特許第6488518号(P6488518)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6488518
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】液体柔軟剤組成物
(51)【国際特許分類】
   D06M 13/463 20060101AFI20190318BHJP
   D06M 13/372 20060101ALI20190318BHJP
   D06M 13/152 20060101ALI20190318BHJP
   D06M 13/224 20060101ALI20190318BHJP
   D06M 13/00 20060101ALI20190318BHJP
   D06M 13/477 20060101ALI20190318BHJP
   D06M 13/12 20060101ALI20190318BHJP
   D06M 23/12 20060101ALI20190318BHJP
   C11B 9/00 20060101ALI20190318BHJP
【FI】
   D06M13/463
   D06M13/372
   D06M13/152
   D06M13/224
   D06M13/00
   D06M13/477
   D06M13/12
   D06M23/12
   C11B9/00 X
   C11B9/00 K
   C11B9/00 L
【請求項の数】10
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2015-125741(P2015-125741)
(22)【出願日】2015年6月23日
(65)【公開番号】特開2017-8446(P2017-8446A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2018年3月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100089185
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100186989
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 智之
(72)【発明者】
【氏名】山根 有介
(72)【発明者】
【氏名】長塚 路子
(72)【発明者】
【氏名】田中 作弥
(72)【発明者】
【氏名】澤田 純矢
【審査官】 長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/044728(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/105652(WO,A1)
【文献】 特開平10−265325(JP,A)
【文献】 DIKUSAR,E.A.,New esters of vanillin and vanillal with some alkane and arene carboxylic acids,Russian Journal of Applied Chemistry,2006年,Vol.79, No.6,pp.1035-1037
【文献】 DIKUSAR,E.A. et al,2-[3-Alkoxy-4-(hydroxy, alkoxy, acyloxy)phenyl]-2,3-dihydro-1H- benzimidazoles on the basis of vanil,Russian Journal of General Chemistry,2007年,Vol.77, No.11,pp.1924-1927
【文献】 DIKUSAR,E.A. et al,Synthesis of Schiff bases from 1-naphthylamine and vanillin, vanillal, and their O-acyl derivatives,Russian Journal of Organic Chemistry,2006年,Vol.42, No.3,pp.369-375
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00−8/99
A61Q1/00−90/00
C11B1/00−15/00
C11C1/00−5/02
D06M10/00−16/00
19/00−23/18
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び水を含有し、30℃におけるpHが2.5以上4.0以下である、液体柔軟剤組成物。
<(A)成分>
下記(a1)成分、及び(a2)成分から選ばれる1種以上を含む成分。
(a1)成分:下記一般式(1)で表される第3級アミン化合物、及びその酸塩。
(a2)成分:下記一般式(1)で表される第3級アミン化合物の4級化物。
〔R−C(=O)−O−(C2pO)−C2qN(R3−m (1)
〔式中、
は炭素数11以上23以下の炭化水素基であり、
は炭素数1以上3以下の炭化水素基及びHO−(C2pO)−C2q基から選ばれる基であり、
mは1以上3以下の数であり、p及びqは2又は3の数であり、rは0以上5以下の数である。
同一分子内にR、R、p、q、rが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。〕
<(B)成分>
logP値が2.0以上6.0以下である香料化合物を90質量%以上含有する香料を内包したマイクロカプセル。
<(C)成分>
フェノール構造又はヒドロキシ−4−ピロン構造を有する香料と、炭素数8以上18以下の脂肪族モノカルボン酸又は炭素数3以上20以下の脂肪族ジカルボン酸とのエステルからなる香料前駆体。
【請求項2】
(A)成分が、(a1)成分と(a2)成分とを含有し、(a2)成分に対する(a1)成分の質量比[(a1)成分/(a2)成分]が3/97以上40/60以下である、請求項1に記載の液体柔軟剤組成物。
【請求項3】
(a2)成分が、前記一般式(1)で表される第3級アミン化合物を、塩化メチル、ジメチル硫酸及びジエチル硫酸から選ばれる1種以上のアルキル化剤で4級化した4級化物である、請求項1又は2に記載の液体柔軟剤組成物。
【請求項4】
(B)成分のマイクロカプセルの外殻を構成する材料が、ポリウレタン、ポリアミド、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルギン酸塩、ポリアクリル樹脂、ゼラチン及びアラビアゴムから選ばれる1種以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の液体柔軟剤組成物。
【請求項5】
(C)成分の香料が、マルトール、エチルマルトール、バニリン、エチルバニリン、及びラズベリーケトンから選ばれる1種以上である、請求項1〜4のいずれかに記載の液体柔軟剤組成物。
【請求項6】
(C)成分の脂肪族モノカルボン酸が、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、及びオレイン酸から選ばれる1種以上である、請求項1〜5のいずれかに記載の液体柔軟剤組成物。
【請求項7】
(A)成分を5質量%以上20質量%以下、(B)成分を0.01質量%以上0.5質量%以下、(C)成分を0.001質量%以上1.0質量%以下含有する、請求項1〜6のいずれかに記載の液体柔軟剤組成物。
【請求項8】
更に(D)成分として、(B)成分及び(C)成分以外の香料を含有する、請求項1〜7のいずれかに記載の液体柔軟剤組成物。
【請求項9】
(D)成分を0.1質量%以上2.0質量%以下含有する、請求項8に記載の液体柔軟剤組成物。
【請求項10】
更に(E)成分として、非イオン性界面活性剤を0.5質量%以上8質量%以下含有する、請求項1〜9のいずれかに記載の液体柔軟剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体柔軟剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、一般家庭での洗濯物の香りに対する意識の高まりから、持続性のある香料や持続性付与成分を用いた衣料用洗浄剤及び仕上げ剤等の繊維製品処理剤組成物が種々検討されている。
しかしながら、一般家庭で使用する繊維処理剤組成物は水を介して繊維製品に処理されるため、繊維製品に付与された香料は乾燥時に水と共に揮散したり、乾燥後、経時的に香料が布上から揮散することにより香りが弱くなる。
このような問題に対し、例えば、特許文献1には、特定の持続性香料組成物を含有し、布地上の香料の寿命を改善する布地軟化組成物が開示されている。また、特許文献2には特定の持続性香料組成物を含有し、洗濯物上における香料の持続性を改善した布帛柔軟剤組成物が開示されている。
【0003】
また、香りの持続性、及び残香性の向上を目的として香料をマイクロカプセル化して配合する試みがなされている。香料のマイクロカプセルは、芯物質の香料を壁材で包んだ粒子状物質であり、その役割は芯物質の香料を保護し、カプセルに物理的な力が加わった際にカプセルの壁が破れて芯物質の香料を放出するものである。
このようなマイクロカプセルとして特許文献3には、芯物質として引火点が50〜130℃の範囲内の香料組成物を含有するカプセル化香料が記載されている。また、特許文献4には、高揮発性香料等の揮発成分と、それよりも高融点で相溶性がある添加剤を含有するマイクロカプセルが記載されている。
【0004】
更に、持続性のある香料に関する技術として、香料アルコールのエステルを用いることにより持続的に香料を発生させる技術が提案されている。
具体的に特許文献5には、特定のフレグラントアルコールと、C7〜C24の特定のアルキル基を有するカルボン酸とのエステル化合物を含有する洗剤及び/又は織物柔軟剤で処理する織物の芳香付け法が開示されている。
特許文献6には、皮膚ケアやパーソナルケアに関し、放臭性アルコールと、任意に置換したC1−C30アルキル等を有する酸とのエステルを含有する皮膚に接触すると放臭性を示すフレグランス先駆体組成物が開示されている。
【0005】
また、特許文献7には、香気を長時間持続させることを目的として、二塩基酸モノエステル及び/又は二塩基酸ジエステルと、エチレングリコール又はプロピレングリコールとの混合物等を用いる衣類にも使用できる徐放性香料組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表平11−504994号公報
【特許文献2】特表平10−507793号公報
【特許文献3】特開2006−249326号公報
【特許文献4】国際公開第2007/038570号
【特許文献5】特表平8−502522号公報
【特許文献6】特表2000−512663号公報
【特許文献7】特開2003−313580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
カプセル化された香料は柔軟剤等に配合され、これを用いて繊維製品を処理することによりマイクロカプセルを繊維製品に付着させることができる。しかしながら、香料は、カプセル内に閉じ込められていることから、柔軟剤に直接配合されている外香料と比較して、微香性である。最近では意図的にカプセルを壊すことで香調の変化を楽しむ製品が提案されているが、香りの持続性の解決には到っていない。
