(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示の第1の態様の積層体は、防水通気膜および/または防水通音膜として機能する樹脂フィルムと、セパレータと、を含む積層体であって、前記樹脂フィルムと前記セパレータとが粘着剤層により接合され、前記セパレータを前記樹脂フィルムから剥離したときに形成される剥離面が、前記樹脂フィルムと前記粘着剤層との間に位置する。
【0015】
本開示の第2の態様は、第1の態様の積層体において、前記樹脂フィルムの面密度が60g/m
2以下である。
【0016】
本開示の第3の態様は、第1または第2の態様の積層体において、前記樹脂フィルムが、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、およびポリオレフィン樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂から構成される。
【0017】
本開示の第4の態様は、第1から第3のいずれかの態様の積層体において、前記樹脂フィルムが、厚さ方向に貫通する複数の貫通孔を有し、前記貫通孔は、非多孔質である前記樹脂フィルムの基質構造を貫く、中心軸が直線状に延びたストレート孔である。
【0018】
本開示の第5の態様は、第1または第2の態様の積層体において、前記樹脂フィルムが、ポリテトラフルオロエチレン(以下、「PTFE」と記載する)多孔質膜である。
【0019】
本開示の第6の態様は、第1から第5のいずれかの態様の積層体において、前記樹脂フィルムが単層フィルムである。
【0020】
本開示の第7の態様は、第1から第6のいずれかの態様の積層体において、アクリル板に対する前記粘着剤層の粘着力が3.0N/25mm以下である。
【0021】
本開示の第8の態様の巻回体は、防水通気膜および/または防水通音膜として機能する樹脂フィルムと、セパレータと、を含む積層体の巻回体であって、前記樹脂フィルムと前記セパレータとが粘着剤層により接合され、前記積層体において前記セパレータを前記樹脂フィルムから剥離したときに形成される剥離面が、前記樹脂フィルムと前記粘着剤層との間に位置する。
【0022】
本開示の積層体の一例を
図1に示す。
図1に示す積層体5は、樹脂フィルム2とセパレータ4とを含む。樹脂フィルム2は、防水膜として機能するフィルムである。「防水膜として機能するフィルム」には、形状加工等の所定の工程を経て防水膜となるフィルムが含まれる。樹脂フィルム2とセパレータ4とは粘着剤層3により互いに接合されている。積層体5において、セパレータ4を樹脂フィルム2から剥離したときに形成される剥離面7は、樹脂フィルム2と粘着剤層3との間に位置する。すなわち、積層体5では、セパレータ4を剥離する際に粘着剤層3がともに樹脂フィルム2から剥離され、粘着剤層3が表面に形成されていない樹脂フィルム2が得られる。
【0023】
積層体5により供給された、粘着剤層が表面に形成されていない樹脂フィルム2は、任意の接合方法により筐体の開口に接合可能である。すなわち、樹脂フィルム2は、筐体の開口への接合方法の高い自由度を有する。接合方法は、例えば、樹脂フィルム2の表面に新たに配置した粘着剤層による接合、熱溶着による接合、超音波溶着による接合である。
【0024】
積層体5により供給された樹脂フィルム2は、必要に応じて、任意の形状に加工できる。すなわち、樹脂フィルム2は、形状の高い自由度を有する。ただし、「形状」には「サイズ」が含まれる。上述の点は、積層体5によれば、防水膜として機能する樹脂フィルム2を筐体の開口への接合方法および/または形状の自由度が高い状態で供給できることを意味している。
【0025】
また、積層体5によれば、防水膜として機能する樹脂フィルム2の巻回が可能である。すなわち、積層体5によれば、巻回体の形態として樹脂フィルム2を供給可能である。
【0026】
これらに加えて、巻回時における樹脂フィルム2とセパレータ4とのズレが粘着剤層3によって抑制される。積層体5の巻回体では、巻回時の巻締まり等に起因する故障(巻回体の形状異常)の発生を抑制できる。
【0027】
1つの積層体5から複数の樹脂フィルム2を得る場合、得られた複数の樹脂フィルム2間で異なる接合方法を選択することもできる。また、1つの積層体5から複数の樹脂フィルム2を得る場合、得られた樹脂フィルム2間でその形状が異なっていてもよい。なお、積層体5から樹脂フィルム2を得る際に、必要に応じて、形状加工等の所定の工程を実施してもよい。
【0028】
近年、防水膜を接合する開口のサイズの縮小化が進み、これに伴って防水膜のサイズの縮小が余儀なくされている。縮小化された防水膜は、単独での取扱性が低い。積層体5によれば、縮小化された防水膜である場合にも樹脂フィルム2を安定して供給でき、巻回体の形態として供給することもできる。
【0029】
防水膜として機能する樹脂フィルムである限り、樹脂フィルム2は限定されない。
【0030】
樹脂フィルム2は、例えば、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、およびポリオレフィン樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂から構成される。フッ素樹脂は、例えば、PTFE、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、パーフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)である。ポリエステル樹脂は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンナフタレート(PBN)である。ポリオレフィン樹脂は、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)である。ただし、樹脂フィルム2の材質は、これらの例に限定されない。樹脂フィルム2は、2種以上の樹脂を含んでいてもよい。
【0031】
樹脂フィルム2は、空孔、例えば樹脂フィルム2の双方の主面を繋ぐ空孔、を有さないフィルムであってもよいし、1又は2以上の空孔を有するフィルムであってもよい。複数の空孔を有する樹脂フィルム2の一例は、多孔質の基質構造を有する多孔質フィルムである。多孔質フィルムには、樹脂の凝集部分であるノード(結節)15と、ノード15に両末端が結合した微細な繊維状構造体であるフィブリル16とにより構成される網目構造を有し、フィブリル16間に無数の空孔17を有するフィルム14(
図2参照)が含まれる。フィルム14は、典型的には、前駆体である樹脂フィルムを延伸して形成される。前駆体である樹脂フィルムを延伸して得たフィルム14は、一般に、延伸多孔質膜とも称される。延伸多孔質膜は、例えば、PTFE多孔質膜である。
