(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
座席に着座した乗員の膝の前方に配置されるとともに、内部に膨張用ガスを流入させて膨張可能なエアバッグと、該エアバッグを折り畳んで収納させるケースと、を備えたエアバッグ組付体を、取付ブラケットを利用してボディ側に固定させる構成の膝保護用エアバッグ装置であって、
前記ケースが、前記ボディ側から延びるように配設される前記取付ブラケットに取り付けられる取付座部を、有する構成とされて、
前記取付座部が、取付孔の周縁を、固定手段を利用して、前記取付ブラケットに形成される固定座部の後面側に固定させることにより、前記エアバッグ組付体を前記ボディ側に固定させる構成とされて、
前記ケースが、前記取付ブラケットに形成される被懸架部の上縁側に懸架可能な懸架部を、前記取付ブラケット側に延びるように、配設させ、
前記ケースが、前記取付ブラケットに形成される被係合部に係合可能な係合部を、有する構成とされて、
該係合部が、前記懸架部を前記被懸架部に懸架させた状態での前記被係合部への係合時に、前記エアバッグ組付体の後方への回転と、左右方向側へのずれと、を抑制可能で、かつ、前記取付座部を前記固定座部の後面側に当接させて、前記取付座部に形成される取付孔を前記固定座部に形成される取付孔に一致可能に、形成され、
前記係合部及び前記被係合部が、
前記取付ブラケット若しくは前記ケースの一方から前後方向に略沿って延びるように形成されて、規制首部と、該規制首部の先端側に形成される係止頭部と、を有する係合片部と、
前記取付ブラケット若しくは前記取付座部の他方に形成されて、前記係止頭部を挿通可能な挿通用開口と、該挿通用開口に連通して形成されるとともに前記規制首部を挿通可能で前記係止頭部を周縁で係止可能な係止用開口と、を有する係合穴部と、
から構成され、
前記係止用開口が、内周面によって前記規制首部の左右方向側への相対移動を規制して、前記エアバッグ組付体の左右方向側へのずれを規制可能とし、かつ、周縁によって前記係止頭部を係止することにより、前記エアバッグ組付体の後方移動を規制可能に、構成されていることを特徴とする膝保護用エアバッグ装置。
前記取付座部と前記取付ブラケットと、が、前記ケースの左右両側となる位置に、形成され、それぞれ、対応させて、前記懸架部及び前記被懸架部と、前記係合部及び前記被係合部と、を備える構成とされていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の膝保護用エアバッグ装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。実施形態では、
図1,5に示すように、乗員としての運転者Dの膝K(KL,KR)を保護できるように、運転者Dの車両前方側であるステアリングコラム7の下方に配設される膝保護用エアバッグ装置(以下「エアバッグ装置」と省略する)Sを、例に採り、説明をする。なお、本明細書における上下、左右、及び、前後の方向は、特に断らない限り、エアバッグ装置Sを車両に搭載させた際の車両の上下・左右・前後の方向と一致するものである。
【0018】
ステアリングコラム7は、
図1,5に示すように、コラム本体8とコラム本体8の外周側を覆うコラムカバー11と、を備えている。コラム本体8は、
図1に示すように、メインシャフト9と、メインシャフト9の周囲を覆うコラムチューブ10と、から構成されている。
【0019】
エアバッグ装置Sは、エアバッグ組付体AMと、エアバッグ組付体AMをボディ1側に固定させる取付ブラケット100(100L,100R)と、からなり、エアバッグ組付体AMは、
図1〜3に示すように、折り畳まれたエアバッグ50と、エアバッグ50に膨張用ガスを供給するインフレーター28と、折り畳まれたエアバッグ50とインフレーター28とを収納するケース65と、折り畳まれたエアバッグ50の車両後方側を覆うエアバッグカバー16と、を備えて構成されている。
【0020】
エアバッグカバー16は、ポリオレフィン系の熱可塑性エラストマーから形成されて、ケース65の車両後方側を覆い可能に、構成されている。このエアバッグカバー16は、
図1〜3に示すように、アッパパネル12aとロアパネル12bとから構成されるインストルメントパネル(以下「インパネ」と省略する)12のロアパネル12b側に配設されている。エアバッグカバー16は、実施形態の場合、ケース65の突出用開口66a付近に配置される扉配設部17と扉配設部17の周囲に延びる周縁部25と、を備えて構成されている。
【0021】
扉配設部17は、ケース65の突出用開口66aを覆う扉部18と、扉部18の外周縁から前方に延びる周壁部20と、を備えている。扉部18は、ケース65の突出用開口66aの車両後方側を覆う略長方形板状とされている。実施形態では、扉部18は、周囲に、車両後方側から見て略H字形状とされる薄肉の破断予定部18a(
図5参照)と、上下両端側において開き時の回転中心となるヒンジ部18bと、を配設させて構成され、開き時に、上下両側に開く構成とされている。
【0022】
周壁部20は、
図2,3,6に示すように、扉部18の周縁から前方に向かって延びるように配置されるもので、元部側となる扉部18近傍の部位(後端側)を、ケース65の周壁部70の周方向側で連ならせるように略筒状とするとともに、先端側の部位を、コーナ部の部位で分離させた4枚の平板状として、構成されている。すなわち、周壁部20は、扉部18の周縁から突出して形成されるとともに、ケース65の周壁部70近傍に配置される4つの側壁部(上壁部21,下壁部22,左壁部23,右壁部24)を、備える構成とされている。周壁部20において、上下方向側で対向するように配置される上壁部21と下壁部22とは、ケース65の後述する上壁部71,下壁部72に取り付けられる構成である。周壁部20において、左右方向側で対向するように配置される左壁部23と右壁部24とは、実施形態の場合、ケース65の周壁部70の内周側を覆うように、配置される構成である(
図3参照)。
【0023】
上壁部21及び下壁部22は、
