【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る超音波検査装置は、タービンブレードの翼根部が植え込まれているロータディスクの翼植込部を超音波により検査するための超音波検査装置であって、プローブと、前記プローブを前記ロータディスクに対して相対移動させるための台車と、を備え、前記台車は、前記ロータディスクのディスク面を走行するための複数のロータディスク走行用ローラと、前記ロータディスクと同心に設けられたロータシャフトの周面を走行するための複数のロータシャフト走行用ローラと、前記プローブを前記ディスク面に対向した状態で保持するホルダと、を含み、前記ホルダは、前記プローブ及び前記ディスク面に沿って延在する第1フレームと、前記プローブ及び前記ディスク面に沿って延在する第2フレームであって前記第1フレームとの間に前記プローブが位置するように設けられた第2フレームと、を有し、前記第1フレーム及び前記第2フレームの各々は、少なくとも一つのマグネット部を有する。
【0009】
上記(1)に記載の超音波検査装置によれば、ロータディスクのディスク面に対向するプローブの一方側に位置する第1フレームのマグネット部と、他方側に位置する第2フレームのマグネット部とがロータディスクのディスク面側に吸引される。このため、プローブの両側で生じるマグネット部の吸引力によって、ホルダに保持されたプローブをディスク面に安定的に押し付けることができる。また、複数のロータディスク走行用ローラに吸着力の強い大型のマグネットローラを採用せずとも、第1フレームのマグネット部及び第2フレームのマグネット部の吸引力によってプローブをロータディスクのディスク面に安定的に押し付けることができるため、ロータシャフトの軸方向における超音波検査装置の大型化を抑制することができる。
【0010】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載の超音波検査装置において、前記ホルダをロータシャフトの径方向(以下、Y方向と称する)に案内するための前記Y方向に延在する少なくとも一つのガイドレールを更に備え、前記複数のロータシャフト走行用ローラの各々は、前記ガイドレールの基端側に連結されるマグネットローラである。
【0011】
上記(2)に記載の超音波検査装置によれば、ホルダをY方向に案内するためのガイドレールに連結されたマグネットローラの吸着力によって、ロータシャフトの周面に沿って超音波検査装置を移動させることができ、ロータシャフトの周面からの超音波検査装置の落下するリスクを低減することができる。
【0012】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)に記載の超音波検査装置において、前記複数のロータディスク走行用ローラは、前記第1フレームに設けられる少なくとも一つの非マグネットローラと、前記第2フレームに設けられる少なくとも一つの非マグネットローラとを含む。
【0013】
ロータディスク走行用ローラにマグネットローラを採用すると、マグネットローラから生じた磁粉がマグネットローラの軸受部に入り込み、ローラのスムーズな回転を阻害する場合がある。これに対し、上記(1)に記載の超音波検査装置では、第1フレームのマグネット部及び第2フレームのマグネット部の吸引力によってプローブをロータディスクのディスク面に安定的に押し付けることができるため、上記(3)に記載のように、ロータディスク走行用ローラに非マグネットローラを採用することが可能となる。これにより、ロータディスク走行用ローラが磁粉によってスムーズに回転しなくなるリスクを低減することができ、超音波検査装置の高寿命化を実現することができる。
【0014】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れか1項に記載の超音波検査装置において、前記第1フレームは、前記ロータシャフトの径方向(以下、Y方向と称する。)及び前記ロータシャフトの軸線方向(以下、Z方向と称する。)の各々に直交するX方向において前記プローブに対して一方側に設けられ、前記プローブに沿って前記Y方向に延在し、前記第2フレームは、前記X方向において前記プローブに対して他方側に設けられ、前記プローブに沿って前記Y方向に延在する。
【0015】
翼植込部の検査のためにプローブとして斜角プローブを用いる場合には、検査範囲を広くする観点で、ロータシャフトになるべく近い位置から超音波を発信することが望ましい。このため、Y方向におけるプローブの内側の構成を極力簡素化して、プローブをロータシャフトに近い位置に配置することが望ましい。そこで、上記(4)に記載の超音波検査装置では、上記X方向おける一方側の第1フレームと他方側の第2フレームとが有するマグネット部の吸引力によってプローブをディスク面に押し付けるよう構成している。このため、例えばホルダのうちY方向におけるプローブの内側のフレームを薄くする等の工夫が可能となり、Y方向におけるプローブの内側の構成を簡素化することができる。したがって、プローブをロータシャフトに近い位置に配置することができ、超音波検査装置の広い検査範囲を実現することができる。
【0016】