図2は、PTFE多孔質膜の一例に対する走査型電子顕微鏡(SEM)による観察像を示す図である。樹脂フィルム2の構造は、これらの例に限定されない。
【0032】
フィルム14の平均孔径は、例えば0.01〜10μmであり、0.05〜3.0μm、0.05〜1.0μmであってもよい。フィルム14の平均孔径は、米国試験材料協会(ASTM)F316−86に規定された方法に準拠して測定でき、当該方法に基づく自動測定が可能な市販の評価装置(例えば、Porous Materials,Inc製Perm−Porometer)を測定に使用してもよい。
【0033】
複数の空孔を有する樹脂フィルム2の別の一例は、厚さ方向に貫通する複数の貫通孔19を有するフィルム18である(
図3Aおよび
図3B参照)。貫通孔19は、非多孔質であるフィルムの基質構造20を貫く、中心軸が直線状に延びたストレート孔である。フィルム18は、典型的には、前駆体である非多孔質の樹脂フィルムに対して、空孔となる複数の貫通孔19を設けて形成される。前駆体は、無孔の樹脂フィルムであってもよい。貫通孔19は、例えば、前駆体に対するイオンビーム照射および照射後の化学エッチングによって、あるいは前駆体に対するレーザーの照射によって、形成できる。なお、
図3Aおよび
図3Bは、フィルム18の一例に対するSEMによる観察像を示す図であり、
図3Aにはその表面が、
図3Bにはその断面が、それぞれ示されている。
図3Aおよび
図3Bに示す例において、フィルム18の一方の主面から他の主面に至るまで貫通孔19の形状、典型的には径、は一定であるが、中心軸が直線状に延びる限り、フィルム18の厚さ方向に貫通孔19の形状が変化していてもよい。
【0034】
フィルム18における貫通孔19の径は、例えば4.5〜20μmであり、5〜15μmであってもよい。貫通孔19の径は、フィルム18の表面および/または断面に対するSEM等による拡大像を画像解析して求めることができる。
【0035】
空孔を有するフィルムは、上述した例に限定されない。
【0036】
空孔、特に複数の空孔、を有するフィルムは、空孔を有するが故に強度が低下する傾向にある。低強度のフィルムは、破損および変形等の損傷を受けやすい。また、巻回時に破断が生じやすく、単独で巻回できないことが多い。このため、空孔を有する樹脂フィルム2を上記自由度が高い状態で供給可能であり、巻回体の形態としても供給できる積層体5とするメリットは大きい。
【0037】
樹脂フィルム2は、単層フィルムであっても、複数の層を有する多層フィルムであってもよい。
【0038】
樹脂フィルム2は低強度のフィルムであってもよく、具体的には、引張強度が30N/10mm以下のフィルムであってもよい。低強度のフィルムは、破損および変形等の損傷を受けやすい。また、巻回時の樹脂フィルムには、主として引張応力が加わる。このため、引張強度が低い樹脂フィルムを単独で巻回しようとすると、引張応力に耐えきれず、フィルムの破断が生じやすい。このため、引張強度が30N/10mm以下の樹脂フィルム2を上記自由度が高い状態で供給可能であり、巻回体の形態としても供給できる積層体5とするメリットは大きい。
【0039】
樹脂フィルム2の引張強度は、25N/10mm以下、20N/10mm以下、15N/10mm以下、10N/10mm以下、さらには5N/10mm以下であってもよい。引張強度の下限は限定されないが、例えば、0.1N/10mm以上である。樹脂フィルム2が引張強度について異方性を有する場合、樹脂フィルム2が示す面内方向の最大の引張強度がこれらの範囲にあってもよい。また、樹脂フィルム2が帯状である場合、フィルムの長手方向の強度がこれらの範囲にあってもよい。
【0040】
樹脂フィルム2の引張強度は、30N/10mmを超えていてもよい。
【0041】
樹脂フィルム2の面密度は、例えば60g/m
2以下であり、30g/m
2以下、20g/m
2以下、15g/m
2以下、さらには10g/m
2以下であってもよい。面密度の下限は限定されないが、例えば1.0g/m
2以上であり、2.0g/m
2以上であってもよい。これらの範囲の面密度を有する樹脂フィルム2は、例えば高い通気性、または優れた音の伝達特性(具体的な例は、低い挿入損失)を実現できる一方で、より大きな面密度を有する樹脂フィルムに比べて強度が低下する。このため、これらの範囲の面密度を有する樹脂フィルム2を上記自由度が高い状態で供給可能であり、巻回体の形態としても供給できる積層体5とするメリットは大きい。樹脂フィルム2の面密度は、フィルムの重量を面積(主面の面積)で除して求めることができる。
【0042】
空孔を有する樹脂フィルム2の空孔率は、例えば20%以上であり、50%以上、65%以上、さらには80%以上であってもよい。空孔率の上限は限定されないが、例えば95%以下であり、90%以下であってもよい。これらの範囲の空孔率を有する樹脂フィルム2は、例えば高い通気性、または優れた音の伝達特性を実現できる一方で、より小さな空孔率を有する樹脂フィルムおよび空孔を有さない樹脂フィルムに比べて強度が低下する。このため、これらの範囲の空孔率を有する樹脂フィルム2を上記自由度が高い状態で供給可能であり、巻回体の形態としても供給できる積層体5とするメリットは大きい。
【0043】
空孔率の評価方法は、樹脂フィルム2の構造に応じて選択できる。例えば、フィルム14の空孔率は、フィルム14を構成する樹脂の比重(真比重)に対するフィルム14の密度(見かけ密度)の比を100(%)から引いて求めることができる。フィルム18の空孔率は、フィルム18の表面および/または断面に対するSEM等による拡大像を画像解析して求めることができる。フィルム18の一方の主面から他方の主面に至るまで貫通孔19の形状が一定である場合、フィルム18の主面における単位面積あたりの貫通孔19の開口面積の割合(開口率)をフィルム18の空孔率としてもよい。
【0044】
フィルム18における貫通孔19の孔密度は、例えば、1×10
3個/cm
2〜1×10
9個/cm
2であり、1×10
4個/cm
2〜1×10
9個/cm
2、1×10
5個/cm
2〜5×10
8個/cm
2であってもよい。貫通孔19の孔密度がこれらの範囲にあるフィルム18は、例えば高い通気性、または優れた音の伝達特性を実現できる一方で、より小さな孔密度を有するフィルム18および空孔を有さない樹脂フィルムに比べて強度が低下する。このため、貫通孔19の孔密度がこれらの範囲にあるフィルム18を上記自由度が高い状態で供給可能であり、巻回体の形態としても供給できる積層体5とするメリットは大きい。フィルム18における貫通孔19の孔密度は、フィルム18の表面に対するSEM等による拡大像を画像解析して求めることができる。
