特許第6488925号(P6488925)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6488925
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】遠心ファン、およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/30 20060101AFI20190318BHJP
   F04D 29/28 20060101ALI20190318BHJP
   B29D 99/00 20100101ALI20190318BHJP
【FI】
   F04D29/30 C
   F04D29/28 R
   F04D29/30 F
   B29D99/00
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-138448(P2015-138448)
(22)【出願日】2015年7月10日
(65)【公開番号】特開2017-20409(P2017-20409A)
(43)【公開日】2017年1月26日
【審査請求日】2017年11月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】特許業務法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安田 真範
(72)【発明者】
【氏名】石井 文也
(72)【発明者】
【氏名】小田 修三
【審査官】 原田 愛子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−082382(JP,A)
【文献】 特開平08−159091(JP,A)
【文献】 特開2014−074352(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/30
B29D 99/00
F04D 29/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線(S)を中心として円周方向に並べられている複数枚の翼(71)と、
前記軸線を中心とする径方向内側に形成されている開口部(72a)を有して前記軸線を中心とするリング状に形成されて、前記複数枚の翼のそれぞれの軸線方向一方側を支持する側板(72)と、
前記複数枚の翼のそれぞれの軸線方向他方側を支持する主板(70)と、を備え、
前記複数枚の翼、前記側板、および前記主板が、前記回転軸の回転方向一方側に前記軸線を中心として回転することにより、前記開口部を通して吸入した空気を前記複数枚の翼のうち隣り合う2枚の翼の間を通して前記軸線を中心とする径方向外側に吹き出す遠心ファンであって、
前記複数枚の翼は、前記回転方向の一方側に設けられて、かつ前記軸線に平行に形成されている第1翼面(80)と、前記回転方向の他方側に設けられている第2翼面(81)とをそれぞれ備え、
前記第2翼面のうち前記径方向内側は、前記翼毎に、前記第2翼面のうち前記側板に結合される第1結合部(82a)が前記第2翼面のうち前記主板に結合される第2結合部(82b)に対して前記第1翼面側にオフセットしていることにより、前記第1翼面に平行で、かつ前記第2翼面に交差する仮想面(83)と前記第2翼面との間に所定角度(θ)を成しており、
前記第2翼面のうち前記軸線を中心とする径方向外側は、前記翼毎に、前記第1結合部および前記第2結合部を結ぶ線(Ls)が前記第1翼面に対して平行になっており、
前記所定角度(θ)が前記翼毎に前記径方向内側から前記径方向外側に向かうほど徐々に小さくなっていることにより、前記第1、第2の翼面の間の厚み寸法の最大値(La)が前記翼毎に前記径方向内側から前記径方向外側に向かうほど徐々に小さくなっていることを特徴とする遠心ファン。
【請求項2】
前記主板のうち径方向外側には、前記軸線に対して直交する方向に延出する外径部(73)が設けられており、
前記複数枚の翼のそれぞれは、主に前記外径部によって支持されていることを特徴とする請求項に記載の遠心ファン。
【請求項3】
請求項1または2に記載の遠心ファンの製造方法であって、
前記複数枚の翼および前記主板を金型を用いた射出成形により一体に成形する第1工程(S100)と、
前記側板を成形する第2工程(S101)と、
前記第1工程により成形された第1成形品と前記第2工程により成形された第2成形品とを結合して前記遠心ファンを成形する第3工程(S103)と、を備え、