また、エチルバニリンやエチルマルトールのような親水性系香料は、水中への溶解性が比較的高い香料であるため、繊維処理剤用の香料組成物に配合した場合に、香りの持続性や繊維吸着性に問題があった。
【0008】
本発明は、繊維製品を処理した場合に、優れた香りの持続性を付与することができる液体柔軟剤組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の液体柔軟剤組成物は、下記(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び水を含有し、30℃におけるpHが2.5以上4.0以下であるものである。
<(A)成分>
下記(a1)成分、及び(a2)成分から選ばれる1種以上を含む成分。
(a1)成分:下記一般式(1)で表される第3級アミン化合物、及びその酸塩。
(a2)成分:下記一般式(1)で表される第3級アミン化合物の4級化物。
〔R−C(=O)−O−(C2pO)−C2qN(R3−m (1)
〔式中、
は炭素数11以上23以下の炭化水素基であり、
は炭素数1以上3以下の炭化水素基及びHO−(C2pO)−C2q基から選ばれる基であり、
mは1以上3以下の数であり、p及びqは2又は3の数であり、rは0以上5以下の数である。
同一分子内にR、R、p、q、rが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。〕
<(B)成分>
logP値が2.0以上6.0以下である香料化合物を90質量%以上含有する香料を内包したマイクロカプセル。
<(C)成分>
フェノール構造又はヒドロキシ−4−ピロン構造を有する香料と、炭素数8以上18以下の脂肪族モノカルボン酸又は炭素数3以上20以下の脂肪族ジカルボン酸とのエステルからなる香料前駆体。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、繊維製品を処理した場合に、優れた香りの持続性を付与することができる液体柔軟剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[液体柔軟剤組成物]
本発明の液体柔軟剤組成物は、下記(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び水を含有し、30℃におけるpHが2.5以上4.0以下であるものである。以下、各成分について説明する。
【0012】
<(A)成分>
本発明における(A)成分は、下記(a1)成分、及び(a2)成分から選ばれる1種以上を含む成分である。
〔(a1)成分〕
本発明における(a1)成分は、下記一般式(1)で表される第3級アミン化合物、及びその酸塩である。
〔R−C(=O)−O−(C2pO)−C2qN(R3−m (1)
〔式中、
は炭素数11以上23以下の炭化水素基であり、
は炭素数1以上3以下の炭化水素基及びHO−(C2pO)−C2q基から選ばれる基であり、
mは1以上3以下の数であり、p及びqは2又は3の数であり、rは0以上5以下の数である。
同一分子内にR、R、p、q、rが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。〕
【0013】
一般式(1)中のRは炭素数11以上23以下であり、繊維製品の柔軟化の観点から、炭素数13以上21以下の非環式の炭化水素基が好ましい。Rの炭化水素基の具体例は、直鎖又は分岐鎖のアルキル基、アルケニル基が挙げられ、直鎖のアルキル基、アルケニル基がより好ましい。
のより具体的な例としては、炭素数13以上21以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、アルケニル基が好ましく、炭素数13以上21以下の直鎖のアルキル基、アルケニル基から選ばれる基が挙げられる。
【0014】
乳濁型の液体柔軟剤組成物が望まれる場合においては、液体柔軟剤組成物の製造容易性の観点から、Rは、炭素数11以上23以下のアルキル基、及び炭素数11以上23以下アルケニル基から選ばれる基であることが好ましく、炭素数13以上21以下のアルキル基、及び炭素数13以上21以下のアルケニル基から選ばれる基であることがより好ましい。
本発明における(a1)成分は、前記一般式(1)におけるRが異なる置換基で構成される化合物の混合物であることが好ましく、Rが、アルキル基である化合物とアルケニル基である化合物との混合物であることがより好ましい。
アルキル基からなる化合物とアルケニル基からなる化合物との割合は原料となる脂肪酸又は脂肪酸エステルの組成によって決めることができる。アルキル基の量とアルケニル基の量の調整は、アルケニル基を有する原料の水素添加、又はRがアルケニル基である化合物の水素添加により行うことができる。
【0015】
前記アルケニル基に含まれる不飽和基はシス体とトランス体が存在する。トランス体に対するシス体のモル比[シス体/トランス体]は、好ましくは30/70以上、99/1以下であり、アルケニル基の入手性の観点から、より好ましくは50/50以上、97/3以下である。本発明において、シス体とトランス体の比はH−NMRの積分比で算出することができる。
【0016】
一般式(1)中のp及びqは、それぞれ、2又は3の数である。処理した布吸水性保持の観点から、pは2が好ましい。(A)成分の製造の容易性の観点から、qは2が好ましい。
一般式(1)中のrは、繊維製品の柔軟化の点から、0以上2以下の数が好ましく、0がより好ましい。
【0017】
本発明における(a1)成分は、前述のとおり一般式(1)で表される第3級アミン化合物及びその酸塩であるが、液体柔軟剤組成物のpHにより、(a1)成分のほぼ全てが酸塩の状態で液体柔軟剤組成物中に存在していてもよい。
(a1)成分を構成する第3級アミン化合物が酸塩として存在する場合の酸としては、無機酸又は有機酸が挙げられる。
無機酸としては、塩酸、及び硫酸が挙げられる。
有機酸としては、炭素数1以上3以下のアルキル硫酸、炭素数1以上10以下の1価又は多価のカルボン酸、及び炭素数1以上20以下の1価又は多価のスルホン酸が挙げられる。有機酸の具体例としては、メチル硫酸、エチル硫酸、p−トルエンスルホン酸、(o−、m−、p−)キシレンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、グリコール酸、クエン酸、安息香酸、及びサリチル酸が挙げられる。
【0018】
(a1)成分である一般式(1)で表されるアミン化合物の製造方法は特に制限されないが、例えば、下記一般式(1−1)で表わされるアルカノールアミン化合物と脂肪酸とのエステル化反応、又は一般式(1−1)で表わされるアルカノールアミン化合物と脂肪酸エステルとのエステル交換反応によって得ることができる。
前記脂肪酸としては、パーム核油由来、ヤシ油由来、牛脂、菜種油、ひまわり油由来の脂肪酸を用いることができ、脂肪酸比率を調製したものであってもよく、由来の違う脂肪酸を併用して用いてもよい。
【0019】
〔HO−(C2pO)−C2qN(R3−n (1−1)
〔式中、Rは炭素数1以上3以下の炭化水素基から選ばれる基であり、nは1以上3以下の数、p、q、rは、前記一般式(1)と同じ意味を表す。〕
【0020】
エステル化反応の例としては、例えば、特表2000−510171号公報の8〜9頁目に記載されている方法を適用することができる。
エステル交換反応の例としては、例えば、特開平7−138211号公報の段落〔0013〕〜段落〔0016〕に記載の方法を適用することができる。
【0021】
〔(a2)成分〕
本発明における(a2)成分は、前記一般式(1)で表される第3級アミン化合物の4級化物であり、一般式(1)で表される第3級アミン化合物とアルキル化剤を用いた4級化反応により得ることができる。
【0022】
アルキル化剤としては、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、塩化メチル、臭化メチル、及びヨウ化メチル等が挙げられ、これらの中でも、塩化メチル、ジメチル硫酸及びジエチル硫酸から選ばれる1種以上が好ましい。すなわち、本発明における(a2)成分としては、一般式(1)で表される第3級アミン化合物を、塩化メチル、ジメチル硫酸及びジエチル硫酸から選ばれる1種以上のアルキル化剤で4級化した4級化物が好ましい。
4級化反応としては、例えば、特開平7−138211号公報の段落〔0017〕〜段落〔0023〕に記載の方法や、特開平11−106366号公報に記載の製造方法を適用することができる。
(A)成分は、1種類の化合物でもよく、2種類以上の化合物の混合物であってもよい。
【0023】
(A)成分が2種類以上の化合物の混合物である場合、mは、好ましくは1.2以上2.5以下の混合物を用いることができる。繊維製品の柔軟化の観点から、mは、好ましくは1.3以上、より好ましくは1.4以上であり、そして、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.9以下である。
【0024】
前記mを満たす混合物を得る上で、その原料となる一般式(1−1)の化合物は異なる構造の化合物を混合したものを用いてもよい。また、一般式(1−1)のnが3の化合物を脂肪酸や脂肪酸エステルと反応させてmが前記範囲の混合物を得ることも好ましい。
【0025】
〔(a2)成分に対する(a1)成分の質量比〕
本発明における(A)成分は、(a1)成分と(a2)成分との両方を含有することができる。この場合、(a2)成分に対する(a1)成分の質量比[(a1)成分/(a2)成分]は、好ましくは1/99以上であり、そして、好ましくは40/60以下、より好ましくは35/65以下である。なお、混合物中の(a1)成分と(a2)成分との割合は混合物中のアミン価から求めることができる。
【0026】
〔本発明において好ましい(A)成分〕
本発明では、例えば次のようにして得られた(A)成分を用いることが好ましい。
すなわち、一般式(1)で表される化合物として、メチルジエタノールアミン〔前記一般式(1−1)中、Rがメチル基であって、n=2、q=2、r=0で示される化合物である〕、及びトリエタノールアミン〔前記一般式(1−1)中、n=3、q=2、r=0で示される化合物である〕から選ばれるアルカノールアミン(a0−1)を用い、このアルカノールアミン(a0−1)と、炭素数12以上24以下の脂肪酸又はその低級アルキルエステル(a0−2)とを、モル数の比〔(a0−1)中の水酸基のモル数/(a0−2)のモル数〕が、1/1以上1/0.5以下となるようにエステル化反応させることにより得られる第3級アミン化合物(a1)を、塩化メチル、ジメチル硫酸及びジエチル硫酸から選ばれるアルキル化剤によって4級化反応させることで得られる、(a1)成分と(a2)成分とを含む(A)成分が好ましい。なお、アルカノールアミン(a0−1)としてはトリエタノールアミンが好ましく、前記(a0−2)における低級アルキルエステルのアルキル基としては、好ましくは炭素数1以上3以下のアルキル基であり、より好ましくはメチル基である。更に、4級化に用いるアルキル化剤は、ジメチル硫酸が好ましい。