【0045】
樹脂フィルム2の凝集力P
Cは、例えば10N/25mm以下であり、5.0N/25mm以下、2.0N/25mm以下、さらには1.0N/25mm以下であってもよい。凝集力P
Cの下限は限定されないが、例えば0.1N/25mmまたはこれを超える値であり、2.0N/25mmまたはこれを超える値、さらには3.0N/25mmまたはこれを超える値であってもよい。これらの範囲の凝集力P
Cを有する樹脂フィルム2は、より大きな凝集力P
Cを有する樹脂フィルムに比べて強度が低下する。このため、これらの範囲の凝集力P
Cを有する樹脂フィルム2を上記自由度が高い状態で供給可能であり、巻回体の形態としても供給できる積層体5とするメリットは大きい。
【0046】
樹脂フィルム2の厚さは、例えば1〜200μmであり、5〜150μm、10〜100μmであってもよい。
【0047】
防水通気膜として機能する樹脂フィルム2は、厚さ方向に通気性を有する。防水通音膜として機能する樹脂フィルム2は、厚さ方向に通気性を有していても、有していなくてもよい。音は、膜の振動によっても伝達されるためである。樹脂フィルム2の通気性は、例えば、上述した平均孔径、貫通孔の径、空孔率、および孔密度等により制御できる。
【0048】
樹脂フィルム2は、厚さ方向の通気性のレベルに応じて、無通気フィルム、微通気フィルム、および通気フィルムに分類できる。具体的には、厚さ方向の通気度が、日本工業規格(以下、「JIS」と記載する)L1096に定められた通気性測定B法(ガーレー形法)に準拠して測定した空気透過度(以下、「ガーレー通気度」と記載する)にして1万秒/100mLより大きいフィルムが無通気フィルムである。また、厚さ方向の通気度が、ガーレー通気度にして20〜1万秒/100mLの範囲にあるフィルムが微通気フィルム、ガーレー通気度にして20秒/100mL未満のフィルムが通気フィルムである。
【0049】
なお、樹脂フィルム2のサイズが、上記ガーレー形法における試験片のサイズ(約50mm×50mm)に満たない場合にも、測定冶具の使用により、ガーレー通気度の評価が可能である。測定冶具の一例は、貫通孔(直径1mm又は2mmの円形の断面を有する)が中央に設けられた、厚さ2mm、直径47mmのポリカーボネート製円板である。この測定冶具を用いたガーレー通気度の測定は、以下のように実施できる。
【0050】
測定冶具の貫通孔の開口を覆うように、当該冶具の一方の面に評価対象である樹脂フィルムを固定する。固定は、ガーレー通気度の測定中、開口及び評価対象である樹脂フィルムの有効試験部(固定した樹脂フィルムの主面に垂直な方向から見て開口と重複する部分)のみを空気が通過し、かつ樹脂フィルムの有効試験部における空気の通過を固定部分が阻害しないように行う。樹脂フィルムの固定には、開口の形状と一致した形状を有する通気口が中心部に打ち抜かれた両面粘着テープを利用できる。両面粘着テープは、通気口の周と開口の周とが一致するように測定冶具と樹脂フィルムとの間に配置すればよい。次に、樹脂フィルムを固定した測定冶具を、樹脂フィルムの固定面が測定時の空気流の下流側となるようにガーレー形通気性試験機にセットして、100mLの空気が樹脂フィルムを通過する時間t1を測定する。次に、測定した時間t1を、JIS L1096の通気性測定B法(ガーレー形法)に定められた有効試験面積642[mm
2]あたりの値tに、式t={(t1)×(樹脂フィルムの有効試験部の面積[mm
2])/642[mm
2]}により換算し、得られた換算値tを、樹脂フィルムのガーレー通気度とすることができる。上記円板を測定冶具として使用する場合、樹脂フィルムの有効試験部の面積は、貫通孔の断面の面積である。なお、上記試験片のサイズを満たすフィルムに対して測定冶具を使用せずに測定したガーレー通気度と、当該フィルムを細片化した後、測定冶具を使用して測定したガーレー通気度とがよく一致する、即ち、測定冶具の使用がガーレー通気度の測定値に実質的に影響しないことが、確認されている。
【0051】
防水通気膜として機能する樹脂フィルム2の厚さ方向の通気度は、ガーレー通気度にして、例えば20〜1万秒/100mLであり、20〜1000秒/100mL、10〜100秒/100mLであってもよい。
【0052】
防水通音膜として機能する樹脂フィルム2の厚さ方向の通気度は、ガーレー通気度にして、例えば0.1〜300秒/100mLであり、0.1〜100秒/100mL、0.1〜20秒/100mLであってもよい。
【0053】
通気フィルムである樹脂フィルム2は、上記通気度をもたらす通気経路をフィルム内に有していることから、同様の厚さおよび/または面密度を有する微通気フィルムおよび無通気フィルムに比べて強度が小さい傾向にある。このため、通気フィルムである樹脂フィルム2を上記自由度が高い状態で供給可能であり、巻回体の形態としても供給できる積層体5とするメリットは大きい。
【0054】
防水通音膜として機能する樹脂フィルム2の音響特性(通音性)は、100〜5000Hzの周波数領域における挿入損失の平均値により表して、例えば5dB以下であり、3dB以下、さらには2dB以下であってもよい。挿入損失とは、通音膜を音が透過する際の音圧の変化(音圧損失)を反映する値である。周波数100〜5000Hzは、人間の聴力が鋭敏な周波数領域に対応する。
【0055】
樹脂フィルム2の耐水圧は、例えば3kPa以上であり、10kPa以上、100kPa以上、さらには1000kPa以上であってもよい。樹脂フィルム2の耐水圧は、測定冶具を使用し、JIS L1092の耐水度試験A法(低水圧法)又はB法(高水圧法)に準拠して、以下のように測定できる。
【0056】
測定冶具の一例は、直径1mmの貫通孔(円形の断面を有する)が中央に設けられた、直径47mmのステンレス製円板である。この円板は、耐水圧を測定する際に加えられる水圧によって変形しない厚さを有する。この測定冶具を用いた耐水圧の測定は、以下のように実施できる。
【0057】
測定冶具の貫通孔の開口を覆うように、当該冶具の一方の面に評価対象である樹脂フィルムを固定する。固定は、耐水圧の測定中、フィルムの固定部分から水が漏れないように行う。樹脂フィルムの固定には、開口の形状と一致した形状を有する通水口が中心部に打ち抜かれた両面粘着テープを利用できる。両面粘着テープは、通水口の周と開口の周とが一致するように測定冶具と樹脂フィルムとの間に配置すればよい。次に、樹脂フィルムを固定した測定冶具を、樹脂フィルムの固定面とは反対側の面が測定時の水圧印加面となるように試験装置にセットして、JIS L1092の耐水度試験A法(低水圧法)又はB法(高水圧法)に従って耐水圧を測定する。ただし、耐水圧は、樹脂フィルムの主面の1か所から水が出たときの水圧に基づいて測定する。測定した耐水圧を、樹脂フィルムの耐水圧とすることができる。試験装置には、JIS L1092に例示されている耐水度試験装置と同様の構成を有するとともに、上記測定冶具をセット可能な試験片取付構造を有する装置を使用できる。
