(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に開示されている支保工設置方法によれば、解体用の重機が作業する階から下の既存の各床スラブにセメント系固結性流動物の現場打ちによる束柱を築造することにより、各床スラブの垂直方向の補強が行われている。
【0010】
しかしながら、束柱を築造する作業には、多大な労力と時間を要し、効率が悪いという問題がある。また、束柱の築造するためには、大量のセメント系固結性流動物を必要とし、築造された束柱は最終的には解体されて解体ガラとなってしまうので、非常に不経済であるという問題がある。
【0011】
本発明の目的は、支保工の設置作業に要する労力を軽減するとともに経済的である支保構造体およびその構築方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、建物の上下方向に互いに対向する床スラブ間に構築される支保構造体であって、
前記床スラブ間の上下方向の距離よりも予め定める寸法だけ短くなるように前記床スラブ間に積重される、合成樹脂から成る複数の基本ブロックと、
上下方向に隣り合う一対の基本ブロック間に外方側から挿入され、挿入量が大きくなるに従って、該一対の基本ブロック間の距離を前記予め定める寸法まで増大させる調整手段とを含
み、
前記調整手段は、それぞれ楔状に形成された、合成樹脂から成る一対の高さ調整ブロックから成り、
一方の高さ調整ブロックの挿入方向と、他方の高さ調整ブロックの挿入方向とは反対であり、
一方の高さ調整ブロックは、前記一対の基本ブロックのうちの一方の基本ブロックにおいて他方の基本ブロックに対向する表面と面接触する接触面と、その接触面に対して傾斜する傾斜面とを有し、
他方の高さ調整ブロックは、前記他方の基本ブロックにおいて前記一方の基本ブロックに対向する表面と面接触する接触面と、その接触面に対して傾斜し、かつ前記一方の高さ調整ブロックの傾斜面と面接触する傾斜面とを有し、
前記一方の高さ調整ブロックにおける、傾斜面の接触面に対する傾斜角度と、前記他方の高さ調整ブロックにおける、傾斜面の接触面に対する傾斜角度とが等しく、
前記一方の高さ調整ブロックの前記接触面と、前記他方の高さ調整ブロックの前記接触面とは、前記挿入方向に平行に延びる一対の第1の対辺と、前記第1の対辺とは他方に延びる一対の第2の対辺とで規定されており、前記一対の基本ブロックの前記表面は、挿入方向に平行に延びる一対の第3の対辺と、前記第3の対辺とは他方に延びる一対の第4の対辺とで規定されており、前記第1の対辺は、前記第3の対辺よりも長く、前記第2の対辺は、前記第4の対辺の長さ以上の長さであることを特徴とする支保構造体である。
【0014】
また本発明は、前記基本ブロックおよび前記高さ調整ブロックは、発泡合成樹脂から成ることを特徴とする。
【0015】
また本発明は、前記高さ調整ブロックの発泡倍率は、前記基本ブロックの発泡倍率よりも低いことを特徴とする。
【0018】
また本発明は、建物の上下方向に互いに対向する床スラブ間に構築される支保構造体の構築方法であって、
複数の合成樹脂製の基本ブロックを、前記床スラブ間の上下方向の距離よりも予め定める寸法だけ短くなるように、前記床スラブ間に積重する工程と、
それぞれ楔状に形成される一対の合成樹脂製の高さ調整ブロックを、上下方向に隣り合う一対の基本ブロック間に、それぞれ反対方向から挿入し、該一対の基本ブロック間の距離を前記予め定める寸法まで増大させる工程とを含むことを特徴とする支保構造体の構築方法である。
【0019】
また本発明は、多層構造とされた既存の建物を、揚重した解体用の重機によって解体する解体方法であって、
前記支保構造体を設置すべき層数を決定する第1工程と、
各階において前記支保構造体を設置すべき位置を決定する第2工程と、
