(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6487918
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】自己注射器
(51)【国際特許分類】
A61M 5/20 20060101AFI20190311BHJP
A61M 5/32 20060101ALI20190311BHJP
【FI】
A61M5/20 572
A61M5/32 510R
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-534235(P2016-534235)
(86)(22)【出願日】2014年11月21日
(65)【公表番号】特表2016-539696(P2016-539696A)
(43)【公表日】2016年12月22日
(86)【国際出願番号】FR2014052997
(87)【国際公開番号】WO2015075399
(87)【国際公開日】20150528
【審査請求日】2017年10月27日
(31)【優先権主張番号】1361557
(32)【優先日】2013年11月25日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502343252
【氏名又は名称】アプター フランス エスアーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110001900
【氏名又は名称】特許業務法人 ナカジマ知的財産綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファビアン ダヴィッド
【審査官】
川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】
特表2013−529985(JP,A)
【文献】
特表2013−529989(JP,A)
【文献】
特表2010−540059(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0167611(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/20
A61M 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己注射器であって、
流体を収容しピストン及び注射針を有する事前充填型シリンジなどである貯蔵器を収容する本体(1)を有し、
前記自己注射器は、ユーザの体と接触する接触端部(11)を有するアクチュエータスリーブ(10)をさらに有し、
前記アクチュエータスリーブ(10)は、前記本体(1)に対し、前記アクチュエータスリーブ(10)の少なくとも一部が前記本体(1)から突出する複数の突出位置と、前記アクチュエータスリーブ(10)が前記本体(1)内へと軸方向に移動する駆動位置との間を移動可能であり、
前記アクチュエータスリーブ(10)は、前記自己注射器の駆動前には第1突出位置にあり、前記自己注射器の駆動後には第2突出位置にあり、
前記アクチュエータスリーブ(10)と前記本体(1)の一方は可撓性タブ(110)を有し、当該可撓性タブ(110)は、駆動前に前記アクチュエータスリーブ(10)が前記第1突出位置から前記駆動位置へと移動するとき、及び/又は使用後、前記アクチュエータスリーブ(10)が前記駆動位置から前記第2突出位置へと移動するときに、前記アクチュエータスリーブ(10)及び/又は前記本体(1)に対して横方向に変形し、
前記アクチュエータスリーブ(10)と前記本体(1)の他方は、前記第1突出位置において前記可撓性タブ(110)と協働する初期領域(102)、前記駆動位置において前記可撓性タブ(110)と協働する中間領域(105)、及び前記第2突出位置において前記可撓性タブ(110)と協働する最終収容領域(106)を有し、
前記最終収容領域(106)は、前記初期領域(102)から少なくとも横方向にずれており、
前記自己注射器は、変形可能軸方向壁(1020)の弾性変形により前記可撓性タブ(110)を前記初期領域(102)から前記中間領域(105)へと進入できるようにさせ、次に前記変形可能軸方向壁(1020)が変形していない姿勢に戻ると、前記可撓性タブ(110)を前記中間領域(105)から前記最終収容領域(106)へと案内するように構成されており、
