(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記抵抗素子の抵抗値と前記容量素子の容量値とは、前記設定用端子に前記過電圧が入力されたときに前記抵抗素子により前記制御部が保護され、かつ、前記アドレス制御回路の起動時から所定のアドレス設定期間が経過するまでの前記所定のタイミングで前記制御部がアドレスを設定することができるように設定されている、請求項3に記載のアドレス制御回路。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態の1つにおけるアドレス制御回路について説明する。
【0015】
アドレス制御回路は、例えばステッピングモータ等を利用したアクチュエータに用いられ、アクチュエータがシリアル通信ネットワークに接続されて用いられるときにそのアクチュエータのアドレス設定を行う。アドレス設定が行われることにより、アクチュエータがネットワークに接続された他の機器と通信を行うことができる。
【0017】
図1は、本実施の形態におけるアドレス制御回路が用いられるアクチュエータの一例を示す分解斜視図である。
【0018】
図1に示されるように、アクチュエータ1は、ケース51とカバー52とで覆われている。アクチュエータ1の内部には、モータ制御装置10、ステッピングモータ20、2次ギヤ31、3次ギヤ32、出力ギヤ33などが収納されている。ケース51の底面には、出力ギヤ33に設けられている外部出力ギヤが露出し、この外部出力ギヤよりアクチュエータ1の駆動力が外部に伝達される。
【0019】
ステッピングモータ20は、アクチュエータ1の駆動力を発生させる。ステッピングモータ20の出力軸25には、1次ギヤ26が取り付けられている。ステッピングモータ20の1次ギヤ26は、2次ギヤ31と噛み合う。2次ギヤ31は、3次ギヤ32と噛み合う。3次ギヤ32は、出力ギヤ33と噛み合う。
【0020】
モータ制御装置10は、プリント基板42や、プリント基板42とステッピングモータ20のモータ端子29とを接続するフレキシブルプリント基板43などを有している。プリント基板42には、ステッピングモータ20を駆動する駆動回路や、その制御を行うモータ制御回路や、アクチュエータ1のアドレス設定を行うアドレス制御回路101(
図2に示す)などが設けられている。プリント基板42には、ケース51及びカバー52の外側に露出する外部接続端子41が設けられている。外部接続端子41を介して外部からモータ制御装置10に電源電圧Vbbが入力されたり、外部機器からの指示信号を受けたりすることで、モータ制御装置10が動作する。
【0021】
モータ制御装置10は、入力された入力電圧に基づいてステッピングモータ20に駆動電力を供給し、ステッピングモータ20を駆動させる。ステッピングモータ20が駆動すると、出力軸25とともに1次ギヤ26が回転する。この回転の駆動力は、2次ギヤ31、3次ギヤ32、出力ギヤ33、外部出力ギヤと順に伝達され、外部出力ギヤにより外部に出力される。
【0022】
なお、ケース51及びカバー52の内部に収納されている回路は、例えば駆動回路だけであってもよい。この場合、モータ制御装置10は、ケース51及びカバー52の内部の駆動回路と、その駆動回路に接続された外部のモータ制御回路やアドレス制御回路101によって構成されるようにしてもよい。
【0023】
図2は、アドレス制御回路101の一例を示すブロック図である。
【0024】
図2に示されるように、アドレス制御回路101は、制御部120と、時定数設定回路110とを有している。アドレス制御回路101は、制御部120に電源電圧Vbbが供給されて動作を行う。電源電圧Vbbは、例えば18ボルト程度の直流電圧であるが、これに限られるものではない。
【0025】
アドレス制御回路101には、アドレス設定を行うための設定用端子P1が設けられている。設定用端子P1は、接地電位に接続可能である。設定用端子P1は、アドレス切り替え機能を持った端子である。
【0026】
本実施の形態において、制御部120は、IC(集積回路)としてパッケージ化されている。制御部120は、シリアル通信用のアドレスを設定する。制御部120は、後述のように、設定用端子P1の状態に応じて、アドレスを設定するように構成されている。
【0027】
時定数設定回路110は、設定用端子P1と、制御部120との間に配置されている。時定数設定回路110は、抵抗素子R1と、容量素子C1とを有する、積分回路である。
【0028】
抵抗素子R1は、設定用端子P1と、制御部120との間に配置されている。設定用端子P1から制御部120に電流が流れる場合を仮定すると、その電流は抵抗素子R1を通るようになっている。抵抗素子R1は、抵抗に限られず、抵抗成分を有している素子であればよい。抵抗素子R1の抵抗値は、設定用端子P1から過電圧が入力されたときに制御部120が抵抗素子R1によって保護されるように、設定されている。
