特許第6487945号(P6487945)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6487945熱電特性を有する熱電複合体及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6487945
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】熱電特性を有する熱電複合体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 35/26 20060101AFI20190311BHJP
   H01L 35/16 20060101ALI20190311BHJP
   H01L 35/34 20060101ALI20190311BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20190311BHJP
   C08K 3/00 20180101ALI20190311BHJP
   B82Y 30/00 20110101ALI20190311BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20190311BHJP
【FI】
   H01L35/26
   H01L35/16
   H01L35/34
   C08L101/00
   C08K3/00
   B82Y30/00
   B82Y40/00
【請求項の数】12
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-568544(P2016-568544)
(86)(22)【出願日】2015年6月4日
(65)【公表番号】特表2017-525130(P2017-525130A)
(43)【公表日】2017年8月31日
(86)【国際出願番号】KR2015005597
(87)【国際公開番号】WO2015190743
(87)【国際公開日】20151217
【審査請求日】2016年11月21日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0071801
(32)【優先日】2014年6月13日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】512293921
【氏名又は名称】インダストリー−ユニバーシティー コーペレイション ファンデーション ハンヤン ユニバーシティー エリカ キャンパス
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(72)【発明者】
【氏名】チョア、ヨンホ
(72)【発明者】
【氏名】キム、セイル
(72)【発明者】
【氏名】チェ、ヨミン
(72)【発明者】
【氏名】リュウ、スンハン
【審査官】 安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−096880(JP,A)
【文献】 特開2013−222868(JP,A)
【文献】 特開2014−075442(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 35/00−34
H02N 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリマー粒子がマトリックスを構成し、
カルコゲン物質及びカルコゲナイドの中から選択された1種以上の電気伝導性物質が前記熱可塑性ポリマー粒子間の粒界面に分散して電気伝導性経路を形成し、前記熱可塑性ポリマー粒子と前記熱可塑性ポリマー粒子が互いに接触して前記粒界面をなし、
前記熱可塑性ポリマー粒子は、球形の熱可塑性ポリマービーズのガラス転移温度以上且つ前記球形の熱可塑性ポリマービーズの融点未満の温度範囲で熱間圧縮によって球形の熱可塑性ポリマービーズは角のある形態に変化したものであり、
前記電気伝導性物質の平均サイズは、前記熱可塑性ポリマー粒子の平均サイズより小さく、
前記電気伝導性物質は、ナノワイヤまたはナノロッド形態を有し、
前記粒界面において、前記電気伝導性物質が直接的に接触(contact)をなしており、
前記カルコゲン物質は、硫黄(S)、セレン(Se)、テルル(Te)及びポロニウム(Po)の中から選択された1種以上の物質を含み、
前記カルコゲナイドは、硫黄(S)、セレン(Se)、テルル(Te)及びポロニウム(Po)の中から選択された1種以上のカルコゲンを含む化合物であり、
熱伝導度が0.1〜0.5W/m・Kであることを特徴とする、
熱電複合体。
【請求項2】
前記電気伝導性物質と前記熱可塑性ポリマー粒子は、1:3〜30の体積比を有することを特徴とする請求項1に記載の熱電複合体。
【請求項3】
前記熱可塑性ポリマー粒子は、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリビニルクロライド、ポリカーボネート、ポリフタルアミド、ポリブタジエンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリプロピレン及びポリスチレンの中から選択された1種以上の物質を含み、100nm〜100μmの平均サイズを有することを特徴とする請求項1に記載の熱電複合体。
【請求項4】
前記カルコゲナイドは、CdS、BiSe、PbSe、CdSe、PbTeSe、BiTe、SbTe、PbTe、CdTe、ZnTe、LaTe、AgSbTe、AgTe、AgPb18BiTe20、(GeTe)x(AgSbTe1−x(xは1より小さい実数である)、AgPb18SbTe20(xは1より小さい実数である)、AgPb22.5SbTe20(xは1より小さい実数である)、SbTe20(xは1より小さい実数である)、及びBiSb2−xTe(xは2より小さい実数である)の中から選択された1種以上の物質を含むことを特徴とする請求項1に記載の熱電複合体。
【請求項5】
カルコゲン物質及びカルコゲナイドの中から選択された1種以上の電気伝導性物質を用意する段階と、
前記電気伝導性物質と球形の熱可塑性ポリマービーズを溶媒に混合する段階と、
表面電荷の差異によって前記電気伝導性物質を前記球形の熱可塑性ポリマービーズの表面に吸着させ、前記溶媒を除去するために、電気伝導性物質と球形の熱可塑性ポリマービーズが混合された結果物を乾燥する段階と、
前記電気伝導性物質が吸着された球形の熱可塑性ポリマービーズを熱間圧縮法で成形し、電気伝導性物質が熱可塑性ポリマー粒子間の粒界面に分散して電気伝導性経路を形成する熱電複合体を形成する段階とを含み、
前記球形の熱可塑性ポリマービーズ間の接触界面を増加させるために、前記球形の熱可塑性ポリマービーズのガラス転移温度以上且つ前記球形の熱可塑性ポリマービーズの融点未満の温度範囲で前記熱間圧縮法で成形し,