図2,4に示すように、ケース65の周壁部70における上壁部71,下壁部72の外周側に、それぞれ、隣接して配置されるもので、上壁部71,下壁部72に形成される係止爪部71a,72aを周縁で係止させるための略長方形状に開口した係止孔21a,22aを、係止爪部71a,72aに対応して、それぞれ、左右方向に沿った5箇所ずつに、配置させている。左壁部23及び右壁部24は、ケース65の周壁部70における左壁部74L,右壁部74Rの内周側に、それぞれ、隣接して配置されている(
図3参照)。実施形態の場合、左壁部23,右壁部24は、
図4に示すように、ケース65の周壁部70における突出用開口66aの周縁部位70aのコーナ部70b付近の内周側を覆うように、構成されている。詳細には、実施形態の場合、各左壁部23,右壁部24は、元部側部位23a,24aの上下方向の幅寸法を、ケース65における上壁部71と下壁部72との離隔距離よりもわずかに小さく設定されて、
図4に示すように、元部側部位23a,24aによって、ケース65の左壁部74L,右壁部74Rの内周側を、上下の略全域にわたって覆い可能な構成とされている。そして、この各左壁部23,右壁部24の元部側部位23a,24aにおいて、上下の端縁近傍の部位が、コーナ部70b付近の内周側を覆うように、配置されることとなる。また、実施形態の場合、各左壁部23,右壁部24は、突出用開口66aから離れる先端23b,24b側にかけて上下の幅寸法を小さくするように構成され(
図6参照)。先端23b,24bを、左壁部74Lと右壁部74Rとにおいて、それぞれ、後述する先端側部74dと傾斜部74cとの境界部位付近に配置させるように、構成されている(
図3参照)。
【0024】
また、上述したように、周壁部20は、扉部18の周縁から前方に向かって延びるように配置されるもので、
図6に示すように、元部側となる扉部18近傍の部位(後端側)を、ケース65の周壁部70の周方向側で連ならせるように略筒状として、相互に分離される先端側の部位によって、上壁部21,下壁部22,左壁部23,右壁部24を、構成している。すなわち、周壁部20は、上壁部21,下壁部22と、左壁部23,右壁部24と、の間に、ケース65の周壁部70におけるコーナ部70b付近の部位を挿通可能なスリット状の切れ目を有し、扉部18近傍の部位に、この切れ目から連なるようにして、ケース65の周壁部70における突出用開口66aの周縁部位70aのコーナ部70b付近の部位を挿入可能な凹部20aを、配設させる構成である(
図6参照)。エアバッグカバー16における周縁部25は、扉配設部17の周縁に全周にわたって配置されるもので、後面側を扉部18と略面一として、扉部18から外方に延びるように、形成されている(
図2,3参照)。
【0025】
インフレーター28は、
図2,3に示すように、外形形状を略円柱状としたインフレーター本体29と、インフレーター本体29を保持するリテーナ37と、を備える構成とされている。
【0026】
インフレーター本体29は、軸方向を左右方向に略沿わせて配置される略円柱状とされて、大径の本体部30と、本体部30の左右方向の一端側から突設される小径のガス吐出部31と、を備えて構成されている。実施形態の場合、ガス吐出部31は、本体部30の左端側に、配置されている。本体部30における右端側には、作動信号入力用のリード線35を結線させたコネクタ34を接続させるための接続口部32が、形成されている(
図3参照)。実施形態のインフレーター本体29では、本体部30において、接続口部32側となる右端側部位30aが、中央側部位30dより僅かに小径として、構成されている。また、実施形態のインフレーター本体29では、接続口部32は、本体部30の右端側部位30aより小径とされて、本体部30の右端面30cから右方に突出するように、形成されている(
図3参照)。
【0027】
リテーナ37は、
図2,3,16に示すように、インフレーター本体29を保持する保持部38と、保持部38の軸方向と略直交するように突設される2つのボルト46L,46Rと、を備えて構成されている。ボルト46L,46Rは、車両搭載時に、ケース65の底壁部67から、車両前方側に向かって突出するように、配置されている。
【0028】
保持部38は、板金製として、
図16に示すように、インフレーター本体29を保持する筒状部39と、筒状部39の左端側から左方に延びる板状部44と、を備えている。板状部44は、ケース65の底壁部67に略沿うような平板状とされており、実施形態の場合、左側のボルト46Lは、板状部44から突出するように、配置されている。保持部38において、車両搭載時のインフレーター本体29の前側となる位置であって、ボルト46L,46R間の部位には、ケース65の底壁部67に形成される支持突起68を挿通させるための貫通穴38aが、形成されている。また、筒状部39において、車両搭載時にインフレーター本体29における本体部30の後方側に配置される部位には、車両搭載時に、本体部30における中央側部位30dの外周面30eと当接する当接部40が、形成されている。この当接部40は、
図3,16に示すように、右側のボルト46Rを間に挟むようにして、ボルト46Rの左方と右方となる2箇所に、形成されている。各当接部40は、
図2,16に示すように、前後方向に沿った断面における後側半分の領域に、略上下方向に沿って併設される2つの突起41,41を、配設させている。各突起41は、筒状部39を部分的にインフレーター本体29側に凹ませるようにして、換言すれば、インフレーター本体29に向かって突出させるようにして、形成されるもので、外形形状を略半円弧状として、先端面41aを、インフレーター本体29の本体部30における中央側部位30dの外周面30eと当接させるように、構成されている(
図2参照)。
【0029】
また、筒状部39における左端近傍には、内部にインフレーター本体29を挿入させた際のインフレーター本体29の位置決めとなる突出片42が、内周側に突出するように、形成されている。この突出片42は、
図3に示すように、インフレーター本体29の本体部30におけるガス吐出部31側の端面(左端面30f)に当接されて、本体部30の左方への移動を規制して、リテーナ37内におけるガス吐出部31の位置を決めるためのものである。さらに、筒状部39における右端側には、後述するインフレーター挿入用の開口スリット53から、リテーナ37をエアバッグ50内に収納させてエアバッグ50を折り畳んだ際に、この開口スリット53から突出するように配置される係止爪部43が、形成されている(
