特許第6487891号(P6487891)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6487891
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】リン含有化合物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/6574 20060101AFI20190311BHJP
   C09K 21/12 20060101ALI20190311BHJP
   C08G 59/16 20060101ALI20190311BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20190311BHJP
【FI】
   C07F9/6574 ACSP
   C09K21/12
   C08G59/16
   !C07B61/00 300
【請求項の数】36
【全頁数】49
(21)【出願番号】特願2016-216599(P2016-216599)
(22)【出願日】2016年11月4日
(65)【公開番号】特開2017-88600(P2017-88600A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2019年1月7日
(31)【優先権主張番号】14/932,092
(32)【優先日】2015年11月4日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】15/066,745
(32)【優先日】2016年3月10日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】595009383
【氏名又は名称】長春人造樹脂廠股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】杜 安邦
(72)【発明者】
【氏名】陳 思坊
(72)【発明者】
【氏名】王 炳傑
(72)【発明者】
【氏名】▲黄▼ 坤源
【審査官】 奥谷 暢子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−35848(JP,A)
【文献】 特開2012−52007(JP,A)
【文献】 特開2010−37443(JP,A)
【文献】 特開2010−59145(JP,A)
【文献】 米国特許第6441067(US,B1)
【文献】 米国特許第8426547(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 9/6574
C08G 59/16
C09K 21/12
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表される化合物。
【化1】
(式中、
1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立に、水素、C1−C10アルキル基、C1−C10アルコキシ基およびC3−C10シクロアルキル基からなる群から選択される1種であり、
5は、C1−C10アルキル基、C1−C10アルコキシ基、C3−C10シクロアルキル基およびAr3からなる群から選択される1種であり、
Ar1およびAr2は、それぞれ独立に、下記の基:
【化2】
からなる群から選択される1種であり、
Ar3は、下記の基:
【化3】
からなる群から選択される1種であり、
6およびR7は、それぞれ独立に、水素、C1−C10アルキル基、C1−C10アルコキシ基および3〜10個の炭素原子を有するシクロアルキル基からなる群から選択される1種であり、
mおよびnは、それぞれ独立に、0〜4の整数であり、
8は、存在しない、または−CH2−、−(CH32C−、−CO−、−SO2−および−O−からなる群から選択される1種であり、
9は、存在しない、または−(CH2p−であり、
pは、1〜20の整数であり、
zは、1であり、
Aは、下記の基:
1−C10アルキル基、
【化4】
からなる群から選択される1種であり、
10は、それぞれ独立に、水素またはC1−C10アルキル基であり、
xは、0〜4の整数である。)
【請求項2】
5は、C1−C10アルキル基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Ar1およびAr2は、いずれも
【化5】
である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
9は、存在しない、請求項に記載の化合物。
【請求項5】
1、R2、R3およびR4はいずれも水素である、請求項に記載の化合物。
【請求項6】
Aは、
1−C10アルキル基、
【化6】
である、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
xは0である、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
難燃剤として、請求項1に記載の式(I)で表される化合物を含む、難燃性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項8に記載の難燃性樹脂組成物を架橋することにより製造される樹脂である、硬化された難燃性樹脂。
【請求項10】
下記式(Ia)で表される化合物。
【化7】
(式中、
1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立に、水素、C1−C10アルキル基、C1−C10アルコキシ基およびC3−C10シクロアルキル基からなる群から選択される1種であり、
5は、C1−C10アルキル基、C1−C10アルコキシ基、C3−C10シクロアルキル基およびAr3からなる群から選択される1種であり、
Ar3は、下記の基:
【化8】
からなる群から選択される1種であり、
6およびR7は、それぞれ独立に、水素、C1−C10アルキル基、C1−C10アルコキシ基および3〜10個の炭素原子を有するシクロアルキル基からなる群から選択される1種であり、
mおよびnは、それぞれ独立に、0〜4の整数であり、
8は、存在しない、または−CH2−、−(CH32C−、−CO−、−SO2−および−O−からなる群から選択される1種であり、
9は、存在しない、または−(CH2p−であり、
pは、1〜20の整数であり、
zは、1であり、
Aは、下記の基:
1−C10アルキル基、
【化9】
からなる群から選択される1種であり、
