(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
センサを構成する検出領域に設けられ透光性を有する第1の曲面と、前記検出領域以外の非検出領域に設けられ前記第1の曲面の曲率半径よりも小さい曲率半径を有する第2の曲面と、を有するセンサフィルムと、
前記センサフィルムの上に設けられ、透光性を有する樹脂を含む材料により形成された樹脂層と、
前記センサフィルムの前記検出領域に設けられ、前記センサフィルムの前記検出領域の伸長量を前記センサフィルムの前記非検出領域の伸長量よりも小さく抑える伸長抑制層と、
を備えたことを特徴とする入力装置。
前記樹脂層を形成する工程において前記第1の曲面および前記第2の曲面を形成することに代えて、前記樹脂層を形成する工程の前工程として、前記センサフィルムを加熱して前記第1の曲面および前記第2の曲面を形成する工程を備えることを特徴とする請求項9〜11のいずれか1つに記載の入力装置の製造方法。
前記樹脂層を形成する工程において前記第1の曲面、前記第2の曲面、前記第3の曲面および前記第4の曲面を形成することに代えて、前記樹脂層を形成する工程の前工程として、前記第1のセンサフィルムを加熱して前記第1の曲面および前記第2の曲面を形成する工程と、前記第2のセンサフィルムを加熱して前記第3の曲面および前記第4の曲面を形成する工程と、を備えることを特徴とする請求項13記載の入力装置の製造方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、同一の部材には同一の符号を付し、一度説明した部材については適宜その説明を省略する。
図1は、本実施形態に係る入力装置を例示する斜視図である。
図2は、本実施形態に係る入力装置の模式断面図であり、
図1に示すA−A線断面図である。
本実施形態に係る入力装置は、曲面を有する例えばタッチパネルである。入力装置1は、センサフィルム10と、樹脂層30と、加飾層50と、伸長抑制層70と、を備える。
【0038】
センサフィルム10は、透光性を有し、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のフィルム状の透明基材を有する。
本願明細書において「透明」および「透光性」とは、可視光線透過率が50%以上(好ましくは80%以上)の状態を指す。更に、ヘイズ値が6%以下であることが好適である。本願明細書において「遮光」および「遮光性」とは、可視光線透過率が50%未満(好ましくは20%未満)の状態を指す。
【0039】
センサフィルム10は、曲面である第1面10aを有する。第1面10aは、例えば凸型の3次元曲面になっている。本実施形態では、縦横いずれの方向においても第1面10a側が凸型になるような3次元曲面になっている。
【0040】
センサフィルム10の第1面10aとは反対側には第2面10bが位置している。センサフィルム10は一様な厚さになっているため、第2面10bも第1面10aと同様な3次元曲面になっている。なお、第1面10aおよび第2面10bは2次元曲面や凹型など、他の形状であってもよい。ここで、本実施形態では、第1面10aの曲面に対する法線方向を厚さ方向や積層方向ということにする。
【0041】
センサフィルム10のうちでセンサを構成する領域(検出領域)VAには、電極層が設けられている。検出領域VAは、指などの操作体により操作を行うことができる領域である。説明の便宜上、
図2では電極層を省略している。
【0042】
センサフィルム10のうちでセンサを構成する領域以外の領域(非検出領域)NAには、引き出し配線42が設けられている。例えば、非検出領域NAは、検出領域VAの周囲(外側)であり、額縁状の加飾領域(加飾層50で覆われた領域)である。引き出し配線42には、
図1に示すようなセンサフィルム10から外側に延出するフレキシブル配線基板や、電極層と接続され、センサフィルム10の検出領域VAの外側に引き回される配線が含まれる。
【0043】
電極層は、センサフィルム10の第1面10aおよびセンサフィルム10の第2面10bの少なくともいずれかに設けられている。電極層は透光性を有し、タッチセンサにおける検出電極の一つである。電極層には、ITO(Indium Tin Oxide)、透光性の有機導電材、金属ナノワイヤなどが用いられる。
【0044】
タッチセンサが静電容量式の場合には、複数の電極層が設けられる。例えば、入力装置1は、センサフィルム10に指などが接近した際の複数の電極層の間の静電容量の変化を検出することで、接触位置を検出する。
【0045】
樹脂層30は、センサフィルム10の上において、検出領域VAおよび非検出領域NAを覆うように設けられている。樹脂層30は、透光性を有し、溶融状態のポリカーボネートやアクリルなどの合成樹脂を含む材料を型に注入する射出成形法により形成される。
