特許第6488915号(P6488915)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6488915
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】弁開閉時期制御装置
(51)【国際特許分類】
   F01L 1/356 20060101AFI20190318BHJP
【FI】
   F01L1/356 E
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-130149(P2015-130149)
(22)【出願日】2015年6月29日
(65)【公開番号】特開2017-14941(P2017-14941A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2018年5月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】岩屋 崇
(72)【発明者】
【氏名】田中 浩和
【審査官】 二之湯 正俊
(56)【参考文献】
【文献】 特許第3832730(JP,B2)
【文献】 特許第5692459(JP,B2)
【文献】 特開2013−256929(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第10104038(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01L 1/356
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関のクランクシャフトと同期回転する駆動側回転体と、
前記駆動側回転体の回転軸芯と同軸芯に配置され前記内燃機関の弁開閉用のカムシャフトと一体回転する従動側回転体と、
前記駆動側回転体と前記従動側回転体との間に区画形成される流体圧室を、前記駆動側回転体又は前記従動側回転体の一方に形成された仕切部で仕切ることで形成される進角室及び遅角室と、
前記駆動側回転体に支持されたロック部材を付勢部材の付勢力により前記回転軸芯の方向に突出させ前記従動側回転体のロック凹部に係合させることで前記駆動側回転体と前記従動側回転体との相対回転位相を拘束するロック機構と、
前記進角室および前記遅角室に対する作動流体の給排により前記相対回転位相の制御、及び前記ロック凹部に対する作動流体の給排により前記ロック部材の係合又は係合の解除を制御する流体圧制御部と、
前記流体圧制御部を制御する制御ユニットと、
前記駆動側回転体又は前記従動側回転体の回転速度を検知する回転速度センサと、
作動流体の温度を計測する温度センサとを備えると共に、
前記制御ユニットは、前記温度センサで検知される検知温度が設定値を超え、かつ、前記回転速度センサで検知される回転速度が、遠心力により前記ロック部材が前記ロック凹部から離脱する際の前記回転速度に対応する離脱速度より低速となる基準速度を超えた場合に、前記ロック機構にロック解除のための作動流体の供給を行うことなく、前記流体圧制御部の制御により前記進角室と前記遅角室とに交互に作動流体を供給する位相保持制御を行う弁開閉時期制御装置。
【請求項2】
前記制御ユニットは、遠心力により前記ロック部材が前記ロック凹部から離脱する際の前記回転速度に対応する離脱速度と、前記離脱速度より低速となる基準速度との少なくとも何れか一方を記憶しており、
前記制御ユニットは、前記離脱速度に基づいて、この離脱速度より低速となる基準速度を、前記温度センサで検知される検知温度に基づいて新たに設定する、又は、記憶した前記基準速度を、前記温度センサで検知される検知温度に基づいて補正することにより基準速度を新たに設定する請求項1に記載の弁開閉時期制御装置。
【請求項3】
前記位相保持制御が、前記進角室と前記遅角室との何れか一方に供給される作動流体量を、他方に供給される作動流体量より多くする請求項1又は2に記載の弁開閉時期制御装置。
【請求項4】
前記流体圧制御部が、電磁ソレノイドに対する給電によりスプールが作動して流量制御が行われる電磁弁を備えて構成され、
前記位相保持制御が、前記進角室に作動流体を供給する時間と、前記遅角室に作動流体を供給する時間との比率を所定値に設定する、又は、前記進角室に対して単位時間に供給される作動流体の流量と、前記遅角室に対して単位時間に供給される作動流体の流量との流量比を所定値に設定するように前記電磁ソレノイドに給電する請求項3に記載の弁開閉時期制御装置。
【請求項5】
前記位相保持制御が、前記進角室と前記遅角室との何れか一方に対して設定時間だけ作動流体を供給した後に、前記進角室と前記遅角室との他方に対して継続的に作動流体を供給する請求項1〜4のいずれか一項に記載の弁開閉時期制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランクシャフトと同期回転する駆動側回転体と、弁開閉用のカムシャフトと一体回転する従動側回転体とを有し、これらの相対回転位相を制御する弁開閉時期制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
