(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
心理量の変化を、物品の基本構造に対する変形の程度で表現させる方法であって、ディスプレイに物品の構造を示す画像データを表示し、ディスプレイに触れた指の動きを検出して、指の動く方向とディスプレイに指が触れた距離に応じて、基本構造を変形させた画像データを選択して表示し、表示された画像データの識別情報を取得し、この識別情報と対応する心理量を判定して出力することを特徴とする心理量測定方法。
心理量の変化を、物品の基本構造に対する変形の程度で表現させるためものであって、ディスプレイに物品の構造を示す画面を表示する表示制御手段と、ディスプレイに触れた指の動きを検出し指の動く方向とディスプレイに指が触れた距離を測定する接触距離測定手段と、指の動く方向とディスプレイに指が触れた距離に応じて、初期状態で表示した画像の構造の変形の程度を求めて、画像データを選択してディスプレイに表示する画像データ選択手段と、選択した画像データに対応する心理量を判定する心理量判定手段とを備えたことを特徴とする心理量測定装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなツールは、被験者が手にとってその感触を確かめながら自分の心理状態と比較をする。そして、段階付けされたツールのうちの一つを指定して、これが今の状態であるという意思表示をする。前回指定したものと今回指定したものとを比較すると、何段階痛みが改善されたかといったことがわかる。しかしながら、痛みや強張りの程度というように、体の状態に対する個々人の感じ方は多様である。また、十分に自分の意思を言葉で伝えることができない小児の場合には、興味を示す形状のツールとそうでないツールでは、効果が大きく異なる。
本発明はこうした課題を解決するために、多様なニーズに応えることができる、人の心理を定量的に測定することができるような、心理量測定装置と測定方法やコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下の構成はそれぞれ上記の課題を解決するための手段である。
【0006】
<構成1>
心理量の変化を、物品の基本構造に対する変形の程度で表現させる方法であって、ディスプレイに物品の構造を示す画像データを表示し、ディスプレイに触れた指の動きを検出して、指の動く方向とディスプレイに指が触れた距離に応じて、基本構造を変形させた画像データを選択して表示し、表示された画像データの識別情報を取得し、この識別情報と対応する心理量を判定して出力することを特徴とする心理量測定方法。
【0007】
<構成2>
心理量の変化を、物品の基本構造に対する変形の程度で表現させるためものであって、ディスプレイに物品の構造を示す画面を表示する表示制御手段と、ディスプレイに触れた指の動きを検出し指の動く方向とディスプレイに指が触れた距離を測定する接触距離測定手段と、指の動く方向とディスプレイに指が触れた距離に応じて、初期状態で表示した画像の構造の変形の程度を求めて、画像データを選択してディスプレイに表示する画像データ選択手段と、選択した画像データに対応する心理量を判定する心理量判定手段とを備えたことを特徴とする心理量測定装置。
【0008】
<構成3>
上記画像データ選択手段は、
上記基本構造に突起が現れるように変形させた画像データを表示したとき、
ディスプレイ上に互いに直交するX軸とY軸とを設定して、指がX軸方向に動いたとき、ディスプレイに指が触れた距離に応じて、基本構造を変形させた画像を選択して表示し、指がY軸方向に動いたとき、ディスプレイに指が触れた距離に応じて、ディスプレイに表示されていた静止画像の一部または全体の振幅を増減させる動画を表示し、もしくは、上記静止画像に含まれる突起の突出長を増減させる動画を表示することを特徴とする構成2に記載の心理量測定装置。
【0009】
<構成4>
上記画像データ選択手段は、
上記基本構造に突起が現れるように変形させた画像データを表示したとき、
ディスプレイ上に互いに直交するX軸とY軸とを設定して、指がX軸方向に動いたとき、ディスプレイに指が触れた距離に応じて、基本構造を変形させた画像を選択して表示し、
基本構造または基本構造上に現れた突起の一部または全体を着色した画像データを選択して、
指がY軸方向に動いたとき、ディスプレイに指が触れた距離に応じて、上記着色した画像データの着色面積あるいは色の濃度を変化させた画像データを表示することを特徴とする構成2または3に記載の心理量測定装置。
【0010】
<構成5>
前記ディスプレイに、痛みの程度を波形で表現するウインドウを表示し、
このウインドウ上に描画された波形に対応する振動パタンを生成して、
携帯電話を振動させることを特徴とする構成1に記載の心理量測定方法。
【0011】
<構成6>
前記ディスプレイに、痛みの程度を波形で表現するウインドウを表示する手段と、
このウインドウ上に描画された波形のエンベロープを取得して、その波形に対応するように強弱変化する振動パタンを生成する手段と、
前記振動パタンで、携帯電話のバイブレータを駆動する手段と、
