(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
垂木と、前記垂木の長手方向両端部に配置された長桁とを備えた屋根構体を組み立てる屋根構体組立工程と、前記屋根構体組立工程で組み立てた屋根構体を側構体に取り付ける屋根構体取り付け工程とを有した鉄道車両の製造方法であり、
前記垂木は、
凸状に湾曲した垂木本体湾曲部と、
前記垂木本体湾曲部の両端からそれぞれ直線状に延在した第1直線部及び第2直線部と、
前記第1直線部の下端部に接続され、水平方向に延在した第1水平部と、
前記第2直線部の下端部に接続され、水平方向に延在した第2水平部とを有し、
前記長桁は、第1曲げ部及び第2曲げ部で折り曲げられ、
前記長桁には、前記第1曲げ部及び前記第2曲げ部の間に水平方向に延在した長桁水平部と、前記第1曲げ部から最も近い前記第1直線部の下面又は第2直線部の下面に平行に延在した直線状の長桁直線部と、前記第2曲げ部から下方向に延在した長桁鉛直部とが形成され、
前記屋根構体組立工程は、
前記垂木の長手方向一端部において、
前記第1直線部の下面が前記長桁直線部に接するように且つ前記第1水平部が前記長桁水平部に接するように前記第1直線部及び前記第1水平部を配置する第1配置工程と、前記長桁水平部と前記第1水平部とを溶接する第1溶接工程とを備え、
前記垂木の長手方向他端部において、前記第2直線部の下面が前記長桁直線部に接するように且つ前記第2水平部が前記長桁水平部に接するように前記第2直線部及び前記第2水平部を配置する第2長桁配置工程と、前記長桁水平部と前記第2水平部とを溶接する第2溶接工程とを備え、
前記屋根構体取り付け工程は、
前記長桁鉛直部が側構体に接するように前記屋根構体を側構体に沿って配置する屋根構体配置工程と、前記長桁鉛直部と側構体とを溶接する第3溶接工程とを備えていることを特徴とする鉄道車両の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した既存の構造では、長桁304が少なくとも3箇所で折り曲げられた複雑な形状である。
【0010】
また、屋根構体には基準となる水平面(基準面)が存在しない。これは、屋根構体を構成する垂木303、長桁304、第1ガセット330及び第2ガセット340に基準面が存在しないためである。例えば、垂木303は凸状に湾曲しているため、湾曲面しか存在しない。長桁304には水平方向に対して傾斜した傾斜部分と鉛直部しか形成されていない。第1ガセット330及び第2ガセット340は湾曲したり傾斜したりしている。そのため、屋根構体の組み立ては基準面がない状態で行われている。しかし、基準面が存在しないと、垂木と長桁とガセットとの間で位置ずれが生じるおそれがある。また、屋根構体を側構体に取り付ける際、屋根構体が水平方向に対して傾いた状態で側構体に取り付けられるおそれがある。
【0011】
また、垂木303の左右両端部にはそれぞれ長桁304が配置され、左右両端部のそれぞれで第1ガセット330を用いて垂木303と長桁304とが接続されている。垂木303は車両長手方向に所定の間隔で配置され、各垂木303の左右両端部で第1ガセット330を用いているため、屋根構体全体で相当な量の第1ガセット330が必要である。そのため屋根構体の部品点数が非常に多い。
【0012】
そこで、本発明の目的は、長桁を簡易な形状にしつつ基準面を有する屋根構体構造を提供することである。また、部品点数が少ない屋根構体構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、鉄道車両の屋根構体構造であり、車体の周方向に延在し、車両の長手方向に離れて配置された複数の垂木と、前記複数の垂木の長手方向両端部において、車両の長手方向に延在した少なくとも2つの長桁とを備えている。
前記垂木は、凸状に湾曲した垂木本体湾曲部と、前記垂木本体湾曲部の両端からそれぞれ直線状に延在した第1直線部及び第2直線部と、前記第1直線部の下端部に接続され、水平方向に延在した第1水平部と、前記第2直線部の下端部に接続され、水平方向に延在した第2水平部とを有している。
前記長桁は、第1曲げ部及び第2曲げ部で折り曲げられ、前記長桁には、前記第1曲げ部及び前記第2曲げ部の間に水平方向に延在した長桁水平部と、前記第1曲げ部から最も近い前記第1直線部の下面又は第2直線部の下面に平行に延在した直線状の長桁直線部と、前記第2曲げ部から下方向に延在した長桁鉛直部とが形成されている。
