(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明者は、鋭意検討した結果、以下の知見を得た。
【0012】
上記の通り、特許文献1では、燃料電池に供給される酸化剤ガスと熱交換した後の排気ガスにより脱硫器が加熱されるよう構成されている。ここで、例えば、燃料電池の発電量の増加に伴い酸化剤ガスの供給量が増加すると、酸化剤ガスと熱交換した後の排気ガスの温度が低下し、脱硫器の適温から外れてしまう可能性がある。
そこで、酸化剤ガスが排気ガスで加熱される前に、脱硫器を加熱する前の排気ガス以外の排気ガスで酸化剤ガスを予備加熱することで、予備加熱後の酸化剤ガスの排ガスによる加熱量を低下させることが可能になる。これにより、酸化剤ガスの供給量が増加しても、酸化剤ガスを加熱し、脱硫器を加熱する前の排気ガスの温度低下が緩和され、従来よりも脱硫器が適温から外れにくくなる。
【0013】
すなわち、本開示の第1の態様に係る燃料電池システムは、原料中の硫黄化合物を除去し、当該燃料電池システムで流通する排気ガスの有する熱を利用して加熱される水添脱硫器と、前記水添脱硫器により硫黄化合物が除去された原料を改質して得られた燃料と、供給された酸化剤ガスとを用いて電気化学反応により発電する燃料電池と、前記水添脱硫器を加熱する前の前記排気ガスが流れる導入経路と、前記導入経路中に配置され、前記燃料電池に供給される前記酸化剤ガスを、前記導入経路を流通する排気ガスが有する熱を利用して予熱する第1熱交換器と、前記導入経路以外の経路を流通する排気ガスが有する熱を利用して、前記第1熱交換器により予熱される前の酸化剤ガスを予熱する第2熱交換器と、を備える。
【0014】
ここで、第2熱交換器を備えているため、当該燃料電池システムにおいて導入経路以外の経路を流通する排気ガスが有する熱を利用して酸化剤ガスを、第1熱交換器により予熱される前に、予熱することができる。このように、第2熱交換器により予熱された酸化剤ガスに対して第1熱交換器はさらに予熱する構成であるため、第1熱交換器で利用する、導入経路を流通する排気ガスの熱量を抑制することができる。
【0015】
これにより、例えば、燃料電池の発電量の増加に伴い、酸化剤ガスの供給量が増加しても、第1熱交換器を通過後の排気ガスの温度低下が緩和され、従来よりも脱硫器が適温から外れにくくなる。
【0016】
さらに、第2熱交換器4および第1熱交換器5それぞれの熱交換能力の比率を変更することで、その後の第1熱交換器で利用される排気ガスの熱量を調整することができる。な
お、熱交換能力は、第2熱交換器4および第1熱交換器5における熱交換面の面積など熱交換効率を規定する条件を変更することで調整することができる。このため、本開示の第1の態様に係る燃料電池システムでは、水添脱硫の加熱に適切な温度範囲の排気ガスを、導入経路を流通させて水添脱硫の加熱に利用することができる。それゆえ、水添脱硫器は、安定して最適な温度とすることができる。
【0017】
また、第2熱交換器は、導入経路以外の経路を流通する排気ガスが有する熱を利用して酸化剤ガスを予熱するため、当該燃料電池システムにおいて排気ガスが有する熱の一部を回収し燃料電池の発電に供することができる。このため、本開示の第1の態様に係る燃料電池システムは、発電効率を高めることができる。
【0018】
したがって、本開示の第1の態様に係る燃料電池システムは、従来よりも、発電効率を向上させつつ、水添脱硫器を安定して最適な温度となるように加熱できるという効果を奏する。
【0019】
なお、上記排気ガスは、燃料電池システムで流通する排気ガスであれば、いずれの排気ガスであってもよい。例えば、上記排気ガスは、燃焼排ガス、燃料電池から排出されるアノードオフガス、カソードオフガス等が挙げられる。
【0020】
また、導入経路以外の経路を流通する排気ガスとは、導入経路を流れる排気ガスと異なる種類の排気ガスであってもよいし、同種の排気ガスであってもよい。つまり、導入経路以外の経路を流通する排気ガスは、導入経路以外の経路を流通する排気ガスであればいずれの排気ガスであってもよい。
【0021】
本開示の第2の態様に係る燃料電池システムは、上記した第1の態様に係る燃料電池システムにおいて、前記水添脱硫器の加熱に熱利用された排気ガスを、当該燃料電池システムの外部へ排出するための排出経路をさらに備え、前記第2熱交換器は、前記導入経路以外の経路を流通する排気ガスとして、前記排出経路を流通する排気ガスが有する熱を利用して、前記酸化剤ガスを予熱するように構成されていてもよい。
【0022】
上記した構成によると、第2熱交換器は、水添脱硫器の加熱に熱利用された排気ガスが有する熱を利用して酸化剤ガスを予熱することができる。つまり、水添脱硫器の加熱に熱利用された排気ガスからさらに熱回収して酸化剤ガスの予熱に利用することができる。このため、本開示の第2の態様に係る燃料電池システムは、発電効率を高めることができる。
【0023】
本開示の第3の態様に係る燃料電池システムは、上記した第1の態様に係る燃料電池システムにおいて、前記導入経路は、前記排気ガスとして、前記燃料電池の発電において未利用の酸化剤ガスであるカソードオフガスを導いており、前記燃料電池の発電において未利用の燃料であるアノードオフガスを流通させるアノードオフガス経路をさらに備え、前記第2熱交換器は、前記導入経路以外の経路を流通する排気ガスとして、前記アノードオフガス経路を流通するアノードオフガスが有する熱を利用して、前記酸化剤ガスを予熱するように構成されていてもよい。
【0024】
上記した構成によると、第2熱交換器によって、アノードオフガス経路を流通する排ガスが有する熱を利用して酸化剤ガスを、第1熱交換器により予熱される前に、予熱することができる。このため、第1熱交換器で利用される、導入経路を流通する排気ガス(カソードオフガス)の熱量を抑制することができる。
【0025】
さらに、第2熱交換器4および第1熱交換器5それぞれの熱交換能力の比率を変更する
ことで、その後の第1熱交換器で利用される排気ガスの熱量を調整することができる。このため、本開示の第3の態様に係る燃料電池システムでは、加熱器に適切な温度範囲の排気ガスを、導入経路を流通させて導くことができる。
【0026】
本開示の第4の態様に係る燃料電池システムは、原料中の硫黄化合物を除去する水添脱硫器と、前記水添脱硫器により硫黄化合物が除去された原料を改質して得られた燃料と、供給された酸化剤ガスとを用いて電気化学反応により発電する燃料電池と、前記燃料電池から排出される排気ガスの有する熱を利用して前記酸化剤ガスを予熱する第1熱交換器と、前記第1熱交換器によって熱利用された前記排気ガスの有する熱を利用して、該第1熱交換器により予熱される前に前記酸化剤ガスを予熱する第2熱交換器とを備え、前記第2熱交換器により予熱された前記酸化剤ガスの有する熱を利用して前記水添脱硫器を加熱するよう構成されている。
