特許第6488034号(P6488034)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6488034
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】土壌改良材及び土壌改良方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 17/02 20060101AFI20190311BHJP
   C05G 3/04 20060101ALI20190311BHJP
   A01G 7/00 20060101ALI20190311BHJP
【FI】
   C09K17/02 H
   C05G3/04
   A01G7/00 604Z
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2018-33634(P2018-33634)
(22)【出願日】2018年2月27日
【審査請求日】2018年5月14日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518067423
【氏名又は名称】宮本 隆
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮本 隆
【審査官】 小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−253264(JP,A)
【文献】 特開2002−079232(JP,A)
【文献】 特開2010−163619(JP,A)
【文献】 特開2000−051848(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第105950168(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 17/00− 17/52
B09B 1/00− 5/00
B09C 1/00− 1/10
C05B 1/00− 21/00
C05C 1/00− 13/00
C05D 1/00− 11/00
C05F 1/00− 17/02
C05G 1/00− 5/00
A01G 1/00− 1/02
A01G 1/06− 1/12
A01G 5/00− 7/06
A01G 16/00− 17/02
A01G 17/18
CAplus(STN)
JSTPlus/JST5874/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属マグネシウムの粒子からなり、酸性土壌に散布されることを特徴とする土壌改良材。
【請求項2】
前記金属マグネシウムの純度が99.00〜99.99%であることを特徴とする請求項1記載の土壌改良材。
【請求項3】
前記金属マグネシウムの粒子は、篩の目開きの大きさが1〜7mmの粒子であることを特徴とする請求項1又は2に記載の土壌改良材。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項記載の金属マグネシウムの粒子を酸性土壌に散布することを特徴とする土壌改良方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸性土壌を植物の生育に適した土壌に改良するために使用される土壌改良材及びこの土壌改良材を使用した土壌改良方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大気汚染に起因した酸性雨は土壌を酸性にするため、植物を育成する上で大きな悪影響を及ぼす。このため酸性土壌を中性化する必要があり、一般的には、苦土石灰や消石灰等の土壌改良材を土壌に散布することがなされている。
【0003】
苦土石灰はドロマイト鉱物を粉状や粒状に粉砕し焙焼して製造されるものであり、炭酸カルシウムに酸化マグネシウムを5%前後含有した肥料である。しかし苦土石灰は、酸性化が進行した土壌に対しては大量に使用しなければならないという問題点がある。一方、消石灰は水酸化カルシウム100%の肥料であってアルカリ性が強く、植物の生育に良好な弱酸性のpH7程度以上に土壌の酸性度を変化させることがある。また、これらの土壌改良材のカルシウム化合物は水に溶けにくく、植物の根付近に長期に残留するため、畑土を固くすることがある。このため、これらの土壌改良材は使用量や使用期間をこまめに調整しなければならない問題がある。
【0004】
以上の土壌改良材に対し、特許文献1には、マグネシウム塩を含有するアルカリ性過酸化物を用いる土壌改良方法が開示されている。この方法は、過炭酸塩や過ホウ酸塩等のアルカリ性過酸化物にマグネシウム塩を含有させて土壌改良材とし、この土壌改良材を酸性土壌に散布するものである。
【0005】