弁開閉時期制御装置として、特許文献1には、進角室と遅角室とに対して選択的に作動流体を給排することで相対回転位相を制御し、ロック部材がロック凹部に係合することで駆動側回転体と従動側回転体との相対回転位相を拘束するロック機構を備えた技術が示されている。
【0003】
特許文献1では、エンジンの回転速度(回転数)の上昇に伴い、遠心力の作用でバネの付勢力に抗してロック部材がロック凹部から離脱するため、遠心力の作用でロック部材がロック凹部から離間する場合には、相対回転位相の変動を抑制する制御が行われる。
【0004】
つまり、特許文献1では、エンジンの回転速度が、遠心力によりロック機構のロック状態が解除される値より低い値の敷居回転数を設定しており、回転速度が敷居回転数を超えた場合には、油圧制御弁の制御により進角室と遅角室とに作動流体を封入し、更に、作動油の供給によりロック機構のロック状態を解除する中間位相保持制御が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3832730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示される制御では、ロック機構のロック状態を解除した時点で進角室と遅角室とに作動流体が封入されており、駆動側回転体と従動側回転体との相対回転位相の変動を抑制できるものである。
【0007】
しかしながら、進角室と遅角室とに作動流体が封入する制御では、封入された作動油が時間経過とともに漏出し、ロック機構のロック状態を解除した場合に、カム変動トルク等の作用に抗することができず、相対回転位相の変動を招くことも考えられた。
【0008】
また、この制御形態では、回転速度が敷居回転数を超えた後に、ロックを解除させる値に達しない場合でもロックが解除される場合があり、無駄な制御を行う不都合や、ロック解除を行うために作動流体が供給された際に流体圧を一時的に低下させる不都合を招くことも考えられた。
【0009】
尚、ロック機構のロック状態が解除されたタイミングで駆動側回転体と従動側回転体との相対回転位相が変動した場合には、エンジンの吸気タイミングが乱れるため、エンジンの出力の変動にも繋がり、運転者に違和感を持たせることになる。
【0010】
即ち、このような弁開閉時期制御装置では、ロック機構のロック状態が遠心力で解除される際に相対回転位相の変動を良好に抑制することが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の特徴は、内燃機関のクランクシャフトと同期回転する駆動側回転体と、
前記駆動側回転体の回転軸芯と同軸芯に配置され前記内燃機関の弁開閉用のカムシャフトと一体回転する従動側回転体と、
前記駆動側回転体と前記従動側回転体との間に区画形成される流体圧室を、前記駆動側回転体又は前記従動側回転体の一方に形成された仕切部で仕切ることで形成される進角室及び遅角室と、
前記駆動側回転体に支持されたロック部材を付勢部材の付勢力により前記回転軸芯の方向に突出させ前記従動側回転体のロック凹部に係合させることで前記駆動側回転体と前記従動側回転体との相対回転位相を拘束するロック機構と、
前記進角室および前記遅角室に対する作動流体の給排により前記相対回転位相の制御、及び前記ロック凹部に対する作動流体の給排により前記ロック部材の係合又は係合の解除を制御する流体圧制御部と、
前記流体圧制御部を制御する制御ユニットと、
前記駆動側回転体又は前記従動側回転体の回転速度を検知する回転速度センサと、
作動流体の温度を計測する温度センサとを備えると共に、
前記制御ユニットは、前記温度センサで検知される検知温度が設定値を超え、かつ、前記回転速度センサで検知される回転速度が、遠心力により前記ロック部材が前記ロック凹部から離脱する際の前記回転速度に対応する離脱速度より低速となる基準速度を超えた場合に、前記ロック機構にロック解除のための作動流体の供給を行うことなく、前記流体圧制御部の制御により前記進角室と前記遅角室とに交互に作動流体を供給する位相保持制御を行う点にある。
【0012】
この構成によると、作動流体の温度が低く作動流体の給排による適正な作動が望めない状態では位相保持制御を行わず、作動流体の温度が設定値を超え、回転速度が基準値を超えた場合には、位相保持制御により進角室と遅角室とに交互に作動流体が供給されることになる。これにより、作動流体の供給の後に遠心力でロック部材がロック凹部から離脱しても、進角室と遅角室とには既に作動流体が充填されており、カムシャフトからカム変動トルクが作用しても相対回転位相が大きく変動することはない。また、この位相保持制御では、ロック機構のロック状態を解除するための作動油を供給しないため、作動流体を無駄に消費せず、例えば、回転速度が基準速度を超えた後に離脱速度に達しない場合には、ロック状態が維持され相対回転位相の安定に繋がる。