(5)幾つかの実施形態では、上記(4)に記載の超音波検査装置において、前記第1フレームの前記少なくとも一つのマグネット部は、前記プローブに沿って前記Y方向に配列された複数のマグネット部材を含み、前記第2フレームの前記少なくとも一つのマグネット部は、前記プローブに沿って前記Y方向に配列された複数のマグネット部材を含む。
【0017】
上記(5)に記載の超音波検査装置によれば、第1フレームの長手方向(Y方向)に配列された複数のマグネット部材と第2フレームの長手方向(Y方向)に配列された複数のマグネット部材とによって、ロータディスクのディスク面にプローブを安定的に押し付ける効果を高めることができる。
【0018】
(6)幾つかの実施形態では、上記(5)に記載の超音波検査装置において、前記複数のロータディスク走行用ローラは、前記第1フレームの前記複数のマグネット部材のうち前記Y方向において最も外側に位置するマグネット部材に対して、前記Y方向の外側に間隔を空けて設けられた第1非マグネットローラと、前記第1フレームの前記複数のマグネット部材のうち前記Y方向において最も内側に位置するマグネット部材に対して、前記Y方向の内側に間隔を空けて設けられた第2非マグネットローラと、前記第2フレームの前記複数のマグネット部材のうち前記Y方向において最も外側に位置するマグネット部材に対して、前記Y方向の外側に間隔を空けて設けられた第3非マグネットローラと、前記第2フレームの前記複数のマグネット部材のうち前記Y方向において最も内側に位置するマグネット部材に対して、前記Y方向の内側に間隔を空けて設けられた第4非マグネットローラと、を含む。
【0019】
ロータディスク走行用ローラにマグネットローラを採用すると、マグネットローラから生じた磁粉がマグネットローラの軸受部に入り込み、ローラのスムーズな回転を阻害する場合がある。これに対し、上記(1)に記載の超音波検査装置では、第1フレームのマグネット部及び第2フレームのマグネット部の吸引力によってプローブをロータディスクのディスク面に安定的に押し付けることができるため、上記(6)に記載のように、ロータディスク走行用ローラに非マグネットローラを採用することが可能となる。これにより、ロータディスク走行用ローラが磁粉によってスムーズに回転しなくなるリスクを低減することができ、超音波検査装置の高寿命化を実現することができる。
【0020】
また、上記(6)に記載の超音波検査装置によれば、第1〜第4非マグネットローラの各々は、複数のマグネット部材のうち隣接するマグネット部材に対して間隔を空けて設けられているため、各非マグネットローラが各フレームのマグネット部材によって磁化されにくくなる。これにより、ロータディスク走行用ローラから磁粉が生じるリスク及び該磁粉がローラの軸受部へ侵入するリスクを低減できる。したがって、ロータディスク走行用ローラが磁粉によってスムーズに回転しなくなるリスクを低減することができ、超音波検査装置の高寿命化を実現することができる。
【0021】
(7)幾つかの実施形態では、上記(4)乃至(6)の何れか1項に記載の超音波検査装置において、前記ホルダをX軸の周りに回動可能に支持する第1支持ユニットと、前記第1支持ユニットをY軸の周りに回動可能に支持する第2支持ユニットとを含む2軸ジンバルユニットを更に備える。
【0022】
上記(7)に記載の超音波検査装置によれば、ホルダに収容されたプローブを、ホルダと一体でX軸とY軸の各々の周りを回動させることができる。このため、ロータディスクのディスク面に傾斜部や曲面部があっても、ディスク面に追従してプローブを移動させることができるため、プローブを安定的にディスク面に押し付けることができる。
【0023】
(8)幾つかの実施形態では、上記(7)に記載の超音波検査装置において、前記ホルダを前記Y方向に案内するための前記Y方向に延在する少なくとも一つのガイドレールと、前記ガイドレールに沿って前記Y方向に移動可能なスライダとをさらに備え、前記第2支持ユニットは、前記スライダに連結されるとともに、前記Y方向において前記プローブに対して外側に位置するように構成される。
【0024】
上記(4)に記載したように、翼植込部の検査のためにプローブとして斜角プローブを用いる場合には、検査範囲を広くする観点で、Y方向におけるプローブの内側の構成を簡素化することが望ましい。そこで、上記(8)に記載の超音波検査装置では、2軸ジンバルユニットの上記第2支持ユニットは、スライダに連結されるとともに、Y方向においてプローブに対して外側に位置するように構成されている。これにより、プローブをX軸、Y軸及びZ軸に移動させるためにガイドレールとプローブのホルダとの間に介在する構成を、Y方向におけるプローブの内側に位置させないようなレイアウトを実現することができる。このため、超音波検査装置の広い検査範囲を実現する効果と、上記(7)に記載の効果とを両立することができる。
【0025】
(9)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(8)の何れか1項に記載の超音波検査装置において、前記複数のロータディスク走行用ローラの各々は、前記ホルダにおける前記ディスク面と対向する面に対して、前記Z方向において前記ディスク面側に突出するよう構成される。
【0026】
上記(9)に記載の超音波検査装置によれば、これにより、ロータディスクのディスク面とホルダとの接触を回避し、プローブをディスク面に沿ってスムーズに移動させることができる。
