特許第6488178号(P6488178)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱日立パワーシステムズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6488178-超音波検査装置 図000002
  • 特許6488178-超音波検査装置 図000003
  • 特許6488178-超音波検査装置 図000004
  • 特許6488178-超音波検査装置 図000005
  • 特許6488178-超音波検査装置 図000006
  • 特許6488178-超音波検査装置 図000007
  • 特許6488178-超音波検査装置 図000008
  • 特許6488178-超音波検査装置 図000009
  • 特許6488178-超音波検査装置 図000010
  • 特許6488178-超音波検査装置 図000011
  • 特許6488178-超音波検査装置 図000012
  • 特許6488178-超音波検査装置 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6488178
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】超音波検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/265 20060101AFI20190311BHJP
【FI】
   G01N29/265
【請求項の数】15
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-89077(P2015-89077)
(22)【出願日】2015年4月24日
(65)【公開番号】特開2016-206049(P2016-206049A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2018年1月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】上林 正和
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼本 直樹
(72)【発明者】
【氏名】木村 是
(72)【発明者】
【氏名】中井 正義
【審査官】 嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−163805(JP,A)
【文献】 特開平01−119759(JP,A)
【文献】 特開平03−026960(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/137706(WO,A1)
【文献】 特開2004−294128(JP,A)
【文献】 特開2000−121611(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0250860(US,A1)
【文献】 特開平05−256829(JP,A)
【文献】 特開平07−174739(JP,A)
【文献】 特開平07−244024(JP,A)
【文献】 特開平09−189690(JP,A)
【文献】 特開平10−148630(JP,A)
【文献】 特開2000−221178(JP,A)
【文献】 特開2009−186446(JP,A)
【文献】 特開2011−209050(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00−29/52
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンブレードの翼根部が植え込まれているロータディスクの翼植込部を超音波により検査するための超音波検査装置であって、
プローブと、前記プローブを前記ロータディスクに対して相対移動させるための台車と、を備え、
前記台車は、前記ロータディスクのディスク面を走行するための複数のロータディスク走行用ローラと、前記ロータディスクと同心に設けられたロータシャフトの周面を走行するための複数のロータシャフト走行用ローラと、前記プローブを前記ディスク面に対向した状態で保持するホルダと、を含み、
前記ホルダは、前記プローブに沿って延在する第1フレームと、前記プローブに沿って延在する第2フレームであって前記第1フレームとの間に前記プローブが位置するように設けられた第2フレームと、を有し、
前記第1フレーム及び前記第2フレームの各々は、所定の磁気吸引力を有する少なくとも一つのマグネット部を有し、
前記ホルダは、前記複数のロータディスク走行用ローラおよび前記複数のロータシャフト走行用ローラに対する前記ロータシャフトの軸線方向における相対位置が不変に構成されている
超音波検査装置。
【請求項2】
前記ホルダを前記ロータシャフトの径方向(以下、Y方向と称する)に案内するための前記Y方向に延在する少なくとも一つのガイドレールを更に備え、
前記複数のロータシャフト走行用ローラの各々は、前記ガイドレールの基端側に連結されるマグネットローラである請求項1に記載の超音波検査装置。
【請求項3】
タービンブレードの翼根部が植え込まれているロータディスクの翼植込部を超音波により検査するための超音波検査装置であって、
プローブと、前記プローブを前記ロータディスクに対して相対移動させるための台車と、を備え、
前記台車は、前記ロータディスクのディスク面を走行するための複数のロータディスク走行用ローラと、前記ロータディスクと同心に設けられたロータシャフトの周面を走行するための複数のロータシャフト走行用ローラと、前記プローブを前記ディスク面に対向した状態で保持するホルダと、を含み、
前記ホルダは、前記プローブに沿って延在する第1フレームと、前記プローブに沿って延在する第2フレームであって前記第1フレームとの間に前記プローブが位置するように設けられた第2フレームと、を有し、
前記第1フレーム及び前記第2フレームの各々は、少なくとも一つのマグネット部を有し、
前記複数のロータディスク走行用ローラは、前記第1フレームに設けられる少なくとも一つの非マグネットローラと、前記第2フレームに設けられる少なくとも一つの非マグネットローラとを含む
超音波検査装置。
【請求項4】
前記第1フレームは、前記ロータシャフトの径方向(以下、Y方向と称する。)及び前記ロータシャフトの軸線方向(以下、Z方向と称する。)の各々に直交するX方向において前記プローブに対して一方側に設けられ、前記プローブに沿って前記Y方向に延在し、
前記第2フレームは、前記X方向において前記プローブに対して他方側に設けられ、前記プローブに沿って前記Y方向に延在する請求項1乃至3の何れか1項に記載の超音波検査装置。
【請求項5】