前記アクチュエータスリーブ(10)は、前記初期領域(102)と前記中間領域(1
05)をつなぐ少なくとも1つの第1溝(101)を有し、
当該第1溝(101)は前記変形可能軸方向壁(1020)を含み、
前記第1溝(101)は、前記第1溝(101)内に向けて横方向に突出する肩部(1
010)を有し、
前記肩部(1010)は、前記初期領域(102)に面した傾斜壁(1015)を有し、
当該傾斜壁(1015)は、前記可撓性タブ(110)を横方向に変形させ、当該変形により前記可撓性タブ(110)は前記変形可能軸方向壁(1020)を変形させる
ことを特徴とする自己注射器。
【請求項2】
前記肩部(1010)は、前記変形可能軸方向壁(1020)に面している
請求項1に記載の自己注射器。
【請求項3】
前記第1溝(101)は実質的に軸方向溝であり、傾斜した第2溝(103)を介して、及び/又は軸方向第3溝(104)を介して前記中間領域(105)とつながっている請求項1又は2に記載の自己注射器。
【請求項4】
前記最終収容領域(106)は、最終溝(107)を介して前記中間領域(105)とつながり、
軸方向肩部(108)が前記最終収容領域(106)と前記最終溝(107)との間に設けられ、
前記可撓性タブ(110)は、前記アクチュエータスリーブ(10)が前記駆動位置から前記第2突出位置に復帰するときに前記最終溝(107)内をスライドし、
前記可撓性タブ(110)は、使用後、前記アクチュエータスリーブ(10)が前記第2突出位置に到達すると、前記軸方向肩部(108)にスナップ留めされ、それによって前記アクチュエータスリーブ(10)が前記本体(1)に対してロックされる
請求項1から3までのいずれかに記載の自己注射器。
【請求項5】
前記最終収容領域(106)は、前記初期領域(102)に対して軸方向にずれている
請求項4に記載の自己注射器。
【請求項6】
前記最終溝(107)は、傾斜しており、前記変形可能軸方向壁(1020)を含む
請求項4又は5に記載の自己注射器。
【請求項7】
前記可撓性タブ(110)の前記最終収容領域(106)内での前記スナップ留めは、
クリック音などの音を発生する
請求項4から6までのいずれかに記載の自己注射器。
【請求項8】
前記変形可能軸方向壁(1020)の前記弾性変形は、クリック音などの音を発生する
請求項1から7までのいずれかに記載の自己注射器。
【請求項9】
前記可撓性タブ(110)は、前記初期領域(102)、前記中間領域(105)、及び前記最終収容領域(106)間で前記第1溝及び前記最終溝(101,107)内をスライドするヘッド(112)を有し、
前記ヘッド(112)は、少なくとも部分的に傾斜し、前記アクチュエータスリーブ(10)が駆動位置から第2突出位置に復帰するときに前記変形可能軸方向壁(1020)の傾斜端部と協働し、前記ヘッド(112)を前記最終溝(107)内へと案内する前端壁(1120)を有する
請求項1から8までのいずれかに記載の自己注射器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自己注射器に関する。
【背景技術】
【0002】
自己注射器は従来技術においてよく知られている。そうした注射器の目的は主にシリンジの内容物を自動的に患者の体内に注射することである。患者の体内への注射針の穿通及びシリンジに収容された流体の注射を自動的に行うための様々なシステムが存在している。
自己注射器は比較的複雑な装置であり、高い信頼性を持つためには一定数の制約要件を満たさなければならない。注射器の頑強性、取り扱い性、及びユーザにとっての使用の容易さもまた重要な要素である。加えて、ほとんどの自己注射器が1回使用型であるため、製造及び組立にかかるコストも考慮に入れなければならない要素である。
【0003】
市場にはおびただしい数の自己注射器が存在しているが、それらは全てある一定数の欠点を有する。
従って自己注射器が、例えば移送中や保管中に意図せず起動するのを防ぐためには、信頼性の高いロック手段を有するべきである。加えて、ユーザが自己注射器を使用しようとして、例えばキャップを外すことによって注射器のロックを解除するときに、意図せず起動されるべきではない。ユーザが実際に注射器を起動しようとするとき、即ちユーザが注射を行おうとする体の一部に注射器をあてがったときにのみ起動されるべきである。