【0027】
上記した構成によると、加熱器を備えるため、第2熱交換器により予熱された酸化剤ガスの有する熱を利用して水添脱硫器を加熱することができる。また、第2熱交換器により予熱された酸化剤ガスは、水添脱硫器の加熱に熱利用され、保有する熱の一部を失うものの、予熱されていない酸化剤ガスを第1熱交換器に導く構成と比較して、第1熱交換器において酸化剤ガスの予熱に利用する排気ガスの熱量を抑制することができる。このため、第1熱交換器において熱交換された後の排気ガスをより高温のまま第2熱交換器に導くことができる。それゆえ、第2熱交換器では、酸化剤ガスを水添脱硫器の加熱源として利用できる程度まで十分に予熱することができるようになる。
【0028】
また、本開示の第4の態様に係る燃料電池システムでは、第1熱交換器により熱利用された後の排気ガスをそのまま外部に排出する構成と比較して、排気ガスが有する熱を第2熱交換器でも回収して燃料電池の発電に供することができるため、燃料電池システムにおける発電効率を高めることができる。
【0029】
本開示の第5の態様に係る燃料電池システムは、上記した第2の態様に係る燃料電池システムにおいて、前記燃料電池システムで流通する排気ガスの有する熱を利用して前記水添脱硫器を加熱する加熱器を備え、前記加熱器と前記第1熱交換器との間を連結する前記導入経路の一部、ならびに前記加熱器と前記第2熱交換器との間を連結する前記排出経路の一部から構成されたバッファーを介して、前記第1熱交換器と前記第2熱交換器とを連結させ一体的に形成してもよい。
【0030】
上記した構成によるとバッファーを備えるため、第1熱交換器および第2熱交換器それぞれは、このバッファーを介して加熱器と接続し、排気ガスを、第1熱交換器から加熱器へ、さらにこの加熱器から第2熱交換器へと流通させることができる。また、このバッファーを介して第1熱交換器と第2熱交換器とを物理的に分離させることもできる。
【0031】
このため、第2熱交換器と第1熱交換器とはバッファーを介して一体となるように形成することができ、それゆえ、燃料電池システムをよりコンパクトな構成とすることができる。
【0032】
本開示の第6の態様に係る燃料電池システムは、上記した第1の態様に係る燃料電池システムにおいて、前記第2熱交換器は、二重になった管の内外で、前記導入経路以外の経路を流通する排気ガスと前記第1熱交換器により予熱される前の酸化剤ガスとの熱交換を行う二重管型熱交換器であってもよい。
【0033】
本開示の第7の態様に係る燃料電池システムは、上記した第2の態様に係る燃料電池システムにおいて、前記第2熱交換器において熱利用された前記排気ガスの有する熱を利用
して、前記燃料電池に供給する原料を予熱する原料予熱部をさらに備えるように構成されていてもよい。
【0034】
上記した構成によると原料予熱部を備えるため、燃料電池システムは、前記第2熱交換器において熱利用された前記排気ガスからさらに熱回収でき、発電効率を高めることができる。
【0035】
本開示の第8の態様に係る燃料電池システムは、上記した第2の態様に係る燃料電池システムにおいて、前記水添脱硫器により脱硫された原料を水蒸気を用いた改質反応により改質する改質器と、前記第2熱交換器において熱利用された前記排気ガスの有する熱を利用して、水蒸気を生成する蒸発器と、をさらに備えるように構成されていてもよい。
【0036】
上記した構成によると蒸発器を備えるため、燃料電池システムは、前記第2熱交換器において熱利用された前記排気ガスからさらに熱回収でき、発電効率を高めることができる。
【0037】
(実施の形態1)
図1を参照して、実施の形態に係る燃料電池システム100について説明する。なお、実施の形態では、燃料電池1として固体酸化物形燃料電池(SOFC)を備えた燃料電池システムを例に挙げて説明するが、燃料電池1は固体酸化物形燃料電池に限定されるものではない。高温な排気ガスを排出する構成を有する燃料電池システムに設置可能な燃料電池であればよく、例えば、溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)、または固体高分子形燃料電池(PEFC)であてもよい。
図1は、実施の形態1に係る燃料電池システム100の要部構成の一例を示したブロック図である。
【0038】
図1に示すように、燃料電池システム100は、燃料電池1(固体酸化物形燃料電池)と、水添脱硫器2と、加熱器3と、第2熱交換器4と、第1熱交換器5とを備えてなる構成である。また、燃料電池システム100には、例えば燃料電池1から排出された排気ガスなど燃料電池システム100で流通する排気ガスを、加熱器3に導くための導入経路6と、加熱器3から排気ガスを燃料電池システム100の外部へ排出するための排出経路7と、燃料電池1に原料を供給するための原料供給経路8と、酸化剤ガスを供給するための空気経路10とが設けられている。
【0039】
燃料電池1は、水添脱硫器2により硫黄化合物が除去された原料を改質して得られた燃料と、空気経路10を通じて供給された酸化剤ガスとを用いて電気化学反応により発電するものである。燃料電池システム100では、原料供給経路8を通じて水添脱硫器2へと原料を供給できる構成となっている。この原料としては、都市ガスまたは、プロパンガスなどの炭化水素を主成分とするガスを用いることができる。なお、原料から水添脱硫器2で硫黄成分が取り除かれ、改質反応により改質された改質ガスを本明細書では燃料と称する。
【0040】
燃料電池1は、燃料が供給される燃料極(アノード)および酸化剤ガスが供給される空気極(カソード)を有し、該燃料極と該空気極との間で電気化学反応を行って発電する単セルを複数枚、直列に接続してセルスタックを形成してもよい。また、燃料電池1は、直列接続したセルスタックをさらに並列に接続させた構成としてもよい。あるいは、2層の電極(アノードおよびカソード)を含むセルが円筒型に構成され、この円筒型セルの内側に酸化剤ガスを、外側に燃料をそれぞれ供給する構成としてもよい。
【0041】
燃料電池1を構成する単セルとしては、例えば、イットリアをドープしたジルコニア(YSZ)、イットリビウムまたはスカンジウムをドープしたジルコニア、あるいはランタ
ンガレート系の固体電解質からなる単セルを用いることができる。例えば、単セルがYSZの場合、厚みにもよるが、約600〜900℃の温度範囲にて、発電が行われる。
【0042】