【0058】
微通気フィルムおよび無通気フィルムには、2以上の延伸多孔質膜および/または前駆体である樹脂フィルム(例えば、キャストフィルム、切削フィルム等)の積層体を圧延し、必要に応じて当該圧延の前および/または後に延伸を実施して得た樹脂フィルム2が含まれる。この樹脂フィルム2は、圧延により生じた樹脂の配向を有していてもよい。樹脂の配向は、例えば、X線回折手法(XRD)により確認できる。
【0059】
樹脂フィルム2のより具体的な例は、延伸多孔質膜の1種であるPTFE多孔質膜;PTFE、PET、ポリカーボネート、ポリイミド等から構成される非多孔質の基質フィルムから構成され、当該基質フィルムを貫くストレート孔である複数の貫通孔を有する樹脂フィルム;2以上の延伸多孔質膜(例えばPTFE多孔質膜)および/または前駆体である樹脂フィルム(例えばPTFEフィルム)の積層体を圧延し、必要に応じて当該圧延の前および/または後に当該積層体に対する延伸を実施して得た圧延フィルム;である。
【0060】
樹脂フィルム2の形状は、例えば、長方形および正方形等の多角形、楕円、円であり、不定形であってもよい。樹脂フィルム2の形状は、樹脂フィルム2が防水膜に使用される際の形状(防水膜の形状)であってもよい。また、樹脂フィルム2の形状は、帯状であってもよい。樹脂フィルム2は、セパレータ4と同一の形状およびサイズを有していてもよい。巻回体として樹脂フィルム2を供給する(積層体5を供給する)場合、セパレータ4の形状は帯状であり、樹脂フィルム2の形状も帯状でありうる。
図1に示す積層体5において、樹脂フィルム2の形状は長方形または帯状である。樹脂フィルム2の形状が円である場合の積層体5の一例を
図4Aおよび
図4Bに示す。
図4Aは、樹脂フィルム2およびセパレータ4の主面に垂直な方向から積層体5を見た平面図、
図4Bは、
図4Aに示す積層体5の断面A−Aを示す断面図である。
図4Aおよび
図4Bに示す積層体5においても、セパレータ4を樹脂フィルム2から剥離したときに形成される剥離面は、樹脂フィルム2と粘着剤層3との間に位置する。
図4Aおよび
図4Bに示す積層体5では、セパレータ4の形状は長方形または帯状である。この積層体5における粘着剤層3の形状は、樹脂フィルム2の形状とは異なり、例えば長方形または帯状であって、セパレータ4の形状と同一であってもよい。なお、樹脂フィルム2の形状は、これらの例に限定されない。
【0061】
積層体5により供給された樹脂フィルム2は、セパレータ4および粘着剤層3を剥離した後、そのまま防水膜として使用してもよいし、形状加工等の所定の工程を実施した後に防水膜として使用してもよい。例えば、
図4A及び
図4Bに示す積層体5において樹脂フィルム2が防水膜の形状である場合、積層体5により供給された樹脂フィルム2は、セパレータ4および粘着剤層3を剥離した後、そのまま防水膜として使用できる。
【0062】
樹脂フィルム2には、撥水処理および/または撥油処理等の撥液処理が施されていてもよい。また、樹脂フィルム2には、任意の処理、例えば染色処理等の着色処理、が施されていてもよい。
【0063】
粘着剤層3が含む粘着剤は、例えば、シリコーン樹脂を主成分とするシリコーン系粘着剤、アクリル樹脂を主成分とするアクリル系粘着剤、ウレタン樹脂を主成分とするウレタン系粘着剤である。なかでも、ウレタン系粘着剤は、高い濡れ性を有し、被粘着体に対する化学的な汚染に関して低汚染性であるとともに、弱粘着性の粘着剤層を比較的容易に形成できる、経時的な粘着力の増大が生じにくい等の特徴を有する。このため、粘着剤層3はウレタン系粘着剤を含むことが好ましく、ウレタン系粘着剤から構成されることがより好ましい。なお、経時的な粘着力の増大が生じにくい粘着剤を含む粘着剤層3によれば、例えば、セパレータ4の剥離時における樹脂フィルム2への糊残りを防止できる。また、粘着剤層3が含む粘着剤組成物は、これらの例に限定されない。
【0064】
本明細書において主成分とは、組成物における含有率の最も大きな成分を意味する。組成物における主成分の含有率は、例えば50重量%以上であり、70重量%以上、80重量%以上、90重量%以上、さらには95重量%以上であってもよい。
【0065】
ウレタン系粘着剤が主成分として含むウレタン樹脂は、2以上、好ましくは3以上、より好ましくは3以上6以下のヒドロキシ基を有する1種または2種以上のポリオールと、多官能イソシアネート化合物と、を含有する組成物を硬化してなる樹脂が好ましい。このウレタン樹脂を含むウレタン系粘着剤によれば、弱粘着性の粘着剤層3をより容易に形成できる。
【0066】
粘着剤層3の粘着力は、アクリル板に対する粘着力P
Aにして、例えば3.0N/25mm以下であり、2.0N/25mm以下、さらには0.1N/25mm以下であってもよい。粘着剤層3の粘着力P
Aの下限は、例えば0.01N/25mm以上であり、0.04N/25mm以上であってもよい。粘着剤層3がこれらの範囲の粘着力P
Aを有する場合、セパレータ4の剥離時における樹脂フィルム2への糊残りをより確実に抑制できるとともに、樹脂フィルム2からの粘着剤層3の剥離性を向上でき、セパレータ4の剥離時における樹脂フィルム2の破壊(凝集破壊)を抑制できる。
【0067】
また、粘着剤層3が上記範囲の粘着力P
Aを有する場合、例えば:樹脂フィルム2が低強度である場合にも、保管時および運搬時等における樹脂フィルム2の損傷の抑制および巻回時の破断の抑制がより確実になる;巻回時の巻締まり等に起因する巻回体の故障の発生の抑制がより確実となる;積層体5または樹脂フィルム2をスリット刃等により形状加工する際における加工刃への粘着剤の付着量を低減できる;等の効果が期待される。
【0068】
樹脂フィルム2の凝集力P
Cと、アクリル板に対する粘着剤層3の粘着力P
Aとの比P
A/P
Cは、好ましくは0.001以上1未満である。比P
A/P
Cの下限は、0.001以上が好ましく、0.01以上がより好ましく、0.05以上がさらに好ましい。比P
A/P
Cの上限は、1未満が好ましく、0.8以下がより好ましく、0.6以下がさらに好ましい。比P
A/P
Cがこれらの範囲にある場合、セパレータ4の剥離時における樹脂フィルム2の破壊(凝集破壊)をより抑制できる。
【0069】
粘着剤層3の厚さは、例えば1〜200μmであり、3〜100μm、3〜50μmであってもよい。
【0070】