【0004】
残念ながら、特に自己注射器を使用するのが高齢者或いは障碍者である場合、使用の際に落としてしまうことがあり得る。そのような場合でも、自己注射器は起動されないことが望ましい。従って、自己注射器に信頼性の高いトリガロック機構を提供することが重要である。同様に、自己注射器の使用法は難しすぎてはいけない。虚弱な人々が注射器を使う妨げになるからである。
【0005】
そうした理由で、安全なロックと自己注射器の使用及び駆動の容易さのちょうどいい妥協点を見出すことは難しい。本発明の目的はこの問題に対応することである。
さらに、使用後に負傷するリスクを回避するためには、自己注射器は使用後に注射針が露出された状態が続くことを避ける注射針安全装置を有するべきである。勿論、この安全装置は信頼性が高く、容易には解除されないものであるべきである。またこの注射針安全装置は、例えばユーザが注射の終了よりも前に体から離してしまうなど、ユーザの自己注射器の駆動の仕方に落ち度がある場合であっても機能すべきである。
【0006】
特許文献1〜4には、従来の注射器が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開2012−045833号公報
【特許文献2】仏国特許公開第2,884,722号公報
【特許文献3】国際公開96−32974号公報
【特許文献4】国際公開2012−000832号公報
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、上述の欠点を持たず、自己注射器の安全で信頼性の高い使用に関する様々な主要な要件及び制約を満たすことを可能とする自己注射器を提供することである。
本発明の別の目的は、使用の際の信頼性が高く、安全で負傷のリスクを防ぎ、製造及び組立が容易かつ安価に行える自己注射器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従って本発明は、自己注射器であって、流体を収容しピストン及び注射針を有する事前充填型シリンジなどである貯蔵器を収容する本体を有し、前記自己注射器は、ユーザの体と接触する接触端部を有するアクチュエータスリーブをさらに有し、前記アクチュエータスリーブは、前記本体に対し、前記アクチュエータスリーブの少なくとも一部が前記本体から突出する複数の突出位置と、前記アクチュエータスリーブが前記本体内へと軸方向に移動する駆動位置との間を移動可能であり、前記アクチュエータスリーブは、前記自己注射器の駆動前には第1突出位置にあり、前記自己注射器の駆動後には第2突出位置にあり、前記アクチュエータスリーブと前記本体の一方は可撓性タブを有し、当該可撓性タブは
、駆動前に前記アクチュエータスリーブが前記第1突出位置から前記駆動位置へと移動する
とき、及び/又は使用後、前記アクチュエータスリーブ(10)が前記駆動位置から前記第2突出位置
へと移動するときに、前記アクチュエータスリーブ及び/又は前記本体に対して横方向に変形し、前記アクチュエータスリーブと前記本体の他方は、前記第1突出位置において前記可撓性タブと協働する初期領域、前記駆動位置において前記可撓性タブと協働する中間領域、及び前記第2突出位置において前記可撓性タブと協働する最終収容領域を有し、前記最終収容領域は、前記初期領域から少なくとも横方向にずれており、前記自己注射器は、変形可能軸方向壁の弾性変形により前記可撓性タブを前記初期領域から前記中間領域へと進入できるようにさせ、次に前記変形可能軸方向壁が変形していない姿勢に戻ると、前記可撓性タブを前記中間領域から前記最終収容領域へと案内するように構成されて
おり、前記アクチュエータスリーブは、前記初期領域と前記中間領域をつなぐ少なくとも1つの第1溝を有し、当該第1溝は前記変形可能軸方向壁を含み、前記第1溝は、前記第1溝内に向けて横方向に突出する肩部を有し、前記肩部は、前記初期領域に面した傾斜壁を有し、当該傾斜壁は、前記可撓性タブを横方向に変形させ、当該変形により前記可撓性タブは前記変形可能軸方向壁を変形させることを特徴とする自己注射器を提供する。