前記第1水平部及び前記第2水平部は、前記長桁水平部に沿って配置され、前記長桁直線部は、前記第1直線部の下面又は前記第2直線部の下面に沿って配置されている。
【0014】
上記構成では、長桁が第1曲げ部と第2曲げ部の2箇所で曲がり、2つの曲げ部の間に長桁水平部が形成された簡易な形状である。また垂木にも第1水平部及び第2水平部を形成し、第1水平部(第2水平部)を長桁水平部に沿って配置している。車両を製造するときは、第1水平部及び第2水平部と長桁水平部との水平面を基準にできる。また、これらの水平面同士を当接させることで、垂木と長桁との位置ずれが起こりにくいとともに垂木と長桁の接続強度が向上する。さらに、上記水平面で垂木と長桁とを直接接続できるため、垂木と長桁とを接続するために用いていたガセット(
図10の第1ガセット330)が不要である。したがって、屋根構体の部品点数を大幅に低減できる。
さらに、垂木に直線状の第1直線部及び第2直線部を形成し、これらの直線部の下面と長桁直線部との平面同士を当接させるとともに、これらの直線部の上面と接続平面部との平面同士を当接させることにより、位置ずれがより起こりにくい。
また、垂木と長桁とを溶接するときは、上述した水平面及び平面で溶接できるため、溶接作業を行いやすい。また溶接時に垂木と長桁との位置ずれが生じにくい。
【0015】
上記構成において、前記垂木の両端部が、前記長桁水平部まで延在していることが好ましい。垂木が長桁水平部まで延在していると、垂木と長桁水平部の下方に配置された側構体との間の距離を短くすることができる。垂木と側構体との間には長桁しか存在しないため強度が弱くなりやすいが、垂木と側構体との距離を短くすることにより屋根構体と側構体の接続強度を向上させることができる。
【0016】
また、上記構成において、前記垂木は、前記第1直線部と前記第1水平部との間に形成され、前記第1直線部よりも水平方向に対する傾斜角度が大きい第1壁部と、前記第2直線部と前記第2水平部との間に形成され、前記第2直線部よりも水平方向に対する傾斜角度が大きい第2壁部とを有していることが好ましい。第1直線部及び第2直線部より傾斜角度が大きい第1壁部及び第2壁部を形成することにより、第2水平部を長桁水平部の基端(第1曲げ部)に近付けることができる。これにより長桁水平部の長さ(車両幅方向長さ)が長くならないようにすることができるため、屋根構体が幅広形状にならず、様々な車両に設置可能なものとなる。
【0017】
さらに、上記構成において、前記第1壁部及び前記第2壁部は、前記長桁水平部まで延在していることが好ましい。垂木の端部を側構体に近付けることができるため、長桁だけが延在する領域を短くすることができる。これにより屋根構体と側構体の接続強度を向上させることができる。
【0018】
本発明は、鉄道車両の組立方法であり、垂木と、前記垂木の長手方向両端部に配置された長桁とを備えた屋根構体を組み立てる屋根構体組立工程と、前記屋根構体組立工程で組み立てた屋根構体を側構体に取り付ける屋根構体取り付け工程とを有した鉄道車両の製造方法である。
前記垂木は、凸状に湾曲した垂木本体湾曲部と、前記垂木本体湾曲部の両端からそれぞれ直線状に延在した第1直線部及び第2直線部と、前記第1直線部の下端部に接続され、水平方向に延在した第1水平部と、前記第2直線部の下端部に接続され、水平方向に延在した第2水平部とを有している。
前記長桁は、第1曲げ部及び第2曲げ部で折り曲げられ、前記長桁には、前記第1曲げ部及び前記第2曲げ部の間に水平方向に延在した長桁水平部と、前記第1曲げ部から最も近い前記第1直線部の下面又は第2直線部の下面に平行に延在した直線状の長桁直線部と、前記第2曲げ部から下方向に延在した長桁鉛直部とが形成されている。
前記屋根構体組立工程は、前記垂木の長手方向一端部において、前記第1直線部の下面が前記長桁直線部に接するように且つ前記第1水平部が前記長桁水平部に接するように前記第1直線部及び前記第1水平部を配置する第1配置工程と、前記長桁水平部と前記第1水平部とを溶接する第1溶接工程とを備え、前記垂木の長手方向他端部において、前記第2直線部の下面が前記長桁直線部に接するように且つ前記第2水平部が前記長桁水平部に接するように前記第2直線部及び前記第2水平部を配置する第2長桁配置工程と、前記長桁水平部と前記第2水平部とを溶接する第2溶接工程とを備えている。