前記、ウインドウ上に描画された波形を示すデータを記憶装置に記憶させる手段とを備えたことを特徴とする構成2乃至4のいずれかに記載の心理量測定装置。
【0012】
<構成7>
前記記憶装置に記憶された描画された波形を示すデータを数値解析して、
1サイクルの波を検出し、同一波形または相似する波形の繰り返しを検出して、痛みの周期性を判定する手段と、
予め登録した複数種類の波の基本波形と比較して、波の形状の種別を判定する手段と、判定結果を表示出力する手段とを備えたことを特徴とする構成6に記載の心理量測定方法。
【0013】
<構成8>
コンピュータを、構成2乃至4または6のいずれかに記載の心理量測定装置として機能させるコンピュータプログラム。
【0014】
<構成9>
構成8に記載のコンピュータプログラムを記録したコンピュータで読み取り可能な記録媒体。
【発明の効果】
【0015】
<構成1の効果>
物品(ツール)の基本構造を示す画像データと、基本構造に対する変形の程度が少しずつ大きくなるようにした画像データを記憶装置に記憶させておく。ディスプレイを指でスワイプしたとき、スワイプした距離に応じて、該当する画像データを選択して表示する。被験者が画像データを変化させながら自分の心理量を表す画像データを選択する。被験者は、自分の指の物品の形状の変化に興味を示すので、定量的な測定データの信頼度を向上させることができる。
<構成3の効果>
動画の表示により、さらに被験者の興味を引きつけて、定量的な測定データの信頼度を向上させることができる。
<構成4の効果>
ツールの色は被験者の実感により近付ける効果があり、これを変化させることで、既存の物品そのもののツールよりも効果がある。
<構成6の効果>
痛みの程度やその変化の状態を波形で表現し、その波形に合わせてバイブレータを駆動すると、痛みの性質をより正確に表現できる。
<構成7の効果>
痛みの程度やその変化の状態を波形で表現し、これと基準波形とを比較して、痛みの性質を自動的に判定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を実施例毎に詳細に説明する。
【0018】
図1と
図2は、特許文献1と2のツールの一例を示す説明図である。
以下に紹介するツールは、本発明者が特許文献により公開したものと、本願出願とは別に出願をした出願中のものである。
上記のように、特許文献1では、痛みの程度を突起の数や大きさで表現した。
図1に示した痛みツール12〜痛みツール17は、7段階の痛みを定量的に表現するツールの一例である。
【0019】
このツールの基本構造は球体である。痛みを大きく感じるほど、球体の周りに多数の突起が突き出すような構造にした。被験者に対して、自分の痛みの程度を示すようなものを選んでもらう。それぞれを手に取って、昨日はこのくらいで今日はこのくらいというように、痛みの程度を、7段階のうちのどれかといった形で表現することができる。
【0020】
特許文献2では、関節のこわばりの程度を棒の変形の程度で表現した。このツールの基本構造は、直線状の棒である。
図2に示した曲りツール21〜曲りツール27は、7段階のこわばりの程度を表現するツールの一例である。例えば、リュウマチ等により関節が曲がりにくいとき、そのこわばりの程度を表すものを選んでもらう。被験者は、前回はこのくらいまで曲がったし、今回はこのくらいまで曲がるというように、7段階のうちのどれかといった形で表現することができる。
【0021】
図3は、既に本願出願人により出願中のツールの一例を示す。
このツールは、痒みの程度を、中空球体内面の突起の数で表現した。
図3(a)に示した痒みツール31〜痒みツール35は、5段階の痒みの程度を表現するツールの一例である。この例では、(b)に示したような、中空球体を2分割したものを基本構造にした。痒みの程度が大きいほど、突起26の数が増えるように構成されている。被験者は、前回はこのくらいで、今回はこのくらいというように痒みの程度を表現することができる。
【0022】
上記の例のツールは、いずれも、実際に手を触れながら視覚と触覚とを使って、自己の感情を表現することができる。言葉で表現することが困難な小児にとって、心理量を定量的に表現しやすいことがわかった。これに対して、最近広く普及しているタブレット型のコンピュータで同様のことが可能かどうかを検討してみた。
【0023】
しかし、ディスプレイに表示されたツールの画像をそのまま選択するだけでは、ツールを実際に手にとって比較しながら選んだ場合と比べて、実感に乏しく、得られるデータの精度が低下することが分かった。この発明では、被験者自身が、指でツールの画像を自由に変化させることができるようにして、立体物でない欠点を補うことにした。さらに、動画を組み合わせたり、着色をすることにより、被験者がより自分の感情を伝えやすくした。
【0024】