前述の方法により得られた(A)成分中の(a2)成分に対する(a1)成分の質量比[(a1)成分/(a2)成分]は、(A)成分の製造上の経済性の観点、及び本発明の効果と十分な柔軟性を得る観点から、好ましくは3/97以上、より好ましくは5/95以上であり、そして、好ましくは40/60以下、より好ましくは35/65以下である。また、前述の方法により得られた(A)成分においては、(a1)成分及び(a2)成分の合計が、固形分中の90質量%以上を占めることが好ましい。
【0027】
(A)成分は、その合成上、未反応の脂肪酸、未反応のアルカノールアミン、脂肪酸メチルエステル、及びその4級化物等の不純物を含んだ混合物として得ることができるが、製造方法の工夫することにより不純物を低減させることができ、本発明の効果や柔軟効果を損なわない限り、製造コストの観点から、それらの不純物を除かなくてもよい。
【0028】
また、(A)成分としては、一般式(1)におけるmが1である化合物、mが2である化合物、及びmが3である化合物をそれぞれ含有する混合物を用いてもよい。
該混合物中のモル比[(m=1の化合物)/(m=1の化合物とm=2の化合物とm=3の化合物の合計)]は、柔軟効果の観点から、好ましくは10/100以上40/100以下である。
また、前記混合物中のモル比[(m=2の化合物)/(m=1の化合物とm=2の化合物とm=3の化合物との合計)]は、柔軟効果の観点から、好ましくは30/100以上90/100以下である。
更に、前記混合物中のモル比[(m=3の化合物)/(m=1の化合物とm=2の化合物とm=3の化合物の合計)]は、柔軟効果の観点から、好ましくは5/100以上40/100以下である。
本発明における(A)成分は、柔軟効果の観点から、前述の3つのモル比から選ばれる2つ以上のモル比を満たすことが好ましい。
【0029】
<(B)成分>
本発明における(B)成分は、logP値が2.0以上6.0以下である香料化合物を90質量%以上含有する香料を内包したマイクロカプセルである。
本発明に用いるマイクロカプセルは、所定の香料と任意の香料希釈剤又は溶剤とをカプセル化したものである。例えば、マイクロカプセルの外殻(壁材)に樹脂を用い、公知の方法により香料を封入することにより得ることができる。
【0030】
本発明に用いるマイクロカプセルの調製法は特に制限されず、公知のマイクロカプセル化方法を採用することができる。具体的には化学的製法(界面重合法、in situ重合法、オリフィス法)、物理化学的方法(コアセルベーション法)、機械的・物理的方法(気中懸濁被覆法、噴霧乾燥法、高速気流中衝撃法)等が挙げられる。
本発明に用いるマイクロカプセルの外殻を構成する材料としては、ポリウレタン、ポリアミド、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルギン酸塩、ポリアクリル樹脂、ゼラチン、アラビアゴム、及びデンプン等の各種高分子化合物が挙げられる。これらの中でも、ポリウレタン、ポリアミド、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルギン酸塩、ポリアクリル樹脂、ゼラチン及びアラビアゴムから選ばれる1種以上が好ましい。
【0031】
本発明に用いるマイクロカプセルの製造方法についてより具体的には、「造る+使うマイクロカプセル」(小石眞純ら、工業調査会、2005年発行)や、特開2008−63575号公報、特開2006−249326号公報、特開平11−216354号公報、及び特開平5−222672号公報等に記載されている方法を採用することができる。
【0032】
(B)成分のマイクロカプセルの好ましい製造方法としては、エチレン−無水マレイン酸共重合体等の乳化剤と香料及び任意の希釈剤又は溶剤を水中に分散させて乳化物を得た後、この乳化物にメラミン−ホルムアルデヒド樹脂等の壁材を添加して撹拌することによりマイクロカプセルのスラリーを得る方法が挙げられる。
予め、壁材を形成する樹脂となるモノマーと、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、アクリル酸−アクリルアミド共重合等の乳化剤とを水中で混合して、壁材・乳化剤混合物を調製した後、この壁材・乳化剤混合物と香料及び任意の希釈剤又は溶剤とを乳化し、この乳化物にホルムアルデヒドを添加して撹拌することによりマイクロカプセルのスラリーを得る方法等が挙げられる。
【0033】
(B)成分のマイクロカプセルに包含される香料〔以下、「香料(B1)」ともいう〕は、logP値が2.0以上6.0以下である香料化合物〔以下、「香料化合物(b1)」ともいう〕を90質量%以上含有する。香料(B1)は、通常、香料化合物(b1)を含む複数の香料化合物を含有する組成物である。香料(B1)は、香料化合物(b)を、95質量%以上含有することが好ましい。また、香料化合物(B1)のlogP値は、カプセルの製造容易の観点から、2.0以上、好ましくは2.3以上、より好ましくは2.5以上であり、そして、6.0以下、好ましくは5.5以下、より好ましくは5.0以下である。
【0034】
香料化合物(b1)としては、オクタナール(3.0)、ノナナール(3.0)、デカナール(4.0)、リラール(2.2)、リリアール(3.9)、ヘキシルシンナミックアルデヒド(4.9)、アミルシンナミックアルデヒド(4.3)、p,t−ブチルヒドロシンナミックアルデヒド(3.6)、ジメチルテトラヒドロベンズアルデヒド(2.9)、酢酸ヘキシル(4.9)、酢酸トリシクロデセニル(2.4)、酢酸シトロネリル(4.2)、酢酸ゲラニル(3.7)、酢酸リナリル(3.5)、酢酸ターピニル(3.6)、酢酸o,t−ブチルシクロヘキシル(4.1)、酢酸p,t−ブチルシクロヘキシル(4.1)、プロピオン酸アリルシクロヘキシル(2.9)、プロピオン酸トリシクロデセニル(3.9)、カプロン酸アリル(3.2)、サリチル酸アミル(4.6)、サリチル酸ヘキシル(5.1)、サリチル酸ベンジル(4.2)、サリチル酸シクロヘキシル(4.5)、サリチル酸シス−3−ヘキセニル(4.6)、ジヒドロジャスモン酸メチル(2.4)、α−イオノン(3.7)、β−イオノン(3.7)、γ−メチルイオノン(4.0)、α−ダマスコン(3.6)、β−ダマスコン(3.6)、δ−ダマスコン(3.6)、γ−ノナラクトン(2.8)、γ−デカラクトン(3.3)、γ−ウンデカラクトン(3.8)、ネロリンヤラヤラ(3.2)、シクラメンアルデヒド(3.5)、リモネン(4.4)、テトラヒドロリナロール(3.5)、ターピネオール(2.6)、ゲラニオール(2.4)、シトロネロール(3.3)、リナロール(2.6)、テトラヒドロリナロール(3.5)、オイゲノール(3.0)、ジヒドロミルセノール(3.0)、フェニルヘキサノール(3.5)、メチルアンスラニレート(2.0)、メチルβ−ナフチルケトン、(2.8)、イソEスーパー(4.7)、セドリルメチルエーテル(5.1)、サンダルマイソールコア(花王株式会社製)(3.9)、ジャバノール(ジボダン社製)(4.7)、アンブロキサン(5.3)、1,8−シネオール(2.9)、ゲラニルニトリル(3.9)、シトロネリルニトリル(4.4)、11−オキサ−16−ヘキサデカノリド(ムスクR−1、ジボダン製)(4.5)、エチレンブラシレート(4.6)、エチレンドデカンジオエート(4.1)、カシュメラン(4.0)から選ばれる1種以上の香料化合物が挙げられる。
また、logP値が6.0よりも高い香料として、シクロペンタデカノリド(6.3)、シクロヘキサデカノリド(6.8)、アンブレットリド(6.4)もカプセルに内包する香料として好ましい。ここで、( )内の数字はlogP値である。
【0035】
本発明において、logP値とは、水と1−オクタノールに対する有機化合物の親和性を示す係数である。1−オクタノール/水分配係数Pは、1−オクタノールと水の2液相の溶媒に微量の化合物が溶質として溶け込んだときの分配平衡で、それぞれの溶媒中における化合物の平衡濃度の比であり、底10に対するそれらの対数logPの形で示すのが一般的である。多くの化合物のlogP値が報告されており、Daylight Chemical Information Systems, Inc. (Daylight CIS)等から入手しうるデータベースには多くの値が掲載されているので参照できる。実測のlogP値がない場合には、Daylight CISから入手できるプログラム「CLOGP」等で計算することができる。このプログラムは、実測のlogP値がある場合にはそれと共に、Hansch, Leoのフラグメントアプローチにより算出される「計算logP(ClogP)」の値を出力する。
【0036】
フラグメントアプローチは化合物の化学構造に基づいており、原子の数及び化学結合のタイプを考慮している(cf. A. Leo, Comprehensive Medicinal Chemistry, Vol.4, C. Hansch, P.G. Sammens, J.B. Taylor and C.A. Ramsden, Eds., p.295, Pergamon Press, 1990)。このClogP値を、化合物の選択に際して実測のlogP値の代わりに用いることができる。本発明では、logPの実測値があればそれを、無い場合はプログラムCLOGP v4.01により計算したClogP値を用いる。
【0037】
なお(B)成分のマイクロカプセルは、香料(B1)の他に、希釈剤、溶剤、及び固化剤から選ばれる1種以上を内包してもよい。
希釈剤ないし溶剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、及びグリセリンを挙げることができ、脂肪アルコール、脂肪酸、脂肪酸の低級アルコールエステル、及び脂肪酸のグリセリンエステルを挙げることもできる。
【0038】
(B)成分のマイクロカプセルの1次平均粒径は、好ましくは1μm以上であり、そして、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、更に好ましくは20μm以下である。本発明のマイクロカプセルの平均粒径は、株式会社堀場製作所製レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA−910によって求められたメジアン径である。なお、(B)成分は、保存安定性を損なわない程度に一部凝集していてもよい。
【0039】
<(C)成分>
本発明における(C)成分は、フェノール構造又はヒドロキシ−4−ピロン構造を有する香料〔以下、「(c1)成分」ともいう〕と、炭素数8以上18以下の脂肪族モノカルボン酸〔以下、「(c2−1)成分」ともいう〕又は炭素数3以上20以下の脂肪族ジカルボン酸〔以下、「(c2−2)成分」ともいう〕とのエステル化合物からなる香料前駆体である。
【0040】
〔(c1)成分〕
前記(c1)成分は、フェノール構造又はヒドロキシ−4−ピロン構造を有する香料である。
本発明において「香料」とは、匂いを感じさせる物質のことをいい、「フレグランス(fragrance)」のことを指す。
フェノール構造又はヒドロキシ−4−ピロン構造を有する香料のpKaは、長期に亘って強い香りを発現させる観点から、好ましくは13以下であり、より好ましくは7以上12以下、更に好ましくは7.5以上11.5以下である。
本発明において、pKaとは酸解離定数のことであり、水素イオンが放出される解離反応における平衡定数Kaの負の常用対数pKaによって表される。pKaが小さいほど強い酸であることを示す。本発明におけるpKaの算出には、インターネット上に構築されている化学構造−物性計算サイトであるSPARC(SPARC Performs Automated Reasoning In Chemistry、ARChem社、http://www.archemcalc.com/sparc.html)を用いた。