前記屋根構体取り付け工程は、前記長桁鉛直部が側構体に接するように前記屋根構体を側構体に沿って配置する屋根構体配置工程と、前記長桁鉛直部と側構体とを溶接する第3溶接工程とを備えている。
【0019】
上記方法では、垂木の第1水平部及び第2水平部と長桁水平部を基準に車両を製造することができるため、垂木と長桁と側構体との間で位置ずれが起こりにくい。また、垂木の第1水平部(第2水平部)と長桁水平部の水平面同士を当接させることにより、垂木と長桁との位置ずれが起こりにくいとともに、垂木と長桁の接続強度が向上する。
さらに、垂木と長桁を水平面同士で直接接続できるため、垂木と長桁とを接続するために用いていたガセット(
図10の第1ガセット330)が不要である。したがって、屋根構体の部品点数を低減することができるとともに、ガセットを配置する工程を省略できる。
また、垂木に直線状の第1直線部及び第2直線部を形成し、これらの直線部の下面と長桁直線部との平面同士を当接させるため、位置ずれがより起こりにくい。
さらに、組み立てた屋根構体を側構体に取り付けるとよいため、屋根構体を側構体に簡易に取り付けることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、長桁を簡易な形状にしつつ基準となる水平面を有する屋根構体構造が得られる。また、屋根構体構造の部品点数を大幅に低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0023】
鉄道車両1の屋根構体2は、複数の垂木3と、図中の垂木3の右端部に配置された長桁4と、図中の垂木3の左端部に配置された長桁5とを備えている。垂木3の上には、外板6が配置されている。垂木3は、車両長手方向に所定の間隔で配置されている。長桁4及び長桁5は、車両長手方向に延在している。なお、図示していないが、垂木3の右端部には複数の長桁4が車両長手方向に並んでいる。隣り合う2つの長桁4は金属板(図示せず)で接続されている。また、垂木3の左端部には複数の長桁5が車両長手方向に並んでいる。隣り合う2つの長桁5は金属板(図示せず)で接続されている。屋根構体2は、図中の右側の側構体7及び左側の側構体8の上に配置されている。
【0024】
(垂木)
垂木3は、
図2(a)に示すように、凸状に湾曲した垂木本体湾曲部11と、垂木本体湾曲部11の両端から斜め下方向に直線状に延在した第1直線部12及び第2直線部13とを有している。第1直線部12と第2直線部13は、垂木本体湾曲部11から離れる方向へ延在している。垂木3は、垂木本体湾曲部11、第1直線部12及び第2直線部13の全体で凸形状となっている。
【0025】
図中の垂木3の右端部において、第1直線部12の下端部から下方向に第1壁部14が延在し、第1壁部14の下端から水平方向に第1水平部15が延在している。また、図中の垂木3の左端部において、第2直線部13の下端部から下方向に第2壁部16が延在し、第2壁部16の下端から水平方向に第2水平部17が延在している。
【0026】
従来の垂木303は、
図2(b)に示すように、垂木本体湾曲部11からなる。本実施形態の垂木3は第1直線部12と第2直線部13を有しているため、従来の垂木303よりも第1直線部12の長さ分及び第2直線部13の長さ分だけ長い。また従来の垂木303は全て湾曲しているが、本実施形態の垂木3には直線状の領域がある。
【0027】
垂木3は平板を折り曲げて形成され、断面形状がいわゆるZ形の垂木である(
図3(a)参照)。垂木3を長手方向にみたとき、垂木3は階段状に形成され、第1段部3Aと、第1段部3Aよりも高位置にある第2段部3Bと、第1段部3Aと第2段部3Bとの間に上下方向(鉛直方向)に延在した接続部3Cとを有している。第1段部3Aと第2段部3Bは平行である。
図3(a)には垂木3の第1直線部12を示している。第1直線部12では、第1段部3Aと第2段部3Bがいずれも平板状である。
図3(a)では、第1直線部12の第1段部3Aの下面を12aとし、第1直線部12の第2段部3Bの上面を12bとしている。下面12a及び上面12bは平面であり、下面12a及び上面12bは平行である。第1段部3Aは第2段部3Bよりも車両内に近い位置に配置されている(
図4参照)。
図4には、