粘着剤層3は、例えば、セパレータ4の一方の主面の全体、一方の主面の周縁部を除く全体、または一方の主面の幅方向の端部を除く全体に形成されている。粘着剤層3の形状は、樹脂フィルム2の形状と異なっていてもよい。ただし、粘着剤層3の形状は、これらの例に限定されない。
【0071】
剥離フィルムであるセパレータ4は、例えば、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂等の樹脂;紙;不織布;アルミニウム、ステンレス等の金属から構成される。ただし、セパレーター4の材質は、これらの例に限定されない。セパレータ4は、好ましくは樹脂から構成され、より好ましくはポリエステル樹脂から構成される。ポリエステル樹脂およびポリオレフィン樹脂の具体例は上述のとおりである。セパレータ4は、2以上の材料から構成されていてもよい。
【0072】
セパレータ4は、空孔、例えばセパレータ4の双方の主面を繋ぐ空孔、を有さないフィルムであってもよいし、1又は2以上の空孔を有するフィルムであってもよい。セパレータ4は、好ましくは、少なくとも粘着剤層3が形成される領域において空孔を有さないフィルムである。
【0073】
セパレータ4の厚さは、例えば10〜200μmであり、15〜100μm、20〜100μmであってもよい。
【0074】
セパレータ4の引張強度は、接合される樹脂フィルム2の引張強度より大きくてもよい。セパレータ4の引張強度は、例えば30N/10mmを超え、40N/10mm以上、50N/10mm以上、75N/10mm以上、100N/10mm以上、さらには200N/10mm以上であってもよい。引張強度の上限は限定されないが、過度に高い引張強度を有するセパレータ4を使用した場合、巻回時の故障が発生しやすくなったり巻回が困難になったりすることから、例えば500N/10mm以下である。セパレータ4が引張強度について異方性を有する場合、セパレータ4が示す面内方向の最大の引張強度がこれらの範囲にあってもよく、例えば30N/10mmを超える。また、セパレータ4が帯状である場合、その長手方向の強度がこれらの範囲にあってもよく、例えば30N/10mmを超える。
【0075】
セパレータ4は、単層フィルムであっても、複数の層を有する多層フィルムであってもよい。
【0076】
セパレータ4には任意の処理が施されていてもよい。処理は、例えば、帯電防止処理である。帯電防止処理によれば、セパレータ4の剥離時における静電気の発生を抑制でき、発生した静電気の帯電による樹脂フィルム2の損傷を抑制できる。静電気の発生の抑制は、PET等の帯電しやすい樹脂から樹脂フィルム2が構成される場合にメリットが大きい。
【0077】
積層体5は、樹脂フィルム2、粘着剤層3およびセパレータ4以外の層および/または部材を含んでいてもよい。
【0078】
本開示の巻回体の一例を
図5に示す。
図5に示す巻回体1は、積層体5の巻回体(ロール)である。積層体5は、巻芯6に巻回されている。巻回体1から繰り出された積層体5において、セパレータ4を樹脂フィルム2から剥離したときに形成される剥離面7は、樹脂フィルム2と粘着剤層3との間に位置する。
【0079】
巻回体1におけるセパレータ4および積層体5の形状は帯状である。巻回体1における粘着剤層3の形状は、帯状であってもよい。巻回体1における樹脂フィルム2は、積層体5の説明において上述した形状を有しうる。
【0080】
巻芯6には、樹脂フィルムの巻回体に使用する公知の巻芯を使用できる。
【0081】
巻回体1における帯状の積層体5の長手方向の長さは、例えば50m以上であり、100m以上、200m以上であってもよい。長手方向の長さの上限は、例えば500mである。
【0082】
巻回体1は、樹脂フィルム2の保管性および運搬性に優れる。
【0083】
セパレータ4を剥離する前の積層体5の状態において、樹脂フィルム2は、樹脂フィルム2が単独の状態にある場合に比べて良好な取扱い性および高い強度を有しうる。このため、積層体5によれば、例えば:樹脂フィルム2の形状加工が容易となる;樹脂フィルム2の搬送張力および/または搬送速度を大きく設定できる;樹脂フィルム2の形状加工時および/または搬送時における樹脂フィルム2への変形、シワ、弛み等の発生を抑制できる;等の効果が得られる。形状加工時における変形、シワ、弛み等の発生の抑制は、より精度の高い樹脂フィルム2の形状加工を可能にする。また、粘着剤層3に含まれる粘着剤が有する官能基によって樹脂フィルム2の帯電が抑制されることから、設計外の空孔が樹脂フィルム2に形成されるといった、帯電に起因する樹脂フィルム2の損傷の発生を抑制できる。帯電の抑制は、PET等の帯電しやすい樹脂から樹脂フィルム2が構成される場合にメリットが大きい。
【0084】
樹脂フィルム2は、セパレータ4を剥離する前後を問わず、任意の工程に供することができる。
【0085】
例えば、セパレータ4を剥離する前に、すなわち積層体5の状態において、樹脂フィルム2の形状加工を実施してもよい。このとき、粘着剤層3およびセパレータ4の存在によって、樹脂フィルム2への変形、シワ、弛み等の発生が抑制され、樹脂フィルム2の形状加工の精度を向上できる。また、形状加工後にセパレータ4を剥離して、所定の形状を有し、かつ粘着剤層を有さない樹脂フィルム2を得ることができる。また、セパレータ4を剥離した後で、樹脂フィルム2の形状加工を実施してもよい。形状加工する樹脂フィルム2は、例えば、長方形および正方形等の多角形、または帯状であり、セパレータ4と同じ形状およびサイズを有していてもよい。形状加工後の樹脂フィルム2は、長方形および正方形等の多角形、楕円、円、および不定形等の任意の形状を有することができる。形状加工後の樹脂フィルム2を、防水通気膜および/または防水通音膜に使用してもよい。
【0086】
また、例えば、樹脂フィルム2の表面(少なくとも一方の主面)に新たに粘着剤層を設けてもよい。新たな粘着剤層を設ける樹脂フィルム2は、形状加工を経たフィルムであってもよい。新たな粘着剤層を設けることにより、例えば、粘着剤層によって他の部材に接合可能な防水通気膜および/または防水通音膜を形成できる。新たな粘着剤層は、所定の形状を有していてもよく、例えば、樹脂フィルム2の主面に垂直な方向から見て、樹脂フィルム2の周縁部の形状に対応する枠状であってもよい。新たな粘着剤層を覆うようにさらにセパレータを配置してもよく、さらに配置するセパレータは、所定の形状、例えば樹脂フィルム2と同じ形状、を有していてもよい。セパレータ4を剥離する前の樹脂フィルム2に対しては、樹脂フィルム2における粘着剤層3に接する主面とは反対側の主面に、新たな粘着剤層を設けることができる。セパレータ4を剥離した後の樹脂フィルム2に対しては、樹脂フィルム2における粘着剤層3に接していた主面、および/または上記反対側の主面に、新たな粘着剤層を設けることができる。形状加工、および新たな粘着剤層を設ける工程の双方を樹脂フィルム2に対して実施してもよく、この場合、双方の工程を実施する順序は問わない。