【0029】
容量素子C1は、例えば、コンデンサであるが、これに限られない。容量素子C1は、抵抗素子R1と設定用端子P1との接続点110a(抵抗素子R1の端子のうち、設定用端子P1側の端子)と、接地電位とを接続する経路中に配置されている。
【0030】
時定数設定回路110は、設定用端子P1が後述のように開放状態である場合において、制御部120から電圧が出力されたときに、抵抗素子R1の抵抗値と容量素子C1の容量値とで定まる時定数で、容量素子C1に電荷を蓄えたり、蓄えた電荷を放電したりする。
【0031】
制御部120は、CPU(設定部の一例)130と、不揮発性メモリ(第1の記憶部の一例)121と、判定部123と、電源部125と、スイッチ回路127とを含んでいる。
【0032】
不揮発性メモリ121は、アドレス設定用情報を記憶している。アドレス設定用情報は、例えば、CPU130がアドレス設定を行う際に初期アドレスとして採用される情報である。本実施の形態では、アドレス設定用情報として、例えば、「1」、「2」、「3」のいずれかなど、1つのアドレスに対応するものが記憶されている。
【0033】
判定部123は、時定数設定回路110に接続されている。判定部123は、時定数設定回路110から入力される電圧の高さに関する判定を行い、その結果をCPU130に出力する。判定は、例えばハイ(H)又はロー(L)の2段階で行われる。本実施の形態において、判定部123は、時定数設定回路110から入力される電圧が、所定の閾値と比較し、高い場合はハイ、低い場合はローと判定する。判定結果は、デジタル信号として、CPU130に入力される。
【0034】
判定部123は、例えばAD変換部である。なお、判定部123は、コンパレータであってもよい。
【0035】
電源部125は、例えば、アドレス制御回路101に供給される電源電圧Vbbを用いて、所定の電圧の直流電力を出力する。電源部125は、スイッチ回路127を介して、時定数設定回路110の抵抗素子R1とCPU130の判定部とを接続するラインに接続されている。スイッチ回路127がオンのときに、電源部125からの直流電力が当該ラインに出力される。すなわち、設定用端子P1が後述のように開放状態である場合において、スイッチ回路127がオンとなると、電源部125から時定数設定回路110に電圧が印加され、容量素子C1に電荷が蓄えられる。
【0036】
CPU130は、記憶されているファームウェア131に基づいて、種々の処理を行う。また、CPU130は、CPU130が処理を行う際にワーキングメモリとして用いられるRAM(第2の記憶部の一例)133を含んでいる。アドレス制御回路101の起動時において、CPU130は、後述のようにしてアドレスを設定し、設定するアドレスをRAM133に書き込む。CPU130は、その後、RAM133に記憶されたアドレスに基づいて、アクチュエータ1と他の機器とでシリアル通信が行われるように、制御を行う。
【0037】
[アドレス切り替え機能についての説明]
【0038】
本実施の形態において、設定用端子P1は、接地電位(GND)に接続された接地状態か、どの電位にも接続されない開放(オープン)状態のいずれかで用いられる。アドレス制御回路101は、設定用端子P1が接地状態であるか開放状態であるかに応じて、2通りのアドレスのいずれか一方をアクチュエータ1のアドレスとして設定する。換言すると、ユーザが、設定用端子P1を接地状態にするか開放状態にするかを選択することで、アクチュエータ1のアドレスを選択することができる。アドレス制御回路101は、設定用端子P1が接地状態であるか開放状態であるかをアドレス切り替え情報として、CPU130がRAM133に書き込むアドレスを切り替えるように構成されている。
【0039】
具体的には、制御部120は、電源部125から時定数設定回路110に電圧を出力し、その電圧の出力を停止してから所定時間が経過した時に時定数設定回路110から入力される電圧に基づいて、所定のタイミングでアドレスを設定する。
【0040】
電圧の出力を停止してから所定時間が経過した時に時定数設定回路110から入力される電圧は、設定用端子P1が接地状態であるときには略ゼロとなり、開放状態であるときには比較的高くなる。この時の電圧の判定部123による判定結果に基づいて、CPU130がアドレス設定を行う。
【0041】
図3は、アドレス制御回路101の起動時の動作を示すフローチャートである。
【0042】
アドレス制御回路101の起動時には、CPU130の制御に基づいて、以下のようにしてアドレスの設定が行われる。
【0043】
図3に示されるように、起動が開始されると、ステップS11において、CPU130は、スイッチ回路127をオンとする(第1のステップ)。これにより、電源部125からの電圧が、時定数設定回路110に出力される。設定用端子P1が開放状態であれば、容量素子C1の充電が開始される。他方、設定用端子P1が接地状態であれば、容量素子C1の充電は行われない。
