(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記解除ボタンとカウンタウェイトとの間には、前記作動部が解除ボタンと当接する方向へ向けて常時付勢する付勢部材が設けられていることを特徴とする請求項1記載のシートベルトバックル装置。
前記解除ボタンの収容空間は、前記カウンタウェイトの作動部が離間して回動する際の前記作動部の下方を案内する案内面を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のシートベルトバックル装置。
【背景技術】
【0002】
従来、シートベルト(図示せず)に設けられたタングプレートを着脱可能に固定するシートベルトバックル装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
例えば、
図8に示すシートベルトバックル装置BKは、タングプレート1がバックルに差し込まれたとき、タングプレート1のラッチ孔1aが、バックル内に設けられたラッチ部材5によって係止されることで、タングプレート1の固定が行われている。
【0003】
一方、タングプレート1の取り外しは、バックル装置BKの解除ボタン3を押して、タングプレート1の挿入方向(図示Y1方向)へスライドさせることで行われる。これにより、ラッチ部材5(または、ラッチ部材をタングプレートへ向かって押さえているロックバー)がタングプレート1から持ち上げられてラッチ孔1aの係止が解除され、タングプレート1が開放される。このように、バックル装置BKは、タングプレート1の脱着が容易な構成となっている。
【0004】
カウンタウェイト4は、フレーム2内に回動軸4aで回動可能に設けられ、作動部4bが解除ボタン3と当接することで解除ボタン3のタングプレート1の挿入方向(Y1方向)へのスライドに対する抵抗となる。
【0005】
また、シートベルトバックル装置BKには、タングプレート1から力を受けて該ラッチ部材5をタングプレート1に向かって回動させて掛け止めさせるロックバー6が設けられている。カウンタウェイト4は、ラッチ部材5をタングプレート1に掛け止めさせる位置のロックバー6を保持する保持部4cを有する。また、カウンタウェイト4は、解除ボタン3のタングプレートの挿入方向(Y1方向)へのスライドによる作動部4bの移動(カウンタウェイト4の回動軸4a回りの反時計回りへの回動)で保持部4c(
図9参照)によるタングプレート1の係止状態が解除される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、シートベルトの装着時において、車両が事故等による衝撃を受けた場合、まずウェビングのリトラクタ(図示せず)からの引き出しがロックされる。さらにリトラクタ等に設けられたプリテンショナによってウェビングが瞬時に巻き取られることで、シートベルトは乗員の身体に緩みなく密着する。ウェビングがプリテンショナに巻き取られたり、その直後にウェビングが乗員からの荷重を受け止めたりすることによって、バックル装置BKはタング側(
図8におけるY2方向)へ引っ張られる。あるいは、バックルプリテンショナの作動によって、バックル装置BKはタングプレート1と反対方向(
図8におけるY1方向)へ引っ張られる。
【0008】
バックル装置BKが上記のようにタングプレート1の方向(
図8におけるY2方向)へ当初の位置から引っ張られた場合、その瞬間に、フレーム2の内部においてスライド可能な解除ボタン3は、慣性によって当初の位置に静止しようとして、バックル装置に対して相対的に解除ボタンを押す方向(Y1方向)に移動しようとする。一方、その反対方向(
図8におけるY1方向)へ当初の位置から引っ張られた場合、その瞬間には、バックル本体2の内部においてスライド可能な解除ボタン3は、慣性によって当初の位置に静止しようとして、バックル装置に対して相対的に引き出す方向(Y2方向)に移動しようとするが、引き出す方向へは動けないので直ぐにバックル装置と一緒にY1方向に移動する。そして、バックル装置BKの当該移動が停止した直後には、解除ボタン3はバックル装置BKが移動した方向(Y1)へ慣性によってスライドしようとする。つまり、バックル装置BKの移動や停止の際には、慣性によって解除ボタンにY1方向への加速度が発生する。これらのこうした慣性の作用で、解除ボタン3がバックル内部で、解除ボタンを押す方向(Y1方向)へスライドしてしまい、タングプレート1を解除してしまうおそれがある。それをなくすために、解除ボタン3に対するおもりの役割を担う上記カウンタウェイト(カウンタウェイト付きストッパ)4が設けられ、慣性による解除ボタン3のスライド防止が図られている。
