特許第6488021号(P6488021)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 久光製薬株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6488021
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】アクリル系粘着剤の流動化抑制方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/551 20060101AFI20190311BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20190311BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20190311BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20190311BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20190311BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20190311BHJP
   A61P 11/02 20060101ALI20190311BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20190311BHJP
   A61P 17/04 20060101ALI20190311BHJP
【FI】
   A61K31/551
   A61P37/08
   A61P43/00 113
   A61K9/70 401
   A61K47/12
   A61K47/32
   A61P11/02
   A61P17/00
   A61P17/04
【請求項の数】5
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-544493(P2017-544493)
(86)(22)【出願日】2016年10月3日
(86)【国際出願番号】JP2016079355
(87)【国際公開番号】WO2017061393
(87)【国際公開日】20170413
【審査請求日】2018年1月26日
(31)【優先権主張番号】特願2015-198622(P2015-198622)
(32)【優先日】2015年10月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000160522
【氏名又は名称】久光製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001047
【氏名又は名称】特許業務法人セントクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今村 佳奈
(72)【発明者】
【氏名】道中 康也
【審査官】 横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/115497(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/027786(WO,A1)
【文献】 特開昭58−079983(JP,A)
【文献】 特開平03−083924(JP,A)
【文献】 特開平07−033665(JP,A)
【文献】 特開平08−193030(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/057928(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/00−33/44
A61K47/00−47/69
A61K9/00−9/72
A61P1/00−43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
WPI
Science Direct
CiNii
Japio−GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体層及び粘着剤層を備え、前記粘着剤層が、エメダスチン及びその薬学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも1種の薬物、並びに、アクリル系粘着剤を含有する貼付剤において、前記アクリル系粘着剤の流動化を抑制するアクリル系粘着剤の流動化抑制方法であり、
前記粘着剤層中にフマル酸塩を含有させ、前記貼付剤を、
支持体層及び粘着剤層を備え、
前記粘着剤層が、エメダスチン及びその薬学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも1種の薬物、アクリル系粘着剤、並びに、フマル酸塩を含有しており、かつ、
前記アクリル系粘着剤の含有量が、前記粘着剤層中において30〜98質量%である、
貼付剤とする方法であり、
前記フマル酸塩がフマル酸二ナトリウムである
アクリル系粘着剤の流動化抑制方法。
【請求項2】
前記エメダスチン及びその薬学的に許容される塩のエメダスチン遊離体に換算したモル数1モルに対する前記フマル酸塩のフマル酸に換算したモル数が、0.1〜4.3モルとなるように前記フマル酸塩を含有させる、請求項1に記載のアクリル系粘着剤の流動化抑制方法。
【請求項3】
前記フマル酸塩の含有量が、前記粘着剤層中において0.5〜35質量%となるように前記フマル酸塩を含有させる、請求項1又は2に記載のアクリル系粘着剤の流動化抑制方法。
【請求項4】