10は、それぞれ独立に、水素またはC1−C10アルキル基であり、
xは、0〜4の整数である。)
【請求項11】
5は、C1−C10アルキル基である、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
1、R2、R3およびR4はいずれも水素である、請求項10に記載の化合物。。
【請求項13】
Aは、
1−C10アルキル基、
【化10】
である、請求項10に記載の化合物。
【請求項14】
xは0である、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
5はメチル基である、請求項10に記載の化合物。
【請求項16】
下記の化合物からなる群から選択される1種である、化合物。
【化11】
【請求項17】
下記式(II)で表される化合物。
【化12】
(式中、
n’は、1〜4から選択される整数であり、
1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立に、水素、C1−C10アルキル基、C1−C10アルコキシ基およびC3−C10シクロアルキル基からなる群から選択される1種であり、
5は、水素、C1−C10アルキル基、C1−C10アルコキシ基、C3−C10シクロアルキル基およびAr3からなる群から選択される1種であり、
Ar1およびAr2は、それぞれ独立に、下記の基:
【化13】
からなる群から選択される1種であり、
Ar3は、下記の基:
【化14】
からなる群から選択される1種であり、
6およびR7は、それぞれ独立に、水素、C1−C10アルキル基、C1−C10アルコキシ基および3〜10個の炭素原子を有するシクロアルキル基からなる群から選択される1種であり、
mおよびnは、それぞれ独立に、0〜4の整数であり、
8は、存在しない、または−CH2−、−(CH32C−、−CO−、−SO2−および−O−からなる群から選択される1種であり、
9は、存在しない、または−(CH2p−であり、
pは、1〜20の整数であり、
zは、1であり、
Aは、下記の基:
1−C10アルキル基、
【化15】
からなる群から選択される1種であり、
10は、それぞれ独立に、水素またはC1−C10アルキル基であり、
xは、0〜4の整数であり、
Epは、下記の基:
【化16】
からなる群から選択される1種であり、
11は、それぞれ独立に、水素、C1−C6アルキル基、C1−C6アルコキシ基、および3〜7個の炭素原子を有するシクロアルキル基、フェニル基およびフェノキシ基からなる群から選択される1種である。
【請求項18】
11は、それぞれ独立に、水素またはC1−C6アルキル基である、請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
Epは、下記の基:
【化17】
からなる群から選択される1種である、請求項17に記載の化合物。
【請求項20】
9は、存在しない、請求項19に記載の化合物。
【請求項21】
5は、水素である、請求項17に記載の化合物。
【請求項22】
5は、C1−C10アルキル基である、請求項17に記載の化合物。
【請求項23】
5は、メチル基である、請求項17に記載の化合物。
【請求項24】
Ar1およびAr2は、
【化18】
である、請求項17に記載の化合物。
【請求項25】
1、R2、R3およびR4は、水素である、請求項17に記載の化合物。
【請求項26】
1、R2、R3およびR4は、水素であり、
5は、C1−C10アルキル基であり、
Ar1およびAr2は、
【化19】
であり、
11は、水素である、請求項17に記載の化合物。
【請求項27】
Epは、下記の基:
【化20】
からなる群から選択される1種である、請求項26に記載の化合物。
【請求項28】
9は、存在しない、請求項27に記載の化合物。
【請求項29】
下記式(I)で表される化合物と下記式(III)で表されるエポキシ単量体とを触媒反応させることを含む、式(II)で表される化合物の合成方法。
【化21】
(式(II)中、
n’は、1〜4から選択される整数であり、
1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立に、水素、C1−C10アルキル基、C1−C10アルコキシ基およびC3−C10シクロアルキル基からなる群から選択される1種であり、
5は、水素、C1−C10アルキル基、C1−C10アルコキシ基、C3−C10シクロアルキル基およびAr3からなる群から選択される1種であり、
Ar1およびAr2は、それぞれ独立に、下記の基:
【化22】
からなる群から選択される1種であり、
Ar3は、下記の基:
【化23】
からなる群から選択される1種であり、
6およびR7は、それぞれ独立に、水素、C1−C10アルキル基、C1−C10アルコキシ基および3〜10個の炭素原子を有するシクロアルキル基からなる群から選択される1種であり、
mおよびnは、それぞれ独立に、0〜4の整数であり、
8は、存在しない、または−CH2−、−(CH32C−、−CO−、−SO2−および−O−からなる群から選択される1種であり、
9は、存在しない、または−(CH2p−であり、
pは、1〜20の整数であり、
zは、1であり、
Aは、下記の基:
1−C10アルキル基、
【化24】
からなる群から選択される1種であり、
10は、それぞれ独立に、水素またはC1−C10アルキル基であり、
xは、0〜4の整数であり、
Epは、下記の基:
【化25】
からなる群から選択される1種であり、
11は、それぞれ独立に、水素、C1−C6アルキル基、C1−C6アルコキシ基、および3〜7個の炭素原子を有するシクロアルキル基、フェニル基およびフェノキシ基からなる群から選択される1種である。)
【請求項30】
11は、水素またはC1−C6アルキル基である、請求項29に記載の合成方法。
【請求項31】
Epは、下記の基:
【化26】
からなる群から選択される1種である、請求項29に記載の合成方法。
【請求項32】
5は、水素である、請求項29に記載の合成方法。
【請求項33】
5は、C1−C10アルキル基である、請求項29に記載の合成方法。
【請求項34】
5は、メチル基である、請求項29に記載の合成方法。
【請求項35】
Ar1およびAr2は、
【化27】
である、請求項29に記載の合成方法。
【請求項36】
下記化合物からなる群から選択されるものである、化合物。
【化28】
(式中、