【0046】
加飾層50は、樹脂層30の第1面30aに設けられ、非検出領域NAを覆っている。加飾層50は、樹脂層30の第2面30bに設けられ、非検出領域NAを覆っていてもよい。加飾層50は、遮光性を有する。そのため、センサフィルム10の検出領域VAの外側に引き回される配線(引き出し配線42の一部)を樹脂層30の第1面30a側から見ることはできない。
【0047】
伸長抑制層70は、センサフィルム10の第2面10b側の検出領域VAに設けられている。なお、
図2に表した二点鎖線の伸長抑制層70のように、伸長抑制層70は、センサフィルム10の第1面10a側の検出領域VAに設けられていてもよい。つまり、伸長抑制層70は、センサフィルム10の第2面10b側およびセンサフィルム10の第1面10a側の少なくともいずれかに設けられている。伸長抑制層70は、接着剤などを用いた貼合や、塗布、熱融着などによりセンサフィルム10の第2面10bに形成される。伸長抑制層70の材料は、特には限定されない。例えば、伸長抑制層70の材料としては、透光性を有する熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂、比較的高い架橋性を有する熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂などが挙げられる。伸長抑制層70の材料としては、センサフィルム10の基材の材料と同じ材料がより好ましく用いられる。伸長抑制層70の材料がセンサフィルム10の基材の材料と同じである場合には、伸長抑制層70は、センサフィルム10の検出領域VAを保護することができる。
【0048】
図2に表したように、本実施形態に係る入力装置1のセンサフィルム10は、検出領域VAにおいて3次元曲面(第1の曲面)を有するとともに、非検出領域NAにおいて検出領域VAの3次元曲面(第1の曲面)の曲率半径よりも小さい曲率半径(極小曲率半径)の3次元曲面(第2の曲面)を有する(極小曲率半径領域LA)。伸長抑制層70が設けられていない場合において、センサフィルム10の非検出領域NAに極小曲率半径を有する曲面(第2の曲面)が存在すると、センサフィルム10の検出領域は、十分に緩やかな(十分に大きい曲率半径の)曲面(第1の曲面)を有していても、極小曲率半径領域LAの伸長による引っ張り応力の影響を受け、許容伸長量よりも伸長して破壊するおそれがある。
【0049】
これに対して、本実施形態に係る入力装置1は、伸長抑制層70を備える。伸長抑制層70は、センサフィルム10の第2面10bに設けられ、樹脂層30が型で成形されるときのセンサフィルム10の検出領域VAの伸長量を、センサフィルム10の非検出領域NAの伸長量よりも小さく抑える。
【0050】
これにより、センサフィルム10の非検出領域NAに極小曲率半径を有する曲面(第2の曲面)が存在していても、センサフィルム10の検出領域VAの伸長量は、センサフィルム10の非検出領域NAの伸長量よりも小さい。言い換えれば、センサフィルム10の非検出領域NAの伸長量は、センサフィルム10の検出領域VAの伸長量よりも大きい。そのため、センサフィルム10の検出領域VAの伸長量を、許容伸長量の範囲内に収めることができる。これにより、2次元や3次元の曲面を有するセンサフィルム10の伸長箇所を部分的に制御し、センサフィルム10の検出領域VAが破壊することを抑えることができる。そのため、入力装置1の形状が極小曲率半径領域LAの伸長量に制約を受けることを解消することができ、所望の3次元曲面を有する入力装置1を実現することができる。
【0051】
また、入力装置1が複数のセンサブロックに分かれた構造を有する場合には、それぞれのブロックごとに独立した伸長抑制層70を形成することで、各センサブロックの間を極小曲率半径の曲面(第2の曲面)で連結した形状を実現することができる。入力装置1が複数のセンサブロックに分かれた構造を有する場合の例としては、例えば箱形状のように稜線が周囲に設けられた多面体形状などが挙げられる。
【0052】
本実施形態の伸長抑制層70の作用について、入力装置1の製造方法に関する図面を参照しつつ、さらに説明する。
図3は、本実施形態に係る入力装置の製造方法を例示するフローチャートである。
図4は、本実施形態に係る入力装置の製造方法を例示する模式断面図である。
【0053】
図3に表したように、本実施形態に係る入力装置1の製造方法は、センサフィルム10の形成(ステップS101)と、伸長抑制層70の形成(ステップS102)と、樹脂層30の形成(ステップS103)と、加飾層50の形成(ステップS104)と、を備える。
【0054】
まず、ステップS101に示すセンサフィルム10の形成では、