前記熱可塑性ポリマー粒子と前記熱可塑性ポリマー粒子が互いに接触して前記粒界面をなし、
前記球形の熱可塑性ポリマー粒子は、球形の熱可塑性ポリマービーズのガラス転移温度以上且つ前記球形の熱可塑性ポリマービーズの融点未満の温度範囲で熱間圧縮によって球形の熱可塑性ポリマービーズは角のある形態に変化したものであり、
前記電気伝導性物質の平均サイズは、前記熱可塑性ポリマービーズの平均サイズより小さいものを使用し、
前記電気伝導性物質は、ナノワイヤまたはナノロッド形態を有し、
前記粒界面において、前記電気伝導性物質が直接的に接触(contact)をなしており、
前記カルコゲン物質は、硫黄(S)、セレン(Se)、テルル(Te)及びポロニウム(Po)の中から選択された1種以上の物質を含み、
前記カルコゲナイドは、硫黄(S)、セレン(Se)、テルル(Te)及びポロニウム(Po)の中から選択された1種以上のカルコゲンを含む化合物であり、
前記熱電複合体の熱伝導度は、0.1〜0.5W/m・Kであることを特徴とする、
熱電複合体の製造方法。
【請求項6】
前記成形は、10〜1000MPaの圧力をかけながら行われることを特徴とする請求項5に記載の熱電複合体の製造方法。
【請求項7】
前記電気伝導性物質と前記球形の熱可塑性ポリマービーズは、1:3〜30の体積比を有するように混合することを特徴とする請求項5に記載の熱電複合体の製造方法。
【請求項8】
前記球形の熱可塑性ポリマービーズは、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリビニルクロライド、ポリカーボネート、ポリフタルアミド、ポリブタジエンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリプロピレン及びポリスチレンの中から選択された1種以上の物質を含み、100nm〜100μmの平均サイズを有することを特徴とする請求項5に記載の熱電複合体の製造方法。
【請求項9】
前記カルコゲナイドは、CdS、BiSe、PbSe、CdSe、PbTeSe、BiTe、SbTe、PbTe、CdTe、ZnTe、LaTe、AgSbTe、AgTe、AgPb18BiTe20、(GeTe)(AgSbTe1−x(xは1より小さい実数である)、AgPb18SbTe20(xは1より小さい実数である)、AgPb22.5SbTe20(xは1より小さい実数である)、SbTe20(xは1より小さい実数である)、及びBiSb2−xTe(xは2より小さい実数である)の中から選択された1種以上の物質を含むことを特徴とする請求項5に記載の熱電複合体の製造方法。
【請求項10】
前記電気伝導性物質を用意する段階は、カルコゲン物質系酸化物及びカルコゲナイド系酸化物の中から選択された1種以上の酸化物を溶剤に溶解する段階と、前記溶剤に還元剤を添加し撹拌する段階と、撹拌された結果物を乾燥し、カルコゲン物質及びカルコゲナイドの中から選択された1種以上の電気伝導性物質を得る段階と、を含むことを特徴とする請求項5に記載の熱電複合体の製造方法。
【請求項11】
前記還元剤は、ヒドロキシルアミン、ピロール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ヒドラジン水和物、ヒドラジン一水和物及びアスコルビン酸の中から選択された1種以上の物質を含むことを特徴とする請求項10に記載の熱電複合体の製造方法。
【請求項12】
前記溶剤は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム及びNaBHの中から選択された1種以上の物質を含むことを特徴とする請求項10に記載の熱電複合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電複合体及びその製造方法に関し、より詳細には、熱電特性を有する電気伝導性物質が直接的に接触(contact)している電気伝導性経路(conductive pathway)が熱可塑性ポリマーマトリックス内に形成されていて、熱可塑性ポリマーマトリックス内で所望の位置である熱可塑性ポリマー粒子間の粒界面に電気伝導性物質が配列されているので、最小の電気伝導性物質の含量で最適の熱電特性を得ることができ、熱可塑性ポリマーマトリックス内での熱電特性を有する電気伝導性物質による電子(electron)の移動が制約を受けず、熱の移動中に発生するフォノンの散乱(phonon−scattering)が極大化され得る熱電複合体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱電複合体を形成する方法として、次のような研究があった。
一番目は、高分子エマルション粒子(emulsion particle)と炭素ナノチューブ(carbon nanotube)を利用して水溶液上で混合した後、乾燥させて、複合体を製造する方法であって、炭素ナノチューブと高分子エマルションによる高い伝導度と低い熱伝導度の特性を得ることができる研究である。
【0003】
二番目は、炭素ナノチューブの間にPEDOT:PSSpoly(3、4−ethylenedioxythiophene)poly(styrenesulfonate)粒子を付着し、これを高分子エマルション粒子がとけている水溶液に分散させた後に乾燥させる方法で熱電複合材料を製造する技術であって、これも、炭素ナノチューブ間の接合(junction)の役目をする伝導性高分子PEDOT:PSSにより接触抵抗(contact resistance)が減少し、高い伝導度を発現でき、マトリックスとしてポリマーエマルション(emulsion)粒子を使用するので、低い熱伝導度を得ることができる研究である。
【0004】
しかし、前述したような研究は、使用できるエマルション粒子が制限されていて、良好に分散されない場合、水溶液上で凝集(cohesion)または沈殿(precipitation)が発生し、最終的に作られた複合体特性に良くない影響を与える可能性がある。
