特許第6488726号(P6488726)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ジェイテクトの特許一覧

特許6488726転がり軸受、及び、樹脂製保持器の製造方法
<>
  • 特許6488726-転がり軸受、及び、樹脂製保持器の製造方法 図000002
  • 特許6488726-転がり軸受、及び、樹脂製保持器の製造方法 図000003
  • 特許6488726-転がり軸受、及び、樹脂製保持器の製造方法 図000004
  • 特許6488726-転がり軸受、及び、樹脂製保持器の製造方法 図000005
  • 特許6488726-転がり軸受、及び、樹脂製保持器の製造方法 図000006
  • 特許6488726-転がり軸受、及び、樹脂製保持器の製造方法 図000007
  • 特許6488726-転がり軸受、及び、樹脂製保持器の製造方法 図000008
  • 特許6488726-転がり軸受、及び、樹脂製保持器の製造方法 図000009
  • 特許6488726-転がり軸受、及び、樹脂製保持器の製造方法 図000010
  • 特許6488726-転がり軸受、及び、樹脂製保持器の製造方法 図000011
  • 特許6488726-転がり軸受、及び、樹脂製保持器の製造方法 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6488726
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】転がり軸受、及び、樹脂製保持器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/38 20060101AFI20190318BHJP
   F16C 19/06 20060101ALI20190318BHJP
   F16C 33/44 20060101ALI20190318BHJP
【FI】
   F16C33/38
   F16C19/06
   F16C33/44
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-14632(P2015-14632)
(22)【出願日】2015年1月28日
(65)【公開番号】特開2016-138617(P2016-138617A)
(43)【公開日】2016年8月4日
【審査請求日】2017年12月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安田 遊
【審査官】 保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−343571(JP,A)
【文献】 特開2007−252326(JP,A)
【文献】 実開平02−036623(JP,U)
【文献】 特開2012−002243(JP,A)
【文献】 特開2009−168110(JP,A)
【文献】 実開昭59−169431(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0376850(US,A1)
【文献】 国際公開第2011/098357(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C33/00−33/76
39/26−39/36
41/38−41/44
43/36−43/42
43/50
45/26−45/44
45/64−45/68
45/73
49/48−49/56
49/70
51/30−51/40
51/44
F16C19/00−19/56
33/30−33/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内輪と、外輪と、前記内輪及び前記外輪の間に転動可能に配置された複数の転動体と、複数の前記転動体を保持する樹脂製保持器とを備えている転がり軸受であって、
前記樹脂製保持器は、軸方向に二分割されている円環状の一対の分割体からなり、
前記各分割体に、転動体を保持するための半割ポケット面が形成されている複数のポケット部と、相手側の分割体に接する連結面が形成され当該相手側の分割体と連結するための複数の連結部とが周方向に交互に形成され、
互いに連結される一対の前記連結部のうち一方の前記連結部に、前記連結面から軸方向に突出する係合爪が形成され、
他方の前記連結部に、前記連結面から軸方向に窪み、前記係合爪が挿入される係合溝が形成され、
前記係合溝は、前記連結部の内周壁において開放しており、
前記係合爪は、前記連結面から軸方向に延びる基部と、この基部の先端部から径方向外方のみに突出し前記他方の連結部に係合する爪部とを有し、
前記一方の連結部には、当該連結部を軸方向に貫通する挿入孔が形成され