前記既存の建物に、前記第2工程で決定された各位置に、前記支保構造体の構築方法に従って、前記支保構造体を設置する第3工程とを含むことを特徴とする建物の解体方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、支保構造体を構成している基本ブロックが、合成樹脂から成っており、強力サポートと比べて非常に軽量であるので、人力での搬入作業に要する労力を軽減することができ、また搬入作業や設置作業に伴う危険性も格段に軽減することができる。
【0021】
また、基本ブロックを床スラブ間に積重し、上下方向に隣り合う一対の基本ブロック間に調整手段を挿入して、その一対の基本ブロック間の距離を予め定める寸法まで増大させるという作業を行うだけで支保工を設置することができるので、重量物である強力サポートを設置する作業や、束柱を築造する作業と比較して、支保工の設置作業に要する労力を格段に軽減することができる。
一方の高さ調整ブロックの接触面と、他方の高さ調整ブロックの接触面とは、挿入方向に平行に延びる一対の第1の対辺と、第1の対辺とは他方に延びる一対の第2の対辺とで規定されており、一対の基本ブロックの表面は、挿入方向に平行に延びる一対の第3の対辺と、第3の対辺とは他方に延びる一対の第4の対辺とで規定されており、第1の対辺は、第3の対辺よりも長く、第2の対辺は、第4の対辺の長さ以上の長さであるので、一対の基本ブロックのうち下側に配置される基本ブロックの上面全体を高さ調整ブロックの接触面に面接触させるとともに、上側に配置される基本ブロックの下面全体を高さ調整ブロックの接触面に面接触させることができる。
【0022】
さらに、本発明に係る支保構造体は、一対の基本ブロック間に挿入された調整手段を、その一対の基本ブロック間から離脱させることによって、床スラブ間から容易に撤去することができるので、再利用することが可能であり、束柱を築造する場合に比べて、経済的に支保工を設置することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係る支保構造体10を用いて既存の建物1を解体する方法の一例を示した断面図である。建物1は、集合住宅、オフィスビル、デパートなどの大型店舗ビルのような、多層構造とされた既存の建物であり、
図1では、地上10階建ての建物を示している。なお、
図1では、建物1の構造躯体として、鉄筋コンクリート構造体から成る1階〜10階の床スラブF
1〜F
10、屋上の床スラブR、柱2、梁3を図示している。
【0025】
本実施形態に係る支保構造体10は、解体用の重機5が作業を行う階の床スラブFを垂直方向に補強するために、作業を行う階よりも下の階において、建物1の上下方向Zに互いに対向する床スラブF
i,F
i+1間に複数構築される。
図1に示す例では、10階において重機5による解体作業が行われており、9階と10階の床スラブF
9,F
10間、8階と9階の床スラブF
8,F
9間、および7階と8階の床スラブF
7,F
8間に、それぞれ複数の支保構造体10が構築されている。
【0026】
図2は、本発明の一実施形態に係る支保構造体10の構成の一例を示す断面図である。支保構造体10は、床スラブF
i,F
i+1間の上下方向Zの距離Lよりも予め定める寸法Dだけ短くなるように床スラブF
i,F
i+1間に積重される、それぞれ合成樹脂から成る複数の基本ブロック11と、上下方向Zに積重された複数の基本ブロック11のうちの、上下方向Zに隣り合う一対の基本ブロック11間に、基本ブロック11の積重体の外方側から挿入され、外方側からの挿入量が大きくなるに従って、その一対の基本ブロック11間の距離を予め定める寸法Dまで増大させるように機能する調整手段12とを含んで構成される。
【0027】
図3は、基本ブロック11の構成を示す斜視図である。基本ブロック11としては、柱状に形成されたものが用いられ、互いに平行かつ互いに同一の形状およびサイズを有する平坦な上面11aおよび平坦な下面11bを有している。本実施形態では、
図3に示すように、基本ブロック11は、上面11aおよび下面11bの形状が矩形を成しており、より詳細には、正方形を成している。また、上面11aおよび下面11bに連なる各側面11cはそれぞれ平坦に形成されており、したがって、基本ブロック11は、直方体状に形成されている。
