特許第6488905号(P6488905)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6488905
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】顕微鏡
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/36 20060101AFI20190318BHJP
   G02B 21/06 20060101ALI20190318BHJP
   G02B 21/26 20060101ALI20190318BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20190318BHJP
【FI】
   G02B21/36
   G02B21/06
   G02B21/26
   G01N21/27 A
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-123381(P2015-123381)
(22)【出願日】2015年6月19日
(65)【公開番号】特開2017-9718(P2017-9718A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2017年10月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100114030
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿島 義雄
(72)【発明者】
【氏名】中田 靖史
【審査官】 殿岡 雅仁
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/105373(WO,A1)
【文献】 特開2005−037902(JP,A)
【文献】 特開2000−121554(JP,A)
【文献】 特開2008−082950(JP,A)
【文献】 特開2007−192552(JP,A)
【文献】 特開2013−190554(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0114218(US,A1)
【文献】 特開2006−259326(JP,A)
【文献】 特開2015−007620(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 21/00 − 21/36
G01N 21/00 − 21/74
H04N 5/222− 5/257
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料上の測定点に測定光を出射する測定光源部と、
前記試料上の測定点からの測定光を検出する検出部と、
前記試料が載置された試料台を移動させることが可能なXYステージ機構と、
格子状または直線状に並ぶ複数の測定点を設定するための測定範囲を入力情報として入力するための入力装置と、
前記入力情報に基づいて前記測定範囲内の前記複数の測定点の座標を設定した後に、前記XYステージ機構を制御するとともに、座標が設定された前記複数の測定点の測定光情報を取得する制御部とを備え、
前記制御部は、前記入力装置で入力された第(n−1)の入力情報に基づいて、第(n−1)の測定範囲内の複数の測定点の座標を設定した後に、前記XYステージ機構を制御するとともに、座標が設定された前記第(n−1)の測定範囲内の複数の測定点の測定光情報を取得して記憶部に記憶させる第(n−1)取得工程を実行した後、
前記入力装置で入力された前記第(n−1)とは別の第nの入力情報に基づいて、第nの測定範囲の複数の測定点の座標を設定した後に、前記XYステージ機構を制御するとともに、座標が設定された前記第nの測定範囲の複数の測定点の測定光情報を取得する第n取得工程を実行することが可能な顕微鏡であって、
前記制御部は、前記記憶部に測定光情報が存在していないときに入力された初回の入力情報に基づいて設定された複数の測定点の座標の1つを座標原点とし、以後の前記第(n−1)の入力情報、前記第nの入力情報に基づいて前記複数の測定点の座標を設定する際には、初回の入力情報で設定された座標原点を基準に測定点の座標を設定し、
前記第n取得工程では、前記第(n−1)の測定範囲と重複する第nの測定範囲の重複部分における測定光情報を取得せずに、前記第(n−1)取得工程で記憶部に記憶された重複部分における測定光情報を用いて、前記第nの測定範囲の測定光情報を作成することを特徴とする顕微鏡。