前記第1フレームの前記少なくとも一つのマグネット部は、前記プローブに沿って前記Y方向に配列された複数のマグネット部材を含み、
前記第2フレームの前記少なくとも一つのマグネット部は、前記プローブに沿って前記Y方向に配列された複数のマグネット部材を含む請求項4に記載の超音波検査装置。
【請求項6】
タービンブレードの翼根部が植え込まれているロータディスクの翼植込部を超音波により検査するための超音波検査装置であって、
プローブと、前記プローブを前記ロータディスクに対して相対移動させるための台車と、を備え、
前記台車は、前記ロータディスクのディスク面を走行するための複数のロータディスク走行用ローラと、前記ロータディスクと同心に設けられたロータシャフトの周面を走行するための複数のロータシャフト走行用ローラと、前記プローブを前記ディスク面に対向した状態で保持するホルダと、を含み、
前記ホルダは、前記プローブに沿って延在する第1フレームと、前記プローブに沿って延在する第2フレームであって前記第1フレームとの間に前記プローブが位置するように設けられた第2フレームと、を有し、
前記第1フレーム及び前記第2フレームの各々は、少なくとも一つのマグネット部を有し、
前記第1フレームは、前記ロータシャフトの径方向(以下、Y方向と称する。)及び前記ロータシャフトの軸線方向(以下、Z方向と称する。)の各々に直交するX方向において前記プローブに対して一方側に設けられ、前記プローブに沿って前記Y方向に延在し、
前記第2フレームは、前記X方向において前記プローブに対して他方側に設けられ、前記プローブに沿って前記Y方向に延在し、
前記第1フレームの前記少なくとも一つのマグネット部は、前記プローブに沿って前記Y方向に配列された複数のマグネット部材を含み、
前記第2フレームの前記少なくとも一つのマグネット部は、前記プローブに沿って前記Y方向に配列された複数のマグネット部材を含み、
前記複数のロータディスク走行用ローラは、
前記第1フレームの前記複数のマグネット部材のうち前記Y方向において最も外側に位置するマグネット部材に対して、前記Y方向の外側に間隔を空けて設けられた第1非マグネットローラと、
前記第1フレームの前記複数のマグネット部材のうち前記Y方向において最も内側に位置するマグネット部材に対して、前記Y方向の内側に間隔を空けて設けられた第2非マグネットローラと、
前記第2フレームの前記複数のマグネット部材のうち前記Y方向において最も外側に位置するマグネット部材に対して、前記Y方向の外側に間隔を空けて設けられた第3非マグネットローラと、
前記第2フレームの前記複数のマグネット部材のうち前記Y方向において最も内側に位置するマグネット部材に対して、前記Y方向の内側に間隔を空けて設けられた第4非マグネットローラと、
を含む
超音波検査装置。
【請求項7】
前記ホルダをX軸の周りに回動可能に支持する第1支持ユニットと、前記第1支持ユニットをY軸の周りに回動可能に支持する第2支持ユニットとを含む2軸ジンバルユニットを更に備える請求項4乃至6の何れか1項に記載の超音波検査装置。
【請求項8】
タービンブレードの翼根部が植え込まれているロータディスクの翼植込部を超音波により検査するための超音波検査装置であって、
プローブと、前記プローブを前記ロータディスクに対して相対移動させるための台車と、を備え、
前記台車は、前記ロータディスクのディスク面を走行するための複数のロータディスク走行用ローラと、前記ロータディスクと同心に設けられたロータシャフトの周面を走行するための複数のロータシャフト走行用ローラと、前記プローブを前記ディスク面に対向した状態で保持するホルダと、を含み、
前記ホルダは、前記プローブに沿って延在する第1フレームと、前記プローブに沿って延在する第2フレームであって前記第1フレームとの間に前記プローブが位置するように設けられた第2フレームと、を有し、
前記第1フレーム及び前記第2フレームの各々は、少なくとも一つのマグネット部を有し、
前記第1フレームは、前記ロータシャフトの径方向(以下、Y方向と称する。)及び前記ロータシャフトの軸線方向(以下、Z方向と称する。)の各々に直交するX方向において前記プローブに対して一方側に設けられ、前記プローブに沿って前記Y方向に延在し、
前記第2フレームは、前記X方向において前記プローブに対して他方側に設けられ、前記プローブに沿って前記Y方向に延在し、
前記ホルダをX軸の周りに回動可能に支持する第1支持ユニットと、前記第1支持ユニットをY軸の周りに回動可能に支持する第2支持ユニットとを含む2軸ジンバルユニットを更に備え、
前記ホルダを前記Y方向に案内するための前記Y方向に延在する少なくとも一つのガイドレールと、前記ガイドレールに沿って前記Y方向に移動可能なスライダとをさらに備え、
前記第2支持ユニットは、前記スライダに連結されるとともに、前記Y方向において前記プローブに対して外側に位置するように構成される
超音波検査装置。
【請求項9】
前記複数のロータディスク走行用ローラの各々は、前記ホルダにおける前記ディスク面と対向する面に対して、前記Z方向において前記ディスク面側に突出するよう構成される請求項1乃至8の何れか1項に記載の超音波検査装置。
【請求項10】
前記プローブは、前記ホルダにおける前記ディスク面と対向する面に対して、前記Z方向において前記ディスク面側に突出するよう構成される請求項1乃至9の何れか1項に記載の超音波検査装置。
【請求項11】
前記台車は、前記複数のロータシャフト走行用ローラを連結する連結部材を含み、
前記連結部材は、前記ホルダを含む台車本体に対して着脱可能に構成される請求項1乃至10の何れか1項に記載の超音波検査装置。
【請求項12】
前記台車は、前記複数のロータシャフト走行用ローラを連結する連結部材を含み、
前記連結部材は、フレキシブル材で構成される請求項1乃至11の何れか1項に記載の超音波検査装置。
【請求項13】
前記台車は、前記複数のロータシャフト走行用ローラとは別の増設用のロータシャフト走行用ローラを含む増設ユニットを接続するための接続部を含む請求項1乃至12の何れか1項に記載の超音波検査装置。
【請求項14】
前記台車に接続されるとともに前記台車を前記ロータシャフトの周方向に引っ張るためのワイヤーと、前記ワイヤーの変位量を計測するためのエンコーダと、を更に備える請求項1乃至13の何れか1項に記載の超音波検査装置。
【請求項15】
タービンブレードの翼根部が植え込まれているロータディスクの翼植込部を超音波により検査するための超音波検査装置であって、
プローブと、前記プローブを前記ロータディスクに対して相対移動させるための台車と、を備え、
前記台車は、前記ロータディスクのディスク面を走行するための複数のロータディスク走行用ローラと、前記ロータディスクと同心に設けられたロータシャフトの周面を走行するための複数のロータシャフト走行用ローラと、前記プローブを前記ディスク面に対向した状態で保持するホルダと、を含み、