前記第1工程は、前記主板のうち前記軸線方向一方側と前記複数枚の翼とを成形するための第1型部材と前記主板のうち前記軸線方向他方側を成形するための第2型部材とを前記金型として用意し、前記第1型部材を前記軸線方向一方側に配置し、前記第2型部材を前記軸線方向他方側に配置し、前記第1型部材および前記第2型部材の間に溶融した材料を注入し、この注入したものを冷却して固定してから、前記第1型部材および前記第2型部材を前記第1成形品から分離することを特徴とする遠心ファンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心ファン、およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の遠心ファンでは、軸線方向一方側に配置されている側板と、軸線方向他方側に配置されている主板と、主板と側板の外周部の間に跨る複数枚の羽根とを有し、側板の中央部に空気吸込口とを備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このものにおいて、側板、主板、および複数枚の羽根が同時に軸線を中心として回転することにより、空気吸込口を通して吸い込んだ空気流を複数枚の羽根のうち隣り合う合う2枚の羽根の間を通して径方向外側に吹き出す。
【0004】
ここで、複数枚の羽根のうち径方向外側である後縁部における側板側結合部の位置が主板側結合部の位置よりも羽根車の反回転方向(回転方向他方側)にオフセットしている。このことにより、羽根車の出口側の空気流を整流することができる。
【0005】
複数枚の羽根のうち径方向内側である前縁部における側板側結合部の位置が主板側結合部の位置よりも羽根車の回転方向(回転方向一方側)にオフセットしている。このことにより、羽根の吸入口側における剥離流の発生を防止することができる。
【0006】
このように複数枚の羽根は、それぞれ、後縁部と前縁部とが異なる方向に傾斜していることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−39930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者は、特許文献1の遠心ファンを射出成形により製造する製造方法について鋭意検討した。
【0009】
本発明者が検討した遠心ファンの製造方法は、複数枚の羽根および主板を射出成形により一体に成形する第1工程と、側板を成形する第2工程と、第1工程により成形された第1成形品と第2工程により成形された第2成形品とを結合して遠心ファンを成形する第3工程とを備える。
【0010】
具体的には、第1工程は、複数枚の羽根と主板のうち軸線方向一方側とを成形する雄型と、主板のうち軸線方向他方側を成形する雌型とを用意する。そして、雄型を軸線方向一方側に配置し、雌型を軸線方向他方側に配置し、雄型および雌型の間に溶融した樹脂材料を注入し、この注入したものを冷却して固定してから、雄型を第1成形品に対して軸線方向一方側に移動させることにより、第1成形品から雄型を分離することが考えられる。
【0011】
しかし、複数枚の羽根は、上述の如く、それぞれの後縁部と前縁部とが異なる方向に傾斜している。このため、第1成形品から雄型を軸線方向一方側に移動させる際に、第1成形品が妨げとなり、第1成形品から雄型を分離することが難しく、射出成形による成形が困難になると考えられる。
【0012】
本発明は上記点に鑑みて、羽根に相当する翼から剥離して流れる空気の剥離流の発生を抑制しつつ、射出成形を容易に行うことができる遠心ファン、および遠心ファンの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するため、請求項に記載の発明では、軸線(S)を中心として円周方向に並べられている複数枚の翼(71)と、
軸線を中心とする径方向内側に形成されている開口部(72a)を有して軸線を中心とするリング状に形成されて、複数枚の翼のそれぞれの軸線方向一方側を支持する側板(72)と、
複数枚の翼のそれぞれの軸線方向他方側を支持する主板(70)と、を備え、
複数枚の翼、側板、および主板が、回転軸の回転方向一方側に軸線を中心として回転することにより、開口部を通して吸入した空気を複数枚の翼のうち隣り合う2枚の翼の間を通して軸線を中心とする径方向外側に吹き出す遠心ファンであって、
複数枚の翼は、回転方向の一方側に設けられて、かつ軸線に平行に形成されている第1翼面(80)と、回転方向の他方側に設けられている第2翼面(81)とをそれぞれ備え、
第2翼面のうち径方向内側は、翼毎に、第2翼面のうち側板に結合される第1結合部(82a)が第2翼面のうち主板に結合される第2結合部(82b)に対して第1翼面側にオフセットしていることにより、第1翼面に平行で、かつ第2翼面に交差する仮想面(83)と第2翼面との間に所定角度(θ)を成しており、