また、熱可塑性ポリマーを熱処理工程を用いて溶融させ、高圧でさらに成形し、複合体を製造しないため、複合体の密度(density)が低くなり、これによって、機械的物性(mechanical properties)などが低くなることがあるという短所があり、複合体内で形成された伝導性経路(conductive path)の正確な位置確認が難しい。また、複合体の特性を増加させるために、炭素ナノチューブを多く使用するので、製造費用が増加する短所があり、炭素ナノチューブが多く付加されるので、成形性が急激に減少し、実際複合体が有する長所を取りにくい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Choongho Yu et al、Nano lett.2008、8(12)、pp4428−4432. Dasaroyong Kim et al.ACS Nano vol.4、No.1、pp513−523、2010.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、熱電特性を有する電気伝導性物質が直接的に接触(contact)している電気伝導性経路(conductive pathway)が熱可塑性ポリマーマトリックス内に形成されていて、熱可塑性ポリマーマトリックス内で所望の位置である熱可塑性ポリマー粒子間の粒界面に電気伝導性物質が配列されているので、最小の電気伝導性物質の含量で最適の熱電特性を得ることができ、熱可塑性ポリマーマトリックス内での熱電特性を有する電気伝導性物質による電子(electron)の移動が制約を受けず、熱の移動中に発生するフォノンの散乱(phonon−scattering)が極大化され得、熱可塑性ポリマーマトリックス内に少ない量の電気伝導性物質を有するとしても、複合体の優れた熱電特性と電気伝導性、熱絶縁性を示すことができる熱電複合体を提供することにある。
【0007】
本発明の目的は、人為的に定めた位置、すなわちポリマービーズの境界面に電気伝導性物質の配列を誘導し、結果的に少ない含量の電気伝導性物質を使用しながらも、熱電特性を有し、優れた電気伝導性と熱絶縁性を示すことができる熱電複合体を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、熱可塑性ポリマーがマトリックスを構成し、カルコゲン物質及びカルコゲナイドの中から選択された1種以上の電気伝導性物質が前記熱可塑性ポリマー粒子間の粒界面に分散して電気伝導性経路を形成し、前記電気伝導性物質の平均サイズは、前記熱可塑性ポリマー粒子の平均サイズより小さく、前記カルコゲン物質は、硫黄(S)、セレン(Se)、テルル(Te)及びポロニウム(Po)の中から選択された1種以上の物質を含み、前記カルコゲナイドは、硫黄(S)、セレン(Se)、テルル(Te)及びポロニウム(Po)の中から選択された1種以上のカルコゲンを含む化合物であり、熱伝導度が0.1〜0.5W/m・Kであることを特徴とする熱電複合体を提供する。
【0009】
前記電気伝導性物質と前記熱可塑性ポリマービーズは、1:3〜30の体積比を有することが好ましい。
【0010】
前記熱可塑性ポリマーは、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリビニルクロライド、ポリカーボネート、ポリフタルアミド、ポリブタジエンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリプロピレン及びポリスチレンの中から選択された1種以上の物質を含むことができ、100nm〜100μmの平均サイズを有することが好ましい。
【0011】
前記カルコゲナイドは、CdS、BiSe、PbSe、CdSe、PbTeSe、BiTe、SbTe、PbTe、CdTe、ZnTe、LaTe、AgSbTe、AgTe、AgPb18BiTe20、(GeTe)(AgSbTe1−x(xは1より小さい実数である)、AgPb18SbTe20(xは1より小さい実数である)、AgPb22.5SbTe20(xは1より小さい実数である)、SbTe20(xは1より小さい実数である)、及びBiSb2−xTe(xは2より小さい実数である)の中から選択された1種以上の物質を含むことができる。
【0012】
前記電気伝導性物質は、ナノワイヤ、ナノロッド、ナノチューブまたは断片(fragment)形態を有することができる。
【0013】
また、本発明は、カルコゲン物質及びカルコゲナイドの中から選択された1種以上の電気伝導性物質を用意する段階と、前記電気伝導性物質と熱可塑性ポリマービーズを溶媒に混合する段階と、表面電荷の差異によって前記電気伝導性物質を前記熱可塑性ポリマービーズの表面に吸着させ、前記溶媒を除去するために、電気伝導性物質と熱可塑性ポリマービーズが混合された結果物を乾燥する段階と、前記電気伝導性物質が吸着された熱可塑性ポリマービーズを熱間圧縮法で成形し、電気伝導性物質が熱可塑性ポリマー粒子間の粒界面に分散して電気伝導性経路を形成する熱電複合体を形成する段階とを含み、前記電気伝導性物質の平均サイズは、前記熱可塑性ポリマービーズの平均サイズより小さいものを使用し、前記カルコゲン物質は、硫黄(S)、セレン(Se)、テルル(Te)及びポロニウム(Po)の中から選択された1種以上の物質を含み、前記カルコゲナイドは、硫黄(S)、セレン(Se)、テルル(Te)及びポロニウム(Po)の中から選択された1種以上のカルコゲンを含む化合物であり、前記熱電複合体の熱伝導度は、0.1〜0.5W/m・Kであることを特徴とする熱電複合体の製造方法を提供する。
【0014】
前記成形は、前記熱可塑性ポリマービーズ間の接触界面を増加させるために、前記熱可塑性ポリマービーズのガラス転移温度(glass transition temperature)以上且つ前記熱可塑性ポリマービーズの融点未満の温度範囲で10〜1000MPaの圧力をかけながら行われることが好ましい。
【0015】
前記電気伝導性物質と前記熱可塑性ポリマービーズは、1:3〜30の体積比を有するように混合することが好ましい。
【0016】
前記熱可塑性ポリマービーズは、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリビニルクロライド、ポリカーボネート、ポリフタルアミド、ポリブタジエンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリプロピレン及びポリスチレンの中から選択された1種以上の物質を含むことができ、100nm〜100μmの平均サイズを有することが好ましい。
【0017】
前記カルコゲナイドは、CdS、BiSe、PbSe、CdSe、PbTeSe、BiTe、SbTe、PbTe、CdTe、ZnTe、LaTe、AgSbTe、AgTe、AgPb18BiTe20、(GeTe)(AgSbTe1−x(xは1より小さい実数である)、AgPb18SbTe20(xは1より小さい実数である)、AgPb22.5SbTe20(xは1より小さい実数である)、SbTe20(xは1より小さい実数である)、及びBiSb2−xTe(xは2より小さい実数である)の中から選択された1種以上の物質を含むことができる。
【0018】
前記電気伝導性物質は、ナノワイヤ、ナノロッド、ナノチューブまたは断片(fragment)形態を有することができる。
【0019】