なお、実施の形態1に係る燃料電池システム100は、燃料電池1で未利用の燃料と酸化剤ガスとを燃焼させて燃焼排ガスを生成する燃焼部を備え、この燃焼排ガスを排気ガスとして導入経路6を通じて加熱器3に導く構成であってもよい。あるいは、燃料電池1が平板型燃料電池である場合は、カソードから排出された、未利用の酸化剤ガス(カソードオフガス)を排気ガスとして導入経路6を通じて加熱器3に導く構成であってもよい。なお、このカソードオフガスは、燃料電池1の高温な動作温度によって加熱されており、加熱器3における熱源として機能するだけの十分な熱量を有している。
【0043】
また、
図1では特に図示していないが、原料供給経路8において水添脱硫器2と燃料電池1との間に改質器を備え、水添脱硫器2により硫黄化合物が除去された原料を、この改質器が改質するように構成してもよい。あるいは固体酸化物形燃料電池は動作温度が約600から900℃と高温であるため、燃料極の主成分であるニッケルの触媒作用によって燃料電池1内で水蒸気改質(内部改質)を行う構成としてもよい。
【0044】
水添脱硫器2は、水素を利用して、原料中の硫黄化合物を除去するものである。つまり、水添脱硫器2は、いわゆる水添脱硫方式により原料に含まれる硫黄成分を除去する脱硫器である。水添脱硫器2に原料供給経路8が接続されており、この原料供給経路8を流通して外部から供給された原料が水添脱硫器2内に流入する。また、
図1では特に図示していないが、水添脱硫器2に流入する原料には水素が含まれている。この原料に含まれる水素は、外部から供給されてもよいし、例えば、改質器において改質され、生成された改質ガスの一部が供給されてもよい。あるいは、燃料電池1が平板型燃料電池である場合は、燃料電池1の燃料極から排出された未利用の燃料(アノードオフガス)の一部が供給されてもよい。
【0045】
また、水添脱硫器2には脱硫触媒が充填されており、この脱硫触媒としては、例えば、銅および亜鉛を含む脱硫触媒が挙げられる。なお、脱硫触媒は、水添脱硫を行うことができればこの脱硫触媒に限定されるものではなく、Ni−Mo系又はCo−Mo系触媒と酸化亜鉛との組み合わせであってもよい。Ni−Mo系又はCo−Mo系触媒と酸化亜鉛とを組み合わせた脱硫触媒の場合、水添脱硫器2は350〜400℃の温度範囲にて、燃料ガス中の有機硫黄を水添分解する。そして、水添脱硫器2は、生成したH
2Sを、350〜400℃の温度範囲にてZnOに吸着させて除去する。
【0046】
例えば、原料が都市ガスの場合、付臭剤として硫黄化合物であるジメチルスルフィド(dimethl sulfide ;C
2H
6S,DMS)が含有されている。このDMSは、水添脱硫器
2において、以下の反応式(式(1)、(2))によるZnSの形、または物理吸着の形で脱硫触媒によって除去される。
C
2H
6S+2H
2→2CH
4+H
2S ・・・(1)
H
2S+ZnO→H
2O+ZnS ・・・(2)
なお、付臭剤は、上述したDMSに限定されるものではなく、TBM(C
4H
10S)またはTHT(C
4H
8S)等の他の硫黄化合物であってもよい。
【0047】
充填する脱硫触媒が銅および亜鉛を含む場合、水添脱硫器2は、10〜400℃程度、もしくは250〜300℃程度の温度範囲で脱硫を行う。この銅亜鉛系脱硫触媒は、水添脱硫能力に加えて物理吸着能力もあり、低温では主に物理吸着、高温では化学吸着(H
2S+ZnO→H
2O+ZnS)を行うことができる。この場合、脱硫後の燃料ガスに含まれる硫黄含有量は、1vol ppb(parts per billion)以下、通常は0.1vol
ppb以下となる。
【0048】
このように、水添脱硫器2において、Ni−Mo系又はCo−Mo系触媒、あるいは銅および亜鉛のいずれかを含む脱硫触媒が充填されている場合、単位体積あたりの硫黄成分除去量が大きくなる。それゆえ、上述した脱硫触媒を用いる場合、所望の硫黄濃度まで硫黄を除去するための脱硫触媒の量を低減させることができる。
【0049】
また、燃料電池システム100の長時間の運転の後、水添脱硫器2の脱硫触媒が劣化した際には、この燃料電池システム100の性能が低下する。そこで、水添脱硫器2を、燃料電池システム100において着脱可能に設け、脱硫触媒が劣化した水添脱硫器2を新しい水添脱硫器と交換できる構成としてもよい。
【0050】
以上のようにして水添脱硫器2によって脱硫された原料は、内部改質により改質される場合は燃料電池1へ、改質器により改質される場合はこの改質器へと供給される。なお、改質器は、部分酸化改質用として用いられるものであってもよいが、更に高効率な動作を実現するために、部分酸化改質反応だけでなく、水蒸気改質反応も行える仕様にしておくことが有利である。
【0051】
加熱器3は、燃料電池システム100で流通する排気ガスの有する熱を利用して水添脱硫器2を加熱するものである。具体的には、燃料電池システム100で流通する排気ガスは、導入経路6を通じて加熱器3に導かれ、この内部を流通することで、排気ガスが有する熱の一部を水添脱硫器2に与え、所望の温度まで昇温させる。すなわち、加熱器3の内部には、排気ガスが流通するための流通経路3a(例えば、後述の
図5参照)が形成されており、排気ガスはこの流通経路3aを流通したのち、排出経路7を通じて第2熱交換器4へと向かう。
【0052】
また、上述した水添脱硫器2および加熱器3は、加熱器3の上に水添脱硫器2が配置され、互いに1面以上で面接触している。これら水添脱硫器2および加熱器3の外装(筐体)はステンレスなどの金属より構成されている。そして、排気ガスが加熱器3の内部に形成された流通経路3aを流通すると、排気ガスが有する熱は、この接触面を通じて加熱器3から水添脱硫器2へと伝熱する。これによって、水添脱硫器2の内部の脱硫触媒の温度が適切な温度に維持されることになる。
【0053】
また、これら水添脱硫器2の少なくとも一部が断熱部材に覆われるように設置されていてもよい。このように水添脱硫器2を断熱部材で覆うように構成することで、水添脱硫器2からの放熱を防ぐことができるとともに、例えば、燃焼部16(後述の
図2、3参照)の輻射熱、または燃焼部16での燃焼により生成された燃焼排ガスの熱など高温の熱に直接、曝されることを防ぐことができる。また、水添脱硫器2からの放熱を防ぐことができるため、この水添脱硫器2における温度分布も略一様とし、温度ムラが生じること抑制することができる。これにより、水添脱硫器2における脱硫触媒の温度制御を容易とすることができる。
【0054】
第1熱交換器5は、燃料電池システム100で流通する排気ガスが有する熱を利用して、燃料電池1に供給する酸化剤ガスを加熱(予熱)するものである。すなわち、第1熱交換器5は、外部から供給された酸化剤ガスを、排気ガスとの熱交換により所定温度まで加熱する。例えば、第1熱交換器5を流通した後の酸化剤ガスは、排気ガスとの熱交換により400〜800℃まで加熱される。そして、この加熱された酸化剤ガスが燃料電池1へと供給される。このように、燃料電池システム100では、第1熱交換器5において酸化剤ガスとの熱交換を行うことによって、保有する熱の一部が奪われた排気ガスが、加熱器3に導かれる。このため、燃料電池システム100では、第1熱交換器5によって400〜800℃と高温の排気ガスを、水添脱硫器2を加熱するのに適切な温度まで低下させて