【0028】
支保構造体10を構成する複数の基本ブロック11は、上面11aが上方に臨み、下面11bが下方に臨む姿勢で、それぞれの中心軸線が同軸上に配置されるように、上下方向Zに積重される。本実施形態では、支保構造体10を構成する複数の基本ブロック11として、上下面11a,11bの形状およびサイズが同一に形成されているものが用いられており、複数の基本ブロック11は、上下方向Zに見て、それぞれの上面11aおよび下面11bが略一致するように、上下方向Zに積重される。なお、支保構造体10を構成する複数の基本ブロック11は、上面11aと下面11bとの間の距離である高さ寸法については、互いに同一のものが用いられてもよく、互いに異なるものが用いられてもよい。
【0029】
一方、調整手段12は、
図2に示すように、それぞれ楔状に形成された、合成樹脂から成る一対の高さ調整ブロック13によって構成されている。
図4は、高さ調整ブロック13の構成を示す斜視図である。高さ調整ブロック13は、
図4に示すように、頂面13aおよび底面13bの形状が直角三角形を成している三角柱状に形成されている。なお、本実施形態では、支保構造体10を構成する一対の高さ調整ブロック13として、互いに全く同一の形状およびサイズに形成されているものが用いられている。
【0030】
ここで、高さ調整ブロック13において、頂面13aおよび底面13bにおける各斜辺を含む面を傾斜面13cと称し、頂面13aおよび底面13bにおける各底辺を含む面を接触面13dと称し、傾斜面13cと接触面13dとが連なる部分を先端部13fと称し、頂面13a、底面13b、傾斜面13cおよび接触面13dに連なる面を後端面13eと称することとする。なお、高さ調整ブロック13において、各面13a〜13eは、それぞれ平坦に形成されている。
【0031】
一対の高さ調整ブロック13は、
図2に示すように、一方の高さ調整ブロック13が、その接触面13dが下方に臨みかつ上下方向Zに垂直となるような姿勢で、その先端部13f側から一対の基本ブロック11間に挿入方向A1に挿入され、他方の高さ調整ブロック13が、その接触面13dが上方に臨みかつ上下方向Zに垂直となるような姿勢で、その先端部13f側から一対の基本ブロック11間に挿入方向A1とは反対の方向である挿入方向A2に挿入されることによって、調整手段12として機能する。
【0032】
ここで、挿入方向A1,A2は、上下方向Zに垂直な方向である。また、挿入方向A1は、一方の高さ調整ブロック13において、後端面13eの法線に沿う方向のうち、後端面13eから先端部13f側に向かう方向に一致する方向であり、挿入方向A2は、他方の高さ調整ブロック13において、後端面13eの法線に沿う方向のうち、後端面13eから先端部13f側に向かう方向に一致する方向である。
【0033】
挿入の際、一方の高さ調整ブロック13は、その接触面13dが、一対の基本ブロック11のうちの下側に配置される基本ブロック11の上面11aと面接触し、かつ、その傾斜面13cが、他方の高さ調整ブロック13における傾斜面13cと面接触しながら挿入され、このとき、その先端部13fは、他方の高さ調整ブロック13における傾斜面13c上をスライドしていく。
【0034】
一方、他方の高さ調整ブロック13は、その接触面13dが、一対の基本ブロック11のうちの上側に配置される基本ブロック11の下面11bと面接触し、かつ、その傾斜面13cが、一方の高さ調整ブロック13における傾斜面13cと面接触しながら挿入され、このとき、その先端部13fは、一方の高さ調整ブロック13における傾斜面13c上をスライドしていく。
【0035】
なお、前記のように、一方の高さ調整ブロック13と他方の高さ調整ブロック13とは全く同一に構成されていることから、一方の高さ調整ブロック13における、傾斜面13cの接触面13dに対する傾斜角度αと、他方の高さ調整ブロック13における、傾斜面13cの接触面13dに対する傾斜角度αとは等しくなっている。