前記電気伝導性物質を用意する段階は、カルコゲン物質系酸化物及びカルコゲナイド系酸化物の中から選択された1種以上の酸化物を溶剤に溶解する段階と、前記溶剤に還元剤を添加し撹拌する段階と、撹拌された結果物を乾燥し、カルコゲン物質及びカルコゲナイドの中から選択された1種以上の電気伝導性物質を得る段階とを含むことができる。
【0020】
前記還元剤は、ヒドロキシルアミン(hydroxylamine solution;NHOH)、ピロール(pyrrole)、ポリビニルピロリドン(poly(vinylpyrrolidone);PVP)、ポリエチレングリコール(poly(ethylene glycol);PEG)、ヒドラジン水和物(hydrazine hydrate)、ヒドラジン一水和物(hydrazine monohydrate)及びアスコルビン酸(ascorbic acid)の中から選択された1種以上の物質を含むことができる。
【0021】
前記溶剤は、エチレングリコール(ethylene glycol)、ジエチレングリコール(diethylene glycol)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(sodium dodecyl benzenesulfonate;NaDBS)及びNaBHの中から選択された1種以上の物質を含むことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、熱電特性を有する電気伝導性物質が直接的に接触(contact)している電気伝導性経路(conductive pathway)が熱可塑性ポリマーマトリックス内に形成されていて、熱可塑性ポリマーマトリックス内で所望の位置である熱可塑性ポリマー粒子間の粒界面に電気伝導性物質が配列されているので、最小の電気伝導性物質の含量で最適の熱電特性を得ることができ、熱可塑性ポリマーマトリックス内での熱電特性を有する電気伝導性物質による電子(electron)の移動が制約を受けず、熱の移動中に発生するフォノンの散乱(phonon−scattering)が極大化され得る。熱可塑性ポリマーマトリックス内に少ない量の電気伝導性物質を有するとしても、複合体の優れた熱電特性と電気伝導性、熱絶縁性を示すことができる。
【0023】
本発明の熱電複合体の製造方法によれば、熱可塑性ポリマーマトリックス内に無作為(random)に電気伝導性物質が混ざるものではなく、人為的に定めた位置、すなわちポリマービーズ境界面に電気伝導性物質の配列を誘導し、結果的に少ない含量の電気伝導性物質を使用しながらも、熱電特性を有し、優れた電気伝導性と熱絶縁性を示すことができる。
熱可塑性ポリマー内に熱電特性を有する電気伝導性物質の人為的な整列を誘導し、電気的に良好に連結されており、且つポリマー自体の低い熱伝導度によって全体的に低い熱伝導度を具現できる。熱間圧縮法の適用によって加えられる強い圧力(pressure)と熱(heat)によって熱可塑性ポリマービーズの形状が、角のある形態に変化し、このような過程を通じて熱可塑性ポリマービーズ(粒子)間の気孔率が減少し、密度が高くなり、熱電複合体の積層(packing)率が高くなる効果を得ることができる。
【0024】
本発明の熱電複合体は、熱電特性を有し、電気伝導性と熱絶縁性を示し、熱制御(heat control)部品素材と熱電(thermoelectrics)分野などに適用され得る。熱可塑性ポリマーマトリックス内で電気伝導性物質の電気的通路(conductive path)が良好に形成されていて、電気伝導度(electrical conductivity)が高くなり、熱可塑性ポリマーマトリックス固有の低い熱伝導性によって熱伝導度(thermal conductivity)が低くなる複合素材分野への適用が可能である。本発明の熱電複合体は、高い電気伝導性と低い熱伝導性が要求される製品に応用され得る。特に、高い電気伝導度と低い熱伝導度が要求される熱電(thermoelectrics)材料分野に適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実験例によって合成されたテルルナノワイヤの走査電子顕微鏡(scanning electron microscope;SEM)写真とパウダーを示す図である。
図2図1の走査電子顕微鏡写真を拡大して示す図である。
図3】実験例で使用されたポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate;PMMA)ビーズの走査電子顕微鏡写真とパウダーを示す図である。
図4図3の走査電子顕微鏡写真を拡大して示す図である。
図5】テルルナノワイヤが吸着されたPMMAビーズを示す走査電子顕微鏡写真である。
図6】テルルナノワイヤが吸着されたPMMAビーズを示す走査電子顕微鏡写真である。
図7】テルルナノワイヤが吸着されたPMMAビーズを示す走査電子顕微鏡写真である。
図8】テルルナノワイヤが吸着されたPMMAビーズを示す走査電子顕微鏡写真である。
図9】実験例によって製造された熱電複合体の断面(cross−section)走査電子顕微鏡写真である。
図10】実験例によって製造された熱電複合体の断面(cross−section)走査電子顕微鏡写真である。
図11】テルルナノワイヤだけで成形したサンプルの断面(cross−section)走査電子顕微鏡写真である。
図12】テルルナノワイヤだけで成形したサンプルの断面(cross−section)走査電子顕微鏡写真である。
図13】実験例によって製造された熱電複合体のテルルナノワイヤ含量による熱電能(seebeck coefficient)を示すグラフである。
図14】実験例によって製造された熱電複合体のテルルナノワイヤ含量による電気比抵抗(resistivity)を示すグラフである。
図15】実験例によって製造された熱電複合体のテルルナノワイヤ含量による出力因子(power factor)を示す図である。
図16】実験例によって製造された熱電複合体のテルルナノワイヤ含量による電荷濃度(carrier concentration)を示すグラフである。
図17】実験例によって製造された熱電複合体の熱伝導度(thermal conductivity)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の好ましい実施例による熱電複合体は、熱可塑性ポリマーがマトリックスを構成し、カルコゲン物質及びカルコゲナイドの中から選択された1種以上の電気伝導性物質が前記熱可塑性ポリマー粒子間の粒界面に分散して電気伝導性経路を形成し、前記電気伝導性物質の平均サイズは、前記熱可塑性ポリマー粒子の平均サイズより小さく、前記カルコゲン物質は、硫黄(S)、セレン(Se)、テルル(Te)及びポロニウム(Po)の中から選択された1種以上の物質を含み、前記カルコゲナイドは、硫黄(S)、セレン(Se)、テルル(Te)及びポロニウム(Po)の中から選択された1種以上のカルコゲンを含む化合物であり、熱伝導度が0.1〜0.5W/m・Kである。