図2参照)。この係止爪部43は、車両搭載時における後縁側から後方に突出して、先端側を上方に向けるように屈曲された略L字形状とされている。実施形態のエアバッグ装置Sでは、組立作業時において、リテーナ37を内部に収納させた状態でエアバッグ50を折り畳んだ後、インフレーター本体29を、開口スリット53からエアバッグ50内に挿入させて、リテーナ37の保持部38(筒状部39)内に挿入させる構成であり、この係止爪部43は、エアバッグ50内に収納させたリテーナ37の保持部38が開口スリット53に対して位置ずれすることを防止するために、配設されている。
【0030】
そして、実施形態のエアバッグ装置Sでは、インフレーター本体29をエアバッグ50内に配置されるリテーナ37の保持部38に収納させて、エアバッグ50をケース65内に収納させる際に、リテーナ37のボルト46をケース65の底壁部67から突出させて、ボルト46にナット47を締結させることにより、インフレーター28とエアバッグ50とをケース65に取り付ける構成である。詳細には、インフレーター本体29は、このナット47の締結時に、ケース65の底壁部67に形成される支持突起68と、ケース65の右壁部74Rのコネクタ用開口76の前縁側に形成されるガイド部78と、リテーナ37の保持部38に形成される当接部40,40と、により、挟持されて、リテーナ37に保持されることとなる。
【0031】
エアバッグ50は、実施形態の場合、可撓性を有したポリエステルやポリアミド糸等からなる織布から形成されるもので、膨張完了時の形状を、
図5の二点鎖線に示すように、略長方形板状として、運転者Dの左右の膝K(KL,KR)を保護可能に構成されている。実施形態の場合、エアバッグ50は、
図17に示すように、膨張完了時にケース65内に配置される取付部51と、取付部51より左右に幅広とされて膨張完了時に運転者Dの膝K(KL,KR)を保護する保護膨張部56と、を備えて構成されている。
【0032】
取付部51には、
図17に示すように、2つの挿通孔52,52と、開口スリット53と、貫通穴54と、が、形成されている。挿通孔52,52は、リテーナ37の各ボルト46を挿通させるためのものである。開口スリット53は、リテーナ37とインフレーター本体29とをエアバッグ50の内部に挿入させるためのものであり、エアバッグ50を単体で平らに展開した状態では、左右方向に略沿った直線状とされている。貫通穴54は、ケース65の底壁部67に形成される支持突起68を挿通させるためのものであり、挿通孔52,52間に、形成されている。
【0033】
また、実施形態のエアバッグ50では、内部に、膨張完了時の厚さを規制するような2つのテザー58,59が、上下で離隔されて、それぞれ、左右方向に略沿うように、配置されている(
図17参照)。テザー58は、取付部51と保護膨張部56とを区画するように配置され、テザー59は、保護膨張部56の領域を上下で区画するように配置されている。各テザー58,59には、膨張用ガスを流通可能な複数のガス流通孔58a,59aが、形成されている。
【0034】
ケース65は、板金製とされるもので、
図2,3,7〜11に示すように、折り畳まれたエアバッグ50とインフレーター28とを収納させるケース本体66と、ケース本体66をボディ1側から延びる取付ブラケット100(100L,100R)に取り付けるための取付座部85(85L,85R)と、を備える構成とされている。
【0035】
ケース本体66は、
図3,7に示すように、車両前方側に配置される略四角形状の底壁部67と、底壁部67の周縁から前後方向に略沿って後方に延びる略四角筒形状の周壁部70と、を有して、周壁部70の後端側に、エアバッグ50を突出可能な突出用開口66aを有した略箱形状とされている。突出用開口66aは、実施形態の場合、
図2に示すように、開口面を、上側を後方に位置させ、下側を前方に位置させるように、上下方向に対して後上がりで傾斜されている。実施形態の場合、ケース本体66は、左右方向側の幅寸法を大きく設定される扁平な略箱形状とされている。
【0036】
底壁部67は、詳細に説明すれば、左右に幅広の略長方形板状とされるもので、リテーナ37に配設されるボルト46(46L,46R)を挿通させるための挿通孔67a,67aを、左右方向に沿った2箇所に、配設させている。また、底壁部67において、挿通孔67a,67a間の略中央となる位置には、ボルト46の突出方向に略沿ってケース本体66の内側(インフレーター28側)に突出するように、支持突起68が、形成されている。この支持突起68は、略円錐台形状とされるもので、車両搭載時において、略平面状の先端部68aを、インフレーター本体29の本体部30における中央側部位30dの外周面30eに当接させることにより、インフレーター本体29を支持可能な構成とされている(
図3,8参照)。この支持突起68は、底壁部67の左右の略中央となる位置に、形成されている。
【0037】
周壁部70は、上下方向で対向して配置される上壁部71,下壁部72と、上壁部71,下壁部72間を連結するように左右方向で対向して配置される左壁部74L,右壁部74Rと、を備えている。上壁部71,下壁部72は、エアバッグカバー16の上壁部21,下壁部22を取り付ける部位であり、突出用開口66a側の縁部付近となる後端近傍に、上壁部21,下壁部22に形成される係止孔21a,22a周縁を係止するための係止爪部71a,72aを、配置させている。各係止爪部71a,72aは、上下の外方側へ突出しつつ先端を底壁部67側(車両前方側)に向けるように屈曲させて構成されるもので、実施形態の場合、上壁部71,下壁部72に、それぞれ、左右方向に沿った5個ずつ、形成されている。
【0038】
左壁部74L,右壁部74Rは、実施形態の場合、左右対称形として構成されている。実施形態では、インフレーター本体29のコネクタ34側に配置される右壁部74Rを例に採り、詳細に説明する。
【0039】