【0041】
フェノール構造を有する香料としては、長期に亘って持続的に香料を徐放させる観点から、炭素数が好ましくは7以上、より好ましくは8以上、更に好ましくは9以上であり、そして、好ましくは14以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは9以下であり、9であるものがより更に好ましい。
具体的には、バニリン(炭素数8、pKa7.8)、エチルバニリン(炭素数9、pKa7.8)、iso−オイゲノール(炭素数10、pKa9.8)、サリチル酸ベンジル(炭素数14、pKa9.8)、サリチル酸シス−3−ヘキセニル(炭素数13、pKa9.8)、バニリンPGA(炭素数11、pKa9.8)、サリチル酸シクロヘキシル(炭素数13、pKa10.0)、オイゲノール(炭素数10、pKa10.0)、ジンゲロン(炭素数11、pKa10.0)、バニトロープ(炭素数11、pKa10.0)、ラズベリーケトン(炭素数10、pKa10.1)、サリチル酸メチル(炭素数8、pKa10.1)、サリチル酸ヘキシル(炭素数13、pKa10.1)、カルバクロール(炭素数10、pKa10.5)、及びチモール(炭素数10、pKa10.9)が挙げられる。
【0042】
ヒドロキシ−4−ピロン構造を有する香料としては、炭素数が好ましくは6以上、より好ましくは7以上であり、そして、好ましくは10以下、より好ましくは7以下であり、7であるものが更に好ましい。炭素数が前記範囲内であると、長期に亘って香料を徐放することができる。
具体的には、マルトール(炭素数6、pKa11.2)、エチルマルトール(炭素数7、pKa11.3)を挙げることができる。
前記(c1)成分の中でも、保存安定性を向上させることができ、また、徐放性能を向上させる観点から、マルトール、エチルマルトール、バニリン、エチルバニリン、及びラズベリーケトンが好ましく、エチルマルトール及びエチルバニリンがより好ましい。
これらの香料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
〔(c2−1)成分〕
前記(c2−1)成分は、炭素数8以上18以下の脂肪族モノカルボン酸である。
炭素数が前記範囲内の脂肪族モノカルボン酸を用いることにより、液体柔軟剤組成物中において、(c)成分のエステル結合部分が水と接触しにくくなり加水分解の進行が抑制され、液体柔軟剤組成物の保存安定性が向上する。それにより、液体柔軟剤組成物中製品の液色の変化を抑制することができる。
脂肪族モノカルボン酸の炭素数は、液体柔軟剤組成物中の保存安定性を向上させる観点から、8以上、好ましくは10以上、より好ましくは11以上、更に好ましくは12以上であり、消費される香料の原子効率及び初期の発香の観点から、18以下、好ましくは16以下、より好ましくは14以下、更に好ましくは12以下であり、12であるものがより更に好ましい。
【0044】
脂肪族モノカルボン酸の具体例としては、エナント酸、カプリル酸、ベラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ジメチルオクタン酸、オクテン酸、デセン酸、ドデセン酸、テトラデセン酸、ヘキサデセン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、及びリノレン酸等の脂肪族モノカルボン酸が挙げられる。
本発明においては、消費される香料の原子効率及び初期の発香の観点から、これらの中でも、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、及びオレイン酸が好ましく、ラウリン酸、ステアリン酸、及びオレイン酸がより好ましい。
【0045】
〔(c2−2)成分〕
前記(c2−2)成分は、炭素数3以上20以下の脂肪族ジカルボン酸である。
炭素数が前記範囲内の脂肪族ジカルボン酸を用いることにより、液体柔軟剤組成物中において、(c)成分のエステル結合部分が水と接触しにくくなり加水分解の進行が抑制され、液体柔軟剤組成物の保存安定性が向上する。それにより、液体柔軟剤組成物中製品の液色の変化を抑制することができる。
脂肪族ジカルボン酸の炭素数は、液体柔軟剤組成物の保存安定性を向上させる観点から、3以上、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、更に好ましくは9以上、より更に好ましくは10以上であり、消費される香料の原子効率及び初期の発香の観点から、20以下、好ましくは16以下、より好ましくは14以下、更に好ましくは12以下である。
脂肪族ジカルボン酸の具体例としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、及びテトラデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。
本発明においては、消費される香料の原子効率及び初期の発香の観点から、これらの中でも、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、及びドデカン二酸が好ましく、アジピン酸、セバシン酸がより好ましく、及びセバシン酸が更に好ましい。
【0046】
〔(C)成分の製造方法〕
前記(C)成分を構成するエステルは、例えば下記(i)〜(iv)の方法で製造することができる。
(i)前記香料と、前記脂肪族モノカルボン酸又は脂肪族ジカルボン酸とを直接エステル化反応させることにより製造する方法
(ii)前記脂肪族モノカルボン酸又は脂肪族ジカルボン酸に対してメタノール等の低級アルコールを反応させたエステルと、前記香料とをエステル交換反応させることにより製造する方法
(iii)前記香料と前記脂肪族モノカルボン酸又は脂肪族ジカルボン酸の酸ハロゲン化物とを反応させることにより製造する方法
(iv)前記香料と前記脂肪族モノカルボン酸又は脂肪族ジカルボン酸の無水物とを反応させることにより製造する方法
これらの中でも、製造効率の観点から、前記香料と前記脂肪族モノカルボン酸又は脂肪族ジカルボン酸の酸ハロゲン化物とを反応させて製造する方法が好ましい。
【0047】
(酸ハロゲン化物)
前記脂肪族モノカルボン酸又は脂肪族ジカルボン酸の酸ハロゲン化物は、例えば、前記脂肪族モノカルボン酸又は脂肪族ジカルボン酸と、塩化チオニル、三塩化リン、五塩化リン及び三臭化リン等の各種ハロゲン化試薬との反応で得ることができる。
これらの中でも、反応性の観点、試薬の入手容易性の観点から、脂肪族モノカルボン酸又は脂肪族ジカルボン酸と三塩化リンとの反応で得られる酸ハロゲン化物が好ましく、具体的には、脂肪族モノカルボン酸の酸クロリドが好ましい。
【0048】
(香料の仕込み量)
(c)成分を製造する際の前記香料の仕込み量は、反応を速やかに進行させると共に未反応の脂肪族モノカルボン酸又は脂肪族ジカルボン酸の量を低減させる観点から、脂肪族モノカルボン酸又は脂肪族ジカルボン酸の酸ハロゲン化物1モルに対し、好ましくは0.9モル以上、より好ましくは0.95モル以上、更に好ましくは0.98モル以上であり、未反応の香料の量を低減させる観点から、好ましくは1.1モル以下、より好ましくは1.05モル以下、更に好ましくは1.02モル以下である。
【0049】
(溶媒)
(c)成分の製造に用いる溶媒としては、特に制限はなく、例えば、クロロホルム及びジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素、酢酸エチル、及び酢酸イソプロピル等の脂肪族エステル、ベンゼン、トルエン、キシレン及びエチルベンゼン等の芳香族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリン、及びテトラリン等の脂環式炭化水素、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン及びオクタン等の脂肪族炭化水素等が挙げられる。
これらの中でも、前記香料、前記脂肪族モノカルボン酸及び前記脂肪族ジカルボン酸の溶解性の観点から、ハロゲン化炭化水素、脂肪族エステル、及び芳香族炭化水素から選ばれる1種以上が好ましく、ジクロロメタン、酢酸エチル、及びトルエンから選ばれる1種以上がより好ましい。これらの溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
(反応温度)
(c)成分を製造する際の反応温度は、原料をロスすることなく反応を行う観点から、香料、脂肪族モノカルボン酸又は脂肪族ジカルボン酸の沸点以下が好ましい。具体的な反応温度は、反応速度を向上させる観点から、好ましくは−20℃以上、より好ましくは−18℃以上、更に好ましくは−15℃以上、より更に好ましくは−12℃以上である。また、反応を制御する観点から、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下、更に好ましくは30℃以下、より更に好ましくは20℃以下である。
本発明においては、前記温度範囲で反応を行った後、十分に反応を進行させる観点から、所定の温度、時間で撹拌を行うことが好ましい。撹拌する際の温度は、好ましくは10℃以上、より好ましくは15℃以上、更に好ましくは20℃以上であり、そして、好ましくは90℃以下、より好ましくは80℃以下、更に好ましくは70℃以下、より更に好ましくは60℃以下、より更に好ましく50℃以下である。
撹拌は、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは0.8時間以上であり、そして、好ましくは4時間以下、より好ましくは3時間以下、更に好ましくは1.5時間以下行う。
【0051】
(反応圧力)
(c)成分の製造は、大気圧又は減圧下で行うことができ、簡易な設備で製造することができる観点から、大気圧下で製造することが好ましい。
(c)成分を製造する際の具体的な圧力は、好ましくは80kPa以上、より好ましくは90kPa以上、更に好ましくは95kPa以上であり、そして、好ましくは101kPa以下である。
また、(c)成分の製造は、副反応を抑制する観点、反応系中に水が混入するのを抑制する観点から、不活性ガスの存在下で行うことが好ましい。不活性ガスとしては、窒素、ヘリウム、アルゴン等が挙げられ、これらの中でも、コストを抑えて製造する観点から、窒素が好ましい。
【0052】
(塩基性物質)
前記(c)成分の製造方法においては、反応を効率的に行う観点から、塩基性物質を用いることが好ましい。
前記塩基性物質としては、トリエチルアミン、及びトリブチルアミン等の脂肪族アミン、ピリジン、及びピコリン等の芳香族アミンや、DBU(ジアザビシクロウンデセン)を挙げることができる。これらの中でも、入手容易性の観点、取り扱い性の観点から、脂肪族アミンが好ましく、トリエチルアミンがより好ましい。
前記塩基性化合物の使用量は、脂肪族モノカルボン酸又は脂肪族ジカルボン酸の酸ハロゲン化物1モルに対して、好ましくは1モル以上、より好ましくは1.01モル以上、更に好ましくは1.02モル以上、更に好ましくは1.04モル以上であり、そして、使用量とコストのバランスから、好ましくは1.2モル以下、より好ましくは1.15モル以下、更に好ましくは1.1モル以下、より更に好ましくは1.06モル以下である。
