(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
通常、バッテリから供給される電力によって電気モータを駆動して走行する車両が知られている。
特許文献1には、バッテリと、バッテリが収容されるバッテリトレーとを備えたバッテリパックが開示されている。バッテリトレーは、左右のサイドメンバーの間に配置されるトレー本体と、トレー本体の上端外周に設けられカバーが取着されるフランジとを有している。そして、トレー本体の周囲に金属製の枠状の補強フレームが設けられている。
補強フレームは、トレー本体の側部から車幅方向外側に位置する外側部分を有しており、車両の側方から他の車両が衝突した場合、車幅方向内側に変形したサイドメンバがこの補強フレームの外側部分に当たることで衝撃力が分散され、これによりバッテリーパックの保護が図られている。
ところで、金属製の補強フレームをトレー本体の側部に溶接により接合する場合、補強フレームの外側部分とトレー本体との間の空間に水が侵入すると、補強フレームに錆が発生し、やがて補強フレームの錆がトレー本体に移ることが懸念される。
そのため、補強フレームとトレー本体との接合部分にシール材を塗布することにより補強フレームとトレー本体との間の空間への水の侵入を防止することが考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、補強フレームの上部は、フランジの下方に位置するトレー本体の側部の箇所に接合される。
したがって、補強フレームの外側部分の上部とフランジとの間に、シール材を塗布するシールガンのノズルを挿入するに足る上下方向の作業用空間を補強フレームの全長にわたって確保しつつ、補強フレームの内部に水が浸入しないような水密構造を確保する必要がある。すなわち、シール作業の効率化、及び補強フレームの水密構造を確保する観点において依然として改善の余地がある。
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、シール作業の効率化を図りつつ補強フレームの水密構造を確保する上で有利なバッテリーケースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、
本発明は、バッテリが載置される底壁及びその底壁の周囲を囲む側壁を有するトレー本体と、前記トレー本体の上部外周に設けられて前記トレー本体を覆うカバーと、前記トレー本体の側壁から突き出るフランジと、前記フランジの下方で前記トレー本体の車幅方向の側部に設けられる前記側壁に沿って車両の前後方向に延在する補強フレームとを備えるバッテリーケースであって、前記補強フレームは、前記トレー本体の側壁の下部に取着されたフレーム下部と、前記トレー本体の側壁に取着されたフレーム上部と、前記フレーム下部と前記フレーム上部との間で前記トレー本体の側壁から車幅方向の外側に間隔をおいた箇所に位置するフレーム中間部とを有し、前記フレーム中間部と前記フランジとの間には離間部が設けられており、前記トレー本体の底壁と前記フレーム下部との間がシール材によりシールされているとともに、前記トレー本体の側壁と前記フレーム上部との間は前記離間部にてシール材によりシールされ
、前記補強フレームを前記トレー本体に取り付けた後に、前記補強フレームを覆うように補強部材が前記補強フレームに取り付けられ、前記補強部材は、前記フレーム中間部に着脱可能に取着され前記フレーム中間部から上方に延在する側板部と、前記側板部の上端から前記フレーム上部に近づく方向に延在する上板部とを有し、前記補強フレーム及び前記補強部材は、各々前記フレーム中間部と前記側板部とが当接された状態で双方を挿通する挿通孔を有し、この挿通孔には鍔部を有するボルトが挿通されており、該鍔部が前記補強部材の側板部に密接されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、補強フレームのフレーム中間部とフランジとの間に離間部が設けられており、トレー本体の側壁とフレーム上部との間が離間部にてシール材によりシールされている。このため、トレー本体の側壁とフレーム上部との間に、シールガンのノズルを挿入するに足る上下方向の作業用空間が補強フレームの全長にわたって確保されている。その結果、シール作業の効率化を図る上で有利となる。
また、そうしたトレー本体の側壁とフレーム上部との間に加えて、トレー本体の底壁とフレーム下部との間もシール材によりシールされている。これにより、補強フレームの充分な水密構造が確保され、内部への水の浸入が抑制される。その結果、例えば、補強フレームに錆が発生し、その錆がトレー本体に移るといった不具合が効果的に防止される。
【0007】