しかしながら、特許文献1で用いる土壌改良材は、過酸化物であるという特性上、可燃物との接触によって激しく燃焼するため、危険であるばかりでなく、性状が不安定で分解し易く、しかも人体に有害である。このため、環境への悪影響があるばかりでなく。取り扱いに細心の注意が必要であり、取り扱い性が悪い問題がある。
【0006】
さらに、マグネシウム塩としてアルカリ性過酸化物に対し、1/100〜1/1000程度しか含有させることができない。このため、含有できるマグネシウム塩の量に限界があり、十分なマグネシウム量を植物に吸収させることができない。マグネシウムは有機金属錯体化合物である葉緑素の活性中心金属であるから、マグネシウム量が少ない場合には、葉が黄色くなって光合成の効率を上げることができなくなる問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4078524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上の従来の問題点を考慮してなされたものであり、環境にやさしく、安全であり、取り扱いが簡単であり、しかも植物の根に悪影響を与えることがなく、葉緑素の光合成を向上させることが可能な土壌改良材及びこの土壌改良材を用いた土壌改良方法を提供することを目的とする
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の土壌改良材は、金属マグネシウムの粒子からなり、酸性土壌に散布されることを特徴とする。
【0010】
本発明においては、前記金属マグネシウムの純度が99.00〜99.99%である。
また、前記金属マグネシウムの粒子は、1〜7mmの範囲の粒子である。
【0011】
本発明の土壌改良方法は、以上の金属マグネシウムの粒子を酸性土壌に散布することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、金属マグネシウムが酸性土壌の酸を中和して弱酸性〜中性とするため、植物の生育に良好な土壌とすることができる。又、金属マグネシウムの粒子を用いるので、環境に無害な金属マグネシウムが徐々に溶け出して有効成分に変化するため、マグネシウムによる弱酸性化を長期間継続させることができる。さらに、マグネシウムが有効成分として植物に吸収されて植物を活性化することができるため、植物の生育に有効に寄与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の土壌改良材は、金属マグネシウムの粒子からなるものであり、この金属マグネシウム粒子を酸性土壌に散布するように使用される。酸性土壌は、pH6.0以下に酸性化された土壌である。本発明において、土壌の酸性度は土壌100重量部に対し、250重量部の水を加え、30分間放置した後の水溶液のpHのことを示す。
【0014】
酸性土壌に散布された金属マグネシウム粒子は、土壌中の酸と接触することにより、以下の式(1)の反応により酸性土壌を中和する。すなわち、土壌中の酸をHXとした場合、
Mg+2HX=MgX+H ・・・式(1)
【0015】
式(1)の反応により、金属マグネシウム粒子は、酸性成分を土壌中から除去すると共に、酸性土壌をpH6.3程度或いはそれ以上に中和することができる。そして、pH6.3以上の弱酸性〜中性土壌とすることにより土壌が植物の生育に良好な環境となる。
【0016】
式(1)によって生成した反応生成物MgXは、多くの場合水溶性であり、Mg2+イオンとXイオンとに分離し、マグネシウムイオンがマグネシウムとして植物の根に吸収される。根に吸収されたマグネシウムは有機金属錯体である葉緑素の活性中心金属となる。これにより植物は良好に光合成を行なうことができ、植物が早期に生育する。
本発明においては、金属マグネシウムの粒子を用いることから、金属マグネシウムが雨水等に流されることなく土壌中に長期間、残留しており、土壌の酸性度の緩和作用及びマグネシウムの根からの吸収を長期間作用させることができる。これにより、良好な植物の生育に寄与する。
【0017】
本発明の金属マグネシウムは、純度を特に限定されないが、以上の作用を有効に発揮するため、金属マグネシウムは純度が高いほど良好であり、純度99.00〜99.99%の範囲の金属マグネシウムが用いられる。純度が99.00%未満の場合には、含有している不純物による悪影響が大きいと共に上記作用が低下して好ましくなく、純度が99.99%以上の金属マグネシウムは製造上、困難性がある。このため、99.98%の純度とすることが好ましい。
純度99.98%の金属マグネシウムにおいては、他の元素を微量に含むものであり、純度99.98%の金属マグネシウムの一例を本発明者が分析したところ、0.00038%のAl、0.0011%のZn、0.0016%のMn、0.00025%のFe、0.0038%のSi、0.00020%のCu、0.00034のNiを含んでいたが、微量であるため植物の生育に問題となるものではなかった。
【0018】