【0009】
一方、カウンタウェイト4にも上記と同様な慣性が作用するから、解除ボタン3の慣性力とカウンタウェイト4の慣性力とのバランスをとることが重要であり、従来、解除ボタン3の慣性力とカウンタウェイト4の慣性力とのバランス調整が図られている。
【0010】
しかしながら、車両の衝突時、例えば
図9に示すように、解除ボタン3とカウンタウェイト4にY2方向の慣性力が作用し、解除ボタン3の慣性力F3に対し、カウンタウェイト4の慣性力F4が大きくなってしまう可能性が考えられる。
【0011】
シートベルトバックル装置BKでは、カウンタウェイト4の作動部4bは、解除ボタン3に設けられた凹溝3hに嵌まっていて、タングプレートの挿入方向手前側(
図8、
図9において左側)の側面3h1、挿入方向奥側(
図8、
図9において右側)の側面3h2のいずれにおいても当接している。
【0012】
そのため、例えば
図9に示すように、解除ボタン3の慣性力F3よりも大きな慣性力F4がカウンタウェイト4に作用した場合、従来のバックル装置BKでは、フレーム2に回動軸4aで回動可能に設けられたカウンタウェイト4が上記慣性力F4で回動軸4a回りに反時計回りへ回動し、作動部4bが解除ボタン3の挿入方向奥側側面3h2と当接することで解除ボタン3がタングプレートの挿入方向(Y1方向)、すなわち解除方向へスライドし、タングプレート1の係止状態が偶発解除される可能性がある。このため、従来の設計では、Y2方向の慣性力が作用する場合、解除ボタン3の慣性力F3>カウンタウェイト4の慣性力F4を満足するように設計される必要がある。したがって、カウンタウェイトの設計は、このような偶発解除防止の観点からも、解除ボタン3とカウンタウェイト4の質量バランスを考慮する必要があり、設計の狙える範囲が狭く、また、シビアな寸法管理、質量管理が必要であった。
【0013】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両衝突時にタングプレートの係止状態が偶発解除されるのを防止するシートベルトバックル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) シートベルトに設けられたタングプレートを着脱可能に固定するシートベルトバックル装置であって、
前記タングプレートが挿入される外装ケースと、
前記外装ケース内に挿入されたタングプレートに連動し、前記タングプレートを係止するラッチ部材と、
前記外装ケースに対してスライド可能に装着され、外装ケースの内部方向へスライドするとき、前記タングプレートの前記ラッチ部材に対する係止状態を解除する解除ボタンと、
前記解除ボタンからの力を受けて回動するカウンタウェイトと、
を備え、
前記カウンタウェイトは、
前記外装ケースに対して該カウンタウェイトを回動可能に支持する回動軸と、
前記解除ボタンに形成された収容空間に配置され、該解除ボタンのスライドによって該カウンタウェイトを回動させる力を受ける作動部と、
を有し、
前記解除ボタンの前記収容空間の前記タングプレートの挿入方向と反対側の部分は、前記カウンタウェイトの作動部と当接できるように形成され、且つ、前記収容空間の前記カウンタウェイトの作動部に対して前記タングプレートの挿入方向側の部分は、開放されていることを特徴とするシートベルトバックル装置。
(2) 前記解除ボタンとカウンタウェイトとの間には、前記作動部が解除ボタンと当接する方向へ向けて常時付勢する付勢部材が設けられていることを特徴とする(1)記載のシートベルトバックル装置。
(3) 前記タングプレートから力を受けて該ラッチ部材を前記タングプレートに向かって回動させて掛け止めさせるロックバーをさらに備え、
前記カウンタウェイトは、前記ラッチ部材を前記タングプレートに掛け止めさせる位置の前記ロックバーを保持する保持部を有することを特徴とする(1)または(2)記載のシートベルトバックル装置。
(4) 前記解除ボタンの収容空間は、前記カウンタウェイトの作動部が離間して回動する際の前記作動部の下方を案内する案内面を有することを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のシートベルトバックル装置。
【発明の効果】
【0015】
