとおりUV暴露およびインキュベーションを行い3日間にわたり解離させた。
【0335】
クロスリンクさせなかった複合体を3日間インキュベーションしたところ、OD
450が約75%低下したが、UVでクロスリンクさせた試料は3日後OD
450に検出可能な低下は見られなかった。
【0336】
実施例10
非共有結合的にαGalCerを負荷したsCD1d抗CEAまたはDB12−8とUVクロスリンクさせたsCD1d抗CEAを注射後のインビボにおけるサイトカイン放出直接比較
【0337】
インターフェロンγ(IFNg)およびインターロイキン2(IL−2)の動態および程度について、マウス3匹からなる各群の血清中サイトカイン放出を、生理食塩水またはsCD1d抗CEAに非共有結合的に負荷したαGalCerもしくはUVクロスリンクさせたDB12−8:sCD1d抗CEA複合体いずれか30μgを注射してから2、10および24時間後に測定した。sCD1d抗CEAと共有結合したDB12−8複合体は、IFNgおよびIL−2の放出誘導において、非共有結合的に負荷した融合タンパク質の約2倍高い。
図10に示されるように、共有結合の融合タンパク質によりIFNg放出時間が長くなる。
【0338】
実施例11
iNKT細胞をsCD1d抗CEA融合タンパク質に共有結合したDB12−8で繰り返し刺激した際の持続的IFNγ産生
【0339】
αGalCer負荷sCD1dによる刺激の重要な生物学的特性は、繰り返し刺激後IFNgが持続的に産生されることである。これは、先に記載があるように、iNKT細胞にアネルギーを引き起こす遊離αGalCerを用いた刺激とは対照的である(米国出願公開第2008/0254045A1号;Stirnemann et al., J Clinical Invest. 118:994-1005, 2008;これらは各々参照によりその全体が本明細書に取り込まれる)。この生物学的特性が共有結合しているαGalCer−CD1d複合体に保たれていることを確認するのが重要であった。実施例10に記載の実験で使用したマウスを、実験開始時と同じ薬剤で第2日目にさらに再刺激し、第8日目にもう一度行った。マウスを3回目の注射から1時間後に屠殺し、Cytofix/Cytoperm(BD)で固定および浸透化してから、脾臓iNKT細胞を細胞内IFNg用に抗IFNg−APCで染色した。IFNgを産生するiNKTの割合を測定するため、CD3−FITCおよびαGalCer負荷CD1d四量体−PEともに細胞を陽性染色にゲーティングし、細胞内IFNgの発現についてFACS Caliburのフローサイトメトリーにより記録した。
【0340】
代表的マウスについて
図11に示すように、IFNgの染色は、対照PBS処置マウスのiNKT細胞では1%未満、非共有結合で会合したαGalCer負荷sCD1d抗CEAで刺激したマウスiNKT細胞では31%、およびUVクロスリンクさせたDB12−8:sCD1d抗CEA複合体で刺激したマウスiNKT細胞では46%が細胞内IFNg染色を受けた。これらの結果は、iNKT細胞によるIFNg産生は、非共有結合で会合したαGalCer負荷sCD1d抗CEA複合体で刺激した場合と同様に、UVクロスリンクさせたDB12−8:sCD1d抗CEAによる繰り返し刺激後も少なくとも持続されていることを示す。重要なことには、共有結合融合タンパク質の高い効力は、複数回の注射の後でも明らかな毒性に関連しないことであった。
【0341】
実施例12
sCD1d抗CEA融合タンパク質に共有結合したDB12−8および非共有結合的に負荷したαGC/sCD1d抗CEA融合タンパク質のインビボ抗腫瘍活性。
【0342】
C57BL/6マウスまたはCEAに形質転換したC57BL/6マウス4群に、ヒトCEA(MC38−CEA)で安定にトランスフェクトされた7x10
5MC38腫瘍細胞を脇腹に皮下移植する。腫瘍が約100mm
3まで増殖したら、マウスをPBS(対照)、または等モル量のαGalCer(0.4μg)、非共有結合的にsCD1d抗CEA融合タンパク質(40μg)に負荷したαGalCer、もしくはsCD1d抗CEA融合タンパク質に共有結合したDB12−8(40μg)いずれかをそれぞれ容積200μlのi.v.注射で処置する。処置を4〜5日おきに繰り返し計5回注射する。平均腫瘍容積を2日おきに式(長さ×幅×厚さ)/2を使って測定する。腫瘍増殖(mm3)動態をすべての各群毎の全マウスの平均値として求める。
【0343】
実施例13
sCD1d抗CEA融合タンパク質に共有結合したα−ガラクトシルセラミドを用いたインビボMC38−CEA腫瘍増殖抑制。
【0344】
齢と性別がマッチしたC57BL/6マウス7匹からなる3群のマウスに癌胎児抗原(CEA)をコードするcDNAをトランスフェクトしたMC38腫瘍細胞を移植した。マウスを、移植後第7、11、15、および20日目に、PBS、3μgの遊離α−ガラクトシルセラミド(αGalCer)、またはsCD1d抗CEA融合タンパク質(30μg)に共有結合したαGalCer(モル当量)のいずれかで処置をした。腫瘍増殖を2、3日おきにカリパスで測定し、その測定値を用いて式(長さ×幅×厚さ)/2を使って腫瘍容積を計算した。第24日目に動物を屠殺した。
【0345】
図12に示されるように、sCD1d抗CEAに共有結合したαGalCerによる処置では、PBSまたはαGalCerで処置した場合よりも腫瘍増殖阻害が有意に有効性が高かった。これらの結果は二元配置分散分析(ANOVA)による測定で有意であった(p=0.0079)。