加熱器3に導くことができる。
【0055】
第2熱交換器4は、加熱器3において水添脱硫器2を加熱するために、保有する熱の一部が奪われた排気ガスの熱を利用して、第1熱交換器5によって予熱される前の酸化剤ガスを事前に予熱するものである。ここで、加熱器3から排出された排気ガスには、十分利用可能な熱が残っている。そこで、第2熱交換器4は、この排気ガスが有する熱を利用して酸化剤ガスを事前に予熱しておくことで、第1熱交換器5で利用する排気ガスの熱量を抑制することができる。
【0056】
さらに、第2熱交換器4および第1熱交換器5それぞれの熱交換器能力の比率を変更することで、第1熱交換器5において利用される排気ガスの熱量を調整することができる。このため、加熱器3に適切な温度範囲の排気ガスを導くことができる。
【0057】
このように、本実施の形態1に係る燃料電池システム100では、第1熱交換器5において排気ガスの有する熱を利用して酸化剤ガスを予熱する前に、第2熱交換器4により酸化剤ガスを予熱するように構成されている。
【0058】
また、発電負荷が変わるなどして酸化剤ガスの流量が増大した場合、この酸化剤ガスと第1熱交換器5との間における熱交換で排気ガスは発電負荷の変更前よりも大きな熱量が奪われる。このため、排気ガスは、加熱器3の熱源として機能するのに十分な熱量を有さない場合がある。そこで、本実施の形態に係る燃料電池システム100では、第1熱交換器5の前段に第2熱交換器4を設けることで、第1熱交換器5において酸化剤ガスとの熱交換で利用される排気ガスの熱量を抑制することができる。
【0059】
さらにまた、加熱器3を流通した後の排気ガスをそのまま筐体30の外部に排出する構成と比較して、排気ガスが有する熱を第2熱交換器4で回収し燃料電池の発電に供することができるため、燃料電池システム100における発電効率を高めることができる。
【0060】
次に、
図1に示した燃料電池システムの燃料電池1を円筒型燃料電池として構成した場合と平板型燃料電池として構成した場合とについてそれぞれ実施例1、2として以下に説明する。
【0061】
(実施例1)
まず、
図2を参照して実施の形態1に係る燃料電池システム100の実施例1について説明する。
図2は、実施の形態1の実施例1に係る燃料電池システム100の構成を示す模式図である。
【0062】
燃料電池1を円筒型燃料電池とした場合、
図1に示す実施の形態1に係る燃料電池システム100は、例えば
図2に示す実施例1のように構成することができる。すなわち、実施例1に係る燃料電池システム100は、上記した燃料電池1、水添脱硫器2、加熱器3、第2熱交換器4、および第1熱交換器5に加えて、改質器14、蒸発器15、燃焼部16、減圧部17、昇圧部33、水ポンプ34、および空気ポンプ35をさらに備える。そして、これらの部材のうち、減圧部17、昇圧部33、水ポンプ34、および空気ポンプ35を除く部材を筐体30内に収容する。筐体30はその内側の壁面に断熱部材が設けられており、燃料電池1、改質器14、蒸発器15は、この断熱部材に囲まれて形成された空間内に配置され、水添脱硫器2、加熱器3、第1熱交換器5、および第2熱交換器4は断熱部材内に配置された構成とする。
【0063】
また、実施例1に係る燃料電池システム100では、燃料電池1において未利用の燃料と未利用の酸化剤ガスとを燃焼部16で燃焼させて生成した燃焼排ガスを排気ガスとして
用いた構成となっている。
【0064】
実施例1に示す燃料電池システム100では、昇圧部33によって昇圧された原料が原料供給経路8を通じて筐体30内に供給される。また、空気ポンプ35によって昇圧された酸化剤ガスが空気経路10を通じて筐体30内に供給される。さらに、水ポンプ34によって改質水が改質水経路11を通じて筐体30内に供給される。
【0065】
筐体30内へと供給される原料には、水素ガスを約70%(原料に対して約10%)含有する改質ガスが混合されている。水素を含む原料は筐体30内の水添脱硫器2に導かれる。水添脱硫器2は、上記したように断熱部材に覆われた構成となっている。このため、水添脱硫器2から可能な限り放熱、熱移動がないように構成することができる。そして、加熱器3により加熱された脱硫触媒の温度を、脱硫反応に適切な温度範囲(約250〜300℃)に安定させることができる。水添脱硫器2により脱硫された後の原料は改質器14の前段に設けられた蒸発器15に導かれる。
【0066】
ここで、改質器14による改質処理について説明する。実施例1に係る燃料電池システム100では、改質器14を以下のように構成することができる。すなわち、改質器14は、部分酸化改質用として用いられるものであってもよいが、更に高効率な動作を実現するために、部分酸化改質反応だけでなく、水蒸気を用いた改質反応も行える仕様にしておく。水蒸気を用いた改質反応としては、水蒸気改質反応、オートサーマル反応が例示される。
【0067】
例えば、水ポンプ34から改質水経路11を通じて送出された水(改質水)を混合させ蒸発器15に供給する。また、改質器14の前段に蒸発器15を設けた構成とする。蒸発器15は、燃焼部16で生成された燃焼排ガスの熱及び燃焼部16からの輻射熱を利用して、改質水経路11を通じて供給された水(改質水)を気化させ、水蒸気を生成する。蒸発器15で生成した水蒸気は、水添脱硫器2から供給された脱硫後の原料と混合させる。
【0068】
なお、改質器14に充填される改質触媒としては、Al
2O
3(アルミナ)の球体表面にNiを含浸し、担持したもの、Al
2O
3の球体表面にルテニウムを付与したものを適宜用いることができる。
【0069】
ところで、燃料電池システム100の起動時では、改質器14において吸熱反応である水蒸気改質反応を行うためには熱エネルギーが不足している。そこで、燃料電池システム100の起動時は、改質水経路11から蒸発器15に水を供給させずに、改質空気経路(不図示)を通じて改質器14に改質用空気を導入し、この改質用空気を利用して、改質器14は以下の式(3)で表される部分酸化改質反応を行い、水素ガスおよび一酸化炭素を生成する。
C
nH
m + (n/2)O
2 → n・CO +(m/2)H
2(n,mは任意の自然数)
・・・(3)
そして、これらの水素ガスおよび一酸化炭素を、改質ガス経路9を通じて燃料電池1に供給し、酸化剤ガスと合わせて発電を行う。
【0070】
また、燃料電池システム100が起動して発電が進むにつれ、改質器14の温度が上昇していく。すなわち、上記の式(3)で表される部分酸化改質反応は発熱反応であり、更に、燃焼排ガスにより、改質器14の温度が上昇させられる。そして、改質器14の温度が、例えば、400℃以上になれば以下の式(4)で表される水蒸気改質反応を並行して行うことが可能となる。