【0044】
ステップS12において、CPU130は、所定時間T2だけウエイトする。所定時間T2は、例えば、時定数設定回路110の抵抗素子R1の抵抗値と容量素子C1の容量値とに応じて設定される。例えば、設定用端子P1が開放状態である場合において、ステップS11から所定時間T2が経過したときに容量素子C1の電圧が所定値に達しているように、所定時間T2が設定される。容量素子C1が満充電となるように所定時間T2が設定されていてもよい。
【0045】
ステップS11から所定時間T2が経過すると、ステップS13において、CPU130は、スイッチ回路127をオフとする(第2のステップ)。これにより、電源部125からの電圧の出力がオフとなる。容量素子C1が充電されている状態であれば、電源部125からの電圧の出力がオフとなると容量素子C1の放電が開始され、時定数設定回路110から制御部120の判定部123に電圧が入力される。
【0046】
ステップS14において、CPU130は、所定時間T3だけウエイトする。所定時間T3は、例えば、時定数設定回路110の抵抗素子R1の抵抗値と容量素子C1の容量値とに応じて設定される。例えば、ステップS13から所定時間T3が経過したときの判定部123の判定結果が、設定用端子P1が開放状態である場合にはハイとなり接地状態である場合にはローとなるように、所定時間T3が設定される。設定用端子P1が開放状態である場合において、所定時間T3が経過したときには、容量素子C1の電圧が所定値以上となっていなければならない。
【0047】
ステップS13から所定時間T3が経過すると、ステップS15において、CPU130は、判定部123から入力された判定結果を確認する(第3ステップの開始)。
【0048】
ステップS16において、CPU130は、判定結果がハイ(H)であるかロー(L)であるかを判断する。
【0049】
ステップS16においてハイ(H)であれば、ステップS17において、CPU130は、不揮発性メモリ121に記憶されているアドレス設定用情報を、アドレスとして用いることに決定する。例えばアドレス設定用情報が「2」である場合、「2」をアドレスとする。また、例えば、アドレス設定用情報が「3」である場合、「3」をアドレスとする。
【0050】
他方、ステップS16においてロー(L)であれば、ステップS18において、CPU130は、不揮発性メモリ121に記憶されているアドレス設定用情報を用いて所定の生成方法に従って生成したアドレスを、アドレスとして用いることに決定する。本実施の形態では、例えば、アドレス設定用情報にN(例えば、N=10)を加算した値をアドレスとして用いることに決定する。例えばアドレス設定用情報が「2」である場合、「2+N」すなわち「12」をアドレスとする。また、例えば、アドレス設定用情報が「3」である場合、「3+N」すなわち「13」をアドレスとする。なお、アドレスの生成方法はこれに限られず、所定の値(例えば、「1」など)をアドレス設定用情報に加算した値や減算した値をアドレスとするようにしてもよいし、所定の値をアドレス設定用情報に乗じた値をアドレスとするようにしてもよい。
【0051】
ステップS19において、CPU130は、用いることに決定したアドレスを、RAM133に書き込む(第3のステップの終了)。これにより、アドレス制御回路101の起動時から所定のアドレス設定期間が経過するまでに、時定数設定回路110から入力される電圧に基づいて、所定のタイミングでアドレス設定が完了し、設定されたアドレスでシリアル通信が行われる。
【0052】
なお、本実施の形態において、抵抗素子R1の抵抗値と容量素子C1の容量値とは、以下のようにして設定される。
【0053】
すなわち、設定用端子P1に例えば電源電圧Vbbなどの過電圧が入力された場合においても、時定数設定回路110の抵抗素子R1により制御部120が保護されるように、抵抗素子R1の抵抗値が設定される。具体的には、抵抗素子R1の抵抗値は、制御部120を保護するべき電圧の高さに応じた大きさ以上に設定される。例えば過電圧として18ボルトが印加された場合であっても、抵抗素子R1の抵抗値が100kΩであれば、電流は180μAとなる。抵抗素子R1の抵抗値を適切な値に設定することで、制御部120を保護することができる。
【0054】
また、アドレス制御回路101の起動時から制御部120がアドレスを設定するまでのスタンバイ期間T1(
図3に示す)ができるだけ小さくなるように、抵抗素子R1の抵抗値と容量素子C1の容量値とが設定される。すなわち、CPU130にスイッチ回路127のオン、オフや判定部123の判定結果の確認等が確実に行われ、かつ、所定時間T2と所定時間T3とを加算した時間ができるだけ短くなるようにして所定時間T2と所定時間T3とを設定できるように、抵抗値及び容量値とが設定される。本実施の形態においては、スタンバイ期間T1がアクチュエータ1の仕様等に対応する所定の期間よりも短くなるように、抵抗値及び容量値とが設定される。
