特許第6488957号(P6488957)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6488957
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】電子天秤
(51)【国際特許分類】
   G01G 23/01 20060101AFI20190318BHJP
【FI】
   G01G23/01 K
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-182457(P2015-182457)
(22)【出願日】2015年9月16日
(65)【公開番号】特開2017-58220(P2017-58220A)
(43)【公開日】2017年3月23日
【審査請求日】2018年1月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100114030
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿島 義雄
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 淳史
(72)【発明者】
【氏名】河合 正幸
【審査官】 公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−019652(JP,A)
【文献】 特開平01−152318(JP,A)
【文献】 特開平02−010228(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0150519(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01G 23/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計量皿に載置された被測定物の荷重が伝達される荷重伝達機構と、
2個の内蔵分銅と、
2個の内蔵分銅の荷重を荷重伝達機構に負荷する全負荷状態か、1個の内蔵分銅の荷重を荷重伝達機構に負荷する部分負荷状態か、或いは、2個の内蔵分銅の荷重を荷重伝達機構に負荷しない無負荷状態かのいずれかの状態となるように切替可能である分銅加除機構とを備える電子天秤であって、
2個の内蔵分銅は、大リング体と小リング体であって、前記無負荷状態では同一平面に配置されるとともに、前記計量皿の中心を通る鉛直軸上に重心がくるように配置され、前記分銅加除機構によって昇降されることにより状態が切り替えられるように構成され
前記分銅加除機構は、大リング用偏心カムと、小リング用偏心カムと、水平方向に伸び水平方向に回転軸を有する棒状の回転軸部と、当該回転軸部を回転させるモータとを備え、
大リング用偏心カムと小リング用偏心カムとには位相差が設けられており、
大リング用偏心カムと小リング用偏心カムとは、前記回転軸部に連結され、同時に回転されるようになっていることを特徴とする電子天秤。
【請求項2】
前記荷重伝達機構は、電子天秤ベースに固定又は一体化される固定柱と、計量皿に載置された被測定物の荷重を伝達する可動柱と、当該可動柱が、被測定物の荷重を鉛直方向に伝達するように可動柱を固定柱に連結する互いに平行な2本の梁とを備えるロバーバル機構であることを特徴とする、請求項1に記載の電子天秤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内蔵分銅により校正を行うように構成された電子天秤に関する。
【背景技術】
【0002】
電子天秤においては、一般に、被測定物の荷重による荷重伝達機構の可動部材の変位に抗して、電磁力発生装置等によって電磁力を発生させることにより、荷重伝達機構の可動部材の変位を0とするために発生させた電磁力の大きさから被測定物の荷重を計測している。
【0003】
このような荷重伝達機構としては、例えば、電子天秤ベースに固定される固定柱と、計量皿に載置された被測定物の荷重を伝達する可動柱(可動部材)と、可動柱を固定柱に連結する互いに平行な2本の梁とを備えるロバーバル機構が形成されたセンサ機構体がある(例えば、特許文献1参照)。このようなセンサ機構体では、被測定物の荷重による可動柱の変位を鉛直方向に規制することができ、さらに計量皿上における被測定物の載置位置に起因する偏置誤差(いわゆる「四隅誤差」)を解消するように、製造工程等において機械的に個体別の調整を行うことができる。
【0004】