【0027】
本発明の好ましい実施例による熱電複合体の製造方法は、カルコゲン物質及びカルコゲナイドの中から選択された1種以上の電気伝導性物質を用意する段階と、前記電気伝導性物質と熱可塑性ポリマービーズを溶媒に混合する段階と、表面電荷の差異によって前記電気伝導性物質を前記熱可塑性ポリマービーズの表面に吸着させ、前記溶媒を除去するために、電気伝導性物質と熱可塑性ポリマービーズが混合された結果物を乾燥する段階と、前記電気伝導性物質が吸着された熱可塑性ポリマービーズを熱間圧縮法で成形し、電気伝導性物質が熱可塑性ポリマー粒子間の粒界面に分散して電気伝導性経路を形成する熱電複合体を形成する段階とを含み、前記電気伝導性物質の平均サイズは、前記熱可塑性ポリマービーズの平均サイズより小さいものを使用し、前記カルコゲン物質は、硫黄(S)、セレン(Se)、テルル(Te)及びポロニウム(Po)の中から選択された1種以上の物質を含み、前記カルコゲナイドは、硫黄(S)、セレン(Se)、テルル(Te)及びポロニウム(Po)の中から選択された1種以上のカルコゲンを含む化合物であり、前記熱電複合体の熱伝導度は、0.1〜0.5W/m・Kである。
【0028】
以下、添付の図面を参照して本発明による好ましい実施例を詳細に説明する。しかし、以下の実施例は、この技術分野において通常の知識を有する者に本発明が充分に理解されるように提供されるものであって、様々な他の形態に変形され得、本発明の範囲が次に記述される実施例に限定されるものではない。
【0029】
以下において、ナノというのは、ナノメートル(nm)単位のサイズであって、1〜1,000nmのサイズを意味するものを使用し、ナノワイヤ(nanowire)は、直径が1〜1,000nmのサイズを有するワイヤ(wire)を意味するものを使用し、ナノロッド(nanorod)は、直径が1〜1,000nmのサイズを有する棒(rod)を意味するものを使用し、ナノチューブ(nanotube)は、直径が1〜1,000nmのサイズを有するチューブ(tube)を意味するものを使用する。
【0030】
本発明は、熱電特性を有する熱電複合体及びその製造方法を提示する。
高い熱電(thermoelectric)特性を得るために、相当な量の熱電フィラーをポリマーに分散させて複合体を製造すると、次のような問題点が発生し得る。
【0031】
一番目に、複合体の特性を増加させるために、熱電フィラーを多く使用すると、製造費用が増加する短所がある。二番目に、熱電フィラーが多く付加されると、成形性が急激に減少し、実際複合体が有する長所を取りにくい。したがって、ポリマー複合材料の開発は、成形が容易な流動と適正水準の複合材料物性を確保するために、最小の熱電フィラーの含量で最適の熱電特性を得るための方向に進行されることが好ましい。
【0032】
最小の熱電フィラーの含量で最適の熱電特性を得るためには、ポリマーマトリックス内での熱電特性を有する熱電フィラーによる電子(electron)の移動が制約を受けてはならず、熱の移動中に発生するフォノンの散乱(phonon−scattering)が極大化されなければならない。
熱電フィラーが直接的に接触(contact)している電気伝導性経路(conductive pathway)がポリマーマトリックス内に形成されなければならず、このためには、ポリマーマトリックス内で所望の位置に電気伝導性熱電フィラーを配列しなければならない。
【0033】
しかしながら、液状高分子あるいはポリマーを単純に混合(random mixing)する方式の熱電複合体製造技術は、所望の位置に熱電フィラーを整列することが困難であり、ポリマーマトリックス内で熱電フィラーの配列のためには、多量の熱電フィラーを添加しなければならないという短所がある。したがって、最小限の熱電フィラーの含量で最適の熱電特性を得るためには、ポリマーマトリックス内の熱電フィラーが電気伝導性経路を効果的に形成する方式を具現し、熱電複合体を開発しなければならない。
【0034】
本発明の目的は、簡便な方法でポリマーマトリックス内に熱電フィラーを所望の位置に整列させて複合体を製造し、熱電(thermoelectrics)特性を発現させることにある。所望の位置に熱電フィラーを整列させるために、本発明では、熱可塑性ポリマーをマトリックスとして使用し、熱電特性を有するカルコゲン(chalcogen)物質及びカルコゲナイドの中から選択された1種以上の電気伝導性物質をフィラー(filler)として使用して熱電複合体を製造する。
【0035】
本発明の好ましい実施例による熱電複合体は、熱可塑性ポリマーがマトリックス(matrix)を構成し、カルコゲン(chalcogen)物質及びカルコゲナイドの中から選択された1種以上の電気伝導性物質が前記熱可塑性ポリマー粒子間の粒界面に分散して電気伝導性経路を形成し、熱伝導度が0.1〜0.5W/m・Kである。
【0036】
前記電気伝導性物質と前記熱可塑性ポリマービーズは、1:3〜30の体積比を有することができる。
【0037】
前記電気伝導性物質は、カルコゲン物質及びカルコゲナイドの中から選択された1種以上の物質を含む。前記電気伝導性物質は、ナノワイヤ、ナノロッド、ナノチューブまたは断片(fragment)などの形態を有することができる。前記電気伝導性物質の平均サイズは、前記熱可塑性ポリマー粒子の平均サイズより小さい。
【0038】
前記カルコゲン物質は、硫黄(S)、セレン(Se)、テルル(Te)及びポロニウム(Po)の中から選択された1種以上の物質を含む。前記カルコゲン物質は、ナノワイヤ、ナノロッド、ナノチューブまたは断片(fragment)などの形態を有することができ、このようなカルコゲン物質の例としては、テルルナノワイヤ(tellurium nanowire)、セレンナノワイヤなどが挙げられる。前記カルコゲン物質がナノワイヤ、ナノロッドなどよりなる場合、前記電気伝導性物質の平均サイズというのは、ナノワイヤ、ナノロッドなどの長さの平均サイズを意味する。
【0039】
前記カルコゲナイドは、硫黄(S)、セレン(Se)、テルル(Te)及びポロニウム(Po)の中から選択された1種以上のカルコゲンを含む化合物である。カルコゲナイド(chalcogenide)は、周期律表6族元素のうち酸素を除いた硫黄(S)、セレン(Se)、テルル(Te)及びポロニウム(Po)の中から選択された1種以上のカルコゲン物質を含む二元系以上の化合物である。