【0027】
(10)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(9)の何れか1項に記載の超音波検査装置において、前記プローブは、前記ホルダにおける前記ディスク面と対向する面に対して、前記Z方向において前記ディスク面側に突出するよう構成される。
【0028】
上記(10)に記載の超音波検査装置によれば、ホルダのマグネット部による吸引力を調節する(例えばホルダにマグネット部材を増設する)ことにより、ロータディスクのディスク面に対するプローブの押しつけ力を調節することが可能となる。
【0029】
(11)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(10)の何れか1項に記載の超音波検査装置において、前記台車は、前記複数のロータシャフト走行用ローラを連結する連結部材を含み、前記連結部材は、前記ホルダを含む台車本体に対して着脱可能に構成される。
【0030】
上記(11)に記載の超音波検査装置によれば、ロータシャフトの径に応じて複数のロータシャフト走行用ローラ及び連結部材からなる走行ユニットと一体で交換することが可能となり、該交換によって、ロータシャフト走行用ローラ同士の間隔をロータシャフトの径に応じた最適な間隔にすることができる。
【0031】
(12)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(11)の何れか1項に記載の超音波検査装置において、前記台車は、前記複数のロータシャフト走行用ローラを連結する連結部材を含み、前記連結部材は、フレキシブル材で構成される。
【0032】
上記(12)に記載の超音波検査装置によれば、ロータシャフトの周面に沿ってフレキシブル材で構成された連結部材を変形させることによって、ロータシャフトの径が互いに異なる複数のタービンロータに対して超音波検査装置を適用することが可能となる。
【0033】
(13)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(12)の何れか1項に記載の超音波検査装置において、前記台車は、前記複数のロータシャフト走行用ローラとは別の増設用のロータシャフト走行用ローラを含む増設ユニットを接続するための接続部を含む。
【0034】
上記(13)に記載の超音波検査装置によれば、増設ユニットの取り付け個数を調節することによって、ロータシャフトの径が互いに異なる複数のタービンロータに対して超音波検査装置を適用することが可能となる。
【0035】
(14)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(13)の何れか1項に記載の超音波検査装置において、前記台車に接続されるとともに前記台車を前記ロータシャフトの周方向に引っ張るためのワイヤーと、前記ワイヤーの変位量を計測するためのエンコーダと、を更に備える。
【0036】
上記(14)に記載の超音波検査装置によれば、ワイヤーを周方向に引っ張ることによって台車をロータシャフトの周りに周回させれば、エンコーダによって計測されたワイヤーの変位量から台車におけるロータシャフトの周りの移動距離を測定することができる。これにより、ロータシャフトの周方向における全周に亘って、ロータディスクの翼植込部を容易に精度良く検査することができる。
【0037】
(15)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(14)の何れか1項に記載の超音波検査装置において、前記複数のロータディスク走行用ローラの各々は非マグネットローラであり、JISB0401で規定される呼び径dに対する軸の公差域クラスg6の最小公差をT1とし、JISB0401で規定される呼び径Dに対する穴の公差域クラスH7の最大公差をT2としたと場合に、前記複数のロータディスク走行用ローラの軸受隙間Sは、S>{(D+T2)−(d−T1)}/2の関係を満たす。
【0038】
上記(1)に記載の超音波検査装置では、第1フレームのマグネット部及び第2フレームのマグネット部の吸引力によってプローブをロータディスクのディスク面に安定的に押し付けることができるため、上記(15)に記載のように、ロータディスク走行用ローラに非マグネットローラを採用することが可能となる。
【0039】
ここで、仮に、ロータディスク走行用ローラにマグネットローラを採用した場合、ロータディスク走行用ローラ自体がロータディスクのディスク面に吸着するため、ロータディスクのディスク径に応じてディスク面(特に傾斜や曲面があるディスク面)に追従して走行することが困難となりやすい。
【0040】
この点、上記(15)に記載の超音波検査装置では、ロータディスク走行用ローラに非マグネットローラを採用した上で、S>{(D+T2)―(d―T1)}/2の関係を満たすことにより、ローラの進行方向を柔軟に変化させることが可能となり、ロータディスクのディスク径に応じてディスク面に追従して走行することができる。なお、上記(15)において、「軸受隙間S」とは、ロータディスク走行用ローラの軸と軸受穴との隙間を意味し、ロータディスク走行用ローラの軸の外径をR1とし、ロータディスク走行用ローラの軸受穴の孔径をR2とすると、S=(R2−R1)/2によって規定される。