従って、ロック機構のロック状態が遠心力で解除されても相対回転位相の変動を良好に抑制する弁開閉時期制御装置が構成された。
【0013】
本発明は、前記制御ユニットは、遠心力により前記ロック部材が前記ロック凹部から離脱する際の前記回転速度に対応する離脱速度と、前記離脱速度より低速となる基準速度との少なくとも何れか一方を記憶しており、
前記制御ユニットは、前記離脱速度に基づいて、この離脱速度より低速となる基準速度を、前記温度センサで検知される検知温度に基づいて新たに設定する、又は、記憶した前記基準速度を、前記温度センサで検知される検知温度に基づいて補正することにより基準速度を新たに設定しても良い。
【0014】
この構成によると、温度センサで検知される検知温度に基づいて基準速度が新たに設定されるため、作動流体の粘性を反映させた基準速度を適正に設定することが可能となる。また、回転速度センサで検知される回転速度が設定された基準速度を超えた場合には、位相保持制御により進角室と遅角室とに交互に作動流体が供給されるため、作動流体の供給の後に遠心力でロック部材がロック凹部から離脱するタイミングまでに進角室と遅角室とに対して作動流体を充分に充填することが可能となる。
【0015】
本発明は、前記位相保持制御が、前記進角室と前記遅角室との何れか一方に供給される作動流体量を、他方に供給される作動流体量より多くしても良い。
【0016】
これによると、進角室と遅角室とに供給される作動流体量の差から相対回転位相を所定方向に変位させる力が作用することになり、ロック部材をロック凹部の一方の側面に強く当接させることが可能となる。このような当接状態では、ロック部材に対してロック凹部の側面から摩擦力が作用するため、ロック部材がロック凹部から離脱し難くなり、実質的に離脱速度の値を高めたものと同様の効果を奏する。
【0017】
本発明は、前記流体圧制御部が、電磁ソレノイドに対する給電によりスプールが作動して流量制御が行われる電磁弁を備えて構成され、
前記位相保持制御が、前記進角室に作動流体を供給する時間と、前記遅角室に作動流体を供給する時間との比率を所定値に設定する、又は、前記進角室に対して単位時間に供給される作動流体の流量と、前記遅角室に対して単位時間に供給される作動流体の流量との流量比を所定値に設定するように前記電磁ソレノイドに給電しても良い。
【0018】
これによると、電磁ソレノイドに供給する電力の制御により、進角室と遅角室とに供給される作動流体量に差が作り出され、相対回転位相を所定方向に変位させる力によりロック部材がロック凹部の一方の側面に強く当接することになる。このような当接状態では、ロック部材に対してロック凹部の側面から摩擦力が作用するため、ロック部材がロック凹部から離脱し難くなり、実質的に離脱速度の値を高めたものと同様の効果を奏する。
【0019】
本発明は、前記位相保持制御が、前記進角室と前記遅角室との何れか一方に対して設定時間だけ作動流体を供給した後に、前記進角室と前記遅角室との他方に対して継続的に作動流体を供給しても良い。
【0020】
これによると、進角室と遅角室との一方に作動流体を供給した後に、進角室と遅角室との他方に作動流体を継続して供給することにより、遠心力の作用によりロック部材がロック凹部から離脱した時点では、進角室と遅角室との他方に対して継続的に作動流体が供給される状態にある。このように進角室と遅角室との何れかに継続的に作動が供給されることにより、ロック凹部からロック部材が離脱したタイミングにおいて、カム変動トルクの作用、あるいは、相対回転位相を中間位相に付勢するスプリングの付勢力が作用に抗する方向に作動流体からの力を作用させて相対回転位相の保持が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】弁開閉時期制御装置の制御構成を示す図である。
図2】弁開閉時期制御部と油圧回路とを示す図である。
図3】油圧によりロック状態が解除された弁開閉時期制御部と油圧回路とを示す図である。
図4】遠心力でロック状態が解除された弁開閉時期制御部と油圧回路とを示す図である。
図5】制御タイミングを示すチャートである。
図6】位相保持制御のフローチャートである。
図7】別実施形態(a)の制御タイミングを示すチャートである。
図8】別実施形態(a)の位相保持制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔基本構成〕
図1図2に示すように、内燃機関としてのエンジンEの吸気バルブの開閉時期を設定する弁開閉時期制御部10と、エンジンEとを制御するエンジン制御ユニット(ECU)40を備えて弁開閉時期制御装置が構成されている。エンジン制御ユニット40は本発明に係る制御ユニットの一例である。
【0023】