n’は、1〜4から選択される整数である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、リン含有化合物およびその製造方法に関し、特に、直接反応してリン含有エポキシ樹脂を形成することができ、または、エポキシ樹脂組成物の硬化剤とすることができる、リン含有化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は、良好な溶剤バリア性、優れた機械強度および電気絶縁性などを有するため、広く利用されている。例えば、エポキシ樹脂は、通常、コーティング材料、電気絶縁材料、プリント配線積層板および電子パッケージ材料、建築・建物材料、粘着剤および運送技術に利用されている。しかしながら、エポキシ樹脂は、耐熱性が劣り、易燃性であるなどの性質により、エポキシ樹脂の使用が明らかに制限されている。したがって、電子技術の発展に伴って、産業界ではエポキシ樹脂の難燃性能と耐熱性の改善を求め続けている。
【0003】
エポキシ樹脂の難燃性の改善には、多くの技術が用いられるが、最も一般的なのは、難燃剤をエポキシ樹脂化合物に組み込むことであり、通常、ハロゲン含有難燃剤を使用する。ハロゲンは、有効に難燃化することができるが,腐食性および有毒なハロゲン化水素ガスを発生させる。
【0004】
リン含有難燃剤は、毒性が低く、加工性能が良好であり、使用量が低く、樹脂との相容性が良好であるなどの顕著な利点がある。リン含有難燃剤の燃焼過程において、一方では、重合材料は、炭水化物の水素と空気中の酸素との反応により水を形成し、脱水反応を促進して、環境温度を降下させ、さらに難燃効果を提供する。もう一方では、リン酸が高温下で分解され、重合化合物を炭化させ、難燃性コークス層を形成する。また、リン酸がさらに脱水され、高温下でエステル化し、ガラス様溶融重合リン酸を形成して、燃焼物質の表面に覆い、保護層として、酸素ガスが重合体の燃焼されていない内部に入り込むことを防止し、揮発性分解物質の放出を止めて、火炎の蔓延拡大を抑え、難燃効果を達成する。
【0005】
今まで使用されてきたリン含有物質は、官能基を有する反応性リン含有化合物、および一般的な非反応性リン含有化合物に分類される。非反応性リン含有化合物は、相対的に劣れる耐熱性を有し、高い耐熱性が必要なエポキシ樹脂組成物への応用に適用していない。反応性リン含有化合物と他の分子とが結合したものは、相対的に高い熱安定性を有するため、主に使用されている。
【0006】
得られる反応性リン含有化合物において、最もよく用いられるのは、直線性リン含有化合物である。しかしながら、前記の直線性リン含有化合物は、主鎖における−O−P−O−結合により、一般的なハロゲン含有エポキシ樹脂組成物またはハロゲンフリーエポキシ樹脂組成物に比べて、より劣れる耐熱性を表現する。もう一つの観点からみると、実際の応用において、直線性リン含有化合物を用いても、または非反応性リン含有化合物を用いても、リン含有難燃性樹脂組成物は、臭素含有エポキシ樹脂組成物に比べて、加工性能が悪いものである。そのため、リン含有難燃性樹脂組成物は、樹脂組成物の難燃性および耐熱性を同時に高めることが難しいものであると認定されている。
【発明の概要】
【0007】
本願発明は、難燃性リン含有樹脂の形成に使用することができ、また、難燃性エポキシ樹脂組成物の硬化剤とすることもできる、リン含有化合物を開示する。また、本願発明は、前記のリン含有化合物の製造方法を提供し、さらに、前記のリン含有化合物の樹脂組成物、および前記のリン含有化合物の難燃剤を開示する。
【0008】
リン含有エポキシ樹脂は、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド(9,10−dihydro−9−oxa−10−phosphaphenanthrene−10−oxide、DOPOとも略す)または6−(1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル)ジベンゾ[c,e][1,2]オキサホスフェ−6−オキサイド(6−(1,1−bis(4−hydroxyphenyl)ethyl)dibenzo[c,e][1,2]oxaphosphinine 6−oxide、DMPとも略す)とエポキシ化合物との反応により合成される。DMPは、以下の式で表される。
【化1】
【0009】
矢印で示すように、リン含有エポキシ樹脂がDOPOとDMPにおける「ヒドロキシ基」を有する場合は、その分子が大きな極性を有するものになり、高い吸水性と低い誘電性を生じさせる。リン含有エポキシ樹脂に「ヒドロキシ基」を形成することを防止するために、開始物質原料におけるヒドロキシ基をアシル化することにより、「ヒドロキシ基」をアシロキシ基(−O−(C=O)−R)に転化させることができる。これにより、吸水性を減少させ、良好な誘電性を提供する。
【化2】
【0010】
本願発明は、式(I):
【化3】
[式中、
1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立に、水素、C1−C10アルキル基、C1−C10アルコキシ基およびC3−C10シクロアルキル基からなる群から選択される1種であり、
5は、水素、C1−C10アルキル基、C1−C10アルコキシ基、C3−C10シクロアルキル基およびAr3からなる群から選択される1種であり、
Ar1およびAr2は、それぞれ独立に、下記の基:
【化4】
からなる群から選択される1種であり、R6およびR7は、それぞれ独立に、水素、C1−C10アルキル基、C1−C10アルコキシ基および3〜10個の炭素原子を有するシクロアルキル基からなる群から選択される1種であり、
mおよびnは、それぞれ独立に、0〜4の整数であり、
8は、存在しない、または−CH2−、−(CH32C−、−CO−、−SO2−および−O−からなる群から選択される1種であり、
9は、存在しない、または−(CH2p−であり、
pは、1〜20の整数であり、
zは、1であり、
Aは、下記の基:
1−C10アルキル基、
【化5】
からなる群から選択される1種であり、
10は、それぞれ独立に、水素またはC1−C10アルキル基であり、
xは、0〜4の整数である。]
で表される化合物を開示する。
【0011】
本願発明は、式(II):
【化6】
[式中、
n'は、1〜4から選択される整数であり、
1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立に、水素、C1−C10アルキル基、C1−C10アルコキシ基およびC3−C10シクロアルキル基からなる群から選択される1種であり、
5は、水素、C1−C10アルキル基、C1−C10アルコキシ基、C3−C10シクロアルキル基およびAr3からなる群から選択される1種であり、