【0055】
特に、容量素子C1の容量値は、容量素子C1に充電される時間と放電する時間とが適切な時間になるように、決定される。容量素子C1の容量値が比較的大きい場合、メリットとしては、所定時間T3を長く確保して確実に判定部123の判定結果に基づく判定を行うことができることが挙げられる。他方、デメリットとしては、所定時間T2の時間が長くなることが挙げられる。容量素子C1の容量値が比較的小さい場合、メリットとしては、所定時間T2を短くすることができることが挙げられる。他方、デメリットとしては、容量素子C1の放電が速くなり、所定時間T3を短くせざるを得なくなることが挙げられる。容量素子C1の放電スピードを計測し、最適な容量値の容量素子C1を用いるようにすることで、理想的なタイミングで時定数設定回路110から入力される電圧の判定が行われるようにすることができる。
【0057】
以上のように構成されたアドレス制御回路101では、時定数設定回路110が、過電圧保護機能と、時定数設定回路110の電圧の検出タイミングを最適化する機能とを有している。
【0058】
時定数設定回路110の抵抗素子R1の抵抗値を適切に設定することにより、制御部120の過電圧保護が可能となる。したがって、誤って設定用端子P1が電源電圧Vbbに接続されて設定用端子P1の電位が過電圧となる状態になったとしても、時定数設定回路110の抵抗素子R1により、制御部120を構成するIC等に悪影響が及ぶことが防止される。
【0059】
また、時定数設定回路110において、容量素子C1の容量値は、このような過電圧保護の効果を得られるようにしながら、アドレス制御回路101の起動後、比較的速やかに、かつ、正確にアドレスを設定することができるように、適切に設定されている。
【0060】
この結果、制御部120は、時定数設定回路110から入力される電圧に基づいて、設定用端子P1を接地状態にするか開放状態にするかを所定のタイミングで切り替える(アドレスを設定する)ことで、容易に、2種類のアドレスの一方が用いられるようにすることができる。
【0061】
アドレス制御回路101は、上記のような機能を有する時定数設定回路110及び制御部120を含むことにより、過電圧保護が可能であるとともに、速やか、かつ、正確にアドレス設定が可能となる。
【0063】
なお、RAMは、CPUの外に配置されていてもよい。
【0064】
図4は、本実施の形態の一変形例に係るアドレス制御回路501の一例を示すブロック図である。
【0065】
図4に示されるように、アドレス制御回路501においては、制御部120のCPU530の外部にRAM522が設けられている。このような構成であっても、上述と同様にアドレス設定を行うことができる。
【0067】
不揮発性メモリで記憶されるアドレス設定用情報の種類や数は限定されない。また、設定用端子の状態に応じたアドレスを設定する方法も、任意に採用することができる。例えば、不揮発性メモリに、ハイ、ローの2通りのアドレスのそれぞれに対応するアドレス設定用情報が記憶されており、ハイ、ローそれぞれの場合に、それに対応するアドレス設定用情報を用いてアドレスが設定されるようにしてもよい。この場合、所定の生成方法に従ったアドレスの生成処理は行う必要がない。
【0068】
保護対象とする設定用端子に印加される電圧の範囲は、適宜変更することができる。大きな電圧が印加される場合に確実に制御部のIC等を保護するには、時定数設定回路の抵抗素子の抵抗値を大きくすればよい。
【0069】
上述のアクチュエータの構成は一例であり、上述とは異なる構成であってもよい。
【0070】
制御部の一部分のみが集積回路として構成されていてもよい。また、制御部と時定数設定回路とが集積回路に含まれるようにしてもよい。
【0071】
ステッピングモータやモータ制御装置など、アクチュエータのハードウェア構成は上述に限られるものではない。
【0072】
上述の実施の形態における処理は、ソフトウェアによって行っても、ハードウェア回路を用いて行ってもよい。
【0073】
上述の実施の形態における処理を実行するプログラムを提供することもできるし、そのプログラムをCD−ROM、フレキシブルディスク、ハードディスク、ROM、RAM、メモリカードなどの記録媒体に記録してユーザに提供することにしてもよい。プログラムはインターネットなどの通信回線を介して、装置にダウンロードするようにしてもよい。上記のフローチャートにおいて文章で説明された処理は、そのプログラムに従ってCPUなどにより実行される。
【0074】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。