【請求項2】
前記第nの測定範囲及び前記第(n−1)の測定範囲には、X方向とY方向とに等間隔に並んだ測定点が設定されるようになっていることを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡。
【請求項3】
前記試料上の測定点を含む領域に可視光を出射する可視光源部と、
前記試料上の測定点を含む領域からの可視光が検出面に入射して、光学像を取得して光学像画像を表示装置に表示する画像取得装置とを備え、
前記入力情報は前記光学像画像を用いて入力されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の顕微鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巨視的な試料の表面における微視的な測定点に赤外光や紫外光や可視光等の測定光を照射する顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
赤外顕微鏡は、例えば固体(試料)表面に付着した有機物等の官能基に基づき分子構造等を調べる目的で使用される。具体的には、微小径に集束させた赤外光を試料表面上の特定の微小部位(例えば15μm×15μmの測定点)に照射する。試料表面上の特定の測定点からは有機物等の官能基に基づき分子構造等に特有のスペクトルが発生するため、このスペクトルを検出して分析することにより、有機物等の同定や定量を行っている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このような赤外顕微鏡は、分析者が試料表面の観察を行うためのCCDカメラやCMOSカメラ等の画像取得装置を備え、試料表面の光学像画像が観察されながら試料表面上における測定点の決定等が行われている。例えば、ハロゲンランプ等の光源から試料表面上の測定点を含む領域(例えば500μm×400μmの領域)に可視光を照射して、試料表面上の測定点を含む領域で反射した可視光をCCDカメラで検出することにより、検出された可視光に基づいて光学像画像が作成されている。これにより、分析者は、光学像画像を観察しながら試料上の赤外光の照射位置(例えば15μm×15μmの測定点)を指定したり、試料上の測定範囲(例えば300μm×200μmの範囲)を指定したりしている。
【0004】
図4は、従来の赤外顕微鏡の要部構成を示す図である。なお、地面に水平な一方向をX方向とし、地面に水平でX方向と垂直な方向をY方向とし、X方向とY方向とに垂直な方向をZ方向とする。
赤外顕微鏡101は、試料Sが載置されるXYステージ機構10と、赤外光を出射する赤外光源部20と、可視光を出射する可視光源部30と、赤外光を検出する検出部240と、可視光を検出する検出面を有する画像取得装置50と、カセグレン鏡260、261と、平板形状の切替鏡270と、赤外顕微鏡101全体の制御を行うコンピュータ190とを備える。
【0005】
XYステージ機構10は、図示は省略するが、ステージ(試料台)とX方向駆動機構とY方向駆動機構とを備える。
ステージの上面には、試料Sを載せたり取り除いたりすることが可能となっている。このようなステージは、コンピュータ190のスペクトル取得部191cによって駆動機構へ必要な駆動信号が出力されることにより、所望のX方向とY方向とに移動できるようになっている。
【0006】
赤外光源部20は、時間的に強弱の変化をする赤外光(インターフェログラム)を出射するフーリエ変換赤外分光光度計である。そして、赤外光源部20は、出射した赤外光が、ミラー21や切替ミラー22や透過/反射切替ミラー23や凹面鏡24、25や半透鏡26、27で反射した後、カセグレン鏡260、261によって集光されて、XYステージ機構10に載置された試料S上の測定点(例えば15μm×15μm)に照射されるように配置されている。
検出部240は、検出器241と、検出器241の前方に配置された集光鏡242やミラー243とを備える。
【0007】
可視光源部30は、可視光を出射するものである。そして、可視光源部30は、出射した可視光が、レンズ31や切替ミラー22や透過/反射切替ミラー23や凹面鏡24、25や半透鏡26、27で透過したり反射したりした後、カセグレン鏡260、261によって集光されて、XYステージ機構10に載置された試料S表面上の測定点を含む領域(例えば500μm×400μmの領域)に照射されるように配置されている。