右壁部74Rは、底壁部67側(前端側)を左右方向の内方(左方)に位置させ、突出用開口66a側(後端側)を左右方向の外方(右方)に位置させるように、段差を有して構成されている。詳細に説明すれば、右壁部74Rは、
図8に示すように、水平方向に沿った横断面において、前後方向に略沿って配置される前側の元部側部74aと、後側の先端側部74dとの間に、屈曲して形成される段差部74bと、段差部74bから連なって先端側部74dに向かって傾斜する傾斜部74cと、を配置させて、段差を有する構成とされている。段差部74bは、元部側部74aから連なって、後側部位74baを左右の外方に向けるように段差状に形成され、傾斜部74cは、段差部74bの後側部位74baから連なる前端側を左右の内方に向け、先端側部74dに連なる後端側を左右の外方に向けるように、傾斜して形成されている。また、右壁部74Rは、突出用開口66aの周縁を構成する後縁74e側を、突出用開口66aの開口面に沿って、上側を後方に位置させ、下側を前方に位置させるように、上下方向に対して後上がりで傾斜させて構成されている。
【0040】
この右壁部74Rには、インフレーター28をケース65に取り付けた状態で、接続口部32にコネクタ34を接続可能に、接続口部32を露出可能とされるコネクタ用開口76が、形成されている。このコネクタ用開口76は、
図9に示すように、段差部74bをまたぐように、元部側部74aから先端側部74dにかけて形成されるもので、詳細には、元部側部74aから段差部74bの中間部位にかけての領域に形成される開口本体77と、段差部74bの後端側から先端側部74dにかけての領域に形成される補助開口81と、を備えている。
【0041】
開口本体77は、
図9に示すように、右方から見た状態で、上下方向側に幅広として、前縁77a側を、後方側(突出用開口66a側)にかけて拡開するように、湾曲させて構成されている。この開口本体77は、インフレーター本体29における接続口部32のみを挿通可能で、インフレーター本体29自体(本体部30)を挿通不能な大きさに、設定されている。具体的には、開口本体77は、上下方向側の開口幅寸法を、インフレーター本体29における右端側部位30aの外径寸法より大きくして、右端側部位30aの半分程度の領域を露出可能に、構成されている(
図9の二点鎖線参照)。そして、開口本体77において湾曲している前縁77a側には、インフレーター28をケース65に取り付ける際に、インフレーター本体29を後述する突出片82による抜け止め位置に案内するガイド部78が、形成されている。このガイド部78は、開口本体77の前縁77aに形成されるもので、インフレーター本体29の軸直交方向側となる上下方向側で対向するように配置されるとともに、底壁部67側に向かって離隔距離を縮めるように配置される2つのガイド面79を、備えている。このガイド面79は、換言すれば、ボルト46のナット47締結時におけるインフレーター本体29の移動方向に向かって、離隔距離を縮めるように形成されるもので、実施形態の場合、上下方向側で略対称的に、傾斜して配置されている。そして、このガイド面79は、ボルト46のナット47締結時に、インフレーター本体29の接続口部32側となる右端側部位30aの外周面30bとの当接状態を維持しつつ、インフレーター本体29における接続口部32側となる右端側部位30aの外周面30b側の部位を摺動可能に、構成されている。
【0042】
補助開口81は、開口本体77よりも上下方向側の開口幅寸法を小さく設定される略長方形状として、開口本体77と連通されて後方(突出用開口66a側)に延びるように、形成されている。この補助開口81も、開口幅寸法を、インフレーター本体29の接続口部32を挿通可能な寸法に、設定されている。
【0043】
そして、実施形態では、コネクタ用開口76の周縁において、補助開口81と開口本体77との境界部位付近の部位が、インフレーター28の抜け止め用の突出片82を、構成している。この突出片82は、リテーナ37に形成されるボルト46の軸直交方向側(上下方向側)で対向する2箇所に、形成されるもので、右壁部74Rにおける段差部74bの後端側の領域(後側部位74ba)に、形成されている(
図8,9参照)。すなわち、突出片82は、
図8に示すように、右壁部74Rにおける元部側部74aの領域に配置されるガイド部78よりも、インフレーター28(インフレーター本体29)の軸方向に沿った外方側(左右方向の外方側)に配置されるもので、ボルト46にナット47を締結させて、インフレーター28をケース65に取り付けた際に、右端側部位30aの外周面30b側の部位をガイド部78に支持された状態のインフレーター本体29の接続口部32周縁の右端面30cを押え可能に、構成されている。なお、詳細な図示は省略するが、実施形態のケース本体66では、左壁部74Lにも、
図3に示すように、コネクタ用開口76が形成されており、このコネクタ用開口76は、右壁部74Rに形成されるコネクタ用開口76と同様の構成とされている。
【0044】
ケース65(エアバッグ組付体AM)をボディ1側に取り付ける取付座部85(85L,85R)は、
図3,5,7に示すように、ケース65の左右両側となる位置に、形成されている。実施形態の場合、各取付座部85(85L,85R)は、ケース本体66における左壁部74L,右壁部74Rの後縁74eにおいて、それぞれ、左右の外方に向かって延びるように、形成されている。すなわち、実施形態では、各取付座部85(85L,85R)は、左壁部74L,右壁部74Rの後縁74e(突出用開口66aの開口面)に沿って、上側を後方に位置させ、下側を前方に位置させるように、上下方向に対して後上がりで傾斜されている。各取付座部85(85L,85R)は、実施形態の場合、板金素材を屈曲させるようにして、左壁部74L,右壁部74Rと一体的に形成されている。これらの取付座部85(85L,85R)も、左右対称形とされている。
【0045】
各取付座部85は、