図4(a)に示すように透明基材101を用意する。透明基材101としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)等のフィルム状の基材が用いられる。続いて、透明基材101の第1面101aおよび第2面101bの少なくともいずれかに電極層および引き出し配線42(
図1参照)を形成する。電極層および引き出し配線42は、フォトリソグラフィおよびエッチングやスクリーン印刷によって形成される。例えば、フォトリソグラフィおよびエッチングで形成する場合、例えばITO層をスパッタによって透明基材101の表面上に形成し、その上にレジストを形成する。レジストを露光および現像してパターニングした後、ITO層をエッチングする。その後、レジストを剥離する。これにより、透明基材101の第1面101aおよび第2面101bの少なくともいずれかにパターニングされたITO層からなる電極層が形成される。このようにして、センサフィルム10が形成される。
【0055】
次に、ステップS102に示す伸長抑制層70の形成では、
図4(b)に示すように、センサフィルム10の第2面10bに伸長抑制層70を形成する。伸長抑制層70は、接着剤を用いた貼合や、塗布などによりセンサフィルム10の第2面10bに形成される。伸長抑制層70としては、透明基材101の材料と同等以下の伸長性を有する透明材料が用いられることが好ましい。伸長抑制層70の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)や、ポリエチレンナフタレート(PEN)や、透光性を有するポリイミドなどが挙げられる。例えば、伸長抑制層70の材料は透明基材101の材料と同じで、伸長抑制層70の厚さは透明基材101の厚さと略同じであってもよい。伸長抑制層70の材料が透明基材101の材料と同じであり、伸長抑制層70の厚さが透明基材101の厚さと同じである場合には、センサフィルム10の検出領域VAの伸長量を、伸長抑制層70が設けられない場合と比較して約50パーセント(%)程度に抑えることができる。なお、伸長抑制層70の材料を変更するだけではなく、伸長抑制層70の厚さを変更することによっても、センサフィルム10の検出領域VAの伸長量を調整することができる。
【0056】
次に、ステップS103に示す樹脂層30の形成では、
図4(c)に示すように、電極層および引き出し配線42が形成されたセンサフィルム10と、貼合や塗布などによりセンサフィルム10に形成された伸長抑制層70と、を射出成形の型内に挿入し、透光性を有する樹脂を含む材料を型内に流し込み、
図4(c)に示すような樹脂層30を形成する。すなわち、インモールドラミネーション(IML)によってセンサフィルム10と、伸長抑制層70と、樹脂層30と、の積層体を構成する。この際、センサフィルム10は型内に流し込まれた樹脂を含む材料と型との間で型の形状に合わせて変形し、センサフィルム10の伸長が生じる。
【0057】
ここで、伸長抑制層70が設けられていない場合において、センサフィルム10の検出領域VAの外側(非検出領域NA)に検出領域VAの3次元曲面(第1の曲面)の曲率半径よりも小さい曲率半径(極小曲率半径)の3次元曲面(第2の曲面)が存在すると、センサフィルム10の検出領域は、IMLにおいて極小曲率半径領域LAの伸長による引っ張り応力の影響を受け、許容伸長量よりも伸長して破壊するおそれがある。
【0058】
これに対して、本実施形態に係る入力装置1の製造方法では、センサフィルム10の第2面10bに伸長抑制層70を形成し、IMLによってセンサフィルム10と、伸長抑制層70と、樹脂層30と、の積層体を構成する。これにより、センサフィルム10の非検出領域NAに極小曲率半径を有する曲面(第2の曲面)が存在していても、IMLにおいてセンサフィルム10が伸長する際に、センサフィルム10の検出領域VAの伸長量を、センサフィルム10の非検出領域NAの伸長量よりも小さく抑えることができる。これにより、2次元や3次元の曲面を有するセンサフィルム10の伸長箇所を部分的に制御し、センサフィルム10の検出領域VAが破壊することを抑えることができる。そのため、入力装置1の形状が極小曲率半径領域LAの伸長量に制約を受けることを解消することができ、所望の3次元曲面を有する入力装置1を実現することができる。
【0059】
次に、ステップS104に示す加飾層50の形成では、
図4(d)に示すように、非検出領域NAを覆うように樹脂層30の第1面30aに加飾層50を形成する。加飾層50は、遮光性を有する材料で検出領域VAの周囲に印刷や塗布により形成される。あるいは、加飾層50は、スパッタや蒸着等により形成されてもよい。
【0060】