本発明のシートベルトバックル装置によれば、カウンタウェイトは、解除ボタンに形成された収容空間に配置され、該解除ボタンのスライドによって該カウンタウェイトを回動させる力を受ける作動部を有する。そして、解除ボタンの収容空間のタングプレートの挿入方向と反対側の部分は、カウンタウェイトの作動部と当接できるように形成され、且つ、収容空間のカウンタウェイトの作動部に対してタングプレートの挿入方向側の部分は、開放されている。
これにより、大きな慣性力がカウンタウェイトに作用し、カウンタウェイトの作動部がタングプレートの挿入方向側へ回動したとしても、カウンタウェイトの上記回動はいわば空振り状態となり、結果として、解除ボタンは解除方向へはスライドしない。また、解除ボタンの慣性力は、該解除ボタンを初期位置に押し付けるように作用する。したがって、本発明によれば、設計上の制約を少なくでき、かつ、高い耐G性能が得られ、車両衝突時、タングプレートの係止状態が偶発解除されるのをより確実に防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態に係るシートベルトバックル装置について、図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
図1に示すように、バックル装置10は、外装ケースとしての上ケース12および下ケース13を有するバックル本体11と、バックル本体11に着脱されるタングプレート14とを備えている。
【0019】
外装ケース内には、一対の側壁20a、20bと、それら一対の側壁20a、20b間に設けられた底壁20cとを備え、底壁20cの上面をタングプレート14の挿入路とした断面U字形状の金属製のフレーム(ベース部材)20が設けられており、そのフレーム20の内側には、金属製のラッチ部材30が取り付けられている。
【0020】
ラッチ部材30は、一端部(図示Y1側の端部)に、図示X1およびX2方向に突出する支持腕31、32を有しており、それら支持腕31、32を、フレーム20の側壁20a、20bに設けられた支持溝21、22に係合させることにより、フレーム20に図示Z1およびZ2方向に揺動自在に支持されている。ラッチ部材30の中央には開口33が設けられ、その開口33の縁部には、図示Y2方向に突出する係止凸部34が設けられている。また、ラッチ部材30の他端部(図示Y2側の端部)には、図示Z2方向に突出したラッチ突片35が設けられている。このラッチ突片35は、フレーム20の底壁20cに形成されたラッチ孔23に係脱する部分である(
図5,
図6参照)。
【0021】
また、ラッチ部材30とフレーム20の底壁20cとの間には、樹脂製のイジェクタ40が設けられている。イジェクタ40は、フレーム20上にタングプレート14の着脱方向に沿ってスライド可能に設けられており、タングプレート14がフレーム20の挿入路に挿入されたとき、非装着時位置から装着時位置にスライドし、ラッチ部材30のタングプレート14に対するラッチが解除されたときに、装着時位置から非装着時位置にスライドすることにより、タングプレート14をバックル本体11から押し出す役目を果たす(
図5,
図6参照)。
【0022】
イジェクタ40は、U字形状に形成された基部41と、その基部41の両先端部から両側方向(X1およびX2方向)に延びる腕部42とを有している。また、基部41の図示Y2側の面には被押圧部44が設けられている。さらに、腕部42のピン孔48には、スライダ100のピン102が取り付けられており、スライダ100は、タングプレート14の装着状態を検出するためのスイッチを構成する移動接点部材110を支持する。
【0023】
両腕部42は、フレーム20の両側壁20a、20bと底壁20cとの間にそれぞれ形成されたスリット24に挿通されており、各先端はフレーム20の外側に延びている。そして、腕部42がこれらスリット24内を移動することにより、イジェクタ40がフレーム20上でタングプレート14の挿脱方向にスライド可能となっている。
【0024】
イジェクタ40のU字形状の基部41には、軸部52がその保持孔41h(
図5,
図6参照)に挿入され、先端が曲面で形成された係止部51を有するカンチレバー50が回動自在に取り付けられている。カンチレバー50の表面(図示の裏側)には、ばね保持突出部53が形成されており、ばね保持突出部53とラッチ部材30の係止凸部34との間に、コイルスプリングなどからなるイジェクタスプリング70が圧縮状態で介装され、ばね保持突出部53と係止凸部34との間に互いに離間する方向の付勢力が作用している(