前記ホルダは、前記プローブに沿って延在する第1フレームと、前記プローブに沿って延在する第2フレームであって前記第1フレームとの間に前記プローブが位置するように設けられた第2フレームと、を有し、
前記第1フレーム及び前記第2フレームの各々は、少なくとも一つのマグネット部を有し、
前記複数のロータディスク走行用ローラの各々は非マグネットローラであり、
JISB0401で規定される呼び径dに対する軸の公差域クラスg6の最小公差をT1とし、JISB0401で規定される呼び径Dに対する穴の公差域クラスH7の最大公差をT2としたと場合に、
前記複数のロータディスク走行用ローラの軸受隙間Sは、S>{(D+T2)―(d―T1)}/2の關係を満たす
超音波検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、超音波検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば発電プラントにおける蒸気タービンのタービンロータは、高い温度条件で運転されるために、長時間使用されると、応力を受ける部位に応力腐食割れが発生することがある。この応力は、タービンブレードの翼根部が植え込まれているロータディスクの翼植込部(溝部)に作用するため、翼植込部はタービンロータの余寿命を評価する上で重要な部位である。しかしながら、この翼植込部にはタービンブレードの翼根部が植え込まれているために、表面から見えない。そこで、従来から超音波を利用した応力腐食割れの非破壊検査方法が採用されてきた。
【0003】
例えば、特許文献1には、ロータシャフトの周面を走行するロータシャフト走行用のマグネットローラと、ロータディスクのディスク面を走行するロータディスク走行用のマグネットローラとを有する台車を備えた超音波検査装置が開示されている。この超音波検査装置は、ロータシャフト走行用のマグネットローラをロータシャフトの周面に吸着させるとともにロータディスク走行用のマグネットローラをロータディスクのディスク面に吸着させた状態で、台車をタービンロータの周方向に移動させながら超音波によって翼植込部を検査するよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2680130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、超音波による翼植込部の検査を高精度化するために、プローブが大型化する傾向にある。特許文献1に記載されるようにロータディスク走行用のマグネットローラをロータディスクのディスク面に吸着させる構成の場合、大型のプローブをロータディスクのディスク面に安定的に押し付けるためには、例えばロータディスク走行用のマグネットローラを大型化する等の工夫が考えられる。
【0006】
しかしながら、ロータディスク走行用のマグネットローラを大型化すると、超音波検査装置自体が大型化するため、隣接するロータディスク同士のロータシャフト軸方向の間隔が狭い場合に、隣接するロータディスク同士の間に超音波検査装置を配置することが困難となりやすい。
【0007】
本発明は、上述したような従来の課題に鑑みなされたものであって、ロータディスクのディスク面に安定的にプローブを押し付けるとともに、ロータシャフトの軸方向における装置構成の大型化を抑制することを可能とする超音波検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る超音波検査装置は、タービンブレードの翼根部が植え込まれているロータディスクの翼植込部を超音波により検査するための超音波検査装置であって、プローブと、前記プローブを前記ロータディスクに対して相対移動させるための台車と、を備え、前記台車は、前記ロータディスクのディスク面を走行するための複数のロータディスク走行用ローラと、前記ロータディスクと同心に設けられたロータシャフトの周面を走行するための複数のロータシャフト走行用ローラと、前記プローブを前記ディスク面に対向した状態で保持するホルダと、を含み、前記ホルダは、前記プローブ及び前記ディスク面に沿って延在する第1フレームと、前記プローブ及び前記ディスク面に沿って延在する第2フレームであって前記第1フレームとの間に前記プローブが位置するように設けられた第2フレームと、を有し、前記第1フレーム及び前記第2フレームの各々は、少なくとも一つのマグネット部を有する。
【0009】
上記(1)に記載の超音波検査装置によれば、ロータディスクのディスク面に対向するプローブの一方側に位置する第1フレームのマグネット部と、他方側に位置する第2フレームのマグネット部とがロータディスクのディスク面側に吸引される。このため、プローブの両側で生じるマグネット部の吸引力によって、ホルダに保持されたプローブをディスク面に安定的に押し付けることができる。また、複数のロータディスク走行用ローラに吸着力の強い大型のマグネットローラを採用せずとも、第1フレームのマグネット部及び第2フレームのマグネット部の吸引力によってプローブをロータディスクのディスク面に安定的に押し付けることができるため、ロータシャフトの軸方向における超音波検査装置の大型化を抑制することができる。
【0010】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載の超音波検査装置において、前記ホルダをロータシャフトの径方向(以下、Y方向と称する)に案内するための前記Y方向に延在する少なくとも一つのガイドレールを更に備え、前記複数のロータシャフト走行用ローラの各々は、前記ガイドレールの基端側に連結されるマグネットローラである。
【0011】
上記(2)に記載の超音波検査装置によれば、ホルダをY方向に案内するためのガイドレールに連結されたマグネットローラの吸着力によって、ロータシャフトの周面に沿って超音波検査装置を移動させることができ、ロータシャフトの周面からの超音波検査装置の落下するリスクを低減することができる。
【0012】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)に記載の超音波検査装置において、前記複数のロータディスク走行用ローラは、前記第1フレームに設けられる少なくとも一つの非マグネットローラと、前記第2フレームに設けられる少なくとも一つの非マグネットローラとを含む。
【0013】
ロータディスク走行用ローラにマグネットローラを採用すると、マグネットローラから生じた磁粉がマグネットローラの軸受部に入り込み、ローラのスムーズな回転を阻害する場合がある。これに対し、上記(1)に記載の超音波検査装置では、第1フレームのマグネット部及び第2フレームのマグネット部の吸引力によってプローブをロータディスクのディスク面に安定的に押し付けることができるため、上記(3)に記載のように、ロータディスク走行用ローラに非マグネットローラを採用することが可能となる。これにより、ロータディスク走行用ローラが磁粉によってスムーズに回転しなくなるリスクを低減することができ、超音波検査装置の高寿命化を実現することができる。