本実施形態に係る入力装置1の製造方法では、センサフィルム10と、貼合や塗布などによりセンサフィルム10に形成された伸長抑制層70と、を射出成形の型内に挿入する前工程として、センサフィルム10および伸長抑制層70を所定の温度に加熱してプレフォーミングを行ってもよい。つまり、ステップS102とステップS103との間の工程としてセンサフィルム10および伸長抑制層70に対してプレフォーミングを行い、センサフィルム10と、伸長抑制層70と、の積層体を構成しておいてもよい。この場合には、ステップ103に示す樹脂層30の成形の際にセンサフィルム10の伸長は殆ど生じない。
【0061】
センサフィルム10および伸長抑制層70に対してプレフォーミングを行っておくと、センサフィルム10および伸長抑制層70を型内に正確に設置することができる。これにより、樹脂層30となる溶融樹脂を型内の隅々まで行き届かせることができ、成形時の完成度を高めることができる。すなわち、不良品の発生を抑えるとともに入力装置1の品質を高めることができる。
【0062】
なお、ステップS102において、
図4(b)に表した二点鎖線の伸長抑制層70ように、センサフィルム10の第1面10a側に伸長抑制層70を形成してもよい。つまり、ステップS102において、センサフィルム10の第2面10b側およびセンサフィルム10の第1面10a側の少なくともいずれかに伸長抑制層70を形成する。センサフィルム10の第1面10a側に伸長抑制層70を形成する場合には、
図4(c)に表した二点鎖線で示されるように伸長抑制層70は形成される。
【0063】
図5は、本実施形態に係る他の入力装置の模式断面図であり、
図1に示すA−A線断面図に相当する。
本実施形態に係る入力装置1Aは、センサフィルム10と、樹脂層30と、加飾層50と、伸長抑制層70と、を備える。
【0064】
図1および
図2に関して前述した入力装置1の加飾層50が非検出領域NAを覆うように樹脂層30の第1面30aに設けられていることに対して、本実施形態に係る入力装置1Aの加飾層50は、センサフィルム10の第1面10aの非検出領域NAに設けられている。本実施形態に係る入力装置1Aのセンサフィルム10は、検出領域VAにおいて3次元曲面(第1の曲面)を有するとともに、非検出領域NAにおいて検出領域VAの3次元曲面(第1の曲面)の曲率半径よりも小さい曲率半径(極小曲率半径)の3次元曲面(第2の曲面)を有する(極小曲率半径領域LA)。その他の各層の構造および材料は、
図1および
図2に関して前述した入力装置1の各層の構造および材料のそれぞれと同じである。
【0065】
なお、本実施形態に係る入力装置1Aにおいても、伸長抑制層70は、
図5に表した二点鎖線の伸長抑制層70のようにセンサフィルム10の第1面10a側に設けられていてもよい。つまり、伸長抑制層70は、センサフィルム10の第2面10b側およびセンサフィルム10の第1面10a側の少なくともいずれかに設けられている。
【0066】
本実施形態に係る入力装置1Aによれば、センサフィルム10に加飾層50を形成した後に、IMLによってセンサフィルム10と、伸長抑制層70と、加飾層50と、樹脂層30と、の積層体を構成することができる。
これについて、図面を参照しつつ、さらに説明する。
【0067】
図6は、本実施形態に係る入力装置の他の製造方法を例示するフローチャートである。
図7は、本実施形態に係る入力装置の他の製造方法を例示する模式断面図である。
【0068】
図6に表したように、本実施形態に係る入力装置1Aの製造方法は、センサフィルム10の形成(ステップS201)と、伸長抑制層70の形成(ステップS202)と、加飾層50の形
成(ステップS203)と、樹脂層30の形成(ステップS204)と、を備える。なお、加飾層50の形成(ステップS203)は、伸長抑制層70の形成(ステップS202)よりも先に行われてもよい。
【0069】
まず、ステップS201およびステップS202の製造方法は、
図3および
図4に関して前述したステップS101およびステップS102のそれぞれの製造方法と同じである。
【0070】
次に、ステップS203に示す加飾層50の形成では、
図7(c)に示すように、センサフィルム10の第1面10a側の非検出領域NAに加飾層50を形成する。加飾層50は、遮光性を有する材料で検出領域VAの周囲に印刷や塗布により形成される。あるいは、加飾層50は、スパッタや蒸着等により形成されてもよい。
【0071】
なお、
図7(c)に表した二点鎖線の伸長抑制層70のように、センサフィルム10の第1面10a側に伸長抑制層70を形成してもよい。つまり、ステップS202において、センサフィルム10の第2面10b側およびセンサフィルム10の第1面10a側の少なくともいずれかに伸長抑制層70を形成する。センサフィルム10の第1面10a側に伸長抑制層70を形成する場合には、伸長抑制層70の形成は、加飾層50の形成よりも後に行われる。
【0072】
次に、ステップS204に示す樹脂層30の形成では、