【0087】
積層体5は、例えば、粘着剤層3が表面に形成されたセパレータ4と、樹脂フィルム2とを、樹脂フィルム2と粘着剤層3とが接するように積層して形成できる。積層後、セパレータ4、粘着剤層3および樹脂フィルム2の厚さ方向に圧着ロール等により圧力を加えてもよい。ただし、積層体5の製造方法は、この例に限定されない。
【0088】
粘着剤層3が表面に形成されたセパレータ4は、例えば、セパレータ4の表面に公知の塗布手法により粘着剤組成物を配置して形成できる。粘着剤層3が表面に形成されたセパレータ4は、転写シート上に形成された粘着剤層3をセパレータ4の表面に転写して形成してもよい。
【0089】
巻回体1は、積層体5を巻回して形成できる。
【実施例】
【0090】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0091】
最初に、本実施例で作製または準備した樹脂フィルム、粘着剤層およびセパレータ、ならびに本実施例で作製した積層体および巻回体の評価方法を記載する。
【0092】
[厚さ]
樹脂フィルム、セパレータ、および両者の積層体(実施例1〜8では粘着剤層をさらに含む)の厚さは、デジタルアップライトゲージR1−205(尾崎製作所製;測定子の径Φ=5mm、測定力1.1N以下)により測定した。測定温度は25±2℃、測定湿度は65±20%RHとした。
【0093】
[引張強度]
樹脂フィルムおよびセパレータの引張強度(引張破断強度)は、JIS K6251:2010に定められた方法に準拠して測定した。より具体的には、卓上型精密万能試験機オートグラフAGS−X(島津製作所製)を引張試験機に用い、測定温度25℃、引張速度100mm/分、初期のつかみ具間距離10mmの測定条件にて、ダンベル状1号形またはダンベル状2号形(並行部分の幅10mm)とした試験片の長手方向(MD方向)に引張試験を実施した。そして、試験片が切断されるまでに記録される最大の引張力を求め、これを試験片の引張強度(単位:N/10mm)とした。
【0094】
[凝集力]
樹脂フィルムの凝集力は、JIS Z0237:2009に定められた180°引きはがし粘着力の測定方法を参考にして、以下に示す方法により測定した。
【0095】
<試験片の準備>
最初に、測定対象である樹脂フィルムを短冊状(長さ100mm×幅25mm)に切り出した。次に、樹脂フィルムと同一の形状を有する両面テープ(日東電工製、No.5610)を2枚準備し、それぞれ、切り出した樹脂フィルムの一方の面及び他方の面に樹脂フィルムと四辺を一致させて貼り合わせた。次に、長さ150mm×幅25mmの短冊状のPETフィルム(厚さ25μm)を2枚準備し、それぞれ、樹脂フィルムの一方の面及び他方の面に上記両面テープにより貼り合わせた。2枚のPETフィルムの貼り合わせは、各々のPETフィルムの幅方向の両端部が樹脂フィルムの幅方向の両端部と一致し、かつ各々のPETフィルムの長手方向の両端部がPETフィルムの主面に垂直な方向から見て樹脂フィルムおよび両面テープと重複しないように実施した。ただし、双方のPETフィルムにおける両面テープに貼付されていない各自由端部の長手方向の長さとして、以下の引張試験時に引張試験機のつかみ具がPETフィルムを安定してつかめる長さ(例えば25mm)を確保した。次に、得られたPETフィルム/両面テープ/樹脂フィルム/両面テープ/PETフィルムの積層体の厚さ方向に圧着力が加わるように、荷重19.6Nの圧着ローラを1往復させて、樹脂フィルムの凝集力を測定するための試験片を得た。その後、以下の引張試験を開始するまでに、少なくとも30分、試験片を放置した。
【0096】
<引張試験による樹脂フィルムの凝集力の測定>
次に、引張試験機として卓上型精密万能試験機オートグラフAGS−X(島津製作所製)を準備し、試験片の長手方向の一方の端部における一方のPETフィルムの自由端部を引張試験機の上部チャックに固定し、試験片の長手方向の他方の端部における他方のPETフィルムの自由端部を下部チャックに取り付けた。次に、測定温度25℃、測定湿度60%RH、及び引張速度300mm/分の条件で、他方のPETフィルムの下端部を下向きに引っ張る引張試験を実施して、樹脂フィルムに凝集破壊を発生させた。この試験の間、一方の主面と他方の主面との間で180°異なる方向の力が樹脂フィルムに印加される。樹脂フィルムの凝集破壊によるPETフィルムの変位が始まった後、初期の25mmの変位の際に測定されたチャック間の応力は無視し、その後の50mmの変位の際に連続的に記録された応力の測定値の平均値を、樹脂フィルムの凝集力(単位:N/25mm)とした。
【0097】
[粘着力]
粘着剤層の粘着力は、JIS Z0237:2009に定められた180°引きはがし粘着力の測定方法に準拠して、以下のように測定した。
【0098】
最初に、測定対象である粘着剤層が表面に形成されたセパレータを短冊状(長さ120mm×幅20mm)に切り出して試験片を得た。次に、温度23℃、湿度65%RHの雰囲気下、質量2kgの圧着ローラを1往復させて、試験板であるアクリル板に試験片を貼り合わせた。なお、圧着ローラによって19.6Nの圧着力が印加された。貼り合わせから30分経過後、引張試験機として卓上型精密万能試験機オートグラフAGS−X(島津製作所製)を用い、測定温度23℃、測定湿度65%RH、及び引張速度300mm/分の測定条件にて、セパレータをアクリル板から引き剥がす180°引きはがし試験を実施して、180°引きはがし粘着力を測定した。得られた180°引きはがし粘着力を、アクリル板に対する粘着剤層の粘着力とした。
【0099】
[通気度]
セパレータを接合して積層体を形成する前、および作製した積層体からセパレータを剥離した後における樹脂フィルムの厚さ方向の通気度は、JIS L1096に定められた通気性測定B法(ガーレー形法)に準拠して、空気透過度(ガーレー通気度)として求めた。
【0100】
[糊残り]
積層体からセパレータを剥離して得た樹脂フィルムの表面に残留した粘着剤層に由来する粘着剤の有無(糊残りの有無)は、セパレータを接合する前における樹脂フィルムの厚さ方向の通気度(ガーレー通気度)と、セパレータを剥離した後における樹脂フィルムの厚さ方向の通気度(ガーレー通気度)とを比較することで評価した。具体的には、後者の数値が前者の1.5倍以上である場合に「糊残りあり」、後者の数値が前者の1.5倍未満である場合に「糊残り無し」とした。
【0101】
[巻回時の故障発生の有無]
樹脂フィルムおよびセパレータの積層体を巻回する際に巻締まりが発生した場合を故障発生有り、発生しなかった場合を故障発生無しとした。