図2、
図5参照)。従って、イジェクタスプリング70は、常にカンチレバー50の先端である係止部51側を、
図1、
図5の反時計回りに付勢している。
【0025】
また、フレーム20の両側壁20a、20bの図示Y2側には、図示Y1およびY2方向に延びる長溝と、図示Z2方向に落ち込む凹溝とからなる切欠部26が形成されている。切欠部26の凹溝には、カウンタウェイト60の回動軸63が揺動自在に係合されている。カウンタウェイト60の図示Z2方向の下端には、図示X1およびX2方向に延びる作動部61が形成され、Y1方向の先端には保持部62が一体に形成されている(
図5参照)。なお、保持部62は、下記に説明するロックバー80の移動軌跡内に配置されている。
【0026】
更に、フレーム20の両側壁20a、20bには、略L字形状に穿設された案内孔27が対称に形成され、これら案内孔27にロックバー80が挿通され、ロックバー80は、案内孔27内をカンチレバー50と共に移動可能である。また、ロックバー80は、カンチレバー50の係止部51に係止され、且つカウンタウェイト60の保持部62に保持されている。
【0027】
また、フレーム20のY2側には、タングプレート14の着脱方向に移動自在な解除ボタン90が設けられている。解除ボタン90は、上ケース12のY2側に設けられた開口12aを介して外部に露出する操作部91と、該操作部91から図示Y1方向に延びる一対の脚部92とを有している。脚部92の先端部には操作凹部93が形成されており、操作凹部93には、フレーム20の案内孔27から外部に延びたロックバー80の両端が挿入されている。
【0028】
脚部92の両内面には、内側方向に突出すると共に図示Y1およびY2方向に延びる案内凸部95が形成されている。案内凸部95は、フレーム20に形成された切欠部26の長溝内にそれぞれ挿入されている。解除ボタン90がY1およびY2方向に移動するとき、案内凸部95が切欠部26の長溝によって案内される。よって、解除ボタン90は、フレーム20の底壁20cに対して平行に移動することができる。
【0029】
図3〜
図5に示すように、解除ボタン90には、操作部91のY1側の面から突出する収容空間96が設けられている。収容空間96は、カウンタウェイト60(
図5)の作動部61の、タングプレートの挿入方向(矢印Y1方向)と反対側の部分61bと当接するように形成され、且つ、カウンタウェイト60の作動部61に対してタングプレートの挿入方向側が開放されている。
つまり、収容空間96のタングプレートの挿入方向と反対側の部分は、カウンタウェイト60の作動部61と当接できるように形成され、且つ、収容空間96のカウンタウェイト60の作動部に対してタングプレートの挿入方向側の部分は、開放されている。
具体的に、収容空間96は、カウンタウェイト60の作動部61が当接可能で、上下方向に延出する当接面96bと、該当接面96bから図示Y1方向に延在し、カウンタウェイト60の作動部61が離間して回動する際の作動部61の下方を案内する案内面96cとを有する。なお、案内面96cのX方向中央部のY1側は、フレーム20の底壁20cに設けられた案内孔23の上方を開放するように開口部96dが形成されている。
【0030】
図5において、解除ボタン90の操作部91を図示Y1方向に押圧操作すると、当接面96bがカウンタウェイト60の作動部61を図示Y1方向に加圧するため、カウンタウェイト60を
図1の反時計回りに回動させることができる。
一方、カウンタウェイト60自体が反時計回りに回動しても、作動部61はいわば空振り状態となり(
図7)、結果として、解除ボタン90は解除方向(Y1方向)へはスライドしない。
【0031】
図1,
図2,
図5に示すように、解除ボタン90とカウンタウェイト60との間には、付勢部材であるコイルスプリング71が設けられている。コイルスプリング71は、カウンタウェイト60を、その作動部61が解除ボタン90と当接する方向(
図5において時計回り)へ向けて常時付勢している。
図5において97は解除ボタン90に設けられた突起状のばね受部、
図1において67はカウンタウェイト60に設けられた凹部状のばね受部である。
【0032】
以上のようなバックル本体11は、フレーム20、ラッチ部材30、イジェクタ40、カンチレバー50、カウンタウェイト60、イジェクタスプリング70、コイルスプリング71,およびロックバー80などを有して、これらが内部に配置された上ケース12及び下ケース13をねじ15によって固定される。