図2のIVの拡大図を示している。
【0028】
図3(b)及び
図3(c)に示すように、第1直線部12の第2段部3Bの側端部から下方向に第1壁部14が延在している。第1壁部14は、長桁4の水平面(後述する長桁水平部23)まで延在している。第1壁部14の下端からは水平方向に第1水平部15が延在している。第1水平部15は長桁4の水平面(長桁水平部23)に当接している。第1水平部15と長桁水平部23は水平面同士で当接し、当接した部分で溶接されている(
図3(b)参照)。水平面では溶接しやすい。
【0029】
第1水平部15は第2段部3Bの先にあるため、第1水平部15と長桁水平部23とを接続することにより、第2段部3Bが長桁水平部23に接続されたときと同様な効果が得られる。
【0030】
第1壁部14の水平方向に対する角度θ
1は90度であり、第1直線部12の水平方向に対する傾斜角度θ
2は90度未満(例えば45度)である(
図3(c)参照)。第1壁部14は第1直線部12よりも水平方向に対する傾斜角度が大きい。
【0031】
上記では垂木3の右端部について説明したが、垂木3は左右対称の形状であるため(
図2(a)参照)、垂木3の左端部も右端部と同様な形状である。第2直線部13の側端部からは、下方向に第2壁部16が延在している。第2壁部16は、長桁5の長桁水平部23まで延在している。第2壁部16の下端からは水平方向に第2水平部17が延在している。第2水平部17は長桁5の長桁水平部23に当接している。第2水平部17と長桁水平部23は水平面同士で当接し、当接した部分で溶接されている。
【0032】
第2壁部16の水平方向に対する角度は90度であり、第2直線部13の水平方向に対する傾斜角度は90度未満(例えば45度)である。第2壁部16は第2直線部13よりも水平方向に対する傾斜角度が大きい。
【0033】
(長桁)
長桁4は、
図5に示すように、平板を第1曲げ部21及び第2曲げ部22の2箇所で折り曲げて形成されている。第1曲げ部21と第2曲げ部22との間には、水平方向に延在した長桁水平部23が形成され、第1曲げ部21から図中の左上方向に長桁直線部24が延在している。また、第2曲げ部22から図中の下方向に長桁鉛直部25が延在している。
【0034】
長桁水平部23には、
図3(c)及び
図4に示すように垂木3の第1水平部15が当接している。
【0035】
長桁直線部24は、
図4に示すように、最も近い垂木3の第1直線部12の下面12aに略平行である。長桁直線部24は下面12aに沿って配置されている。長桁直線部24と下面12aは平面同士で当接し、当接した部分で溶接されている。平面では溶接しやすい。
【0036】
長桁鉛直部25は、側構体7の外面7aに沿って配置されている(
図4参照)。長桁鉛直部25を側構体7の外面7aに沿って上下方向に移動させることにより、屋根構体2を各種車両に合った位置へ配置することができる。長桁水平部23を側構体7に近付けることにより、垂木3と側構体7とを近接させることができ、屋根構体2と側構体7との結合部分を強化できる。
【0037】
上記では、垂木3の右端部に配置された長桁4について説明したが、垂木3の左端部に配置された長桁5も長桁4と同様な形状である。長桁4と長桁5は左右対称となるように配置されている(
図2(a)参照)。長桁5は、垂木3の左端部に形成された第2直線部13の下面及び側構体8の外面に沿って配置されている。
【0038】
屋根構体2と側構体7(側構体8)は、ガセット40を用いて接続されている(
図2(a)参照)。屋根構体2の右端部では、長桁4と側構体7とがガセット40を用いて接続されている。屋根構体2の左端部では、長桁5と側構体8とがガセット40を用いて接続されている。
【0039】
(ガセット)
ガセット40は、
図4に示すように垂木3の下面側に配置されている。ガセット40は、長桁直線部24に略平行な接続傾斜部41と、接続傾斜部41の下端から下方向に延在した接続鉛直部42とを有している。
【0040】
長桁直線部24と接続傾斜部41は平面同士で当接し、当接した部分で溶接されている。接続鉛直部42は、側構体7の内面7bに沿って配置されている(
図4参照)。
【0041】
続いて、屋根構体2の製造方法及び屋根構体2を側構体7及び側構体8に取り付ける方法を、
図6〜
図9を参照しつつ説明する。
【0042】