【0102】
(製造例1:樹脂フィルムAの作製)
PTFEファインパウダー(ダイキン工業製、ポリフロンPTFE F−104)100重量部と、成形助剤としてn−ドデカン(ジャパンエナジー製)20重量部とを均一に混合し、得られた混合物をシリンダーを用いて圧縮した後、ラム押出し成形して、シート状の混合物を形成した。次に、形成したシート状の混合物を一対の金属ロールを通して厚さ0.2mmに圧延し、さらに150℃の加熱により成形助剤を乾燥除去して、帯状のPTFEシート成形体を形成した。次に、形成したシート成形体を、延伸温度260℃、延伸倍率15倍で長手方向(圧延方向)に延伸して、帯状のPTFE多孔質膜(未焼成)を得た。
【0103】
次に、得られたPTFE多孔質膜を、黒色染料(オリエント化学工業製、SP BLACK 91−L、濃度25重量%のエタノール希釈溶液)20重量部と、染料の溶剤であるエタノール(純度95%)80重量部との混合液である染色液に数秒間浸漬した後、全体を100℃に加熱して溶剤を乾燥除去して、黒色に染色された帯状のPTFE多孔質膜を得た。次に、得られたPTFE多孔質膜を撥液剤に数秒間浸漬した後、全体を100℃に加熱して溶媒を乾燥除去して、撥液処理された帯状のPTFE多孔質膜を得た。
【0104】
撥液処理に用いた撥液剤は、次のように調製した。化学式CH
2=CHCOOCH
2CH
2C
6F
13により示される、直鎖状フルオロアルキル基を有するフッ素化合物100g、重合開始剤としてアゾビズイソブチロニトリル0.1g、および溶媒(信越化学製、FSシンナー)300gを、窒素導入管、温度計および撹拌機を装着したフラスコに投入し、窒素ガスのフラスコ内への導入と内容物の撹拌とを続けながら70℃で16時間、上記化合物の付加重合を進行させてフッ素含有重合体(数平均分子量10万)80gを得た。次に、得られた重合体を濃度3.0重量%となるように希釈剤(信越化学製、FSシンナー)で希釈して撥液剤を調製した。
【0105】
次に、撥液処理後のPTFE多孔質膜を延伸温度150℃、延伸倍率10倍で幅方向に延伸し、さらにPTFEの融点を超える温度である360℃で10分焼成して、樹脂フィルム2である帯状のPTFE多孔質膜(樹脂フィルムA)を得た。
【0106】
(製造例2:樹脂フィルムBの作製)
PTFEファインパウダー(ダイキン工業製、ポリフロンPTFE F−104)100重量部と、成形助剤としてn−ドデカン(ジャパンエナジー製)20重量部とを均一に混合し、得られた混合物をシリンダーを用いて圧縮した後、ラム押出し成形して、シート状の混合物を形成した。次に、形成したシート状の混合物を一対の金属ロールを通して厚さ0.2mmに圧延し、さらに150℃の加熱により成形助剤を除去して、帯状のPTFEシート成形体を形成した。
【0107】
次に、形成したシート成形体を、延伸温度260℃、延伸倍率1.5倍で長手方向に延伸した後、延伸温度150℃、延伸倍率6.5倍で幅方向に延伸して、帯状のPTFE多孔質膜(未焼成)を得た。次に、得られたPTFE多孔質膜を360℃で10分焼成して、樹脂フィルム2である帯状のPTFE多孔質膜(樹脂フィルムB)を得た。
【0108】
(製造例3:樹脂フィルムCの作製)
PTFEディスパージョン(PTFE粒子の濃度40重量%、PTFE粒子の平均粒径0.2μm、ノニオン性界面活性剤をPTFE100重量部に対して6重量部含有)に、フッ素系界面活性剤(DIC製、メガファックF−142D)をPTFE100重量部に対して1重量部添加した。次に、帯状のポリイミドフィルム(厚さ125μm)をPTFEディスパージョンに浸漬して引き上げ、PTFEディスパージョンの塗布膜をポリイミドフィルム上に形成した。このとき、計量バーにより、塗布膜の厚さを20μmに制御した。次に、全体を100℃で1分、次いで390℃で1分加熱することにより、塗布膜に含まれる水を蒸発させて除去するとともに、残るPTFE粒子同士を互いに結着させてPTFE膜を形成した。次に、上記浸漬および加熱をさらに2回繰り返した後、ポリイミドフィルムからPTFE膜を剥離して、帯状のPTFEキャストフィルム(厚さ25μm)を得た。
【0109】
次に、得られたキャストフィルムをテンターを用いて延伸温度250℃、延伸倍率3.0倍で幅方向に延伸した後、圧延温度100℃、圧延倍率2.5倍で長手方向に圧延して、樹脂フィルム2である帯状のPTFE多孔質膜(樹脂フィルムC)を得た。
【0110】
(製造例4:樹脂フィルムDの準備)
樹脂フィルム2である樹脂フィルムDとして、非多孔質の基質構造を有するPETフィルムであって、当該フィルムの厚さ方向に貫通し、かつストレート孔である複数の貫通孔を有する市販のフィルム(Oxyphen AG製、OxyDisc)を準備した。準備したフィルムの厚さは13μm、貫通孔の径は10μm、孔密度は3.8×10
5個/cm
2であった。
【0111】
樹脂フィルムA〜Dは、いずれも、防水通気膜および/または防水通音膜として機能するフィルムであった。
【0112】
(製造例5:粘着剤層が表面に形成されたセパレータAの作製)
1分子あたり2つのヒドロキシ基を含有するポリオール(三洋化成製、サンニックスPP4000、数平均分子量4000)70重量部、1分子あたり3つのヒドロキシ基を含有するポリオール(三洋化成製、サンニックスGP−1500、数平均分子量1500)20重量部、1分子あたり4つのヒドロキシ基を含有するポリオール(ADEKA製、EDP−1100、数平均分子量1100)10重量部、多官能イソシアネート化合物としてトリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物(東ソー製、コロネートL)40重量部、触媒(日本化学産業製、ナーセム第二鉄)0.04重量部、および希釈溶媒として酢酸エチル266重量部を混合し、これをディスパーにより撹拌して、ウレタン系粘着剤組成物を得た。
【0113】
次に、得られた粘着剤組成物を、ファウンテンロールを用いて、セパレータ4であるPETフィルム(東レ製、ルミラーS10、厚さ38μm)の一方の主面に乾燥後の厚さが12μmとなるように塗布し、130℃、2分間の加熱条件にてキュアし、乾燥させた。このようにして、粘着剤層3が表面に形成されたセパレータ4であるセパレータAを得た。
【0114】
(製造例6:粘着剤層が表面に形成されたセパレータBの作製)
1分子あたり2つのヒドロキシ基を有するポリオール(旭硝子製、プレミノールS4006、数平均分子量5500)70重量部、1分子あたり4つのヒドロキシ基を有するポリオール(ADEKA製、EDP−1100、数平均分子量1100)30重量部、多官能イソシアネート化合物としてトリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物(東ソー製、コロネートL)30重量部、触媒(日本化学産業製、ナーセム第二鉄)0.10重量部、および希釈溶剤として酢酸エチル266重量部を混合し、これをディスパーにより撹拌して、ウレタン系粘着剤組成物を得た。