画像取得装置50は、可視光を検出する検出面を有するCCDカメラ51と、CCDカメラ51の前方に配置されたリレーレンズ52とを備える。
【0008】
そして、画像取得装置50が試料S表面上の測定点を含む領域の光学像を、検出部240に赤外光を導く光学系と同じ光軸(光路)で取得するために、XYステージ機構10の上方(−Z方向)で検出部240に赤外光を導く光路上に、光路上と光路上でない位置とに移動可能な切替鏡270が配置されている。
これにより、試料S上の測定点からの赤外光がカセグレン鏡260によって集光されて、所定方向(−Z方向)に進行する赤外光となって、光路上に配置された切替鏡270によって赤外光が−X方向に反射された後、検出部240で検出されるようになっている。また、試料S表面上の測定点を含む領域からの可視光がカセグレン鏡260によって集光されて、所定方向(−Z方向)に進行する可視光となった後、CCDカメラ51の検出面で検出されるようになっている。
【0009】
コンピュータ190は、CPU(制御部)191と記憶部194とを備え、さらにモニタ(表示装置)93と操作部(入力装置)92とが連結されている。また、CPU191が処理する機能をブロック化して説明すると、画像取得装置50から光学像を取得してモニタ93に光学像画像を表示する光学像画像取得部91aと、操作部92によって入力情報(試料S上の測定範囲)が入力される入力情報取得部91bと、入力情報に基づいてステージをX方向とY方向とに移動させながら検出部240から試料S上の測定点の赤外光情報を取得して記憶部194に記憶させるスペクトル取得部191cと、赤外光情報をフーリエ変換して赤外スペクトルを算出してモニタ93に赤外スペクトル分布画像を表示するスペクトル表示制御部191dとを有する。
【0010】
入力情報取得部91bは、操作部92からの入力情報(試料S上の測定範囲)を記憶部194に記憶させる制御を行う。
例えば、分析者は、モニタ93に表示された光学像画像を観察しながら、操作部(マウスドラッグの操作等)92を用いて、赤外光の照射位置(例えば15μm×15μmの測定点)が直線状に等間隔(例えば30μm間隔)に並んだ「ラインマッピング」や、赤外光の照射位置(例えば15μm×15μmの測定点)がX方向とY方向とに等間隔(例えば50μm間隔)に並んだ「2次元マッピング」や、任意の複数の赤外光の照射位置(例えば15μm×15μmの測定点)となる「ランダムマッピング」を実行するように指定する。
【0011】
ここで、図5は、赤外顕微鏡101により表示されたモニタ画面の一例を示す図である。モニタ93には、画像取得装置50から取得された光学像画像(例えば300μm×400μm)が表示されている。なお、モニタ93に表示される光学像画像は、倍率が変更されれば、その倍率に応じたものが表示されるようになっている。
そして、光学像画像上には、操作部92によって「2次元マッピング」が選択され、その「2次元マッピング」の測定範囲(例えば200μm×320μm)を示す太線の四角形の測定範囲画像が図のように表示されている。
【0012】
スペクトル取得部191cは、入力情報に基づいて、測定範囲に測定点の座標を設定した後、ステージをX方向とY方向とに移動させながら検出部240から試料S上の測定点の赤外光情報を取得して記憶部194に記憶させる制御を行う。
例えば、スペクトル取得部191cは、四角形の測定範囲画像の左上端を原点(x、y)とし、四角形の測定範囲画像の左上端と四角形の測定範囲画像の右上端とが4等分されるように測定点x、x、・・・、xのX座標を設定し、また、四角形の測定範囲画像の左上端と四角形の測定範囲画像の左下端とが8等分されるように測定点y、y、・・・、yのY座標を設定して、合計45個の測定点の座標(黒丸)を設定する。
【0013】
そして、スペクトル取得部191cは、第1の測定点(x、y)が所定の位置にくるようにステージを移動させ、第1の測定点(x、y)からの赤外光情報を取得して記憶部194に記憶させ、第2の測定点(x、y)が所定の位置にくるようにステージを移動させ、第2の測定点(x、y)からの赤外光情報を取得して記憶部194に記憶させるように、45個の測定点が順次所定の位置にくるようにステージを移動させ、45個の測定点からの赤外光情報を取得して記憶部194に記憶させる。
【0014】
