(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
この発明を実施するための形態について添付の図面を参照しながら説明する。各図において、同一又は相当する部分には同一の符号を付して、重複する説明は適宜に簡略化又は省略する。なお、本発明は以下の実施の形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
【0011】
実施の形態1.
図1から
図6は、この発明の実施の形態1に係るもので、
図1は保守作業間隔決定装置の機能的な構成を示すブロック図、
図2は保守作業間隔決定装置で用いる故障分布の一例を示す図、
図3は保守作業間隔決定装置における想定故障件数の算出方法を説明する図、
図4は保守作業間隔決定装置における分布合致条件の判定に用いる相関検定を説明する図、
図5は保守作業間隔決定装置における各条件を満たす故障分布を用いた保守作業間隔の決定方法を説明する図、
図6は保守作業間隔決定装置の動作の流れを示すフロー図である。
【0012】
図1に示すように、この発明に係る保守作業間隔決定装置は、故障分布選択部1、細分化条件設定部2、故障発生実績算出部4、実績データ記憶部3及び作業間隔算出部10を備えている。故障分布選択部1は、故障分布として用いる統計的分布の種類を選択するためのものである。ここで、故障分布とは、保守作業の対象となる施設における故障発生率が従うと仮定する統計的分布のことである。
【0013】
また、ここでは、故障発生率C(m)を、「前回の保守作業からmヶ月経過した1ヶ月間の間に、故障が発生する確率」と定義する。なお、より正確には、「mヶ月経過した1ヶ月間」について、保守作業を行った当月を「0ヶ月経過した1ヶ月間」として扱い、翌月(1日〜月末)を「1ヶ月経過した1ヶ月間」、・・・というように扱う。以降において故障発生率と述べた場合、月毎の故障発生率を指している。年間の故障発生率を評価する場合は、月毎の故障発生率の12ヶ月分を加算した値を使用すればよい。
【0014】
以上のように定義した故障発生率C(m)は、
図2に示すように、作業間隔が長いほど、すなわち、mが大きいほど、その値が増大し、100%に漸近していく性質を持っている。このような性質を持つ故障発生率C(m)が従う統計的分布としては、具体的に例えば、ワイブル分布、ガンマ分布又は対数正規分布等を使用することができる。なお、これらの統計的分布は、いずれも2つのパラメータ(例えば、ワイブル分布及びガンマ分布では形状パラメータと尺度パラメータ、対数正規分布では平均と標準偏差)を有している。
【0015】
保守作業間隔決定装置の使用者は、故障分布選択部1により、故障発生率C(m)が従う統計的分布である故障分布として、先に挙げたワイブル分布、ガンマ分布及び対数正規分布等のうち、具体的にどの分布を使用するのかを選択する。以下においては、故障分布として用いる統計的分布としてワイブル分布を選択した場合を例として説明する。
【0016】
図1に示す細分化条件設定部2は、細分化条件を設定するためのものである。細分化条件とは、保守作業の対象となる施設の機種又は保守作業の内容等、故障発生率C(m)に影響を及す可能性がある要因について、これらの要因毎に細分化して保守作業間隔をより正確に決定したい場合に設定される条件である。保守作業間隔決定装置の使用者は、細分化条件設定部2により、細分化条件の有無及びその内容を設定する。
【0017】
実績データ記憶部3には、保守作業の対象となる施設についての実績データが予め記憶されている。実績データとは、故障発生実績及び保守作業実績に関する情報のことである。故障発生実績とは、保守作業の対象となる施設が設置された各現場において過去に実際に発生した故障の日時、内容及び件数等のことである。ただし、ここでは、故障発生率C(m)は1ヶ月間を単位にした故障発生率であるため、故障発生実績としては1ヶ月間毎の各現場の故障発生件数が少なくともあればよい。
【0018】