また、電子天秤では、例えば、重力加速度や気圧や周囲温度等の環境により、所定の荷重と平衡させる電流の大きさが変動することがある。このため、ユーザ(使用者)は、環境による荷重データ(測定結果)の誤差が生じないように、被測定物の荷重を計測する前に、校正用の分銅を用いてスパン(感度)校正とリニアリティ(直線性)校正とを行っている。
【0005】
特に、計量精度が求められる電子天秤には、ユーザが簡単にスパン校正とリニアリティ校正とを行えるように、校正用の2個の内蔵分銅と分銅加除機構とを設けたものがある(例えば、特許文献2参照)。このような電子天秤では、スパン校正時には2個の内蔵分銅が同時に可動柱に負荷され、その状態での荷重データと内蔵分銅の合計質量とからスパン補正係数が算出される。また、リニアリティ校正時には、1個の内蔵分銅が可動柱に負荷された状態での荷重データおよび内蔵分銅の質量と、2個の内蔵分銅の負荷状態における荷重データと内蔵分銅の合計質量とから、補正式を用いてリニアリティ補正係数が算出される。
【0006】
ここで、2個の内蔵分銅と分銅加除機構とが設けられた電子天秤の構成の一例について説明する。電子天秤は、略直方体状の筐体(電子天秤ベース)を備え、筐体の上方には、被測定物が載置されるための円板形状の計量皿が配置され、筐体の内部には、2個の内蔵分銅と、分銅加除機構と、センサ機構体(荷重伝達機構)と、電磁力を発生させる電磁力発生装置とが配置されている。
【0007】
2個の内蔵分銅は、それぞれが質量既知で、互いに略等しい質量を持ち、かつ、その合計質量が天秤ひょう量(最大荷重)の近傍の質量となっている。そして、1個の内蔵分銅が可動柱の左側に所定距離だけ離隔した位置に配置されるとともに、他方の内蔵分銅は可動柱の右側に所定距離だけ離隔した位置に配置される。
【0008】
分銅加除機構は、右側内蔵分銅を昇降させる昇降機構と、左側内蔵分銅を昇降させる昇降機構との2個の昇降機構で構成されており、右側内蔵分銅と左側内蔵分銅との荷重を可動柱に負荷する「全負荷状態」か、左側内蔵分銅の荷重を可動柱に負荷する「部分負荷状態」か、或いは、右側内蔵分銅と左側内蔵分銅の両方の荷重を可動柱に負荷しない「無負荷状態」のいずれかの状態とすることができるようになっている。そして、分銅加除機構は、ユーザのボタン操作等により適宜に、或いは、タイマや温度センサ等の信号により自動的に、スパン校正時やリニアリティ校正時等に制御されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−61257号公報
【特許文献2】特開平10−19652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、上述したような電子天秤では、ユーザがスパン校正とリニアリティ校正とを簡単に実行できるようになっているが、これは重力加速度や気圧や周囲温度等の環境に対して計量精度が影響を受けるためである。しかしながら、偏置誤差も同様にわずかながら環境の影響を受けることが分かっている。
ところが、上述したような電子天秤では、2個の内蔵分銅が可動柱の左右両側に配置されていることから、1個の内蔵分銅が可動柱に負荷された際には、偏置誤差の影響を包含してしまうという欠点があった。つまり、リニアリティ校正の校正精度に問題があった。
そこで、本発明は、2個の内蔵分銅と分銅加除機構とを備える電子天秤において、常に正確なリニアリティ校正を行うことができる電子天秤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するためになされた本発明の電子天秤は、計量皿に載置された被測定物の荷重が伝達される荷重伝達機構と、2個の内蔵分銅と、2個の内蔵分銅の荷重を荷重伝達機構に負荷する全負荷状態か、1個の内蔵分銅の荷重を荷重伝達機構に負荷する部分負荷状態か、或いは、2個の内蔵分銅の荷重を荷重伝達機構に負荷しない無負荷状態かのいずれかの状態となるように切替可能である分銅加除機構とを備える電子天秤であって、2個の内蔵分銅は、大リング体と小リング体であって、前記無負荷状態では同一平面に配置されるとともに、前記計量皿の中心を通る鉛直軸上に重心がくるように配置され、前記分銅加除機構によって昇降されることにより状態が切り替えられるように構成され、前記分銅加除機構は、大リング用偏心カムと、小リング用偏心カムと、水平方向に伸び水平方向に回転軸を有する棒状の回転軸部と、当該回転軸部を回転させるモータとを備え、大リング用偏心カムと小リング用偏心カムとには位相差が設けられており、大リング用偏心カムと小リング用偏心カムとは、前記回転軸部に連結され、同時に回転される構成となっている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電子天秤によれば、偏置誤差に影響されない位置に2個の内蔵分銅を配置しているので、リニアリティ校正の校正精度を向上させることができる。また、2個の内蔵分銅どうしが近傍に配置されているため、分銅加除機構の簡素化、小型化が可能となる。