前記薬物がエメダスチン遊離体である、請求項1〜のうちのいずれか一項に記載のアクリル系粘着剤の流動化抑制方法。
【請求項5】
請求項1〜のうちのいずれか一項に記載のアクリル系粘着剤の流動化抑制方法に用いるためのアクリル系粘着剤流動化抑制剤であり、フマル酸二ナトリウムを有効成分とする、アクリル系粘着剤流動化抑制剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は貼付剤に関し、詳しくは、エメダスチンを含有する貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
エメダスチンは1−(2−エトキシエチル)−2−(4−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イル)−1H−ベンゾイミダゾール(1−(2−Ethoxyethyl)−2−(4−methyl−1,4−diazepan−1−yl)−1H−benzoimidazole)の一般名である。エメダスチンは、抗アレルギー作用及び抗ヒスタミン作用を有する薬物として知られており(特開昭58−79983号公報(特許文献1))、例えば、エメダスチン二フマル酸塩(EmedastineDifumarate、分子式:C1726O・2C、分子量:534.56)を含有するカプセル剤等の経口剤が市場に流通している。
【0003】
しかしながら、経口投与によるとエメダスチンの血中濃度の変動幅が大きくなるため、眠気等の副作用が生じやすいという問題を有していた。また、例えば、特開平3−83924号公報(特許文献2)には、エメダスチンを含有する液状の組成物を用いた油性軟膏、ゲル化剤、クリーム、ローション、及び噴霧剤といった非経口投与剤が記載されているが、上記副作用の低減や薬効の安定性を向上させるという観点からは、より安定にエメダスチンの持続投与が可能な貼付剤の開発が望まれている。
【0004】
エメダスチンを含有する貼付剤としては、例えば、国際公開第2012/144405号(特許文献3)において、二酢酸アルカリ金属塩と、エメダスチンフマル酸塩と、非水系粘着基剤とを混合して得られた粘着剤層組成物を用いて形成された粘着剤層を備える貼付剤が、国際公開第2014/057928号(特許文献4)において、エメダスチン及び/又はその薬学的に許容される塩と、ゴム系粘着剤及び/又はシリコーン系粘着剤と、粘着剤層の凝集力向上剤としてのフマル酸を含有する粘着剤層を備える貼付剤が、それぞれ記載されている。
【0005】
さらに、例えば、特開平7−33665号公報(特許文献5)には、アクリル系粘着性基剤、シリコーン系粘着性基剤又はゴム系粘着性基剤とエメダスチンとよりなる粘着層(粘着剤層)を備える貼付剤が、特開平8−193030号公報(特許文献6)には、酸残基を実質的に含まないアクリル系重合体とエメダスチンとを含有してなる粘着剤層を有する貼付剤が、それぞれ記載されている。
【0006】
また、国際公開第2005/115355号(特許文献7)には、フェンタニル、オキシブチニン等の塩基性薬物と揮発性有機酸とを含有する粘着剤層を備える貼付剤が記載されており、前記塩基性薬物の経皮吸収を促進させることを目的として必要に応じて添加することができる化合物としてフマル酸ナトリウムを含む多数の有機酸又は有機酸塩が記載されている。しかしながら、特許文献7においては、エメダスチンに関する記載は何らなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭58−79983号公報
【特許文献2】特開平3−83924号公報
【特許文献3】国際公開第2012/144405号
【特許文献4】国際公開第2014/057928号
【特許文献5】特開平7−33665号公報
【特許文献6】特開平8−193030号公報
【特許文献7】国際公開第2005/115355号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、エメダスチンを含有する貼付剤において粘着剤としてアクリル系粘着剤を主に用いた場合には、単にゴム系粘着剤を用いた場合に比べてエメダスチンの経皮透過性が高くなる傾向にあるものの、エメダスチン及びアクリル系粘着剤が粘着剤層中に含有される貼付剤においては、保存中の温度や圧力によって貼付剤の側面(すなわち、端面或いは断面)から粘着剤層がはみ出す現象が生じるという問題が発生することを見い出した。このように粘着剤層がはみ出す現象は、「糊はみ出し」又は「舌出し」ともいい、支持体層及び粘着剤層が積層された貼付剤の側面から辺縁に、支持体層に覆われた範囲を超えて外側へ粘着剤層がはみ出ることにより、はみ出た粘着剤層が貼付剤の包材の内面に付着して貼付剤が取り出しにくくなったり、はみ出た粘着剤層によって貼付剤の支持体層や手指が汚染されたり、貼付剤を目的の箇所に貼付しにくくなるといった問題を生じさせる。
【0009】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、粘着剤層の糊はみ出しが十分に抑制され、かつ、エメダスチンの皮膚透過性及び安定性に優れた貼付剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、支持体層及び粘着剤層を備える貼付剤において、エメダスチン及び/又はその薬学的に許容される塩、アクリル系粘着剤、並びに、フマル酸塩を組み合わせて前記粘着剤層中に含有させることにより、アクリル系粘着剤の含有量が多くとも、粘着剤層の糊はみ出しが十分に抑制されることを見い出した。また、このような貼付剤は、エメダスチンの皮膚透過性及び安定性にも優れることを本発明者らは見い出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明のアクリル系粘着剤の流動化抑制方法は、