第2翼面のうち軸線を中心とする径方向外側は、翼毎に、第1結合部および第2結合部を結ぶ線(Ls)が第1翼面に対して平行になっており、
所定角度(θ)が翼毎に径方向内側から径方向外側に向かうほど徐々に小さくなっていることにより、第1、第2の翼面の間の厚み寸法の最大値(La)が翼毎に径方向内側から径方向外側に向かうほど徐々に小さくなっていることを特徴とする。
【0019】
請求項に記載の発明によれば、第2翼面のうち径方向内側は、翼毎に、第1結合部が第2結合部に対して第1翼面側にオフセットしている。このため、開口部を通して吸入した空気流を第2翼面に沿わせて流すことにより、空気流が第2翼面から剥離して流れることを低減することができる。
【0020】
請求項に記載の発明によれば、複数枚の翼のそれぞれにおいて、第1翼面が軸線に平行に形成されている。このため、複数枚の翼のそれぞれの第1翼面側では、空気流の流速の均一化を図ることができる。
【0021】
請求項に記載の発明によれば、第1、第2の翼面間の厚み寸法の最大値(La)が径方向内側から径方向外側に向かうほど徐々に小さくなっているので、複数枚の翼の径方向外側で空気流の渦の発生を抑えることができる。このため、騒音の低減を図ることができる。
【0022】
請求項に記載の発明によれば、第1翼面は、翼毎に、軸線に平行に形成されている。第2翼面のうち径方向内側は、翼毎に、第1結合部(82a)が第2結合部(82b)に対して第1翼面側にオフセットしている。第2翼面のうち軸線を中心とする径方向外側は、翼毎に、第1結合部および第2結合部を結ぶ線(Ls)が第1翼面に対して平行になっている。第2翼面と仮想面との間に形成される傾斜角(θ)が翼毎に径方向内側から径方向外側に向かうほど徐々に小さくなっている。
【0023】
したがって、複数枚の翼および主板を一体化した第1成形品を射出成形する際に、後述する如く、第1成形品から金型を離脱させる型抜きを容易に行うことができるので、遠心ファンの成形が容易になる。
【0024】
具体的には、請求項1または2に記載の遠心ファンの製造方法であって、
複数枚の翼および主板を金型を用いた射出成形により一体に成形する第1工程(S100)と、
側板を成形する第2工程(S101)と、
第1工程により成形された第1成形品と第2工程により成形された第2成形品とを結合して遠心ファンを成形する第3工程(S103)と、を備え、
第1工程は、主板のうち軸線方向一方側と複数枚の翼とを成形するための第1型部材と主板のうち軸線方向他方側を成形するための第2型部材とを金型として用意し、第1型部材を軸線方向一方側に配置し、第2型部材を軸線方向他方側に配置し、第1型部材および第2型部材の間に溶融した材料を注入し、この注入したものを冷却して固定してから、第1型部材および第2型部材を第1成形品から分離することを特徴とする。
【0025】
以上により、第1成形品から第1型部材を軸線方向一方側を移動させるだけで、第1成形品が第1型部材の移動の妨げになることなく、第1成形品から第1型部材を分離することができる。このため、第1成形品から金型を分離させる型抜きを容易に行うことができる。
【0026】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の第1実施形態における遠心送風機の断面構成を示す図である。
図2図1中II−II断面図である。
図3図2(或いは、図11)中B矢視図である。
図4図1の遠心ファンの製造工程を示すフローチャートである。
図5】第1比較例としての遠心ファンを示す図である。
図6図5中D矢視図である。
図7】第1実施形態の遠心ファンの騒音低減を示すグラフである。
図8】第2比較例としての遠心ファンを示す図である。
図9】第1実施形態の遠心ファンの騒音低減と傾斜角の関係を示すグラフである。
図10】本発明の第2実施形態における遠心送風機の翼の構造を示す断面図である。
図11】本発明の第3実施形態における遠心送風機の断面構成を示す図である。
図12図11中C矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0029】
(第1実施形態)
図1は、本発明の遠心ファンが適用される遠心送風機10の第1実施形態の断面図である。
【0030】
遠心送風機10は、全周吹出しタイプの遠心式送風機であり、詳細に言えば、後退翼を有するターボファンである。遠心送風機10は、ファンケース20、回転軸30、電動モータ40、および遠心ファン50を備える。
【0031】