本発明の装置は、上記の例と同様に、心理量の変化を、物品の基本構造に対する変形の程度で表現させる。コンピュータのディスプレイに物品の構造を示す画像データを表示して、ディスプレイに触れた指の動きを検出する。コンピュータの記憶装置には、予め、基本構造を示す画像データと、基本構造に対する変形の程度が少しずつ大きくなるようにした多数の画像データを記憶させておく。指の動く方向とディスプレイに指が触れた距離に応じて、基本構造を変形させたいずれかの画像データを選択して表示する。なお、以下の実施例では、タブレット型のコンピュータを使用する。以下、これを、単にタブレット40と呼ぶことにする。
【実施例1】
【0025】
(タブレットの操作画面)
図4は痛みを表現するための操作画面を示す。
被験者がはじめて痛みを測定する場合には、初期画面には、タブレット40のディスプレイに、(a)に示すように、基本形状の痛みツール11(
図1)を表示する。これは、痛み全く無い状態を示す。そして、ここでディスプレイに触れた指44を横方向(X軸方向)にスワイプする。ディスプレイに指が触れた距離が短いと、(b)に示すように、球体の周りに、痛みツール14(
図1)が表示され、基本構造に中程度の大きさの突起20が突出した形状になる。
【0026】
一方、ディスプレイに指が触れた距離が長いと、(c)に示すように、痛みツール(17)が表示され、基本構造に大きな突起20が突出した形状になる。また、突起20の数も増えている。(b)や(c)の矢印と反対方向に指44を動かすと、突起20の大きさが縮み、数が減り、逆の変形をする。被験者は、この画像を見ながら指を自由に動かして、画像の形状の変化を見ながら、自分の痛みの程度がどの程度かを決定する。
【0027】
例えば、自分の痛みが図の(b)の程度と考えたときは、ディスプレイ右上に示した決定アイコン46をタッチする。これにより、被験者が選択した画像データの識別情報がタブレット40の記憶装置に記憶される。後で
図7を用いて説明するが、被験者の識別情報と、表示した画像データの識別情報等を記憶する。なお、被験者が過去にこの測定をして、そのときから痛みの程度がどのように変化したかを調べる場合には、初期画面に、前回記憶しておいた画像データが表示される。この初期画面の画像データを出発点として、指の動く方向とディスプレイに指が触れた距離に応じて、変形させた画像データをディスプレイに表示する。
【0028】
図5は、基本構造に動画を含める例を示す。
例えば、始めに、痛みツール17の静止画像を表示する。ここでは、スワイプする指の動きを検出する方向とその動きに対応する処理を区別する。ディスプレイに対して横方向をX軸方向とし、縦方向をY軸方向とする。この状態になる直前に、被験者がX軸方向にスワイプをして、
図1の例でいえば、第7段階の画像データを表示しているものとする。
【0029】
ここで、ディスプレイに触れた指44を縦方向(Y軸方向)にスワイプする。ディスプレイに指が触れた距離が短いと、(b)に示すように、突起20が小さく振動を始める。一方、ディスプレイに指が触れた距離が長いと、(c)に示すように、突起20が大きく振動する。なお、突起20が伸びたり縮んだりするような動きをさせてもよい。
【0030】
いずれの場合であっても、突起20が振動することによって、これを自分の痛みと捉えて、感情を忠実に人に伝えることが可能になる。静止状態の画像データを選択する場合よりも、より実感に近い気持ちを伝えることができる。なお、ディスプレイ上で指をどの方向にスワイプしても構わない。ディスプレイの左下から、右上方向にスワイプすると、突起が増加し、同時に突起の振幅が増加する。ディスプレイ上を指でいろいろな方向になぞることで、自分の心理をうまく伝えられる画像を見つけるといった作業になり、より興味を覚えるといえる。
【0031】
図6は、ツールの一部あるいは全体の色を変化させる例である。
例えば、始めに、色選択アイコン48を使用して、発色させる色が赤色がよいか青色かよいかを被験者に選択させる。もちろん、色は固定でもよいし、もっと種類があってもよい。例えば、ツールに一秒以上タッチし続けたり、色変更というボタンにタッチしたりして、色見本一覧を表示させる。その状態で色を指定しても構わない。そして、ディスプレイにツールを表示させて、スワイプによりディスプレイに指が触れた距離を測定する。
【0032】
スワイプの距離が少ないときは、突起の一部が着色される。スワイプの距離が大きいと、より多くの突起か着色される。着色された突起の数によって、痒みの程度を表現することができる。例えば、赤い色が濃い場合には痒みが強く、赤い色が薄い場合には痒みが小さいと判定する。また、この場合でも、色の濃度がある濃度を中心にして濃くなったり薄くなったりする動的な状態のほうが、被験者に痒みを感じさせる効果が高い。また、何種類かの濃度のサンプルを並べて選択させるよりも、被験者自らが濃度を変化させて該当する濃度を選ぶほうが、精度の高い測定ができる。
【0033】
以上のようなツールは、タブレット式コンピュータのディスプレイに表示される画像が、被験者の指の操作によって、様々な形に変化する。また様々な動きをし、あるいは様々な色が現れる。これによって被験者は、タブレットコンピュータを用いて画像を選ぶことに興味を覚え、立体構造のツールでなくても、心理量を定量的に伝えることが可能になる。なお、被験者が決定した画像データにより、痛みの程度が第何段階にあるかを判定する処理を次に説明する。