【0011】
好ましい構成としては、前記肩部は、前記変形可能軸方向壁に面している
。
【0012】
好ましい構成としては、前記第1溝は実質的に軸方向溝であり、傾斜した第2溝を介して、及び/又は軸方向第3溝を介して前記中間領域とつながっている。
好ましい構成としては、前記最終収容領域は、最終溝を介して前記中間領域とつながり、軸方向肩部が前記最終収容領域と前記最終溝との間に設けられ、前記可撓性タブは、前記アクチュエータスリーブが前記駆動位置から前記第2突出位置に復帰するときに前記最終溝内をスライドし、前記可撓性タブは、使用後、前記アクチュエータスリーブが前記第2突出位置に到達すると、前記軸方向肩部にスナップ留めされ、それによって前記アクチュエータスリーブが前記本体に対してロックされる。
【0013】
好ましい構成としては、前記最終収容領域は、前記初期領域に対して軸方向にずれている。
好ましい構成としては、前記最終溝は、傾斜しており、前記変形可能軸方向壁を含む。
好ましい構成としては、前記可撓性タブの前記最終収容領域内での前記スナップ留めは、クリック音などの音を発生する。
【0014】
好ましい構成としては、前記変形可能軸方向壁の前記弾性変形は、クリック音などの音を発生する。
好ましい構成としては、前記可撓性タブは、前記初期領域、前記中間領域、及び前記最終収容領域間で前記第1溝及び前記最終溝内をスライドするヘッドを有し、前記ヘッドは、少なくとも部分的に傾斜し、前記アクチュエータスリーブが駆動位置から第2突出位置に復帰するときに前記変形可能軸方向壁の傾斜端部と協働し、前記ヘッドを前記最終溝内へと案内する前端壁を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明の特徴や利点は、非限定的な例に基づき以下に示す詳細な説明及び添付図面を参照することにより、より明確となる。
【
図1】好ましい実施の形態における自己注射器の部分切欠図である。
【
図2】
図1の自己注射器の使用の第1番目の手順におけるロック機構を詳細に示した部分図である。
【
図3】
図1の自己注射器の使用の第2番目の手順におけるロック機構を詳細に示した部分図である。
【
図4】
図1の自己注射器の使用の第3番目の手順におけるロック機構を詳細に示した部分図である。
【
図5】
図1の自己注射器の使用の第4番目の手順におけるロック機構を詳細に示した部分図である。
【
図6】
図1の自己注射器の使用の第5番目の手順におけるロック機構を詳細に示した部分図である。
【
図7】
図1の自己注射器の使用の第6番目の手順におけるロック機構を詳細に示した部分図である。
【
図8】第2の好ましい実施の形態における自己注射器の使用の第1番目の手順におけるロック機構を詳細に示した部分図である。
【
図9】第2の好ましい実施の形態における自己注射器の使用の第2番目の手順におけるロック機構を詳細に示した部分図である。
【
図10】第2の好ましい実施の形態における自己注射器の使用の第3番目の手順におけるロック機構を詳細に示した部分図である。
【
図11】第2の好ましい実施の形態における自己注射器の使用の第4番目の手順におけるロック機構を詳細に示した部分図である。
【
図12】第2の好ましい実施の形態における自己注射器の使用の第5番目の手順におけるロック機構を詳細に示した部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に示された自己注射器は本体1を有し、アクチュエータスリーブ10が本体1内を軸方向にスライドする。アクチュエータスリーブ10は、患者の体の注射領域の周りに接触する下端部11を(
図1に示された向きに)有する。
公知のように、本体1には注射される流体を収容する貯蔵器、当該流体が通って投与されるための注射針、投与を行うために貯蔵器内を移動するピストン、及びピストンを動かすためにピストンと協働する自動注射システムが収容されている。これらは、自己注射器においては通常の構成要素であり、簡明にするために図示していない。これらは適切な部材であればどのようなものを用いてもよいが、具体的には仏国特許公開第2,990,862号公報、仏国特許公開第2,990,863号公報、仏国特許公開第2,990,864号公報、仏国特許公開第2,990,865号公報、仏国特許公開第2,990,866号公報、仏国特許公開第2,990,867号公報、仏国特許公開第2,990,868号公報、仏国特許公開第2,990,869号公報、及び仏国特許公開第2,990,870号公報において説明されているような部材から作られる。一般的には、貯蔵器は従来型の事前充填型シリンジであってもよい。