支持体層及び粘着剤層を備え、前記粘着剤層が、エメダスチン及びその薬学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも1種の薬物、並びに、アクリル系粘着剤を含有する貼付剤において、前記アクリル系粘着剤の流動化を抑制するアクリル系粘着剤の流動化抑制方法であり、
前記粘着剤層中にフマル酸塩を含有させ、前記貼付剤を、
支持体層及び粘着剤層を備え、
前記粘着剤層が、エメダスチン及びその薬学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも1種の薬物、アクリル系粘着剤、並びに、フマル酸塩を含有しており、かつ、
前記アクリル系粘着剤の含有量が、前記粘着剤層中において30〜98質量%である、
貼付剤とする方法であり、
前記フマル酸塩がフマル酸二ナトリウムである、ものである。
【0012】
本発明のアクリル系粘着剤の流動化抑制方法においては、前記エメダスチン及びその薬学的に許容される塩のエメダスチン遊離体に換算したモル数1モルに対する前記フマル酸塩のフマル酸に換算したモル数が、0.1〜4.3モルとなるように前記フマル酸塩を含有させることが好ましい。さらに、本発明のアクリル系粘着剤の流動化抑制方法においては、前記フマル酸塩の含有量が、前記粘着剤層中において0.5〜35質量%となるように前記フマル酸塩を含有させることが好ましい。
【0014】
さらに、本発明のアクリル系粘着剤の流動化抑制方法においては、前記薬物がエメダスチン遊離体であることが好ましい。また、本発明のアクリル系粘着剤流動化抑制剤は、前記本発明のアクリル系粘着剤の流動化抑制方法に用いるためのアクリル系粘着剤流動化抑制剤であり、フマル酸二ナトリウムを有効成分とする、ものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、粘着剤層の糊はみ出しが十分に抑制され、かつ、エメダスチンの皮膚透過性及び安定性に優れた貼付剤を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0017】
本発明の貼付剤は、支持体層及び粘着剤層を備える貼付剤であって、前記粘着剤層が、エメダスチン及びその薬学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも1種の薬物、アクリル系粘着剤、並びに、フマル酸塩を含有するものである。
【0018】
(支持体層)
本発明に係る支持体層は、前記粘着剤層を物理的に支持し、外的な環境から前記粘着剤層を保護する層である。このような支持体層としては、特に制限されず、貼付剤の支持体層として公知のものを適宜採用することができる。前記支持体層の材質としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ナイロン、ポリカーボネートといった合成樹脂や、アルミニウム等の金属が挙げられ、前記支持体層の形態としては、フィルム;発泡シート、多孔質シート等のシート;織布、編布、不織布等の布帛;箔;及びこれらの積層体等が挙げられる。これらの中でも、柔軟性及び薬物非透過性に優れるという観点から、ポリエステルフィルムが好ましい。また、前記支持体層の厚さとしても特に制限されないが、通常2〜300μm程度であることが好ましい。
【0019】
また、本発明の貼付剤としては、前記支持体層の一方の面上に前記粘着剤層が積層された構造であることが好ましい。また、前記粘着剤層の前記支持体層とは反対の面上に、貼付剤の使用時まで前記粘着剤層を保護する剥離ライナー層がさらに積層された構造であることがより好ましい。
【0020】
前記剥離ライナー層としては、特に制限されず、貼付剤の剥離ライナー層として公知のものを適宜採用することができ、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;紙等の材質からなるフィルム、及び、それらの積層体が挙げられる。このような剥離ライナー層としては、前記粘着剤層から容易に剥離出来るように、前記粘着剤層に接する面にシリコーン化合物やフッ素化合物等がコーティングされているものであることが好ましく、中でも、シリコーン化合物がコーティングされたポリエチレンテレフタレートフィルムであることが好ましい。また、前記剥離ライナー層の厚さとしても特に制限されないが、通常2〜300μm程度であることが好ましい。
【0021】
(粘着剤層)
本発明に係る粘着剤層は、エメダスチン及びその薬学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも1種の薬物、アクリル系粘着剤、並びに、フマル酸塩を含有するものである。このような粘着剤層の厚さとしては特に制限されないが、通常20〜300μm程度であることが好ましい。
【0022】
〔薬物〕
本発明に係る粘着剤層は、薬物としてエメダスチン及びその薬学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも1種の薬物を含有する。エメダスチンは、下記式:
【0023】
【化1】
【0024】
で表わされる化合物(1−(2−エトキシエチル)−2−(4−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イル)−1H−ベンゾイミダゾール(1−(2−Ethoxyethyl)−2−(4−methyl−1,4−diazepan−1−yl)−1H−benzoimidazole))であり、抗アレルギー作用及び抗ヒスタミン作用を有し、サブスタンスPによるヒスタミン遊離、並びに、好酸球の遊走及び浸潤を抑制し、アレルギー性鼻炎のくしゃみ、鼻汁、鼻閉、葬麻疹、湿疹・皮膚炎、皮膚癌痒症、痒疹のかゆみ、皮疹等の症状に対して改善効果を奏することが認められている。