図7(d)に示すように、電極層および引き出し配線42が形成されたセンサフィルム10と、センサフィルム10に形成された伸長抑制層70および加飾層50と、を射出成形の型内に挿入し、透光性を有する合成樹脂を含む材料を型内に流し込み、
図7(d)に示すような樹脂層30を形成する。すなわち、IMLによってセンサフィルム10と、伸長抑制層70と、加飾層50と、樹脂層30と、の積層体を構成する。
【0073】
本実施形態に係る入力装置1Aの製造方法によれば、センサフィルム10に伸長抑制層70および加飾層50を形成した後に、IMLによってセンサフィルム10と、伸長抑制層70と、加飾層50と、樹脂層30と、の積層体を構成することができる。また、他の効果についても、
図3および
図4に関して前述した入力装置1の製造方法における効果と同様の効果が得られる。
【0074】
なお、加飾層50は、センサフィルム10の第2面10b側の非検出領域NAに設けられてもよい。但し、加飾層50がセンサフィルム10の第1面10a側および第2面10b側のいずれに設けられた場合であっても、IMLの後に樹脂層30の第1面30a側からみたときに、加飾層50は、電極層および引き出し配線42よりも前面(
図7(d)では上方)に設けられる必要がある。また、本実施形態に係る入力装置1Aの製造方法においても、ステップS203とステップS204との間の工程としてセンサフィルム10、伸長抑制層70および加飾層50に対してプレフォーミングを行い、センサフィルム10と、伸長抑制層70と、加飾層50と、の積層体を構成しておいてもよい。
【0075】
図8は、本実施形態に係るさらに他の入力装置の模式断面図であり、
図1に示すA−A線断面図に相当する。
本実施形態に係る入力装置1Bは、センサフィルム10と、樹脂層30と、加飾層50と、伸長抑制層70と、を備える。センサフィルム10は、透明基材101と、電極層41と、引き出し配線42と、を有する。
【0076】
センサフィルム10の透明基材101は、透光性を有し、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のフィルム状の基材で形成される。透明基材101の第2面101b(センサフィルム10の第2面10b)の非検出領域NAには、加飾層50が設けられている。
【0077】
透明基材101の第2面101bの検出領域VAには、電極層41が設けられている。電極層41は、透光性を有し、タッチセンサにおける検出電極の一つである。電極層41には、ITO(Indium Tin Oxide)、透光性の有機導電層、金属ナノワイヤなどが用いられる。非検出領域NAであって加飾層50よりも後面(
図8では下方)には、引き出し配線42の一部が設けられている。引き出し配線42には、
図1に示すようなセンサフィルム10から外側に延出するフレキシブル配線基板や、電極層41と接続され、センサフィルム10の検出領域VAの外側に引き回される配線が含まれる。
【0078】
電極層41の表面であって、電極層41からみて透明基材101とは反対側の表面には、伸長抑制層70が設けられている。すなわち、伸長抑制層70は、センサフィルム10の第2面10b側に設けられている。伸長抑制層70は、接着剤を用いた貼合や、塗布などにより検出領域VAに形成される。
【0079】
伸長抑制層70からみて透明基材101とは反対側には、樹脂層30が設けられている。樹脂層30は、センサフィルム10の下において、検出領域VAおよび非検出領域NAを覆うように設けられている。樹脂層30は、透光性を有し、溶融状態の合成樹脂を含む材料を型に注入する射出成形法により形成される。
【0080】
本実施形態に係る入力装置1Bのセンサフィルム10は、検出領域VAにおいて3次元曲面(第1の曲面)を有するとともに、非検出領域NAにおいて検出領域VAの3次元曲面(第1の曲面)の曲率半径よりも小さい曲率半径(極小曲率半径)の3次元曲面(第2の曲面)を有する(極小曲率半径領域LA)。その他の各層の構造および材料は、
図1および
図2に関して前述した入力装置1の各層の構造および材料のそれぞれと同じである。
【0081】
本実施形態に係る入力装置1Bによれば、
図1および
図2に関して前述した入力装置1における効果と同様の効果が得られるとともに、センサフィルム10が樹脂層30よりも前面側に存在するため、樹脂層30が破損した場合であっても樹脂層30の飛散を抑えることができる。
【0082】
図9は、本実施形態に係る入力装置のさらに他の製造方法を例示するフローチャートである。
図10は、本実施形態に係る入力装置のさらに他の製造方法を例示する模式断面図である。
【0083】