スペクトル表示制御部191dは、記憶部194に記憶された45個の測定点(x、y)〜(x、y)からの赤外光情報に基づいて、測定範囲の赤外スペクトル分布画像をモニタ93に表示する制御を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2000−121554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
ところで、上述したような赤外顕微鏡101では、分析者は、モニタ93に表示された赤外スペクトル分布画像を観察した結果、注目するピークが測定範囲外に延びていることがわかった場合には、再度、試料S上の測定範囲を指定し直して、新たな赤外スペクトル分布画像を取得することになる。このとき、「2次元マッピング」では、図5に示すように測定点の数が45個と多いため、非常に時間がかかっていた。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本願出願人は、試料S上の所望の測定範囲のスペクトル分布画像を短時間で取得する方法について検討した。マッピング測定(2次元マッピング)においては、全ての測定点(45個の測定点)を一つのまとまりとして扱い、入力情報(試料S上の測定範囲)を入力すると、一部の測定点のスペクトル測定を省略することなく、全ての測定点のスペクトル測定を行うようになっている。よって、注目するピークが測定範囲外に延びていることがわかったときに測定範囲を指定し直すと、たとえ変更前後の測定範囲に重複部分があり、変更前後で共通の測定点が存在する場合であっても、変更前に実行されたスペクトル測定の結果は一旦破棄され、変更後の測定範囲に含まれる全ての測定点で新たにスペクトル測定を実行していた。
そこで、マッピング測定を一旦実行した後、測定範囲を変更して再度マッピング測定を実行するときに、測定範囲の変更前後で測定点に重複がある場合、その測定点における取得済のスペクトル測定の結果はそのまま残し、重複しない測定点についてのみ新たにスペクトル測定を実行することを見出した。
【0018】
上記課題を解決するためになされた本発明の顕微鏡は、試料上の測定点に測定光を出射する測定光源部と、前記試料上の測定点からの測定光を検出する検出部と、前記試料が載置された試料台を移動させることが可能なXYステージ機構と、格子状または直線状に並ぶ複数の測定点を設定するための測定範囲を入力情報として入力するための入力装置と、前記入力情報に基づいて前記測定範囲内の前記複数の測定点の座標を設定した後に、前記XYステージ機構を制御するとともに、座標が設定された前記複数の測定点の測定光情報を取得する制御部とを備え、前記制御部は、前記入力装置で入力された第(n−1)の入力情報に基づいて、第(n−1)の測定範囲内の複数の測定点の座標を設定した後に、前記XYステージ機構を制御するとともに、座標が設定された前記第(n−1)の測定範囲内の複数の測定点の測定光情報を取得して記憶部に記憶させる第(n−1)取得工程を実行した後、前記入力装置で入力された前記第(n−1)とは別の第nの入力情報に基づいて、第nの測定範囲の複数の測定点の座標を設定した後に、前記XYステージ機構を制御するとともに、座標が設定された前記第nの測定範囲の複数の測定点の測定光情報を取得する第n取得工程を実行することが可能な顕微鏡であって、前記制御部は、前記記憶部に測定光情報が存在していないときに入力された初回の入力情報に基づいて設定された複数の測定点の座標の1つを座標原点とし、以後の前記第(n−1)の入力情報、前記第nの入力情報に基づいて前記複数の測定点の座標を設定する際には、初回の入力情報で設定された座標原点を基準に測定点の座標を設定し、前記第n取得工程では、前記第(n−1)の測定範囲と重複する第nの測定範囲の重複部分における測定光情報を取得せずに、前記第(n−1)取得工程で記憶部に記憶された重複部分における測定光情報を用いて、前記第nの測定範囲の測定光情報を作成するようにしている。
【0019】
ここで、「測定光」としては、例えば、赤外光、紫外光、可視光等が挙げられる。また、干渉計やその他の変調手段によって時間的な強度変化を伴うこともできる。
また、「n」は、1以上の自然数となる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明の顕微鏡によれば、新たにスペクトル測定(測定光情報の取得)が必要な測定点は、変更後の測定範囲のうち、変更前の測定範囲に含まれない部分に存在するもののみとなる。これにより、スペクトル測定を実行する測定点の数が少なくなり、測定時間を短くすることができる。