【0014】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れか1項に記載の超音波検査装置において、前記第1フレームは、前記ロータシャフトの径方向(以下、Y方向と称する。)及び前記ロータシャフトの軸線方向(以下、Z方向と称する。)の各々に直交するX方向において前記プローブに対して一方側に設けられ、前記プローブに沿って前記Y方向に延在し、前記第2フレームは、前記X方向において前記プローブに対して他方側に設けられ、前記プローブに沿って前記Y方向に延在する。
【0015】
翼植込部の検査のためにプローブとして斜角プローブを用いる場合には、検査範囲を広くする観点で、ロータシャフトになるべく近い位置から超音波を発信することが望ましい。このため、Y方向におけるプローブの内側の構成を極力簡素化して、プローブをロータシャフトに近い位置に配置することが望ましい。そこで、上記(4)に記載の超音波検査装置では、上記X方向おける一方側の第1フレームと他方側の第2フレームとが有するマグネット部の吸引力によってプローブをディスク面に押し付けるよう構成している。このため、例えばホルダのうちY方向におけるプローブの内側のフレームを薄くする等の工夫が可能となり、Y方向におけるプローブの内側の構成を簡素化することができる。したがって、プローブをロータシャフトに近い位置に配置することができ、超音波検査装置の広い検査範囲を実現することができる。
【0016】
(5)幾つかの実施形態では、上記(4)に記載の超音波検査装置において、前記第1フレームの前記少なくとも一つのマグネット部は、前記プローブに沿って前記Y方向に配列された複数のマグネット部材を含み、前記第2フレームの前記少なくとも一つのマグネット部は、前記プローブに沿って前記Y方向に配列された複数のマグネット部材を含む。
【0017】
上記(5)に記載の超音波検査装置によれば、第1フレームの長手方向(Y方向)に配列された複数のマグネット部材と第2フレームの長手方向(Y方向)に配列された複数のマグネット部材とによって、ロータディスクのディスク面にプローブを安定的に押し付ける効果を高めることができる。
【0018】
(6)幾つかの実施形態では、上記(5)に記載の超音波検査装置において、前記複数のロータディスク走行用ローラは、前記第1フレームの前記複数のマグネット部材のうち前記Y方向において最も外側に位置するマグネット部材に対して、前記Y方向の外側に間隔を空けて設けられた第1非マグネットローラと、前記第1フレームの前記複数のマグネット部材のうち前記Y方向において最も内側に位置するマグネット部材に対して、前記Y方向の内側に間隔を空けて設けられた第2非マグネットローラと、前記第2フレームの前記複数のマグネット部材のうち前記Y方向において最も外側に位置するマグネット部材に対して、前記Y方向の外側に間隔を空けて設けられた第3非マグネットローラと、前記第2フレームの前記複数のマグネット部材のうち前記Y方向において最も内側に位置するマグネット部材に対して、前記Y方向の内側に間隔を空けて設けられた第4非マグネットローラと、を含む。
【0019】
ロータディスク走行用ローラにマグネットローラを採用すると、マグネットローラから生じた磁粉がマグネットローラの軸受部に入り込み、ローラのスムーズな回転を阻害する場合がある。これに対し、上記(1)に記載の超音波検査装置では、第1フレームのマグネット部及び第2フレームのマグネット部の吸引力によってプローブをロータディスクのディスク面に安定的に押し付けることができるため、上記(6)に記載のように、ロータディスク走行用ローラに非マグネットローラを採用することが可能となる。これにより、ロータディスク走行用ローラが磁粉によってスムーズに回転しなくなるリスクを低減することができ、超音波検査装置の高寿命化を実現することができる。
【0020】
また、上記(6)に記載の超音波検査装置によれば、第1〜第4非マグネットローラの各々は、複数のマグネット部材のうち隣接するマグネット部材に対して間隔を空けて設けられているため、各非マグネットローラが各フレームのマグネット部材によって磁化されにくくなる。これにより、ロータディスク走行用ローラから磁粉が生じるリスク及び該磁粉がローラの軸受部へ侵入するリスクを低減できる。したがって、ロータディスク走行用ローラが磁粉によってスムーズに回転しなくなるリスクを低減することができ、超音波検査装置の高寿命化を実現することができる。
【0021】
(7)幾つかの実施形態では、上記(4)乃至(6)の何れか1項に記載の超音波検査装置において、前記ホルダをX軸の周りに回動可能に支持する第1支持ユニットと、前記第1支持ユニットをY軸の周りに回動可能に支持する第2支持ユニットとを含む2軸ジンバルユニットを更に備える。
【0022】
上記(7)に記載の超音波検査装置によれば、ホルダに収容されたプローブを、ホルダと一体でX軸とY軸の各々の周りを回動させることができる。このため、ロータディスクのディスク面に傾斜部や曲面部があっても、ディスク面に追従してプローブを移動させることができるため、プローブを安定的にディスク面に押し付けることができる。
【0023】
(8)幾つかの実施形態では、上記(7)に記載の超音波検査装置において、前記ホルダを前記Y方向に案内するための前記Y方向に延在する少なくとも一つのガイドレールと、前記ガイドレールに沿って前記Y方向に移動可能なスライダとをさらに備え、前記第2支持ユニットは、前記スライダに連結されるとともに、前記Y方向において前記プローブに対して外側に位置するように構成される。
【0024】
上記(4)に記載したように、翼植込部の検査のためにプローブとして斜角プローブを用いる場合には、検査範囲を広くする観点で、Y方向におけるプローブの内側の構成を簡素化することが望ましい。そこで、上記(8)に記載の超音波検査装置では、2軸ジンバルユニットの上記第2支持ユニットは、スライダに連結されるとともに、Y方向においてプローブに対して外側に位置するように構成されている。これにより、プローブをX軸、Y軸及びZ軸に移動させるためにガイドレールとプローブのホルダとの間に介在する構成を、Y方向におけるプローブの内側に位置させないようなレイアウトを実現することができる。このため、超音波検査装置の広い検査範囲を実現する効果と、上記(7)に記載の効果とを両立することができる。
【0025】
(9)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(8)の何れか1項に記載の超音波検査装置において、前記複数のロータディスク走行用ローラの各々は、前記ホルダにおける前記ディスク面と対向する面に対して、前記Z方向において前記ディスク面側に突出するよう構成される。