このようなカルコゲナイドとしては、CdS、BiSe、PbSe、CdSe、PbTeSe、BiTe、SbTe、PbTe、CdTe、ZnTe、LaTe、AgSbTe、AgTe、AgPb18BiTe20、(GeTe)(AgSbTe1−x(xは1より小さい実数である)、AgPb18SbTe20(xは1より小さい実数である)、AgPb22.5SbTe20(xは1より小さい実数である)、SbTe20(xは1より小さい実数である)、BiSb2−xTe(xは2より小さい実数である)またはこれらの混合物を例示できる。前記カルコゲナイドは、ナノワイヤ、ナノロッド、ナノチューブまたは断片(fragment)などの形態を有することができる。
【0040】
前記熱可塑性ポリマーは、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリビニルクロライド、ポリカーボネート、ポリフタルアミド、ポリブタジエンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリプロピレン及びポリスチレンの中から選択された1種以上の物質を含むことができ、100nm〜100μmの平均サイズを有することが好ましい。
【0041】
本発明の熱電複合体は、熱電特性を示す電気伝導性物質と絶縁特性を示す熱可塑性ポリマービーズ(polymer bead)を分散溶媒で混合された後、乾燥し、電気伝導性物質が吸着されているポリマービーズパウダー(powder)を得た後、前記パウダーを熱間圧縮法(hot press)を利用して成形して製造する。
【0042】
本発明の好ましい実施例による熱電複合体の製造方法は、カルコゲン物質及びカルコゲナイドの中から選択された1種以上の電気伝導性物質を用意する段階と、前記電気伝導性物質と熱可塑性ポリマービーズを溶媒に混合する段階と、表面電荷の差異によって前記電気伝導性物質を前記熱可塑性ポリマービーズの表面に吸着させ、前記溶媒を除去するために、電気伝導性物質と熱可塑性ポリマービーズが混合された結果物を乾燥する段階と、前記電気伝導性物質が吸着された熱可塑性ポリマービーズを熱間圧縮法で成形し、電気伝導性物質が熱可塑性ポリマー粒子間の粒界面に分散して電気伝導性経路を形成する熱電複合体を形成する段階とを含む。
前記電気伝導性物質の平均サイズは、前記熱可塑性ポリマービーズの平均サイズより小さいものを使用し、前記カルコゲン物質は、硫黄(S)、セレン(Se)、テルル(Te)及びポロニウム(Po)の中から選択された1種以上の物質を含み、前記カルコゲナイドは、硫黄(S)、セレン(Se)、テルル(Te)及びポロニウム(Po)の中から選択された1種以上のカルコゲンを含む化合物であり、前記熱電複合体の熱伝導度は、0.1〜0.5W/m・Kである。
【0043】
以下では、本発明の好ましい実施例による熱電複合体の製造方法をより具体的に説明する。
【0044】
カルコゲン物質及びカルコゲナイドの中から選択された1種以上の電気伝導性物質を用意する。
【0045】
前記電気伝導性物質は、ナノワイヤ、ナノロッド、ナノチューブまたは断片(fragment)などの形態を有することができる。
【0046】
前記カルコゲン物質は、硫黄(S)、セレン(Se)、テルル(Te)及びポロニウム(Po)の中から選択された1種以上の物質を含む。前記カルコゲン物質は、ナノワイヤ、ナノロッド、ナノチューブまたは断片(fragment)などの形態を有することができ、このようなカルコゲン物質の例としては、テルルナノワイヤ(tellurium nanowire)、セレンナノワイヤなどが挙げられる。
【0047】
前記カルコゲナイドは、硫黄(S)、セレン(Se)、テルル(Te)及びポロニウム(Po)の中から選択された1種以上のカルコゲンを含む化合物である。カルコゲナイド(chalcogenide)は、周期律表6族元素のうち酸素を除いた硫黄(S)、セレン(Se)、テルル(Te)及びポロニウム(Po)の中から選択された1種以上のカルコゲン物質を含む二元系以上の化合物である。このようなカルコゲナイドとしては、CdS、BiSe、PbSe、CdSe、PbTeSe、BiTe、SbTe、PbTe、CdTe、ZnTe、LaTe、AgSbTe、AgTe、AgPb18BiTe20、(GeTe)(AgSbTe1−x(xは1より小さい実数である)、AgPb18SbTe20(xは1より小さい実数である)、AgPb22.5SbTe20(xは1より小さい実数である)、SbTe20(xは1より小さい実数である)、BiSb2−xTe(xは2より小さい実数である)またはこれらの混合物を例示できる。前記カルコゲナイドは、ナノワイヤ、ナノロッド、ナノチューブまたは断片(fragment)などの形態を有することができる。
【0048】
カルコゲン物質及びカルコゲナイドの中から選択された1種以上の電気伝導性物質は、溶媒法(solvothermal method)を利用して合成できる。
【0049】
例えば、カルコゲン物質系酸化物及びカルコゲナイド系酸化物の中から選択された1種以上の酸化物を溶剤に溶解し、前記溶剤に還元剤を添加して充分に撹拌した後、撹拌された結果物を乾燥し、カルコゲン物質及びカルコゲナイドの中から選択された1種以上の電気伝導性物質を得ることができる。
【0050】
前記カルコゲン物質系酸化物は、硫黄(S)、セレン(Se)、テルル(Te)及びポロニウム(Po)の中から選択された1種以上の物質を含む酸化物であって、テルル酸化物(tellurium oxide)などを例示できる。
【0051】
前記カルコゲナイド系酸化物は、硫黄(S)、セレン(Se)、テルル(Te)及びポロニウム(Po)の中から選択された1種以上のカルコゲンを含む化合物が酸化されて形成された物質であって、CdTeOなどを例示できる。
【0052】
カルコゲン物質系酸化物及びカルコゲナイド系酸化物の中から選択された1種以上の酸化物の溶解は、150〜200℃程度の温度で十分な時間(例えば、10分〜48時間)撹拌(stirring)しつつ行うことが好ましい。前記撹拌は、10〜500rpm程度の回転速度で行うことが好ましい。
【0053】
前記溶剤は、エチレングリコール(ethylene glycol)、ジエチレングリコール(diethylene glycol)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(sodium dodecyl benzenesulfonate;NaDBS)及びNaBHの中から選択された1種以上の物質を含むことができる。
【0054】
前記還元剤は、ヒドロキシルアミン(hydroxylamine solution;NHOH)、ピロール(pyrrole)、ポリビニルピロリドン(poly(vinylpyrrolidone);PVP)、ポリエチレングリコール(poly(ethylene glycol);PEG)、ヒドラジン水和物(hydrazine hydrate)、ヒドラジン一水和物(hydrazine monohydrate)及びアスコルビン酸(ascorbic acid)の中から選択された1種以上の物質を含むことができる。前記還元剤は、前記溶剤にマイクロピペットなどを利用してゆっくり添加することが好ましい。