【0034】
(タブレットの機能)
図7は、タブレットの機能ブロック図である。
本発明の装置は、例えば、図のような機能ブロックにより構成される。タブレット40は、 演算処理装置50と記憶装置52とを備えている。演算処理装置50には、 表示制御手段54と接触距離測定手段56とシフト量演算手段58と画像振動制御手段62と画像色選択手段64と決定操作検出手段66と心理量判定手段67が設けられている。これらは、コンピュータにそれぞれの機能を与えるコンピュータプログラムにより実現する。
【0035】
記憶装置52には画像データ群68と決定アイコン70と色選択アイコン72と心理量判定テーブル74と判定データ78とが記憶されている。判定データは、被験者識別情報80と画像データ識別情報82と判定結果84とを含むデータである。
【0036】
表示制御手段54は、画像データ群68から画像データを読み出して、タブレット40のディスプレイに表示する機能を持つ。接触距離測定手段56は、ディスプレイに指が触れた後、ディスプレイから指が離れるまでの接触距離を測定する機能を持つ。シフト量演算手段58は、初期状態でディスプレイに表示された画像データに対して、指の接触移動距離に応じた形状変化の程度を計算する機能を持つ。即ち、画面に表示された画像データを選択したボインタの値を、どこまでシフトさせるかを計算する。表示制御手段54は、シフト量演算手段58の計算結果が入力すると、新たな画像データを画像データ群68から読み出してディスプレイに表示する。
【0037】
画像振動制御手段は、表示された画像を中心にして、突起を振動させたり出没させる動画を、画像データ群68から読み出して表示する機能を持つ。画像色選択手段64は、指の接触距離に応じて着色された画像データを、画像データ群68から読みだしてディスプレイに表示する機能を持つ。決定操作検出手段66は、ディスプレイに表示さた決定アイコン46にタッチされたとき、表示中の画像データの識別情報を、被験者の識別情報とともに記憶装置52に記憶させる機能を持つ。
【0038】
画像データ群68は、上記のように、静止画と動画とを含む。ディスプレイに表示された画像データは、指の動きに合わせて、次第に変化する。この変化ができるだけなめらかな方が、操作性が良い。従って、多数の静止画像を画像データ群68に含めておく。全ての画像データに一連番号のような識別情報を付与する。表示制御手段54は、ポインタにより画像データを選択する。
【0039】
また、ある静止画像を初期状態にして、突起を振動させるような動画を表示するときには、該当する動画を選択すればよい。従って、動画も識別情報を付与して画像データ群68に含めておく。このほかに、プログラムで画像データを連続的に変形する処理を実行させてもよい。いずれにしても、ディスプレイに表示した画像データがどの段階の画像データかを識別できる識別情報が付加されていればよい。決定アイコン70と色選択アイコン72は、ディスプレイにアイコンを表示するための画像データである。
【0040】
図8は、心理量判定手段67の動作説明図である。
上記の決定アイコン70がタッチされたときには、ディスプレイに表示された画像データの識別情報が取得される。心理量判定手段67は、この画像データ識別情報82から、例えば、全部で7段階ある痛みの程度のうちの第何段階にあるかを判定する機能を持つ。心理量判定テーブル74は、この判定のために使用される。これは、画像データ識別情報82に対応する判定結果84を列挙したデータである。この処理により、
図7に示した判定データ78が生成される。判定データ78はその後医師等により分析される。
【0041】
(コンピュータプログラム)
図9は
図4と5の例のコンピュータ動作フローチャートである。
まず、ステップS11でアプリを起動する。次に、ステップS12では、被験者指定処理をする。即ち、被験者の識別情報等を入力する。ステップS13では、記憶装置の被験者の履歴読み取りをする。履歴があれば、直近の画像データの識別情報を読み取って、該当する画像データによる初期画面表示をする(ステップS14)。
【0042】
ステップS15では、スワイプ操作を検出する。スワイプ操作されたときは、ステップS16の処理に移行し、ノーのときは待機する。ステップS16では、指の操作画面への接触距離を検出する。ステップS17では、スワイプされたラインが、X方向成分を有しているかどうかという判断をする。この判断の結果がイエスのときはステップS18の処理に移行し、ノーのときはステップS19の処理に移行する。ステップS18では、スワイプの方向に応じた突起の数の増減処理をする。
【0043】
ステップS19では、スワイプされたラインが、Y方向成分を有りしているかどうかという判断をする。この判断の結果がイエスのときはステップS20の処理に移行し、ノーのときはステップS21の処理に移行する。ステップS20では、スワイプの方向に応じた突起の振動増減処理をする。
【0044】