【0021】
(他の課題を解決するための手段及び効果)
また、本発明の顕微鏡において、前記第nの測定範囲及び前記第(n−1)の測定範囲には、X方向とY方向とに等間隔に並んだ測定点が設定されるようになっているようにしてもよい。
本発明の顕微鏡によれば、変更前の測定範囲内との重複部分にある測定点と重複しない部分にある測定点とが等間隔にならず、測定点の位置の変化が一様でないため、スペクトル(測定光情報)の取得位置ごとの変化の割合も一様でなくなることを防ぐことができる。
【0022】
さらに、本発明の顕微鏡において、前記試料上の測定点を含む領域に可視光を出射する可視光源部と、前記試料上の測定点を含む領域からの可視光が検出面に入射して、光学像を取得して光学像画像を表示装置に表示する画像取得装置とを備え、前記入力情報は前記光学像画像を用いて入力されるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態に係る顕微鏡の要部構成を示す図。
図2】赤外顕微鏡により表示されたモニタ画面の一例を示す図。
図3】赤外顕微鏡により表示されたモニタ画面の別の一例を示す図。
図4】従来の赤外顕微鏡の要部構成を示す図。
図5図4の赤外顕微鏡により表示されたモニタ画面の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明は、以下に説明するような実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の態様が含まれる。
【0025】
図1は、本発明の実施形態に係る顕微鏡の要部構成を示す図である。なお、先に述べた赤外顕微鏡101と同様のものについては、同じ符号を付している。
赤外顕微鏡1は、試料Sが載置されるXYステージ機構10と、赤外光を出射する赤外光源部20と、可視光を出射する可視光源部30と、赤外光を検出する検出部240と、可視光を検出する検出面を有する画像取得装置50と、カセグレン鏡260、261と、平板形状の切替鏡270と、赤外顕微鏡1全体の制御を行うコンピュータ90とを備える。
【0026】
カセグレン鏡(シュバルツシルド式反射対物鏡)260は、カセグレン鏡主鏡260aと、カセグレン鏡副鏡260bとを備える。
カセグレン鏡副鏡260bは、Z方向から見ると円形状であり、Y方向やX方向から見ると上面が半球状を有する凸面であるとともに下面が平面である。そして、カセグレン鏡副鏡260bは、XYステージ機構10の上方に配置されており、上面が上方(−Z方向)を向くように配置されている。また、カセグレン鏡主鏡260aは、Z方向から見るとカセグレン鏡副鏡260bと同形状の開口を有する円環形状であり、Y方向やX方向から見ると下面が半球状を有する凹面であるとともに上面が平面である。そして、カセグレン鏡主鏡260aは、XYステージ機構10の上方に配置され、さらにカセグレン鏡副鏡260bの上方に配置されており、上面が上方(−Z方向)を向くように配置されている。
これにより、赤外光源部20からの赤外光は、カセグレン鏡副鏡260bで反射された後、カセグレン鏡主鏡260aによって集光されて、試料S上の測定点に照射されるようになっている。また、試料S上の測定点を含む領域からの光は、カセグレン鏡主鏡260aで集光された後、カセグレン鏡副鏡260bで反射されて、−Z方向に進行するようになっている。
なお、カセグレン鏡(シュバルツシルド式反射対物鏡)261も、カセグレン鏡260と同様の構造をしており、XYステージ機構10を挟んで上下対称となるように配置されている。
【0027】
コンピュータ90は、CPU(制御部)91と記憶部94とを備え、さらにモニタ(表示装置)93と操作部(入力装置)92とが連結されている。また、CPU91が処理する機能をブロック化して説明すると、画像取得装置50から光学像を取得してモニタ93に光学像画像を表示する光学像画像取得部91aと、操作部92によって入力情報(試料S上の測定範囲)が入力される入力情報取得部91bと、入力情報に基づいてステージをX方向とY方向とに移動させながら検出部240から試料S上の測定点の赤外光情報を取得して記憶部94に記憶させるスペクトル取得部91cと、赤外光情報をフーリエ変換して赤外スペクトルを算出してモニタ93に赤外スペクトル分布画像を表示するスペクトル表示制御部91dとを有する。
【0028】
入力情報取得部91bは、操作部92からの第nの入力情報(試料S上の第nの測定範囲)を記憶部94に記憶させる制御を行う。