【0036】
したがって、上記のように一方および他方の高さ調整ブロック13を挿入していくことにより、それぞれの接触面13dは、互いに平行な状態を維持したまま、挿入量の増大に従って、接触面13d間の距離も増大していくこととなり、これに伴って、各接触面13dと面接触している、一対の基本ブロック11のうちの下側に配置される基本ブロック11の上面11aと上側に配置される基本ブロック11の下面11bとが、互いに平行な状態を維持したまま、上下方向Zに離間していくこととなる。
【0037】
このようにして、下側に配置される基本ブロック11の上面11aと上側に配置される基本ブロック11の下面11bとの距離dが、床スラブF
i,F
i+1間の上下方向Zの距離Lと、複数の基本ブロック11の高さ寸法の総和との差分に相当する前記予め定める寸法Dに一致するまで、一方および他方の高さ調整ブロック13が挿入されることにより、支保構造体10は構築される。
【0038】
このとき、一方および他方の高さ調整ブロック13は、支保構造体10が床スラブF
i,F
i+1間に突っ張った状態となるまで挿入される。なお、このように突っ張った状態となるまで挿入されることにより、一方および他方の高さ調整ブロック13は、下側に配置される基本ブロック11の上面11aと一方の高さ調整ブロック13の接触面13dとの間に作用する摩擦力、上側に配置される基本ブロック11の下面11bと他方の高さ調整ブロック13の接触面13dとの間に作用する摩擦力、および、一対の基本ブロック11の傾斜面13c同士の間に作用する摩擦力によって、容易に離脱してしまうことが防止されている。
【0039】
なお、一方および他方の高さ調整ブロック13を挿入する際には、挿入方向A1,A2が、基本ブロック11の上面11aを規定している一対の対辺の延在方向に一致するように挿入される。
【0040】
ここで、基本ブロック11の上面11aを規定している四辺のうち、挿入方向A1,A2に平行に延びる一対の対辺を辺11dと記し、他方の一対の対辺を辺11eと記すこととする。また、高さ調整ブロック13の接触面13dを規定している四辺のうち、挿入方向A1またはA2に平行に延びる一対の対辺を辺13gと記し、他方の一対の対辺を辺13hと記すこととする。さらに、高さ調整ブロック13の後端面13eを規定している四辺のうち、辺13hに連なる一対の対辺を辺13iと記すこととする。
【0041】
本実施形態では、高さ調整ブロック13は、その辺13gの長さm2が、
図2に示すように、基本ブロック11における辺11dの長さm1よりも長くなるように設計される。一方、高さ調整ブロック13における辺13hの長さは、基本ブロック11における辺11eの長さ以上に選択され、本実施形態では、辺11eの長さと同一の長さに選択されている。
【0042】
そして、前記予め定める寸法Dは、高さ調整ブロック13における高さ寸法(すなわち、辺13iの長さ)h1と、高さ調整ブロック13において、先端部13fから辺13gに沿って距離m1だけ進んだ位置における高さ寸法(すなわち、その位置での接触面13dと傾斜面13cとの距離)h2との間の値として選ばれる。つまり、前記予め定める寸法Dは、高さ調整ブロック13の形状に基づいて決定される。
【0043】
前記予め定める寸法Dを、高さ調整ブロック13における高さ寸法h1と高さ寸法h2との間の値として選択することにより、支保構造体10を構築した状態において、一対の基本ブロック11のうちの下側に配置される基本ブロック11の上面11a全体を、一方の高さ調整ブロック13における接触面13dに面接触させるとともに、上側に配置される基本ブロック11の下面11b全体を、他方の高さ調整ブロック13における接触面13dに面接触させることができる。
【0044】
ここで、寸法の一例を挙げると、本実施形態では、基本ブロック11としては、上下面11a,11bのサイズが1000mm×1000mmであり、高さ寸法が500mmであるのものが用いられる。一方、高さ調整ブロック13としては、辺13gの長さm2が1300mmであり、辺13hの長さが1000mmであり、高さ寸法h1が300mmであるものが用いられる。