図10に示すように、左壁部74L,右壁部74Rの後縁74eの略全域から左右の外方に向かって延びて、左右の外方側(先端側)にかけて狭幅とされるように、略台形の略平板状として、構成されるもので、左右の外方側であって、かつ、上側となる上外端側に、固定手段としてのボルト111を挿通可能な取付孔89を、備えている。取付座部85Rの上縁86側には、取付ブラケット100に形成される被懸架部105の上縁側に懸架可能とされる懸架部90が、形成されている。また、取付座部85の下縁87側には、取付ブラケット100に形成される係合片部107(被係合部)を係合可能な係合部としての係合穴部93が、形成されている。
【0046】
懸架部90は、詳細には、取付座部85の上縁86側において、取付孔89の略直上となる位置に配置されるもので、取付座部85の上縁86から上方に突出するとともに、先端90bを取付ブラケット100側となる前方に向けるように、屈曲されて構成されている。詳細には、実施形態の場合、懸架部90は、幅方向を上下方向に略沿わせるように形成されている。すなわち、懸架部90は、
図9,11に示すように、左右の側方から見て略L字形状とされており、先端90b側に、被懸架部105に係止される係止突起91を、下方に突出させている。この係止突起91は、懸架部90の下面90aを被懸架部105の上面(上縁)105aに当接させた状態で、被懸架部105の前上端側となる端縁105bに係止可能に、構成されている(
図14参照)。実施形態では、懸架部90は、ケース65を左右方向側から見た状態で、ケース65の後上端側に配設されるものであり、換言すれば、エアバッグ組付体AMの重心GPよりも後上端側となる位置に、配設されている(
図18参照)。すなわち、実施形態では、懸架部90は、取付ブラケット100に形成される被懸架部105に懸架させてエアバッグ組付体AMを仮固定させた際に、被懸架部105の端縁105bに係止される係止突起91付近の部位を支点SPとして、エアバッグ組付体AMに後方側への回転モーメントM(
図18の二点鎖線参照)を発生可能な位置に、形成されている。
【0047】
係合部としての係合穴部93は、
図10に示すように、取付座部85の下縁87側において、取付孔89の略直下となる位置に、形成されている。すなわち、実施形態では、係合穴部93は、懸架部90の略直下となる位置に、形成されている。係合穴部93は、取付座部85の下縁87側から略長方形状に切り欠かれて下端側を開口させている凹部93aを備えるもので、取付座部85の下縁87は、この凹部93aにおける左右の内方となる内側部位87aと、凹部93aにおける左右の外方となる外側部位87bと、を、ともに、凹部93aにかけて上方に向かって傾斜させるように、構成されている。実施形態の場合、凹部93aは取付座部85の左右の中央より外方となる位置に形成されていることから、外側部位87bは、内側部位87aよりも長さ寸法を小さく設定され、また、上下方向に対する傾斜角度を、内側部位87aよりも大きく設定されている(
図10参照)。そして、実施形態の係合穴部93では、取付座部85の下縁87側から略長方形状に切り欠かれている凹部93aが、係止用開口94を構成し、係止用開口94(凹部93a)の下方において、係止用開口94(凹部93a)と連通されて、取付座部85の下縁87におけるテーパ状の内側部位87aと外側部位87bとによって囲まれる領域が、挿通用開口96とされている。すなわち、実施形態の係合穴部93では、挿通用開口96は、下方を開口させた略台形状の領域から、構成されている。挿通用開口96は、取付ブラケット100側に形成される係合片部107の係止頭部109を挿通可能に構成されるもので、取付座部85における下縁87の内側部位87aと外側部位87bとの内周面が、係止用開口94にかけてテーパ状とされる挿通用開口96の内周面96aを構成している。この挿通用開口96のテーパ状の内周面96aは、係合片部107挿入用のガイド面を構成することとなり、挿通用開口96に挿通させた規制首部108を係止用開口94側となる上方に移動させれば、自動的に、係止用開口94側に案内可能に構成されている。係止用開口94は、開口幅寸法H1(
図10参照)を、係合片部107における規制首部108を挿通可能で、かつ、係止頭部109を挿通不能な大きさに、設定されており、
図14に示すように、内周面94aによって、規制首部108の左右方向側への相対移動を規制可能とし、かつ、周縁95によって、係止頭部109の前後方向側への相対移動を規制可能に、構成されている。
【0048】
取付ブラケット100(100L,100R)は、実施形態の場合、
図5に示すように、ボディ1側のインパネリインフォースメント2から延びるように形成されるもので、先端側(下端100a側)に、ケース65の取付座部85L,85Rを固定させるための固定座部101(101L,101R)を、備えている。この固定座部101(101L,101R)も、実施形態の場合、左右対称形とされている。
【0049】
各固定座部101は、
図3,14に示すように、取付座部85を後面102側で当接可能に構成されるもので、取付座部85に沿うように、後面102側を、上側を後方に位置させ、下側を前方に位置させるように、上下方向に対して後上がりで傾斜させて、形成されている。実施形態の場合、固定座部101は、平板状の板金素材を曲げ加工して、形成されている。固定座部101には、
図12,13に示すように、固定手段としてのボルト111を挿通可能な取付孔103と、取付孔103の前面側周縁に固着されてボルト111を螺合させるナット104と、が、形成されている。また、固定座部101Rには、ケース65の取付座部85に形成される懸架部90を懸架可能な被懸架部105と、取付座部85に形成される係合穴部93に係合可能な被係合部としての係合片部107と、が、配設されている。
【0050】
実施形態の固定座部101は、強度を確保するために、上縁101a側を、端縁を前方に向けるように湾曲させて構成されるもので、この固定座部101における上縁101a側の部位が、懸架部90を懸架可能な被懸架部105を構成している。すなわち、被懸架部105は、
図13に示すように、先端を前方に向けるように屈曲して配置される構成であり、上面105a(上縁)側に懸架部90の下面90aを当接させ、先端(前端)側の端縁105bによって、懸架部90の先端90b側に形成される係止突起91を係止させることにより、懸架部90を懸架させる構成である(
図14,18,19参照)。
【0051】