【0029】
スペクトル取得部91cは、第nの入力情報と記憶部94に記憶された赤外光情報とに基づいて、第nの測定範囲に測定点の座標を設定した後、ステージをX方向とY方向とに移動させながら検出部240から試料S上の測定点の赤外光情報を取得して記憶部94に記憶させる制御を行う。
【0030】
(1)記憶部94に赤外光情報が存在しない場合
(つまり、第1の測定範囲の赤外光情報を取得する場合)
例えば、スペクトル取得部91cは、第1の測定範囲画像の左上端を原点(x、y)とし、第1の測定範囲画像の左上端と第1の測定範囲画像の右上端とが4等分されるように測定点x、x、・・・、xのX座標を設定して、また、第1の測定範囲画像の左上端と第1の測定範囲画像の左下端とが8等分されるように測定点y、y、・・・、xのY座標を設定して、合計45個の測定点の座標を設定する(図5参照)。
【0031】
そして、スペクトル取得部91cは、第1の測定点(x、y)が所定の位置にくるようにステージを移動させ、第1の測定点(x、y)からの赤外光情報を取得して記憶部94に記憶させ、第2の測定点(x、y)が所定の位置にくるようにステージを移動させ、第2の測定点(x、y)からの赤外光情報を取得して記憶部94に記憶させるように、45個の測定点が順次所定の位置にくるようにステージを移動させ、45個の測定点からの赤外光情報を取得して記憶部94に記憶させる。
なお、赤外顕微鏡1では、45個の測定点からの赤外光情報の取得が完了せず、途中で中止された場合、測定点の一部だけにスペクトル測定の結果が存在する場合でも、記憶部94に記憶させることになる。
【0032】
(2)同一の試料Sを同一の測定条件(アパーチャ設定やバックグラウンドスペクトル等)で測定する際に、記憶部94に第1の測定範囲の赤外光情報が存在する場合
(つまり、第2の測定範囲の赤外光情報を取得する場合)
スペクトル取得部91cは、第1の測定範囲と第2の測定範囲とを比較して、第1の測定範囲と重複しない第2の測定範囲の非重複部分に、第1の測定範囲の格子(原点(x、y)とX方向間隔とY方向間隔)を用いて測定点を設定する。つまり、変更後の測定範囲内の測定点も、変更前の測定範囲の測定点と同じ原点(x、y)を基準に設定する。これにより、第2の測定範囲の左上端は格子点上にないため、そこを原点として測定点を設定すると、第1の測定範囲の測定点とは、ずれが生じてしまうことになるが、連続性が乱れることを防いでいる。
【0033】
図2は、赤外顕微鏡1により表示されたモニタ画面の一例を示す図である。モニタ93には、画像取得装置50から取得された光学像画像(例えば500μm×400μm)が表示されている。また、第1の測定範囲(例えば200μm×320μm)を示す点線の第1の測定範囲画像が表示されている。そして、第1の測定範囲画像の左上端が原点(x、y)となり、第1の測定範囲画像の左上端と第1の測定範囲画像の右上端とが4等分されるように測定点x、x、・・・、xのX座標が設定され、第1の測定範囲画像の左上端と第1の測定範囲画像の左下端とが8等分されるように測定点y、y、・・・、yのY座標が設定され、合計45個の測定点の座標(黒丸と白丸)が設定されている。
【0034】
また、第2の測定範囲(例えば250μm×240μm)を示す太線の第2の測定範囲画像が表示されている。そして、第1の測定範囲と重複しない第2の測定範囲の非重複部分に、原点(x、y)として、14個の測定点の座標(黒四角形)を設定している。
【0035】
そして、スペクトル取得部91cは、第46の測定点(x、y)が所定の位置にくるようにステージを移動させ、第46の測定点(x、y)からの赤外光情報を取得して記憶部94に記憶させ、第47の測定点(x、y)が所定の位置にくるようにステージを移動させて、第47の測定点(x、y)からの赤外光情報を取得して記憶部94に記憶させるように、14個の測定点が順次所定の位置にくるようにステージを移動させ、14個の測定点からの赤外光情報を取得して記憶部94に記憶させる。
【0036】
(3)同一の試料Sを同一の測定条件で測定する際に、第(n−2)の測定範囲の赤外光情報と第(n−1)の測定範囲の赤外光情報とが存在する場合
(つまり、第nの測定範囲の赤外光情報を取得する場合)