【0053】
<(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の含有量>
本発明の液体柔軟剤組成物において、(A)成分の含有量は、十分な柔軟効果を得る観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上、更により好ましくは10質量%以上であり、そして、保存安定性の観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは18質量%以下、更により好ましくは16質量%以下、より更に好ましくは14質量%以下である。
【0054】
また、本発明の液体柔軟剤組成物において、(B)成分の含有量は、十分な賦香効果を得る観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上であり、そして、保存安定性の観点から、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.4質量%以下、更に好ましくは0.3質量%以下である。
【0055】
なお、(B)成分は、(B)成分の質量に対する内包する香料の質量の比、すなわち、[内包する香料の質量/(B)成分の質量]の質量比が、好ましくは60/100以上、より好ましくは70/100以上である。
【0056】
また、本発明の液体柔軟剤組成物において、(C)成分の香料前駆体の含有量は、香りの持続性を向上させる観点から、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上、更に好ましくは0.01質量%以上であり、そして、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.8質量%以下、更に好ましくは0.7質量%以下である。
【0057】
また、(C)成分に対する(B)成分の質量比[(B)/(C)]は、繊維製品の初期の強い匂い立ちを抑制する観点から、好ましくは1/10以上、より好ましくは1/2以上、更により好ましくは1/1以上であり、バランスのとれた香調を得る観点から、好ましくは500以下、より好ましくは100以下、更に好ましくは50以下、より更に好ましくは20以下、より更に好ましくは10以下である。
【0058】
本発明の液体柔軟剤組成物は水を含有する。水は、脱イオン水、脱イオン水に次亜塩素酸塩を少量配合した滅菌した水、水道水等を用いることができる。
【0059】
本発明の柔軟剤組成物中の(B)成分と(C)成分は、(A)成分である第3級アミン化合物及びその4級化物の少なくともいずれかと併存することにより、それぞれが安定に分散した状態で存在することが可能となる。より具体的には、香料成分を包含したカプセルである(B)成分は独立に存在することができるが、粒子径が非常に大きく上層に浮遊してしますが、(A)成分と併存させることにより、(A)成分が構成する会合体との電気的相互作用や疎水性相互作用等によって、前記(B)成分の上層への浮遊を抑制することが可能となると考えられる。また、(C)成分は非常に疎水性が高い化合物であるため、水中に単独で分散することはできないが、(A)成分と併存させることにより、(A)成分が構成する会合体の作用により、水中に安定に存在することが可能となる。このように(B)成分と(C)成分とは、(A)成分が構成する会合体によって、それぞれ異なる領域で安定に存在していると考えられる。
【0060】
<液体柔軟剤組成物の30℃におけるpH>
本発明の液体柔軟剤組成物の30℃におけるpHは、2.5以上4.0以下であり、液体柔軟剤組成物による処理後の繊維製品の発香性及び残香性の観点、及び保存安定性の観点から、好ましくは2.5以上3.5以下、より好ましくは2.8以上3.5以下、更に好ましくは3.0以上3.5以下である。
【0061】
pHは、「JIS K 3362;2008の項目8.3に従って30℃において測定する。pHの調整は、アルカリ剤や後述する酸剤等のpH調整剤により調整することができる。
【0062】
<液体柔軟剤組成物の30℃における粘度>
本発明の液体柔軟剤組成物の30℃における粘度は、使用勝手の点で、好ましくは5mPa・s以上、より好ましくは8mPa・s以上、更に好ましくは10mPa・s以上であり、そして、好ましくは150mPa・s以下、より好ましくは130mPa・s以下、更に好ましくは110mPa・s以下である。液体柔軟剤組成物の粘度は、B型粘度計を用いて、No.1〜No.3ローターのいずれかのローターを用い、60r/minで、測定開始から1分後の指示値である。液体柔軟剤組成物は30±1℃に調温して測定する。粘度計の測定領域が2つのローターで得られた場合であって、換算した粘度が異なる場合は、ローター番号の小さい方のデータを採用する。
【0063】
本発明の液体柔軟剤組成物は、更に以下に示す成分を含有することが好ましい。
<(D)成分:(B)成分及び(C)成分以外の香料>
本発明の液体柔軟剤組成物は、(D)成分として、(B)成分及び(C)成分以外の香料を含有してもよい。
なお、本発明において(B)成分以外の香料とは、(B)成分のマイクロカプセル中に内包された香料以外の香料を意味する。また、(C)成分以外の香料とは、(C)成分の香料前駆体として結合を形成している香料以外の香料を意味する。
したがって、本発明においては、(B)成分のマイクロカプセル中に内包されている香料と同じ香料であっても、マイクロカプセルに内包されていない香料は(D)成分として扱う。また、(C)成分の原料として用いた香料と同じ香料であっても、(C)成分の香料前駆体として結合を形成していない香料は(D)成分として扱う。つまり、(D)成分の香料は液体柔軟剤組成物中に分散させた香料であり、これらの香料を外香料という場合がある。
【0064】
(D)成分として用いることができる香料に特に制限はなく、(B)成分に用いられる香料化合物や、(C)成分の原料として用いられる香料と同じ香料を用いてもよい。
(D)成分として用いることができる香料としては、例えば「香料と調香の基礎知識、中島基貴 編著、産業図書株式会社発行、2005年4月20日 第4刷」に記載の香料や特許文献等を通じて柔軟剤に配合することが知られている香料の他に、香料メーカーが独自に調製した香料成分又は調香した香料組成物そのものを使用することができる。
例えば、β−イオノン(3.7)、γ−ウンデカラクトン(3.8)、γ−ノナラクトン(2.8)、γ−メチルイオノン(4.0)、アンブロキサン(5.3)、イソEスーパー(4.7)、エチルバニリン(1.8)、エチレンブラッシレート(4.6)、オイゲノール(3.0)、カシュメラン(IFF社製)(4.0)、クマリン(1.5)、ゲラニオール(2.4)、酢酸o,t−ブチルシクロヘキシル(4.1)、酢酸シトロネリル(4.2)、酢酸ジメチルベンジルカルビニル(2.8)、サンダルマイソールコア(3.9)、ジヒドロジャスモン酸メチル(2.4)、ジヒドロミルセノール(3.0)、ジメチルテトラヒドロベンズアルデヒド(2.9)、ジャバノール(ジボダン製)(4.7)、ネロリンヤラヤラ(3.2)、ハバノライド(フィルメニッヒ製)(6.2)、フルーテート(花王株式会社)(3.4)、ペオニル(ジボダン製)(4.0)、ヘキシルシンナミックアルデヒド(4.9)、ヘリオトロピン(1.1)、メチルβ−ナフチルケトン(2.8)、メチルアンスラニレート(2.0)、ラズベリーケトン(1.1)、リモネン(4.4)、及びリリアール(3.9)を挙げることができる。なお( )内の数値はlogP値である。
【0065】
なお、本発明の液体柔軟剤組成物は、香料の希釈剤や保留剤を含有してもよい。希釈剤及び保留剤としては、ジプロピレングリコール、パルミチン酸イソプロピルエステル、ジエチルフタレート、ペンジルベンゾエート、流動パラフィン、イソパラフィン、及び油脂等を挙げることができる。
希釈剤及び保留剤を用いる場合、(D)成分と希釈剤及び保留剤との合計に対する希釈剤及び保留剤の量は、好ましくは0質量%以上20質量%以下である。なお、これら希釈剤及び保留剤は(B)成分のマイクロカプセルに内包された香料にも用いることができる。
【0066】
(D)成分は、(B)成分及び(C)成分と併用することで、従来よりも自由度の高い香料設計が可能となる。したがって(D)成分を併用した本発明の液体柔軟剤組成物を繊維製品に処理を施した場合、例えば、フレッシュ且つリッチな香りを付与することができる。
【0067】
本発明の液体柔軟剤組成物が(D)成分を含有する場合、その含有量は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上であり、保存安定性及び他の香料添加剤とのバランスの観点から、好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.8質量%以下、更により好ましくは1.5質量%以下である。なお、液体柔軟剤組成物中の(D)成分は、製品に合わせてその含有量を調整することができる。
【0068】
また、本発明の液体柔軟剤組成物が(D)成分を含有する場合において、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の合計の含有量は、繊維製品に対して十分に賦香する観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上であり、保存安定性及び他の香料添加剤とのバランスの観点から、好ましくは2.5質量%以下、より好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1.5質量%以下である。
なお、前記合計の含有量における(C)成分の質量は、(C)成分の香料前駆体を構成する香料の質量にて計算する。
【0069】
本発明における(B)成分、(C)成分、及び(D)成分の好ましい組み合わせとしては、logP値2.0以上6.0以下の香料化合物を90質量%以上含有する香料を内包するマイクロカプセルである(B)成分を用い、液体柔軟剤組成物中の香料前駆体〔(C)成分〕の含有量を0.001質量%以上1.0質量%以下とし、更に(B)成分、(C)成分及び(D)成分が前記濃度の関係を満たすことが好ましい。
【0070】
<(E)成分:非イオン性界面活性剤>
本発明の液体柔軟剤組成物は、(E)成分として、非イオン性界面活性剤を含有してもよい。ただし、後述する(F)成分は(E)成分から除くものとする。
【0071】
(E)成分としては、炭素数8以上20以下のアルキル基又はアルケニル基とオキシアルキレン基とを有する非イオン性界面活性剤が好ましく、下記一般式(E1)で表される非イオン性界面活性剤がより好ましい。
1e−A−〔(R2eO)−R3e (E1)
〔式中、R1eは、炭素数8以上、好ましくは10以上であり、そして、18以下、好ましくは16以下のアルキル基又はアルケニル基であり、R2eは、炭素数2又は3のアルキレン基、好ましくはエチレン基であり、R3eは、炭素数1以上3以下のアルキル基又は水素原子であり、xは2以上、好ましくは5以上、より好ましくは10以上であり、そして、100以下、好ましくは80以下、より好ましくは60以下の数であり、Aは−O−、−COO−、−CON<又は−N<であり、Aが−O−又は−COO−の場合yは1であり、Aが−CON<又は−N<の場合yは2である。〕
【0072】