【0013】
また、2個の内蔵分銅は、大リング体と小リング体であって、前記無負荷状態では同一平面に配置されているようにしているので、回転方向性がないリング体とすることで、重心位置が水平方向に動かない構成を容易に実現することができる。
【0014】
また、前記分銅加除機構は、大リング用偏心カムと、小リング用偏心カムと、水平方向に伸び水平方向に回転軸を有する棒状の回転軸部と、当該回転軸部を回転させるモータとを備え、大リング用偏心カムと小リング用偏心カムとには位相差が設けられており、大リング用偏心カムと小リング用偏心カムとは、前記回転軸部に連結され、同時に回転されるようにしている。これにより、同軸に2相カムを設けることで、相対位置関係による可動域の調整が簡略化できるとともに単一動力源とすることができ、部品点数の削減や構成の簡略化、さらには制御機能の簡素化が実現可能となる。
【0015】
さらに、本発明の電子天秤は、前記荷重伝達機構は、電子天秤ベースに固定又は一体化される固定柱と、計量皿に載置された被測定物の荷重を伝達する可動柱と、当該可動柱が、被測定物の荷重を鉛直方向に伝達するように可動柱を固定柱に連結する互いに平行な2本の梁とを備えるロバーバル機構であるようにしている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態である電子天秤の一例を示す断面図。
図2】筐体と計量皿とを取り外した電子天秤の斜視図。
図3】第一内蔵分銅と第二内蔵分銅と分銅加除機構とを示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明は、以下に説明するような実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の態様が含まれることはいうまでもない。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態である電子天秤の構成一例を示す断面図である。なお、地面に水平な一方向をX方向とし、地面に水平でX方向と垂直な方向をY方向とし、X方向とY方向とに垂直な方向をZ方向とする。
電子天秤1は、略直方体状(例えば21cm×36cm×34cm)の筐体(電子天秤ベース)を備え、筐体の上方には、被測定物が載置されるための円板形状の計量皿2が配置され、筐体の内部には、第一内蔵分銅21と、第二内蔵分銅22と、分銅加除機構30と、センサ機構体(荷重伝達機構)60と、電磁力を発生させる電磁力発生装置40とが配置されている。なお、図2は、筐体と計量皿2とを取り外した状態の電子天秤1の斜視図であり、図3は、第一内蔵分銅21と第二内蔵分銅22と分銅加除機構30とを示す斜視図である。
【0019】
計量皿2は、上方から見ると直径r(例えば8cm〜9cm)の円形状の載置面2aと、載置面2aの下面の中央部に形成され、孔を有する取付部2bとを有する。
【0020】
第一内蔵分銅21は、上方から見ると、内径r(例えば1.4cm)、外径r(例えば4.5cm)の小リング体であり、その小リング体の上面は、中心側に向かって低くなるテーパ状となっている。そして、第一内蔵分銅21の質量は既知であり、例えば100gである。
また、第二内蔵分銅22は、上方から見ると、外径rより大きい内径r(例えば5.0cm)、外径r(例えば7.1cm)の大リング体であり、その大リング体の上面は、外側に向かって低くなるテーパ状となっている。そして、第二内蔵分銅22の質量は既知であり、例えば100gである。
なお、第一内蔵分銅21の質量と第二内蔵分銅22の質量との合計質量は、天秤ひょう量(最大荷重)近傍の質量となっている。
【0021】
そして、第一内蔵分銅21と第二内蔵分銅22とは、計量皿2とセンサ機構体60との間において、XY平面と平行であって、かつ、計量皿2とセンサ機構体60の可動柱61との中心を通る鉛直軸上に重心がくるように配置されている。