Ar1およびAr2は、それぞれ独立に、下記の基:
【化7】
からなる群から選択される1種であり、
6およびR7は、それぞれ独立に、水素、C1−C10アルキル基、C1−C10アルコキシ基および3〜10個の炭素原子を有するシクロアルキル基からなる群から選択される1種であり、
mおよびnは、それぞれ独立に、0〜4の整数であり、
8は、存在しない、または−CH2−、−(CH32C−、−CO−、−SO2−および−O−からなる群から選択される1種であり、
9は、存在しない、または−(CH2p−であり、
pは、1〜20の整数であり、
zは、1であり、
Aは、下記の基:
1−C10アルキル基、
【化8】
からなる群から選択される1種であり、
10は、それぞれ独立に、水素またはC1−C10アルキル基であり、
xは、0〜4の整数であり、
Epは、下記の基:
【化9】
からなる群から選択される1種であり、
11は、それぞれ独立に、水素、C1−C6アルキル基、C1−C6アルコキシ基、3〜7個の炭素原子を有するシクロアルキル基、フェニル基およびフェノキシ基からなる群から選択される1種である。一つの実施態様において、R11は、それぞれ独立に、水素またはC1−C6アルキル基である。]
で表される化合物を開示する。
【0012】
さらに、本願発明は、本願の前記化合物の合成方法、前記化合物を含む難燃性樹脂組成物、および前記難燃性樹脂組成物を架橋することにより製造される硬化された難燃性樹脂を開示する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本願発明は、式(I):
【化10】
[式中、
1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立に、水素、C1−C10アルキル基、C1−C10アルコキシ基およびC3−C10シクロアルキル基からなる群から選択される1種であり、
5は、水素、C1−C10アルキル基、C1−C10アルコキシ基、C3−C10シクロアルキル基およびAr3からなる群から選択される1種であり、
Ar1およびAr2は、それぞれ独立に、下記の基:
【化11】
からなる群から選択される1種であり、R6およびR7は、それぞれ独立に、水素、C1−C10アルキル基、C1−C10アルコキシ基および3〜10個の炭素原子を有するシクロアルキル基からなる群から選択される1種であり、
mおよびnは、それぞれ独立に、0〜4の整数であり、
8は、存在しない、または−CH2−、−(CH32C−、−CO−、−SO2−および−O−からなる群から選択される1種であり、
9は、存在しない、または−(CH2p−であり、
pは、1〜20の整数であり、
zは、1であり、Aは、下記の基:
1−C10アルキル基、
【化12】
からなる群から選択される1種であり、
10は、それぞれ独立に、水素またはC1−C10アルキル基であり、
xは、0〜4の整数である。]
で表される化合物を開示する。
【0014】
一つの実施態様において、R5は水素またはC1−C10アルキル基である。また、他の実施態様において、Ar1、Ar2
【化12a】
であり、一つの実施態様において、R9は存在しない。
一つの実施態様において、R1、R2、R3およびR4は水素である。また、他の実施態様において、AはC1−C10アルキル基、
【化12b】
であり、一つの実施態様において、xは0である。
【0015】
本願発明は、式(Ia):
【化13】
[式中、
1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立に、水素、C1−C10アルキル基、C1−C10アルコキシ基およびC3−C10シクロアルキル基からなる群から選択される1種であり、
5は、水素、C1−C10アルキル基、C1−C10アルコキシ基、C3−C10シクロアルキル基およびAr3からなる群から選択される1種であり、
Ar3は、下記の基:
【化14】
からなる群から選択される1種であり、
6およびR7は、それぞれ独立に、水素、C1−C10アルキル基、C1−C10アルコキシ基および3〜10個の炭素原子を有するシクロアルキル基からなる群から選択される1種であり、
mおよびnは、それぞれ独立に、0〜4の整数であり、
8は、存在しない、または−CH2−、−(CH32C−、−CO−、−SO2−および−O−からなる群から選択される1種であり、
9は、存在しない、または−(CH2p−であり、
pは、1〜20の整数であり、
zは、1であり、
Aは、下記の基:
1−C10アルキル基、
【化15】
からなる群から選択される1種であり、
10は、それぞれ独立に、水素またはC1−C10アルキル基であり、
xは、0〜4の整数である。]
で表される化合物を開示する。
【0016】
一つの実施態様において、R5は水素またはC1−C10アルキル基であり、また、一つの実施態様において、R5はメチル基である。一つの実施態様において、R1、R2、R3およびR4は水素である。さらに、Aは C1−C10アルキル基、
【化15a】
であってもよく、また、一つの実施態様において、xは0であってもよい。
【0017】
さらに、本願発明は、下記の化合物:
【化16】
からなる群から選択される化合物を開示する。
【0018】
本願発明は、式(II):
【化17】
[式中、
n’は、1〜4から選択される整數であり、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立に、水素、C1−C10アルキル基、C1−C10アルコキシ基およびC3−C10シクロアルキル基からなる群から選択される1種であり、
5は、水素、C1−C10アルキル基、C1−C10アルコキシ基、C3−C10シクロアルキル基およびAr3からなる群から選択される1種であり、
Ar1およびAr2は、それぞれ独立に、下記の基:
【化18】
からなる群から選択される1種であり、
Ar3は、下記の基:
【化18a】
からなる群から選択される1種であり、R6およびR7は、それぞれ独立に、水素、C1−C10アルキル基、C1−C10アルコキシ基および3〜10個の炭素原子を有するシクロアルキル基からなる群から選択される1種であり、
mおよびnは、それぞれ独立に、0〜4の整数であり、
8は、存在しない、または−CH2−、−(CH32C−、−CO−、−SO2−および−O−からなる群から選択される1種であり、
9は、存在しない、または−(CH2p−であり、
pは、1〜20の整数であり、
zは、1であり、
Aは、下記の基:
1−C10アルキル基、
【化19】
からなる群から選択される1種であり、