エンジンEは乗用車等の車両に備えられるものを想定しており、このエンジンEで駆動される油圧ポンプ20からの作動油(作動流体の一例)が、電磁弁として構成される位相制御弁24と、電磁弁として構成されるロック制御弁25とを介して弁開閉時期制御部10に給排される。
【0024】
位相制御弁24とロック制御弁25とで流体圧制御部が構成されるものであり、位相制御弁24は、弁開閉時期制御部10の外部ロータ11(駆動側回転体の一例)と内部ロータ12(従動側回転体)との相対回転位相(以下、相対回転位相と称する)の制御を実現する。また、ロック制御弁25は、弁開閉時期制御部10のロック機構Lの制御を実現する。
【0025】
エンジン制御ユニット40は、回転速度センサ1Sと、温度センサ4と、位相検知センサ46とからの検知信号を取得し、更に、運転者の操作情報等を取得することにより、位相制御弁24とロック制御弁25とを操作して弁開閉時期制御部10を制御する(この制御形態は後述する)。
【0026】
〔弁開閉時期制御部〕
図1図2に示すように、弁開閉時期制御部10は、エンジンEのクランクシャフト1と同期回転する駆動側回転部材としての外部ロータ11と、エンジンEの燃焼室の吸気バルブを開閉するカムシャフト3に対して連結ボルト13により連結する従動側回転部材としての内部ロータ12とを備えている。
【0027】
カムシャフト3は、エンジンEに対して回転軸芯Xを中心に回転自在に支持されている。弁開閉時期制御部10では、外部ロータ11に対して内部ロータ12が内包され、外部ロータ11の軸芯と、内部ロータ12の軸芯とが回転軸芯Xと同軸芯上に配置されることにより、回転軸芯Xを中心にして夫々が相対回転自在に支持されている。
【0028】
外部ロータ11は、フロントプレート14とリヤプレート15とを締結ボルト16で締結した構成を有し、フロントプレート14とリヤプレート15とに挟み込まれる位置に内部ロータ12が配置されている。
【0029】
また、内部ロータ12のうち、回転軸芯Xと同軸芯で開口が形成され、この開口に挿通する連結ボルト13により内部ロータ12がカムシャフト3に連結している。リヤプレート15の外周にはタイミングスプロケット15Sが形成されている。
【0030】
このタイミングスプロケット15Sと、エンジンEのクランクシャフト1に設けた出力スプロケット7とに亘ってタイミングチェーン8を巻回することで、外部ロータ11はクランクシャフト1と同期回転する。図面には示していないが、排気側のカムシャフト3の前端にも弁開閉時期制御部10と同様の構成の装置が備えられており、この装置に対してもタイミングチェーン8から回転力が伝達される。
【0031】
図2に示すように、外部ロータ11には、回転軸芯Xの方向(径方向内側)に向けて突出する複数の突出壁11Tが一体的に形成されている。内部ロータ12は複数の突出壁11Tの突出端に密接する外周を有する円柱状に形成され、この内部ロータ12の外周部分に複数のベーン17(仕切部の一例)が外方に突出する形態で備えられている。
【0032】
この構成から、外部ロータ11に内部ロータ12を内装した状態では、内部ロータ12の外方において、回転方向で隣接する突出壁11Tの間に流体圧室Cが形成される。この流体圧室Cがベーン17で仕切られることにより進角室Caと遅角室Cbとが区画形成される。
【0033】
図2に示すように、弁開閉時期制御部10は、クランクシャフト1からの駆動力により外部ロータ11が駆動回転方向Sに向けて回転する。外部ロータ11に対して内部ロータ12が駆動回転方向Sと同方向へ回転する方向を進角方向Saと称し、この逆方向への回転方向を遅角方向Sbと称する。また、外部ロータ11と内部ロータ12との相対回転位相で遅角方向の作動端を最遅角位相と称し、相対回転位相で進角方向の作動端を最進角位相と称している。
【0034】
この弁開閉時期制御部10では、進角室Caに作動油(作動流体の一例)が供給されることで相対回転位相が進角方向Saに変位し、吸気圧縮比が高められる。これとは逆に、遅角室Cbに作動油を供給することで相対回転位相が遅角方向Sbに変位し、吸気圧縮比が低減するようにクランクシャフト1とカムシャフト3との関係が設定されている。
【0035】
図1に示すように、内部ロータ12とフロントプレート14とに亘って、外部ロータ11と内部ロータ12との相対回転位相が、最遅角位相から中間ロック位相P(図2を参照)に達するまで付勢力を作用させるトーションスプリング18が備えられている。なお、トーションスプリング18の付勢力が作用する範囲は、中間ロック位相Pを超えるものでも良く、中間ロック位相Pに達しないものであっても良い。
【0036】
内部ロータ12には進角室Caに連通する進角制御油路21と、遅角室Cbに連通する遅角制御油路22と、後述する2つのロック機構Lに作動油を供給するロック解除油路23とが形成されている。この弁開閉時期制御部10では、エンジンEのオイルパン1Aに貯留される潤滑油を作動油として用いており、この作動油が油圧ポンプ20から進角室Caまたは遅角室Cbに対して給排される。
【0037】
〔弁開閉時期制御部:ロック機構〕