先ず、垂木3の製造方法について説明する。平板状の板材100を幅方向に曲げ、
図3(a)に示すようなZ形にする。この段階では、板材100は直線状である。次に、金型50を用いて板材100を曲げる。金型50には、
図6(a)に示すように上面が凸状に湾曲したものを用いる。板材100の長手方向長さは、金型50の湾曲面の長さよりも長い。
【0043】
板材100の長手方向両端部を保持しながら、板材100を金型50の上面に沿って曲げる(
図6(b)参照)。これにより垂木本体湾曲部11が形成される。曲げ時に保持していた部分は直線状である。この部分が第1直線部12及び第2直線部13となる。第1直線部12の先端部を裁断や屈曲する等して、第1直線部12の先に第1壁部14及び第1水平部15を形成する。また、第2直線部13の先端部を裁断や屈曲する等して、第2直線部13の先に第2壁部16及び第2水平部17を形成する。これにより垂木3が得られる。
【0044】
従来は、金型50を用いて板材100を曲げた後(
図6(c)参照)、板材100の長手方向両端部(本実施形態の第1直線部12及び第2直線部13に相当する部分)を切り落とし、垂木本体湾曲部11を垂木としていた(
図6(d)参照)。しかし、本実施形態では、垂木本体湾曲部11の両側の第1直線部12及び第2直線部13を残すことにより、垂木3に直線部を形成するとともに従来よりも垂木長さを長くしている。
【0045】
本実施形態では第1直線部12及び第2直線部13を残しているため、第1直線部12及び第2直線部13を全て切り落としていた従来よりも、歩留まりが向上する。また、本実施形態では、第1直線部12及び第2直線部13を切り落とす工程が不要であるため、垂木の製造工程数を少なくすることができる。
【0046】
次に、垂木3を用いて屋根構体を組み立てる方法を説明する(屋根構体組立工程)。
図7(a)に示すように、垂木3を長桁4及び長桁5の上に配置する。このとき、垂木3の右端部において、垂木3の第1直線部12の下面12aが長桁直線部24に接するように且つ垂木3の第1水平部15が長桁水平部23に接するように、第1直線部12及び第1水平部15を配置する(第1配置工程)。また、垂木3の左端部において、垂木3の第2直線部13の下面13aが長桁直線部24に接するように且つ垂木3の第2水平部17が長桁水平部23に接するよう、第2直線部13及び第2水平部17を配置する(第2配置工程)。
【0047】
そして、垂木3の右端部において、長桁直線部24と垂木3の下面12aとを溶接する。また、長桁水平部23と第1水平部15とを溶接する(第1溶接工程、
図7(b)参照)。
【0048】
さらに、垂木3の左端部において、長桁直線部24と垂木3の下面13aとを溶接する。また、長桁水平部23と垂木3の第2水平部17とを溶接する(第2溶接工程)。これにより屋根構体2が組み立てられる。
【0049】
続いて、屋根構体2を側構体7及び側構体8に取り付ける。
【0050】
屋根構体2の右端部において長桁鉛直部25が側構体7の外面7aに接するように、また、屋根構体2の左端部において長桁鉛直部25が側構体8の外面8aに接するように(
図7(c)参照)、屋根構体2を配置する(屋根構体配置工程、
図8(a)参照)。屋根構体2の右端部において長桁鉛直部25と側構体7の外面7aとを溶接し、屋根構体2の左端部において長桁鉛直部25と側構体8の外面8aとを溶接する。
【0051】
そして、屋根構体2の右端部において、ガセット40の接続傾斜部41が長桁直線部24に接するように且つガセット40の接続鉛直部42が側構体7の内面7bに接するように、ガセット40を配置する。ガセット40の接続傾斜部41と長桁直線部24とを溶接し、ガセット40の接続鉛直部42と側構体7の内面7bとを溶接する(第3溶接工程、
図8(b)参照)。これにより屋根構体2が側構体7に取り付けられる。
【0052】
また、屋根構体2の左端部において、ガセット40の接続傾斜部41が長桁直線部24に接するように且つガセット40の接続鉛直部42が側構体8の内面8bに接するように、ガセット40を配置する。ガセット40の接続傾斜部41と長桁直線部24とを溶接し、ガセット40の接続鉛直部42と側構体8の内面8bとを溶接する(第3溶接工程、
図8(b)参照)。これにより屋根構体2が側構体8に取り付けられる。
【0053】