C
nH
m + n・H
2O → n・CO +(m/2+n)H
2(n,mは任意の自然数)
・・・(4)
上述した式(4)で示される水蒸気改質反応は、式(3)で示される部分酸化改質反応と比較すると、同じ量の炭化水素(C
nH
m)から生成できる水素量がより多くなり、その結果、燃料電池1での発電反応に利用可能な改質ガスの量が多くなる。つまり、水蒸気改質反応の方が効率よく改質ガスを生成することができる。また、式(4)に示す水蒸気改質反応は吸熱反応であるため、式(3)に示す部分酸化改質反応による発熱と燃焼部16で生成された燃焼排ガスが保有する熱等を利用し、水蒸気改質反応を進行させる。そして、改質器14の温度が例えば、600℃以上になれば、式(4)の水蒸気改質反応で利用される熱量を燃焼排ガスの有する熱等だけで補うことが可能となるため、水蒸気改質反応のみの運転に切り替えることができる。
【0071】
また、
図2に示す燃料電池システム100の構成において、改質器14から燃料電池1へ向かう改質ガス経路9の途中(分岐部)で分岐させ、改質器14で生成された改質ガスの一部を原料供給経路8に戻すためのリサイクル経路19が設けられている。このため、水添脱硫器2へと供給される原料に水素を添加することが可能となり、水添脱硫器2は、この水素を利用して前述の水添脱硫を行うことができる。
【0072】
図2に示す燃料電池システム100の構成では、リサイクル経路19の途中に減圧部17が設けられている。減圧部17は、リサイクル経路19内を流通する改質ガスの流量を調整するものであり、例えば、キャピラリチューブまたはオリフィスなどにより実現できる。すなわち、減圧部17は、キャピラリチューブまたはオリフィスなどにより流路を細くし圧力損失を大きくさせることで、リサイクル経路19内を所望の流量だけ改質ガスが流通するように構成されている。減圧部17の位置は、
図2では筐体30の外部に配置されているが、筐体30の内部であってもよい。筐体30の外部に配置された場合、高温な燃焼排ガス等に直接さらされることを防ぐことができるという利点がある。一方、減圧部17が筐体30内に配置されている場合は、筐体30内は高温であるため減圧部17において水分が凝縮しにくくコンパクトな構成にできるという利点がある。
【0073】
また、このリサイクル経路19の途中に凝縮器(不図示)を設けた構成としてもよい。凝縮器を備える構成の場合、リサイクル経路19を流通する改質ガスが低温化したとき、この凝縮器により水分を回収することができる。このため、結露水による経路内の水つまり、もしくは昇圧部33の腐食または破損といった不具合を抑制することができる。この凝縮器は、冷却源として原燃料ガス、空気、あるいは水のいずれかを利用した、二重管型の熱交換器を用いることができる。凝縮器により生成された凝縮水は外部へ放出されてもよいし、例えば、改質水などに再利用される構成であってもよい。
【0074】
また、実施例1に係る燃料電池システム100では、上述したように、燃料電池1に供給される酸化剤ガスが2つの熱交換器(第1熱交換器5および第2熱交換器4)によって予熱されるように構成されている。具体的には、外部から供給された酸化剤ガスは、まず、
図2に示すように、第2熱交換器4において加熱器3を通過した後の燃焼排ガスと熱交換され、予熱される。さらに、第2熱交換器4により予熱された酸化剤ガスは、第1熱交換器5において燃焼部16で生成された燃焼排ガスと熱交換される。この熱交換により、酸化剤ガスは、燃料電池1の動作温度程度まで昇温され、燃料電池1に供給される。なお、第2熱交換器4における酸化剤ガスとの熱交換で熱が奪われた燃焼排ガスは筐体30の外部に排出される。
【0075】
(実施例2)
また、実施の形態1に係る燃料電池システム100では、燃料電池1を平板型燃料電池として構成してもよい。このように構成される場合、燃料電池システム100は、例えば、
図3に示す構成となる。
図3は、実施の形態1の実施例2に係る燃料電池システム100の構成を示す模式図である。
【0076】
図3に示すように、実施の形態1の実施例2に係る燃料電池システム100は、実施例1と同様の構成部材を有するが、以下の点で実施例1とは異なる。
【0077】
すなわち、実施例2に係る燃料電池システム100は、燃料電池1から、未利用の酸化剤ガス(カソードオフガス)と未利用の燃料(アノードオフガス)とが別々の経路で排出される点で実施例1とは異なる。このため、実施例2に係る燃料電池システム100では、アノードオフガスが流通するアノードオフガス経路13をさらに備えた構成となっている。
【0078】
また、熱源として加熱器3に導かれる排気ガスが実施例1では燃焼排ガスであったのに対して、実施例2ではカソードオフガスである点でも実施例1とは異なる。また、アノードオフガスを燃焼させて生成した燃焼排ガスは、改質器14および蒸発器15の加熱に用いられるが、その後は燃焼排ガス経路12を通じて筐体30の外部に排出され点でも実施例1とは異なる。また、実施例1に係る燃料電池システム100では、改質器14で改質された改質ガス(燃料)の一部を、リサイクル経路19を通じて昇圧部33の上流側に供給する構成であった。これに対して、実施例2に係る燃料電池システム100では、燃料電池1から排出されたアノードオフガスの一部を、リサイクル経路19を通じて昇圧部33の上流側に供給する点でも異なる。
【0079】
図3に示す実施例2では、酸化剤ガスは空気経路10を通じて、燃料電池1のカソードへ供給され、燃料は改質ガス経路9を通じて改質器14から燃料電池1のアノードへ供給される。燃料電池1は、例えばアノードとカソードとの間で電気化学反応を行って発電する複数の単セルを直列に接続して構成することができる。このような単セルには例えば、イットリウム酸化物を添加したジルコニアであるイットリア安定化ジルコニアを電解質等に用いた公知の構成を採用しうる。
【0080】
空気ポンプ35により送出された酸化剤ガスは、まず、加熱器3において熱利用されたカソードオフガスと第2熱交換器4で熱交換を行い予熱される。この予熱された酸化剤ガスは、燃料電池1のカソードに供給される前に、燃料電池1から排出されたカソードオフガスと第1熱交換器5で熱交換され再度、予熱される。このように2回の予熱により燃料電池1の動作温度近くまで加熱された酸化剤ガスはこの燃料電池1のカソードに供給される。燃料電池1から排出されたカソードオフガスは、上述したように燃料電池1に供給される酸化剤ガスとの熱交換により、保有する熱の一部を失って加熱器3に導かれる。
【0081】