また、本発明によれば、補強部材を補強フレームに取り付けた後では、側突時にサイドメンバが補強フレームに加えて補強部材に当たるため、サイドメンバが当たる面積を補強フレームにより大きく確保でき、補強フレームおよび補強部材により衝撃力の分散を効果的に行なう上で有利となり、バッテリーの保護を図る上で有利となる。
【0008】
また、本発明によれば、補強部材を補強フレームに一体で設けるに際して挿通孔を挿通し、その挿通孔にボルトを挿通した場合でも、同ボルトに鍔部が設けられておりその鍔部が補強部材の側板部に密接されているため、挿通孔を介しての補強フレーム内への水の浸入が効果的に抑制されて水密構造を確保することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施の形態)
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
以下の実施の形態では、本発明が適用される車両がモータのみを駆動源とする電気自動車である場合について説明するが、本発明は、電気自動車に限定されるものではなく、床下にバッテリケースが配置される車両であれば広く適用可能であり、例えば、ハイブリッド車、あるいは、プラグインハイブリッド車などの電動車に広く適用可能である。
【0011】
図1、
図3に示すように、電動車10は、車体12と、不図示の走行用モータと、バッテリケース14と、補強フレーム16と、補強部材18とを含んで構成されている。
なお、図中、矢印FRは車両の前方を示し、矢印RRは車両の後方を示し、矢印INは車幅方向内方を示し、矢印OUTは車幅方向外方を示し、矢印UPは車両の上方を示し、矢印DOWNは車両の下方を示す。
車体12は、左右のサイドメンバ20と、不図示の複数のクロスメンバと、フロアパネル22とを含んで構成されている。
左右のサイドメンバ20は、車両の車幅方向に間隔をおいて車両前後方向に延在している。
複数のクロスメンバは、車両の前後方向に間隔をおいて配置され、それぞれ車幅方向に延在して一対のサイドメンバ20を連結している。
フロアパネル22は、車体12の下部に配置されて車室の底部を構成しており、鋼板で構成されている。フロアパネル22は、フロアパネル22の下面の車幅方向の両側が左右のサイドメンバ20に溶接により接合されている。
【0012】
バッテリケース14は、トレー本体24と、カバー26と、走行用の不図示のバッテリとを含んで構成されている。バッテリケース14は、バッテリの電力を前記走行用モータに供給することで走行用モータを駆動させ電動車10を走行させる。
トレー本体24およびカバー26は金属製である。
トレー本体24は、左右のサイドメンバ20の間に配置されている。
トレー本体24は、平面視長方形の板状の底壁2402と、底壁2402の周囲から起立する側壁2404と、側壁2404の上端外周に設けられた環状のトレー本体側フランジ2406とを備えている。
トレー本体24は、長手方向を車両の車両前後方向に合致させて車幅方向の中央に配置され、補強部材18および後述する取り付け部材36を介して2つのサイドメンバ20に取着されている。
なお、トレー本体24の車体12への取付構造は取り付け部材36を用いる構造に限定されるものではなく、従来公知の様々な構造が使用可能である。
【0013】
バッテリはトレー本体24に収容されている。
バッテリは、互いに直列に接続された複数の電池モジュールと、これら電池モジュールを機能させるための周辺部品とを含んで構成されている。各電池モジュールは互いに直列に接続された複数の電池セルを備えている。
カバー26は、トレー本体24の底壁2402に対向する長方形の板状の不図示の上壁と、上壁の周囲から垂設された側壁2604と、側壁2604の下端外周に設けられた環状のカバー側フランジ2606とを備えている。
トレー本体24とカバー26は、トレー本体側フランジ2406とカバー側フランジ2606とを重ね合わせた状態で不図示の複数のボルトにより締結されている。
【0014】
補強フレーム16は、金属製の板材から形成されている。
補強フレーム16は、トレー本体側フランジ2406の下方でトレー本体24の車幅方向両側の側壁2404に設けられ(トレー本体24の車幅方向の側部に位置する側壁2404に設けられ)、側壁2404の全長にわたって延在している。
補強フレーム16は、フレーム下部28と、フレーム上部30と、フレーム中間部32とを備えている。
フレーム下部28は、底壁2402の車幅方向両側の箇所から車幅方向外側に延在している。
フレーム下部28の車幅方向内側の端部は、トレー本体24の側壁2404の下部、すなわち、車幅方向両側に位置する底壁2402の箇所に溶接により取着されている。