【0045】
この場合、予め定める寸法Dは、240mm〜290mmの間の値として選ばれるのが好ましい。また、上記の寸法を有する基本ブロック11を上下方向Zに積重したときに、床スラブF
i,F
i+1間の上下方向Zの距離Lと、積重した基本ブロック11の高さ寸法の総和との差分が、240mm〜290mmの範囲に収まらなければ、高さ寸法のみが異なる基本ブロック11、たとえば高さ寸法が400mmである基本ブロック11が、高さ寸法が500mmである基本ブロック11と組み合わせて用いられてもよい。
【0046】
なお、高さ調整ブロック13としては、傾斜角度αが30°以下のものが好適に用いられ、10°以上20°以下のものがより好適に用いられる。
【0047】
このような基本ブロック11および高さ調整ブロック13の材料である合成樹脂としては、発泡合成樹脂が好適に用いられる。本実施形態では、基本ブロック11および高さ調整ブロック13はともに、ポリスチレンを原料合成樹脂とした発泡合成樹脂から成るEPS(Expanded Poly-Styrol)ブロックを、所望のサイズにカットすることによって形成されている。
【0048】
より詳細には、基本ブロック11を構成しているEPSブロックとしては、単位体積重量が0.35kN/m
3で、発泡倍率(単位:リットル/kg、但し重力加速度=10m/s
2として計算、以下同様)が1000/35≒28.6倍で、許容圧縮応力が140kN/m
2である、株式会社浜島化成社製のEPSブロック(型番DX−29D)が用いられ、高さ調整ブロック13を構成しているEPSブロックとしては、単位体積重量が0.70kN/m
3で、発泡倍率が1000/70≒14.3倍で、許容圧縮応力が350kN/m
2である、株式会社浜島化成社製のEPSブロック(型番DX−45D)が用いられている。なお、このようなEPSブロックから成る上記のサイズの基本ブロック11は、約17.5kg(≒0.35kN/m
3×0.5m
3)であり、高さ調整ブロック13は、約13.65kg(≒0.70kN/m
3×0.195m
3)である。
【0049】
なお、支保構造体10に用いられる基本ブロック11および高さ調整ブロック13としては、安全上、解体用の重機5の荷重(重さが14tである0.45m
3級バックホウを想定)が集中的にかかった場合を考慮して、100kN/m
2以上の許容圧縮応力を有するものが用いられるのが好ましい。
【0050】
図5は、本実施形態に係る支保構造体10を構築する手順を示すフローチャートである。ステップs1で、支保構造体10が設置されるべき箇所にマーキングを付し、ステップs2に進む。ステップs2で、マーキングが付されている箇所に、目立った不陸や突起物などが存在しているか否かを確認し、存在していればそれらを除去して、設置箇所を平坦にし、ステップs3に進む。
【0051】
ステップs3で、床スラブF
i,F
i+1間の上下方向Zの距離Lよりも予め定める寸法Dだけ短くなるように、床スラブF
i,F
i+1間に基本ブロック11を積重して、ステップs4に進む。このとき、前記のように、複数の基本ブロック11は、それぞれの中心軸線が同軸上に配置され、かつ、上下方向Zに見て、それぞれの上面11aおよび下面11bが略一致するように、上下方向Zに積重される。
図2に示す例では、このステップs3において、5つの基本ブロック11が積重される。
【0052】
ステップs4で、上下方向Zに隣り合う一対の基本ブロック11間に、その一対の基本ブロック11のうちの下側に配置される基本ブロック11の上面11aと上側に配置される基本ブロック11の下面11bとの間の距離が予め定める寸法Dに達するまで、一対の高さ調整ブロック13を、それぞれ反対方向から挿入し、ステップs5に進む。
図2では、最上段の基本ブロック11とその下段の基本ブロック11との間に一対の高さ調整ブロック13を挿入する例を示している。
【0053】