この弁開閉時期制御部10のロック機構Lは、外部ロータ11と内部ロータ12との相対回転位相を図2に示す中間ロック位相Pに拘束し、ロック解除油路23に作動油が供給されることでロック状態が解除されるように構成されている。中間ロック位相Pは、相対回転位相が進角方向Saの作動端となる最進角位相と遅角方向Sbの作動端となる最遅角位相との間に設定されている。この中間ロック位相Pは、低温状態のエンジンEの始動を良好に行う相対回転位相である。
【0038】
図2に示すように、この弁開閉時期制御部10では2つのロック機構Lを備えている。各々のロック機構Lは、外部ロータ11に対して出退自在に支持されるロック部材31と、内部ロータ12の外周に形成されたロック凹部32と、ロック部材31を突出付勢する付勢部材としてのロックスプリング33とを備えている。
【0039】
ロック部材31は、プレート状の部材が用いられ、回転軸芯Xに対する接近と離間とが可能なように外部ロータ11に形成されたスリットに対してスライド移動自在に支持されている。ロック凹部32は、ロック部材31の板厚より幅広で回転軸芯Xと平行姿勢となる溝状に形成されている。また、各々のロック凹部32の端部には、ロック凹部32と連なる状態で浅い溝部が形成されている。この溝部はロック部材31がロック凹部32に嵌り込む以前に係合することによりロック凹部32への嵌り込みを助けるラチェットとして機能する。
【0040】
中間ロック位相Pでは、2つのロック部材31が、対応するロック凹部32に嵌り込むことで、相対回転位相を拘束(ロック)して、ロック状態を実現する。また、ロック解除油路23は、2つのロック凹部32に連通する。
【0041】
〔弁開閉時期制御装置の流体制御機構〕
位相制御弁24は、その電磁ソレノイドに供給される電力(制御信号)によりスプールを進角ポジションと遅角ポジションと中立ポジションとの3ポジションに切換操作自在に構成されている。
【0042】
この位相制御弁24は、電磁ソレノイドに電力を供給しない状態(デューティ比0%)でスプールが遅角ポジションに維持され、電磁ソレノイドに対して最大の電力(デューティ比100%)を供給することでスプールが進角ポジションに操作され、デューティ比50%程度の電力を供給することで中立ポジションに操作される。
【0043】
この構成から、エンジン制御ユニット40の制御により位相制御弁24の電磁ソレノイドに電力が供給されない場合には、油圧ポンプ20からの作動油が遅角制御油路22を介して遅角室Cbに供給されると共に、進角室Caの作動油が進角制御油路21から排出される。
【0044】
これとは逆に、位相制御弁24の電磁ソレノイドに最大の電力が供給された場合には、油圧ポンプ20からの作動油が進角制御油路21を介して進角室Caに供給されると共に、遅角室Cbの作動油が遅角制御油路22から排出される。尚、図3に示すように、位相制御弁24のスプールが中立ポジションに設定された場合には、進角室Caと遅角室Cbのいずれにも作動油の給排は行われず相対回転位相が保持される。
【0045】
ロック制御弁25は、電磁ソレノイドに電力を供給しない状態(デューティ比0%)でスプールがロックポジションとなり、電磁ソレノイドに対して最大の電力(デューティ比100%)を供給することでスプールがアンロックポジションとなる。
【0046】
この構成から、エンジン制御ユニット40の制御でスプールがアンロックポジションに設定された場合には、油圧ポンプ20からの作動油がロック解除油路23を介してロック凹部32に供給される。これにより、ロック部材31がロック凹部32から離脱し、ロック機構Lのロック状態は解除される。これとは逆に、スプールがロックポジションに操作された場合には、ロック解除油路23を介してロック凹部32から作動油が排出される。これにより、ロック部材31のロック凹部32への嵌合が可能(ロック状態への移行が可能)となる。
【0047】
〔制御構成〕
図1に示すように、エンジン制御ユニット40には、エンジンEのクランクシャフト1の回転速度(単位時間あたりの回転数)を検知する回転速度センサ1Sと、エンジンEの冷却水の温度を検知する温度センサ4と、弁開閉時期制御部10の相対回転位相を検知する位相検知センサ46とからの信号が入力する。エンジン制御ユニット40は、位相制御弁24とロック制御弁25とに制御信号を出力する。
【0048】
尚、作動油はエンジンEのオイルパン1Aの潤滑油を用いるものであるため、温度センサ4で検知される冷却水の水温から作動油の温度を推定するため、温度センサ4で検知された値を作動油の温度として制御が行われる。
【0049】
エンジン制御ユニット40は、位相制御部41と、ロック制御部42と、位相保持制御部43とを備えている。これらはソフトウエアで構成されるものであるが、各々の一部をロジック回路等のハードウエアで構成することや、全てをハードウエアで構成することも可能である。
【0050】