10は、それぞれ独立に、水素またはC1−C10アルキル基であり、
xは、0〜4の整数であり、
Epは、下記の基:
【化20】
からなる群から選択される1種であり、
11は、それぞれ独立に、水素、C1−C6アルキル基、C1−C6アルコキシ基、3〜7個の炭素原子を有するシクロアルキル基、フェニル基およびフェノキシ基からなる群から選択される1種である。一つの実施態様において、R11は、それぞれ独立に、水素またはC1−C6アルキル基である。]
で表される化合物を開示する。
【0019】
式(II)の化合物において、Epは、下記の基:
【化21】
からなる群から選択される1種である。
【0020】
本願発明は、上記式(I)で表される化合物を含む難燃性樹脂組成物、および前記難燃性樹脂組成物を架橋することにより製造される硬化された難燃性樹脂を開示する。
【0021】
さらに、本願発明は、式(I)で表される化合物と式(III)で表されるエポキシ単量体とを触媒反応させることを含む、式(II)化合物の合成方法を開示する。
【化22】
[式中、式(I)、(II)および(III)の置換基は上記定義と同一である。]
【0022】
一つの実施態様において、反応温度は100℃〜200℃、100℃〜150℃、または120℃〜160℃である。式(III)で表されるエポキシ単量体と式(I)で表される化合物との当量比は、1:1〜10:1、1:1〜5:1または1:2〜5:1である。触媒反応に用いられる触媒の量は、式(III)で定義されるエポキシ単量体の量に基づいて、0.1〜5重量%、0.1〜3重量%、または0.2〜0.5重量%である。一つの実施態様において、触媒は、イミダゾール系化合物、第3級アミン、第3級ホスフィン、第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩、ボロントリフルオリド錯体またはリチウム化合物である。特に、触媒は、2−フェニルイミダゾールおよび2−メチルイミダゾールからなるイミダゾール系化合物群から選択されるものであってもよく、或いは、触媒は、トリフェニルホスフィン(第3級ホスフィン) であってもよい。一つの実施態様において、触媒は、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリドおよびテトラブチルアンモニウムクロリドからなる群から選択される第4級アンモニウム塩である。さらに、前記触媒は、エチルトリフェニルホスホニウムアセテートおよびエチルトリフェニルホスホニウムハロゲン化物からなる群から選択される第4級ホスホニウム塩である。
【実施例】
【0023】
実施例1
リン含有ビスフェノール化合物A1(DMP)の合成
【化23】
【0024】
10.81g(0.05モル)の9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド(DOPO)、23.5g(0.25モル)のフェノール、6.81g(0.05モル)の4'−ヒドロキシアセトフェノンおよび0.432g(DOPOの重量に基づいては4重量%)のp−トルエンスルホン酸を、250mlの三つ口フラスコ反応器において混合して、予め室温で攪拌した。反応物を130℃で24時間攪拌し続けて、混合物を形成した後、混合物を室温まで冷却した。冷却した混合物から分離した粗生成物をエタノールで洗浄し、ろ過および乾燥を行い、白色の粉末を得た。この白色の粉末は、リン含有ビスフェノール化合物A1であった。
上記のリン含有ビスフェノール化合物A1は、収率が85%であり、融点が306℃であった。元素分析により測定されたC、H、O元素の値は、それぞれ、72.48%、4.65%および14.90%(理論値は、C:72.89%、H:4.65%、O:14.94%)であった。
【0025】
実施例2
リン含有ビスフェノール化合物A2の合成
【化24】
【0026】
10.81g(0.05モル)のDOPO、36g(0.25モル)の2−ナフトール、6.81g(0.05モル)の4'−ヒドロキシアセトフェノンおよび0.432g(DOPOの重量に基づいては4重量%)のp−トルエンスルホン酸を、250mlの三つ口フラスコ反応器において混合して、予め室温で攪拌した。反応物を130℃で24時間攪拌し続けて、混合物を形成した後、混合物を室温まで冷却した。冷却した混合物から分離した粗生成物をエタノールで洗浄し、ろ過および乾燥を行い、白色の粉末を得た。この白色の粉末は、リン含有ビスフェノール化合物A2であった。
上記のリン含有ビスフェノール化合物A2は、収率が85%であり、融点が317℃であった。元素分析により測定されたC、H、O元素の値は、それぞれ、75.54%、4.58%および13.56% (理論値は、C:75.31%、H:4.85%、O:13.38%)であった。
【0027】
実施例3
リン含有ビスフェノール化合物A3の合成
【化25】
【0028】
10.81g(0.05モル)のDOPO、36g(0.25モル)の2−ナフトール、9.01g(0.05モル)の6−アセチル−2−ナフトールおよび0.432g(DOPOの重量に基づいては4重量%)のp−トルエンスルホン酸を、250mlの三つ口フラスコ反応器において混合して、予め室温で攪拌した。反応物を130℃で24時間攪拌し続けて、混合物を形成した後、混合物を室温まで冷却した。冷却した混合物から分離した粗生成物をエタノールで洗浄し、ろ過および乾燥を行い、白色の粉末を得た。この白色の粉末は、リン含有ビスフェノール化合物A3であった。
上記のリン含有ビスフェノール化合物A3は、収率が80%であり、融点が338℃であった。元素分析により測定されたC、H、O元素の値は、それぞれ、77.69%、4.17%および12.25%(理論値は、C:77.26%、H:4.76%、O:12.11%)であった。
【0029】
実施例4
エステル置換されたリン含有ビスフェノール化合物B1の合成
【化26】
【0030】
428g(1モル)のDMP(リン含有ビスフェノール化合物A1)、303.9g(2.2モル)の炭酸カリウムおよび1000gのアセトンを、電気加熱ジャケット、温度調節器、電動撹拌機および撹拌棒、窒素ガス入口、熱電対、水冷式冷却器および供給漏斗(feed funnel)を備えた五つ口ガラス反応器に添加した。まず、50℃で、309.5g(2.2モル)のベンゾイルクロリドを1時間かけて反応器へ滴下し、4時間反応させた。その後、物質を室温まで冷却するとともに、反応器においては、エステル置換されたリン含有ビスフェノール化合物および付加反応により生成した副生成物である塩が沈殿した。反応により生成した副生成物である塩を除去するために、沈殿物を水で洗浄し、生成物をろ過により分離した。最後、生成物を120℃の温度で乾燥させ、得られた白色の粉末は、エステル置換されたリン含有ビスフェノール化合物B1であった。