前記挿入孔の径方向内側の内面が前記基部の径方向外端面と面一に配置されている、転がり軸受。
【請求項2】
一方の前記分割体の少なくとも1つの連結部には、前記連結面から軸方向に突出する凸部が形成され、他方の前記分割体の少なくとも1つの連結部には、前記連結面から軸方向に窪み、前記凸部が嵌合される凹部が形成されている、請求項1に記載の転がり軸受。
【請求項3】
前記凹部の断面輪郭形状が、前記凸部の断面輪郭形状と同一か、又はこれよりも大きく形成されている、請求項2に記載の転がり軸受。
【請求項4】
前記凸部が先細り形状に形成されている、請求項2又は3に記載の転がり軸受。
【請求項5】
一つの前記連結面に対して前記凸部と前記凹部とが、当該連結面の周方向中央を基準として対称位置に形成されている、請求項2〜4のいずれか1項に記載の転がり軸受。
【請求項6】
前記係合爪及び前記係合溝の少なくとも一方が形成された前記連結部に、前記凸部及び前記凹部の少なくとも一方が形成されている、請求項2〜5のいずれか1項に記載の転がり軸受。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載された転がり軸受における樹脂製保持器の一方の連結部を金型により製造する方法であって、
前記金型が、キャビティを有する第1の金型と、前記キャビティ内に配置されるコアを有する第2の金型とを有しており、
前記キャビティ内で前記一方の連結部を成形する成形工程と、
前記第1の金型及び前記第2の金型を軸方向に脱型する脱型工程とを含み、
前記成形工程が、前記コアによって、前記一方の連結部における挿入孔と、前記一方の連結部における係合爪の基部の径方向外端面とを成形する工程を含む、樹脂製保持器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製の保持器を備えた転がり軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
転がり軸受の内輪及び外輪の間に配置された転動体を保持する樹脂製保持器として、いわゆる片抱きタイプの保持器が知られている。片抱きタイプの保持器は、玉を保持するためのポケットが周方向に等間隔で複数形成されており、各ポケットは玉を取り付けるために軸方向一方側に開口した形状となっている。
片抱きタイプの保持器を備えた転がり軸受が高速で回転すると、遠心力によって保持器の軸方向一方側、つまりポケットの開口側が開くように変形し、保持器と玉とが干渉して転がり軸受の回転トルクが増大したり、転がり軸受が焼き付いたりするおそれがある。
【0003】
一方、高速回転の条件下でも使用可能となる両抱きタイプの樹脂製保持器も知られている(例えば、特許文献1参照)。この樹脂製保持器は、円環状に形成された一対の分割体を連結することによって構成されている。
一対の分割体は同一形状からなり、各分割体には、ポケットを半分に分割した形状の複数のポケット部と、相手側の分割体と連結させるための複数の連結部とが周方向に交互に形成されている。分割体の各連結部には、係合爪と係合溝とが周方向に隣接して形成されており、一方の分割体の係合爪が、他方の分割体の係合溝に挿入され、当該分割体に係合する。これにより、一対の分割体の連結部同士が軸方向に関して分離不能に連結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4946881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載された樹脂製保持器は、分割体の連結部に係合爪と係合溝とを形成する必要があるため、この保持器を成形するための金型の構造が複雑となり、この金型を製作するための金型費用が高くなるという問題がある。特に、係合爪は、軸方向に突出する基部と、基部の先端から径方向に突出する爪部とを有しており、突出方向の異なる2つの部位(基部及び爪部)を有する係合爪を成形するには、軸方向に脱型する金型だけでなく径方向に脱型する金型が必要になり、金型構造が複雑となる。
【0006】
他方、特許文献1に記載された樹脂製保持器は、係合爪の成形のばらつき等に起因して連結させた一対の分割体に径方向のずれが生じる可能性がある。