位相制御部41は、位相制御弁24を制御することにより位相検知センサ46からの信号をフィードバックする形態で相対回転位相を、目標とする位相に設定する制御を行う。ロック制御部42は、位相制御弁24とロック制御弁25とを制御することによりロック機構Lをロック状態に移行する制御、及び、ロック状態を解除する制御を行う。
【0051】
位相保持制御部43は、ロック機構Lがロック状態にある状況でエンジンEの回転速度が上昇し、遠心力によってロック部材31がロック凹部32から離脱する以前に相対回転位相を保持する制御を行う。
【0052】
〔制御形態〕
図5のチャートには、回転速度センサ1Sで検知されるエンジン回転速度(単位時間あたりの回転数)と、温度センサ4で検知される水温(作動油の油温を推定)と、位相制御弁24を操作する位相制御信号と、ロック制御弁25を操作するロック制御信号と、位相検知センサ46で検知される弁開閉時期制御部10の相対回転位相とを示している。
【0053】
チャートの前半には、エンジンEの始動直後のように、ロック機構Lがロック状態にある状況でのエンジンEの回転速度が増大し、エンジン制御ユニット40がT1のタイミングでロック機構Lのロックを解除する制御を示している。
【0054】
つまり、T1のタイミングではエンジンEの回転速度が所定値に達しており、このタイミングでロック機構Lのロックを解除する場合には、図3に示すように、ロック制御部42がロック制御弁25をアンロックポジションに操作する。この制御により、作動油の圧力によりロック部材31がロック凹部32から離脱し、ロックが解除される。
【0055】
この後には、エンジンEの回転速度や、変速段、加速状況等の情報に基づいて最適な目標位相が設定され、エンジン制御ユニット40の位相制御部41が、位相検知センサ46で検知される相対回転位相が目標位相に達するように位相制御弁24を操作する制御が行われる。
【0056】
また、エンジンEの回転速度が低下し、T2のタイミングでロック機構Lをロック状態に移行する場合には、ロック制御部42が、ロック制御弁25をロックポジションに操作し、位相制御弁24の制御により相対回転位相を中間ロック位相Pの方向に変位させる制御が行われる。
【0057】
そして、ロック機構Lがロック状態にある状況でエンジンEの回転数が上昇した場合には、遠心力によりロック部材31がロック凹部32から離脱する以前に、T3のタイミングで進角室Caと遅角室Cbとに対して交互に作動油を供給し、ロック状態が解除された後の相対回転位相を保持する位相保持制御が行われる。尚、T3のタイミングは、エンジンEの回転速度が2500rpm程度に達したタイミングとなる。
【0058】
この位相保持制御は、前述した位相保持制御部43によって行われるものであり、その概要を図6のフローチャートに示している。つまり、この制御では、温度センサ4の検知信号を取得し、この検知信号から水温(推定された油温)が設定値以上にある場合には、この検知信号に基づいて基準速度Ncをセットし、回転速度センサ1Sの検知結果に基づいて回転速度Nrをセットする(#101〜#103ステップ)。
【0059】
つまり、作動油の温度が設定値未満で、作動油の粘性が高く適正な作動が望めない状態では位相保持制御を行わず、作動油の温度が設定値を超えた場合に制御が行われる。
【0060】
回転速度が離脱速度を超えることにより遠心力の作用でロック部材31がロック凹部32から離脱してロック機構Lのロックが自然に解除される。離脱速度は、所定の条件において、遠心力の作用によりロック部材31がロック凹部32から離脱してロックが解除する回転速度として予め計測されるものである。
【0061】
また、作動油は低温で粘性が高く、温度上昇に従って粘性が低下するため、作動油の温度が高くなるほど離脱速度の値が低下する。基準速度Ncは、離脱速度より低速の値に設定されるため、離脱速度の変化に連係して変化させる必要がある。
【0062】
この理由から、エンジン制御ユニット40には、制御の可否を決めるための油温の設定値が記憶されると共に、離脱速度に基づいて予め求められた基準速度が記憶されている。また、エンジン制御ユニット40では、記憶されている基準速度を温度センサ4の検知信号に基づいて補正することにより新たに基準速度Ncを求めている。
【0063】
この制御では、離脱速度に基づいて離脱速度を算出する必要はなく、温度センサ4の検知結果に基づいて、既に記憶されている基準速度に係数を乗ずる演算や、既に記憶されている基準速度に基づいて演算により作られているテーブルを参照することで、離脱速度を算出せずに基準速度Ncをセットするように構成されている。
【0064】
尚、温度センサ4の検知信号に基づいて基準速度Ncを求める処理として、エンジン制御ユニット40に離脱速度を記憶しておき、この記憶されている離脱速度に対して、温度センサ4の検知信号に基づいて設定される係数を乗ずることで、新たに基準速度Ncを求めても良い。また、このような制御においても、テーブルを参照することで、基準速度Ncをセットしても良い。
【0065】