加熱器3では、このカソードオフガスが有する熱を利用して水添脱硫器2を加熱する。そして、加熱器3から排出されたカソードオフガスは、上述したように、第2熱交換器4において酸化剤ガスとの間で熱交換される。つまり、加熱器3から排出されたカソードオフガスにはまだ利用しきれていない熱量が含まれているため、第2熱交換器4を配置し、燃料電池システム100内において熱回収できるように構成されている。そして、この熱交換により熱の一部を失ったカソードオフガスは、筐体30の外部に排出される。
【0082】
なお、上記した実施の形態1に係る燃料電池システム100では、第2熱交換器4における酸化剤ガスとの熱交換により熱利用された排気ガスは、外部に排出される構成であったがこれに限定されるものではない。例えば、第2熱交換器4において保有する熱の一部が利用された排気ガスを蒸発器15に導き、この排気ガスが有する熱を改質水の気化に利用する構成としてもよい。あるいは、この排気ガスと原料供給経路8を流通する原料とを熱交換する原料予熱部(不図示)をさらに備え、この原料予熱部により原料を予熱する構成としてもよい。
【0083】
(排気ガスの温度調整)
次に、
図2に示す実施例1に係る燃料電池システム100の構成を例に挙げて、排気ガスの温度調整について説明する。具体的には、以下のように排気ガスを流通させて水添脱硫器2の加熱を行う。なお、
図2に示す燃料電池システム100の場合、水添脱硫器2の加熱に利用する排気ガスは、燃焼部16で未利用の燃料と空気とを燃焼させて生成した燃焼排ガスとなる。
【0084】
燃焼部16で生成した燃焼排ガスの流量およびその温度は、燃料電池1における燃料及び酸化剤ガスの燃料利用率(発電時に、燃料として燃料電池1で消費される割合)を調整することにより制御することが可能である。
図2に示した実施例1に係る燃料電池システム100では、例えば、燃焼部16の温度範囲が約600〜900℃になるように、燃料電池1における燃料および酸化剤ガスの燃料利用率を設定する。
【0085】
このように所望の温度範囲となるように設定された燃焼部16で、未利用の燃料と酸化剤ガスとを燃焼して生成された排気ガス(燃焼排ガス)は、まず、改質器14および蒸発器15を加熱する。これにより排気ガスの有する熱の一部が消費される。さらに、熱の一部が消費された排気ガスが第1熱交換器5に流入し、この第1熱交換器5による酸化剤ガスと排気ガスとの熱交換によって、排気ガスが有する熱がさらに奪われ、水添脱硫器2を加熱するのに適切な温度まで低下させられる。具体的には、水添脱硫器2に充填される脱硫触媒が銅および亜鉛を含む脱硫触媒の場合、排気ガスの温度は270〜300℃程度まで低下させられる。
【0086】
このように温度がさらに低下させられた排気ガスは、導入経路6を流通して加熱器3へ供給される。そして、加熱器3で保有する熱の一部を失った排気ガスは、その後、排出経路7を通じて第2熱交換器4に導かれる。なお、加熱器3に270〜300℃の温度で流入した排気ガスは、この加熱器3において保有する熱の一部を失い、排出される際には250〜280℃程度まで温度低下する。この温度低下分には原料ガスの余熱分と放熱分が含まれる。
【0087】
第2熱交換器4では、排気ガスは、上述したように第1熱交換器5によって予熱される前の酸化剤ガスとの熱交換により、さらに保有する熱が奪われる。
【0088】
以上のように、導入経路6を流通し、加熱器3に流入する際の排気ガスの温度は、燃焼部16で生成された排気ガスの流量と温度、改質器14および蒸発器15に吸熱される熱量、および第1熱交換器5に吸熱される熱量などを考慮して所望の値となるように制御されている。
【0089】
また、第2熱交換器4を備えることで、第1熱交換器5との熱交換により、奪われる排気ガスの熱量を調整することができる。このため、適切な熱量を保有する排気ガスを加熱器3に導くことができる。このため、加熱器3により、水添脱硫器2を、水添脱硫を行うのに適した所望の温度とすることができる。
【0090】
なお、水添脱硫器2において、Ni−Mo系又はCo−Mo系触媒と酸化亜鉛とを組み合わせた脱硫触媒を充填する場合、水添脱硫器2に到達した際の排気ガス温度が約250〜300℃になるように、燃焼部16で生成する排気ガスの流量と温度、改質器14にて吸熱される熱量、第2熱交換器4および第1熱交換器5にて吸熱される熱量を調整する。このようにして、水添脱硫器2を、水添脱硫を行うのに適した温度となるように加熱する。
【0091】
本実施の形態1に係る燃料電池システム100では、以上のように温度調整された排気
ガスを、導入経路6を通じて加熱器3に流入させることができる。このため、燃料電池システム100では、排気ガスの有する熱により加熱器3の上部に配置された水添脱硫器2を、水添脱硫を行うのに適した所望の温度まで加熱することができる。
【0092】
また、加熱器3を流通した後の排気ガスは十分利用可能な熱量を有しているため、この排気ガスをそのまま外部に排出した場合、燃料電池システム100における熱収支が悪化し、発電効率を低下させてしまう場合がある。実施の形態1に係る燃料電池システム100では、第2熱交換器4を備え、加熱器3から排出された排気ガスからさらに熱回収するため、筐体30から外部に排出する熱量を抑えることができ、その結果、システム全体における効率を向上させることができる。
【0093】
また、第2熱交換器4は、
図4に示すように酸化剤ガスが流通する配管の中に、この配管よりも径の小さい排出経路7を挿通させた二重管型の熱交換器として実現できる。
図4は、実施の形態1に係る燃料電池システム100が備える第2熱交換器4の一例を示す図である。
【0094】
つまり、第2熱交換器4における、排気ガスと酸化剤ガスとの間での熱交換量は、第1熱交換器5における熱交換量と比較して小さくてよい。このため、第2熱交換器4は、第1熱交換器5よりも小型な熱交換器とすることができる。また、第2熱交換器4に流入する排気ガスの温度は、約200〜300℃程度と、燃料電池1から排出された時点の温度よりもかなり低下している。このため第2熱交換器4の耐熱温度は燃料電池1周辺に配置される部材よりも低くなる。
【0095】
それゆえ、第2熱交換器4は、例えばステンレス鋼など高温耐熱性の素材で全体を形成する必要がない。また、第2熱交換器4における接合部分なども、ろう付け加工で十分である。このため、第2熱交換器4については、
図4に示すように、最もシンプルで安価な対向流式二重管型の熱交換器を採用し、この対向流式二重管型の熱交換器を縦に配置する事で燃料電池システム100の小型化を図ることができる。
【0096】
さらに、第2熱交換器4を二重管型熱交換器で構成した場合、この二重管型熱交換器の長さが異なる別の二重管型熱交換器と交換するだけで容易に、排気ガスと酸化剤ガスとの間における熱交換量を調整できるという利点も有する。
【0097】
(熱交換ユニット)