また、第一内蔵分銅21の下方には、2個の「へ」の字形状の持上部材21aの一端部が取り付けられ、2個の持上部材21aの他端部は、水平方向(Y方向)に伸びた円柱状の回転軸部23に回動可能に取り付けられている。これにより、2個の持上部材21aの下面が上方に押圧されることで、第一内蔵分銅21が上方の所定位置に配置され、2個の持上部材21aの下面が上方に押圧されなければ、第一内蔵分銅21が自重で下方に移動するようになっている。なお、第一内蔵分銅21が上方に移動する際には、テーパ状の上面が筐体に設けられたテーパ状のガイド部材に案内されて常に所定位置に配置されるようになっている。
【0022】
第二内蔵分銅22の下方には、2個の「へ」の字形状の持上部材22aの一端部が取り付けられ、2個の持上部材22aの他端部は回転軸部23に回動可能に取り付けられている。これにより、2個の持上部材22aの下面が上方に押圧されることで、第二内蔵分銅22が上方の所定位置に配置され、2個の持上部材22aの下面が上方に押圧されなければ、第二内蔵分銅22が自重で下方に移動するようになっている。なお、第二内蔵分銅22が上方に移動する際には、テーパ状の上面が筐体に設けられたテーパ状のガイド部材に案内されて常に所定位置に配置されるようになっている。
【0023】
センサ機構体60は、一つのアルミニウム合金製の直方体形状(例えば11.8cm×3.0cm×3.6cm)のブロック体であり、ロバーバル機構Rが、Y方向(厚さ方向)に貫通する孔やスリット等を設けることによって形成されている。ロバーバル機構Rは、皿受け61aと分銅受け部材61bとが固着された可動柱61と、筺体に固定される固定柱62と、2本の梁63、64とから構成される。そして、可動柱61と固定柱62とは、互いに平行な2本の梁63、64によって連結された構造となっている。
【0024】
皿受け61aは、略円錐体であって可動柱61の上面の中央部(可動柱61の中心を通る鉛直軸上)に固着されている。これにより、計量皿2は、取付部2bの孔に皿受け61aが挿入されることで、可動柱61に取り付けられるようになっている。
分銅受け部材61bは、図3に示すように、水平方向(Y方向)に所定距離(例えばr)だけ伸びた基幹部と、その基幹部からX方向に伸びた3本の枝部とを有する櫛型形状の板状体であり、その中央の枝部が可動柱61の上面に固着されている。これにより、第一内蔵分銅21と第二内蔵分銅22とが下方に移動することで、分銅受け部材61bの上面に載置されるようになっている。
【0025】
レバー65は、支点65aを中心として傾動自在となっている。そして、レバー65の一端部は可動柱61に連結されている。これにより、計量皿2上に載置された被測定物の荷重(分銅受け部材61b上に載置された第一内蔵分銅21や第二内蔵分銅22)は、可動柱61を介して、レバー65の先端部を傾動させるようになっている。このようなレバー65の先端部の変位は、筺体に固定された光学的位置センサ67によって検出される。また、レバー65の先端部には、電磁力発生装置40のフォースコイル40aが固着されている。これにより、フォースコイル40aに流れる電流の大きさは、光学的位置センサ67からの検出信号に基づいて、レバー65の先端部の変位が0となるようにサーボ機構40bによって制御される。そして、サーボ機構40bによって流された電流の大きさから被測定物(第一内蔵分銅21、第二内蔵分銅22)の荷重が計測されることになる。
【0026】
分銅加除機構30は、2個の小リング用偏心カム31と、2個の大リング用偏心カム32と、水平方向(Y方向)に伸び水平方向に回転軸を有する円柱体である回転軸部33と、回転軸部33を回転させる1個のモータ34とを備える。
小リング用偏心カム31は、回転軸から第一方向のみに突出する板状体であり、大リング用偏心カム32は、回転軸から第一方向から右回りに第二方向(第一方向と90°ずれた方向)までの範囲で突出する板状体である。
そして、大リング用偏心カム32の回転軸と小リング用偏心カム31の回転軸と小リング用偏心カム31の回転軸と大リング用偏心カム32の回転軸とが、所定の間隔を空けてこの順で並ぶように回転軸部33に連結され、2個の大リング用偏心カム32が2個の持上部材22aの下方に配置されるとともに、2個の小リング用偏心カム31が2個の持上部材21aの下方に配置されている。
【0027】