一般式(E1)の化合物の具体例としては、以下の式(E1−1)〜(E1−3)で表される化合物を挙げることができる。
1e−O−(CO)−H (E1−1)
〔式中、R1eは前記R1eと同義である。kは8以上、好ましくは10以上であり、そして、100以下、好ましくは60以下の数である。〕
1e−O−[(CO)/(CO)]−H (E1−2)
〔式中、R1eは前記R1eと同義である。s及びtはそれぞれ独立に2以上、好ましくは5以上であり、そして、40以下の数であり、(CO)と(CO)はランダム又はブロック付加体であってもよい。「/」は(CO)と(CO)の結合順序を問わないことを示す符号である。〕
【0073】
【化1】
【0074】
(式中、R1e及びR3eは前記の意味を示す。Aは −N< 又は −CON< であり、u及びvはそれぞれ独立に0以上40以下の数であり、u+vは5以上60以下、好ましくは40以下の数である。)
【0075】
本発明では、(E)成分として、一般式(E1−1)で表される非イオン性界面活性剤を用いることが好ましい。
(E)成分は、液体柔軟剤組成物の粘度を低下させることができることから、液体柔軟剤組成物の各成分の混合から充填までの製造を容易にすることができ、更に、液体柔軟剤組成物中における(B)成分及び(C)成分の安定性を向上させることができる。
【0076】
本発明の液体柔軟剤組成物が(E)成分を含有する場合、その含有量は、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上であり、そして、長期保存後の増粘を抑制する観点から、好ましくは8質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
【0077】
<(F)成分:多価アルコールと脂肪酸とのエステル>
本発明の液体柔軟剤組成物は、保存安定性を改善する観点から(F)成分として、多価アルコールと脂肪酸とを反応させた多価アルコール脂肪酸エステルを含有してもよい。
多価アルコールと脂肪酸とのエステルとしては、炭素数3以上6以下であり、かつ3価以上6価以下の多価アルコールと、炭素数12以上22以下の脂肪酸とのエステル化合物が好ましい。
より具体的には、炭素数が好ましくは3以上、より好ましくは4以上であり、そして、好ましくは6以下であり、かつ、好ましくは3価以上、より好ましくは4価以上であり、そして、好ましくは6価以下である多価アルコールと、炭素数が好ましくは12以上、より好ましくは14以上、更に好ましくは16以上であり、そして、好ましくは22以下、より好ましくは20以下の脂肪酸とのエステル化合物である。
(F)成分を構成する多価アルコールとしては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−ペンタトリオール、エリスリトール、アラビトール、ペンタエリスリトール、ソルビタン、ソルビトール、キシリトール及びマンニトールから選ばれる1種以上が好ましく、ペンタエリスリトール及びソルビタンから選ばれる1種以上がより好ましい。
(F)成分を構成する脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、及びパルミチン酸等の飽和脂肪酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、及びリノレン酸等の不飽和脂肪酸、パーム油脂肪酸、及び硬化パーム油脂肪酸の植物油由来の脂肪酸、牛脂脂肪酸及び硬化牛脂脂肪酸等の動物油由来の脂肪酸から選ばれる1種以上が好ましく、飽和脂肪酸、植物油由来の脂肪酸、及び動物油由来の脂肪酸から選ばれる1種以上がより好ましく、ステアリン酸、硬化パーム油脂肪酸、及び硬化牛脂脂肪酸から選ばれる1種以上が更に好ましい。
本発明における(F)成分としては、ペンタエリスリトールと炭素数16以上22以下の脂肪酸とのエステル化合物(以下、「ペンタエリスリトール脂肪酸エステル」ともいう)、及びソルビタンと炭素数16以上22以下の脂肪酸とのエステル化合物(以下、「ソルビタン脂肪酸エステル」ともいう)から選ばれる1種以上が好ましい。
【0078】
本発明の液体柔軟剤組成物が(F)成分を含有する場合、その含有量は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上、より更に好ましくは0.7質量%以上であり、そして、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは4質量%以下、更に好ましくは3質量%以下が好ましい。
【0079】
<(G)成分:(A)成分以外の陽イオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤>
本発明の液体柔軟剤組成物は、(G)成分として、(A)成分以外の陽イオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤を含有することができる。
〔(g1)成分:(A)成分以外の陽イオン性界面活性剤〕
本発明においては、液体柔軟剤組成物の保存安定性を向上させる観点から、(g1)成分として、(A)成分以外の陽イオン性界面活性剤を用いることができる。
(g1)成分の具体例としては、窒素原子に結合する基のうち、1つ又は2つが炭素数10以上22以下のアルキル基又はアルケニル基であり、残りがヒドロキシ基を有していてもよい炭素数1以上4以下のアルキル基、ベンジル基、好ましくはメチル基である第3級アミン化合物及びその酸塩、並びに前記第3級アミン化合物の4級化物が挙げられる。これらの中でも、液体柔軟剤組成物に殺菌効果を付与する観点から、炭素数10以上22以下のアルキル基又はアルケニル基を1つ有し、ベンジル基を1つ有する陽イオン性界面活性剤が好ましい。
前記化合物の4級化に用いるアルキル化剤としては、(A)成分において記載した化合物を用いることができる。
【0080】
(g1)成分としては、下記(I)〜(III)から選ばれる1種以上の陽イオン性界面活性剤が好ましく、更に(II)から選ばれる陽イオン性界面活性剤が好ましい。
(I)アルキル基又はアルケニル基の炭素数が10以上22以下のジ長鎖アルキル又はアルケニルジメチルアンモニウム塩、
(II)アルキル基又はアルケニル基の炭素数が10以上22以下のモノ長鎖アルキル又はアルケニルトリメチルアンモニウム塩、又は
(III)アルキル基又はアルケニル基の炭素数が10以上22以下のモノ長鎖アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩
具体的には塩化ジデシルジメチルアンモニウム塩、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム塩、塩化ミリスチルトリメチルアンモニウム塩、及び塩化ラウリルジメチルベンジルアンモニウム塩を挙げることができる。
【0081】
〔(g2)成分:両性界面活性剤〕
本発明においては、(g2)成分として、両性界面活性剤を用いることもできる。
(g2)成分としては、一般的に液体柔軟剤組成物に配合することができるものであれば特に制限はなく、例えば、アルキル(炭素数12以上22以下)アミドプロピルカルボベタイン、アルキル(炭素数12以上22以下)アミドプロピルスルホベタイン、アルキル(炭素数12以上22以下)カルボベタイン、アルキル(炭素数12以上22以下)スルホベタイン、アルキル(炭素数10以上18以下)ジメチルアミンオキシド等が挙げられる。
【0082】
本発明の液体柔軟剤組成物が(G)成分を含有する場合、その含有量は、液体柔軟剤組成物の粘度を低下させる観点、及び殺菌性を向上させる観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上であり、そして、保存安定性や柔軟効果の低下を抑制する観点から、好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下、更に好ましくは1.0質量%以下である。
【0083】
<(H)成分:無機塩>
本発明の液体柔軟剤組成物は、保存安定性を向上させる観点から(H)成分として、無機塩を含有することができる。
無機塩としては、保存安定性を向上させる観点から、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、及び塩化マグネシウムから選ばれる1種以上が好ましい。
本発明の液体柔軟剤組成物が(H)成分を含有する場合、その含有量は、液体柔軟剤組成物の保存安定性を向上させる観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上であり、そして、(B)成分の凝集を防ぐ観点から、好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下である。
【0084】
<(I)成分:シリコーン化合物>
本発明の液体柔軟剤組成物は、(I)成分として、水不溶性のシリコーン化合物を含有してもよい。本明細書における(I)成分の「水不溶性」とは、20℃のイオン交換水1Lに溶解するシリコーン化合物の量が1g以下であることをいう。
(I)成分の具体例としては、ジメチルポリシロキサン、4級アンモニウム変性ジメチルポリシロキサン、アミノ変性ジメチルポリシロキサン、アミド変性ジメチルポリシロキサン、エポキシ変性ジメチルポリシロキサン、カルボキシ変性ジメチルポリシロキサン、ポリオキシアルキレン変性ジメチルポリシロキサン、及びフッ素変性ジメチルポリシロキサン等のシリコーン化合物が挙げられる。
【0085】
(I)成分としては、重量平均分子量が好ましくは千以上、より好ましくは3千以上、更に好ましくは5千以上であり、そして、好ましくは100万以下であり、25℃における粘度が好ましくは2mm/s以上、より好ましくは500mm/s以上、更に好ましくは1千mm/s以上であり、そして、好ましくは100万mm/s以下であるジメチルポリシロキサン、アミノ変性ジメチルポリシロキサン、アミド変性ジメチルポリシロキサン、及びポリオキシアルキレン(ポリオキシエチレン及び/又はポリオキシプロピレン、好ましくはポリオキシエチレン)変性ジメチルポリシロキサンから選ばれる1種以上が好ましい。
なお、(I)成分における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により、ポリスチレンを標準物質として測定した値である。
【0086】
アミノ変性ジメチルポリシロキサンのアミノ当量(アミノ当量とは窒素原子1個当たりの分子量)は、好ましくは1,500g/mol以上、より好ましくは2,500g/mol以上、更に好ましくは3,000g/mol以上であり、そして、好ましくは40,000g/mol以下、より好ましくは20,000g/mol以下、更に好ましくは10,000g/mol以下である。
【0087】
本発明の液体柔軟剤組成物が(I)成分を含有する場合、(I)成分に対する(A)成分の質量比[(A)成分/(I)成分]は、好ましくは1/10以上、より好ましくは1/5以上、更に好ましくは1/3以上であり、そして、好ましくは60/1以下、より好ましくは50/1以下である。
【0088】
本発明の液体柔軟剤組成物が(I)成分を含有する場合、その含有量は、繊維製品の仕上り感として、さっぱり感を与える観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上であり、そして、分散性の観点から、好ましくは5質量%以下である。