【0025】
このようなエメダスチンとしては、エメダスチン遊離体(遊離塩基)であってもエメダスチンの薬学的に許容される塩であってもそれらの混合物であってもよいが、粘着剤層からの放出性がより向上するという観点から、少なくとも一部がエメダスチン遊離体の状態で前記粘着剤層中に含有されていることが好ましい。
【0026】
また、上記のエメダスチン遊離体としては、貼付剤の製造時に当該遊離体として添加されたものであっても、製造中及び/又は製造後にエメダスチンの薬学的に許容される塩から生成されて前記粘着剤中に含有されたものであってもよい。エメダスチンの薬学的に許容される塩(以下、場合により「エメダスチン塩」という)からエメダスチン遊離体を生成せしめる方法としては、例えば、前記粘着剤層又は前記粘着剤層を形成する粘着剤層組成物中に前記エメダスチン塩と脱塩剤とを配合し、前記エメダスチン塩を脱塩させてその遊離体を得る方法が挙げられる。
【0027】
前記エメダスチンの薬学的に許容される塩としては、エメダスチンの酸付加塩が挙げられ、前記酸としては、塩酸、臭化水素酸、メタンスルホン酸、及びリン酸等の単塩基酸;フマル酸、マレイン酸、クエン酸、酒石酸等の多塩基酸が挙げられる。これらの中でも、粘着剤層中に前記脱塩剤と組み合わせて含有させた場合、下記のフマル酸塩を前記粘着剤層中に生成せしめることができるという観点から、フマル酸であることが好ましい。
【0028】
本発明に係るエメダスチン及びその薬学的に許容される塩の含有量としては、治療の目的により異なるものであるため、一概にはいえないが、通常は、前記粘着剤層中において、エメダスチンの遊離体に換算した含有量で、1〜20質量%であることが好ましい。また、粘着剤層の糊はみ出し抑制効果とエメダスチンの皮膚透過性とのバランスの観点から、エメダスチン及びその薬学的に許容される塩の含有量としては、より好ましくは、前記粘着剤層中において、エメダスチンの遊離体に換算した含有量で、2〜20質量%、2.5〜17質量%である。
【0029】
本発明に係る粘着剤層としては、本発明の効果を阻害しない範囲内において、エメダスチン以外の薬物がさらに含有されていてもよい。このような薬物としては、特に限定されず、例えば、制吐薬(例:グラニセトロン、アザセトロン、オンダンセトロン、ラモセトロン等)、過活動膀胱における頻尿等の治療薬(例:オキシブチニン、トルテロジン等)、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(例:カプトプリル、デラプリル、等)、Ca拮抗薬(例:ニフェジピン等)、冠血管拡張薬(例:ジルチアゼム、ニコランジル等)、局所麻酔薬(例:リドカイン、プロカイン等)、胸腺ホルモン(例:血清胸腺因子)、筋弛緩薬(例:チザニジン、エペリゾン、ダントロレン等)、興奮覚醒薬、抗高圧薬(例:アルプレノロール、ニフェジピン等)、抗腫瘍薬、向精神薬(例:イミプラミン、フェンタニル、モルヒネ等)、抗生物質、抗パーキンソン薬(例:ロチゴチン、アマンタジン、レボドパ、コカイン等)、アルツハイマー治療薬(例:ドネペジル、リバスチグミン、ガランタミン、タクリン、メマンチン等)、抗ヒスタミン薬、抗めまい薬(例:ジフェニドール、ベタヒスチン等)、催眠鎮静薬、消炎鎮痛薬(例:インドメタシン、ケトプロフェン、ジクロフェナク等)、自律神経用薬、心臓・血管系薬(例:ベンゾジアゼピン等)、脳循環代謝改善薬(例:ビンポセチン等)、ビタミン類、ポリペプチド系のホルモン類(例:ルーティナイジングホルモン−リリージングホルモン、サイロトロピンリリージングホルモン等)、末梢血管拡張薬、免疫調節薬(例:ポリサッカライド類、オーラノフィン、ロベンザリット等)、利胆薬(例:ウルソデスオキシコール酸等)、利尿薬(例:ヒドロフルメチアジド等)、糖尿病用薬(例:トルブタミド等)、痛風治療薬(例:コルヒチン等)、抗アレルギー薬(例:タクロリムス、シクロスポリン等)及びこれらの薬学的に許容される塩が挙げられ、目的に応じてこれらのうちの1種を単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。このようなエメダスチン以外の薬物が粘着剤層中にさらに含有される場合、その含有量としては、治療の目的により異なるものであるため、一概にはいえないが、通常は前記粘着剤層中において0.1〜20質量%であることが好ましく、粘着剤層の糊はみ出し抑制効果及びエメダスチンの皮膚透過性が優れるという観点からは、前記粘着剤層中において10質量%以下であることがより好ましい。
【0030】
〔粘着剤〕
本発明に係る粘着剤層は、粘着剤としてアクリル系粘着剤を含有する。なお、本発明において、粘着剤とは、貼付剤が適用される温度(好ましくは0℃〜50℃、より好ましくは10℃〜40℃、さらに好ましくは15℃〜40℃)において粘着性を発現することが可能な化合物のことをいう。
【0031】
本発明に係るアクリル系粘着剤としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルをモノマーとする単独重合体、並びに、主モノマーとしての(メタ)アクリル酸アルキルエステルとそれ以外のコモノマーとの共重合体が挙げられる。なお、本発明において、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及びメタクリル酸を示す。
【0032】