ファンケース20は、回転軸30および遠心ファン50を収容しており、上側ケース21、下側ケース22、および支持ケース23から構成されている。上側ケース21は、回転軸30の軸線方向一方側に配置され、下側ケース22は、回転軸30の軸線方向他方側に配置されている。上側ケース21および下側ケース22は、互いにビス等により締結されて一体になっている。
【0032】
例えば、上側ケース21には、下側ケース22側へ突き出た筒状の支柱21a(図2参照)を周縁部分に複数有し、上側ケース21および下側ケース22は、その複数の支柱21aそれぞれに挿通された螺旋等によって互いに締結されている。
【0033】
上側ケース21には、遠心ファン50が空気を吸い込むが形成されている。吸気口30aは、回転軸30の軸線Sを中心とする円形状を成している。
【0034】
上側ケース21の周縁60aと下側ケース22の周縁60bとが軸線方向に互いに離れて設けられており、その周縁60a、60bの間は遠心ファン50が空気を吹き出す吹出口61となっている。吹出口61は、軸線Sを中心としたファンケース20の全周に亘って形成されている。
【0035】
したがって、遠心ファン50は、軸線Sを中心としたファンケース20の全周から空気を吹き出す。支持ケース23は、軸線Sを中心とする円筒状に形成されている。
【0036】
支持ケース23は、下側ケース22のうち軸線Sを中心とする径方向内側に配置されている。支持ケース23は、下側ケース22によって固定されている。回転軸30は、円柱形状の棒材であって、支持ケース23内に配置されている。回転軸30は、支持ケース23に対してベアリング62a、62bを介して支持されている。
【0037】
ベアリング62a、62bは、それぞれ、支持ケース23の内側に軸線方向に並べられている。ベアリング62a、62bは、それぞれ、支持ケース23の内周面に支持されている。このため、回転軸30は、下側ケース22に対し、軸線Sを中心として回転自在になっている。
【0038】
回転軸30は、支持ケース23から軸線方向一方側へ突出しており、その突出した部分には遠心ファン50の主板70の中央部75が相対回転不能に連結されている。これによって、回転軸30は、軸線Sを中心として遠心ファン50と一体的に回転する。
【0039】
電動モータ40は、アウターロータ型の三相交流同期モータであり、軸線方向において遠心ファン50の主板70と下側ケース22との間に配置されている。下側ケース22は、回転軸30のモータハウジングとしても機能するように構成されている。電動モータ40は、回転軸30を介して軸線Sを中心として遠心ファン50を回転させる。
【0040】
電動モータ40は、ロータ41、ステータ42、およびモータケース43を備えている。
【0041】
ロータ41は、主板70の筒部76の内側に配置されている。ロータ41は、複数の永久磁石を含んで構成され、軸線Sを中心としてリング状に形成されている。ロータ41は、モータケース43を介して、主板70の筒部76および内径部74に固定されている。モータケース43は、軸線Sを中心として円筒状に形成されている。ステータ42は、三相のステータコイル42aがコア42bに巻かれて構成され、ロータ41に対して、軸線Sを中心とする径方向内側に設けられている。ステータ42は、支持ケース23に対して固定されている。
【0042】
遠心ファン50は、遠心式多翼ファンを構成する羽根車である。遠心ファン50は、主板70、複数枚の翼71、および側板72を備える。
【0043】
主板70は、複数枚の翼71に対して軸線方向他方側に配置されている。主板70は、複数枚の翼71のそれぞれの軸線方向他方側を支持する。
【0044】
主板70は、略円板状に形成されたものであって、外径部73、内径部74、中央部75、および筒部76を備える。
【0045】
外径部73は、軸線Sを中心とする径方向外側に設けられている。外径部73は、軸線方向に直交する方向に板状に延出するリング状に形成されている。中央部75は、軸線Sを中心とする径方向内側に配置されている。
【0046】
中央部75は、軸線方向に直交する方向に延出する延出する板状に形成されている。中央部75は、外径部73に対して軸線方向一方側に配置されている。
【0047】
内径部74は、外径部73および中央部75の間において、軸線Sを中心とするリング状に形成されている。内径部74は、外径部73から中央部75に向かうほど軸線方向一方側に変位する板状に形成されている。
【0048】
このように構成される主板70のうち主に外径部73が複数枚の翼71のそれぞれの軸線方向他方側を支持する。
【0049】
筒部76は、軸線Sを中心とする円筒状に形成されている。筒部76は、外径部73のうち径方向内側から軸線方向他方側に突出している。
【0050】