金属マグネシウムは粒子の形態で土壌に散布される。金属マグネシウムの粒子としては、1〜7mmの範囲の粒子を用いることが良好である。また、マグネシウム粒子の大きさは、篩の目開きの大きさである。1mm未満の粒子では細かいため、土壌への散布が困難となるのに加えて、溶出が早くなり、雨水によって流出し易くなり、土壌改良作用の持続性が短くなる。7mmを超えた粒子では、粒径が大きく土壌への均一の散布が難しいと共に、土壌中への溶出が少なくなり、土壌への有効な作用が不足することがある。
土壌への散布は、一般的な散布方法を用いることができ、散布後はそのままでも良く、散布後に土壌を耕しても良い。又、土壌への散布量は土壌の酸性度、土質等によって調整することが良好であり、pH4付近の土壌の場合、粒径1mm、純度99.98%の金属グネシウムの粒子の場合、1mの土壌に対し3〜5gが良好である。なお、散布量の上限値については経済的な観点から決定することが良好である。
【0019】
本発明の金属マグネシウム粒子の製造は、多くの方法が公知であるが、例えばピジョン法を用いることができる。ピジョン法は円筒レトルト内にマグネシウム原料を投入し、レトルトを外部加熱して還元し、レトルト内の水冷コンデンサによってマグネシウムを凝縮して製造するものであり、このピジョン法を繰り返すことにより金属マグネシウムの純度を上げることができる。その他の方法としては、ドロマイト鉱石を1270°K以上に加熱し、ケイ素鉄によって還元する熱還元法を繰り返す方法、Alを原料に添加し、低融点スラグを発生させ、このスラグを1773°K以上に加熱して還元する内熱式を繰り返す方法により高純度の金属マグネシウムを製造することができる。
【実施例】
【0020】
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明する。
(実施例1)
酸性化が進行したpH4.3の酸性土壌1kgに、粒径3mmの金属マグネシウム粒子(純度99.98%)0.5gを散布し混錬して2週間放置したところ、土壌のpHが6.3になった。更に元肥(マイガーデン、住友化学園芸株式会社製)5.0gを混錬し1週間放置後、ほうれん草の種子100粒を播いて1か月間、適宜潅水しながら栽培したところ、発芽した91粒の種子の中、3cm以上に生育したのは53粒の種子であった。
【0021】
(実施例2)
酸性化が進行したpH4.3の酸性土壌1kgに、粒径1mmの金属マグネシウム粒子(純度99.98%)1.0gを散布し混錬して2週間放置したところ、土壌のpHが6.8になった。更に元肥(マイガーデン、住友化学園芸株式会社製)0.5gを混錬し1週間放置後、ほうれん草の種子100粒を播いて1か月間、適宜潅水しながら栽培したところ、発芽した96粒の種子の中、3cm以上に生育したのは62粒の種子であった。
【0022】
(実施例3)
酸性化が進行したpH4.3の酸性土壌1kgに、粒径7mmの金属マグネシウム粒子(純度99.96%)2.0gを散布し混錬して2週間放置したところ、土壌のpHが7.1になった。更に元肥(マイガーデン、住友化学園芸株式会社製)5gを混錬し1週間放置後、ほうれん草の種子100粒を播いて1か月間、適宜潅水しながら栽培したところ、発芽した98粒の種子の中、3cm以上に生育したのは67粒の種子であった。
【0023】
(比較例1)
酸性化が進行したpH4.3の酸性土壌1kgに、苦土石灰(溶性苦土5.0%)5.0gを散布し混錬して2週間放置したところ、土壌のpHが6.2になった。更に元肥(マイガーデン、住友化学園芸株式会社製)5gを混錬し1週間放置後、ほうれん草の種子100粒を播いて1か月間、適宜潅水しながら栽培したところ、発芽した53粒の種子の中、3cm以上に生育したのは25粒の種子であった。
【0024】
(比較例2)
酸性化が進行したpH4.3の酸性土壌1kgに、消石灰5.0gを散布し混錬して2週間放置したところ、土壌のpHが7.0になった。更に元肥(マイガーデン、住友化学園芸株式会社製)5gを混錬し1週間放置後、ほうれん草の種子100粒を播いて1か月間、適宜潅水しながら栽培したところ、発芽した53粒の種子の中、3cm以上に生育したのは16粒の種子であった。
【0025】
(比較例3)
酸性化が進行したpH4.3の酸性土壌1kgに、元肥(マイガーデン、住友化学園芸株式会社製)5gを混錬し1週間放置後、ほうれん草の種子100粒を播いて1か月間、適宜潅水しながら栽培したところ、発芽した69粒の種子の中、3cm以上に生育したのは15粒の種子であった。
【0026】
(比較例4)
市販の培養土1kgに、消石灰5.0gを散布し混錬して2週間放置し、更に元肥(マイガーデン、住友化学園芸株式会社製)5gを混錬し1週間放置後、ほうれん草の種子100粒を播いて1か月間、適宜潅水しながら栽培したところ、発芽した69粒の種子の中、3cm以上に生育したのは35粒の種子であった。
【要約】
【課題】安全であり、取り扱いが簡単で、植物の根に悪影響を与えることがなく、葉緑素の光合成を向上させることが可能な土壌改良を行なう。
【解決手段】純度99.98%の金属マグネシウムの粒子を酸性土壌に散布する。
【選択図】なし