前記主モノマー((メタ)アクリル酸アルキルエステル)としては、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル等が挙げられ、これらのうちの1種を単独であっても2種以上を組み合わせたものであってもよい。前記コモノマーとしては、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、エチレン、プロピレン、スチレン、酢酸ビニル、N−ビニル−ピロリドン、アクリル酸アミド等が挙げられ、これらのうちの1種を単独であっても2種以上を組み合わせたものであってもよい。
【0033】
このようなアクリル系粘着剤としては、「医薬品添加物辞典2007(日本医薬品添加剤協会編集)」に粘着剤として収載されているアクリル酸・アクリル酸オクチルエステル共重合体、アクリル酸2−エチルヘキシル・ビニルピロリドン共重合体溶液、アクリル酸エステル・酢酸ビニルコポリマー、アクリル酸2−エチルヘキシル・メタクリル酸2−エチルヘキシル・メタクリル酸ドデシル共重合体、アクリル酸メチル・アクリル酸2−エチルヘキシル共重合樹脂エマルジョン、アクリル樹脂アルカノールアミン液に含有されるアクリル系高分子等が挙げられ、これらのうちの1種を単独であっても2種以上を組み合わせたものであってもよい。また、前記アクリル系粘着剤としては、DURO−TAKアクリル粘着剤シリーズ(ヘンケル社製)、オイドラギットシリーズ(樋口商会社製)等の市販品を用いてもよい。
【0034】
前記アクリル系粘着剤には、ポリマー同士が架橋された架橋構造を有する架橋型と前記架橋構造を有しない非架橋型とがある。本発明者らは、非架橋型のアクリル系粘着剤を含有する粘着剤層では、糊はみ出しがより顕著に認められる傾向にあるものの、フマル酸塩を組み合わせて前記粘着剤層中に含有させることにより、粘着剤層が非架橋型のアクリル系粘着剤を含有する場合であっても、前記フマル酸塩が前記アクリル系粘着剤の流動化抑制剤として機能し、糊はみ出しが十分に抑制されることを見い出した。このように、本発明に係るアクリル系粘着剤としては特に限定されないが、粘着剤層の糊はみ出しが特に抑制されるという観点からは、無官能基のもの又はOH基を有するものであることが好ましく、OH基を有するものであることが特に好ましい。
【0035】
本発明に係るアクリル系粘着剤の含有量は、前記粘着剤層中において、30質量%以上である。前記アクリル系粘着剤の含有量としては、前記粘着剤層中において、特には、30〜98質量%、30〜97質量%であることが好ましく、35〜98質量%、35〜97質量%、50〜98質量%、50〜97質量%、60〜98質量%、60〜97質量%、75〜95質量%であることがさらに好ましい。前記アクリル系粘着剤の含有量が前記下限未満である場合には、エメダスチンの皮膚透過性が低下したり、粘着剤層の付着力及び凝集力が低下したりする傾向にある。また、エメダスチン及びアクリル系粘着剤が粘着剤層中に含有される貼付剤においては前記アクリル系粘着剤の含有量が多くなると糊はみ出しがより顕著に認められる傾向にあるものの、本発明においては前記アクリル系粘着剤の含有量が前記下限以上であっても糊はみ出しが十分に抑制される。
【0036】
本発明に係る粘着剤層としては、必要に応じて、スチレン系ブロック共重合体;天然ゴム;ポリイソブチレン;ポリイソプレン等のゴム系粘着剤やオルガノポリシロキサン(シリコーン)等のシリコーン系粘着剤といった他の粘着剤がさらに含有されていてもよいが、これらの他の粘着剤が本発明に係る粘着剤層に含有される場合には、前記アクリル系粘着剤と相溶しにくくなって粘着剤層が不均一になることを防ぐ観点から、その含有量としては、前記粘着剤層中において60質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることが好ましく、いずれも実質的に含有されていないことがより好ましい。
【0037】
〔フマル酸塩〕
本発明に係る粘着剤層は、フマル酸塩をさらに含有する。本発明者らは、粘着剤層中において、前記エメダスチン及び/又はその薬学的に許容される塩、並びに、前記アクリル系粘着剤と、前記フマル酸塩とを組み合わせることにより、前記粘着剤層の糊はみ出しが十分に抑制されることを見い出した。他方、前記粘着剤層の糊はみ出しを抑制するために、フマル酸塩に代えてアクリル系粘着剤の流動化抑制剤としてシリカやタルクのような充填剤や粘着性付与剤を添加すると、エメダスチンの皮膚透過性が低下する傾向にある。
【0038】
前記フマル酸塩は、次式:
【0039】
【化2】
【0040】
で表わされる化合物のカルボキシ基の水素のうちの少なくとも1つが金属又はアンモニウムで置換された塩である。
【0041】
前記金属としては、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)等が挙げられ、これらのうちの1種を単独であっても2種以上を組み合わせたものであってもよい。本発明に係るフマル酸塩としては、フマル酸一ナトリウム、フマル酸二ナトリウム、フマル酸一カリウム、フマル酸二カリウム、フマル酸マグネシウム、及びフマル酸カルシウムからなる群から選択される少なくとも1種のフマル酸アルカリ金属塩であることが好ましい。
【0042】
このようなフマル酸塩としては、貼付剤の製造時に当該化合物として添加されたものであっても、製造中及び/又は製造後に生成されて前記粘着剤層中に含有されたものであってもよい。このようなフマル酸塩を前記粘着剤層中に含有させる方法としては、例えば、前記エメダスチン塩としてエメダスチン酸付加塩を用い、前記エメダスチン酸付加塩の酸塩基当量に対して0.5〜4当量(より好ましくは1〜2当量)の脱塩剤を加えてエメダスチン酸付加塩を脱塩させ、前記粘着剤層中にエメダスチン遊離体を生成せしめると共にフマル酸塩を生成せしめる方法が挙げられる。より具体的には、例えば、エメダスチン二フマル酸塩1モルに対して脱塩剤(例えば、水酸化ナトリウムの場合には4モル)を加えて混和させ、次式:
エメダスチン二フマル酸塩 + 4水酸化ナトリウム →