【0033】
次に、本実施形態のシートベルト装置の動作について説明する。
(1)初期状態(非ラッチ状態=シートベルト非装着状態)
図5に示すように、タングプレート14(
図1)がバックル本体11に装着されていない初期状態においては、イジェクタ40はイジェクタスプリング70の付勢力により開口12a側である図示Y2方向に移動させられている。またカンチレバー50は軸部52を中心に時計回りに回動させられ、カウンタウェイト60は、解除ボタン90のY2方向の位置に応じて回動軸63を中心に回動させられている。このとき、ロックバー80は案内孔27内の垂直方向の上端部に移動しており、カウンタウェイト60の保持部62による掛止を受けない状態にある。
【0034】
ただし、カンチレバー50は時計回りに回動された状態にあり、ばね保持突出部53の高さ位置は係止凸部34の高さ位置よりも図示Z2側の下方に位置するため、イジェクタスプリング70の付勢力の水平成分(Y方向の成分)を受けたカンチレバー50の係止部51がロックバー80を図示Y2方向に圧接している。このため、ロックバー80の両端部は、案内孔27内の垂直方向の上端部の図示Y2側の縁部に押し付けられている。
【0035】
またラッチ部材30は、圧縮状態にあるイジェクタスプリング70の付勢力の垂直成分(Z1方向の成分)によって時計回りに回動させられている。よってラッチ部材30のラッチ突片35は、フレーム20底壁20cから図示Z1方向に離れた非ラッチ位置に保持されている。
【0036】
(2)ラッチ状態への動作
次に、
図6を参照してタングプレート14がバックル本体11に装着されたラッチ状態について説明する。
【0037】
バックル本体11側の解除ボタン90の下端部97とフレーム20の底壁20cとの間の隙間にタングプレート14の先端部を挿入すると、タングプレート14の先端部はイジェクタ40の被押圧部44に当接すると共に、イジェクタ40を挿入方向である図示Y1方向に移動させる。このとき、カンチレバー50の軸部52がイジェクタスプリング70の付勢力に抗してイジェクタ40と共に挿入方向に移動させられるが、カンチレバー50の係止部51はロックバー80をY2方向に圧接しているため、カンチレバー50がロックバー80を軸として反時計回りに回動させられる。
【0038】
カンチレバー50が反時計回りに回動すると、ばね保持突出部53が図示Z1方向に移動させられ、ばね保持突出部53の高さ位置が、ラッチ部材30の係止凸部34と略同じ高さ位置に設定される。このとき、イジェクタスプリング70は、圧縮変形させられると共に図示Z1方向に凸をなすように湾曲変形させられるため、イジェクタスプリング70の付勢力の垂直成分が図示Z2方向に作用する。よって、カンチレバー50は付勢力のZ2方向の成分によりさらに反時計回りに回動させられる。
【0039】
カンチレバー50が反時計回りに回動すると、カンチレバー50の係止部51がロックバー80を係止しながら図示Z2方向に押し下げる。このとき、ロックバー80が案内孔27の図示Y2側の縁部に沿ってZ2方向の角部へ向かって垂直に移動すると共に、ラッチ部材30を図示Z2方向に押圧するため、ラッチ部材30が支持腕31、32(
図2)を中心に反時計回りへ回動させられる。このとき、ラッチ部材30の先端のラッチ突片35がタングプレート14に設けられたラッチ孔14aに挿入されると共に、フレーム20の底壁20cに設けられた案内孔23に入り込むため、タングプレート14がラッチ部材30によってラッチされる(ラッチ状態)。
【0040】
タングプレート14がラッチ部材30によってラッチされると、タングプレート14のY1方向への挿入動作は停止される。ただし、カンチレバー50には、イジェクタスプリング70の付勢力の水平成分が図示Y2方向に作用しているため、カンチレバー50を搭載したイジェクタ40が図示Y2方向にわずかに移動させられる。これは、係止部51の掛止凸部51aに係止されているロックバー80の両端部が、案内孔27の角部から案内孔27の保持部まで水平に移動させられるためである。
【0041】
このとき、ロックバー80がY2方向に移動させられると、その両端が解除ボタン90の操作凹部93(