本発明は以上のような実情に鑑みてなされたものであり、樹脂製保持器を製造するための金型費用を抑えつつ、高速回転の条件下でも使用することができる転がり軸受を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明は、内輪と、外輪と、前記内輪及び前記外輪の間に転動可能に配置された複数の転動体と、複数の前記転動体を保持する樹脂製保持器とを備えている転がり軸受であって、前記樹脂製保持器は、軸方向に二分割されている円環状の一対の分割体からなり、前記各分割体に、転動体を保持するための半割ポケット面が形成されている複数のポケット部と、相手側の分割体に接する連結面が形成され当該相手側の分割体と連結するための複数の連結部とが周方向に交互に形成され、互いに連結される一対の前記連結部のうち一方の前記連結部に、前記連結面から軸方向に突出する係合爪が形成され、他方の前記連結部に、前記連結面から軸方向に窪み、前記係合爪が挿入される係合溝が形成され、前記係合溝は、前記連結部の内周壁において開放しており、前記係合爪は、前記連結面から軸方向に延びる基部と、この基部の先端部から径方向外方のみに突出し前記他方の連結部に係合する爪部とを有し、前記一方の連結部には、当該連結部を軸方向に貫通する挿入孔が形成され、前記挿入孔の径方向内側の内面が前記基部の径方向外端面と面一に配置されていることを特徴とする。
【0008】
上記構成の転がり軸受は、軸方向に二分割されている円環状の一対の分割体からなる樹脂製保持器を備え、これら分割体は、一方の連結部に形成された係合爪を、他方の連結部に形成された係合溝に挿入し、当該他方の連結部に係合することによって連結される。これにより、遠心力によって各分割体が変形するのを抑制することができ、高速回転の条件下であっても樹脂製保持器を使用することができる。
【0009】
また、一方の連結部には、当該連結部を軸方向に貫通する挿入孔が形成され、前記挿入孔の径方向内側の内面が前記基部の径方向外端面と面一に配置されている。そのため、軸方向に脱型する金型を用いて挿入孔と係合爪を成形することができ、樹脂製保持器を製造するための金型を簡素化し、金型製作費用を抑制することが可能となる。
【0010】
(2) 一方の前記分割体の少なくとも1つの連結部には、前記連結面から軸方向に突出する凸部が形成され、他方の前記分割体の少なくとも1つの連結部には、前記連結面から軸方向に窪み、前記凸部が嵌合される凹部が形成されていることが好ましい。
このような構成によって、係合爪の成形のばらつき等に起因して互いに連結される一対の分割体が位置ずれするのを防止することができ、樹脂製保持器の組み立て精度を確保することができる。
【0011】
(3) 前記凹部の断面輪郭形状は、前記凸部の断面輪郭形状と同一か、又はこれよりも大きく形成されていることが好ましい。
このような構成によって、中間嵌め又は隙間嵌めにより凸部を凹部に嵌合させ易くすることができる。
【0012】
(4) 前記凸部は、先細り形状に形成されていることが好ましい。
このような構成によっても、凹部に凸部をより嵌合させ易くすることができる。
【0013】
(5) 一つの連結面に対して、前記凸部と前記凹部とが当該連結面の周方向中央を基準として対称位置に形成されていることが好ましい。
このような構成によって、同一形状の分割体を反転させ、凹部と凸部との双方が形成された連結面同士を当接させることで、各連結面に形成された凸部を、相手側の連結面に形成された凹部に嵌合させることができる。
【0014】
(6) 前記係合爪及び前記係合溝の少なくとも一方が形成された前記連結部に、前記凸部及び前記凹部の少なくとも一方が形成されていることが好ましい。
この構成によれば、係合爪と係合溝とによって連結された連結部同士が、凸部と凹部との嵌合によって位置決めされるので、係合爪の成形のばらつき等に起因して分割体同士が位置ずれするのをより確実に防止することができる。
(7) 上記(1)〜(6)のいずれか1つに記載された転がり軸受における樹脂製保持器の一方の連結部を金型により製造する方法であって、前記金型が、キャビティを有する第1の金型と、前記キャビティ内に配置されるコアを有する第2の金型とを有しており、前記キャビティ内で前記一方の連結部を成形する成形工程と、前記第1の金型及び前記第2の金型を軸方向に脱型する脱型工程とを含み、前記成形工程が、前記コアによって、前記一方の連結部における挿入孔と、前記一方の連結部における係合爪の基部の径方向外端面とを成形する工程を含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、樹脂製保持器を製造するための金型費用を抑えつつ、高速回転の条件下でも使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施形態に係る転がり軸受の樹脂製保持器を示す斜視図である。
図2】転がり軸受の断面図である。
図3】樹脂製保持器の分割体の一部を示す斜視図である。
図4】分割体の一部を示す平面図である。
図5】(a)は、図4のA−A線断面図、(b)は、図4のB−B線断面図である。
図6】一対の分割体の連結状態を示す断面図である。
図7】分割体の成形金型を示す断面図である。
図8】凸部と凹部の形状を示す図である。
図9】本発明の第2の実施形態における樹脂製保持器の分割体の一部を示す平面図である。