側板72は、複数枚の翼71に対して軸線方向一方側に配置されている。側板72は、軸線Sを中心とするリング状に形成されたもので、軸線Sを中心とする径方向内側に開口部72aを有する。開口部72aは、軸線方向一方に開口している。側板72は、複数枚の翼71のそれぞれの軸線方向一方側を支持する。
【0051】
側板72は、径方向内側から径方向外側に向かうほど軸線方向他方側に変位するように湾曲している。このことにより、側板72は、吸気口30aから開口部72aを通して吸い込んだ空気を径方向外側に導くことになる。側板72および上側ケース21の間には、ラビリンス構造77が形成されている。ラビリンス構造77は、側板72および上側ケース21の間の隙間78に空気が流れることを抑制する。
【0052】
複数枚の翼71は、図2に示すように、軸線Sを中心とする円周方向に等間隔に並べている。図2中に14枚の翼71が示されている。複数枚の翼71は、それぞれ、径方向内側から径方向外側に向かうほど、回転方向他方側に向かうように形成されている。複数枚の翼71は、それぞれ、翼面80、81を備える。
【0053】
ここで、翼面80は、翼71のうち回転方向一方側に形成される第1翼面である。翼面80は、軸線Sに平行に形成されている。このため、翼面80は、外径部73に対して直交することになる。
【0054】
翼面81は、翼71のうち回転方向他方側に設けられている第2翼面である。翼面81は、径方向内側から径方向外側に亘って、図3に示すように、翼面81のうち側板72に結合される結合部82aが翼面81のうち主板70に結合される結合部82bに対して翼面80側にオフセットしている。
【0055】
このため、翼面81は、図3に示すように、仮想面83に対して傾斜している。図3図2中B矢視図を示す。仮想面83は、翼面80に平行で、かつ翼面81に交差する仮想面である。翼面81と仮想面83との間で時計回りに形成される傾斜角θとしては、角度5°〜角度25°の範囲のうちいずれかの所定角度が設定される。
【0056】
次に、本実施形態の遠心ファン50の製造方法について図4を参照して説明する。
【0057】
本実施形態の遠心ファン50は、樹脂材料を用いた射出成形により一体に成形される。
【0058】
具体的には、第1工程(ステップ100)では、複数枚の翼71および主板70を射出成形により一体に成形する。
【0059】
具体的には、第1工程は、主板70のうち軸線方向一方側と複数枚の翼71とを成形するための雄型(コア)と、主板70のうち軸線方向他方側を成形するための雌型(キャビティ)とを用意する。
【0060】
雄型を軸線方向一方側に配置し、雌型を軸線方向他方側に配置する。雄型および雌型の間に加熱溶融した樹脂材料を注入し、この注入したものを冷却して固定する。その後、雄型を第1成形品から軸線方向一方に移動して雌型を第1成形品から軸線方向他方に移動する。このため、雄型および雌型を第1成形品から分離することができる。これにより、第1成形品の成形が完了する。
【0061】
一方、第2工程(ステップ110)では、側板72を射出成形により成形する。その後、第1工程により成形された第1成形品と第2工程により成形された第2成形品とを溶着等により結合して遠心ファン50の成形が完了する。
【0062】
次に、本実施形態の遠心送風機10の作動について説明する。
【0063】
まず、図示しないインバータ回路から三相交流電流をステータコイル42aに出力する。これに伴い、ステータコイル42aは、三相交流電流に基づいて回転磁界を発生する。このため、ロータ41が回転軸30とともに回転磁界に同期して回転する。これにより、遠心ファン50が軸線Sを中心として回転する。このとき、軸線方向一方側から空気が吸気口30aを通して開口部72a内に吸入される。
【0064】
ここで、翼面81は、上述の如く、仮想面83に対して傾斜している。このため、吸気口30aを通して開口部72a内に吸い込まれる空気流は、翼71の前縁側(すなわち、径方向内側)において、吸気口30aから開口部72aを通過した空気流を図3中矢印Kaの如く、翼面81に沿って流すことができる。
【0065】
このように開口部72a内に吸入された空気は、複数枚の翼71のうち隣り合う合う2枚の翼71の間に流れる。この隣り合う合う2枚の翼71の間に流れる空気流は、前記隣り合う合う2枚の翼71のうち回転方向他方側(すなわち、反回転方向)の翼71の翼面81によって押されて、回転する。
【0066】
この回転に伴って生じる遠心力によって、空気流は、径方向外側に吹き出される。この吹き出された空気流は、吹出口61から径方向外側に吹き出される。
【0067】
以上説明した本実施形態によれば、遠心ファン50は、軸線Sを中心として円周方向に並べられている複数枚の翼71と、径方向内側に開口部72aを有して軸線Sを中心とするリング状に形成されて、かつ複数枚の翼71のそれぞれの軸線方向一方側を支持する側板72と、複数枚の翼71のそれぞれの軸線方向他方側を支持する主板70とを備える。