図2)を図示Y2方向に押圧するため、解除ボタン90がわずかに押し戻される。これにより、カウンタウェイト60が回動軸63を中心に反時計回りに回動させられるため、カウンタウェイト60の保持部62がロックバー80を押さえ込み、ロックバー80が元の状態に戻らないようにロックされる。よって、ロックバー80によって図示Z2方向に押圧されたラッチ部材30が容易に時計回りに回動するようなことがなく、ラッチ部材30はタングプレート14を強固にラッチすることが可能となっている。
【0042】
(3)ラッチ状態の解除動作
図6に示す状態から、解除ボタン90を図示Y1方向に押圧操作すると、解除ボタン90の当接面96bがカウンタウェイト60の作動部61を図示Y1方向に加圧するため、カウンタウェイト60が回動軸63回りに反時計回りに回動させられる。よって、カウンタウェイト60の保持部62によるロックバー80の掛止が解除される。
【0043】
同時に、解除ボタン90の操作凹部93(
図2)がロックバー80の両端をY1方向に押圧するため、ロックバー80が案内孔27内を水平にY1方向に移動させられる。このとき、ロックバー80は、カンチレバー50の掛止凸部51aをY1方向に押し込むため、カンチレバー50およびイジェクタ40がY1方向に移動させられ、これによりイジェクタスプリング70が圧縮させられる。
【0044】
さらに解除ボタン90が押し込まれ、ロックバー80が案内孔27の角部をY1方向に越えると、カンチレバー50が時計回りに素早く回動させられる。この回動動作により、ロックバー80はカンチレバー50の係止凸部51aによって持ち上げられ、案内孔27に沿って垂直方向の上端部へ移動させられる。
【0045】
同時に、カンチレバー50のばね保持突出部53の高さ位置が、ラッチ部材30の係止凸部34の高さ位置よりも図示Z2側の下方に設定される(
図5参照)。このため、ラッチ部材30が圧縮状態にあるイジェクタスプリング70の付勢力の垂直成分(Z1方向の成分)によって時計回りに回動させられる。よって、ラッチ部材30のラッチ突片35が、タングプレート14に設けられたラッチ孔14aおよびフレーム20の案内孔23から離脱するため(非ラッチ状態)、
図5に示したような、ラッチ部材30によるタングプレート14のラッチが解除された初期状態に復帰する。
【0046】
また、カンチレバー50が素早く時計回りに回動すると、イジェクタ40が図示Y2方向に勢いよく押し出される。このときイジェクタ40の被押圧部44(
図6)がタングプレート14の先端をY2方向に一気に押し出すため、タングプレート14が開口12aから勢いよく排出させられる。
【0047】
さらに、
図7に示すように、車両衝突時、衝撃力やプリテンショナの引き込み力などで、大きな慣性力F4がカウンタウェイト60に作用し、カウンタウェイト60自体が反時計回りに回動したとしても、収容空間96は、カウンタウェイト60の作動部61に対してタングプレート14の挿入方向(Y1)側が開放されているため、カウンタウェイト60の上記回動はいわば空振り状態となり、結果として、解除ボタン90は解除方向へはスライドしない。また、解除ボタン90の慣性力F3は、該解除ボタン90を初期位置に押し付けるように作用する。
これにより、カウンタウェイト60の保持部62によるロックバー80の掛止が一時的に解除されたとしても、ロックバー80が案内孔27内での位置が維持されるので、カンチレバー50によるロックバー80の係止が維持され、タングプレート14のラッチ状態が維持される。
したがって、高い耐G性能が得られ、車両衝突時にカウンタウェイト60に大きな慣性力が作用したとしても、タングプレート14の係止状態が偶発解除されるのを防止できる。
また、この構成によれば、カウンタウェイト60の設計上の制約を少なくでき、カウンタウェイト60の質量を解除ボタンの質量に依らず調整することができ、さらに、カウンタウェイト60のモーメントを大きくすることができる。
【0048】
また、解除ボタン90とカウンタウェイト60との間には、カウンタウェイト60を、その作動部61が解除ボタン90と当接する方向へ向けて常時付勢するコイルスプリング71が設けられているので、
図7に示すように回動したカウンタウェイト60をもとの位置(
図6に示す位置)に復帰させることができる。
【0049】
さらに、解除ボタン90の収容空間96は、カウンタウェイト60の作動部61が離間して回動する際の作動部61の下方を案内する案内面96cを有するので、作動部61は、安定した姿勢で回動することができる。
【0050】
なお、本発明は、上記実施形態に例示したものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。