また、保守作業実績とは、保守作業の対象となる施設が設置された各現場において過去に実際に行った保守作業の日時、内容及び件数等のことである。ただし、保守作業実績としては各現場での1ヶ月間を単位にした保守作業間隔が少なくともあればよい。このようにして、実績データ記憶部3は、保守作業の対象となる施設における故障発生実績及び保守作業実績の実績データを予め記憶する記憶手段を構成している。
【0019】
故障発生実績算出部4は、実績データ記憶部3に記憶されている実績データの故障発生実績に基づいて、実績故障件数及び実績分布を算出する。実績故障件数は、予め定められた一定期間内において保守作業の対象となる施設が設置された各現場で実際に発生した故障件数の合計である。
【0020】
また、実績分布は、保守作業の対象となる施設が設置された各現場で実際に発生した故障件数を、前回の保守作業からの経過月数毎に合計したものである。すなわち、実績分布は、故障発生実績を故障発生率C(m)の故障分布と同様の形式で表現し直したものであると言うことができる。
【0021】
このようして、故障発生実績算出部4は、記憶手段である実績データ記憶部3に記憶されている実績データの故障発生実績に基づいて実績故障件数を算出する実績件数算出手段と、記憶手段である実績データ記憶部3に記憶されている実績データの故障発生実績に基づいて実績の故障発生分布である実績分布を算出する実績分布算出手段とを兼ねている。
【0022】
作業間隔算出部10は、故障分布選択部1で選択した故障分布、細分化条件設定部2で設定した細分化条件、実績データ記憶部3に記憶されている実績データ、並びに、故障発生実績算出部4で算出した実績故障件数及び実績分布に基づいて、保守作業の対象となる施設が設置された各現場に共通して適用可能である保守作業間隔を算出する。この作業間隔算出部10は、
図1に示すように、故障分布パラメータ設定部11、想定故障件数算出部12、件数合致条件判定部13、分布合致条件判定部14、作業間隔候補算出部15、作業間隔候補記憶部16及び作業間隔決定部17を備えている。
【0023】
前述したように、故障発生率C(m)が従う故障分布はパラメータを含んでおり、これらのパラメータを決定することで経過月数mの関数としての故障発生率C(m)を確定することができる。故障分布パラメータ設定部11は、故障分布選択部1により選択された故障分布について、とり得るパラメータの値を列挙し、列挙したパラメータの値を順に故障分布に設定するものである。このようにして、故障分布選択部1及び故障分布パラメータ設定部11は、保守作業の対象となる施設における故障発生率が従うと仮定する統計的分布である故障分布を設定する故障分布設定手段を構成している。
【0024】
想定故障件数算出部12は、故障分布設定手段である故障分布選択部1及び故障分布パラメータ設定部11により設定された故障分布に故障発生率C(m)が従うとした場合の想定故障件数を算出する。想定故障件数とは、設定した故障分布に故障発生率C(m)が従うという仮定のもとで、保守作業の対象となる施設が設置された各現場で保守作業実績通りの作業間隔でそれぞれ保守作業を実施した場合において前記一定期間の間に発生することが想定される故障件数の合計である。この想定故障件数の算出で用いられる保守作業実績は、実績データ記憶部3に記憶されている実績データのものが使用される。
【0025】
この想定故障件数の算出方法について、以下に詳しく説明する。まず、ある1つ現場における1つの設備について、前回の保守作業から次の保守作業までMヶ月間隔を空けたとした場合、当該Mヶ月間における当該設備の想定故障件数は、前述した故障発生率C(m)の定義から、以下の(1)式により求めることができる。
【0026】
(想定故障件数)=C(1)+C(2)+・・・+C(M−1)+C(M) ・・・ (1)
【0027】
なお、作業実施月(この例では0ヶ月目及びMヶ月目)は、故障が作業の前に発生したか後に発生したか不明である。このため、より正確を期すためには、作業実施月の故障発生率(C(0)及びC(M))はこれらの想定故障件数の算出から除外することが望ましい。ただし、説明の便宜上の以降においては、C(M)も想定故障件数の算出に用いるとする。