【0055】
前記溶剤に還元剤を添加し、十分な時間(例えば、10分〜48時間)撹拌し、前記撹拌は、10〜500rpm程度の回転速度で行うことが好ましい。
【0056】
還元剤が添加されて撹拌された結果物を乾燥すると、カルコゲン物質及びカルコゲナイドの中から選択された1種以上の電気伝導性物質を得ることができる。前記乾燥は、真空オーブン(vacuum oven)で40〜100℃程度の温度で十分な時間(例えば、10分〜48時間)行われることが好ましい。
【0057】
前記電気伝導性物質と熱可塑性ポリマービーズを溶媒に混合する。前記電気伝導性物質と前記熱可塑性ポリマービーズは、1:3〜30の体積比を有するように混合することが好ましい。前記電気伝導性物質の平均サイズは、前記熱可塑性ポリマービーズの平均サイズより小さいものを使用する。
【0058】
前記熱可塑性ポリマービーズは、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリビニルクロライド、ポリカーボネート、ポリフタルアミド、ポリブタジエンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリプロピレン及びポリスチレンの中から選択された1種以上の物質を含むことができ、100nm〜100μmの平均サイズを有することが好ましい。
【0059】
前記溶媒は、イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)、エタノール、メタノールのようなアルコール系溶媒であることができ、前記電気伝導性物質と前記熱可塑性ポリマービーズと化学的に反応しない溶媒であれば、制限されない。
【0060】
前記電気伝導性物質と前記熱可塑性ポリマービーズの混合は、十分な時間(例えば、10分〜48時間)撹拌(stirring)しつつ行うことが好ましい。前記撹拌は、100〜800rpm程度の回転速度で行うことが好ましい。
【0061】
表面電荷の差異によって前記電気伝導性物質を前記熱可塑性ポリマービーズの表面に吸着(コーティング)させ、前記溶媒を除去するために、電気伝導性物質と熱可塑性ポリマービーズが混合された結果物を乾燥する。電気伝導性物質と熱可塑性ポリマービーズが混合された結果物を乾燥すると、表面電荷の差異によって前記電気伝導性物質が前記熱可塑性ポリマービーズの表面に吸着(コーティング)され、溶媒が除去されて電気伝導性物質が吸着された熱可塑性ポリマービーズパウダーが得られる。前記乾燥は、真空オーブン(vacuum oven)で40〜100℃程度の温度で十分な時間(例えば、10分〜48時間)行われることが好ましい。
【0062】
前記電気伝導性物質が吸着された(コーティングされた)熱可塑性ポリマービーズを熱間圧縮法で成形し、電気伝導性物質が熱可塑性ポリマー粒子間の粒界面に分散して電気伝導性経路を形成する熱電複合体を形成する。
【0063】
前記成形は、前記熱可塑性ポリマービーズ間の接触界面を増加させるために、前記熱可塑性ポリマービーズのガラス転移温度(glass transition temperature)以上且つ前記熱可塑性ポリマービーズの融点未満の温度範囲で10〜1000MPaの圧力をかけながら行われることが好ましい。
【0064】
熱間圧縮法の適用時に加えられる強い圧力(pressure)と熱(heat)によって熱可塑性ポリマービーズの形状が、角のある形態に変化する。このような過程を通じて熱可塑性ポリマービーズ(粒子)間の気孔率が減少し、密度が高くなり、熱電複合体の積層(packing)率が高くなる効果を得ることができる。
【0065】
本発明の熱電複合体の製造方法によれば、熱可塑性ポリマーマトリックス内に無作為(random)に電気伝導性物質が混ざるものではなく、人為的に定めた位置、すなわちポリマービーズ境界面に電気伝導性物質の配列を誘導し、結果的に少ない含量の電気伝導性物質を使用しながらも、熱電特性を有し、優れた電気伝導性と熱絶縁性を示すことができる。熱可塑性ポリマー内に熱電特性を有する電気伝導性物質の人為的な整列を誘導し、電気的に良好に連結されており、且つポリマー自体の低い熱伝導度によって全体的に低い熱伝導度を具現できる。
【0066】
本発明の熱電複合体は、熱電特性を有し、電気伝導性と熱絶縁性を示し、熱制御(heat control)部品素材と熱電(thermoelectrics)分野などに適用され得る。熱可塑性ポリマーマトリックス内で電気伝導性物質の電気的通路(conductive path)が良好に形成されていて、電気伝導度(electrical conductivity)が高くなり、熱可塑性ポリマーマトリックス固有の低い熱伝導性によって熱伝導度(thermal conductivity)が低くなる複合素材分野への適用が可能である。
本発明の熱電複合体は、高い電気伝導性と低い熱伝導性が要求される製品に応用され得る。特に、高い電気伝導度と低い熱伝導度が要求される熱電(thermoelectrics)材料分野に適用され得る。
【0067】
以下では、本発明による実験例を具体的に提示するが、次に提示する実験例によって本発明が限定されるものではない。
【0068】
本発明の実験例では、次のような方法で熱電複合体を製造した。溶媒法を利用して約200nmの直径を有するテルルナノワイヤ(tellurium nanowire)を合成し、合成したテルルナノワイヤを表面電荷の差異を利用して熱可塑性ポリマービーズ(bead)の表面に均一に吸着させた複合粉末を製造し、テルルナノワイヤが吸着されたポリマービーズ粉末を熱間圧縮法(hot press)を利用して成形し、熱電複合体を製造した。
このような熱電複合体の製造方法は、従来の複合素材製造方法とは差別化された方法で少量の電気伝導性物質だけで最大限の効果を発現できるという大きな長所がある。このように製造された熱電複合体は、熱可塑性ポリマーマトリックス内で電気伝導性物質による電気伝導性経路(conductive pathway)が形成され、少量の電気伝導性物質の含量でも熱電特性を有し、電気伝導性と熱絶縁性が発現され得る。
【0069】
以下では、実験例による熱電複合体を製造する実験例をさらに具体的に説明する。
溶媒法(solvothermal)を利用してテルルナノワイヤを合成した。テルルナノワイヤを合成するために、1000mLサイズのフラスコ(volumetric flask)にエチレングリコール(ethylene glycol anhydride 99.8%)500mLと酸化テルル(tellurium dioxide 99.99%)10gを入れ、180℃で2時間撹拌(stirring)した。
【0070】