エメダスチン遊離体 + 2フマル酸二ナトリウム + 4H
のようにエメダスチンフマル酸塩を脱塩させ、前記粘着剤層中にエメダスチン遊離体とフマル酸二ナトリウムとを生成せしめる方法が挙げられる。
【0043】
本発明に係るフマル酸塩の含有量としては、前記粘着剤層中において、0.5〜35質量%であることが好ましく、1〜35質量%であることがより好ましく、1〜20質量%、1〜18質量%、1〜15質量%、1〜13質量%であることがさらに好ましい。前記フマル酸塩の含有量(濃度)が前記下限未満である場合には、粘着剤層の糊はみ出しを抑制する効果が低下する傾向にある。
【0044】
また、前記フマル酸塩の含有量としては、前記エメダスチン及びその薬学的に許容される塩のエメダスチン遊離体に換算したモル数1モルに対する前記フマル酸塩のフマル酸に換算したモル数(以下、場合により「フマル酸モル数」という)が、0.1〜4.3モルであることが好ましく、0.3〜4.3モル、0.5〜4.3モル、0.5〜3モル、0.7〜3モル、0.7〜2.7モル、1〜2.7モル、1〜2.4モルであることがさらに好ましい。前記フマル酸塩の含有量が前記下限未満である場合には、粘着剤層の糊はみ出しが十分に抑制されず、また、エメダスチンの皮膚透過性や利用率が低下する傾向にある。他方、前記上限を超える場合には、エメダスチンの安定性や皮膚透過性、及び利用率が低下する傾向にある。本発明においては、粘着剤層の糊はみ出しが特に抑制され、かつ、エメダスチンの皮膚透過性及び安定性が十分である観点から、前記粘着剤層中におけるフマル酸塩の濃度とモル数とがいずれも上記条件を満たすことがとりわけ好ましい。特には、前記粘着剤層中において、前記フマル酸塩の含有量が0.5〜35質量%であり、かつ、前記フマル酸モル数が0.1〜4.3モルであることが好ましく、前記フマル酸塩の含有量が1〜35質量%(より好ましくは、1〜20質量%、1〜18質量%、1〜15質量%)であり、かつ、前記フマル酸モル数が0.3〜4.3モルであることがより好ましく、前記フマル酸塩の含有量が1〜13質量%であり、かつ、前記フマル酸モル数が0.5〜4.3モル(より好ましくは0.5〜3モル、0.7〜3モル、0.7〜2.7モル、1〜2.7モル、1〜2.4モル)であることがさらに好ましい。
【0045】
〔添加剤等〕
本発明に係る粘着剤層としては、本発明の効果を阻害しない範囲内において、前記脱塩剤及び/又は前記脱塩剤により生成した塩がさらに含有されていてもよい。前記脱塩剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、有機酸のアルカリ金属塩等の金属イオン含有脱塩剤;アンモニア等が挙げられ、前記有機酸としては、酢酸、二酢酸、プロピオン酸、酪酸等が挙げられる。これらの中でも、前記脱塩剤としては、前記金属イオン含有脱塩剤が好ましい。前記脱塩剤及び前記脱塩剤により生成した塩が粘着剤層中に含有される場合、その含有量としては、前記粘着剤層中において40質量%以下であることが好ましく、0.1〜30質量%であることがより好ましく、エメダスチン及びその薬学的に許容される塩の酸付加塩に換算した酸塩基当量に対して、脱塩剤に換算した酸塩基当量が、0.5〜4当量となる量であることが好ましく、1〜2当量となる量であることがより好ましい。
【0046】
また、本発明に係る粘着剤層としては、本発明の効果を阻害しない範囲内において、粘着付与樹脂、可塑剤、経皮吸収促進剤、安定化剤、充填剤、香料等の添加剤がさらに含有されていてもよい。このような添加剤が前記粘着剤層に含有される場合、その含有量としては、前記粘着剤層中において20質量%以下であることが好ましく、0.5〜20質量%であることがより好ましく、1〜15質量%であることがより好ましい。
【0047】
<貼付剤の製造方法>
本発明の貼付剤は、特に制限されず、従来公知の方法により製造することができ、例えば、先ず、溶剤法及びホットメルト法の他、ロール混合、バンバリーミキサー混合等によって、前記エメダスチン及び/又はその薬学的に許容される塩、前記アクリル系粘着剤、前記フマル酸塩、及び必要に応じて前記脱塩剤や前記添加剤を含有する粘着剤層組成物を調製し、次いで、これを前記剥離ライナー層上に塗布して粘着剤層を形成した後に前記支持体層を積層するか、或いは、前記支持体層上に前記粘着剤層組成物を直接塗布して粘着剤層を形成する方法が挙げられる。
【0048】
例えば、前記溶剤法によれば、先ず、有機溶媒中において前記エメダスチン及び/又はその薬学的に許容される塩、前記アクリル系粘着剤、前記フマル酸塩、及び必要に応じて前記脱塩剤や前記添加剤を混和させて前記粘着剤層組成物を調製し、これを前記剥離ライナー層の一方の面上に所望の厚さで塗布した後に前記溶剤を乾燥除去せしめ、前記支持体層を積層し、これを適宜裁断することよって本発明の貼付剤を得ることができる。或いは、前記粘着剤層組成物を前記支持体層の一方の面上に所望の厚さで塗布した後に前記溶剤を乾燥除去せしめ、必要に応じて前記剥離ライナー層を積層し、これを適宜裁断することよって本発明の貼付剤を得ることができる。
【0049】
前記有機溶媒としては、特に制限されず、用いる薬物や粘着剤、フマル酸塩等の種類に応じて適宜選択することができ、例えば、酢酸エチル、トルエン、シクロヘキサン、ヘキサン、エタノール、メタノール、イソプロパノール等を用いることができる。
【0050】
また、製造中及び/又は製造後に上記のエメダスチン遊離体及び前記フマル酸塩を生成させて前記粘着剤層中に含有せしめる場合には、例えば、上記の粘着剤層組成物に代えて、エメダスチンフマル酸塩、前記アクリル系粘着剤、前記脱塩剤、前記有機溶媒、及び必要に応じて前記添加剤を含有する組成物を用いることにより、得られる粘着剤層中にエメダスチン遊離体及び前記フマル酸塩を含有せしめることができる。