図10】本発明の第3の実施形態における樹脂製保持器の分割体の一部を示す平面図である。
図11】本発明の第4の実施形態における樹脂製保持器の凸部と凹部の形状を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る転がり軸受の樹脂製保持器を示す斜視図である。図2は、転がり軸受の断面図である。
図2において、この転がり軸受は、内周面に軌道面3が形成されている外輪2と、外周面に軌道面5が形成されている内輪4と、これら軌道面3,5間に設けられている複数の玉(転動体)6と、これら玉6を転動自在に保持する保持器1とを備えている。
【0018】
保持器1は、軸方向に関して2分割構造とされている。具体的に、保持器1は、円環状に形成された一対の分割体10を組み合わせることによって構成されている。
図1において、この保持器1には、周方向に一定の間隔をあけて複数のポケット7が形成されている。ポケット7は、玉6(図2参照)の直径よりも僅かに大きな直径を有する球の表面に沿った凹状の部分球形状を有している。そして、このポケット7に玉6が収容され、回転自在に保持される。
【0019】
分割体10は、合成樹脂製であり、特にポリアミド樹脂などの軟質樹脂製であるのが好ましい。分割体10を軟質樹脂製とした場合、一対の分割体10を連結するときに後述する係合爪15を弾性変形させても折れにくくなり、分割体10の破損するのを防止することができる。
【0020】
図3は、分割体10の一部を示す斜視図である。
本実施形態の保持器1は、同一形状の2つの分割体10によって構成されている。分割体10は、ポケット部11と連結部12とを周方向に関して交互に備えている。ポケット部11は、ポケット7(図1参照)を構成するための半割ポケット面13が形成されている部分である。連結部12は、相手側の分割体10(連結部12)と連結させるための部分である。本実施形態の分割体10は、図1に示すように、ポケット部11と連結部12とをそれぞれ8個ずつ備えている。なお、本実施形態のポケット部11と連結部12の個数は、偶数個であってもよいし奇数個であってもよい。
【0021】
連結部12には、軸方向に対して垂直な面(径方向に沿った面)である連結面14が形成されている。そして、一対の分割体10は、それぞれの連結面14同士が突き合わされた状態で連結される(図1参照)。
【0022】
図4は、分割体10の一部を示す平面図である。また、図5(a)は、図4のA−A線断面図,図5(b)は、図4のB−B線断面図である。図6は、一対の分割体10の連結状態を示す断面図である。
図3図6に示すように、分割体10における連結部12は、外周壁12aと内周壁12bと内側壁12cとを有し、これらの壁12a〜12cで囲まれた中空構造を呈している。したがって、連結部12は、その中空内部が軸方向外端部において開放し、軸方向内端部において内側壁12cで閉じられている。
【0023】
分割体10の連結部12には、連結面14から軸方向に突出する係合爪15と、連結面14から軸方向に窪む係合溝16とが形成されている。係合爪15と係合溝16とは、連結面14の周方向中央C(図3及び図4参照)を基準として対称位置に形成されている。
係合爪15は、連結面14から軸方向に沿って延びる基部17と、この基部17の先端部から径方向外方に突出する爪部18とを有している。基部17は、断面形状が長方形状に形成されている。爪部18は、径方向外端面18aが傾斜面とされることによって先細り形状に形成されている。また、係合爪15は、軸方向の全体にわたって略一定な周方向の幅を有している。
【0024】
係合溝16は、係合爪15の周方向の幅よりも若干大きい周方向の幅を有しており、連結部12の内側壁12cを軸方向に貫通している。また、係合溝16は、連結部12の内周壁12bにおいて開放している。
同一形状の2つの分割体10の連結面14同士を向かい合わせると、各連結面14の係合爪15が、相手側の係合溝16に対向して配置される。そして、両分割体10の連結面14を突き合わせると、各係合爪15が、それぞれ相手側の係合溝16に挿入される。このとき、各係合爪15は、爪部18が相手側の係合溝16の溝底面16aに当接することによって基部17が径方向内方へ弾性変形し、爪部18が係合溝16の溝底面16aを通過することによって基部17が径方向外方へ弾性復帰し、各爪部18が相手側の連結部12の内側壁12cに係合する(図6参照)。
【0025】
このように、各連結部12における係合爪15の爪部18が、相手側の連結部12に係合することで、一対の分割体10が軸方向に離れることなく連結される。また、各係合爪15の基部17の径方向外端面17aが、相手側の係合溝16の溝底面16aに当接することで一対の分割体10の径方向の位置ずれが防止される。