被係合部としての係合片部107は、固定座部101の下縁101bから固定座部101の後面102に略沿うように、斜め前下方に延びるように形成されている(
図13,14参照)。すなわち、係合片部107は、固定座部101の下縁101bから前後方向に略沿って延びるように形成されている。係合片部107は、
図12,13に示すように、固定座部101の後面102に沿って固定座部101から連なるように延びる規制首部108と、規制首部108の先端108a側に形成される係止頭部109と、を備える構成とされている。
【0052】
規制首部108は、幅方向を左右方向に略沿わせた略帯状として構成されて、幅寸法W1(
図12参照)を、係合穴部93の係止用開口94に挿通可能な寸法に、設定されている。この係合片部107の規制首部108は、係止用開口94に挿通されることにより、係止用開口94の内周面94aによって左右方向側への相対移動を規制されるもので、幅寸法W1を、係止用開口94の開口幅寸法H1より若干小さく設定されて、係止用開口94への挿通時に、内周面94aとの間に大きな隙間を生じさせないように、構成されている(
図14参照)。また、実施形態の場合、規制首部108の先端108a(下端)側は、係止頭部109を取付座部85R側となる後方側に突出させるように、屈曲されている。
【0053】
係止頭部109は、規制首部108の先端108a(下端)側から左右両側に突出するように形成されるもので、左右方向側に幅広とした略長方形板状とされている。実施形態の場合、係止頭部109は、規制首部108から後方に突出するように、形成されている。詳細には、係止頭部109は、左右方向側から見て、規制首部108に対して、略直交して後方に突出するように、形成されている(
図13参照)。すなわち、係止頭部109は、固定座部101及び取付座部85に対して、略直交して配置されるように、形成されている(
図14,18,19参照)。この係止頭部109は、左右方向側の幅寸法W2(
図12参照)を、係止用開口94の開口幅寸法H1より大きく設定されて、係止用開口94の周縁95に係止可能に構成されている。詳細には、係止頭部109は、規制首部108を係止用開口94に挿通させた状態で、前縁109aを係止用開口94の周縁95の後面95a側に当接させるようにして、係止用開口94の周縁95に係止される構成である(
図14参照)。実施形態では、この係止頭部109の係止用開口94の周縁95への係止により、懸架部90を被懸架部105に懸架された状態のエアバッグ組付体AMの後方への回転移動を規制することができ、また、エアバッグ組付体AMの左右方向側へのずれも規制することができる。そして、実施形態では、エアバッグ組付体AMを、懸架部90を被懸架部105に懸架させ、係止頭部109を係止用開口94の周縁95に係止させるようにして、ボディ1側から延びる取付ブラケット100に仮固定させれば、
図19に示すように、取付座部85が、固定座部101の後面102側に当接されることとなり、取付座部85に形成される取付孔89が、固定座部101に形成される取付孔103に、一致して配置されることとなる。
【0054】
次に、実施形態のエアバッグ装置Sを構成するエアバッグ組付体AMの組み立てについて、説明をする。まず、リテーナ37を、ボルト46を挿通孔52から突出させるようにして、開口スリット53からエアバッグ50内に収納させる。そして、筒状部39に形成される係止爪部43を、開口スリット53から突出させた状態で、エアバッグ50を、ケース65内に収納可能とするように折り畳み、折り崩れ防止用の破断可能な図示しないラッピング材により、周囲をくるんでおく。このとき、開口スリット53周縁の部位は、ラッピング材から露出させておく。
【0055】
次いで、インフレーター本体29を、開口スリット53を経て、ガス吐出部31側からエアバッグ50内(リテーナ37の筒状部39内)に挿入させる。このとき、本体部30の左端面30fが、リテーナ37の筒状部39に形成される突出片42に当接するまで、インフレーター本体29を挿入させる。その後、底壁部67からボルト46を突出させるようにして、折り畳まれたエアバッグ50とインフレーター28とを、ケース本体66内に収納させ、底壁部67から突出しているボルト46にナット47を締結させて、エアバッグ50とインフレーター28とをケース本体66に取り付ける。このナット47の締結時に、リテーナ37は、インフレーター本体29の外周側を覆っている筒状部39を、底壁部67側へ移動させることとなる。そして、底壁部67に形成される支持突起68が、先端部68aをインフレーター本体29における本体部30の中央側部位30dの外周面30eに当接されるようにして、インフレーター本体29を、逆に、車両後方側へ押圧するような態様となり、筒状部39に形成される当接部40の各突起41の先端面41aに、インフレーター本体29における本体部30の中央側部位30dの外周面30eが当接されることとなる。さらに、このとき、インフレーター本体29の本体部30において、接続口部32側となる右端側部位30aが、ケース65の右壁部74Rに形成されるコネクタ用開口76における開口本体77の前縁77a側に形成されるガイド部78のガイド面79,79に、外周面30bを当接され、外周面30bとガイド面79,79との当接状態を維持しつつ、インフレーター本体29が、底壁部67側に移動して、ガイド部78に支持されることとなる。そして、インフレーター本体29は、本体部30における中央側部位30dを、車両後方側に配置される4個の突起41の先端面41aと、車両前方側に配置される1個の支持突起68の先端部68aと、によって挟持されることにより、リテーナ37に保持されつつ、右端側部位30aの車両前方側を、ガイド部78によって支持されることにより、ケース本体66に取り付けられることとなる。
【0056】
その後、各左壁部23,右壁部24を周壁部70内に挿入させ、凹部20a内に、ケース本体66の周壁部70における突出用開口66aの周縁部位70aのコーナ部70bを挿入させつつ、エアバッグカバー16を、扉部18によって突出用開口66aを覆うように、ケース本体66の外周側に配置させ、各係止爪部71a,72aを、係止孔21a,22aの周縁に係止させて、エアバッグカバー16をケース本体66に組み付ければ、エアバッグ組付体AMを、組み立てることができる。