【0051】
さらに、本発明の貼付剤としては、包装袋内に密封されていることが好ましい。前記包装袋としては、特に制限されず、通常貼付剤の包装袋として使用できるものを適宜用いることができる。
【実施例】
【0052】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、各実施例及び比較例で得られた各貼付剤について、糊はみ出し評価試験、安定性評価試験、及び皮膚透過性試験は、それぞれ以下に示す方法により行った。
【0053】
<糊はみ出し評価試験>
各実施例及び比較例で得られた製造直後の所定の面積の貼付剤3枚ずつについて、先ず、貼付剤の側面から支持体層の面の辺縁よりも外側に粘着剤層がはみ出していないことを確認し、感量0.1mgの電子天秤を用いて質量を測定して質量1とした。次いで、各貼付剤をそれぞれアルミラミネート袋内に封入し、貼付剤が水平(貼付剤の支持体層の面が重力方向に対して垂直)に保たれるようにして、80℃の恒温チャンバー内に静置した。静置開始から1日後、2日後、又は7日後に各アルミラミネート袋をチャンバーから取り出して開封し、貼付剤の側面から支持体層に覆われた範囲を超えて外側にはみ出している粘着剤層(糊はみ出し部分)を除去し、糊はみ出し部分を除去した後の貼付剤の質量を前記電子天秤を用いて測定し、質量2とした。次いで、溶剤を用いて支持体層から残りの粘着剤層も全て除去し、前記電子天秤を用いて支持体層及び剥離ライナー層の質量を測定して質量3とした。得られた質量1〜3を用いて、次式:
糊はみ出し率[%] = 糊はみ出し質量/粘着剤層全質量[%] = (質量1−質量2)/(質量1−質量3)×100
により、各貼付剤において、1日、2日、又は7日間静置後に糊はみ出しした粘着剤層の質量と、静置前の粘着剤層の全質量との質量比率(糊はみ出し率)をそれぞれ求め、3枚の平均を算出した。
【0054】
<安定性評価試験>
先ず、各実施例及び比較例で得られた製造直後の貼付剤から採取した一定量の粘着剤層をテトラヒドロフランに溶解させた溶液に下記の移動相溶液を全量が50mlとなるように加えた後、フィルター濾過を実施して測定サンプルを得た。得られた測定サンプルについて、高速液体クロマトグラフィー装置((株)島津製作所製、カラム:ODSカラム、移動相液:3mM 1−ヘプタンスルホン酸ナトリウム−0.1% 氷酢酸/メタノール(45/55(体積比))、検出波長:280nm)を用いて、エメダスチンの含有量(初期含有量)の測定を行った。次いで、前記貼付剤をアルミラミネート袋内に封入して80℃の恒温チャンバー内に静置した。静置開始から1週間後(7日間後)に各アルミラミネート袋をチャンバーから取り出して開封し、貼付剤から静置前に採取した量と同量の粘着剤層を採取し、上記と同様にしてエメダスチンの含有量(保存後含有量)の測定を行った。得られた含有量から、次式:
薬物残存率[%] = 保存後含有量/初期含有量×100
により、1週間静置後の貼付剤における薬物残存率を算出した。得られた薬物残存率から、下記の基準:
A:薬物残存率が90.0%以上
B:薬物残存率が85.0%以上90.0%未満
C:薬物残存率が85.0%未満
に従って、各貼付剤における薬物(エメダスチン)の安定性を評価した。
【0055】
<皮膚透過性試験>
先ず、ヘアレスマウス背部の皮膚を剥離し、その表皮側に各実施例及び比較例で得られた貼付剤を貼付し、真皮側がレセプター槽側となるようにフロースルータイプのフランツ型透過試験セル(3cm)に装着した。次いで、前記レセプター槽にレセプター溶液としてリン酸緩衝液を満たし、32℃の温水を前記透過試験セルの外周部に循環させながら、4時間毎に24時間までレセプター溶液をサンプリングした。サンプリングした溶液中のエメダスチン量を、高速液体クロマトグラフィー装置((株)島津製作所製、カラム:ODSカラム、移動相液:3mM 1−ヘプタンスルホン酸ナトリウム−0.1% 氷酢酸/メタノール(45/55(体積比))、検出波長:280nm)を用いて測定した。得られた測定値から1時間当たりの薬物皮膚透過速度(Jmax)、及び、24時間までの累積皮膚透過量を算出した。また、前記貼付剤(3cm)におけるエメダスチン含有量を前記安定性評価試験と同様にして測定し、次式:
薬物利用率[%] = 24時間までの累積皮膚透過量/エメダスチン含有量×100
により、24時間における薬物利用率を算出した。
【0056】
(実施例1)
先ず、エメダスチン遊離体 2.83質量部、フマル酸二ナトリウム 2.99質量部、アクリル系粘着剤1(OH基を有する非架橋型のポリアクリル酸共重合体、DURO−TAK87−2510(ヘンケル社製)の固形分) 94.18質量部を酢酸エチル中において攪拌し、粘着剤層組成物を得た。得られた粘着剤層組成物をシリコーン化合物がコーティングされたポリエチレンテレフタレートフィルム(剥離ライナー層)のシリコーン化合物がコーティングされた面上に塗布した後、乾燥させて溶媒を除去し、厚さ200μmの粘着剤層を形成せしめ、前記粘着剤層の前記剥離ライナー層とは反対の面上にポリエステルフィルム(支持体層)を積層して裁断し、貼付剤を得た。なお、表1において、エメダスチンとフマル酸とのモル比(エメダスチン:フマル酸)は、エメダスチン遊離体及び/又はエメダスチンの塩のエメダスチン遊離体に換算したモル数1モルに対する、フマル酸塩のフマル酸に換算したモル数を示す(以下表2〜6において同じ)。
【0057】
(実施例2〜3、比較例1〜3)