このように本実施形態では、2つの分割体10を連結することによって両抱きタイプの樹脂製保持器1が構成されるので、遠心力によって保持器1が変形するのを抑制することができ、高速回転の条件下でも樹脂製保持器1を使用することができる。
【0026】
図3及び図4に示すように、分割体10の連結部12には、連結面14から軸方向に突出する凸部22と、連結面14から軸方向に窪む凹部23とが形成されている。凸部22は、係合爪15の径方向外側に配置され、凹部23は、係合溝16の径方向外側に配置されている。凸部22と凹部23とは、連結面14の周方向中央Cを基準として対称位置に形成されている。
【0027】
図8は、凸部22及び凹部23の形状を示す図である。特に、図8(a)は、凸部22の側面形状と横断面形状(断面輪郭形状)とを示し、図8(b)は、凹部23の縦断面形状と横断面形状(断面輪郭形状)とを示している。
凸部22は、円柱形状に形成されている。したがって、凸部22は、軸方向にわたって略一定の円形状の断面輪郭形状を有している。これに対して凹部23は、円筒形状に形成されている。したがって、凹部23は、軸方向にわたって略一定の円形状の断面輪郭形状を有している。そして、凹部23の断面輪郭形状は、凸部22の断面輪郭形状と同じか、これよりも大きく形成されている。具体的には、凹部23の内径d2は、凸部22の外径d1と同一か、外径d1よりも大きく形成されている。また、凸部22の先端の外周縁にはテーパー面22aが形成され、このテーパー面22aによって凸部22が先細り形状に形成されている。
【0028】
前述したように、同一形状の2つの分割体10の連結面14を突き合わせ、各連結部12の係合爪15を、相手側の連結部12に係合させることによって両分割体10を連結すると、各連結部12の凸部22が、相手側の連結部12の凹部23に嵌合される。
【0029】
合成樹脂製の分割体10を金型によって成形した場合、成形のばらつきによって係合爪15に反り等のひずみが生じることがある。このようなひずみが生じると、連結された分割体10同士が径方向に位置ずれし、組み立て精度が低下する可能性がある。
本実施形態の保持器1は、2つの分割体10を連結したときに凸部22が凹部23に嵌合されるので、係合爪15のひずみ等に起因する一対の分割体10の位置ずれを防止し、組み立て精度を好適に確保することができる。
【0030】
また、凹部23の断面輪郭形状は、凸部22の断面輪郭形状と同じか、これよりも大きく形成されているので、凸部22は、凹部23に中間嵌め又は隙間嵌めによって嵌合される。そのため、凸部22を凹部23に嵌合させ易くすることができる。また、凸部22は、先細り形状に形成されているので、より凹部23に嵌合させ易くすることができる。
【0031】
図3図5に示すように、分割体10における係合爪15の径方向外側には、連結部12を軸方向に貫通する挿入孔20が形成されている。挿入孔20の径方向内側の内面は、係合爪15の基部17の径方向外端面17aと面一に配置されている。この挿入孔20は、係合爪15の基部17における径方向外端面17aを成形するための金型により形成される。
図7に示すように、分割体10は、金型31,32を用いた射出成形等によって製造される。図7(a)は、図4のA−A線断面における金型構造を示し、図7(b)は、図4のB−B線断面における金型構造を示している。
【0032】
図7(a)(b)に示すように、一対の金型のうち一方の金型31には、分割体10を成形するためのキャビティ31aが形成されている。また、他方の金型32には、分割体10の内部を形成するためのコア32aが形成されている。コア32aは、図7(a)に示すように、係合爪15の基部17の径方向外端面17aを形成するための爪成形部32a1を備えている。また、金型31のキャビティ31aには、凸部22を成形するための凸部成形孔31a1と、凹部23を成形するための凹部成形突起31a2とが設けられている。
【0033】
係合爪15の径方向外側には、挿入孔20が形成されている。金型32のコア32aによって挿入孔20を成形することができ、コア32aの爪成形部32a1によって係合爪15の基部17の径方向外端面17aを成形することができる。そのため、係合爪15に基部17の先端から径方向外方へ突出する爪部18が形成されていたとしても、双方の金型31,32を軸方向に脱型することが可能となる。つまり、上記のような挿入孔20が形成されない場合には、係合爪15の基部17の径方向外端面17aを成形するには、軸方向に脱型する一対の金型に加えて、径方向に脱型する金型を設けなればならず、また、凸部22を成形する場合には、径方向に脱型する金型を設けること自体が困難になる場合がある。この点、本実施形態では、上記のような挿入孔20を設けることで、軸方向に脱型する金型31,32によって分割体10を成形することが可能となり、金型31,32の構造を簡素化し、金型製作費用を抑制することができる。