【0017】
駆動前には、アクチュエータスリーブ10は第1突出位置にあり、注射針を覆っている。駆動中には、アクチュエータスリーブ10は本体1内を駆動位置に向かってスライドし注射針を露出させ、注射針の穿刺と流体の注入を可能にする。注入後には、アクチュエータスリーブ10は注射針による負傷のリスクを回避するために、注射針の周りに再び配される第2突出位置へと復帰する。アクチュエータスリーブ10は、バネ5によって上述の突出位置に向かって付勢されるのが望ましい。バネ5はどのようなタイプのものであってもよい。
【0018】
アクチュエータスリーブ10は第1溝101を有する。第1溝101は好ましくは軸方向溝であり、初期領域102から中間領域105に向かって伸びる。第1溝101は弾性変形可能な軸方向壁1020を有する。好ましくは傾斜溝である第2溝103、及び/又は好ましくは軸方向溝である第3溝104が第1溝101と中間領域105とをつなぐのが望ましい。
【0019】
アクチュエータスリーブ10はまた、最終収容領域106を有している。最終収容領域106は初期領域102に対して少なくとも横方向にずれており、好ましくは傾斜溝である最終溝107を介して中間領域105とつながっている。最終収容領域106と最終溝107の間には、軸方向肩部108が設けられている。
本体1は、横方向に可撓性を有する、即ち本体1の外縁方向に変形するタブ110を有する。以下で説明するように、可撓性タブ110は、上述のアクチュエータスリーブ10の複数の溝及び複数の肩部と協働するヘッド112を有するのが望ましい。
【0020】
更に具体的には、
図2〜7がアクチュエータスリーブ10と本体1の間に形成されたロック機構の動作を示す。
図2はユーザが自己注射器を使用し始めるときの位置である初期位置を示す。
図2においては、可撓性タブ110のヘッド112が第1溝101の初期領域102にあることが分かる。アクチュエータスリーブ10が本体1内へとスライドすると、可撓性タブ110のヘッド112は第1溝101内をスライドする。ヘッド112が
図3における位置、即ち一方の片側では第2溝103と、他方の片側では変形可能軸方向壁1020と協働する位置に到達すると、ヘッド112は変形可能軸方向壁1020を横方向に変形させ、駆動ストロークを継続する。
【0021】
変形可能軸方向壁1020の当該変形によって可撓性タブ110のヘッド112は中間領域105内へと、具体的には軸方向第3溝104を通って進入する。なお、変形可能軸方向壁1020は充分に変形したときに、まもなく注射が開始されることをユーザに知らせるために、クリック音などの音を発生するようにしてもよい。
図4は、アクチュエータスリーブ10が駆動位置に到達した状態を示す。この駆動位置では、注射針は患者の注射領域を注入位置に至るまで貫通しており、アクチュエータスリーブ10は注射システムを駆動させることができる。アクチュエータスリーブ10が駆動位置にある場合、可撓性タブ110のヘッド112は中間領域105内にある。また、変形可能軸方向壁1020は弾性によって変形していない姿勢に戻っており、中間領域105は傾斜した最終溝107を介して最終収容領域106とつながっている。
【0022】
アクチュエータスリーブ10がバネ5の作用により駆動位置から第2突出位置に復帰すると、可撓性タブ110のヘッド112は傾斜した最終溝107内へとスライドする。
図5はヘッド112の通過を妨げる変形可能軸方向壁1020のために、可撓性タブ110、具体的にはヘッド112が、第1溝101内に戻れなくなっていることを示す模式図である。
【0023】
図5に示されるように、ヘッド112は少なくとも一部が傾斜しており、ヘッド112は、変形可能軸方向壁1020と協働することでヘッド112を傾斜した最終溝107内へと案内する前壁1120を有するのが望ましい。このように変形可能軸方向壁1020は、最終溝107によって形成され、可撓性タブ110を最終収容領域106の方へと案内するカムの必要不可欠な部分である。