図9に表したように、本実施形態に係る入力装置1Bの製造方法は、加飾層50の形成(ステップS301)と、電極層41および引き出し配線42の形成(ステップS302)と、伸長抑制層70の形成(ステップS303)と、樹脂層30の形成(ステップS304)と、を備える。
【0084】
まず、ステップS301に示す加飾層50の形成では、
図10(a)および
図10(b)に示すように、透明基材101を用意し、透明基材101の第2面101bの非検出領域NAに加飾層50を形成する。透明基材101としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)等のフィルム状の基材が用いられる。加飾層50は、遮光性を有する材料で検出領域VAの周囲に印刷や塗布により形成される。あるいは、加飾層50は、スパッタや蒸着等により形成されてもよい。
【0085】
次に、ステップS302に示す電極層41および引き出し配線42の形成では、
図10(c)に示すように、透明基材101の第2面101b側の検出領域VAに電極層41を形成し、非検出領域NAであって加飾層50よりも後面(
図10(c)で下方)に引き出し配線42の一部を形成する。なお、引き出し配線42の他の一部は、フレキシブル配線基板に設けられる(
図1参照)。
図3および
図4に関して前述したように、電極層41および引き出し配線42は、フォトリソグラフィおよびエッチングやスクリーン印刷によって形成される。このようにして、センサフィルム10が形成される。
【0086】
次に、ステップS303に示す伸長抑制層70の形成では、
図10(d)に示すように、電極層41の表面であって、電極層41からみて透明基材101とは反対側の表面に伸長抑制層70を形成する。すなわち、センサフィルム10の第2面10b側に伸長抑制層70を形成する。伸長抑制層70は、接着剤を用いた貼合や、塗布などにより形成される。伸長抑制層70としては、透明基材101の材料と同等以下の伸長性を有する透明材料が用いられることが好ましい。例えば、伸長抑制層70の材料は透明基材101の材料と同じで、伸長抑制層70の厚さは透明基材101の厚さと略同じであってもよい。伸長抑制層70の材料の例は、
図3および
図4に関して前述した通りである。
【0087】
次に、ステップS304に示す樹脂層30の形成では、
図10(e)に示すように、電極層41および引き出し配線42が形成されたセンサフィルム10と、センサフィルム10に形成された加飾層50および伸長抑制層70と、を射出成形の型内に挿入し、透光性を有する合成樹脂を含む材料を型内に流し込み、
図10(e)に示すような樹脂層30を形成する。すなわち、IMLによってセンサフィルム10と、加飾層50と、伸長抑制層70と、樹脂層30と、の積層体を構成する。
【0088】
本実施形態に係る入力装置1Bの製造方法によれば、
図1および
図2に関して前述した入力装置1の製造方法における効果と同様の効果が得られるとともに、センサフィルム10を樹脂層30よりも前面側に形成するため、樹脂層30が破損した場合であっても樹脂層30の飛散を抑えることができる入力装置1Bを製造することができる。
【0089】
なお、本実施形態に係る入力装置1Bの製造方法においても、ステップS303とステップS304との間の工程としてセンサフィルム10、加飾層50および伸長抑制層70に対してプレフォーミングを行い、センサフィルム10と、加飾層50と、伸長抑制層70と、の積層体を構成しておいてもよい。
【0090】
図11は、本実施形態に係るさらに他の入力装置の模式断面図であり、
図1に示すA−A線断面図に相当する。
本実施形態に係る入力装置1Cは、第1のセンサフィルム11と、第2のセンサフィルム12と、樹脂層30と、加飾層50と、第1の伸長抑制層71と、第2の伸長抑制層72と、を備える。第1のセンサフィルム11は、第1の透明基材101と、第1の電極層41と、第1の引き出し配線42と、を有する。第2のセンサフィルム12は、第2の透明基材102と、第2の電極層43と、第2の引き出し配線44と、を有する。
【0091】
第1のセンサフィルム11の各層の構造および材料は、
図8に関して前述したセンサフィルム10の各層の構造および材料と同じである。
【0092】
第2のセンサフィルム12の第2の透明基材102は、樹脂層30の第2面30bに設けられている。第2の透明基材102は、透光性を有し、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のフィルム状の基材で形成される。
【0093】
第2の透明基材102の第2面102bの検出領域VAには、第2の電極層43が設けられている。第2の電極層43は、透光性を有し、タッチセンサにおける検出電極の一つである。第2の電極層43には、ITO(Indium Tin Oxide)、透光性の有機導電層、金属ナノワイヤなどが用いられる。非検出領域NAであって加飾層50よりも後面(