【0034】
図9は、本発明の第2の実施形態における樹脂製保持器の分割体の一部を示す平面図である。この実施形態の分割体10は、凸部22及び凹部23の配置が第1の実施形態とは異なっている。すなわち、本実施形態の凸部22は、係合溝16の径方向外側に配置され、凹部23は、係合爪15の径方向外側に配置されている。凸部22と凹部23とは、連結面14の周方向中央Cを基準として対称位置に形成されている。したがって、本実施形態においても、同一形状の2つの分割体10を、連結面14同士を突き合わせることによって凸部22と凹部23とを嵌合させることができる。
【0035】
図10は、本発明の第3の実施形態における樹脂製保持器の分割体の一部を示す平面図である。この実施形態の分割体10は、凸部22と凹部23とが二対設けられたものである。具体的には、係合爪15の径方向外側には2つの凸部22が形成され、係合溝16の径方向外側には、2つの凹部23が形成されている。2つの凸部22と2つの凹部23とは、連結面14の周方向中央Cを基準として対称位置に形成されている。
【0036】
本実施形態においても、凸部22と凹部23とを嵌合させることによって一対の分割体10の位置ずれを防止することができる。なお、2つの凸部22及び2つの凹部23は、径方向に並べて配置されていてもよい。また、連結面14の周方向中央Cを挟んで一方側に凸部22と凹部23を1つずつ形成し、他方側にも凸部22と凹部23を1つずつ形成してもよい。
【0037】
図11は、本発明の第4の実施形態における樹脂製保持器の凸部と凹部の形状を示す説明図である。
本実施形態の凸部22は、三角柱形状に形成されている。凹部23は、三角筒形状に形成されている。したがって、凸部22は、断面輪郭形状が正三角形状に形成され、凹部23は、断面輪郭形状が正三角形状に形成されている。凹部23の断面輪郭形状は、凸部22の断面輪郭形状と同一形状か、これよりも大きく形成されている。具体的には、凹部23の断面輪郭形状の三角形の一辺の長さL2が、凸部22の断面輪郭形状の三角形の一辺の長さL1と同じか、これよりも長く形成されている。したがって、凸部22は、中間嵌め又は隙間嵌めにより凹部23に嵌合される。
その他の構成は、第1〜第3の実施形態と同様であり、これらの実施形態と略同様の作用効果を奏する。
【0038】
なお、今回開示した実施形態は例示であって制限的なものではない。本発明の権利範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の構成と均等の範囲内での全ての変更が含まれる。
例えば、凸部22及び凹部23の断面輪郭形状は、円形や三角形に限定されるものではなく、四角形以上の多角形や楕円形等であってもよく、互いに同一形状又は相似形状であればよい。また、凸部22及び凹部23の数についても上記実施形態に限定されるものではない。
【0039】
係合爪15と係合溝16とはすべての連結部12に形成されていなくてもよく、例えば、係合爪15が形成された連結部12と係合溝16が形成された連結部12とが周方向に交互に配置されていてもよい。同様に、凸部22と凹部23とはすべての連結部12に形成されていなくてもよく、凸部22が形成された連結部12と凹部23が形成された連結部12とが周方向に交互に配置されていてもよい。但し、これらの場合、同一形状の分割体10によって樹脂製保持器1を構成するには、連結部12の数を偶数個とし、各分割体10における係合爪15と係合溝16、及び、凸部22と凹部23を同数とすることが必要となる。
【0040】
また、樹脂製保持器1を構成する一対の分割体10は、同一の形状でなくてもよい。例えば、係合爪15と係合溝16のうち、係合爪15のみが一方の分割体10の連結部12に形成され、係合溝16のみが他方の分割体10の連結部12に形成されていてもよい。また、凸部22と凹部23のうち、凸部22のみが一方の分割体10の連結部12に形成され、凹部23のみが他方の分割体10の連結部12に形成されていてもよい。
凸部22及び凹部23は、ぞれぞれ分割体10の少なくとも1つの連結部12に形成されていればよい。
【0041】
係合爪15の爪部18は、基部17の先端部から径方向内方に突出していてもよく、この場合、連結部12には、基部17の径方向内端面を成型するための金型を挿入させる挿入孔20が形成されていればよい。
【符号の説明】
【0042】
1:樹脂製保持器、2:外輪、3:内輪、6:玉(転動体)、10:分割体、11:ポケット部、12:連結部、13:半割ポケット面、14:連結面、15:係合爪、16:係合溝、17:基部、17a:径方向外端面、18:爪部、20:挿入孔、22:凸部、23:凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11