FT−IR分析により 、1700cm-1における吸収ピークのカルボニル基は検出され、3300cm-1における吸収ピークのOH基は検出されなかった。上記のエステル置換されたリン含有ビスフェノール化合物B1は、収率が88%であり、融点が180℃であった。
【0031】
実施例5
エステル置換されたリン含有ビスフェノール化合物B2の合成
【化27】
【0032】
428g(1モル)のDMP(リン含有ビスフェノール化合物A1)、 303.9g(2.2モル)の炭酸カリウムおよび1000gのアセトンを、電気加熱ジャケット、温度調節器、電動撹拌機および撹拌棒、窒素ガス入口、熱電対、水冷式冷却器および供給漏斗を備えた五つ口ガラス反応器に添加した。まず、50℃で、418g(2.2モル)のナフトイルクロリドを1時間かけて反応器へ滴下し、4時間反応させた。その後、物質を室温まで冷却するとともに、反応器においては、エステル置換されたリン含有ビスフェノール化合物および付加反応により生成した副生成物である塩が沈殿した。反応により生成した副生成物である塩を除去するために、沈殿物を水で洗浄し、生成物をろ過により分離した。最後、生成物を120℃の温度で乾燥させ、得られた白色の粉末は、エステル置換されたリン含有ビスフェノール化合物B2であった。
FT−IR分析により 、1700cm-1における吸収ピークのカルボニル基は検出され、3300cm-1における吸収ピークのOH基は検出されなかった。上記のエステル置換されたリン含有ビスフェノール化合物B2は、収率が85%であり、融点が180℃であった。
【0033】
実施例6
エステル置換されたリン含有ビスフェノール化合物B3の合成
【化28】
【0034】
428g(1モル)のDMP(リン含有ビスフェノール化合物A1)、 303.9g(2.2モル)の炭酸カリウムおよび1000gのアセトンを、電気加熱ジャケット、温度調節器、電動撹拌機および撹拌棒、窒素ガス入口、熱電対、水冷式冷却器および供給漏斗を備えた五つ口ガラス反応器に添加した。まず、50℃で、172.7g(2.2モル)のアセチルクロリドを1時間かけて反応器へ滴下し、4時間反応させた。その後、物質を室温まで冷却するとともに、反応器においては、エステル置換されたリン含有ビスフェノール化合物および付加反応により生成した副生成物である塩が沈殿した。反応により生成した副生成物である塩を除去するために、沈殿物を水で洗浄し、生成物をろ過により分離した。最後、生成物を120℃の温度で乾燥させ、得られた白色の粉末は、エステル置換されたリン含有ビスフェノール化合物B3であった。
FT−IR分析により 、1700cm-1における吸収ピークのカルボニル基は検出され、3300cm-1における吸収ピークのOH基は検出されなかった。上記のエステル置換されたリン含有ビスフェノール化合物B3は、収率が89%であり、融点が180℃であった。
【0035】
実施例7
エステル置換されたリン含有ビスフェノール化合物B4の合成
【化29】
【0036】
428g(1モル)のDMP(リン含有ビスフェノール化合物A1)、497.7g(2.2モル)の安息香酸無水物および0.173gの1−メチルイミダゾールを、電気加熱ジャケット、温度調節器、電動撹拌機および撹拌棒、窒素ガス入口、熱電対、水冷式冷却器および供給漏斗を備えた五つ口ガラス反応器に添加した。まず、50℃で、497.7g(2.2モル)の安息香酸無水物を1時間かけて反応器へ滴下し、4時間反応させた。その後、物質を室温まで冷却するとともに、反応器においては、エステル置換されたリン含有ビスフェノール化合物および付加反応により生成した副生成物である塩が沈殿した。反応により生成した副生成物である塩を除去するために、沈殿物を水で洗浄し、生成物をろ過により分離した。最後、生成物を120℃の温度で乾燥させ、得られた白色の粉末は、エステル置換されたリン含有ビスフェノール化合物Bであった。
FT−IR分析により 、1700cm-1における吸収ピークのカルボニル基は検出され、3300cm-1における吸収ピークのOH基は検出されなかった。上記のエステル置換されたリン含有ビスフェノール化合物は、収率が79%であり、融点が180℃であった。
【0037】
実施例8
エステル置換されたリン含有ビスフェノール化合物Bの合成
【化30】
【0038】
428g(1モル)のDMP(リン含有ビスフェノール化合物A1)、340g(2.2モル)の無水酢酸および0.173gの1−メチルイミダゾールを、電気加熱ジャケット、温度調節器、電動撹拌機および撹拌棒、窒素ガス入口、熱電対、水冷式冷却器および供給漏斗を備えた五つ口ガラス反応器に添加した。まず、50℃で、340g(2.2モル)の無水酢酸を1時間かけて反応器へ滴下し、4時間反応させた。その後、物質を室温まで冷却するとともに、反応器においては、エステル置換されたリン含有ビスフェノール化合物および付加反応により生成した副生成物である塩が沈殿した。反応により生成した副生成物である塩を除去するために、沈殿物を水で洗浄し、生成物をろ過により分離した。最後、生成物を120℃の温度で乾燥させ、得られた白色の粉末は、エステル置換されたリン含有ビスフェノール化合物Bであった。
FT−IR分析により 、1700cm-1における吸収ピークのカルボニル基は検出され、3300cm-1における吸収ピークのOH基は検出されなかった。上記のエステル置換されたリン含有ビスフェノール化合物は、収率が81%であり、融点が180℃であった。
【0039】
実施例9〜31
以下の組成成分は、実施例9〜26に使用された。
【0040】
【表A】
【0041】
実施例9
リン含有エポキシ樹脂C1の合成
【化31】
【0042】
100gのエポキシ樹脂1および70gのエステル置換されたリン含有ビスフェノール化合物B1を、電気加熱ジャケット、温度調節器、電動撹拌機および撹拌棒、窒素ガス入口、熱電対、水冷式冷却器、供給漏斗を備えた五つ口ガラス反応器に入れた。反応器を130℃まで加熱し、窒素ガスを導入し、エポキシ樹脂1およびエステル置換されたリン含有ビスフェノール化合物B1が完全熔化してから、粗生成物を真空下で乾燥させた。窒素ガス導入と乾燥の工程を、二回以上繰り返し行った。反応器の温度が100℃から低下した際、0.8gの触媒Aを入れた。撹拌機を起動させ、樹脂と触媒を混合するとともに、窒素ガスを導入した。得られた混合物を170℃まで加熱し、反応物が徐々に放熱反応を行うことが確認された。反応物を170℃で2.5時間維持し、リン含有エポキシ樹脂(エポキシ樹脂C1)を得た。その当量は507.2g/当量であり、リン含有量の理論値は2.0wt%であった。それを均一にするために、生成物をメチルエチルケトン(MEK)に溶解して、固形成分含有量を70%に調整した。