フレーム下部28と底壁2402との接合部分はシール材34により水密にシールされている。
また、フレーム下部28には、複数の取り付け部材36が補強フレーム16の長手方向に間隔をおいて溶接により接合されている。
各取り付け部材36は、フレーム下部28の車幅方向外側の端部から車幅方向外側に延在しており、各取り付け部材36の延在方向の先部にはボス部3602が設けられ、ボス部3602にボルト挿通孔3604が形成されている。
各取り付け部材36のボス部3602は、サイドメンバ20の下部に合わされ、ボルト挿通孔3604を挿通したボルト38が、サイドメンバ20のウェルドナット2002に締結され、これによりトレー本体24は左右のサイドメンバ20の間に配置されている。
【0015】
フレーム上部30は、トレー本体24の側壁2404に沿って上下方向に延在している。
フレーム上部30は、トレー本体24の側壁2404の上部、すなわち、車幅方向両側に位置する側壁2404の上部に溶接により取着されている。フレーム上部30は、補強フレーム16の断面係数を大きく確保し補強フレーム16の剛性を高めるため、トレー本体側フランジ2406の直下に位置する側壁2404の箇所に配置されていることが好ましい。
【0016】
フレーム上部30と側壁2404との接合部分は、車両の前後方向に沿ってシール材34により水密にシールされている。このシール材34は、フランジ2406の根元(基端)とフレーム上部30の上端との間に設けられている。これにより、補強フレーム16とトレー本体24の側壁との間のシール効果が高められる。
【0017】
フレーム中間部32は、フレーム下部28とフレーム上部30との間で断面逆L字状に側壁2404から車幅方向の外側に間隔をおいた箇所で車両の前後方向に延在している。
すなわち、フレーム中間部32は、フレーム下部28の車幅方向外側の端部から起立する中間側部3202と、中間側部3202の上端から車幅方向内側に延在しフレーム上部30に接続される中間上部3204とを有している。
したがって、補強フレーム16とトレー本体24の側壁2404とにより閉断面構造が形成され、補強フレーム16とトレー本体24の側壁2404との間に空間S0が形成されている。
【0018】
また、中間側部3202には、補強フレーム16の延在方向に間隔をおいて複数のボルト挿通孔3206が形成されると共に、中間側部3202の車幅方向内側にそれら複数のボルト挿通孔3206に対応してウェルドナット3208が設けられている。
なお、補強フレーム16の長手方向の両端に形成された開口は、不図示の閉塞板が溶接により取着されることで閉塞され、開口の縁と閉塞板との接合部分はシール材34により水密にシールされている。したがって、補強フレーム16とトレー本体24の側壁2404との間の空間S0は、各シール材34により水密にシールされ、空間S0に水が侵入することが防止されている。
また、中間上部3204とトレー本体側フランジ2406との間には、シールガン46のノズル4602を挿入するに足る上下方向の作業用空間S1(離間部)が補強フレーム16の全長にわたって確保されている。そして、トレー本体24の側壁とフレーム上部30との間が作業用空間S1にてシール材34によりシールされている。すなわち、トレー本体24の側壁とフレーム上部30との間に、シールガンのノズルを挿入するに足る上下方向(車高方向)の作業用空間S1が補強フレーム16の全長にわたって確保されることとなる。その結果、シールガンを用いてのシール作業の効率化を図る上で有利となる。
【0019】
補強部材18は、金属製の板材から形成されている。この補強部材18は、補強フレーム16をトレー本体24に取り付けた後に、補強フレーム16を覆うように取り付けられる。
補強部材18は、補強フレーム16の全長に延在する長さを有し、側板部40と上板部42とを備えている。
側板部40には、長手方向に間隔をおいて複数のボルト挿通孔4002が形成されている。
側板部40の下部は中間側部3202に合わされ、ボルト挿通孔4002、3206を挿通したボルト44がウェルドナット3208に螺合している。これにより、補強部材18が補強フレーム16に対して着脱可能に取着されている。
言い換えると、補強フレーム16及び補強部材18は、各々フレーム中間部32と側板部40とが当接された状態で双方を挿通するボルト挿通孔4002、3206を有している。
側板部40の上部は、フレーム中間部32の上方に位置し、詳細には、フレーム上部30の車幅方向外側に位置し、フレーム上部30を車幅方向外側から覆う位置に設けられている。
【0020】
上板部42は、側板部40の上端から車幅方向内側に延在する上面部4202と、上面部4202の車幅方向内側の端部から下方に延在する屈曲部4204とを有している。