図11では下方)には、第2の引き出し配線44の一部が設けられている。第2の引き出し配線44には、第2のセンサフィルム12から外側に延出するフレキシブル配線基板や、第2の電極層43と接続され、第2のセンサフィルム12の検出領域VAの外側に引き回される配線が含まれる。
【0094】
このように、本実施形態に係る入力装置1Cでは、第1の電極層41が樹脂層30のいれずかの一方の側に設けられ、第2の電極層43が樹脂層30のいずれか他方の側に設けられている。つまり、樹脂層30は、第1の電極層41と、第2の電極層43と、の間に設けられている。言い換えれば、樹脂層30は、第1のセンサフィルム11と、第2のセンサフィルム12と、の間に設けられている。
【0095】
そのため、入力装置1Cは、相互検出型の静電容量式センサとして機能することができる。すなわち、入力装置1Cは、第1の電極層41および第2の電極層43のいずれか一方の電極層の一列に駆動電圧を印加し、第1の電極層41および第2の電極層43のいずれか他方の電極層と指との間の静電容量の変化を検知する。これにより、入力装置1Cは、一方の電極層により指の位置のX座標を検知し、他方の電極層により指の位置のY座標を検知する。
【0096】
第2の電極層43の表面であって、第2の電極層43からみて第2の透明基材102とは反対側の表面には、第2の伸長抑制層72が設けられている。すなわち、第2の伸長抑制層72は、第2のセンサフィルム12の第2面12b側に設けられている。第2の伸長抑制層72は、接着剤を用いた貼合や、塗布などにより検出領域VAに形成される。
【0097】
なお、
図11に表した二点鎖線の第2の電極層43および第2の伸長抑制層72のように、第2の電極層43および第2の伸長抑制層72は、第2のセンサフィルム12の第1面12a側に設けられていてもよい。つまり、第2の電極層43および第2の伸長抑制層72は、第2の透明基材102と、樹脂層30と、の間に設けられていてもよい。
【0098】
本実施形態に係る入力装置1Cの第1のセンサフィルム11は、検出領域VAにおいて3次元曲面(第1の曲面)を有するとともに、非検出領域NAにおいて検出領域VAの3次元曲面(第1の曲面)の曲率半径よりも小さい曲率半径(極小曲率半径)の3次元曲面(第2の曲面)を有する(極小曲率半径領域LA)。また、本実施形態に係る入力装置1Cの第2のセンサフィルム12は、検出領域VAにおいて3次元曲面(第3の曲面)を有するとともに、非検出領域NAにおいて検出領域VAの3次元曲面(第3の曲面)の曲率半径よりも小さい曲率半径(極小曲率半径)の3次元曲面(第4の曲面)を有する(極小曲率半径領域LA)。その他の各層の構造および材料は、
図1および
図2に関して前述した入力装置1の各層の構造および材料のそれぞれと同じである。
【0099】
本実施形態に係る入力装置1Cによれば、
図8に関して前述した入力装置1Bにおける効果と同様の効果が得られるとともに、複数のセンサフィルム(本実施形態では、第1のセンサフィルム11および第2のセンサフィルム12)が設けられた場合であっても、複数のセンサフィルムのそれぞれの許容伸長量の範囲内に収めることができる。これにより、複数のセンサフィルムのそれぞれの伸長箇所を部分的に制御し、複数のセンサフィルムの検出領域VAが破壊することを抑えることができる。そのため、入力装置1Cの形状が極小曲率半径領域LAの伸長量に制約を受けることを解消することができ、所望の3次元曲面を有する入力装置1Cを実現することができる。
【0100】
図12は、本実施形態に係る入力装置のさらに他の製造方法を例示するフローチャートである。
図13および
図14は、本実施形態に係る入力装置のさらに他の製造方法を例示する模式断面図である。
【0101】
図12に表したように、本実施形態に係る入力装置1Cの製造方法は、加飾層50の形成(ステップS401)と、第1の電極層41および第1の引き出し配線42の形成(ステップS402)と、第1の伸長抑制層71の形成(ステップS403)と、第2の電極層43および第2の引き出し配線44の形成(ステップS404)と、第2の伸長抑制層72の形成(ステップS405)と、樹脂層30の形成(ステップS406)と、を備える。
【0102】
まず、ステップS401〜ステップS403の製造方法は、
図13(a)〜
図13(d)に示すように、
図9および
図10に関して前述したステップS301〜ステップS303のそれぞれの製造方法と同じである。第1の伸長抑制層71としては、第1の透明基材101の材料と同等以下の伸長性を有する透明材料が用いられることが好ましい。第1の伸長抑制層71の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)や、ポリエチレンナフタレート(PEN)や、透光性を有するポリイミドなどが挙げられる。例えば、第1の伸長抑制層71の材料は第1の透明基材101の材料と同じで、第1の伸長抑制層71の厚さは第1の透明基材101の厚さと略同じであってもよい。