【0026】
上記(9)に記載の超音波検査装置によれば、これにより、ロータディスクのディスク面とホルダとの接触を回避し、プローブをディスク面に沿ってスムーズに移動させることができる。
【0027】
(10)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(9)の何れか1項に記載の超音波検査装置において、前記プローブは、前記ホルダにおける前記ディスク面と対向する面に対して、前記Z方向において前記ディスク面側に突出するよう構成される。
【0028】
上記(10)に記載の超音波検査装置によれば、ホルダのマグネット部による吸引力を調節する(例えばホルダにマグネット部材を増設する)ことにより、ロータディスクのディスク面に対するプローブの押しつけ力を調節することが可能となる。
【0029】
(11)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(10)の何れか1項に記載の超音波検査装置において、前記台車は、前記複数のロータシャフト走行用ローラを連結する連結部材を含み、前記連結部材は、前記ホルダを含む台車本体に対して着脱可能に構成される。
【0030】
上記(11)に記載の超音波検査装置によれば、ロータシャフトの径に応じて複数のロータシャフト走行用ローラ及び連結部材からなる走行ユニットと一体で交換することが可能となり、該交換によって、ロータシャフト走行用ローラ同士の間隔をロータシャフトの径に応じた最適な間隔にすることができる。
【0031】
(12)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(11)の何れか1項に記載の超音波検査装置において、前記台車は、前記複数のロータシャフト走行用ローラを連結する連結部材を含み、前記連結部材は、フレキシブル材で構成される。
【0032】
上記(12)に記載の超音波検査装置によれば、ロータシャフトの周面に沿ってフレキシブル材で構成された連結部材を変形させることによって、ロータシャフトの径が互いに異なる複数のタービンロータに対して超音波検査装置を適用することが可能となる。
【0033】
(13)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(12)の何れか1項に記載の超音波検査装置において、前記台車は、前記複数のロータシャフト走行用ローラとは別の増設用のロータシャフト走行用ローラを含む増設ユニットを接続するための接続部を含む。
【0034】
上記(13)に記載の超音波検査装置によれば、増設ユニットの取り付け個数を調節することによって、ロータシャフトの径が互いに異なる複数のタービンロータに対して超音波検査装置を適用することが可能となる。
【0035】
(14)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(13)の何れか1項に記載の超音波検査装置において、前記台車に接続されるとともに前記台車を前記ロータシャフトの周方向に引っ張るためのワイヤーと、前記ワイヤーの変位量を計測するためのエンコーダと、を更に備える。
【0036】
上記(14)に記載の超音波検査装置によれば、ワイヤーを周方向に引っ張ることによって台車をロータシャフトの周りに周回させれば、エンコーダによって計測されたワイヤーの変位量から台車におけるロータシャフトの周りの移動距離を測定することができる。これにより、ロータシャフトの周方向における全周に亘って、ロータディスクの翼植込部を容易に精度良く検査することができる。
【0037】
(15)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(14)の何れか1項に記載の超音波検査装置において、前記複数のロータディスク走行用ローラの各々は非マグネットローラであり、JISB0401で規定される呼び径dに対する軸の公差域クラスg6の最小公差をT1とし、JISB0401で規定される呼び径Dに対する穴の公差域クラスH7の最大公差をT2としたと場合に、前記複数のロータディスク走行用ローラの軸受隙間Sは、S>{(D+T2)−(d−T1)}/2の関係を満たす。
【0038】
上記(1)に記載の超音波検査装置では、第1フレームのマグネット部及び第2フレームのマグネット部の吸引力によってプローブをロータディスクのディスク面に安定的に押し付けることができるため、上記(15)に記載のように、ロータディスク走行用ローラに非マグネットローラを採用することが可能となる。
【0039】
ここで、仮に、ロータディスク走行用ローラにマグネットローラを採用した場合、ロータディスク走行用ローラ自体がロータディスクのディスク面に吸着するため、ロータディスクのディスク径に応じてディスク面(特に傾斜や曲面があるディスク面)に追従して走行することが困難となりやすい。
【0040】
この点、上記(15)に記載の超音波検査装置では、ロータディスク走行用ローラに非マグネットローラを採用した上で、S>{(D+T2)―(d―T1)}/2の関係を満たすことにより、ローラの進行方向を柔軟に変化させることが可能となり、ロータディスクのディスク径に応じてディスク面に追従して走行することができる。なお、上記(15)において、「軸受隙間S」とは、ロータディスク走行用ローラの軸と軸受穴との隙間を意味し、ロータディスク走行用ローラの軸の外径をR1とし、ロータディスク走行用ローラの軸受穴の孔径をR2とすると、S=(R2−R1)/2によって規定される。
【発明の効果】
【0041】
本発明の少なくとも一つの実施形態によれば、ロータディスクのディスク面に安定的にプローブを押し付けるとともに、ロータシャフトの軸方向における装置構成の大型化を抑制することを可能とする超音波検査装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】一実施形態に係る超音波検査装置の構成を示す斜視図である。
図2図1に示した超音波検査装置のプローブ付近の拡大斜視図である。
図3図1に示した超音波検査装置のプローブ付近をディスク面側から見た拡大斜視図である。
図4図1に示した超音波検査装置におけるプローブ付近の拡大側面図である。
図5】ホルダアセンブリの構成を示す斜視図である。
図6】ホルダの構成を示す斜視図である。
図7】ホルダの内部構成を示す斜視図である。
図8】ホルダの内部構成を示す斜視図である。
図9】ロータシャフトの径に応じて走行ユニットを交換可能であることを説明するための図である。
図10】フレキシブル材で構成された連結部材を説明するための図である。
図11】ロータシャフト走行用ローラを増設するための増設ユニットについて説明するための図である。
図12】台車の移動距離を測定する構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0044】