このように基準速度Ncがセットされ、回転速度Nrとの比較結果、回転速度Nrが基準速度Ncを超えた場合には(このタイミングがT3)、進角室Caと遅角室Cbとに交互に作動油を供給する。また、この供給時には一方の供給量を他方の供給量より多く設定する(#104,#105ステップ)。
【0066】
具体的な制御形態として、位相制御弁24の電磁ソレノイドが進角側(例えばデューティ比100%)の状態と、遅角側(例えばデューティ比0%)の状態とに交互に切り換えられる。この制御では、進角室Caに対して作動油を供給する時間より、遅角室Cbに作動油を供給する時間が長くすることや、ポートの開度を調節することで進角室Caに供給される油量より多くの油量が遅角室Cbに供給される。
【0067】
チャートでは、進角室Caと、遅角室Cbとに対して複数回作動油を供給しているが、1度ずつ作動油を供給するように位相保持制御の制御形態を設定しても良い。尚、流体圧室Cに供給された作動油は、遠心力により流体圧室Cの外周側に貯留される。
【0068】
これにより、遠心力によりロック部材31がロック凹部32から離脱するまでベーン17に対して遅角方向Sbの方向に向かう力が作用し、図2に示すように、ロック機構Lのロック部材31が、ロック凹部32の側面に圧接する状態が作り出される。尚、この構成の弁開閉時期制御部10では、カムシャフト3から遅角方向Sbに向けてカム変動トルクが作用する。この理由からカム変動トルクと、遅角室Cbから作動油の圧力とを合わせた力によりロック部材31をロック凹部32の側面に強く当接させ、ロック部材31の離脱を抑制させている。
【0069】
また、進角室Caと遅角室Cbとに作動油を供給した後であっても、ロック機構Lのロックが解除されず、回転速度Nrが基準速度Ncより低下した場合には進角室Caと遅角室Cbとに対する作動油の供給を停止して位相保持制御の初期状態に戻る。そして、図4に示すように、T4のタイミングでロックが解除された後には、位相制御部41による位相制御に移行する(#106〜#108ステップ)。
【0070】
このようにロック機構Lのロック状態が解除されたタイミングでは、遅角室Cbに対して作動油が供給される状態が継続するため、カム変動トルクに起因する相対回転位相の変位の抑制が可能である。尚、T4のタイミングは、エンジンEの回転速度の変化により同図に示すタイミングと異なるものとなる。
【0071】
図4に示す如く、ロック機構Lのロックが遠心力の作用によって解除された場合には、カム変動トルクが作用しても進角室Caと遅角室Cbとに貯留された作動油がベーン17を拘束するように作用し、相対回転位相が保持され、エンジンEの吸気タイミングを変動させる不都合を招くこともない。
【0072】
尚、ロック機構Lのロックが解除されたこ場合には、位相検知センサ46で検知される相対回転位相が中間ロック位相Pから外れ、変動することになる。このような変動を位相検知センサ46で検知したタイミング(T4)をロック機構Lのロックが解除されたタイミングとして把握しており、このように把握した後に、位相制御(#108ステップ)に移行することになる。
【0073】
また、この位相保持制御では、ロック解除油路23に作動油が供給されないため、例えば、ロック機構Lのロックが解除された後に、エンジンEの回転速度が低下した場合には、T5のタイミングに示すようにロック部材31がロック凹部32に対して再び係合してロック状態に移行することも可能である。
【0074】
〔実施形態の作用・効果〕
温度センサ4で検知される温度が設定値未満である場合には、位相保持制御を行わないため、作動不良に陥ることがない。また、温度センサ4で検知される温度に基づいて基準速度Ncを新たに設定するため、基準速度Ncに作動油の粘性を反映させ、ロック機構Lのロック状態が解除される回転速度より低い値となる基準速度を適正に設定できる。更に、回転速度センサ1Sで検知される回転速度Nrが補正後の基準速度Ncを超えた場合には、位相保持制御部43による制御で進角室Caと遅角室Cbとに交互に作動油が供給されるため、進角室Caと遅角室Cbとの外周側には遠心力により作動油が貯留される状態となる。
【0075】
このように進角室Caと遅角室Cbとに作動油が貯留された後に、遠心力でロック部材31がロック凹部32から離脱しても、進角室Caと遅角室Cbとに貯留された作動油からの圧力がベーン17を拘束するように圧力を作用させることが可能となる。これにより、カムシャフト3からカム変動トルクが作用しても相対回転位相が大きく変動することがなく、エンジンEの吸気時期を大きく変動させることもない。
【0076】
この位相保持制御では、ロック解除油路23に作動油を供給することがないため、作動油を無駄に消費せず、例えば、回転速度Nrが基準速度Ncを超えた後に離脱速度に達しない場合には、機械的なロック状態が維持され相対回転位相の安定に繋がる。
【0077】