ステップS21では、決定アイコンがクリックされたかどうかという判断をする。この判断の結果がイエスのときはステップS22の処理に移行し、ノーのときはステップS15の処理に戻る。ステップS22では、決定をした画像データの識別情報の取得をする。ステップS23では、画像データの識別情報から心理量の判定処理をし、その結果を例えば、ディスプレイに出力する。
【0045】
図10は
図6の例のコンピュータ動作フローチャートである。
ステップS31でアプリを起動する。ステップS32では、被験者を指定する処理をする。ステップS33では、初期画面の表示をする。ここまでは、
図9の処理と同一である。次に、ステップS34では、色選択の受付をする。被験者の求める色による発色処理にせセットする。
【0046】
ステップS35では、スワイプ操作を検出する。スワイプ操作されたときは、ステップS36の処理に移行し、ノーのときは待機する。ステップS36では、指の操作画面への接触距離を検出する。ステップS37では、スワイプされたラインが、X方向成分を有しているかどうかという判断をする。この判断の結果がイエスのときはステップS38の処理に移行し、ノーのときはステップS39の処理に移行する。ステップS38では、スワイプの方向に応じた突起の数の増減処理をする。
【0047】
ステップS39では、スワイプされたラインが、Y方向成分を有りしているかどうかという判断をする。この判断の結果がイエスのときはステップS40の処理に移行し、ノーのときはステップS41の処理に移行する。ステップS40では、スワイプの方向に応じた色濃度増減処理をする。なお、このとき、ある濃度を中心として色の濃度を動的に増減させると、より痛みの感情をとらえやすくなる。ステップS41以下は、
図9のステップS21以下の処理と同様のため、説明を省略する。
【0048】
(実験結果)
図11は、具体的な実験例を示すデータの説明図である。
ここでは、既存の数値評価スケールと、タブレットによる本発明の装置の実験データを比較し、その有用性を確認した。被験者は4名で、全員22歳の男性である。数値評価スケールとは、目盛りのない10cmの長さの線分上に印を付けるものである。図のグラフの右側にスケールを示した。下端が「痛みが無い」上端が「非常に痛い」に相当する。結果は実線で示した。タブレットによる痛みの程度の判定は、7段階とした。グラフの左側に1〜7のスケールを表示した。結果は破線で示した。また、被験者には、自由に突起に振動を与えてもらった。その振動レベルを左側のスケールで示した。結果は一点鎖線で示した。
【0049】
以下の順で実験を実施した。
1) これまでに経験した痛みの経験を5つ挙げてもらった。
2) 数値評価スケールで痛みの程度を示してもらった。
3) 各被験者が列挙した5つの痛みについて、タブレットにより痛みの程度を判定させた。
4) 数値評価ツールと比べてタブレットによる判定がどれ位良いか(自分の痛みをうまく表現しているか)という感想を被験者に聞いた。被験者には、1(とても悪い)から5(とても良い)の5段階で評価してもらった。
【0050】
感想の平均を取った結果、四人の平均が3.5となった。特に、突起が増減する点で、「刺すような痛みは表現がしやすかった」という良い評価が得られた。一方、
図3に示したような突起の形状は、「刺激的な痛みを表現できていても、鈍痛などの表現が難しい」という評価があった。鈍痛の表現のためには、突起の形状をもっとなだらかな山状にすれば良いことがわかった。従って、突起の形状を選択できる機能を付加することが好ましいことがわかった。また、形状の変化、突起の振動、色の変化については、被験者毎の好みに個人差が現れた。選択できるようにすると、被験者の個人差に合わせられることがわかった。
【0051】
以上の実験から、本発明の装置は、数値評価よりも視覚的にとらえやすく、突起の動きや色の変化等、動的な要素が加わることで、
図1〜3等に示した実物模型による静的なツールと比較しても、様々な痛みの表現をより伝えやすい。しかも、多様な変化を取り入れることができ、汎用性のある装置を実現することができた。
【実施例2】
【0052】
図12は痛みの状態を表現するための操作画面と演算処理システムのブロック図である。
この実施例では、痛みの程度や痛みの種類や痛みの時間的な変化をとらえて痛みの状態を判定する例を説明する。この図面に示したタブレット40には、痛みの程度を波形で表現するためのウィンドウを表示した。この図のように、被験者は、ウインドウ上に、自分の感じている痛みの状態を、指44を用いて波を描いて表現する
【0053】
波を描いた後でテストボタン95をタップすると、タブレット40はウィンドウ上に描かれた波形に対応するように本体を振動させる。このような動作を実行させるための、タブレット40の演算処理装置98と記憶装置99とは、例えば、図のような機能ブロックにより構成される。
【0054】
タブレット40の演算処理装置98には、データ読み取り手段100と、数値化手段102と、エンベロープ取得手段104と、振動パターン生成手段106と、バイブレータ駆動手段108 と 一波形検出手段110と、周期性判定手段112とが設けられている。記憶装置99には、入力波形データ86と、数値化データ87と、エンベロープデータ89と、基本波形データ91〜93とが記憶される。