【0068】
複数枚の翼71は、回転方向一方側に設けられて、かつ軸線Sに平行に形成されている翼面80と、回転方向他方側に設けられている翼面81とをそれぞれ備える。
【0069】
複数枚の翼71のそれぞれの翼面81は、径方向内側から径方向外側に亘って、翼面81のうち側板72に結合される結合部82aが翼面81のうち主板70に結合される結合部82bに対して翼面80側にオフセットすることにより、翼面81が仮想面83に対して傾斜している。
【0070】
ここで、翼面81と側板72とによって形成される角部では、吸気口30aから開口部72aを通過した空気流が、軸線方向に傾斜して流入する。このため、翼面81が軸線方向に平行に形成されている場合には、翼面81と側板72とによって形成される角部では、翼面81から空気流が剥離する剥離域が発生し易い。このため、剥離域で発生した渦などによる空気流の変動が翼面81に衝突し、騒音増加の原因になる。
【0071】
これに対して、本実施形態では、翼面81を仮想面83に対して傾斜させることで、翼71の前縁側(すなわち、径方向内側)において、吸気口30aから開口部72aを通過した空気流を図3中矢印Kaの如く、翼面81に沿って流すことができる。
【0072】
したがって、吸気口30aから開口部72aを通過した空気流の方向(図3中矢印Ka参照)と翼面81の傾斜方向を一致させ、剥離域を低減して騒音を低減することができる。
【0073】
一方、特許文献1の遠心ファン50Aは、複数枚の羽根1のうち径方向内側である前縁部3における側板側結合部3aの位置が主板側結合部3bの位置よりも羽根車の回転方向一方側にオフセットしている(図5図6参照)。このため、羽根1の前縁部3において吸い込んだ空気流を主板側に向けて流すため、空気流の流速が偏るという問題がある。
【0074】
これに対して、本実施形態では、翼面80は軸線方向に平行に形成されているので、翼面80が空気を回転方向一方側に押すため、翼71の前縁側において軸線方向の流速分布を均一にすることができる。
【0075】
特許文献1の遠心ファン50Aは、複数枚の羽根1のうち径方向外側である後縁部2における側板側結合部2aの位置が主板側結合部2bの位置よりも羽根車の回転方向他方側にオフセットしている(図5図6参照)。このため、複数枚の羽根1は、それぞれ、後縁部と前縁部とが異なる方向に傾斜している。
【0076】
したがって、複数枚の羽根1と主板4とを一体に成形する際に、本実施形態と同様に、上型および下型のうち複数枚の翼71のそれぞれを成形する上型を第1成形品から分離させる際に、第1成形品が妨げとなり、第1成形品から上型を分離することが難しくなると考えられる。
【0077】
これに対して、本実施形態では、複数枚の翼71は、翼面80が軸線Sに平行に形成されている。翼面81は、翼面81の結合部82aが結合部82bに対して翼面80側にオフセットしている。このため、複数枚の翼71および主板70を射出成形により一体に成形する際に、第1成形品が妨げることなく、上型および下型のうち複数枚の翼71を成形する上型を容易に軸線方向に移動できる。
【0078】
以上により、第1成形品から金型を離脱させる型抜きを容易に行うことができるので、遠心ファン50の成形が容易になる。
【0079】
次に、本実施形態の遠心ファン50の効果について遠心ファン50と従来の遠心ファン50Bとを比較することにより説明する。
【0080】
図7に、遠心ファン50、50Bにおいて、縦軸を比騒音ks[dBA]として、横軸を流量係数Φとするグラフを示す。遠心ファン50Bは、複数枚の翼71のそれぞれの翼面80、81が軸線Sに平行に形成されている。図8は、従来の遠心ファン50Bの断面図であって、図3に相当する断面図である。遠心ファン50Bの複数枚の翼71のそれぞれにおいて、翼面80、81は、軸線Sに平行に形成されている。
【0081】
図7から分かるように、遠心ファン50の比騒音の最低値が遠心ファン50Bの比騒音の最低値に対して0.8dBほど低くなっている。このため、本実施形態の遠心ファン50は、従来の遠心ファン50Bに比べて騒音を低くなることが明らかである。
【0082】
但し、比騒音ksは、遠心ファン50(50B)に仕事によって発生する騒音である。遠心ファン50(50B)の出口周速[m/s]をUとし、開口部72aを通過する空気の平均流速[m/s]をVとしたときに、流量係数Φは、Φ=V/Uが成立する係数である。
【0083】
次に、本実施形態の遠心ファン50の翼面81の傾斜角θの範囲について図9を参照して説明する。