続いて、本実施形態の屋根構体と従来の屋根構体との相違について説明する。
図9(a)には本実施形態の屋根構体を図示し、
図9(b)には従来の屋根構体を図示している。本実施形態と従来とでは、1)垂木の長手方向長さ、2)長桁の構成、及び3)垂木と長桁とを接続するガセットの有無の点で異なる。なお
図9(a)及び
図9(b)では、垂木の上に配置された外板を省略している。
【0054】
本実施形態の垂木3の長さLは、従来の垂木303の長さlよりも長い。これは、本実施形態の垂木3には第1直線部12及び第2直線部13が形成されているが、従来の垂木303には第1直線部12及び第2直線部13が形成されていないためである(
図2(a)及び
図2(b)参照)。したがって、本実施形態の垂木3は従来の垂木303よりも第1直線部12の長さ分及び第2直線部13の長さ分だけ長く、その分、本実施形態の垂木3は従来の垂木303よりも垂木重量が重い。
【0055】
一方、本実施形態の長桁4の幅W及び長桁5の幅Wは従来の長桁304の幅w及び長桁305の幅wよりも狭い。これは、本実施形態の長桁4(長桁5)では2箇所で折り曲げることにより長桁直線部24、長桁水平部23及び長桁鉛直部25を有した簡易な構成であるのに対し(
図5参照)、従来の長桁304(長桁305)では少なくとも3箇所で折り曲げることにより内傾斜部321、傾斜部322、外傾斜部323及び鉛直部324が形成された複雑な形状であり(
図10参照)、本実施形態の長桁4(長桁5)が従来の長桁304(長桁305)よりも小型であるためである。したがって、本実施形態の長桁4(長桁5)は、従来の長桁304(長桁305)よりも長桁重量が軽い。
【0056】
ここで垂木3及び垂木303は長手方向に所定の間隔で配置されているが、長桁4,5及び長桁304,305は車両の長手方向全体に配置されている。そのため屋根構体2全体でみると、垂木総重量の増加量よりも長手方向全体に配置された長桁総重量の減少量の方が大きい。よって、本実施形態と従来とで屋根構体の重量を比較すると、本実施形態の方が従来よりも軽い
【0057】
また、本実施形態では垂木3が長桁水平部23まで延在し(
図4参照)、従来よりも垂木3と側構体7(側構体8)とが近接している。長桁水平部23を側構体7及び側構体8に近づけることにより、垂木3を側構体7(側構体8)にさらに近づけることができる。一方、従来の構成では垂木303と側構体との間に距離がある(
図10参照)。垂木303と側構体との間には長桁304が延在しているが、長桁304だけでは強度が弱い。本実施形態では、長桁だけが存在する領域を殆どなくすことができるため、従来よりも屋根構体と側構体との接続強度を強化することができる。これにより屋根構体の強度がより強化されるため、側面衝突等が起こっても屋根構体が側構体から外れにくい。
【0058】
さらに、本実施形態では、
図4に示すように、基準面となる水平部(長桁水平部23及び第1水平部15)が形成されているため、水平部を側構体7及び側構体8に近付けることにより、垂木3を側構体7(側構体8)により近付けることができる。これにより屋根構体と側構体との接続強度をより強化できるため、側面衝突等が起こっても屋根構体が側構体から外れにくい。
【0059】
また、本実施形態では、垂木3と長桁4(長桁5)とを直接接続しているため(
図3(c)参照)、これらを接続するガセットが不要である。従来は、各垂木303の左右両端部で長桁4(長桁5)との接続にガセット330を用いていた。垂木303は車両長手方向に多数配置されているため、相当な数のガセット330が必要であった。本実施形態ではこれらのガセット330が不要であるため、従来よりも屋根構体2の部品点数を大幅に少なくすることができる。
【0060】
以上に述べたように、本実施形態の屋根構体構造によると以下の効果を奏する。長桁4及び長桁5が第1曲げ部21と第2曲げ部22の2箇所で曲がり、2つの曲げ部(21,22)の間に長桁水平部23が形成された簡易な形状である。また垂木3の先端部に第1水平部15(第2水平部17)を形成し、第1水平部15(第2水平部17)を長桁水平部23に沿って配置している。車両を製造するときは、第1水平部15及び第2水平部17と長桁水平部23との水平面を基準にできる。また、これらの水平面同士を当接させることで、垂木3と長桁4(長桁5)との位置ずれが起こりにくくなるとともに、垂木3と長桁4(長桁5)の接続強度が向上する。さらに、上記水平面で垂木3と長桁4(長桁5)とを直接接続できるため、従来、垂木3と長桁4(長桁5)とを接続するために用いていたガセット(