【0043】
実施例10
リン含有エポキシ樹脂C2の合成
【化32】
【0044】
100gのエポキシ樹脂2および70gのエステル置換されたリン含有ビスフェノール化合物B1を、電気加熱ジャケット、温度調節器、電動撹拌機および撹拌棒、窒素ガス入口、熱電対、水冷式冷却器、供給漏斗を備えた五つ口ガラス反応器に入れた。反応器を130℃まで加熱し、窒素ガスを導入し、エポキシ樹脂2およびエステル置換されたリン含有ビスフェノール化合物B1が完全熔化してから、粗生成物を真空下で乾燥させた。窒素ガス導入と乾燥の工程を、二回以上繰り返し行った。反応器の温度が100℃から低下した際、0.8gの触媒Aを入れた。撹拌機を起動させ、樹脂と触媒を混合するとともに、窒素ガスを導入した。得られた混合物を170℃まで加熱し、反応物が徐々に放熱反応を行うことが確認された。反応物を170℃で2.5時間維持し、リン含有エポキシ樹脂(エポキシ樹脂C2)を得た。その当量は455.3g/当量であり、リン含有量の理論値は2.0wt%であった。それを均一にするために、生成物をメチルエチルケトン(MEK)に溶解して、固形成分含有量を70%に調整した。
【0045】
実施例11
リン含有エポキシ樹脂C3の合成
【化33】
【0046】
100gのエポキシ樹脂3および70gのエステル置換されたリン含有ビスフェノール化合物B1を、電気加熱ジャケット、温度調節器、電動撹拌機および撹拌棒、窒素ガス入口、熱電対、水冷式冷却器、供給漏斗を備えた五つ口ガラス反応器に入れた。反応器を130℃まで加熱し、窒素ガスを導入し、エポキシ樹脂3およびエステル置換されたリン含有ビスフェノール化合物B1が完全熔化してから、粗生成物を真空下で乾燥させた。窒素ガス導入と乾燥の工程を、二回以上繰り返し行った。反応器の温度が100℃から低下した際、0.8gの触媒Aを入れた。撹拌機を起動させ、樹脂と触媒を混合するとともに、窒素ガスを導入した。得られた混合物を170℃まで加熱し、反応物が徐々に放熱反応を行うことが確認された。反応物を170℃で2.5時間維持し、リン含有エポキシ樹脂(エポキシ樹脂C3)を得た。その当量は545.2g/当量であり、リン含有量の理論値は2.0wt%であった。それを均一にするために、生成物をメチルエチルケトン(MEK)に溶解して、固形成分含有量を70%に調整した。
【0047】
実施例12
リン含有エポキシ樹脂C4の合成
【化34】
【0048】
100gのエポキシ樹脂4および70gのエステル置換されたリン含有ビスフェノール化合物B1を、電気加熱ジャケット、温度調節器、電動撹拌機および撹拌棒、窒素ガス入口、熱電対、水冷式冷却器、供給漏斗を備えた五つ口ガラス反応器に入れた。反応器を130℃まで加熱し、窒素ガスを導入し、エポキシ樹脂4およびエステル置換されたリン含有ビスフェノール化合物B1が完全熔化してから、粗生成物を真空下で乾燥させた。窒素ガス導入と乾燥の工程を、二回以上繰り返し行った。反応器の温度が100℃から低下した際、0.8gの触媒Aを入れた。撹拌機を起動させ、樹脂と触媒を混合するとともに、窒素ガスを導入した。得られた混合物を170℃まで加熱し、反応物が徐々に放熱反応を行うことが確認された。反応物を170℃で2.5時間維持し、リン含有エポキシ樹脂(エポキシ樹脂C4)を得た。その当量は870g/当量であり、リン含有量の理論値は2.0wt%であった。それを均一にするために、生成物をメチルエチルケトン(MEK)に溶解して、固形成分含有量を70%に調整した。
【0049】
実施例13
リン含有エポキシ樹脂C5の合成
【化35】
【0050】
100gのエポキシ樹脂1および91gのエステル置換されたリン含有ビスフェノール化合物B2を、電気加熱ジャケット、温度調節器、電動撹拌機および撹拌棒、窒素ガス入口、熱電対、水冷式冷却器、供給漏斗を備えた五つ口ガラス反応器に入れた。反応器を130℃まで加熱し、窒素ガスを導入し、エポキシ樹脂1およびエステル置換されたリン含有ビスフェノール化合物B2が完全熔化してから、粗生成物を真空下で乾燥させた。窒素ガス導入と乾燥の工程を、二回以上繰り返し行った。反応器の温度が100℃から低下した際、0.9gの触媒Aを入れた。撹拌機を起動させ、樹脂と触媒を混合するとともに、窒素ガスを導入した。得られた混合物を170℃まで加熱し、反応物が徐々に放熱反応を行うことが確認された。反応物を170℃で2.5時間維持し、リン含有エポキシ樹脂(エポキシ樹脂C5)を得た。その当量は617.8g/当量であり、リン含有量の理論値は2.0wt%であった。それを均一にするために、生成物をメチルエチルケトン(MEK)に溶解して、固形成分含有量を70%に調整した。
【0051】
実施例14
リン含有エポキシ樹脂C6の合成
【化36】
【0052】
100gのエポキシ樹脂1および50gのエステル置換されたリン含有ビスフェノール化合物B3を、電気加熱ジャケット、温度調節器、電動撹拌機および撹拌棒、窒素ガス入口、熱電対、水冷式冷却器、供給漏斗を備えた五つ口ガラス反応器に入れた。反応器を130℃まで加熱し、窒素ガスを導入し、エポキシ樹脂1およびエステル置換されたリン含有ビスフェノール化合物B3が完全熔化してから、粗生成物を真空下で乾燥させた。窒素ガス導入と乾燥の工程を、二回以上繰り返し行った。反応器の温度が100℃から低下した際、0.8gの触媒Aを入れた。撹拌機を起動させ、樹脂と触媒を混合するとともに、窒素ガスを導入した。得られた混合物を170℃まで加熱し、反応物が徐々に放熱反応を行うことが確認された。反応物を170℃で2.5時間維持し、リン含有エポキシ樹脂(エポキシ樹脂C6)を得た。その当量は414.8g/当量であり、リン含有量の理論値は2.0wt%であった。それを均一にするために、生成物をメチルエチルケトン(MEK)に溶解して、固形成分含有量を70%に調整した。
【0053】
実施例15
リン含有エポキシ樹脂C7の合成
【化37】
【0054】