【0028】
次に、同一の設備及び作業内容についての複数回の作業実績から、当該設備の想定故障件数を算出する方法について
図3に示す例により説明する。
図3に示すように、この例においては、同一の設備及び作業内容について12回の作業実績があったとする。そして、これら12回の作業実績のうち、作業間隔が3ヶ月であった実績が1件、作業間隔が6ヶ月であった実績が1件、作業間隔が12ヶ月であった実績が6件、作業間隔が15ヶ月であった実績が3件、作業間隔が18ヶ月であった実績が1件であったとする。この場合、これらの実績全体の想定故障件数は、各実績について(1)式を適用した上で合計を求めればよいため、次の(2)式により求めることができる。
【0029】
(想定故障件数)=12×C(1)+12×C(2)+12×C(3)+11×C(4)+11×C(5)+11×C(6)+10×C(7)+10×C(8)+10×C(9)+10×C(10)+10×C(11)+10×C(12)+4×C(13)+4×C(14)+4×C(15)+C(16)+C(17)+C(18) ・・・ (2)
【0030】
件数合致条件判定部13は、故障分布設定手段である故障分布選択部1及び故障分布パラメータ設定部11により設定された故障分布について、想定故障件数算出部12により算出された想定故障件数と、故障発生実績算出部4により算出された実績故障件数との差が、予め設定された件数合致条件を満たすか否かを判定する。件数合致条件は、具体的に例えば、実績故障件数に対して±5%の許容範囲内に想定故障件数と実績故障件数との差が収まるか否かというものに設定される。あるいは、実績故障件数に対する想定故障件数と実績故障件数との差の許容範囲を一定数とすることも考えられる。
【0031】
このように件数合致条件を課すことにより、候補となる統計的分布に従う時に想定される故障件数が、実績故障件数の近傍にある統計的分布を抽出し、故障発生時期の揺らぎに頑健な分布を抽出することができる。
【0032】
分布合致条件判定部14は、まず、件数合致条件判定部13により件数合致条件を満たすと判定された故障分布について、故障発生実績算出部4により算出された実績分布との相関検定を実施する。そして、この相関検定の結果が予め設定された分布合致条件を満たすか否かを判定する。
【0033】
ここで、相関検定(Correlation Test)とは、2系列の数列{Xi},{Yi}(i番目の値同士が対応)に対し、双方が互いに連動する変動であるか否かを検定するものである。相関検定は、散布図に(Xi,Yi)をプロットした際に、直線上に分布する傾向が強いほど、相関があるとみなす検定である。相関検定を行うと検定結果としてp値という値が得られる。
【0034】
例えば、
図4の(a)に示す2つ系列{Xi},{Yi}について(Xi,Yi)をプロットすると、
図4の(b)に示すような散布図が得られる。そして、この例において相関検定を行ったところ、p値は0.001832であった。相関検定においては、一般にp値が(1−信頼係数)未満であれば、相関があると判断できる。そこで、予め信頼係数を設定した上で、分布合致条件を、例えば「故障分布と実績分布との相関検定の結果として得られるp値が(1−信頼係数)未満であること」に設定する。
【0035】
このように分布合致条件を課すことにより、実績との分布の類似性に着目して一定以上の類似性を有する統計的分布となる故障分布のパラメータを抽出することができる。
【0036】
前述したように、故障分布パラメータ設定部11は、故障分布においてとり得るパラメータの値を列挙し、列挙したパラメータの値を順に故障分布に設定する。そして、件数合致条件判定部13及び分布合致条件判定部14での判定を経ることで、件数合致条件及び分布合致条件の双方を満たすようなパラメータのみが抽出されることになる。
【0037】
作業間隔候補算出部15は、こうして抽出されたパラメータの各値が設定された故障分布のそれぞれについて、作業間隔の候補を算出する。より詳しくは、作業間隔候補算出部15は、保守作業の対象となる施設が設置された各現場における全ての保守作業を同一の作業間隔Nヶ月で行ったとした場合の想定故障件数が、所望の件数(例えば、実績故障件数と同等の件数)となる作業間隔Nヶ月を、作業間隔の候補として算出する。