【0055】
データ読み取り手段100は、タブレット40のウインドウ上に描かれた入力波形データ86を読み取る機能を持つ。数値化手段102は、読み取られた入力波形データ86を数値化する機能を持つ。エンベロープ取得手段104は、数値化データ87を解析して、エンベロープデータ89を取得する機能を持つ。振動パターン生成手段106は、エンベロープデータ89に対応する強弱変化を持つ振動パターンを生成する機能を持つ。バイブレータ駆動手段108は、振動パターン生成手段106が生成した振動パターンで、タブレット40を振動させる機能を持つ。
【0056】
一波形検出手段110は、入力波形データ86を解析して、そこに含まれる1単位の波形を検出する機能を持つ。さらに、一波形検出手段110は、この1単位の波形が、基本波形データ91〜93のいずれに該当するかを判断する機能を持つ。周期性判定手段112は、1単位の波形が、入力波形データ86中でどのような周期で発生するかを判定する機能を持つ。
【0057】
図13は、記憶装置99に記憶された各データの具体例説明図である。
(a)は、タブレット40のウィンドウに描かれた波形から得られた入力波形データ86である。(b)は、入力波形データ86を数値化した結果を示す。入力波形データ86の横軸を時間軸とし、例えば、4分の1秒ごとに入力波形データ86のレベルを計測したものである。この数値化データ87は、入力波形データ86を解析しさらに記憶装置99に記憶させておくために有効なデータになる。
【0058】
(c)には、入力波形データ86のエンベロープデータ89を示す。このエンベロープデータ89をバイブレーター駆動用の振動波形88で変調すると、入力波形データ86に忠実に振動の強弱を変化させるようにバイブレーターを振動することができる。
【0059】
また、入力波形データ86中に含まれる単調増加部分と単調減少部分を一組とした1単位の波形90を抽出する。記憶装置には、予め、3種類の基本波形データA91、基本波形データB92、基本波形データC93を記憶させておく。基本波形データA91は鋭い痛み、基本波形データB92は鋭くないが強い痛み、基本波形データC93は鈍痛といった判定に使用する。この図に示した1単位の波形90は、基本波形データA91に相当することがわかる。1単位の波形90と基本波形データA91の幅と高さを揃えるように正規化して、両者の数値化データの差分値を求め、それが最小であるかどうかを判断すればよい。
【0060】
なお、被験者は図の波形を痛みの時間的な変化に忠実に描くとは限らない。抽象的な痛みという現象を波の形で表すとすれば、という意識で波を描く場合もある。従って、1単位の波形を抽出して、その形状から痛みの程度や性質をとらえ、周期性から痛みの繰り返しの度合いをとらえて痛みの性質を判定することが有効になる。例えば、痛みの程度A、周期性あり、といった判定がされる。その痛みに対する被験者の気持ちは、実施例1の結果から得られる。これらを総合して、被験者の状態を客観的に把握することができる。
【0061】
さらに、上記のデータは、被験者の健康状態の取得や解析等にも広く利用できる。例えば、上記の入力波形データ86を画像データのまま、あるいは数値化をして、記憶装置に記憶させ、その後、ネットワークを通じてサーバや他のコンピュータに転送するような機能を設けることもできる。
【実施例3】
【0062】
図14は痛みの性質を判定するための別の方法を示す説明図である。
上記の実施例では、「痛みの性質を波の形で表したらどうなりますか?」といった問いに応えてくれる被験者が対象であった。これに対してこの実施例は、簡単な質問だけに対応できる小児の痛みの性質を判定するのに役立つ。
【0063】
図の(a)に示したタブレット40のディスプレイには、実施例1で説明した突起20を持つ図形が表示されている。この突起20を指44で被験者に押さえてもらう。そして、痛みを感じたら強く押すように伝えておく。
【0064】
(b)には、指44が表示画面120にタッチしたときの側面図を示した。この図のように、指44を表示画面120に触れただけの場合と、指44を表示画面120に強く押し付けた場合とで、指先が表示画面120に接触する面積が変わる。その状態を(c)に示した。
【0065】
指44を表示画面120に軽く押し付けたときの接触面122と、指44を表示画面120に強く押しつけたときの接触面123とを比較してみる。指先を表示画面120に押し付ける強さを変えると指先と表示画面120との接触面積が痛みの度合いによって変化する。被験者が突起20にタッチし自分の痛みの変化に応じて指を押しつける強さを変えたとき、接触面積の変化を記録することで、痛みの程度の時間的な変化をデータとして取得することができる。
【0066】
このような指の接触圧の変化を検出するために、接触圧検出手段を設けた。上記の処理は既知のタブレット40で可能であるが、新たに接触圧力を直接検出するセンサをディスプレイ上面に取り付ければ、その検出出力を利用できる。(d)には、この方法で取得した痛みの程度の時間変化に対応するエンベロープデータ89を示す。このエンベロープデータ89に対応する振動波形88を生成すれば、上記の実施例と同様に、痛みの性質に応じてタブレット40を振動させることができる。