【0089】
<(J)成分:酸剤>
本発明の液体柔軟剤組成物は、液体柔軟剤組成物のpHを調整する観点から、(A)成分を第3級アミンの酸塩とするための酸剤の他に、(J)成分として酸剤を含有することができる。
酸剤としては、無機酸及び有機酸が挙げられ、無機酸の具体例としては、塩酸、及び硫酸が挙げられる。有機酸の具体例としては、炭素数1以上10以下の1価又は多価のカルボン酸、又は炭素数1以上20以下の1価又は多価のスルホン酸、炭素数1以上3以下のアルキル硫酸が挙げられる。より具体的には、メチル硫酸、エチル硫酸、p−トルエンスルホン酸、(o−、m−、p−)キシレンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、グリコール酸、エチレンジアミン4酢酸、クエン酸、安息香酸、及びサリチル酸が挙げられる。
これらの中でも、炭素数1以上10以下の1価又は多価のカルボン酸が好ましく、クエン酸がより好ましい。
本発明の液体柔軟剤組成物が酸剤を含有する場合、その含有量は、(A)成分の種類や量によって適宜調整することができ、pHが前記範囲になる範囲であって、保存安定性を損なわない程度が好ましい。
【0090】
<(K)成分:脂肪酸>
本発明の液体柔軟剤組成物は、柔軟効果を向上させる観点から、(A)成分の製造に用いた脂肪酸や(J)成分としての脂肪酸の他に、(K)成分として、脂肪酸を含有してもよい。
脂肪酸は、(A)成分の合成時の未反応物や、(A)成分の分解物として含有してもよい。
脂肪酸の具体例としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、エルカ酸、及びベヘニン酸等の炭素数12以上22以下の飽和又は不飽和脂肪酸が好ましく、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸及びリノール酸から選ばれる脂肪酸がより好ましい。
【0091】
<(L)成分:水溶性有機溶剤>
本発明の液体柔軟剤組成物は、保存安定性や粘度の観点から(L)成分として、水溶性有機溶剤を含有することができる。
水溶性有機溶剤としては、液体柔軟剤組成物に用いられる一般的な水溶性有機溶剤が挙げられる。なお、(L)成分における「水溶性有機溶剤」とは、20℃の脱イオン水100gに対して20g以上溶解する有機溶剤をいう。
水溶性有機溶剤の具体例としては、プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、モノエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル、イソプロパノール、及びエタノール等を挙げることができる。これらの中でも、エチレングリコール、エタノールが好ましい。
【0092】
本発明の液体柔軟剤組成物が他の成分によって、十分に安定化され粘度が低い場合は、(L)成分である水溶性有機溶剤を含有しなくてもよい。
本発明の液体柔軟剤組成物が(L)成分を含有する場合、その含有量は、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。
【0093】
<(M)成分:キレート剤>
本発明の液体柔軟剤組成物は、液体柔軟剤組成物の長期保存時の色相変化や染料の褪色及び香りの変質を抑制する観点から、(M)成分として、キレート剤を用いることが好ましい。なお、本発明における(M)成分は前記酸剤としての機能も有する。
キレート剤の具体例としては、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミン四酢酸、メチルグリシン二酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、エチレンジアミン二コハク酸、L−グルタミン酸−N,N−二酢酸、N−2−ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、クエン酸、コハク酸、及びそれらの塩が挙げられる。
塩としては、アルカリ金属塩、アンモニウム塩が好ましく、ナトリウム塩、カリウム塩がより好ましい。
本発明の液体柔軟剤組成物が(M)成分を含有する場合、その含有量は、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上であり、そして、好ましくは2質量%以下、より好ましく1.5質量%以下、更に好ましくは1.0質量%以下である。
【0094】
<(N)成分:徐放性香料>
また本発明の液体柔軟剤組成物には、(B)成分のカプセル香料、(C)成分の脂肪酸エステル香料前駆体、及び(D)成分以外に、徐放性香料として特開2014−125685号公報記載のケイ酸エステル化合物を用いることができる。本発明の液体柔軟剤組成物において(N)成分を用いる場合は、各香料成分の特徴にあった調合により使用する。
【0095】
<(O)成分:その他の成分>
本発明の液体柔軟剤組成物においては、基材の劣化を抑制する観点から、BTH等の酸化防止剤を用いることができ、また、審美や長期保存時の着色を防ぐ観点から、液体柔軟剤組成物において一般的に用いられる染料及び顔料を用いることもできる。更に、プロキセルの商品名で市販されている防菌、防黴剤を用いることもできる。
【0096】
本発明の液体柔軟剤組成物は、繊維製品用として好適であり、繊維製品としては、衣料、布帛、寝具、タオル等が挙げられる。
【実施例】
【0097】
<(A)成分>
実施例で使用した(A)成分を以下に示す。
〔合成例a−1:(a−1)の製造〕
トリエタノールアミンとのRCOOHで表される脂肪酸を、反応モル比(脂肪酸/トリエタノールアミン)が1.65/1で、エステル化反応させ、一般式(1)で表されるアミン化合物を含むエステル化反応物を得た。
エステル化反応物中には、未反応の脂肪酸(組成は後述の通り)が5質量%含まれていた。エステル化反応物中のアミン化合物のアミンに対して、メチル基が0.96等量となるように、ジメチル硫酸で4級化反応を行った後、エタノールを10質量%添加した。
【0098】
得られた反応物をHPLC法で各成分の組成比を分析し、臭化テトラオクチルアンモニウムを内部標準物質として使用し定量した結果、得られた反応物は、下記の(a11−1)成分、(a11−2)成分、(a21−1)成分〜(a21−3)成分、及び未反応の脂肪酸からなる混合物(合計で100質量%)であった。4級化率は87%であった。4級化率はアミン価から求めることができる。
【0099】
( )内の含有量は、(a11−1)成分、(a11−2)成分、(a21−1)成分〜(a21−3)成分の第4級アンモニウムイオン部分(CHOSOを除く部分)、及び未反応の脂肪酸の合計における各成分の含有割合を示す。
【0100】
【化2】
【0101】
未反応の脂肪酸:(2質量%)
なお、(a−1)を製造するための反応に用いたRCOOHの組成を以下に示す。
パルミチン酸:45質量%
ステアリン酸:25質量%
炭素数18で、不飽和基を1つ有する脂肪酸:27質量%
炭素数18で、不飽和基を2つ有する脂肪酸:3質量%
前記組成は、原料に使用した脂肪酸をガスクロマトグラフィーで組成分析し、各脂肪酸の面積%を質量%とみなした。前記不飽和基のシス/トランス体の質量比は85/15(H−NMRによる、積分比)である。
【0102】
〔合成例a−2:(a−2)の製造〕
N−メチルジエタノールアミンとRCOOHで表される脂肪酸を、反応モル比(脂肪酸/トリエタノールアミン)が1.9/1で、エステル化反応させ、一般式(1)で表されるアミン化合物を含むエステル化反応物を得た。
エステル化反応物中には、未反応の脂肪酸(組成は後述の通り)が5質量%含まれていた。エステル化反応物中のアミン化合物のアミンに対して、10質量%のエタノールを添加し均一に混合した後、前記アミンに対してメチル基が0.98等量となるように、塩化メチルで4級化反応を行った。
4級化率は90%であった。
得られた反応物をHPLC法で各成分の組成比を分析し、臭化テトラオクチルアンモニウムを内部標準物質として使用し定量した結果、得られた反応物は、下記の(a12−1)成分、(a22−1)成分〜(a22−2)成分、及び未反応の脂肪酸からなる混合物(合計で100質量%)であった。
( )内の数字は、(a12−1)成分、(a22−1)成分〜(a22−2)成分の第4級アンモニウムイオン部分(Clを除く部分)、及び未反応の脂肪酸の合計における各成分の含有割合を示す。
【0103】
【化3】
【0104】
未反応の脂肪酸:(8.7質量%)
なお、(a−2)を製造するための反応に用いたRCOOHの組成を以下に示す。
パルミチン酸:10質量%
ステアリン酸:60質量%
炭素数18で、不飽和基を1つ有する脂肪酸:30質量%
前記組成は、原料に使用した脂肪酸をガスクロマトグラフィーで組成分析し、各脂肪酸の面積%を質量%とみなした。前記不飽和基のシス/トランス体比は1/1(H−NMRによる、積分比)である。
【0105】
<(B)成分>
〔合成例b−1:(b−1)の合成〕
ジイソブチレン−無水マレイン酸共重合体(デモールEP、固形分25%、花王株式会社)1.7gを塩酸で中和後、更にイオン交換水で希釈することにより、固形分3%、pH4.3の水溶液を得た。次に、前記ジイソブチレン−無水マレイン酸共重合体水溶液100gに、表1の組成の香料(b1)を36g加え、ホモミキサーを用いて乳化し、これを50℃に昇温した。次に、部分メチロール化メラミン樹脂(商品名Cymel385、固形分80%、Cytec Industries Inc製)を12g、イオン交換水35gを混合した水溶液を滴下した。これを50℃で2時間保持し、さらに70℃で1時間保持し、さらに80℃で3時間保持し、封入を完了させた。その後、放冷することによって、平均粒径7μm、有効分30質量%のマイクロカプセルスラリーを得た。
【0106】
【表1】
【0107】
〔合成例b−2:(b−2)の合成〕
イオン交換水240gを1L4つ口フラスコに加えた。4つ口フラスコには2本の滴下ロートを接続し、1本の滴下ロートにはアクリル酸98.8g(和光純薬工業株式会社製)、アクリルアミド20.0gを混合した液(モノマー液)を入れておき、もう1本の滴下ロートにはV−50(和光純薬工業株式会社製、2,2−アゾビス(2−メチルプロピオアミジン)ジヒドロクロライド)3.75gをイオン交換水75gで希釈した液(開始剤液)を入れた。この装置を210kPaまで減圧し、窒素で常圧に戻す作業を3回繰り返すことにより、脱気した。フラスコ内を70℃に加熱後、モノマー液を3.7g/分、開始剤液を1.3g/分となるように滴下し、滴下後さらに2時間熟成後、反応液を冷却した。反応液300gをアセトン800gに滴下することにより、ポリマーの再沈殿を行なった。得られたポリマーを60kPaの減圧下80℃で48時間乾燥し、アクリル酸−アクリルアミド共重合体52gを得た。重量平均分子量は17万であった。
【0108】
上記の方法で得られたアクリル酸−アクリルアミド共重合体2.4gをイオン交換水84gに希釈し、水酸化ナトリウム水溶液でpH4に調製した。これに部分メチロール化メラミン樹脂(商品名Cymel385)3gを加え、30分間撹拌を行なった。次に、前記合成例b−1で用いた、表1の組成の香料(b1)を76g加え、ホモミキサーを用いて乳化し、これを50℃に昇温し、1時間保持した。一方で、アクリル酸−アクリルアミド共重合体1g、イオン交換水48gを混合した水溶液を水酸化ナトリウムでpH4.8に調製し、部分メチロール化メラミン樹脂(商品名Cymel385)10g、硫酸ナトリウム1.5gを加え、30分間撹拌後、これを乳化液に加えた。70℃で14時間保持した後、冷却し、平均粒径7μm、有効分30質量%のマイクロカプセルスラリーを得た。