【0038】
図5を参照しながら、この作業間隔候補の算出について具体的な例を挙げながら説明する。この
図5の例においては、件数合致条件及び分布合致条件により抽出された(これらの条件を満たす)あるパラメータが設定された故障分布をC1(m)としている。そして、このC1(m)について、全ての保守作業を同一の作業間隔Nヶ月で行ったとした場合の想定故障件数が
図5中の表に示す通りであったとする。
【0039】
すなわち、例えば、Nを10とした場合の想定故障件数が15.2件、Nを12とした場合の想定故障件数が18.1件、Nを14とした場合の想定故障件数が22.4件、Nを16とした場合の想定故障件数が23.1件、Nを18とした場合の想定故障件数が31.7件、そして、Nを20とした場合の想定故障件数が45.5件であったとする。
【0040】
ここで、実績故障件数が23件であったとすると、この23件と同等な想定故障件数となるのは、Nが14(想定故障件数22.4件)及びNが16(想定故障件数23.1件)の場合である。ここでは、実績故障件数と同等となるNが複数あるような場合、より大きいNを作業間隔候補とするすなわち、この例ではC1(m)となるパラメータ値の故障分布の場合の作業間隔候補を16ヶ月であると算出する。
【0041】
このようにして、作業間隔候補算出部15は、C1(m)となるパラメータ値だけでなく、件数合致条件及び分布合致条件により抽出された(これらの条件を満たす)全てのパラメータ値の故障分布についての作業間隔候補を算出する。
【0042】
作業間隔候補記憶部16は、作業間隔候補算出部15により算出された作業間隔候補を記憶する。すなわち、作業間隔候補記憶部16は、件数合致条件及び分布合致条件により抽出された(これらの条件を満たす)各パラメータ値の故障分布における作業間隔候補のそれぞれを記憶する。
【0043】
そして、作業間隔決定部17は、作業間隔候補記憶部16に記憶されている作業間隔候補のうちから、保守作業の対象となる施設における保守作業間隔を決定する。具体的には、作業間隔決定部17は、作業間隔候補記憶部16に記憶されている作業間隔候補のうちで最短のものを保守作業の対象となる施設における保守作業間隔として決定する。このようにすることで、どのようなあり得る状況においても、統計的に想定される故障発生率を、指定した閾値以下とするような保守作業間隔を決定することができる。
【0044】
以上のようにして、作業間隔候補算出部15、作業間隔候補記憶部16及び作業間隔決定部17は、分布合致条件判定部14により分布合致条件を満たすと判定された故障分布に基づいて、保守作業の対象となる施設における保守作業間隔を決定する作業間隔決定手段を構成している。ここで、前述したように、分布合致条件判定部14による判定は、件数合致条件判定部13により件数合致条件を満たすと判定された故障分布について行われる。したがって、作業間隔決定手段は、件数合致条件判定部13により件数合致条件を満たすと判定され、かつ、分布合致条件判定部14により分布合致条件を満たすと判定された故障分布に基づいて、保守作業の対象となる施設における保守作業間隔を決定していることになる。
【0045】
以上のような機能的構成を備えた保守作業間隔決定装置は、例えば、周知のコンピュータを用いて実装することができる。そこで、次に、保守作業間隔決定装置を実装するためのハードウエア構成の一例について説明する。
【0046】
保守作業間隔決定装置は、CPU、ROM、RAM及び通信インターフェースを備えている。CPUは、与えられた命令(命令の集合であるプログラムを含む)を実行して情報の演算又は加工を行う中央処理装置(Central Processing Unit)である。ROMは、データ又はプログラムを不揮発的に格納する読み出し専用メモリ(Read Only Memory)である。RAMは、データ又はプログラムを揮発的すなわち一時的に格納するための読み書き可能なランダムアクセスメモリ(Random Access Memory)である。