上面部4202は、側板部40の上部と同様に、フレーム上部30を車幅方向外側から覆う位置に設けられている。この上板部42は、トレー本体24の側壁から離間している。これにより、例えば、衝突により補強部材18が変形したとしてもトレー本体24に特に影響を与えることなくトレー本体24を正常な状態で維持することが可能となる。
【0021】
なお、ボルト44の頭部には鍔部4402が形成されており、ボルト締結時に鍔部4402が側板部40の外面に強固に密着することでボルト挿通孔4002、3206を介しての補強フレーム16内への水の侵入が阻止される。
【0022】
次に、補強フレーム16のトレー本体24への取り付け、補強部材18の補強フレーム16への取り付け、バッテリケース14のサイドメンバ20への取り付けについて説明する。
図2に示すように、補強フレーム16のフレーム下部28とフレーム上部30とをトレー本体24の側壁2404に対して位置決めして溶接により接合する。
次いで、シールガン46のノズル4602をフレーム下部28とトレー本体24との接合部分に接近させ、シールガン46のノズル4602からシール材34を吐出させつつシールガン46を補強フレーム16の延在方向に移動させることによりシール材34を塗布する。
【0023】
次いで、トレー本体側フランジ2406の下方において、シールガン46のノズル4602をフレーム上部30とトレー本体24との接合部分に接近させ、シールガン46のノズル4602からシールを吐出させつつシールガン46を補強フレーム16の延在方向に移動させることによりシール材34を塗布する。
この際、フレーム中間部32とトレー本体側フランジ2406との間には作業用空間S1が確保されているため、シールガン46がフランジ2406や補強フレーム16に干渉することがなくシール作業の効率化が図られている。
【0024】
シール作業が終了したならば、
図3に示すように、補強フレーム16の外側に補強部材18を位置決めし、複数のボルト44をボルト挿通孔4002、3604に挿通してウェルドナット3208に螺合することで補強部材18を補強フレーム16に締結する。
最後に、各取り付け部材36のボルト挿通孔3604を挿通したボルト38を、サイドメンバ20に設けられた複数のウェルドナット2002に螺合し、バッテリーパック1414をサイドメンバ20に取り付ける。
【0025】
以上説明したように本実施の形態によれば、補強フレーム16のフレーム中間部32とトレー本体側フランジ2406との間に作業用空間S1(離間部)が設けられており、トレー本体24の側壁2404とフレーム上部30との間が作業用空間S1(離間部)にてシール材34によりシールされている。このため、トレー本体24の側壁2404とフレーム上部30との間に、シールガン46のノズル4602を挿入するに足る上下方向の作業用空間S1(離間部)が補強フレーム16の全長にわたって確保されている。その結果、シール作業の効率化を図る上で有利となる。
また、そうしたトレー本体24の側壁2404とフレーム上部30との間に加えて、トレー本体24の底壁2402とフレーム下部28との間もシール材34によりシールされている。これにより、補強フレーム16の充分な水密構造が確保され、補強フレーム16の内部への水の浸入が抑制される。その結果、例えば、補強フレーム16に錆が発生し、その錆がトレー本体24に移るといった不具合が効果的に防止される。
【0026】
また、本実施の形態では、補強部材18を補強フレーム16に取り付けた後では、側突時にサイドメンバ20が補強フレーム16に加えて補強部材18に当たるため、サイドメンバ20が当たる面積を補強フレーム16により大きく確保でき、補強フレーム16および補強部材18により衝撃力の分散を効果的に行なう上で有利となり、バッテリーの保護を図る上で有利となる。
【0027】
また、本実施の形態では、補強部材18を補強フレーム16に一体で設けるに際してボルト挿通孔4002、3206を挿通し、そのボルト挿通孔4002、3206にボルト44を挿通した場合でも、同ボルト44に鍔部4402が設けられておりその鍔部4402が補強部材18の側板部40に密接されているため、ボルト挿通孔4002、3206を介しての補強フレーム16内への水の浸入が効果的に抑制されて水密構造を確保することが可能となる。
また、本実施の形態では、補強部材18は、フレーム中間部32に着脱可能に取着された箇所から上方に延在する側板部40と、側板部40の上端から前記フレーム上部30に近づく方向に延在する上板部42とを有している。
したがって、側板部40と上板部42とにより補強部材18の強度を高め、補強フレーム16の強度を高める上で有利となり、バッテリーパック14の保護を図る上でより有利となる。