撹拌開始後に約2時間が経過すると、酸化テルルが溶解し、溶液が透明になり、この際、ヒドロキシルアミン溶液(hydroxylamine solution 50wt.% in HO)20mLをマイクロピペット(micro pipette)を利用してゆっくり付加し、フラスコ内の溶液が透明な色から濃い灰色に次第に変化した。これは、酸化テルルが還元(reduction)され、テルルナノワイヤに合成される過程である。
【0071】
ヒドロキシルアミン溶液がすべて注入された状態で約2時間さらに撹拌し、常温で冷やす過程を行った。
【0072】
ポリマー成分を除去するために、脱イオン水(Deionized water)を利用して5回以上洗浄した後、真空オーブン(vacuum oven)に入れ、80℃で6時間乾燥させて、約200nmの直径を有するテルルナノワイヤを得た。
【0073】
図1は、実験例によって合成されたテルルナノワイヤの走査電子顕微鏡(scanning electron microscope;SEM)写真とパウダーを示す図であり、図2は、図1の走査電子顕微鏡写真を拡大して示す図である。
【0074】
合成したテルルナノワイヤを利用して熱電複合体を製造した。
熱電複合体を製造するために、まず、イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)溶媒にテルルナノワイヤを添加し、約30分間超音波(sonication)を行った。
【0075】
テルルナノワイヤが分散しているイソプロピルアルコールに熱可塑性ポリマービーズであるポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate;PMMA)ビーズを入れ、3時間約400rpmで速く撹拌した。
【0076】
図3は、実験例で使用されたポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate;PMMA)ビーズの走査電子顕微鏡写真とパウダーを示す図であり、図4は、図3の走査電子顕微鏡写真を拡大して示す図である。
【0077】
3時間撹拌後に80℃の真空オーブンで約3時間乾燥させてイソプロピルアルコール溶媒を揮発させ、表面電荷(surface charge)の差異によってテルルナノワイヤが表面に吸着された(コーティングされた)PMMAビーズを得た。
【0078】
図5図8は、テルルナノワイヤが吸着されたPMMAビーズを示す走査電子顕微鏡写真であり、図5は、テルルナノワイヤの含量が28.5重量%(6.95体積%)である場合であり、図6は、テルルナノワイヤの含量が37.5重量%(10.11体積%)である場合であり、図7は、テルルナノワイヤの含量が44.4重量%(13.02体積%)である場合であり、図8は、テルルナノワイヤの含量が50重量%(15.78体積%)である場合を示す。
【0079】
図5図8を参照すれば、テルルナノワイヤの含量が増加することによって、PMMAビーズの表面に多量のテルルナノワイヤが吸着されていることを確認できる。
【0080】
テルルナノワイヤが吸着されたPMMAビーズを熱間圧縮法(hot press)を利用して150℃で400MPaの圧力で30分間成形を行い、熱電複合体を製作した。
【0081】
熱電複合体と断面構造、電気的特性などを比較するために、テルルナノワイヤだけで成形してサンプルを製作し、テルルナノワイヤだけで成形したサンプルは、テルルナノワイヤを熱間圧縮法(hot press)を利用して150℃で400MPaの圧力で30分間成形を行って製作した。
【0082】
図9及び図10は、実験例によって製造された熱電複合体の断面(cross−section)走査電子顕微鏡写真であり、図11及び図12は、テルルナノワイヤだけで成形したサンプルの断面(cross−section)走査電子顕微鏡写真である。
【0083】
図9図12を参照すれば、熱電複合体の媒質であるPMMAビーズの表面にテルルナノワイヤが均一に吸着されていることを確認できる。また、熱間圧縮法の適用時に加えられる強い圧力(pressure)と熱(heat)によってPMMAビーズの形状が、球形から角のある形態に変化することを確認できる。このような過程を通じてPMMAビーズ(粒子)間の気孔率が減少し、密度が高くなって、熱電複合体の積層(packing)率が高くなる効果を得ることができる。
【0084】
本発明の実験例によって製造された熱電複合体の熱電(thermoelectric)特性を評価した。図13は、実験例によって製造された熱電複合体のテルルナノワイヤの含量による熱電能(seebeck coefficient)を示すグラフであり、図14は、実験例によって製造された熱電複合体のテルルナノワイヤの含量による電気比抵抗(resistivity)を示すグラフである。
【0085】
図13及び図14を参照すれば、実験例によって製造された熱電複合体は、すべての条件で350μV/K以上の高い熱電能を示し、テルルナノワイヤの含量が増加することによって電気比抵抗値が減少することを確認できる。これは、テルルナノワイヤが伝導体であるからである。
【0086】
図15は、実験例によって製造された熱電複合体のテルルナノワイヤの含量による出力因子(power factor)を示す図であり、図16は、実験例によって製造された熱電複合体のテルルナノワイヤの含量による電荷濃度(carrier concentration)を示すグラフである。
【0087】
図15及び図16を参照すれば、実験例によって製造された熱電複合体の出力因子と電荷濃度は、テルルナノワイヤの含量が増加することによって増加したことを確認できる。
【0088】
図17は、実験例によって製造された熱電複合体の熱伝導度(thermal conductivity)を示すグラフである。
【0089】
図17を参照する。熱伝導度は、ヒートフロー(heat flow)方式を用いて測定した。その結果、実験例によって製造された熱電複合体の熱伝導度は、テルルナノワイヤの含量によって増加するが、その増加幅が従来のポリマーの熱伝導度と比較したとき、あまり高くないことを確認できた。これを通じて、製造した熱電複合体の熱絶縁性に優れていることが分かる。
【0090】
以上、本発明の好ましい実施例により詳細に説明したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で当該分野において通常の知識を有する者によってさまざまな変形が可能である。
【0091】
本発明の熱電複合体は、熱電特性を有し、電気伝導性と熱絶縁性を示し、熱制御(heat control)部品素材と熱電(thermoelectrics)分野などに適用され得、産業上の利用可能性がある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17