【0047】
通信インターフェースは、保守作業間隔決定装置が外部との通信を行うために必要なハードウエアである。ここでは、保守作業間隔決定装置は、通信インターフェースを介して通信ネットワークであるインターネットに接続されている。これらのCPU、ROM、RAM及び通信インターフェースは、バスにより相互に情報のやり取りが可能なように接続されている。
【0048】
なお、保守作業間隔決定装置は、外部記憶装置としてハードディスク、CD−ROM等を備えてもよいし、表示出力手段(例えばモニタ)、入力手段(例えばキーボード)等を備えてもよい。
【0049】
保守作業間隔決定装置を構成するコンピュータのROMには、以上のように構成されたコンピュータを保守作業間隔決定装置として動作させるためのプログラムが予め格納されている。そして、CPUは、まず、ROMからプログラムを読み出してRAMに実行可能な形式でプログラムを格納する。そして、CPUは、このRAMに格納されたプログラムを読み出しながら実行する。
【0050】
このようにして、ソフトウエアたるプログラムがコンピュータに読み込まれることにより、ソフトウエアとハードウエア資源とが協働した具体的手段によって、情報の演算又は加工を実現することで、以上で説明したような
図1に示す各機能を備えた保守作業間隔決定装置が構築される。
【0051】
すなわち、保守作業間隔決定装置のコンピュータのCPUにおいて実行されるプログラムは、保守作業間隔決定装置のコンピュータを、故障分布選択部1、細分化条件設定部2、実績データ記憶部3、故障発生実績算出部4及び作業間隔算出部10(故障分布パラメータ設定部11、想定故障件数算出部12、件数合致条件判定部13、分布合致条件判定部14、作業間隔候補算出部15、作業間隔候補記憶部16及び作業間隔決定部17)の各部として機能させるためのものである。
【0052】
なお、プログラムはROMでなく外部記憶装置に格納されていてもよいし、プログラムを外部から通信インターフェースを介してコンピュータへとダウンロードして用いるようにしてもよい。
【0053】
以上のように構成された保守作業間隔決定装置による保守作業間隔の決定の流れの一例について、
図6のフロー図を参照しながら今一度説明する。まず、ステップS1において、故障分布選択部1により、作業間隔月数に対する故障発生率が従うものと想定される故障分布(例えばワイブル分布等)を選択する。続くステップS2において、細分化条件設定部2により、細分化条件を設定する。
【0054】
そして、ステップS3へと進み、故障発生実績算出部4は、実績データ記憶部3に記憶されている実績データの故障発生実績に基づいて、作業間隔月数に対する実績故障件数及び実績分布を算出する。
【0055】
ステップS3の後はステップS10へと進む。このステップS10は、作業間隔算出部10が、実績と適合する故障分布から、想定故障件数が許容範囲内に収まる作業間隔月数の下限を求めるステップである。このステップS10は、さらに以下のステップS11からステップS16に細分される。
【0056】
まず、ステップS11においては、故障分布パラメータ設定部11が、ステップS1で選択された故障分布について、とり得るパラメータの値を列挙し、列挙したパラメータの値のうちの1つ(パラメータが複数ある場合には1組)を故障分布に設定する。
【0057】
続くステップS12において、まず、想定故障件数算出部12がステップS11で設定された故障分布に故障発生率が従うとした場合の想定故障件数を算出する。そして、件数合致条件判定部13は、ステップS11で設定された故障分布について、想定故障件数と、ステップS3で算出した実績故障件数との差が、件数合致条件を満たすか否かを判定する。ステップS11で設定された故障分布が件数合致条件を満たさない場合、ステップS11に戻りパラメータに別の値を設定して、ステップS12の判定を繰り返す。ステップS11で設定された故障分布が件数合致条件を満たす場合には、ステップS13へと進む。