また、上述した燃料電池システム100では、
図1から
図3に示すように第1熱交換器5と第2熱交換器4とは物理的に離れてそれぞれ別々に配置した構成となっていた。
しかしながら、
図5に示すようにこれら第1熱交換器5と第2熱交換器4とを1つのユニット(熱交換ユニット40)として構成することができる。
図5は、実施の形態1に係る燃料電池システム100における熱交換ユニット40の構成の一例を示す図である。
【0098】
図5では、水添脱硫器2と加熱器3と第1熱交換器5と第2熱交換器4とをそれぞれ側部から見た構成を模式的に示している。
図5に示すように、水添脱硫器2の下方に、この水添脱硫器2と面接触するように加熱器3が配置されている。そして、少なくともこれら水添脱硫器2と加熱器3とは断熱部材によって覆われている。また、加熱器3の下方には熱交換ユニット40が設けられている。なお、熱交換ユニット40は、後述するバッファー18を介して加熱器3と接続されている。
【0099】
熱交換ユニット40は、上記したように第1熱交換器5と第2熱交換器4とから構成されており、これらの部材の間にバッファー18を挟み込んで一体的に形成している。バッファー18は、導入経路6と排出経路7とから構成されており、排気ガスを熱交換ユニッ
ト40と加熱器3との間で流出入させるための経路である。さらに、このバッファー18は、第2熱交換器4と第1熱交換器5とを分離させるための緩衝部としても機能する。
【0100】
図5では、バッファー18は、右側部に、垂直方向に延びた導入経路6が、左側部に、垂直方向に延びた排出経路7がそれぞれ配置され、両者が一体となるように構成されている。バッファー18の上端部側において、導入経路6の端部と加熱器3内に形成されている流通経路3aの一方の端部とが接続されるとともに、排出経路7の端部とこの流通経路3aの他方の端部とが接続されている。
【0101】
また、導入経路6の右側側面が開口しており、第1熱交換器5内において排気ガスを流通させるための排気ガス経路5aと連通している。一方、排出経路7の左側側面が開口しており、第2熱交換器4内において排気ガスを流通させるための排気ガス経路4aと連通している。
【0102】
加熱器3では、導入経路6と接続された流通経路3aが加熱器3の右端部まで延び、この右端部から左端部に向かって折り返すように形成されている。さらに流通経路3aは、加熱器3の左端部から右端部側へと折り返され、排出経路7と接続する。このように排気ガスを反時計まわりに、加熱器3の右端部から左端部まで流通させることができるように流通経路3aが形成されている。このため、加熱器3の上に配置された水添脱硫器2を排気ガスが有する熱を利用して一様に加熱することができる。
【0103】
また、熱交換ユニット40では、酸化剤ガスを流通させるための空気経路10が第1熱交換器5の内部と第2熱交換器4の内部とに配置されている。具体的には、空気経路10は、
図5に示すように、第2熱交換器4内、バッファー18内、および第1熱交換器5内をそれぞれ挿通する。そして、酸化剤ガスは、第2熱交換器4、バッファー18、第1熱交換器5の順に空気経路10を流通することによって加熱(予熱)されるように構成されている。
【0104】
つまり、酸化剤ガスが、第2熱交換器4、バッファー18、第1熱交換器5の順に空気経路10を流通する一方、第1熱交換器5内において空気経路10の外周を加熱器3に供給する排気ガスが流通し、第2熱交換器4内において空気経路10の外周を加熱器3から排出された排気ガスが流通する。このため、酸化剤ガスは、まず第2熱交換器4において、加熱器3から排出された排気ガスとの熱交換により予熱される。さらに、第1熱交換器5において、加熱器3に供給する前の排気ガスとの熱交換により予熱される。
【0105】
以上のように、熱交換ユニット40は、第1熱交換器5と第2熱交換器4とを一体に形成したものであり、加熱器3と第1熱交換器5との間を連結する導入経路6の一部と、加熱器3と第2熱交換器4との間を連結する排出経路7の一部とから構成され、第1熱交換器5と第2熱交換器4とを物理的に分離させるためのバッファー18を有している。そして、第1熱交換器5と第2熱交換器4とをバッファー18を介して連結するとともに、連結された第1熱交換器5と第2熱交換器4とを、空気経路10が貫通するように構成されているといえる。
【0106】
このように、第2熱交換器4と第1熱交換器5とは導入経路6と排出経路7とから構成されたバッファー18を介して一体となるように形成することができる。このため、燃料電池システム100では、第2熱交換器4と第1熱交換器5とを別々に、離れた場所に配置する構成と比較して、よりコンパクトな構成とすることができる。
【0107】
(実施の形態2)
次に
図6を参照して、実施の形態2に係る燃料電池システム200の構成について説明
する。
図6は、実施の形態2に係る燃料電池システム200の構成を示す模式図である。
【0108】
上記した実施の形態1に係る燃料電池システム100では、第2熱交換器4および第1熱交換器5において酸化剤ガスの予熱を行う熱源として、排気ガスを利用する構成であった。これに対して実施の形態2に係る燃料電池システム200では、燃料電池1として平板型燃料電池を採用し、燃料電池1のアノードから排出される未利用の燃料(アノードオフガス)を第1熱交換器5の前段に行われる発電空気の予熱の熱源とする点で異なる。さらには、実施の形態2に係る燃料電池システム200では、第2熱交換器4の代わりに凝縮器36を備える点で異なる。また、加熱器3から排出された排気ガスの有する熱を蒸発器15に与え、外部に排出される点でも異なる。凝縮器36は、本開示の第2熱交換器の一例である。それ以外の点については、実施の形態1に係る燃料電池システム100と同様であるため、同じ部材には同じ符号を付し、説明は省略する。
【0109】
凝縮器36は、燃料電池1から排出された排気ガスであるアノードオフガスの有する熱を利用して酸化剤ガスを予熱するものである。すなわち、凝縮器36は、アノードオフガスと酸化剤ガスとの間での熱交換により、アノードオフガスを冷却凝縮させるとともに酸化剤ガスを予熱する。凝縮器36によりアノードオフガスが凝縮されることで得られた凝縮水は、凝縮水経路20を通じて蒸発器15に供給する改質水に混合されるように構成されている。
【0110】
図6に示すように実施の形態2に係る燃料電池システム200は、水添脱硫器2に供給する原料に水素を混合させるために、アノードオフガスの一部を昇圧部33の前段となる原料供給経路8の位置に供給するように構成されている。ところで、アノードオフガスは、燃料電池1の動作温度により高温となってこの燃料電池1から排出される。この高温のアノードオフガスを昇圧部33の前段に導くと昇圧部33が故障する場合がある。そこで、実施の形態2に係る燃料電池システム200では、凝縮器36によりアノードオフガスの温度を低下させつつ、第1熱交換器5により予熱される前の酸化剤ガスの予熱を行うように構成されている。さらに、アノードオフガスを凝縮して生成された凝縮水を蒸発器15に供給する改質水の一部として供給することができる構成となっている。