図1は、一実施形態に係る超音波検査装置100の構成を示す斜視図である。
【0045】
一実施形態では、図1に示すように、超音波検査装置100は、タービンブレード2の翼根部4が植え込まれているロータディスク6の翼植込部8(溝部)を超音波により検査するための超音波検査装置である。タービンブレード2は、例えば蒸気タービンのタービンブレードである。
【0046】
図1に示す超音波検査装置100は、プローブ10と、プローブ10をロータディスク6に沿ってロータディスク6の周方向に相対移動させるための台車12と、を備える。なお、ロータディスク6に対するプローブ10の相対移動は、例えば手動で台車12を移動させる形態であってもよいし、不図示のモータ等の動力源からの動力を利用して台車12を移動させる形態であってもよいし、台車12の位置を固定した状態でロータディスク6を含むタービンロータ5を回転させる形態であってもよい。
【0047】
図2は、図1に示した超音波検査装置100のプローブ10付近の拡大斜視図である。図3は、図1に示した超音波検査装置100のプローブ10付近をロータディスク6のディスク面6a側から見た拡大斜視図である。図4は、図1に示した超音波検査装置100におけるプローブ10付近の拡大側面図である。
【0048】
図2図4に示すように、台車12は、ロータディスク6のディスク面6a(図2参照)を走行するための複数のロータディスク走行用ローラ14(図2及び図3参照)と、ロータディスク6と同心に設けられたロータシャフト16の周面16a(図2参照)を走行するための複数のロータシャフト走行用ローラ18(図2図4参照)と、プローブ10をディスク面6aに対向した状態で保持するホルダ20を含むホルダアセンブリ22(図2図4参照)と、ホルダ20をロータシャフト16の径方向(以下、Y方向と称する)に案内するための少なくとも一つのガイドレール24(図2図4参照。図示する形態では2本のガイドレール24)と、を含む。
【0049】
ロータシャフト走行用ローラ18の各々はマグネットローラであり、ガイドレール24の基端側(Y方向内側)に連結されている。ロータディスク走行用ローラ14の各々は、非マグネットローラ(磁力によるロータディスク6に対する吸引力を有しないローラ)であり、ホルダ20に保持されている。なお、ロータシャフト走行用ローラ18の各々は、ローラ全体がマグネット部材で構成されていても良いし、ローラの一部がマグネット部材で構成されていてもよい。また、ロータシャフト走行用ローラ18の各々は、超音波検査装置100がロータシャフト16から落下しない程度のロータシャフト16に対する吸引力(磁力)を有することが望ましい。
【0050】
上記構成によれば、ホルダ20をY方向に案内するためのガイドレール24に連結されたマグネットローラであるロータシャフト走行用ローラ18の吸着力によって、ロータシャフト16の周面16aに沿って超音波検査装置100を移動させることができ、ロータシャフト16の周面16aから超音波検査装置100が落下するリスクを低減することができる。
【0051】
図4に示すように、複数のロータディスク走行用ローラ14の各々は、ホルダ20におけるディスク面6aと対向する面20aよりも、ロータシャフト16の軸方向(以下、Z方向と称する)においてディスク面6a側に突出するよう構成されている。また、プローブ10は、ホルダ20におけるディスク面6aと対向する面20aよりもZ方向においてディスク面6a側に突出するよう構成されている。これにより、ホルダ20とディスク面6aとの接触を回避し、超音波検査装置100をディスク面6aに沿ってスムーズに移動させることができる。
【0052】
図2図4において、ガイドレール24はY方向に沿って延設されている。ホルダアセンブリ22は、ガイドレール24に沿ってY方向に移動可能なスライダ26を備えており、プローブ10のY方向位置は、ガイドレール24に対するスライダ26のY方向の取り付け位置をY軸調整ノブ28によって変更することにより調整される。また、プローブ10のZ方向位置は、ガイドレール24に対するホルダ20のZ方向位置をZ軸調整ノブ30(図3及び図4参照)によって変更することにより調整される。
【0053】
図5は、ホルダアセンブリ22の構成を示す斜視図である。図5に示すように、ホルダアセンブリ22は、ホルダ20を互いに直交する2軸の周りに回動可能に支持する2軸ジンバルユニット32を含む。Y方向とZ方向の各々に直交する方向をX方向とすると、2軸ジンバルユニット32は、ホルダ20をX軸とY軸の各々の周りを回動可能に支持している。2軸ジンバルユニット32は、ホルダ20をX軸の周りに回動可能に支持する第1支持ユニット34と、第1支持ユニット34をY軸の周りに回動可能に支持する第2支持ユニット36とを含む。第2支持ユニット36は、スライダ26に連結されるとともに、Y方向においてプローブ10に対して外側に位置するように構成される。
【0054】
第1支持ユニット34は、ホルダ20をX軸の周りに回動可能に支持する2本の回動アーム40,42と、回動アーム40及び回動アーム42を連結する連結フレーム38とを含む。ホルダ20は、X方向において回動アーム40及び回動アーム42の間に設けられる。回動アーム40は、Y方向一端側においてホルダ20をX軸の周りに回動可能に支持し、Y方向他端側において連結フレーム38にX軸の周りに回動可能に支持される。回動アーム42は、Y方向一端側においてホルダ20をX軸の周りに回動可能に支持し、Y方向他端側において連結フレーム38にX軸の周りに回動可能に支持される。
【0055】
上記構成によれば、ホルダ20に収容されたプローブ10を、ホルダ20と一体でX軸とY軸の各々の周りを回動させることができる。このため、ロータディスク6のディスク面6a(図2参照)に傾斜部や曲面部があっても、ディスク面6aに追従してプローブ10を移動させることができるため、プローブ10を安定的にディスク面6aに押し付けることができる。
【0056】
図6は、ホルダ20の構成を示す斜視図である。図6に示すように、ホルダ20は、プローブ10を囲うように、サイドフレーム44、サイドフレーム46、フロントフレーム48及びバックフレーム50を有する。サイドフレーム44及びサイドフレーム46の各々は、プローブ10に沿ってY方向に延在しており、サイドフレーム44とサイドフレーム46との間にプローブ10が位置するように設けられている。フロントフレーム48及びバックフレーム50の各々は、プローブ10に沿ってX方向に延在しており、フロントフレーム48とバックフレーム50との間にプローブ10が位置するように設けられている。フロントフレーム48は、X方向の一端側でサイドフレーム44と接続しており、X方向の他端側でサイドフレーム46と接続している。バックフレーム50は、X方向の一端側でサイドフレーム44と接続しており、X方向の他端側でサイドフレーム46と接続している。ホルダ20とプローブ10とは、不図示のボルト等の固定部材によって固定されていてもよい。