粘着剤層の組成をそれぞれ表1に示す組成としたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2〜3、及び比較例1〜3の貼付剤を得た。なお、表1において、アクリル系粘着剤2は、OH基を有する架橋型のポリアクリル酸共重合体(DURO−TAK87−2516(ヘンケル社製)の固形分)を示す。また、実施例3において、エメダスチン二フマル酸塩(10.00質量部)のエメダスチン遊離体に換算した質量は5.66質量部である。
【0058】
実施例1〜3、及び比較例1〜3で得られた貼付剤について、それぞれ糊はみ出し評価試験を行った結果を各貼付剤の組成と共に表1に示す。なお、実施例1、3、及び比較例1、3で得られた貼付剤における糊はみ出し評価試験の結果は1日間静置後の結果を示し、実施例2及び比較例2で得られた貼付剤における糊はみ出し評価試験の結果は7日間静置後の結果を示す。また、比較例1に対する実施例1の糊はみ出し改善率、比較例2に対する実施例2の糊はみ出し改善率、及び比較例3に対する実施例3の糊はみ出し改善率を、それぞれ次式:
糊はみ出し改善率[%] = {1−(実施例における糊はみ出し率/比較例における糊はみ出し率)}×100
により算出した。得られた糊はみ出し改善率を表1に併せて示す。
【0059】
【表1】
【0060】
(実施例5、参考例1〜2、比較例4〜5)
粘着剤層の組成をそれぞれ表2に示す組成としたこと以外は実施例1と同様にして、実施例5、参考例1〜2、及び比較例4〜5の貼付剤を得た。なお、表2において、ゴム系粘着剤は、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、ポリイソブチレン(PIB)、脂環族飽和炭化水素樹脂(アルコンP−100、荒川化学工業社製)、流動パラフィンを、17.5:7.5:55:20の質量比で含有する混合物を示す。
【0061】
実施例5、参考例1〜2、及び比較例4〜5で得られた貼付剤について、それぞれ糊はみ出し評価試験(1日間静置(比較例4〜5は2日間静置))を行った。比較例3に対する実施例5、参考例1〜2の糊はみ出し改善率、及び比較例5に対する比較例4の糊はみ出し改善率を、それぞれ上記の比較例1に対する実施例1の糊はみ出し改善率と同様にして算出した。得られた糊はみ出し改善率を各貼付剤の組成と共に表2に示す。また、比較例3で得られた貼付剤の組成も参考までに併せて表2に示す。
【0062】
【表2】
【0063】
(実施例7〜10、比較例6)
粘着剤層の組成をそれぞれ表3に示す組成とし、粘着剤層の厚さを50μmとしたこと以外は実施例1と同様にして、実施例7〜10の貼付剤を得た。また、粘着剤層の厚さを50μmとしたこと以外は比較例3と同様にして、比較例6の貼付剤を得た。
【0064】
実施例7〜10、及び比較例6で得られた貼付剤について、それぞれ安定性評価試験及び皮膚透過性試験を行った結果を各貼付剤の組成と共に表3に示す。なお、実施例7〜10で得られた貼付剤について、糊はみ出し評価試験を行ったところ、実施例1〜3、5における結果と同等の結果となり、また、下記の実施例13〜15における結果とも同等の結果となった。
【0065】
【表3】
【0066】
(実施例11〜17)
粘着剤層の組成をそれぞれ表4に示す組成としたこと以外は実施例1と同様にして、実施例11〜17の貼付剤を得た。実施例11〜17で得られた貼付剤について、それぞれ糊はみ出し評価試験(1日間静置)を行った。比較例3に対する実施例11〜17の糊はみ出し改善率を、それぞれ上記の比較例1に対する実施例1の糊はみ出し改善率と同様にして算出した。得られた糊はみ出し改善率を各貼付剤の組成と共に表4に示す。また、実施例5及び比較例3で得られた貼付剤の組成及び糊はみ出し改善率も参考までに併せて表4に示す。
【0067】
【表4】
【0068】
(実施例18〜21)
粘着剤層の組成をそれぞれ表5に示す組成とし、粘着剤層の厚さを50μmとしたこと以外は実施例1と同様にして、実施例18〜21の貼付剤を得た。実施例18〜21で得られた貼付剤について、それぞれ安定性評価試験を行った結果を各貼付剤の組成と共に表5に示す。また、実施例7〜10及び比較例6で得られた貼付剤の組成及び評価結果も参考までに併せて表5に示す。
【0069】
【表5】
【0070】
(実施例22〜24、比較例7〜11)
粘着剤層の組成をそれぞれ表6に示す組成としたこと以外は実施例1と同様にして、実施例22〜24、及び比較例7〜11の貼付剤を得た。なお、表6において、ゴム系粘着剤は、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、ポリイソブチレン(PIB)、脂環族飽和炭化水素樹脂(アルコンP−100、荒川化学工業社製)、流動パラフィンを、17.5:7.5:55:20の質量比で含有する混合物を示す。
【0071】
各実施例及び比較例で得られた貼付剤について、それぞれ糊はみ出し評価試験(1日間静置)を行った。比較例7に対する実施例22、比較例8に対する実施例23、比較例9に対する実施例24、比較例11に対する比較例10の糊はみ出し改善率を、それぞれ上記の比較例1に対する実施例1の糊はみ出し改善率と同様にして算出した。得られた糊はみ出し改善率を各貼付剤の組成と共に表6に示す。また、実施例5及び比較例3で得られた貼付剤の組成及び評価結果も参考までに併せて表6に示す。
【0072】
【表6】
【0073】
表1〜6に示した結果から明らかなように、アクリル系粘着剤を多く含有する粘着剤層にフマル酸塩が含有される本発明の貼付剤においては、エメダスチンの皮膚透過性及び安定性が十分に維持されたまま、保存中における粘着剤層の糊はみ出しが十分に抑制されることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0074】
以上説明したように、本発明によれば、粘着剤層の糊はみ出しが十分に抑制され、かつ、エメダスチンの皮膚透過性及び安定性に優れた貼付剤を提供することが可能となる。