スペクトル取得部91cは、第(n−2)の測定範囲と第(n−1)の測定範囲と第nの測定範囲とを比較して、第(n−2)の測定範囲と第(n−1)の測定範囲とのいずれにも重複しない第nの測定範囲の非重複部分に、第1の測定範囲の格子を用いて測定点を設定する。また、第(n−3)の測定範囲と第(n−1)の測定範囲と第nの測定範囲との重複部分に、第1の測定範囲の原点(x、y)と間隔とを用いて測定点を設定する。つまり、第(n−3)以前の測定範囲の赤外光情報が存在するが、本発明の赤外顕微鏡1では、赤外光情報の取得後の時間の経過により周囲の水蒸気や二酸化炭素の濃度が変化し、新規にスペクトル測定したスペクトル測定の結果との差が大きくなるので、使用しないように設定されている。
【0037】
図3は、赤外顕微鏡1により表示されたモニタ画面の別の一例を示す図である。モニタ93には、画像取得装置50から取得された光学像画像(例えば500μm×400μm)が表示されている。また、第(n−2)の測定範囲(例えば250μm×240μm)を示す点線の第(n−2)の測定範囲画像が表示されている。そして、第(n−4)の測定範囲と第(n−3)の測定範囲とのいずれにも重複しない第(n−2)の測定範囲の非重複部分に、原点(x、y)として、14個の測定点の座標(黒四角形と白四角形)が設定されている。
【0038】
また、第(n−1)の測定範囲(例えば250μm×240μm)を示す点線の第(n−1)の測定範囲画像が表示されている。そして、第(n−3)の測定範囲と第(n−2)の測定範囲とのいずれにも重複しない第(n−1)の測定範囲の非重複部分に、原点(x、y)として、9個の測定点の座標(黒三角形)が設定されている。
【0039】
さらに、第nの測定範囲(例えば250μm×240μm)を示す太線の第nの測定範囲画像が表示されている。そして、第(n−2)の測定範囲と第(n−1)の測定範囲とのいずれにも重複しない第nの測定範囲の非重複部分に、原点(x、y)として、13個の測定点の座標(黒星形)を設定している。また、第(n−3)の測定範囲と第(n−1)の測定範囲と第nの測定範囲との重複部分に、原点(x、y)として、14個の測定点の座標(黒星形)を設定している。
【0040】
そして、スペクトル取得部91cは、新たな13個の測定点が所定の位置にくるようにステージを移動させ、13個の測定点からの赤外光情報を取得して記憶部94に記憶させ、所定時間が経過した14個の測定点が所定の位置にくるようにステージを移動させ、14個の測定点からの赤外光情報を取得して記憶部94に記憶させる。
【0041】
スペクトル表示制御部91dは、記憶部94に記憶された第nの測定範囲の測定点からの赤外光情報に基づいて、第nの測定範囲の赤外スペクトル分布画像をモニタ93に表示する制御を行う。
【0042】
以上のように、本発明の赤外顕微鏡1によれば、新たにスペクトル測定(測定光情報の取得)が必要な測定点は、変更後の測定範囲のうち、変更前の測定範囲に含まれない部分に存在するもののみとなる。これにより、スペクトル測定を実行する測定点の数が少なくなり、測定時間を短くすることができる。
また、誤って第(n−1)の測定範囲を設定したことにより、スペクトル測定中に第(n−1)の測定範囲でのマッピング測定を中断した場合でも、測定済のスペクトル測定の結果を無駄にすることなく、訂正した第nの測定範囲でのマッピング測定を短時間で完了させることができる。
さらに、変更前の測定範囲内との重複部分にある測定点と重複しない部分にある測定点とが等間隔にならず、測定点の位置の変化が一様でないためスペクトル(測定光情報)の取得位置ごとの変化の割合も一様でなくなるようなことを防ぐため、変更前の測定範囲内に設定されていた測定点の格子状の配置をステージ上全体に延長し、その格子点上に変更後の測定範囲内の測定点を設定することにより、変更後の測定範囲内の全測定点を等間隔に保つことができる。
【0043】
<他の実施形態>
上述した赤外顕微鏡1において、第(n−3)以前の測定範囲の赤外光情報を使用しない構成としたが、第(n−4)以前の測定範囲の赤外光情報を使用しない構成してもよく、また所定時間以前の測定範囲の赤外光情報を使用しない構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、試料に測定光を照射し、それによって試料から放出されたスペクトルを検出する顕微鏡等に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0045】
1 赤外顕微鏡
10 XYステージ機構
20 赤外光源部(測定光源部)
30 可視光源部
91 CPU(制御部)
92 操作部(入力装置)
94 記憶部
240 検出部
図1
図2
図3
図4
図5