【0058】
ステップS13においては、分布合致条件判定部14は、ステップS11で設定された故障分布についてステップS3で算出した実績分布との相関検定を実施し、この相関検定の結果が分布合致条件を満たすか否かを判定する。ステップS11で設定された故障分布が分布合致条件を満たさない場合、ステップS11に戻りパラメータに別の値を設定して、ステップS12の件数合致条件判定からやり直す。一方、ステップS11で設定された故障分布が分布合致条件も満たす場合には、ステップS14へと進む。
【0059】
ステップS14においては、作業間隔候補算出部15は、ステップS11で設定された故障分布に基づいて作業間隔の候補を算出する。そして、算出した作業間隔の候補を作業間隔候補記憶部16に記憶(保存)し、ステップS15へと進む。
【0060】
ステップS15においては、作業間隔算出部10は、ステップS11で列挙された全てのパラメータ値の故障分布について、少なくとのステップS12の件数合致条件判定処理が完了しているか否かを確認する。全てのパラメータの値について処理が完了していない場合には、ステップS11に戻りパラメータに別の値を設定して、ステップS12の件数合致条件判定からやり直す。全てのパラメータの値について処理が完了した場合には、ステップS16へと進む。
【0061】
ステップS16においては、作業間隔決定部17は、作業間隔候補記憶部16に記憶されている作業間隔候補のうちから、保守作業の対象となる施設における保守作業間隔を決定する。ステップS10(ステップS11〜S16)が終了したら、ステップS4へと進む。
【0062】
このステップS4においては、全ての細分化条件についてステップS10の処理が完了したか否かが確認される。そして、全ての細分化条件についてステップS10の処理が完了していなければ、ステップS2へと戻り、別の細分化条件を設定して、ステップS3及びステップS10を行う。一方、全ての細分化条件についてステップS10の処理が完了していれば、一連の処理は終了となる。
【0063】
なお、以上においては、件数合致条件及び分布合致条件の両方を満たすパラメータ値の故障分布を抽出して、当該施設における保守作業間隔を決定したが、保守作業間隔を決定に用いる故障分布の抽出は、件数合致条件のみを判定するようにしてもよい。すなわち、作業間隔決定手段は、分布合致条件を満たすと判定された故障分布に基づいて、当該施設における保守作業間隔を決定するようにしてもよい。
【0064】
以上のように構成された保守作業間隔決定装置は、保守作業の対象となる施設における故障発生率が従うと仮定する統計的分布である故障分布を設定する故障分布設定手段である故障分布選択部1及び故障分布パラメータ設定部11と、施設における故障発生実績及び保守作業実績の実績データを予め記憶する記憶手段である実績データ記憶部3と、実績データの故障発生実績に基づいて、実績故障件数を算出する実績件数算出手段である故障発生実績算出部4と、故障発生率が故障分布に従うとした場合に、実績データの保守作業実績の作業間隔において発生すると想定される想定故障件数を算出する想定故障件数算出部12と、故障分布について、想定故障件数と実績故障件数との差が予め設定された件数合致条件を満たすか否かを判定する件数合致条件判定部13と、件数合致条件を満たすと判定された故障分布に基づいて、当該施設における保守作業間隔を決定する作業間隔決定手段である作業間隔候補算出部15、作業間隔候補記憶部16及び作業間隔決定部17と、を備えている。
【0065】
このため、保守作業の対象となる施設における故障発生率が従うと仮定する統計的分布を決定するパラメータについて真の値を含むような一定範囲内の値について考慮して保守作業間隔を決定することができ、故障発生時期が揺らいだ場合の保守品質の低下を抑制することが可能である。
【0066】
また、故障発生件数という事実に基づいて、パラメータを抽出する件数合致条件を設定することができるので、保守作業間隔を決定するために想定する保守品質の基準の設定が明確である。
【0067】
実施の形態2.