【実施例4】
【0067】
図15は、痛みの時間的な変化を直接入力するための装置の機能ブロック図である。
タブレット40の画面の中央にはスライダ128が表示されている。またこの画面にはスタートボタン130と テストボタン95と 決定ボタン96とが表示されている。
【0068】
スライダ128に指44をタッチして痛みの時間的な変化を波形で表す。この動作のために演算処理装置98には、グラフ等速移動手段136と スライダ位置検出手段138と描画手段140とが設けられている。また記憶装置99には入力波形データ126が記憶される。
【0069】
スタートボタン130にタッチした後、指44でスライダ128に触れて画面の上下方向に指44を動かすと、スライダ128の左側に波が描かれる。波は自動的に等速で図の左側に移動していくように表示される。痛みが小さく感じられるときは「痛くない」と示した方にスライダ128を動かす。痛みが大きく感じられるときは「痛い」と示した方にスライダ128を動かす。
【0070】
このように、スライダ128上で画面の上下方向に指44を動かすだけで、スライダ位置検出手段138が痛みの時間的な変化をとらえる。グラフ等速移動手段136により描かれたグラフが等速で左方に移動する。描画手段140はそのつど入力された波形を描画し直す。その結果、次の図面に示すような入力波形データ126が取得できる。
【0071】
図16は、実施例4で取得された入力波形データ126の説明図である。
図の縦軸は痛みの程度を示す。横軸は時間の経過を示す。入力された入力波形データ126は、そのまま痛みの大きさの時間変化を示す。この実施例の場合には、痛みがゼロのラインを設けることができるので、そのまま痛みの変化のグラフを得られる。これまでの実施例と同様にして、バイブレータ駆動用の振動波形88を得ることができる。
【実施例5】
【0072】
図17は実施例2の装置の処理動作フローチャートである。
まず、
図12に示すように、ステップS11で、被験者がタブレット40のディスプレイに指で波形を描く。ステップS12で、テスト開始かどうかという判断をする。テストボタン95がタップされるとこの判断の結果がイエスとなる。そのときはステップS13の処理に移行する。ノーのときはステップS12でテストボタン95がタップされるまで待機する。
【0073】
ステップS13では、データ読み取り手段100がディスプレイに描かれた波形を取得する。その結果、入力波形データ86が記憶装置99に記憶される。ステップS14では、数値化手段102が波形を数値化する。その結果、数値化データ87が記憶装置99に記憶される。ステップS15では、エンベロープ取得手段104が、入力波形データ86のエンベロープを取得する。その結果、エンベロープデータ89が記憶装置99に記憶される。
【0074】
ステップS16では、振動パタン生成手段106が振動パタンの生成をする。ステップS17では、バイブレータ駆動手段108がバイブレータを駆動する。被験者は、この振動パタンと自分の痛みとを比較する。そして、合致していると判断すると、決定ボタン96をタップする。合致していないと判断すると、再度波形を描き直して、再びテストボタン95をタップする。
【0075】
ステップS18で決定ボタン96がタップされたかどうかという判断をする。この判断の結果がイエスのときはステップS19の処理に移行し、ノーのときはステップS11の処理に戻る。ステップS19では、波形判定をする。即ち、一波形検出手段110が
図13(e)で説明したように、1単位の波形90と基本波形を比較して痛みの性質を判定する。次に、ステップS20では、既に説明した周期性の判定をする。ステップS21では、これらの判定結果を、ディスプレイに出力する。
【0076】
図18は実施例3の装置の処理動作フローチャートである。
図14に示したように、ステップS31で、痛みツールの画像を表示する。その後、被験者に指を当てさせる。ステップS32で、ウインドウの所定の領域に指先が触れるとこれ検出して処理が起動する。ステップS33では、接触圧検出手段が指の接触面積を算出する。
【0077】
接触圧検出手段114の出力は、
図12の実施例と同様に処理される。即ち、
図12に示した数値化手段102により数値化され、ステップS34で、エンベロープ取得手段104によりエンベロープデータが生成される。ステップS35では、振動波形の生成をする。そして、ステップS36で、バイブレータの駆動をする。指を触れている間、その指の圧力に反応して振動するように動作することが好ましい。
【0078】
ステップS37では、タイムアップかどうかという判断をする。接触圧の検出は、例えば、1分程度の時間制限をつけて実行するとよい。指がディスプレイから離れたら停止するようにしてもよい。タイムアップのときはステップS38の処理に移行する。ステップS38で、入力波形データの生成をし、ステップS39で波形判定をする。続いてステップS40で周期性判定をする。ステップS41でその結果を出力する。これらの処理は既に先の実施例で説明したのと同様である。