モータ34は、制御部(図示せず)からの制御信号に基づいて回転軸部33を回転させるようになっており、回転軸部33の第一方向と上方(Z方向)とが一致した状態のときには、2個の小リング用偏心カム31が2個の持上部材21aの下面を上方(Z方向)に押圧するとともに、2個の大リング用偏心カム32が2個の持上部材22aの下面を上方(Z方向)に押圧するようになっている。また、回転軸部33の第二方向と上方(Z方向)とが一致した状態のときには、2個の大リング用偏心カム32が2個の持上部材22aの下面を上方(Z方向)に押圧し、2個の持上部材21aは押圧されないようになっている。さらに、回転軸部33の第一方向にも第二方向にも上方(Z方向)が一致しない状態のときには、2個の持上部材21aおよび持上部材22aのいずれも押圧されないようになっている。
【0028】
次に、電子天秤1の動作について説明する。電子天秤1は、被測定物計量時(通常時)には、第一内蔵分銅21と第二内蔵分銅22との荷重を可動柱61に負荷しない「無負荷状態」となっている。具体的には、回転軸部33の第一方向が上方(Z方向)と一致する状態、つまり、2個の小リング用偏心カム31が2個の持上部材21aの下面を上方(Z方向)に押圧するとともに、2個の大リング用偏心カム32が2個の持上部材22aの下面を上方(Z方向)に押圧する状態となっている。これにより、第一内蔵分銅21と第二内蔵分銅22がそれぞれ上方の所定位置に配置され、分銅受け部材61bの上面には、第一内蔵分銅21も第二内蔵分銅22も載置されていない状態となる。このとき、第一内蔵分銅21と第二内蔵分銅22とは、同一平面上に配置される。
【0029】
そして、電子天秤1は、「リニアリティ校正」を実行する制御信号が入力されると、まず、第一内蔵分銅21の荷重を可動柱61に負荷する「部分負荷状態」とする。具体的には、回転軸部33の第一方向が上方(Z方向)と一致した状態から90°右回りに回転させることにより、第二方向に上方(Z方向)が一致する状態、つまり、2個の小リング用偏心カム31が2個の持上部材21aを押圧せず、2個の大リング用偏心カム32が2個の持上部材22aの下面を上方(Z方向)に押圧する状態とする。これにより、第一内蔵分銅21が分銅受け部材61bの上面に載置されるとともに、第二内蔵分銅22が上方の所定位置に配置され、第一内蔵分銅21の荷重が計測される。
【0030】
次に、第一内蔵分銅21と第二内蔵分銅22との荷重を可動柱61に負荷する「全負荷状態」とする。具体的には、回転軸部33の第二方向が上方(Z方向)と一致した状態から90°右回りに回転させることにより、第一方向にも第二方向にも上方(Z方向)が一致しない状態、つまり、2個の小リング用偏心カム31が2個の持上部材21aを押圧せず、2個の大リング用偏心カム32も2個の持上部材22aを押圧しない状態とする。これにより、第一内蔵分銅21と第二内蔵分銅22とが分銅受け部材61bの上面に載置され、第一内蔵分銅21と第二内蔵分銅22の荷重が計測される。
【0031】
最後に、第一内蔵分銅21と第二内蔵分銅22との荷重を可動柱61に負荷しない「無負荷状態」とする。具体的には、回転軸部33の上方(Z方向)が第一方向にも第二方向にも一致しない状態から180°左回りに回転させることにより、第一方向に上方(Z方向)が一致する状態、つまり、2個の小リング用偏心カム31が2個の持上部材21aの下面を上方(Z方向)に押圧するとともに、2個の大リング用偏心カム32が2個の持上部材22aの下面を上方(Z方向)に押圧する状態とする。これにより、第一内蔵分銅21と第二内蔵分銅22がそれぞれ上方の所定位置に配置され、分銅受け部材61bの上面には、第一内蔵分銅21も第二内蔵分銅22も載置されていない状態となる。このとき、第一内蔵分銅21と第二内蔵分銅22とは、筐体10に設けられたガイド部材に案内され、常に所定位置へ配置される。
【0032】
以上のように、本発明の電子天秤1によれば、偏置誤差に影響されない位置に第一内蔵分銅21と第二内蔵分銅22とを配置しているので、リニアリティ校正の校正精度を向上させることができる。また、第一内蔵分銅21と第二内蔵分銅22とが近傍に配置されているため、分銅加除機構30の簡素化、小型化が可能となり、かつ、同軸に大リング用偏心カム32と小リング用偏心カム31とを設けることで、相対位置関係による可動域の調整が簡略化できるとともに単一動力源とすることができ、部品点数の削減や構成の簡略化、さらには制御機能の簡素化が実現可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の電子天秤は、例えば内蔵分銅により校正を行うように構成された電子天秤等に利用される。
【符号の説明】
【0034】
1 電子天秤
2 計量皿
21 第一内蔵分銅
22 第二内蔵分銅
30 分銅加除機構
60 センサ機構体(荷重伝達機構)
図1
図2
図3