【0057】
なお、図3に示すように、サイドフレーム44,46の各々におけるディスク面6aと対向する面44a,46aには、カプラント(接触媒体)を供給するためのカプラント供給口51が設けられている。これにより、プローブ10とディスク面6aとの間へカプラントを供給し、超音波の効率的な伝達を実現することができる。一実施形態では、例えば図5に示すように、サイドフレーム44,46の各々におけるディスク面6aと反対側の面44b,46bに、カプラントを補給するための補給ユニット53を設けてもよい。
【0058】
図7は、ホルダ20における、サイドフレーム44の内部構成を示す斜視図である。図8は、ホルダ20における、サイドフレーム46の内部構成を示す斜視図である。図7に示すように、サイドフレーム44には、複数のマグネット部材52(複数のマグネット部)が内蔵されており、該複数のマグネット部材52は互いに間隔を空けてY方向に沿って配列されている。また、図8に示すように、サイドフレーム46には、複数のマグネット部材52(複数のマグネット部)が内蔵されており、該複数のマグネット部材52は互いに間隔を空けてY方向に沿って配列されている。マグネット部材52の各々の形状は、例えば図7に示すように方形(直方体や立方体)であってもよいし、その他の形状であってもよい。
【0059】
斯かる構成によれば、プローブ10の一方側に位置するサイドフレーム44のマグネット部材52と、他方側に位置するサイドフレーム46のマグネット部材52とがロータディスク6のディスク面6a(図2参照)側に吸引される。このため、プローブ10の両側で生じるマグネット部材52の吸引力によって、ホルダ20に保持されたプローブ10をディスク面6aに安定的に押し付けることができる。また、複数のロータディスク走行用ローラ14に吸着力の強い大型のマグネットローラを採用することなく、サイドフレーム44のマグネット部材52の吸引力及びサイドフレーム46のマグネット部材52の吸引力によってプローブ10をロータディスク6のディスク面6aに安定的に押し付けることができるため、ロータシャフト16の軸方向における超音波検査装置100の大型化を抑制することができる。
【0060】
なお、仮にロータディスク走行用ローラ14にマグネットローラを採用すると、マグネットローラから生じた磁粉がマグネットローラの軸受部(不図示)に入り込み、ローラのスムーズな回転を阻害する場合がある。この点、超音波検査装置100では、サイドフレーム44のマグネット部材52及びサイドフレーム46のマグネット部材52の吸引力によってプローブ10をロータディスク6のディスク面6a(図2参照)に安定的に押し付けることができるため、上述のようにロータディスク走行用ローラ14に非マグネットローラを採用することが可能となる。これにより、ロータディスク走行用ローラ14が磁粉によってスムーズに回転しなくなるリスクを低減することができ、超音波検査装置100の高寿命化を実現することができる。
【0061】
また、ロータディスク走行用ローラ14は、ロータディスク6のディスク径に応じてディスク面6aに追従するように、ローラ14の進行方向を柔軟に変化させるためのフレキシビリティを有する必要があり、さらに、ホルダ20の取り回し等を考慮してなるべく小径にする必要がある。この点、仮にロータディスク走行用ローラ14自体に吸着力を設けると、超音波検査装置100の走行時においてロータディスク6のディスク面6aに対する吸着が支配的となり、ローラ14自体のフレキシビリティや回転性能が低下する恐れがある。このような理由からも、ロータディスク走行用ローラ14には非マグネットローラを採用し、プローブ10をディスク面6aに吸着させるためのマグネット部材52を上記のようにサイドフレーム44及びサイドフレーム46に設けることが望ましい。
【0062】
これに対し、ロータシャフト走行用ローラ18には、超音波検査装置100全体を落下させることなくロータシャフト16の周面16aを走行するために、ロータディスク走行用ローラ14に比して大きな吸着力が必要であること、及び、ロータシャフト走行用ローラ18とホルダ20とが近接するケースでは、ロータシャフト16の周面16aへの吸引力を得るためのマグネットをロータシャフト走行用ローラ18とは別に設けるためのスペースが確保しにくいこと、を考慮し、マグネットローラを採用している。
【0063】
なお、ロータシャフト走行用ローラ18の磁粉巻込み及びローラ固着についてのリスク対策としては、例えば、図4に示すように、ロータシャフト走行用ローラ18のマグネット部18aがロータシャフト周面16aに接触しないように、マグネット部18aが、ロータシャフト走行用ローラ18の走行面18bに対してローラ18の径方向にギャップgを存して設けられている(ギャップgの大きさを調節することにより吸引力を調節することができる)。また、後述するドラグ機能を発揮するためのドラグ機構66やエンコーダ64におけるエンコーダギヤ64aのメンテナンス(取替)を想定して、ローラ18の軸部18cとローラ部18dとを着脱可能な様式としている。
【0064】
また、翼植込部8(図1参照)の検査のためにプローブ10として斜角プローブを用いる場合には、検査範囲を広くする観点で、ロータシャフト16になるべく近い位置から超音波を発信することが望ましい。このため、Y方向におけるプローブ10の内側の装置構成を極力簡素化して、プローブ10をロータシャフト16に近い位置に配置することが望ましい。そこで、超音波検査装置100は、上述のように、上記X方向おける一方側のサイドフレーム44と他方側のサイドフレーム46とが有するマグネット部材52の吸引力によってプローブ10をディスク面6aに押し付けるよう構成している。このため、例えばホルダ20のうちY方向におけるプローブ10の内側のバックフレーム50(図5参照)を薄くする等の工夫が可能となり、Y方向におけるプローブ10の内側の装置構成を簡素化することができる。したがって、プローブ10をロータシャフト16に近い位置に配置することができ、超音波検査装置100の広い検査範囲を実現することができる。
【0065】
一実施形態では、図7に示すように、複数のロータディスク走行用ローラ14のうちローラ14aは、サイドフレーム44に保持された複数のマグネット部材52のうちY方向において最も外側に位置するマグネット部材52(52a)に対して、Y方向の外側に間隔dを空けて設けられている。また、複数のロータディスク走行用ローラ14のうちローラ14bは、サイドフレーム44に保持された複数のマグネット部材52のうちY方向において最も内側に位置するマグネット部材52(52b)に対して、Y方向の内側に間隔dを空けて設けられている。また、図8に示すように、複数のロータディスク走行用ローラ14のうちローラ14cは、サイドフレーム46に保持された複数のマグネット部材52のうちY方向において最も外側に位置するマグネット部材52(52c)に対して、Y方向の外側に間隔dを空けて設けられる。また、複数のロータディスク走行用ローラ14のうちローラ14dは、サイドフレーム46に保持された複数のマグネット部材52のうちY方向において最も内側に位置するマグネット部材52(52d)に対して、Y方向の内側に間隔dを空けて設けられる。