このとき、一対の高さ調整ブロック13は、各基本ブロック11の中心軸線を含み、かつ挿入方向A1,A2に垂直な仮想平面に関して対称となるように挿入される。また、高さ調整ブロック13を挿入する際には、その後端面13eを、たとえば木槌などで叩くことにより容易に挿入することができる。なお、床スラブF
i+1の下面と最上段の基本ブロック11の上面11aとがしっかりと均一に面接触していない場合には、それらの間に薄板が挿入されてもよい。
【0054】
ステップs5で、各ブロック11,13が許容範囲を超えてずれていないかを目視で確認し、支保構造体10の構築作業が終了する。
【0055】
一方、構築された支保構造体10を床スラブF
i,F
i+1間から撤去する際には、一対の高さ調整ブロック13を、一対の基本ブロック11間から抜き取るだけで、容易に撤去することができる。
【0056】
以下、本実施形態に係る支保構造体10を用いて、既存の建物1を解体する方法について説明する。
図6は、本実施形態に係る既存の建物1の解体方法の処理手順を示すフローチャートである。
【0057】
ステップa1では、設計条件が決定される。具体的には、解体用の重機5の諸元(重量および各部の寸法など)が決定されるとともに、床スラブFに使用されているコンクリートの設計基準強度に基づいて、コンクリートの許容応力度が決定され、床スラブFに使用されている鉄筋の種類に基づいて、鉄筋の許容応力度が決定される。さらに、支保構造体10を構成している基本ブロック11および高さ調整ブロック13の材質などに基づいて、支保構造体10の許容圧縮応力度が決定される。
【0058】
ステップa2では、荷重条件が決定される。具体的には、重機荷重、既設構造物荷重、支保工荷重、解体ガラ荷重、および衝撃荷重などが決定される。
【0059】
ステップa3では、床スラブFのサイズおよびステップa2で決定された荷重条件などに基づいて、支保工層数が決定される。支保工層数は、支保構造体10に伝わる反力を何層の床スラブFで受け持つことができるかに従って決定される。たとえば
図1に示すように、支保構造体10に伝わる反力を4層の床スラブFで受け持つこととする場合には、支保工層数が3層と決定される。
【0060】
ステップa4では、床スラブF
i,F
i+1について、1方向の梁(短辺方向)として、2Dフレーム解析を実施し、支保構造体10の上載荷重分散効果を照査して、上側の床スラブF
i+1への上載荷重が、下側の床スラブF
iへほぼ均等に分散される支保構造体10のピッチを検討する。ただし、床スラブFは、平板として作用することから、支保構造体10のピッチは、床スラブFを3Dモデリング化して、3D−FEM解析を実施し、支保構造体10の上載荷重分散効果を照査して、その解析結果を考慮した上で決定する。そして、決定された支保構造体10のピッチに基づいて、各階における支保構造体10の配置が決定される。
【0061】
ステップa5では、ステップa3で決定された支保工層数、およびステップa4で決定された支保構造体10の配置に基づいて、解体対象の建物1に対し、複数の支保構造体10が設置される。各支保構造体10の構築手順は、
図5に示すとおりである。
【0062】
所定の箇所に支保構造体10が設置されると、ステップa6で、解体用の重機5が揚重され、解体用の重機5による解体作業が実施される。以下、
図1を参照して説明すると、ステップa6では、解体用の重機5が10階に揚重され、解体用の重機5により、屋上の床スラブR等が解体される。
【0063】
10階において解体用の重機5による解体作業が終了すると、ステップa7で、支保構造体10を盛り替える必要があるか否かが判断され、必要がある場合には、ステップa8で、支保構造体10を盛り替える作業が実施される。たとえば、前記のように、10階において解体用の重機5による解体作業が終了した場合には、10階の床スラブF
10と9階の床スラブF
9との間に構築されていた支保構造体10が撤去され、撤去した支保構造体10は、9階の床スラブF
9を垂直方向に補強するために、6階と7階の床スラブF