進角室Caと遅角室Cbとに作動油を供給する場合に、進角室Caに対して遅角室Cbより多い量の作動油を供給することで、ロック部材31を、ロック凹部32の一方の側面に当接させることになる。これによりロック部材31の移動に抵抗力を作用させることが可能となり、遠心力によってロック部材31がロック凹部32から離脱する離脱速度を実質的に高め、相対回転位相を安定させる時間を長くすることも可能となる。
【0078】
〔別実施形態〕
本発明は、上記した実施形態以外に以下のように構成しても良い(実施形態と同じ機能を有するものには、前記実施形態と共通の番号、符号を付している)。
【0079】
(a)図7のチャート及び図8のフローチャートに示すように、位相保持制御の処理形態を設定する。この位相保持制御では、実施形態で説明した#101〜#108ステップの制御と、この別実施形態(a)の#201〜#208ステップの制御とが共通するものであるが、#205ステップの制御が実施形態と異なっている。
【0080】
つまり、T3のタイミングで回転速度Nrが基準速度Ncを超えた場合には(#204ステップ)、進角室Caと遅角室Cbとに対して設定時間Kだけ交互に作動油を供給した後に、遅角室Cbだけに継続的に作動油を供給するように制御形態を設定する(#205ステップ)。
【0081】
具体的な制御形態として、位相制御弁24の電磁ソレノイドが進角側(例えばデューティ比100%)の状態と、遅角側(例えばデューティ比0%)の状態とに設定時間Kの間に1度ずつ切り換えられる。この後に、電磁ソレノイドに電力を供給しない状態を継続することにより遅角室Cbに対して供給する作動油の量を増大させる。
【0082】
このように制御形態を設定することにより、遅角室Cbに貯留される作動油の量を、進角室Caに貯留される作動油の量より増大させ、ロック部材31に対して遅角方向Sbの方向に向かう力を作用させ、ロック部材31のロック凹部32から離脱を抑制する。
【0083】
更に、この制御では、ロック部材31がロック凹部32から離脱するタイミングまで遅角室Cbに対して継続的に作動油を供給することにより、ロック部材31がロック凹部32から離脱した後には、継続的に遅角方向Sbの方向に回転力が作用する。これにより、トーションスプリング18の付勢力により相対回転位相が変位する現象を抑制することも可能となる。
【0084】
尚、この別実施形態では、この制御形態に代えて、ロック部材31がロック凹部32から離脱するタイミングまで進角室Caに対して継続的に作動油を供給することも可能であり、この制御形態では、ロック部材31がロック凹部32から離脱した後には、カム変動トルクの作用により相対回転位相が変位する不都合を抑制することも可能となる。
【0085】
(b)進角室Caと遅角室Cbとの一方に供給する作動油の油量を、他方に供給する作動油の油量より多くするための手段として、位相制御弁24から進角室Caに作動油を供給する時間と、遅角室Cbに作動油を供給する時間との比率を設定する。この比率を設定する場合には、電磁ソレノイドに電力を供給する時間と、電力供給を停止する時間との比率を任意に設定することになる。
【0086】
(c)進角室Caと遅角室Cbとの一方に供給する作動油の油量を、他方に供給する作動油の油量より多くするための手段として、位相制御弁24から進角室Caに供給する作動油の単位時間の流量と、遅角室Cbに供給する作動油の単位時間の流量とを所定の比率に設定する。実施形態で説明した位相制御弁24は電磁ソレノイドに供給される電力値により進角制御油路21に連通するポートと、遅角制御油路22に連通するポートとの開度を任意に設定することになる。
【0087】
このような特性を利用して、進角室Caと遅角室Cbとに交互に作動油を供給する場合に、電磁ソレノイドに供給する電力を設定することにより、各々に供給される作動油の油量に偏りを作り出すことが可能となる。
【0088】
(d)例えば、実施形態で説明した位相制御弁24とロック制御弁25との機能を有する単一の制御弁によって流体圧制御部を構成することが可能である。また、このように構成した位相制御弁24を回転軸芯Xと同軸芯上に配置することや、内部ロータ12(従動側回転体)の近傍に配置するように構成することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、遠心力の作用によりロックが解除されるロック機構を備えた弁開閉時期制御装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0090】
1 クランクシャフト
1S 回転速度センサ
4 温度センサ
11 駆動側回転体(外部ロータ)
17 仕切部(ベーン)
24 流体圧制御部・電磁弁(位相制御弁)
25 流体圧制御部(ロック制御弁)
31 ロック部材
32 ロック凹部
33 付勢部材(ロックスプリング)
40 制御ユニット(エンジン制御ユニット)
C 流体圧室
Ca 進角室
Cb 遅角室
E 内燃機関(エンジン)
L ロック機構
X 回転軸芯
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8