100gのエポキシ樹脂1および39gのエステル置換されたリン含有ビスフェノール化合物A1(DMP)を、電気加熱ジャケット、温度調節器、電動撹拌機および撹拌棒、窒素ガス入口、熱電対、水冷式冷却器、供給漏斗を備えた五つ口ガラス反応器に入れた。反応器を130℃まで加熱し、窒素ガスを導入し、エポキシ樹脂1およびエステル置換されたリン含有ビスフェノール化合物A1が完全熔化してから、粗生成物を真空下で乾燥させた。窒素ガス導入と乾燥の工程を、二回以上繰り返し行った。反応器の温度が100℃から低下した際、0.7gの触媒Aを入れた。撹拌機を起動させ、樹脂と触媒を混合するとともに、窒素ガスを導入した。得られた混合物を170℃まで加熱し、反応物が徐々に放熱反応を行うことが確認された。反応物を170℃で2.5時間維持し、リン含有エポキシ樹脂(エポキシ樹脂C7)を得た。その当量は370.9g/当量であり、リン含有量の理論値は2.0wt%であった。それを均一にするために、生成物をメチルエチルケトン(MEK)に溶解して、固形成分含有量を70%に調整した。
【0055】
実施例16
リン含有エポキシ樹脂C8の合成
【化38】
【0056】
100gのエポキシ樹脂2および39gのエステル置換されたリン含有ビスフェノール化合物A1(DMP)を、電気加熱ジャケット、温度調節器、電動撹拌機および撹拌棒、窒素ガス入口、熱電対、水冷式冷却器、供給漏斗を備えた五つ口ガラス反応器に入れた。反応器を130℃まで加熱し、窒素ガスを導入し、エポキシ樹脂2およびエステル置換されたリン含有ビスフェノール化合物A1が完全熔化してから、粗生成物を真空下で乾燥させた。窒素ガス導入と乾燥の工程を、二回以上繰り返し行った。反応器の温度が100℃から低下した際、0.7gの触媒Aを入れた。撹拌機を起動させ、樹脂と触媒を混合するとともに、窒素ガスを導入した。得られた混合物を170℃まで加熱し、反応物が徐々に放熱反応を行うことが確認された。反応物を170℃で2.5時間維持し、リン含有エポキシ樹脂(エポキシ樹脂C8)を得た。その当量は336.6g/当量であり、リン含有量の理論値は2.0wt%であった。それを均一にするために、生成物をメチルエチルケトン(MEK)に溶解して、固形成分含有量を70%に調整した。
【0057】
実施例17
リン含有エポキシ樹脂C9の合成
【化39】
【0058】
100gのエポキシ樹脂3および39gのエステル置換されたリン含有ビスフェノール化合物A1(DMP)を、電気加熱ジャケット、温度調節器、電動撹拌機および撹拌棒、窒素ガス入口、熱電対、水冷式冷却器、供給漏斗を備えた五つ口ガラス反応器に入れた。反応器を130℃まで加熱し、窒素ガスを導入し、エポキシ樹脂3およびエステル置換されたリン含有ビスフェノール化合物A1が完全熔化してから、粗生成物を真空下で乾燥させた。窒素ガス導入と乾燥の工程を、二回以上繰り返し行った。反応器の温度が100℃から低下した際、0.7gの触媒Aを入れた。撹拌機を起動させ、樹脂と触媒を混合するとともに、窒素ガスを導入した。得られた混合物を170℃まで加熱し、反応物が徐々に放熱反応を行うことが確認された。反応物を170℃で2.5時間維持し、リン含有エポキシ樹脂(エポキシ樹脂C9)を得た。その当量は395.6g/当量であり、リン含有量の理論値は2.0wt%であった。それを均一にするために、生成物をメチルエチルケトン(MEK)に溶解して、固形成分含有量を70%に調整した。
【0059】
実施例9〜17の組成物のエポキシ当量(EEW、Epoxy Equivalent Weight)、粘度は、下記測試法で測定された。
エポキシ当量(EEW):エポキシ樹脂をASTM D1652の方法で測定した。
固形成分:リン含有エポキシ樹脂を含有するサンプル1gを取り、150℃のオーブンに60分間置いた後、得られた非揮発性組成成分の重量%を測定した。
【0060】
試験の結果は、表1に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
実施例18〜31
ガラス繊維を前記実施例9〜17のリン含有エポキシ樹脂(リン含有エポキシ樹脂C1〜C9)に含浸させ、160℃で乾燥し、プリプレグを作成した。プリプレグ5枚を畳んで、その頂部および底部に35μmの銅箔シートを置く、 温度210℃、圧力25kg/cm2で積層して、リン含有エポキシ樹脂とガラス繊維織物との積層体を形成した。各積層体の物性は、下記の方法により分析された。
誘電率(Dk)と誘電正接(Df)は、IPC−TM−650−2.5.5.9により測定された。
剥離強度(1オンス(oz)銅)は、IPC−TM−650−2.4.8の方法により測定された。
ガラス転移温度(Tg)は、IPC−TM−650−2.4.25により、示差走査熱量測定計(DSC)を用いて測定された(走査速度:20℃/min)。
熱膨張係数(CTE、ppm/K)は、IPC−TM−650−2.4.24により、TMA(熱機械分析)を用いて測定された(α1はTg前のCTE値であり、α2はTg後のCTE値である)。
熱分解温度(Td、5%重量減少)は、IPC−TM−650−2.3.40により、熱重分析儀(TGA)を用いて測定された(走査速度:10℃/min)。
吸水性(重量%)は、試料を100℃の沸騰水に2時間置いて、重量増加率(rof)を測定した。
耐熱性(S−288)は、JIS−C−6481により、積層体を288℃のはんだ槽に浸入し、その層間剥離時間を測定した。
難燃性は、UL94により測定された。
【0063】
【表C】
【0064】
実施例18〜31の組成物は、表2と表2(a)の通りである。また、測定の結果は、表3および表3(a)に示す。
【0065】
【表2】
【0066】
【表2(a)】
【0067】
【表3】
【0068】
【表3(a)】
【0069】
上記のデータによれば、本発明の組成物が優れた難燃性および熱安定性を提供することを示す。また、上記の比較に基づいて,本発明の組成物は、比較例に比べて、より良好な耐水性および誘電特性を提供する。
【0070】
上記の実施例は例示的説明するものであり、本発明を限定するものではない。本技術分野に習熟した者であれば、本発明の主旨および範疇を逸脱しない範囲で、上記の実施例を修正または変更することができる。そのため、本発明の保護される権利範囲は、添付の特許請求の範囲で定義され、本発明の効果および実施目的に影響を及ぼさない限り、この公開されている技術的内容に含まれるものとすべし。
【0071】
また、本明細書に用いられる用語である「含む」、「有する」および「含有する」の意義は、閉鎖形式の記載ではなく、開放形式の記載である。用語「前記」および「当該」は、複数または単数を含むものとして理解されるべし。「少なくとも1種」は1個または複数個を示し、各組成成分およびそれらの混合/組み合せを表す。すべての範囲および本願で公開されている値は、包含的、且つ、合併することが可能である。例えば、本願の前記のいずれかの数値または点が本願に記載されている範囲に入る場合は、その点またはその数値を下限値または上限値として、サブレンジなどを推知することができる。