図7から
図10は、この発明の実施の形態2に係るもので、
図7は保守作業間隔決定装置で用いる故障分布がとり得るパラメータを軸とした確率分布平面及び各座標点に対応する累積確率分布の概形を示す図、
図8は
図7の確率分布平面において各座標点に対応する累積確率分布の想定故障件数を示した図、
図9は
図7の確率分布平面において各座標点に対応する想定故障件数の等値線及び件数合致条件を満たす領域を示した図、
図10は
図7の確率分布平面において件数合致条件を満たす領域及び各座標点に対応する保守作業間隔の等値線を示した図である。
【0068】
前述した実施の形態1では、故障分布がとり得るパラメータの値を列挙し、これらの値を順に設定して件数合致条件等の判定を行うものであった。これに対し、ここで説明する実施の形態2は、故障分布のパラメータを空間軸としたパラメータ空間内の座標点毎に故障分布を対応付け、件数合致条件等を満たすようなパラメータの集合を当該パラメータ空間内の領域として表現して作業間隔の決定を行うようにしたものである。
【0069】
この実施の形態2に係る保守作業間隔決定装置の機能的な構成は、実施の形態1で説明した
図1に示すものと同様である。実施の形態1で前述したように、故障発生率C(m)が従う統計的分布(故障分布)として採用しているワイブル分布、ガンマ分布及び対数正規分布は、いずれも2つのパラメータ(形状パラメータ及び尺度パラメータ)を有している。
【0070】
そこで、
図7に示すような、第1パラメータとして形状パラメータを縦軸にとり、第2パラメータとして尺度パラメータを横軸にとった座標系で表される平面(パラメータ空間)を考えると、この平面上の座標の1点は、形状パラメータの値及び尺度パラメータ値の1組に対応する。形状パラメータの値及び尺度パラメータ値の組が決まれば、この組に対応する故障分布も決まる。したがって、各パラメータを座標軸とした座標系で表される平面上の各点は、それぞれが1つの故障分布すなわち累積確率分布に対応している。
【0071】
すなわち、この実施の形態2においても、故障分布設定手段を構成する故障分布選択部1及び故障分布パラメータ設定部11により、保守作業の対象となる施設における故障発生率が従うと仮定する統計的分布である故障分布が設定される。ただし、その設定した結果は、
図7に示すような確率分布平面として表現される。
【0072】
また、パラメータの値が決まり故障分布が決まると、実施の形態1と同様にして、想定故障件数を算出することができる。すなわち、
図8に示すように、
図7の確率分布平面上の各点に対応する故障分布に対応して想定故障件数が求められる。
【0073】
したがって、この実施の形態2においても、想定故障件数算出部12は、故障分布設定手段である故障分布選択部1及び故障分布パラメータ設定部11により設定された故障分布に故障発生率C(m)が従うとした場合の想定故障件数を算出する。ただし、算出された想定故障件数は、
図8及び
図9に示すような確率分布平面上の値(等値線)として表現される。
【0074】
そして、件数合致条件判定部13は、
図7の確率分布平面上の各座標点について、当該座標点に対応する故障分布の想定故障件数と、故障発生実績算出部4により算出された実績故障件数との差が、予め設定された件数合致条件を満たすか否かを判定する。この判定により件数合致条件を満たすことが確認された座標点の集合は、
図7の確率分布平面上における領域20を形成する。
【0075】
例えば、実績故障件数が23件であり、件数合致条件を満たす許容範囲が実績故障件数±1件であるとすると、件数合致条件を満たす故障分布の座標点の集合は
図9に示すような領域20となる。なお、この領域20中のいずれかに真の故障発生分布を与えるパラメータの組の座標点が存在する。
【0076】
また、作業間隔決定手段を構成する作業間隔候補算出部15、作業間隔候補記憶部16及び作業間隔決定部17は、次のようにして、保守作業の対象となる施設における保守作業間隔を決定する。
【0077】
すなわち、まず、実施の形態1と同様の方法により、作業間隔候補算出部15は、
図7の確率分布平面上の各点に対応する故障分布に対応する作業間隔候補を算出する。このようにして確率分布平面上の各点に対応して算出された作業間隔候補の値は、
図10に示すような等値線30を描く。
【0078】
そして、作業間隔決定部17は、件数合致条件を満たす故障分布の座標点の領域20中に通る作業間隔候補の等値線30のうちで、その値が最も小さい(期間が最も短い)ものを、作業間隔として決定する。
図10に示す例では、作業間隔決定部17は、15〜16ヶ月を保守作業間隔に決定する。このようにして保守作業間隔に決定することで、領域20中のいずれのパラメータが真の故障発生率分布を与えるものであっても、保守品質が不足することがないようにすることが可能である。
なお、他の構成については実施の形態1と同様であって、その詳細説明は省略する。
【0079】
以上のように構成された保守作業間隔決定装置においては、実施の形態1と同様の効果を奏することができるのに加えて、確率分布平面上の領域20として件数合致条件を満たす故障分布のパラメータの値を抽出し、効率的に保守作業間隔決定処理を行うことができる。