【0024】
使用後、アクチュエータスリーブ10が第2突出位置に到達すると、最終収容領域106において、ヘッド112は軸方向肩部108の奥側下方に入り込んでスナップ留めされ、それによってアクチュエータスリーブ10が本体1に対してロックされる。
可撓性タブ110のヘッド112と軸方向肩部108との当接により、アクチュエータスリーブ10をこのロック位置から駆動位置へと移動することはもはやできない。
図6に示されるように、駆動中において可撓性タブ110は横方向に、具体的には傾斜最終溝107内において変形する。これによって、
図7に示されるように、ヘッド112が最終収容領域106に到達したときに、軸方向肩部108の奥側下方に弾性的かつ自動的にスナップ留め(snap−fasten)される。安全装置はこのようにしてそのロック最終位置におさまる。
【0025】
このようにして、注射針は使用後完全に保護され、ユーザは自己注射器を使用することもできなくなり、注射針によって負傷する可能性もなくなる。注射針安全装置がロック最終位置に到達したことをユーザに知らせるために、この最終収容領域106内でのスナップ留めによりクリック音などの音を発生するようにしてもよい。
図8〜12は本発明の第2の好ましい実施の形態を示す。第2の好ましい実施の形態は上述の第1の実施の形態に非常によく似ているが、唯一の相違点は、第1溝101が、第1溝101内に横方向に突出する肩部1010を有する点である。肩部1010は、初期領域102に面して傾斜壁1015を有するのが望ましい。肩部1010は、弾性変形可能な軸方向壁1020に面して設けられているのが望ましい。
【0026】
ヘッド112が第1溝101において肩部1010の傾斜壁1015に到達すると、傾斜壁1015がヘッド112と協働する。こうして肩部1010は可撓性タブ110を横方向に変形させる。
図9に示されるように、これにより、変形可能軸方向壁1020が横方向に変形する。
肩部1010はこのようにして駆動段階の始めにおいてハードポイント(hard point)を形成するが、自己注射器を駆動可能とするためには当該ハードポイントを乗り越えなければならない。具体的には、可撓性タブ110の変形と変形可能軸方向壁1020の変形の組み合わせが当該ハードポイントを形成し、そしてこの第2の実施形態においては、ユーザがアクチュエータスリーブ10に対して加える力は可撓性タブ110の変形と変形可能軸方向壁1020の変形の両方を達成可能とするのに充分でなければならない。
【0027】
このようにしてエネルギーが蓄積され、可撓性タブ110のヘッド112が肩部1010を通過するときに解放される。これによって駆動ストロークの完了が保証され、可撓性タブ110のヘッド112が中間領域105内へと、具体的には傾斜第2溝103及び軸方向第3溝104を通って進入する。
上述のアクチュエータスリーブ10をロックするための異なる形態はどちらも特に効果的で信頼性が高く、同時に頑強で扱いが容易であり、従って成型及び組立を安価に行うことができる。具体的には、それらの形態はそれぞれアクチュエータスリーブ10と本体1という2つの部分のみからなる。
【0028】
当然のことながら、溝の形状、寸法、及び傾斜は注射針安全装置に求められるニーズ及び望まれる特徴に応じて変更してもよい。具体的には、第1溝は軸方向溝であってもよいし、或いは傾斜溝であってもよい。また、第2溝及び第3溝を設けず、第1溝が中間領域に直接続いてもよい。第1溝が傾斜している場合、最終溝は軸方向溝であってもよいし、傾斜溝であってもよい。その他の変形例も考えられる。
【0029】
なお、上述の手段を逆の構造で実現することも可能である。即ち、本体1が種々の溝101、103、104、107、肩部1010及び108、変形可能軸方向壁1020を有し、アクチュエータスリーブ10が可撓性タブ110を有する構成にしてもよい。当然のことながら、この構成においては、溝の形状及び向きも適宜調節する。
以上、本発明を2つの好ましい実施の形態を参照しながら説明したが、当然のことながら本発明はこれらの実施の形態に限られない。添付の請求項によって規定された本発明の範囲を超えない限り、当業者は様々な変形を適用することが可能である。