図10の第1ガセット330)が不要である。したがって、屋根構体2の部品点数を低減することができるとともに、ガセットを配置する工程を省略できる。
【0061】
さらに、垂木3に直線状の第1直線部12及び第2直線部13を形成し、これらの直線部の下面12a(13a)と長桁直線部24との平面同士を当接させるため、位置ずれがより起こりにくい。
【0062】
また、上記当接した部分は水平部または平面部であるため、溶接作業を行いやすい。また溶接時に垂木3と長桁4(長桁5)との位置ずれが生じにくい。
【0063】
さらに、垂木3の右端部には、第1直線部12と第1水平部15との間に第1壁部14が形成されている(
図3(b)及び
図3(c)参照)。第1直線部12の先に、第1直線部12よりも水平方向に対する傾斜角度が大きい第1壁部14を形成することにより、第1水平部15を長桁水平部23の基端(第1曲げ部21)に近付けることができる。これにより長桁水平部23の長さ(車両幅方向長さ)が長くならないようにすることができるため、車体幅が広くならず、様々な車両に設置可能なものとなる。
【0064】
垂木3の左端部でも、垂木3の右端部のように、第2直線部13と第2水平部17との間に第2壁部16が形成されている(
図2(a)参照)。第2直線部13の先に、第2直線部13よりも水平方向に対する傾斜角度が大きい第2壁部16を形成することにより、長桁水平部23の長さ(車両幅方向長さ)が長くならないようにすることができる。
【0065】
また、垂木3の第1壁部14及び第2壁部16が長桁水平部23まで延在しているため(
図2(a)参照)、垂木3の端部を側構体7(側構体8)に近付けることができる。これにより長桁だけが存在する領域を短くすることができるため、屋根構体2と側構体7(側構体8)の接続強度を向上させることができる。
【0066】
さらに、組み立てた屋根構体2を側構体7及び側構体8に取り付けるときは、屋根構体2を側構体7(側構体8)の外面7a(外面8a)及び内面7b(内面8b)に取り付けるとよいため、屋根構体2を側構体7(側構体8)に簡易に取り付けることができる。また、長桁4(長桁5)の長桁鉛直部25を側構体7(側構体8)の外面7a(外面8a)に沿って上下方向に移動させることで、屋根構体の形状や車体幅が異なる車両にも本実施形態の屋根構体を利用できる。
【0067】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0068】
例えば、上述の第1実施形態では、第1直線部12及び第2直線部13が垂木本体湾曲部11の両端から斜め下方向に延在しているが(
図2参照)、第1直線部12及び第2直線部13は垂木本体湾曲部11の両端から下方向に延在していてもよい。この場合、長桁4(長桁5)において長桁直線部24が第1曲げ部21から上方に延在した構成とする。これにより第1直線部12(第2直線部13)と長桁直線部24が当接する。平面同士が当接した部分では溶接しやすい。
【0069】
また、上述の第1実施形態では、垂木3に断面形状がZ形の垂木を用いたが、他の断面形状の垂木を用いてもよい。例えば、断面形状がハット形の垂木を用いてもよい。
【0070】
さらに、上述の実施形態では、垂木3の右端部において、第1壁部14の水平方向に対する角度θ
1は90度であるが、角度θ
1は90度未満でもよい。また、垂木3の左端部において、第2壁部16の水平方向に対する角度は90度であるが、この角度は90度未満でもよい。
【0071】
また、上述の実施形態では、垂木3の右端部において、第1直線部12と第1水平部15との間に第1壁部14が形成されているが(
図3(c)参照)、第1壁部14が形成されていなくてもよい。例えば、第1直線部12が長桁水平部23まで延在し、第1直線部12の先端から第1水平部15が延在していてもよい。また、垂木3の左端部においても、上述の実施形態では、第2直線部13と第2水平部17との間に第2壁部16が形成されているが(
図2(a)参照)、第2壁部16が形成されていなくてもよい。例えば、第2直線部13が長桁水平部23まで延在し、第2直線部13の先端から第2水平部17が延在していてもよい。