【0057】
そして、上記のようにして組み立てたエアバッグ組付体AMにおいて、ケース65の各取付座部85L,85Rに形成される懸架部90を、ボディ1側から延びる各取付ブラケット100L,100Rの固定座部101L,101Rに形成される被懸架部105に懸架させつつ、同時に、この懸架部90の部位付近を中心としつつ、エアバッグ組付体AMを前下方に回転させるようにして、係合片部107の係止頭部109と規制首部108とを係合穴部93の挿通用開口96に挿通させ、規制首部108を係止用開口94に挿通させる。そして、係止頭部109を係止用開口94の周縁95に係止させれば、
図18に示すように、エアバッグ組付体AMをボディ1側から延びる取付ブラケット100に仮固定させることができる。このとき、各取付座部85は、
図19に示すように、各固定座部101の後面102側に当接されて、取付孔89を、各固定座部101に形成される取付孔103に一致させるように、配設されることとなる。その後、取付孔89,103に固定手段としてのボルト111を挿通させ、取付孔103の裏面側に固着されるナット104に締結させれば、
図3,14に示すように、取付座部85における取付孔89の周縁を、固定座部101の後面102側に固定させることができて、エアバッグ組付体AMをボディ1側に固定させることができる。そして、ケース65のコネクタ用開口76から露出しているインフレーター本体29の接続口部32に、エアバッグ作動回路から延びるリード線35を結線させたコネクタ34を接続させる。その後、インパネ12やアンダーカバー13(
図1,2参照)を取り付ければ、エアバッグ装置Sを車両に取り付けることができる。
【0058】
エアバッグ装置Sの車両への搭載後、リード線35を経て、インフレーター本体29に作動信号が入力されれば、インフレーター本体29のガス吐出口31aから膨張用ガスが吐出されて、エアバッグ50内に流入することとなる。そして、エアバッグ50は、内部に膨張用ガスを流入させて膨張し、図示しないラッピング材を破断するとともに、エアバッグカバー16の扉部18を押圧し、扉部18が、周囲の破断予定部18aを破断させつつ、ヒンジ部18bを回転中心として上下に開くこととなる。そして、エアバッグ50が、ケース本体66の突出用開口66aから車両後方側に向かって突出し、
図1,5の二点鎖線に示すように、膨張を完了させることとなる。
【0059】
そして、実施形態のエアバッグ装置Sでは、ケース65に形成される取付座部85を、ボディ1側から延びるように配設される取付ブラケット100に取り付けることにより、エアバッグ組付体AMをボディ1側に取り付ける構成であり、このエアバッグ組付体AMは、ケース65に形成される懸架部90を取付ブラケット100に形成される被懸架部105の上面105a(上縁)側に懸架させ、同時に、ケース65に形成される係合部としての係合穴部93を、取付ブラケット100に形成される被係合部としての係合片部107と、係合させることによって、取付ブラケット100に仮固定された状態で、取付座部85に形成される取付孔89の周縁を、固定手段としてのボルト111を使用して、取付ブラケット100に形成される固定座部101の後面102側に固定させることにより、ボディ1側に固定される構成である。そして、実施形態のエアバッグ装置Sでは、懸架部90は、取付ブラケット100に形成される被懸架部105の上面105a(上縁)側に懸架されることにより、エアバッグ組付体AMの下方への移動を規制し、係合部としての係合穴部93は、被係合部としての係合片部107と、係合されることにより、取付ブラケット100に対するエアバッグ組付体AMの後方への回転と、左右方向側へのずれと、を抑制可能に構成されている。そのため、エアバッグ組付体AMを、下方への移動や後方への回転に加えて、左右方向側へのずれも抑制された状態で、取付ブラケット100に対して仮固定することができる。その結果、実施形態のエアバッグ装置Sでは、エアバッグ組付体AMのボディ1側への固定作業時に、懸架部90及び被懸架部105と、係合穴部93及び係合片部107と、を利用して、取付ブラケット100に仮固定すれば、エアバッグ組付体AMを手等により支えなくても、エアバッグ組付体AMの取付ブラケット100に対する位置を安定させることができ、取付座部85を固定座部101の後面102側に当接させて、取付座部85に形成される取付孔89を固定座部101に形成される取付孔103に一致させることが可能となって、固定手段としてのボルト111を用いたエアバッグ組付体AMのボディ1側への固定作業を、円滑に行うことができる。
【0060】
したがって、実施形態のエアバッグ装置Sでは、ボディ1側への固定時に、エアバッグ組付体AMを安定して仮固定させることができて、ボディ1側への固定時の作業性が良好である。
【0061】
具体的には、実施形態のエアバッグ装置Sでは、係合部及び被係合部が、係合片部107と係合穴部93とから構成されている。係合片部107は、規制首部108と、規制首部108の先端108a側に形成される係止頭部109と、を備えている。係合穴部93は、係止頭部109を挿通可能な挿通用開口96と、挿通用開口96に連通して形成されるとともに規制首部108を挿通可能で係止頭部109を周縁95で係止可能な係止用開口94と、を備えている。また、この係止用開口94は、内周面94aによって規制首部108の左右方向側への相対移動を規制して、エアバッグ組付体AMの左右方向側へのずれを規制可能とし、かつ、周縁95によって係止頭部109を係止することにより、エアバッグ組付体AMの後方移動を規制可能に、構成されている。
【0062】
そのため、実施形態のエアバッグ装置Sでは、規制首部108を係合穴部93の挿通用開口96を経て係止用開口94に挿入させることにより、係止用開口94の内周面94aによって規制首部108の左右方向側への相対移動を規制できて、エアバッグ組付体AMの左右方向側へのずれを抑制可能であり、また、規制首部108の先端108a側に配置される係止頭部109を係止用開口94の周縁95に係止させることによって、エアバッグ組付体AMの後方への回転規制することができる。また、実施形態のエアバッグ装置Sでは、係合片部107を、規制首部108と係止頭部109とを挿通用開口96に挿入させるように差し込み、その後、規制首部108を係止用開口94に挿入させるように移動させるだけで、係止頭部109を係止用開口94の周縁95に係止させることができることから、係合作業が容易であり、周辺に多くの部品が近接して配置され、作業スペースが狭い場合にも、仮固定作業を円滑に行うことができる。