【0103】
次に、ステップS404に示す第2の電極層43および第2の引き出し配線44の形成では、
図14(a)および
図14(b)に示すように、第2の透明基材102を用意し、第2の透明基材102の第2面102b側の検出領域VAに第2の電極層43を形成し、非検出領域NAであって加飾層50よりも後面(
図14(b)で下方)に対応する領域に第2の引き出し配線44の一部を形成する。なお、第2の引き出し配線44の他の一部は、フレキシブル配線基板に設けられる(
図1参照)。
図3および
図4に関して前述したように、第2の電極層43および第2の引き出し配線44は、フォトリソグラフィおよびエッチングやスクリーン印刷によって形成される。このようにして、第2のセンサフィルム12が形成される。
【0104】
次に、ステップS405に示す第2の伸長抑制層72の形成では、
図14(c)に示すように、第2の電極層43の表面であって、第2の電極層43からみて第2の透明基材102とは反対側の表面に第2の伸長抑制層72を形成する。すなわち、第2のセンサフィルム12の第2面12b側に第2の伸長抑制層72を形成する。第2の伸長抑制層72は、接着剤を用いた貼合や、塗布などにより形成される。第2伸長抑制層72としては、第2の透明基材102の材料と同等以下の伸長性を有する透明材料が用いられることが好ましい。第2の伸長抑制層72の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)や、ポリエチレンナフタレート(PEN)や、透光性を有するポリイミドなどが挙げられる。例えば、第2の伸長抑制層72の材料は第2の透明基材102の材料と同じで、第2の伸長抑制層72の厚さは第2の透明基材102の厚さと略同じであってもよい。
【0105】
次に、ステップS406に示す樹脂層30の形成では、
図14(d)に示すように、第1の電極層41および第1の引き出し配線42が形成された第1のセンサフィルム11と、第1のセンサフィルム11に形成された加飾層50および第1の伸長抑制層71と、第2の電極層43および第2の引き出し配線44が形成された第2のセンサフィルム12と、第2のセンサフィルム12に形成された第2の伸長抑制層72と、を射出成形の型内に挿入し、透光性を有する合成樹脂を含む材料を型内に流し込み、
図14(d)に示すような樹脂層30を形成する。すなわち、IMLによって第1のセンサフィルム11と、加飾層50と、第1の伸長抑制層71と、樹脂層30と、第2のセンサフィルム12と、第2の伸長抑制層72と、の積層体を構成する。
【0106】
本実施形態に係る入力装置1Cの製造方法によれば、
図1および
図2に関して前述した入力装置1の製造方法における効果と同様の効果が得られるとともに、複数のセンサフィルム(本実施形態では、第1のセンサフィルム11および第2のセンサフィルム12)が設けられた場合であっても、複数のセンサフィルムのそれぞれの許容伸長量の範囲内に収めることができる入力装置1Cを製造することができる。
【0107】
なお、本実施形態に係る入力装置1Cの製造方法においても、ステップS405とステップS406との間の工程として第1のセンサフィルム11、加飾層50および第1の伸長抑制層71、ならびに、第2のセンサフィルム12および第2の伸長抑制層72に対してプレフォーミングを行い、第1のセンサフィルム11と、加飾層50と、第1の伸長抑制層71と、の積層体、および第2のセンサフィルム12と、第2の伸長抑制層72と、の積層体を構成しておいてもよい。
【0108】
また、ステップS401〜ステップS403の工程は、ステップS405とステップS406との間の工程に行われてもよい。つまり、第1のセンサフィルム11の製造工程は、第2のセンサフィルム12の製造工程とは別に行われてもよい。
【0109】
以上説明したように、本実施形態によれば、2次元や3次元の曲面を有するセンサフィルム10の伸長箇所を部分的に制御し、センサフィルム10の検出領域VAが破壊することを抑制することができる入力装置1、1A、1B、1Cおよび入力装置1、1A、1B、1Cの製造方法を提供することが可能になる。
【0110】
なお、上記に本実施形態を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。例えば、前述の各実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、各実施形態の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含有される。