【0066】
このように、複数のロータディスク走行用ローラ14の各々は、複数のマグネット部材52のうち隣接するマグネット部材52に対して間隔dを空けて設けられているため、該ローラ14が各フレーム44,46のマグネット部材52によって磁化されにくくなる。これにより、ロータディスク走行用ローラ14から磁粉が生じるリスク及び該磁粉が該ローラ14の軸受部(不図示)へ侵入するリスクを低減できる。したがって、ロータディスク走行用ローラ14が磁粉によってスムーズに回転しなくなるリスクを低減することができ、超音波検査装置100の高寿命化を実現することができる。
【0067】
一実施形態では、ロータシャフト走行用ローラ18は、ドラグ機能を有するローラであってもよい。これにより、台車12をロータディスク6に沿ってロータディスク6の周方向に手動で移動させる場合に、手を滑らせて超音波検査装置100を急速に回転落下させてしまうリスクを低減することができる。ドラグ機能は、ローラが一定以上の作用力によって回転する機能であり、例えば不図示のOリングとロータシャフト走行用ローラ18の回転部分との摩擦力を調節することによってドラグの強さを調節しても良い。
【0068】
一実施形態では、例えば図2及び図3に示すように、台車12は、複数のロータシャフト走行用ローラ18を連結する連結部材54を含む。この場合、連結部材54は、ホルダ20を含む台車本体12aに対して着脱可能に構成されてもよい。これにより、例えば図9に示すように、ロータシャフト16の径Dに応じて複数のロータシャフト走行用ローラ18及び連結部材54からなる走行ユニット56と一体で交換することが可能となり、該交換によって、ロータシャフト走行用ローラ18同士の間隔Wをロータシャフトの径Dに応じた最適な間隔にすることができる。
【0069】
一実施形態では、例えば図2及び図3に示す連結部材54は、フレキシブル材で構成されてもよい。これにより、図10に示すように、ロータシャフト16の周面に沿ってフレキシブル材で構成された連結部材54を変形させることによって、ロータシャフト16の径Dが互いに異なる複数のタービンロータ5に対して超音波検査装置100を適用することが可能となる。なお、一実施形態では、図10に示す連結部材54はロータシャフト走行用ローラ18の取り付け個数を調節可能に構成されていても良い。
【0070】
一実施形態では、上記連結部材54は、例えば図11に示すように、該連結部材54(54a)に設けられた複数のロータシャフト走行用ローラ18とは別の増設用のロータシャフト走行用ローラ18を含む増設ユニット58を接続するための接続部60を有していてもよい。図11に示す接続部60は、増設用の複数のロータシャフト走行用ローラ18同士を連結する連結部材54(54b)と接続するよう構成されている。これにより、増設ユニット58の取り付け個数を調節することによって、ロータシャフト16の径が互いに異なる複数のタービンロータ5に対して超音波検査装置100を適用することが可能となる。なお、接続部60は、例えば図2及び図3に示すように、ロータシャフト走行用ローラ18に対してロータシャフト16の周方向外側に突設されたリング状の部材であってもよい。
【0071】
一実施形態では、超音波検査装置100は、例えば図12に示すように、台車12に接続されるとともに台車12をロータシャフト16の周方向に引っ張るためのワイヤー62と、ワイヤー62の変位量を計測するためのエンコーダ64と、を更に備える。これにより、ワイヤー62を周方向に引っ張ることによって台車12をロータシャフト16の周りに周回させれば、エンコーダ64によって計測されたワイヤー62の変位量から台車12におけるロータシャフト16の周りの移動距離を測定することができる。これにより、ロータシャフト16の周方向における全周に亘って、ロータディスク6の翼植込部8を容易に精度良く検査することができる。
【0072】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0073】
例えば、図7及び図8では、サイドフレーム44に複数のマグネット部材52が設けられるとともにサイドフレーム46に複数のマグネット部材52が設けられる形態を例示したが、サイドフレーム44とサイドフレーム46の各々に設けるマグネット部材52の数は一つであってもよいし、サイドフレーム44からサイドフレーム46に亘って延在する一つのマグネット部材をホルダ20が有していてもよい。また、図7及び図8では、サイドフレーム44に複数のマグネット部材52を内蔵するとともにサイドフレーム46に複数のマグネット部材52を内蔵する形態を例示したが、複数のマグネット部材52は、サイドフレーム44の外面及びサイドフレーム46の外面に取り付けられていてもよい。また、サイドフレーム44、サイドフレーム46、フロントフレーム48及びバックフレーム50は、それぞれ別の部材で構成してもよいし、二つ以上のフレームを一つの部材で一体的に構成してもよい。
【符号の説明】
【0074】
2 タービンブレード
4 翼根部
5 タービンロータ
6 ロータディスク
6a ディスク面
8 翼植込部
10 プローブ
12 台車
12a 台車本体
14 ロータディスク走行用ローラ
14a,14b,14c,14d ローラ
16 ロータシャフト
16a 周面
18 ロータシャフト走行用ローラ
18a マグネット部
18b 走行面
18c 軸部
18d ローラ部
20 ホルダ
20a ディスク面と対向する面
22 ホルダアセンブリ
24 ガイドレール
26 スライダ
28 Y軸調整ノブ
30 Z軸調整ノブ
32 2軸ジンバルユニット
34 第1支持ユニット
36 第2支持ユニット
38 連結フレーム
40 回動アーム
42 回動アーム
44 サイドフレーム
44a ディスク面と対向する面
44b ディスク面と反対側の面
46 サイドフレーム
46a ディスク面と対向する面
46b ディスク面と反対側の面
48 フロントフレーム
50 バックフレーム
51 カプラント供給口
52 マグネット部材
53 補給ユニット
54 連結部材
56 走行ユニット
58 増設ユニット
60 接続部
62 ワイヤー
64 エンコーダ
64a エンコーダギア
66 ドラグ機構
100 超音波検査装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12