【0063】
また、実施形態のエアバッグ装置Sでは、係止頭部109を、規制首部108の先端108a側から、左右両側に突出するように形成していることから、係止用開口94の周縁95に左右に幅広の領域で係止させることができて、係止用開口94の周縁95に一層強固に係止させることが可能となる。なお、実施形態では、係止頭部109は、規制首部108の先端108a側から、左右両側に突出するように形成されているが、係止頭部を、規制首部の先端側から左右方向のどちらか一方に、突出させるように構成してもよい。さらに、例えば、係止用開口を、挿入用凹部から離れた先端側にかけて開口幅寸法を狭めるようなテーパ状として構成すれば、係止頭部を、規制首部から左右に突出させなくともよく、規制首部と幅寸法を略同一とされる規制首部の先端側の部位から係止頭部を構成して、この係止用開口の先端側の狭幅の領域の周縁に、係止させる構成としてもよい。
【0064】
さらに、実施形態のエアバッグ装置Sでは、係合穴部93を、ケース65側に形成しており、換言すれば、係合片部107が、取付ブラケット100側において、周囲から突出して、配置される構成である。そのため、係合片部をケース側に設ける場合と比較して、エアバッグ組付体AMの取付ブラケット100への仮固定作業時に、作業者が係合片部107を目視しやすく、仮固定作業が一層容易となる。特に、実施形態のエアバッグ装置Sでは、係止頭部109が、規制首部108に対して屈曲して配置されて、規制首部108から車両後方側に向かって突出するように、形成されていることから、係合片部107の係合穴部93への係合作業が一層容易である。なお、上記のような点を考慮しなければ、係合片部をケース側に形成し、係合穴部を取付ブラケット側に形成する構成としてもよい。
【0065】
さらにまた、実施形態のエアバッグ装置Sでは、係合穴部93における挿通用開口96が、内周面96aを、係止用開口94にかけてテーパ状として構成されて、係合片部107挿入用のガイド面としており、ケース65の下方移動時に、規制首部108を、挿通用開口96に挿入させ、相対的に係止用開口94側となる方向(実施形態の場合、上方)へ移動させれば、ガイド面(内周面96a)に案内させるようにして、規制首部108を係止用開口94に挿入させるように移動させることができて、係止頭部109を、自動的に、係止用凹部94内における係止位置に配置させることができる。そのため、作業スペースが狭く、作業者が係合穴部を目視し難い場合にも、規制首部108を、円滑に係止用開口94に挿入させることができて、規制首部108の係止用開口94への挿入作業が一層容易となる。特に、実施形態のエアバッグ装置Sでは、挿通用開口96は、取付座部85の下縁87における内側部位87aと外側部位87bとによって囲まれる領域から構成されており、換言すれば、下方を大きく開口させた構成とされている。そのため、挿通用開口96への係止頭部109の挿通作業も、容易である。なお、このような点を考慮しなければ、係合穴部として、挿通用開口の内周縁をテーパ状とせず、単に、略「凸」形状に開口させた構成としてもよい。また、取付座部の下縁を、左右方向に略沿った直線状として、この下縁から略長方形状に切り欠くような凹部を形成して、この凹部の部位を係止用開口とするように、係合穴部を構成してもよい。係合穴部をこのような構成とする場合、挿通用開口は、取付座部の下方の自由空間の領域から構成されることとなる。
【0066】
さらにまた、実施形態のエアバッグ装置Sでは、取付座部85L,85Rと取付ブラケット100L,100Rと、を、ケース65の左右両側となる位置に、形成し、それぞれ、対応させて、懸架部90及び被懸架部105と、係合部としての係合穴部93及び被係合部としての係合片部107と、を備える構成としている。そのため、エアバッグ組付体AMを、左右のバランスよく、ボディ1側に仮固定することができて、エアバッグ組付体AMの取付ブラケット100に対する位置を一層安定させることができ、取付座部85を固定座部101との取付位置に、一層安定して配置させることができる。なお、エアバッグ組付体を取付ブラケットに安定して仮固定させることができる構成であれば、取付座部と取付ブラケットとを、ケースの左右両側に配置させなくともよく、また、ケースの左右両側に取付座部と取付ブラケットとを配置させる場合にも、両方に、懸架部及び被懸架部と、係合部及び被係合部と、を配置させる構成としなくともよい。例えば、左右の一方側の取付座部と取付ブラケットとに、懸架部及び被懸架部のみを設け、左右の他方側の取付座部と取付ブラケットとに、係合部及び被係合部のみを設ける構成としてもよい。
【0067】
なお、実施形態のごとく、係合穴部93及び係合片部107を、左右両側の取付ブラケット85及び固定座部101に形成する場合、左右の一方に配置される一対を、精度よく形成すれば、他方の一対は組付誤差を考慮して、形成すればよい。また、規制首部108と係止用開口94とによる左右方向側のずれ移動防止も、実施形態のごとく、係合穴部93及び係合片部107を、左右両側の取付ブラケット85及び固定座部101に形成する場合、各係止用開口の内周面によって、左右方向側のずれ移動を規制する構成としなくともよく、例えば、各係止用開口において、左右方向側の内側で対向して配置される縁部の内周面によって、それぞれ、左右方向側のずれ移動を規制する構成としてもよく、逆に、各係止用開口において、左右方向側で離れた外側の縁部の内周面によって、左右方向側のずれ移動を規制するように、構成してもよい。
【0068】
なお、実施形態では、運転席の前方に配置される膝保護用エアバッグ装置Sを例に採り説明しているが、本発明は、助手席に着座した乗員の膝を保護可能に、助手席の前方に配置される膝保護用エアバッグ装置に、適用してもよい。