【0084】
図9に遠心ファン50において縦軸を最低比騒音ks[dBA]とし、横軸を傾斜角θ[deg]としたグラフを示す。最低比騒音ksとは、遠心ファン50において比騒音ksの最低値である。
【0085】
図9から分かるように、傾斜角θが角度5°〜角度25°の範囲内に入っているときには、最低比騒音ksが低くなり、騒音が低くなっていることが明らかである。このため、遠心ファン50の翼面81の傾斜角θとしては、角度5°〜角度25°の範囲内のいずれかの所定角度に設定することが望ましい。
【0086】
(第2実施形態)
本第2実施形態では、上記第1実施形態の遠心ファン50において、複数の翼71のそれぞれを中空状に形成した例について説明する。
【0087】
図10に本実施形態の遠心ファン50の複数の翼71の断面図を示す。複数の翼71には、軸方向他方側に開口する中空部85がそれぞれ形成されている。
【0088】
(第3実施形態)
上記第1実施形態では、遠心ファン50の複数の翼71において、翼面81の傾斜角θを、径方向内側から径方向外側に亘って、一定にした例について説明したが、これに代えて、仮想面83と翼面81との間に形成される傾斜角θを径方向内側から径方向外側に向かうほど小さくするようにした本第3実施形態について説明する。
【0089】
図11に本実施形態の遠心ファン50の断面図を示す。図3は、図11中B矢視図である。図12は、図11中C矢視図である。
【0090】
遠心ファン50の複数枚の翼71のそれぞれにおいて、翼面81のうち径方向内側は、図3に示すように、結合部82aが結合部82bに対して翼面80側にオフセットしていることにより、翼面81が仮想面83に対して傾斜角度θを形成している。
【0091】
本実施形態の傾斜角度θとしては、上記第1実施形態と同様に、角度5°〜角度25°の範囲のうちいずれかの所定角度が設定される。
【0092】
遠心ファン50の複数枚の翼71のそれぞれにおいて、翼面81の径方向外側は、図12に示すように、結合部82aと結合部82bとを結ぶ線Lsが翼面80に対して平行に形成されている。
【0093】
さらに、翼面81および仮想面83の間に形成される傾斜角θが径方向内側から径方向外側に向かうほど徐々に小さくなっている。このことにより、翼面80、81の間の厚み寸法の最大値La(図3図12参照)が径方向内側から径方向外側に向かうほど徐々に小さくなっている。
【0094】
以上説明した本実施形態によれば、翼面81のうち径方向内側は、翼71毎に、翼面81のうち結合部82aが結合部82bに対して翼面80側にオフセットしていることにより、仮想面83と翼面81との間に所定角度θを成している。
【0095】
翼面81のうち径方向外側は、翼71毎に、結合部82aおよび結合部82bを結ぶ線Lsが翼面80に対して平行になっている。翼面81および仮想面83の間に形成される傾斜角θが径方向内側から径方向外側に向かうほど徐々に小さくなっていることにより、翼面80、81の間の厚み寸法の最大値La(図3図12参照)が径方向内側から径方向外側に向かうほど徐々に小さくなっている。このため、遠心力により空気が複数枚の翼71の径方向外側に吹き出される際に、複数枚の翼71のそれぞれの径方向外側で空気流の渦の発生を抑えることができる。このため、騒音の低減を図ることができる。
【0096】
(他の実施形態)
(1)上記各実施形態では、本発明の遠心ファン50をターボファンとした例について説明したが、これに限らず、本発明の遠心ファン50をシロッコファンとしてもよい。
【0097】
(2)上記各実施形態では、本発明の遠心ファン50を樹脂材料を用いて射出成形した例について説明したが、これに代えて、本発明の遠心ファン50を金属材料を用いて射出成形してもよい。
【0098】
(3)上記第2実施形態では、上記第1実施形態の遠心ファン50において、複数の翼71のそれぞれを中空状に形成した例について説明したが、上記第3実施形態の遠心ファン50において、複数の翼71のそれぞれを中空状に形成してもよい。
【0099】
(4)なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0100】
10 遠心送風機
20 ファンケース
21 上側ケース
22 下側ケース
23 支持ケース
30 回転軸
40 電動モータ
41 ロータ
42 ステータ
43 モータケース
50 遠心ファン
70 主板
71 翼
72 側板
80 翼面(第1翼面)
81 翼面(第2翼面)
82a 結合部(第1結合部)
82b 結合部(第2結合部)
83 仮想面
85 中空部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12