【0079】
図19は実施例4の装置の処理動作フローチャートである。
この処理はステップS51でスタートボタン130のタップを検出して開始する。ステップS52でグラフ等速移動手段136が、グラフの移動を開始する。この状態で、指44でスライダ128を動かすと、ディスプレイ上に
図15に示すような入力波形データ126が表示される。ステップS53では、スライダ位置検出手段138がスライダ一の状態を検出する。ステップS54では、描画手段140がスライダ一の状態に応じたグラフ描画をする。
【0080】
図12に示したデータ読み取り手段100は、描画されたグラフから数値化可能な入力波形データ126を取得する。その後の処理は
図12の実施例のと全く同様である。ステップS56でテストボタン95へのタッチを検出すると、ステップS57でバイブレータを駆動する。ステップS58で、決定ボタン96へのタッチを検出すると、ステップS59の処理に移行する。ステップS59で波形判定をし、ステップS60で周期性判定をする。ステップS61では、その結果を出力する。
【0081】
図20〜22は、バイブレーションを用いた痛みの評価の調査結果説明図である。
図20には、3名の被験者の評価結果の一覧表を示した。被験者には、過去の痛かった経験を5つ挙げてもらい、スマートフォンのバイブレーション機能を用いて、その痛みを表現することができるかを確認した。また、その痛みを「ギザギザ」の線で表現してもらい、どの様な特徴が現れるかを調査した。「ギザギザ」の線とは、
図12に示した実施例2のものである。
【0082】
ここで例示した被験者は、24歳の男性1名と20歳の女性2名である。例えば、24歳の男性の腹痛については、
図22でC−01という記号を付した「ギザギザ」の線で表現された。CさんはC−01〜C−05、Dさんは、D−01〜D−05、Eさんは、E−01〜E−05の線でそれぞれの痛みを表現した。
【0083】
これらの「ギザギザ」の線に見られる特徴は、次の通りである。例えば、Dさんは、「気胸のとき」の痛みに対し、波の書き始めも下方向から始まり、振幅も書き始めの線を超えることはなかった。これらで気胸の息苦しさを表現したのではないかと考えられる。また、「寝違えたとき」については、痛みを感じる角度まで首を回してしまった時に最大の痛みを一瞬感じ、振幅も最大値を示し、尾を引く痛みを細かな波で表現したと考えられる。刺すような痛みを感じたことで、波の書き始めも上に向いていると考えられる。
【0084】
また、Eさんの場合には、「顔面にボールが当たる」といった場合に、大きな痛みの後の尾を引くジーンとした痛みを細かな振幅で表現していると考えられる。「腹痛」については、他のギザギザの物と比べ波長の幅が長く、鈍痛を感じていたことが分かる。このことから、ギザギザの波の角度が大きければ大きいほど鈍痛を表現するのではないかと考えられる。「虫歯の痛み」については、大きな振幅で脈に合わせたズキズキする痛みを感じ、細かな波で持続的な痛みを表現していると考えられる。
【0085】
そして、それぞれ「ギザギザ」の線に対応する振動をスマートフォンに与えて、有効性を評価してもらった。即ち、「バイブレーションを用いて痛みの強さを表現することができると思いますか?」という問いに対して、5(できる)〜1(できない)の5段階で評価をもらった。評価5や4の場合には、表現できるという意見、評価3の場合には、実施例1のものと変わらないという意見、評価1や2の場合には、あまり効果が感じられないという意見になる。
図21に、評価結果を折れ線グラフで示した。
【0086】
以上の実験結果から、バイブレーションを用いた痛みの表現は、触覚のフィードバックがあることで痛みをより正確に表現することができたこと、痛みの感覚の変化を表現することができたこと、痛みをより具体的に思い出すことが可能であったこと等の効果があることが分かった。
【0087】
バイブレーションを使用して痛みを表現したことに対して、例えば、Cさん(男性)は5段階評価で5〜4としている。また、Dさん(女性)は、3種類の痛みを5段階評価で5〜4としている。例えば、Cさん(男性)では、腹痛では5、15時間歩いた時の腰痛では5、頭痛では4、階段から落ちた痛みでは4、親指を切ったときの痛みでは3という評価をしている。これらの評価は、被験者の実感から得られた評価であって、痛みをバイブレーションで表現することが可能なことを証明している。
【0088】
また、ギザギザの形状(波形の特徴)に着目すると、振幅の大きさは痛みの強さを表現し、波長の角度に応じて刺すような痛みか鈍痛かを表現していることが分かる。また、全体の長さは痛みの継続性を示し、類似した形のギザギザを繰り返し描いている場合は痛みの反復性を示していることが分かる。これらの特徴の一部は、上記の実施例のように自動的に判定できる。その他の特徴は専門家が分析して判定すればよい。従って、波形のプリミティブな形状から様々な痛みの情報を容易に推測できることが明らかになった。ギザギザを描くときに振幅の最大値を定めることで評価基準を定め、痛みの強さの度合いをより正確に推し量ることも可能である。