【0115】
次に、得られた粘着剤組成物を、ファウンテンロールを用いて、セパレータ4であるPETフィルム(東レ製、ルミラーS10、厚さ38μm)の一方の主面に乾燥後の厚さが12μmとなるように塗布し、130℃、2分間の加熱条件にてキュアし、乾燥させた。このようにして、粘着剤層3が表面に形成されたセパレータ4であるセパレータBを得た。
【0116】
(製造例7:セパレータCの準備)
表面に粘着剤層が形成されていないセパレータとして、紙のセパレータ(リンテック製、KPY−11−2、厚さ170μm)を準備した。
【0117】
(実施例1)
製造例1で作製した樹脂フィルムAと、製造例5で作製したセパレータAとを、セパレータAの表面に形成された粘着剤層と樹脂フィルムAとが接するように幅方向の端部を揃えて積層し、さらに一対の圧着ローラーを通して互いに接合して、積層体を得た。圧着ローラの通過時に19.6Nの圧着力が樹脂フィルムAおよびセパレータAの積層体に印加された。次に、得られた積層体を巻芯に巻回して巻回体を得た。
【0118】
(実施例2)
製造例1で作製した樹脂フィルムAと、製造例6で作製したセパレータBとを、セパレータBの表面に形成された粘着剤層と樹脂フィルムAとが接するように幅方向の端部を揃えて積層し、さらに一対の圧着ローラーを通して互いに接合して、積層体を得た。圧着ローラの通過時に19.6Nの圧着力が樹脂フィルムAおよびセパレータBの積層体に印加された。次に、得られた積層体を巻芯に巻回して巻回体を得た。
【0119】
(実施例3)
製造例2で作製した樹脂フィルムBと、製造例5で作製したセパレータAとを、セパレータAの表面に形成された粘着剤層と樹脂フィルムBとが接するように幅方向の端部を揃えて積層し、さらに一対の圧着ローラーを通して互いに接合して、積層体を得た。圧着ローラの通過時に19.6Nの圧着力が樹脂フィルムBおよびセパレータAの積層体に印加された。次に、得られた積層体を巻芯に巻回して巻回体を得た。
【0120】
(実施例4)
製造例2で作製した樹脂フィルムBと、製造例6で作製したセパレータBとを、セパレータBの表面に形成された粘着剤層と樹脂フィルムBとが接するように幅方向の端部を揃えて積層し、さらに一対の圧着ローラーを通して互いに接合して、積層体を得た。圧着ローラの通過時に19.6Nの圧着力が樹脂フィルムBおよびセパレータBの積層体に印加された。次に、得られた積層体を巻芯に巻回して巻回体を得た。
【0121】
(実施例5)
製造例3で作製した樹脂フィルムCと、製造例5で作製したセパレータAとを、セパレータAの表面に形成された粘着剤層と樹脂フィルムCとが接するように幅方向の端部を揃えて積層し、さらに一対の圧着ローラーを通して互いに接合して、積層体を得た。圧着ローラの通過時に19.6Nの圧着力が樹脂フィルムCおよびセパレータAの積層体に印加された。次に、得られた積層体を巻芯に巻回して巻回体を得た。
【0122】
(実施例6)
製造例3で作製した樹脂フィルムCと、製造例6で作製したセパレータBとを、セパレータBの表面に形成された粘着剤層と樹脂フィルムCとが接するように幅方向の端部を揃えて積層し、さらに一対の圧着ローラーを通して互いに接合して、積層体を得た。圧着ローラの通過時に19.6Nの圧着力が樹脂フィルムCおよびセパレータBの積層体に印加された。次に、得られた積層体を巻芯に巻回して巻回体を得た。
【0123】
(実施例7)
製造例4で準備した樹脂フィルムDと、製造例5で作製したセパレータAとを、セパレータAの表面に形成された粘着剤層と樹脂フィルムDとが接するように幅方向の端部を揃えて積層し、さらに一対の圧着ローラーを通して互いに接合して、積層体を得た。圧着ローラの通過時に19.6Nの圧着力が樹脂フィルムDおよびセパレータAの積層体に印加された。次に、得られた積層体を巻芯に巻回して巻回体を得た。
【0124】
(実施例8)
製造例4で準備した樹脂フィルムDと、製造例6で作製したセパレータBとを、セパレータBの表面に形成された粘着剤層と樹脂フィルムDとが接するように幅方向の端部を揃えて積層し、さらに一対の圧着ローラーを通して互いに接合して、積層体を得た。圧着ローラの通過時に19.6Nの圧着力が樹脂フィルムDおよびセパレータBの積層体に印加された。次に、得られた積層体を巻芯に巻回して巻回体を得た。
【0125】
(比較例1)
製造例1で作製した樹脂フィルムAと、製造例7で準備したセパレータCとを幅方向の端部を揃えて積層し、さらに一対の圧着ローラーを通して互いに接合して、積層体を得た。圧着ローラの通過時に19.6Nの圧着力が樹脂フィルムAおよびセパレータCの積層体に印加された。得られた積層体を巻芯に巻回して巻回体を得ようとしたが、巻締まりによる故障が多発して巻回体を得ることができなかった。
【0126】
(比較例2)
製造例2で作製した樹脂フィルムBと、製造例7で準備したセパレータCとを幅方向の端部を揃えて積層し、さらに一対の圧着ローラーを通して互いに接合して、積層体を得た。圧着ローラの通過時に19.6Nの圧着力が樹脂フィルムBおよびセパレータCの積層体に印加された。得られた積層体を巻芯に巻回して巻回体を得ようとしたが、巻締まりによる故障が多発して巻回体を得ることができなかった。
【0127】
樹脂フィルムA〜Dの特性を以下の表1に、セパレータA〜Cの特性を以下の表2に、製造例5,6で作製した粘着剤層の特性を以下の表3に、実施例および比較例の評価結果を以下の表4に、それぞれ示す。
【0128】
【表1】
【0129】
【表2】
【0130】
【表3】
【0131】
【表4】
【0132】
表4に示すように実施例1〜8では、防水通気膜および/または防水通音膜として機能する樹脂フィルムを、粘着剤層が表面に形成されていない帯状体として、筐体の開口への接合方法および形状の自由度が高い状態で供給でき、また、巻回体としても供給できた。また、実施例1〜8で作製した積層体からセパレータを剥離した際に樹脂フィルムの表面への糊残りは見られず、セパレータ剥離後の樹脂フィルムは、粘着剤層を介してセパレータを接合する前の厚さ方向の通気性を維持していた。
【0133】
本発明は、その意図および本質的な特徴から逸脱しない限り、他の実施形態に適用しうる。この明細書に開示されている実施形態は、あらゆる点で説明的なものであってこれに限定されない。本発明の範囲は、上記説明ではなく添付したクレームによって示されており、クレームと均等な意味および範囲にあるすべての変更はそれに含まれる。