【0109】
<(C)成分>
〔合成例c−1:ラウリン酸とエチルバニリンとのエステルの製造〕
窒素雰囲気下、300mLの四つ口フラスコに、ラウリン酸クロリド8.95g(0.041mol)、ジクロロメタン40mLを入れ、0℃に冷却した。一方、100mLの滴下ロートに、エチルバニリン6.80g(0.041mol)、トリエチルアミン4.35g(0.043mol)、ジクロロメタン40mLを入れた。滴下ロートより反応温度が−5℃〜0℃に保たれるようフラスコに40分かけて滴下を行った。滴下終了後、室温(25℃)で2時間撹拌を行った。フラスコに飽和塩化アンモニウム水溶液10mLを添加し、反応を停止した。ジエチルエーテル150mLを添加し、生成した白色固体をろ過で除去し、ろ液を分液ロートに移した。分液ロートにイオン交換水100mLを添加し、ジエチルエーテル50mLで水層から3回抽出を行った。抽出溶液を集め、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで溶液を乾燥した。溶媒を減圧除去後、淡黄色固体のラウリン酸とエチルバニリンとのエステル14.20g(収率99%)を得た。
【0110】
以下にNMR及びIRの測定結果を示す。
NMR(H、400MHz)
0.88(t、J=7Hz、3H)、1.20〜1.50(m、19H)、1.78(quint.、J=7Hz、2H)、2.59(t、J=7Hz、2H)、4.13(t、J=7Hz、2H)、7.20(d、J=8Hz、1H)、7.46(d、J=8Hz、2H)、9.93(s、1H)
IR(KBr):2918、2850、1763、1693、1273、1115、742cm−1
【0111】
〔合成例c−2:ラウリン酸とエチルマルトールとのエステルの製造〕
窒素雰囲気下、300mLの四つ口フラスコに、ラウリン酸クロリド10.00g(0.046mol)、ジクロロメタン45mLを入れ、0℃に冷却した。一方、100mLの滴下ロートに、エチルマルトール6.41g(0.046mol)、トリエチルアミン4.86g(0.048mol)、ジクロロメタン45mLを入れた。滴下ロートより反応温度が−5℃〜0℃に保たれるようフラスコに30分かけて滴下を行った。滴下終了後、室温(25℃)で1時間撹拌を行った。フラスコに飽和塩化アンモニウム水溶液10mLを添加し、反応を停止した。ジエチルエーテル150mLを添加し、生成した白色固体をろ過で除去し、ろ液を分液ロートに移した。分液ロートにイオン交換水100mLを添加し、ジエチルエーテル50mLで水層から3回抽出を行った。抽出溶液を集め、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで溶液を乾燥した。溶媒を減圧除去後、淡黄色固体のラウリン酸とエチルマルトールとのエステル14.74g(収率100%)を得た。
【0112】
以下にNMR及びIRの測定結果を示す。
NMR(H、400MHz)
0.88(t、J=7Hz、3H)、1.20〜1.45(m、21H)、1.75(quint.、J=7Hz、2H)、2.59(m、4H)、6.39(d、J=6Hz、1H)、7.69(d、J=6Hz、1H)
IR(KBr):2923、2854、1768、1658、1160、1133、1106、825cm−1
【0113】
<(D)成分>
(d−1):表2記載の香料
【0114】
【表2】
【0115】
<(E)成分>
(e−1):ラウリルアルコールにエチレンオキサイドを平均40モル付加させた化合物 すなわち、一般式(E1−1)においてR1eが直鎖の炭素数12のアルキル基であって酸素原子と結合するR1eの炭素原子が第1級炭素原子であり、kが40である非イオン性界面活性剤
【0116】
<(F)成分>
(f−1)成分:ペンタエリスリトールのステアリン酸エステル(モノ、ジ、トリ、テトラ体混合物)(モノ:ジ:トリ:テトラ=29:43:23:5、質量比)
<(G)成分>
(g−1)成分:ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド
<(H)成分>
(h−1)成分:塩化カルシウム
<(M)成分>
(m−1)成分:メチルグリシン二酢酸3ナトリウム
【0117】
<(N)成分>
(n−1)成分:Si(O−Geranyl)
なお、(n−1)成分における「Geranyl」は、ゲラニオール(1級アリルアルコール性香料、logP2.4)から水酸基を1個除いた基を表す。
(n−2)成分:Si(O−Rasp)(O−Folrosia)
なお、(n−2)成分における「Rasp」は、ラズベリーケトン(フェノール性香料、logP1.1)からフェノール性水酸基を1個除いた基を表し、「Folrosia」は、フォルロージア(4−イソプロピルシクロヘキサノール、2級アルコール性香料、logP2.7)から水酸基を1個除いた基を、それぞれ表す。
【0118】
前記(n−1)成分及び前記(n−2)成分については、下記合成例n−1、合成例n−2により合成した。
(合成例n−1:Si(O−Geranyl)の合成)
200mLの四つ口フラスコにテトラエトキシシラン27.08g(0.13mol)、ゲラニオール72.30g(0.47mol)及び2.8質量%ナトリウムメトキシドメタノール溶液0.485mLを入れ、窒素気流下エタノールを留出させながら110〜120℃で2時間撹拌した。
2時間後、槽内の圧力を徐々に8kPaまで下げ、エタノールを留出させながら117〜120℃でさらに4時間撹拌した。4時間後、冷却、減圧を解除した後、濾過を行い、ゲラニオールのケイ酸エステル香料前駆体を含む76.92gの黄色油状物を得た。
【0119】
(合成例n−2:Si(O−Rasp)(O−Folrosia)の合成)
500mLの四つ口フラスコにテトラエトキシシラン83.32g(0.40mol)、ラズベリーケトン59.11g(0.44mol)、フォルロージア153.062g(1.08mol)及び5.275質量%ナトリウムエトキシドエタノール溶液0.50gを入れ、窒素気流下エタノールを留出させながら150℃で約2時間撹拌を行った。
2時間後、槽内の圧力を徐々に4kPaまで下げ、エタノールを留出させながら150℃でさらに15時間撹拌した。その後、冷却、減圧を解除した後、濾過を行い、ラズベリーケトンとフォルロージアのモル比1:3のケイ酸エステル化合物を含む202.63gの黄色油状物を得た。
【0120】
<(O)成分>
(o−1)成分:プロキセルBDN(アーチ・ケミカル・ジャパン社製)
<pH調整剤>
液体柔軟剤組成物のpHを調整するため、必要に応じて適宜、水酸化ナトリウム又は(J)成分であるクエン酸、塩酸を使用した。
【0121】
<実施例1〜13及び比較例1〜5:液体柔軟剤組成物の製造>
表3及び表4に示す配合組成となるように各成分を混合することにより、液体柔軟剤組成物を調製した。具体的には、以下の通りである。なお、表中の組成の質量%は、有効分の質量%である。
300mLビーカーに、液体柔軟剤組成物のできあがり量が200gとなるのに必要な量の85質量%に相当する量のイオン交換水と、(E)成分、(g−1)成分、(m−1)成分、(o−1)成分、及びpH調整剤とを入れ、ウォーターバスを用いてイオン交換水の温度を60±2℃に調温した。(E)成分及び(g−1)成分がイオン交換水中に均一に溶解するように、必要に応じて撹拌羽根を用いて撹拌することにより混合液を得た。なお、撹拌羽根としては、直径が5mmの撹拌棒の回転中心軸を基準として、長辺が90度方向になるように配置された撹拌羽根であって、羽根の数3枚、羽根の長辺/短辺=3cm/1.5cm、回転面に対して45度の角度で羽根が設置されたものを用いた。
【0122】
60±2℃の温度に調温した混合液を、前記撹拌羽根で撹拌(300r/m)した。これに、(f−1)成分と共に65℃で加熱溶解させた(A)成分を3分間掛けて投入し、更に(C)成分を投入し、投入終了後、15分間撹拌した。
次に、5℃のウォーターバスを用いて、混合液の温度が30±2℃になるまで冷却した。これに、(B)成分、(d−1)成分、(N)成分、(h−1)成分を順次投入し、5分間撹拌した。更に、できあがり質量(200g)となるようにイオン交換水を加え、5分間撹拌して液体柔軟剤組成物を得た。
得られた液体柔軟剤組成物について可視光透過率を測定した。具体的には、測定セルとして光路長10mmのガラスセルを使用し、対照セルにイオン交換水を入れ、紫外可視分光光度計(島津製作所製のUV−2500PC)を用いて測定した。実施例及び比較例で得られた液体柔軟剤組成物の可視光線透過率(波長660nm)は、全て10%未満であり、乳濁型液体柔軟剤組成物であった。
【0123】
<評価>
予め、市販の弱アルカリ性洗剤(花王株式会社、アタック)を用いて、グンゼ製肌着17枚を株式会社日立製作所製全自動洗濯機NW−6CYで5回洗浄を繰り返し、室内乾燥することによって過分の薬剤を除去した(洗剤濃度0.0667質量%、水道水47L、水温20℃、洗浄10分、ためすすぎ2回、脱水6分)。
【0124】
パナソニック株式会社製電気バケツN−BK2−Aに、4Lの水道水を注入し、液体柔軟剤組成物を10g/肌着1.5kgになるように分散させ、さらに上述の方法で洗濯した肌着1枚を入れて、5分間撹拌した。その後、液体柔軟剤組成物で仕上げた肌着を株式会社日立製作所製二槽式洗濯機の脱水槽で3分脱水を行ってから、24時間乾燥した。1つの液体柔軟剤組成物につき、この操作を3回行い、液体柔軟剤組成物で仕上げた肌着を4枚ずつ用意した。
(1)香りの持続性
準備した肌着のうち1枚を畳んで、20℃/60%RHの部屋に3日間保管した。保管後、香りを評価する専門のパネラー3人により香りの残り具合を評価した。
評価は、下記基準で行い、3人の評価のうち一番多い結果となったものを評価結果とした。3人の評価が1点、2点、3点と別れた場合は、2点とした。香りの評価は、20℃/60%RHの部屋で行った。
<評価基準>
3:リッチ且つフレッシュな香りがする。
2:リッチ又はフレッシュな香りだけがする。
1:リッチ且つフレッシュな香りがするが香りが弱い。
【0125】
(2)発汗時の香り立ち
香りを評価する30代男性3人がそれぞれ肌着を着用し、1階から7階までの階段の昇降を2往復、午前に1回と午後に1回の割合で行い、2回目の昇降終了直後に、肌着の香り立ちを評価した。評価は、前記30代男性3人から回収した3枚の肌着について、1枚ずつ下記の基準で行い、3枚の評価のうち一番多い結果となったものを評価結果とした。3人の評価結果が1点、2点、3点と分かれた場合は、2点とした。なお、階段の昇降を行う前記30代男性と評価のパネラーとは同じであり、階段の昇降は気候による影響(温度、湿度の影響)が少ない状況で行った。
<評価基準>
3:リッチ且つフレッシュな香りがする。
2:リッチ又はフレッシュな香りだけがする。
1:リッチ且つフレッシュな香りがするが香りが弱い。
【0126】
【表3】
【0127】
【表4】
【0128】
以上の結果より明らかなように、本発明の液体柔軟剤組成物は、繊維製品を処理した場合に、優れた香りの持続性を付与することができる。