6,F
7間に構築される。その後、ステップa6に進み、9階において、解体用の重機5により解体作業が行われる。このようにして、上階から順次解体作業を行っていくことにより、建物1は解体される。
【0064】
以上のように、本実施形態によれば、支保構造体10を構成している基本ブロック11が、合成樹脂から成っており、強力サポートと比べて非常に軽量であるので、人力での搬入作業に要する労力を軽減することができ、また搬入作業や設置作業に伴う危険性も格段に軽減することができる。また、合成樹脂として、発泡合成樹脂を用いているので、さらに軽量化され、人力での搬入作業に要する労力をより軽減することができ、また搬入作業や設置作業に伴う危険性もさらに軽減することができる。
【0065】
また、基本ブロック11を床スラブF
i,F
i+1間に積重し、上下方向Zに隣り合う一対の基本ブロック11間に調整手段12を挿入して、その一対の基本ブロック11間の距離Lを予め定める寸法Dまで増大させるという作業を行うだけで支保工を設置することができるので、重量物である強力サポートを設置する作業や、束柱を築造する作業と比較して、支保工の設置作業に要する労力を格段に軽減することができる。
【0066】
さらに、本発明に係る支保構造体10は、一対の基本ブロック11間に挿入された調整手段12を、その一対の基本ブロック11間から離脱させることによって、床スラブF
i,F
i+1間から容易に撤去することができる。また、再利用することが可能であり、束柱を築造する場合に比べて、経済的に支保工を設置することができる。
【0067】
また、本発明に係る支保構造体10は、床スラブFと接触する面積、すなわち基本ブロック11の上面11aの面積が、強力サポートに比べて大きいので、重機の荷重による床スラブの押し抜きせん断破壊を確実に防止することができる。
【0068】
また、本実施形態によれば、支保構造体10を構成している高さ調整ブロック13も、合成樹脂から成っているので、人力での搬入作業に要する労力を軽減することができ、また搬入作業や設置作業に伴う危険性も格段に軽減することができる。また、合成樹脂として、発泡合成樹脂を用いているので、さらに軽量化され、人力での搬入作業に要する労力をより軽減することができ、また搬入作業や設置作業に伴う危険性もさらに軽減することができる。
【0069】
また、本実施形態によれば、支保構造体10は、床スラブF
i,F
i+1間に突っ張った状態で設置される柱状体として構成され、床スラブF
i,F
i+1との接触面の大きさが、強力サポートを設置したときの強力サポートと床スラブF
i,F
i+1との接触面の大きさよりもかなり大きいので、建物を解体する場合に、1フロアあたりの設置数を強力サポートに比べて格段に低減することができる。したがって、本実施形態に係る支保構造体10を建物を解体する場合の支保工として用いることにより、1フロアあたりの支保工設置に要する労力および時間を格段に低減することができる。
【0070】
また、本実施形態によれば、高さ調整ブロック13の発泡倍率が、基本ブロック11の発泡倍率よりも低く選択されている。したがって、前記のように、高さ調整ブロック13を木槌で叩いて挿入したとしても、高さ調整ブロック13が容易に破損してしまうことがない。
【0071】
なお、本実施形態では、基本ブロック11の形状は、直方体状とされているが、他の実施形態では、円柱状、三角柱状、および角筒状などであってもよい。
【0072】
また本実施形態では、摩擦力のみによって、各高さ調整ブロック13のずれを防止しているが、これに限らず、チェーンブロックやワイヤなどを用いることによって、別途ずれ止め措置を講じてもよい。
【0073】
なお、
図1では、支保構造体10のみを用いた建物1の解体方法を示しているが、これに限らず、支保構造体10と従来の強力サポートとを組み合わせて用いることも可能である。また、
図1では、建物1を解体する場合の使用例を示しているが、本発明に係る支保構造体10は、建物を新設する際に利用することも可能である。