【0111】
さらにまた、実施の形態2に係る燃料電池システム200は、加熱器3から排出された排気ガスの有する熱を蒸発器15において改質水を蒸発させるための熱源の一部として利用するように構成されている。
【0112】
以上のように、実施の形態2に係る燃料電池システム200では、凝縮器36において、燃料電池1から排出された排気ガスのうち、アノードオフガスの有する熱を利用して第1熱交換器5の前段で酸化剤ガスを予熱することができる。そして、第1熱交換器5は、この凝縮器36において予熱された酸化剤ガスを、燃料電池1から排出された排気ガスのうち、カソードオフガスの有する熱を利用してさらに予熱することができる。
【0113】
このため、第1熱交換器5で酸化剤ガスの予熱に利用するカソードオフガスの熱量を抑制することができる。それゆえ、カソードオフガスが、加熱器3の熱源として機能するのに十分な熱量を有さない場合が生じることを防ぐことができる。
【0114】
さらにまた、実施の形態2に係る燃料電池システム200は、加熱器3から排出されたカソードオフガスの熱を、蒸発器15における改質水の蒸発に利用することができる。このため、加熱器3を流通した後のカソードオフガスをそのまま筐体30の外部に排出する構成と比較して、カソードオフガスが有する熱を蒸発器15で回収できる分、筐体30の外部に放出する熱量を抑えることができる。よって、全体として発電効率の良い燃料電池システムを提供することができる。
【0115】
以上のように、実施の形態2に係る固体酸化物形燃料電池システムは、高効率かつ安定的に動作する固体酸化物形燃料電池システムを提供することが可能である。
【0116】
(実施の形態3)
上記した実施の形態1,2に係る燃料電池システム100,200では、燃料電池から排出された排気ガスの有する熱を利用して加熱器3が水添脱硫器2を加熱する構成であった。しかしながら、加熱器3が水添脱硫器2を加熱するために利用する熱は、この排気ガスが有する熱に限定されるものではない。例えば、排気ガスにより予熱された酸化剤ガスが加熱器3における熱源として十分な熱量を有している場合は、この予熱された酸化剤ガスを熱源として利用する構成としてもよい。以下、加熱器3における熱源として予熱された酸化剤ガスの有する熱を利用する構成を実施の形態3として
図7を参照して説明する。
図7は実施の形態3に係る燃料電池システム300の要部構成の一例を示したブロック図である。
【0117】
実施の形態3に係る燃料電池システム300は、
図1に示す実施の形態1に係る燃料電池システム100と比較して以下の点が異なる。すなわち、燃料電池システム300は、空気経路10を備える代わりに、第2熱交換器4において予熱された酸化剤ガスを加熱器3に導くための予熱後空気導入経路22と、加熱器3において熱利用された後の酸化剤ガスを燃料電池1に供給するための予熱後空気経路23とを備える点で異なる。また、燃料電池システム300は、導入経路6と排出経路7とを備える代わりに、熱交換用排気ガス経路21を備える点で異なる。それ以外の構成部材については実施の形態1に係る燃料電池システム100と同様であるため、同じ符号を付し、その説明については省略する。
【0118】
上記した構成を有する燃料電池システム300では、以下のように排気ガスと酸化剤ガスとが流通する。
図7に示すように、燃料電池システム300に供給された酸化剤ガスは、まず、燃料電池システム100で流通する排気ガスと第2熱交換器4において熱交換を行い、予熱される。ここで、酸化剤ガスと熱交換を行う排気ガスは、すでに第1熱交換器5において保有する熱の一部を失った排気ガスである。しかしながら、この排気ガスは、第2熱交換器4において酸化剤ガスを加熱器3の熱源として利用できる温度(270〜300℃)まで予熱できるだけの熱量を有している。
【0119】
第2熱交換器4における排気ガスとの熱交換により予熱された酸化剤ガスは、予熱後空気導入経路22を流通して加熱器3に導かれる。加熱器3では、予熱された酸化剤ガスが有する熱の一部を利用して加熱器3上に配置された水添脱硫器2を加熱する。
【0120】
なお、第2熱交換器4において予熱された酸化剤ガスの全量が、加熱器3に供給される構成であってもよいし、その一部だけが加熱器3に供給される構成であってもよい。すなわち、加熱器3において水添脱硫器2を適切な温度まで加熱できる流量の酸化剤ガスであればよい。第2熱交換器4において予熱された酸化剤ガスの一部を加熱器3に供給する構成の場合、特に図示していないが、加熱器3に供給されない酸化剤ガスは加熱器3を経由せず第1熱交換器5に向かって流通する。
【0121】
加熱器3において保有する熱の一部を失った酸化剤ガスは、予熱後空気経路23を流通して第1熱交換器5に導かれる。第1熱交換器5では、加熱器3において保有する熱の一部を失った酸化剤ガスと、燃料電池システム100で流通する排気ガスとの間で熱交換を行う。この熱交換によりこの酸化剤ガスは、再度、予熱され、燃料電池1に供給される。
【0122】
以上のように、実施の形態3に係る燃料電池システム300では、酸化剤ガスは、加熱器3において熱利用され、保有する熱の一部を失うものの、第2熱交換器4において予熱
されている。このため、第2熱交換器4を備えず予熱されない酸化剤ガスを第1熱交換器5に導く構成と比較して、第1熱交換器5において酸化剤ガスの予熱に利用する排気ガスの熱量を抑制することができる。このため、第1熱交換器5において熱交換された後の排気ガスをより高温のまま第2熱交換器4に導くことができる。それゆえ、第2熱交換器4では、酸化剤ガスを加熱器3の熱源として利用できる程度まで十分に予熱することができるようになる。
【0123】
また、実施の形態3に係る燃料電池システム300は、第1熱交換器5を流通した後の排気ガスをそのまま筐体30の外部に排出する構成と比較して、排気ガスが有する熱を第2熱交換器4でも回収して燃料電池の発電に供することができるため、燃料電池システム300における発電効率を高めることができる。
【0124】
上記説明から、当業者にとって、本開示の多くの改良及び他の実施の形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本開示を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本開示の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。